TOM's Diary
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2004年06月30日(水) |
PTクルーザー・カブリオレ |
PTクルーザーにカブリオレが追加発売された。 これがなかなかかっこよい。 カブリオレだと後部座席が窮屈だったりしそうだが、PTの カブリオレに関しては、そんなことはなく、しっかりと2人 乗ることができるそうだ。そればかりか、トランクも結構広々 していて実用性を兼ね備えているところもすばらしい。
基本的な装備は我家にすでに生息しているクローズドボディの PTクルーザーと変わらないものの、エンジンは2.4Lに スープアップされて重量増による動力性能を補っているらしい。
ちなみにクローズドボディのPTクルーザーは「セダン」と呼んで カブリオレと区別することになったそうだ。
雑誌やクライスラーからのDMなんかを見ているとカブリオレが 欲しくなってしまう。 しかし、我家にはすでにかみさん名義だがセダンが一台生息しており さらにカブリオレ、2台のPTはいかがなもんか? それに事故車となってしまったとは言えアルファードはやはり 良い車である。これを手放すことなど考えられない。
クライスラーのDMも見ているとクライスラージャパンで購入した 正規のPTクルーザー・セダンを下取りに出してカブリオレに 買い換えると10万円のキャッシュバックがあるらしい。 そうか、そうか、10万円のキャッシュバックか。納車後2ヶ月 しかたっていないピカピカ新車、かみさんのPTはもちろん キャッシュバック対象だ。かみさんのPTをセダンからカブリオレに してしまうのが一番よいか?などと考えてしまう。
もちろん、そんな提案をかみさんにする前に「ふ〜ん、そんなの 出たの。セダンの方がかっこいいね」とあえなく玉砕。
クライスラーの展示車でも見て我慢することにしよう。
国立国語研究所というところがあるらしい。 そこで、難解な外来語を言い換える作業をしていてこのほど中間発表があったそうだ。
判りやすく言うと
デフォルト=>債務不履行、初期設定 スタンス=>立場 ブレークスルー=>突破
といった具合だ。 どれも逆に意味が判りにくいぞ。
その中でももっとも訳が判らないものはこれだ。
セットバック=>壁面後退
セットバックがどう言う時に使われる外来語なのかも 判らないが、壁面後退の意味も判らない。
また、オンラインやユビキタスに関しては言い換えることさえ 困難だと言う事だ。
こんなのではどうだろう。
オンライン=>ネットワーク上 ユビキタス=>どこでも情報化
例えば「オンラインショッピング」なら「ネットワーク上ショッピング」に 言い換えても意味は通るし、「オンライン検索」=「ネットワーク上検索」 でもいける。
ユビキタスも「ユビキタス社会=どこでも情報化社会」と言った感じで 十分意味は通じるのではないか?
こんなのはすぐに思いつく。 きっと5分くらい真剣に考えればもっといい言葉も思いつくだろう。
さすがに国立国語研究所だけあって頭が固そうだ。 きっとオンラインだけで何日も偉い人たちが寄ってたかって 考えた挙句、結果が出せなかったに違いない。もちろんその 無駄な時間にも税金から給料が出ているに違いない。 しかも中間発表だと?まだまだ税金で無駄な作業を続けるつもりか?
どんなに言い換えたって、言い換える前の方が意味が通るのなら 言い換えた意味が無い。 判りやすい言い方にしなければ、税金の無駄遣いだ。 まったく、我々の血税をなんだと思っているのか?
S氏は駅でぼんやりと電車を待っていた。 普段電車には乗らないS氏であるが、ちょっとした用事で電車に乗ることになったのだ。
ふと視線を横に向けると売店があった。 なにげなく見ていると、みんな勝手に雑誌や新聞やガムを持って行っているように見える。 「もしかして店員が倒れて、その隙にみんな勝手に商品を持って行っているのか?」 よく見てみると先に客がコインを店員の前に置いて商品を持って行っているようだった。 店員はコインの数と商品の値段があっていれば特になにも言わないで、商品の整理をしているようだった。 たまにおつりが必要な客がいると、客がコインをおいて商品に手をふれたとたんにおつりを用意し始め、客が商品を手に取り反対の手を差し出したとたんにおつりが手の上に置かれる。 すばらしいとしか言いようがない。ほんの10秒ほど眺めていただけだったが、その間だけ10人ほどの客をさばいている。
S氏は試しに自分もそこで買い物をしてみようと思った。 客がいなくなった隙を見て売店に近づく。 気になっていた雑誌に手を触れる。 そのとたん、「280円」店員が言う。 S氏は慌てた。お金の準備をしていなかったのだ。 S氏がもたもたしていると次の客が後ろから来て「ちっ!」と舌打ちをされる。 たしかにここにいては邪魔だ。 S氏は慌てて一歩下がる。 するとまた新たな客が次から次へとやってきてせっかくコインが準備出来たのに売店に近づけなくなってしまった。
