こしおれ文々(吉田ぶんしょう)
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2012年04月10日(火) |
吉田サス劇【夏美】(第3部)第23話『性癖と通話記録』 |
吉田サス劇【夏美】(第3部)
第23話『性癖と通話記録』
この事件には 不自然な点がいくつかある
まずは大学生の話をしよう
大学生の部屋には アダルトDVDやらいかがわしい本が散乱していた
そしてそのほとんどが 【女子中高生】ものばかり
そう
あの大学生の性の対象は 自分より年下ということになる
にもかかわらず なぜ10歳以上年上の主婦と交際していたか
それが一つ目の不自然
性的欲求以外の目的があったと 考えるのが自然だ
つまり金目当て
ここ数カ月 主婦の口座からは 異例とも言えるペースで引き出されている
主婦の身の回りで 洋服や宝石類が増えた形跡が見られないことから 目に見えないモノとして 消費されたこと可能性が高い
ギャンブル・・・は考えにくいので
大学生へお小遣いとして渡ったと考えて 間違いはないだろう
主婦から金を巻き上げた大学生は さぞ楽しい大学生活を・・・・
と言いたいところが 知り合いや大学生に周辺に聞いても 大学生の金遣いに変化はなかった
豪遊どころか むしろ相変わらずの貧乏生活
可能性としては2つ
主婦から巻き上げたという考えが 間違っているか
もしくは
巻き上げた金が 【別の人間】に流れてしまっていたか
どちらが正解かは 言わなくてもわかるはずだ
別の人間というのはもちろん君のこと
ただこの二人
体の関係があるにもかかわらず お互いのケータイに 連絡先が登録されておらず 通話した履歴もない
単に着信履歴がないだけなら 削除したことが考えられるが 電話会社の記録にも この二人が通話した形跡がない
2つ目の不自然
一見すれば この二人は連絡を取ったことがないとも言えるが
この状況下でそんなわけがない
要するに 連絡するときお互いのケータイを 使っていないというだけのこと
とても簡単な話
【連絡する】ことが 【自分のケータイ】を使うという 現代における既成概念に 警察はまんまと踊らされたわけだ
主婦には当然家族がいる
家族が家にいて 食事だなんだと面倒みる時間に 大学生と連絡を取ることは不可能
じゃあいつ連絡が取れる?
夫は会社 娘は幼稚園で 主婦が家に一人となるのは日中
中でも家事が一通り終了し 一息つける時間帯
午前10時から11時頃
この時間帯に 主婦が住んでいる地区と 大学生が住んでいる地区とで ここ数カ月に複数回 通話した形跡があるか調べてもらった
電話会社も便利なものだよ
各々の地区から 【音声データ】が交信されたという記録が しっかりと残っていたわけだ
【複数回】という条件では けっこうな件数が抽出されてしまうが
【10回以上】ではだいぶ候補が絞られる
さらには 【所有者同士が見ず知らずの他人】となると 該当するのはたった1件ということになる
この意味はわかるよね
10回以上通話しているにもかかわらず 会ったこともない赤の他人
調べてみれば 二人ともホームレス
食い逃げや万引きで前科持っているから 居場所は簡単に突き止めることができた
金欲しさに頼まれて 不正にケータイの契約したって あっさり白状してくれたよ
そこから ケータイの不正契約を 斡旋にしてるチンピラ捕まえて
犯人・・・つまり君に辿り着くための糸口を見出したわけだ
それでも
それでも 【君】に辿り着くためには もう一つ 【不自然な点】を 解明しなければならなかった
この最後の【不自然な点】が 今回の事件の重要なカギであることは 間違いない
今の季節にしては珍しく少し強い風が吹き 少女の髪を揺らす
それでも少女は顔色一つ変えず 私を見つめていた
ただじっと私を見つめていた
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