
戯 言ノ源
―― 連ねた意味も、持てない小鳥。
氷室火 生来
回帰
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| 2007年07月01日(日) ■ |
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| 泥団子練って、食べてねって。 |
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始めてと考える瞬間は、そういえば始めてじゃなかった。その時点で充分早回しだけど、もっともっと昔にこそ、起因はあった気がする。 かっこつけではないけれど、いちいちにこまっしゃくれた解釈を付けたがる自分に、整理をつける為も少しぐらい素直になってみようとね。考え詰めたら、若しかしたら、同じように勝手に付け加えた相手の思想も、多少の違いが見えてきた気がする。なんパターンも用意されて当たり前の相手の思いが、ようやっと選択肢を齎されたよな。 ただの成長期の過程だとか、身近な対象だからとか、それも一つなんだろう。だけど原点の位置をずらすなら、彼も又、寂しかっただけなのかもしれない。それはつまり、自身が寂しかったという事だ。認めたくないけれど、多分、それが一番適切ならば、仕方がないと受け止めよう。 ままごとだった。しりとりとか、他にも身一つで興じられる時間潰しが得意だった。放っとかれる事が常だったのだから、自然二人は寄り添ったし、他に求めるものと違う。此処だからこそ得たいものが、二人には共通してあった。そして満足か否かは、定かではない。 その日もやっぱり帰りの彼等の気分如何で左右される今夜の命運、恐れながらじっと待っていた。息苦しい空間で窓一つ開けず暇を潰しながら、待っていた。 話から身振り手振り、縺れながら進んでいく時間の中で、本当の始まりの始まりが、そうだ、此処にあった。ささやかで、可愛らしい、危ない橋の上。それでもそれは彼が求めた証であり、寂しさを埋める代わりの何かを必死で探していた。 自分はといえば、ちっとも判らない。過去に遡ってみても今一つ把握出来ない。未来の自分に悟らせたくなかったのか、はたまた全くの考え無しなのか。 ただ随分とませてはいたから行為も意味も知っていて、けれど伴う筈の背徳も羞恥も一つとしてなく、この辺は元々壊れていたのだろう。でも、多分、彼の求める答えが、何処かで納得出来ていて、若しかしたら重なる部分があったのかもしれなくて。だけど手に届かない事、望む形で手に入らない事は、やっぱり、察知していたんだろう。 形だけでもまねてみせればより近くなったつもりで寂しさを埋められるんじゃないかって、思い込みなんだ。やがてそれ自体の快楽を求めてかは知らないけれど味を占めたように暫く興じてみたけれど、乗っているだけの真似事の中で自分は何一つとして熱く高ぶる事も無く、身を委ねたい悶えも無く、ただただ流されていた。いやでもなく、よしでもなかった。ただそれだけだった。 知っていたのかな。喜びも楽しみも無い事。別の誰かならよかった訳じゃない。だからといって彼だからでもない。 第三者目線で見た自分が少なからずそうだったように、彼も又おかしな貪欲さを持っていたって、歪曲した目線を懐いていたって、当たり前だと思わなかったのは、二人が当たり前のように他人だったから。それが当たり前な事に感慨も悲しみも無いままに、当たり前の理論を冷たく持っていた。 すきもきらいもいいもわるいもよしもあしもぜんもあくも、等しくある命のままではいられない。だけど限り無く世間の判定ではそれに近くて、自分の中の妙な観念だけは心に従って、何も言わず得ようともせず。 求めたって無駄だと、知っていたんだ。悟ったのがいつかは知らない。だけどどうして、諦め切れなかったんだろう。未だに引き摺るように、けれどそうとは判らないように、嘯くように夢見るように、ただただ振り返る事しかもう許されていないのに。
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