ようやく客が途切れる。 S氏は雑誌に手を触れる。 「280円」 慌ててコインをおこうとする。 だがどこにおいて良いか判らない。 なにしろ売店の前は雑誌が山積みだ。 いや、よく見ると雑誌の上にコインが置かれていた。 そうか雑誌の上に置けばいいのか。 だが、コインを置くスペースが無い。
店員が隅の方からコインを回収し始めていた。 店員がS氏の方をちらりと向く。 様子を察して手を伸ばした。 その上にS氏はコインを置いた。 後ろの客がS氏のもたもたした様子に「ちっ!」舌打ちをする。 S氏は慌てて一歩下がった。 「ちょっとあんたおつり!」 S氏はもう一度一歩前にでようとすると舌打ちの客にぶつかりそうになる。 「ちっ!」 S氏はおつりの20円を貰おうとしたが、10円を落としてしまった。 「ちっ!」「ちっ!」店員と客のダブルで舌打ちだ。 店員がもう一枚10円コインを取ってS氏に渡そうとしたが、S氏はそのときにはすでに逃げ出したあとだった。
S氏は自分が買った雑誌を見た。 なんと、欲しかった雑誌とまったく違う雑誌を買ってしまっていた。 S氏は翌日から駅の売店で買い物をするのに便利なアイテムの開発をはじめたが完成する前にそんなもの無くても買い物が出来るようになっていた。
困ったのは秘密組織の幹部たちだったが、優秀な工作員を使って開発を続けさせようとしてもS氏は駅売店の店員のワザと買い物をする自分のワザを自慢するだけで上手くいかなかったのだった。
S氏は腹痛で目覚めた。
とてつもなく眠い、トイレに行くのも面倒なほどだ。 しかし、腹痛は激しい。 冷や汗までかいている。 しかし、できることならこのまま眠りつづけたい。 大丈夫、寝てしまえば腹痛は忘れるに違いない。 じっと目をつぶって腹痛のことを忘れようと努力する。
波がさるとともに、夢の中へと落ちていく。
我慢できずにトイレに駆け込もうとしたところで再び目がさめる。 こんどはヤバイ。 本当にトイレに行かねばならない。 不覚にも夢のなかでトイレを目の前にして油断してしまったのだ。 しかし、なんとかやり過ごしてこのまま眠り続けたい。 脂汗がたれる。 リラックスしようと思うのだが、無意識に身体に力が入ってしまう。
ふいに波がひいた。 汗が冷たく感じる。
トイレに向かおうとするのだがなかなか障害を克服できない。 必死になって障害を乗り越えるのだがいつまでたってもトイレに近づけない。 ようやくトイレにたどり着くのだが、トイレはなくなっている。 もう耐えられない。 ・・・・絶望的な気分で目覚めた。
S氏はトイレに駆け込んだ。 数分後S氏は腹痛などなかったかのようにすっきりした気分でベットに戻った。 すっきりした気分がたまらない。 最初からトイレに行っていれば・・・いや、あれだけ耐えたからこそ・・・ 結論が出る前にS氏は深い眠りへと落ちていった。
最近、偏った報道が気になるようになってきた。 以前はそのようなことは思わなかったのだが、特にここ数年は特にそのように感じる。 報道の偏り方が大きくなったのだろうか? それとも自分が以前よりグローバルな視点で物事を捉えられるようになったからだろうか?
偏った情報だけでは人間は正しい判断をすることは出来なくなってしまう。 もう少し、偏りのない報道はできないものだろうかと思ってしまう。
少し前、イラクで拉致事件が発生した際に政府が帰国費用を被害者に請求するとした問題で、あるニュース番組(個性的なキャスターを起用している番組)が各国の反応を紹介していた。 それによると、政府には自国民を守る義務があり、帰国費用を被害者に請求するなどと言う行為は政府としての責任をはたしていないのと一緒だと言う。
一方で、このような事例の場合、帰国費用は本人負担と言うことを法律で定めてあると言う国もあるらしい。たとえばドイツなどだ。なにからなにまで政府には頼らず、自分でできることは自分で正しく判断し負担すると言う考えはむしろ文化が発展しているからこそ出てくる考えだろう。そのニュース番組ではそれらの国の意見は紹介されていなかった。各国の反応として報道しているにも関わらずである。
そればかりか、帰国費用は政府が負担するべきだと言う国の中にも、人によって意見はまちまちであろうが、紹介されていたのは断固として本人負担には反対だと言う人物の(個人的とも思える)意見ばかりであった。
なにも捜索の費用までも本人に請求しようというのではない。チャーター機を飛ばすための何千万円もの費用のうちのごく一部を負担してもらうのは当然のことと言う考えもあるはずだ。 そもそも政府の勧告を無視して渡航したがために被害者となったのだ。そんな被害者のためにも、政府はすでに多額の税金を使っているのである。たかだか帰国費用の数十万円のために国民に判断を狂わせるようなキャンペーンをはるほどのこととは思えない。
少なくともキャスターの意向に合わない意見は無視するのではなく、あらゆる意見を満遍なく報道するのが正しい民主主義のあり方ではなかろうか?
