キ ミ に 傘 を 貸 そ う 。
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Jのことが好きだ。私はJのことが本当に好きなのだ。 去年の春から今まで、Jのことを諦めようと思って生きてきた。 私はJから離れていこうと思ってた。でも駄目だった。
結局、去年より今の方がJのことを好きになってしまった。 その原因は勿論、Jが私のことを好きだと言ってくれたから。
なんで? Jは私を好きになるなんて、そんな愚かなことをする人じゃないのに。 夢としか思えないくらいの現実が今ここに確かに存在している。 幸福と同時に不安が混じる。 未来など考えたくない。いつかJが居なくなってしまうなんて未来を想像したくない。
君は優しい声で私の名前を呼んだ。私はどきどきを抑えながら話した。 だって有り得なかった。Jが私を?本当に私のことを?
絶対に大切にしようと思った。
世の中の女の子は、こういう恋の繰り返しを何度も何度も体験しているのだろう。誰かを本気で好きになって、幸福を味わい、愛しさを知って、失って、死にそうになる程苦しい別れをして、また次の人に出会う。 恋や愛は一番、人間の感情を揺らしてる。
私は人を好きになること自体が稀で、愛される喜びなんて知らなかった。 たとえ誰かに好きだと言われても、私の心が動くことも無かった。 好きにはなれなかった。
でも今私はJが好きで、しかもJも私の事を大切に想ってくれている。 こんな歳になって、私はそういう事が初めてで戸惑う。 幸福は不安なのだと実感する。 予想はしていたことだ。
離れていることは辛い。目を見て話せない。 笑ってあげられない。手をとってあげられない。 髪の毛を触れない。
私は彼を言葉で救えるだろうか。
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