愛より淡く
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2002年09月08日(日) ほのかで淡い恋心

☆「ほのかで淡い恋心」


実は今、夫がある女性にほのかなで淡い恋心を抱いているようなのだ。

わかりやすいタイプなだけにすぐにわかる。

その女性に夫は、月曜日の夜だけ会える。でも先日はうっかりしていて会えなかったみたい。すっごく悔やしがっていた。

でもまあ心にそういう存在があるのはよいことだと思う。生きるためのささやかな彩りになってくれているのであるならば。

実は私もある人に、ほのかな恋心を抱いている。でもそれは夫のそれに比べれば、もっともっと淡くてほのかな恋心だろうと思う。夫にも気づかれていないと思う。

そんなわけで、明日の夜8時のドラマ「ダークエンジェル」の録画を間違えないようにしないと。どきどき。夫の恋心の相手は、そのドラマのかっこいいヒロインなのでした。




「幸せな果てかた」


今まで生きてきて、誰かに抱きしめられた記憶というのが、ほとんど、ない。

「抱きしめる」というのは、ぎゅうっと力を込めて相手を丸ごと掴みこむような行為のことでしょう?

うん、やっぱり、ない。

私の記憶が確かなら、私が誰かに抱きしめられたことは、後にも先にも今のところ、一回しかない。数が少ないから、はっきり覚えていられる。って、一回きりのことだもの忘れようがない。

あれは新婚生活が始まって2週間以内の出来事だ。場所は夫の単身赴任先にある、煎餅屋さんが管理人をしているボロっちい木造のアパートの一室だった。
ちなみにその近くに、ラーメン鉢に天丼が盛られて出てくる、奇妙な定食屋さんがあった。

週末は、新居に帰っていたけどなにせ新婚だったので赴任先についていったのだ。

家具なんてなんにもなくて、冷蔵庫も洗濯機も近所のリサイクルセンターで買ってきて間に合わせたものだった。テレビの台はダンボール箱だったし食器棚も本棚もダンボール箱を横に寝かせたものだった。

ガスコンロが一個だけあったけどあまり使い勝手がよくなくて、重宝していたのは、なんとホットプレート。これってけっこう底が深かったので、鍋とかもそれでできた。

あれ?なんか話それている?

では、いざ軌道修正。

というわけで、その日は雨で、私は夫の帰りをなんもない殺風景なアパートの一室で、ぽつんとひとり、待っていた。わびしかった。心細かった。夫はずぶぬれになって帰ってきた。

部屋に入ってくるなり夫は、その部屋でじいっと帰りを待っていた私を見るなり、ほぼ反射的に抱きしめてくれた。心強く感じた。

その一回だけだ。新鮮な感覚だったので、その感覚が、まだしっかり残っている。


それ以降は、空気といっしょに包みこむような感じのふんわりとした抱擁ばかりだ。それだって数にすればそんなにないと思う。


ぎゅーっという感じで誰かに抱きしめられることは、この先私には、きっともうないのだろうなあ。

一度くらい誰かに骨が折れるほど力いっぱい抱きしめられてみたかった。

できればその人が、私の心から恋慕っている人だったなら、ああ、どんなに素晴らしかっただろう!!

うれしすぎてその刹那心臓が止まってしまったかもしれない。愛する人の腕の中で息絶える。ああなんてしあわせな果て方だろう。←恋愛ドラマの見過ぎ?


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テキスト庵さん