こしおれ文々(吉田ぶんしょう)
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2012年03月23日(金) |
吉田サスペンス劇場【夏美】第5話『重要参考人』 |
吉田サスペンス劇場【夏美】 第5話『重要参考人』
友人から大学生殺人事件の話を聞いてから 数日たったある日、 私は再び友人に呼び出された
『忙しいところ悪いな』
彼の顔を見てすぐ、 明らかにいつもと状況が違うことがわかった。
『いきなりどうした?今月は負け込んでるから金ないぞ』
借金の話じゃあない この前話した大学生が殺された事件覚えてるか?
『あぁ、不思議な事件ってやつだろ。 犯人は見つかったのか?』
犯人とは決まっていないんだが、 重要参考人であることは間違いないな 『ふ〜ん 俺を呼び出すことと関係あるのか? そういや指紋があるんだよな 重要参考人ってのはその指紋の持ち主か?』
あぁそうだ 警察本部のデータにしっかり残ってたよ ただしすでに死んでるんだよ
『なんだ 生き返って殺したとでも言いたいのか? まだホラー映画の時期じゃないぞ』
都内に住む35才の主婦だよ この前○○海岸で自殺してるけどな
『おい!それってまさか・・・』
そのまさかだよ 犯人だとしたら大学生を殺して一週間後に自殺ってことか
『主婦とその大学生につながりはあるのか? 知り合いなのか?親戚って事はないだろ? そもそも大学生を殺す動機はなんだ?』 いいから落ち着けよ それを今から調べるんだろ 被害者が持っていた携帯電話に主婦の番号は登録されてないし 電話会社に問い合わせたところ電話かけた履歴も残ってない 現時点で被害者と主婦のつながりはわかってはいない
『その辺の主婦がなんらかの衝動で殺したとすれば 指紋がベタベタ残るような素人くさい犯行現場の状況も つじつまが合うってことか』
なおかつ衝動的で無計画な犯行であるからこそ 犯行後精神的に追いつめられ、挙げ句の果てに自殺した あくまで状況証拠でしかないけどな
昨日まで普通の生活を過ごしていた主婦が 理由もなく面識のない大学生を殺すわけがなく、 そこには必ず両者をつなぐきっかけと 大学生殺すに至った動機があるはずである。
この国の1/4の人口が住むこの街で いままで交わることもなかった糸が 突然何らかのきっかけにより交わることがある。
その交わりが引き起こす犯罪は 結局は私利私欲から生まれる憎悪や遺恨がもたらす。
つまり、一見すればただの偶然でしかない事由は 私利私欲からの必然的な結果でしかなく 神がかった【運命】とはまったく別次元なのである。
ただし、その必然性の中で 初めから二人の行く末を全て操っていたとするならば 【夏美】とはある意味神に近い存在であるのかもしれない。
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