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■ 「ミルク。」第1話
アキヒカ子甘々新婚風味を目指して(え?) 今度出す本と同じような話になるかな?甘々です。違うのは18禁かどうかというところだけ。 あ、今度のアキヒカ子本は、10/19イベント限定です。もっていくのも少ないと思うので、もし「イベントに行くけれど欲しい!」と言う方は予約フォームにて予約してくださいな。イベント会場にその方の分をもって行きます。 もし、申し込んだりしても買わなかった方がいたりして、在庫があればその後も通販を受け付けますが…アキヒカ子本がどれだけ出るのかが分からないので、あんまり作りません。うちは超ひっそりこっそりサイトであり、弱小サークルですから(苦笑)。
『ミルク。』
引越しに当たって、準備するものは多い。経験者なら分かるだろうか、初めて家を出るときと言うのは、本当に多い。 部屋探しだけでは終わらないのだ。食器に家具、電化製品、洋服…エトセトラ、エトセトラ。 今まで家で使っていたものを持っていけばいいというのもあるけれど、大体はおいていくことが多い。家に帰ってきたときに、困るからだ。 ヒカルも、16歳で家を出るとは思っていなかったから、そんな準備とか考えとか知識とか、先のことだと思って知ろうともしてこなかったので、その多さには閉口した。 それに、多分時々は家に帰るだろう、と、必要ならあえて一通りそろえるつもりでいた。 だが、実際には、自分が使うもの以外、殆ど買わずに済んでしまった。
「キミが気に入るといいんだけど…」
そう言うアキラに案内された、ヒカルのだというその部屋は、すでに住人を迎えるばかりになっていた。 ベッドも、タンスや机も本棚も、カーテンもカーペットも…何もかも、高級品とおぼしきもので統一され、色もヒカル好みの淡いオレンジに近い薄黄色で整えられていた。 「うわ…」 雑誌に出てくるような、でもきちんと機能性を重視して構成されたその部屋は、一瞬でヒカルの気に入った。 「どう?」 答えの無いヒカルに、アキラが恐る恐る聞いてくるのを、ヒカルは満開の笑みで答えた。 「うん、気に入った!ありがとう、塔矢!」 真新しい家具のにおいで満ちたその部屋を、ヒカルは嬉しそうに見て回る。机の前の椅子に座ったり、タンスを開けてみたり…そうして、おもむろにベッドにぽんと座った。 「進藤?」 そのまま、黙ってしまったヒカルに、アキラが声をかけた。あまりに嬉しそうに見ているのであえて声をかけずにいたのだが、急におとなしくなった恋人にちょっと心配になった。 「…柔らかい」 「え?」 「これ。このベッド!オレの今までのと大違いだよ!」 ぱふぱふと布団をたたき、興奮からか、少し頬を赤らめて言うヒカルに、アキラの中に何かが走る。 (…進藤っ!) そのまま押し倒したいような衝動に、ぐっと耐えた。 (約束…約束っ!) 呪文のように何度も何度も心の中で繰り返す。 「塔矢?」 「あ、なんでもない…気に入ってもらってホントに嬉しいよ」 にっこりと微笑むことでその考えをおしやり、ヒカルの隣に座った。 「来週からは、キミはここで暮らすんだよ」 「うん…」 ベッドに所在無く置かれていた手を取ると、ヒカルの顔がほんのり染まる。そんなヒカルに、引き寄せられるようにアキラの顔が近づいた。 「……っ」 ぎゅっと、ヒカルの手に力が入るのが分かったが、そのままそっとキスをした。まだキスに慣れていないヒカルが可愛くて、アキラの手にも力が入る。 「ん…」 小さくヒカルが声を漏らした。甘い声に背筋にはしるものがあって、アキラはまたもや衝動をおさえようとしたのだが…。 「…っ?!」 空いた手でヒカルの体を引き寄せようとしていたため、ヒカルの背にまわされていた手に力が入ってしまう。ぐっと抱き寄せ、深いキスをした。 「……っ、ぁ…」 驚きで思わず唇を開いたヒカルの口内に、アキラの舌が滑り込む。 「…ん…」 初めて味わう、ヒカルの口内に、アキラの理性があっさりと飛ぶ。そのまま、舌先を絡め、ゆっくりと体を倒し…。
「…こんの、エロエロ大魔人があっ!」
