samahani
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2003年09月23日(火) 故郷は遠きに在りて思ふもの 

この夏 同窓会があった日、駅でばったりまきちゃんに遭った。

「あれっ、まきちゃん? 変わってないねぇ」なんて話しながら、一緒に同窓会の会場まで行った。まきちゃんは、地元の人だから、同級生の動向をよく知っていて、誰々はバツイチになったとか、誰々は結婚したのが遅かったからまだ子どもが3歳くらいだとか、いっぱい教えてくれた。

「へぇー、そうなんだ、○○ちゃんかぁ、懐かしいなぁ」って、久しぶりのみんなに会える期待に心躍らせつつ、私が「あのさ、わたし、出てくるときあんまり急いでたから、ハンカチもティッシュも忘れてきちゃったんだよね、みんなに会ってウルウルしちゃったらどうしよう?」と真顔で言うと、まきちゃんは、「へ!?」って顔して、ナイナイって言いながら顔の前で大きく左右に手を振った。

私の田舎は、こんな所だから、地元に残っている人は、農業(お百姓さん)がすごく多いのだ。集荷(選果)場で、顔を合わることも多く、「なんだよ、もうお前の顔なんて見たくもないのに(笑)」って軽口を叩きあいながら、時には一緒に呑みに行ったりしているらしい。お百姓さん以外の同級生も地元にいる人たちは、けっこう仲良くて一緒に遊んでいるんだそうだ。

なんか羨ましい。

同窓会で配られた名簿によると、160人の同級生のうち、4分の3くらいが地元(と近隣の市町村)に住んでいる。(意外だった)。70名近くの出席率だったのはなかなかすごいと思うのだけど、だからなのか、地元の人の出席はいまいちだった。いつでも会えると思うと、私みたいな特別な感慨なんかないんだろう。

同窓会の会場で、「いちばん遠くから来ているのだから、代表してなにか話してくれる?」と急に言われて、私はマイクの前に立った。

「きょうは、みんなや恩師の先生に会えて、とってもとっても嬉しかったです。すごーく変わってしまった人も、全然変わってない人も、いろいろだけど、この席を設けてくださった、幹事さんや、発起人の皆様に感謝しています。どうもありがとうございま・・・」ってここまで言って、実は、自分の言葉に酔って少しウルウルきたりしてた。

そのとき、まきちゃんの「へ!?」って顔と、ナイナイって手を振った仕草が頭をよぎって、ダメダメ! ここでひとりで盛り上がっちゃったりしたらみんながシラケる、そう思って急いで頭を切り替えた。そしたら、「みんなが英語でスピーチしろとか言っていじめるんですゥ〜♪」なんておバカなこと言っちゃって、まとまりもなにもなくなって、すごく恥ずかしかった。

あとで、私は本当は何て言いたかったんだろうと考えて、本当はこう言いたかったんだって思った。
「アメリカに住んでいると、しばしば、自分は日本人なんだなあと思わされることがあります。いつも何かあるたび、故郷の風景やそこに居た人たちのことを懐かしく思い出します。故郷を抜きに私は自分のことを語れません。なぜならば故郷は今の私をはぐくみ育ててきた私の原点だからです。」 
うーーっ、クサイ台詞だ。やっぱり言わなくてよかった。



その日私は「故郷は、遠きに在りて思ふもの」という室生犀星の言葉をしみじみと噛みしめた。





 


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