こしおれ文々(吉田ぶんしょう)
◇洞ケ峠を決め込む(一覧へ)
◇とこしえ(前回へ)
◇倒れるなら前のめり(次回へ)
2012年04月09日(月) |
吉田サス劇【夏美】(第3部)第22話『透き通るような白い手を持つ犯人』 |
35歳の主婦が書類送検されてから数カ月
捜査本部は解散となったが
私は上司の許可を取らずに この事件の捜査を続けていた
そしてたどりついた
君が犯人だね
大学生を殺害し 35歳の主婦を自殺へと追い込んだのは君だね
私の目の前には まだあどけない少女が立っていた。
吉田サス劇【夏美】(第3部)
第22話『透き通るような白い手を持つ犯人』
その少女は15歳 高校1年生
こんな少女がなぜ凄惨な事件を引き起こしたのか
透き通るような白い手が なぜ人を殺めることができるのか
動機なんてものは知らない
この少女の大学生や主婦との付き合いは 決して長くはないはず
長年培われた恨み辛みは考えにくい
それでも 犯人は間違いなくこの少女なのだ
彼女は黙って私を見ていた 背けてしまいそうになるほど まっすぐに私を見つめていた
なんとお呼びすればいいのかな
本名の○沢○子さん・・・・? それとも【夏美】さん・・・かな?
もっとも 君が夏美さんとなったのは 大学生と主婦の不倫が始まってからのはず
二人が密会しているときに わざとメールをすることで 大学生と夏美が同一人物だということを バレないようにアリバイ工作をしていたわけだ
主婦から金を巻き上げ 利用するための計画を 思いどおりに進めるための布石だったわけだ
説明している間も 少女は表情一つ変えずに 私のことを見つめていた
現代社会において 複雑に絡まった人間関係という名の糸から 私はこの少女までたどり着くことができた
この糸を引っ張れば 少女は私に近づいてくるものと信じていた
それなのに いくら引っ張っても私と少女の距離は 近づく感じがしなかった
遠のくこともなく 私の足元に糸が溜まっていくだけで 少女は一定の距離を保ちながら 黙って私の話を聞いていた
私のことをまっすぐに見つめながら
|