派手な音とともに、ヒカルの声が新しい部屋に響いた。 「…あ」 ぶたれた頬を赤くしたアキラが、ようやく我にかえり、頬に手を当てる。そんなアキラに、同じように真っ赤になったヒカルは(原因はもちろん全く違うが)すっくと立ち上がると、ぷいと部屋を出て行こうとした。 「ごめん、進藤っ!!」 慌ててその後を追うアキラを、ヒカルは居間で待っていた。 「…約束。忘れたのかよ?」 「いや、忘れてない!けど…ごめん」 つい、という言葉は飲み込んだ。それを言ってしまったら、これから先また「つい」があると警戒されてしまうかもしれない。 それは困る。非常に困る。 「塔矢?」 そのまま、黙ってしまった恋人…来週からは同居人であるアキラを、ヒカルは少しすねたような顔で覗き込む。 その唇は、先ほどのキスのせいか、少し濡れて光っていて、アキラは思わず目をそらしてしまった。 「…ごめん、進藤。忘れてないから」 もう一度、今度は冷静な声で謝るアキラに、うん、とうなずいて、ヒカルはソファに座った。 「…約束、守ってくれないと、オレ…ここにこれないし、いられないじゃんか」 「進藤…」 小さな声で、うつむいたヒカルが言うのを、アキラは感動とともに聞いていた。 つまり…それは、それだけヒカルがアキラと一緒にいたいと思ってくれているのだ。 心の中に、ほんのりと温かいものが湧き上がってくる。 「うん…ごめんね。大好きだよ」 アキラの言葉に、うつむいたまま、ヒカルが、うん、と答えた。 「何か飲む?」 立ったままのアキラが、ヒカルに問いかけると、ヒカルは顔を上げてうーん、と考える。 「コーラ、ある?」 「キミが飲むと思って買ってあるよ」 アキラの言葉にくすぐったい何かを感じながらも、ヒカルは「じゃあ、それ」と注文する。 台所の大き目の冷蔵庫からペットボトルを取り出し、ヒカルにはコーラ、自分にはウーロン茶を入れて、アキラはヒカルの隣へと座る。 一口飲んでから、感慨深げにヒカルがつぶやいた。 「来週からオレ、ここに住むのかあ…」 その言葉に、アキラの中にも急に実感がわいてくる。 「うん…そうだね」 「たくさん打てるな…これで」 「ああ、検討だってなんだって、いつでも出来る」 「オマエと、朝から晩まで一緒なんだな」 「うん」 「…うそみたい」 「うそじゃ困るよ」 「…………………うん…」 コップを置いた手をヒカルのそれに重ねる。そうして、そのまま、ヒカルの頭がアキラの肩にもたれるように倒れ掛かってきて…。
「約束…守ってくれよ?」
釘を刺された。 「…うん」 仕方ないのだ。アキラはため息をつきそうになるのをなんとかごまかし、わずかに重さのかかってきたヒカルの頭に、自分のそれをこつんとあてた。
ヒカルと、一緒に暮らすに当たって、ヒカルの両親からはあっさりとお許しが出た。それはもう拍子抜けというよりも、『それでいいのか?親として』というくらいで、嬉しかったが、言い出したアキラもさすがにびっくりしたくらいだった。 もちろん、この部屋を借りた時点で、ヒカルとの暮らしを考えてはいた。 だが、たぶん、今は時折泊まったりする程度で、それすら許されなくても仕方ない年齢なのだ。誕生日が来てないアキラは、まだ15歳だったから。 だが、ヒカルはもう16歳である。その気になれば結婚できる。 アキラはあせった。 最近、とみに綺麗になった気がする。もともと異性の友人が多いヒカルだが、北斗杯が終わってからというもの、それは格段に増えた。 その上、ファンレターの数も、アキラとはるほどで…付き合い始めてから、まだキスしかしてない(しかもまだ両手で数えるほど)仲のアキラとしては、今ここで、はっきりとした確約が欲しかったのだった。 だから、「結婚を前提に」というつもりで挨拶に行ったとき、つい勢いで一緒に暮らしたいとも言ってしまったのだが。 あっさりとOKをもらい、思わず呆けるアキラに、ヒカルの両親は言った。
「でも、あの…まだまだヒカルは子供ですし、その…そういうコト、は、無いように約束していただけますか?」
つまり。 ヒカルと一緒に暮らしてもいいが、まだキスより先に進んではいけない、ということである。 ヒカルの言う、『約束』は、そういうことだ。結婚については言及されていないが、それも言外に含んでいるのはアキラも承知している。 それだけが目的ではないから、それでいいのだろうが…年齢とか考えれば、それがいいのだろうが。 アキラの中で欲望が戦ったが、ヒカルという存在を確実に自分のものとしたいという欲望が、そのほかの欲望に勝った。
というわけで、アキラの手によって念書が書かれ、ヒカルはアキラと同居することになったのだった。
続く。
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…こんな話になるんですけれど。 どうですか? 感想などいただけると嬉しい…。ヒカ子はあんまり反応が無いので気になります。 今度限定で出す本は、これのえっちありバージョンみたいな話になるかなあ。 これとは別の話になります。 ネットにはUPしません。再版もしないです。 差し上げたい方がいるので、その方には押し付けしようかと…。 いつもアキヒカ本を押し付けている皆様にはどうしよう…女の子でもいいかなあ。もらってくださるのかしら…(滝汗)。好きな人と嫌いな人に分かれると思うので…。
ところで。 念書って、分かりますか?
2003年10月10日(金)
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