日本人F1ドライバーの佐藤琢磨選手がついに表彰台に上った。 テレビ中継を見逃してしまったのだが、期待して見ているときに 限ってスピンしたりエンジンブローしたりして、期待を裏切られる。 もしかして私がテレビ中継を見なかったお陰で表彰台に上がれたのかも(笑)
それにしても、日本人離れした感覚の持ち主だ。 アグレッシブな(強引な?)走りもそうだが、コメントも強気の発言が 多い。私の周りでは、そんなところが今一つ馴染めない・・・積極的に 応援したいと思えない、と言った意見も聞かれる。
その昔、F1界の王者とも言えるアイルトン・セナなども最初は 佐藤琢磨のようなじゃじゃ馬のような選手だった。 他の選手にレース後に殴られたりするような強引な走りと鼻につくような 発言が多かった。日本でF1がテレビ中継されるようになるころには すでにトップドライバーの仲間入りをしており、日本では絶大な人気を 得ていたアイルトン・セナだったが、私はどうしてもセナの過去の走り や横柄な態度が気に入らず、結局最後までセナのファンにはなれなかった。
セナは好きになれなかったが、佐藤琢磨は日本人と言うだけで、そんな 強引な走りも鼻につく発言も許せてしまう。
なぜかと言うと、やはり、これまでそう言う走りを見せていたドライバーは セナにしてもシューマッハにしてもトップドライバーの仲間入りをしている。 もしかしたら佐藤琢磨も・・・そんな期待があるからだろう。
表彰台の真中に立つまでには時間がかかるかもしれない。 しかし、過去のトップドライバーたちを思い返すと、一度表彰台の真中に 立つと、自信がつくのか、余裕が生まれるのか、一気にトップドライバー の仲間入りをしている。 佐藤琢磨にも早く表彰台の真中に立ってもらいたい。 佐藤琢磨なら表彰台の真中に立つ実力は十分に持っていると思う。
(一日遅れで書いてます) 台風6号の接近で外は大雨が降り出しているようだが、 自分のデスクに座っている分にはまったく判らない。 噂を聞いて外の様子を見に行く者もいるし、 電車が動いているかネットで確認する者もいる。
クルマ通勤の私には電車の遅れはあまり気にならないが 雨の状況は気になる。いくらクルマとは言え土砂降りの 中を帰るのは、視界も悪く道も混むし、疲れるからだ。 場合によっては雨のため通行止めなどという事も無きに しもあらずだ。 だが、わざわざ外の様子を見に行くのも面倒なので、そんな ときはここ(東京アメッシュ)を見る。
過去の雨の様子も判るので、帰るタイミングを見計らう のにも便利である。あいにく東京近辺のみのサービスだが 一度は見てみる価値はある。
今日も東京アメッシュで雨の様子を確認する。 珍しく赤いところ(非常に激しく雨の降っているところ)がある。 よく見ると、まさに会社のあるあたりが真っ赤になっている。 思わず外の様子を見に行ってしまう。 外の様子を見に行くのが面倒だったはずなのに・・・
2004年06月21日(月) |
S氏シリーズ「天国へのハシゴ」その6 |
(6月20日の続き)
秘密組織の幹部たちはS氏の発明の新たな使い道を模索していた。 注目したのは「好きな夢を見ることができる装置」であった。
敵のスパイを捕まえても、拷問はできない。 だが夢の中のことまでは制限されていない。 しかも夢の大半は起きれば忘れてしまう。 口を割ったことさえも、忘れてしまうのだ。
そして、それは一見成功したかに思えた。 夢の中で敵のス僖い魯魯轡瓦鯏个蠅弔鼎院?鋲箸班坩造砲気い覆泙譟 自分は死んだと思い込み、まんまと夢の中で口を割ったのだった。
だが、敵のスパイが夢の中で話したことを聞くことはだれも出来なかった。 それどころか、敵のスパイが夢の中でこちらが知りたいことを本当に白状したのかどうかも判らなかった。
なにしろスパイの夢の中での出来事だ。 敵のスパイの夢の中にでも入らない限り無理な話であった。
2004年06月20日(日) |
S氏シリーズ「天国へのハシゴ」その5 |
(6月19日の続き)
突然不安に襲われた。
私は死んでしまったのだろうか? あのハシゴは天国への階段だったのか? 恋人や仲間たちと、まだやりたいことはたくさんあった。 縁遠くなってしまった両親にも親孝行をしておきたかった。 やり残したこともたくさんある。 いや、まだ死んだとは限らない。
ここはいったいどこなのだろう。 強烈な孤独感と不安感に押しつぶされそうになる。 そう、あたりには誰もいない。 闇だけ存在している。 いや、存在していると言えるのだろうか? 暗くて自分の手さえも見えない。 まぶたを閉じているのか開けているのかも判らない。 もしかして自分は無になってしまったのか?
あぁ、神様、すべての罪を告白します。 ですから、もといた場所に戻してください。 いえ、天国でも地獄でもいいです。 どこか他に人がいる場所へ連れて行ってください。
「いいだろう、ではこれから行う質問にすべて答えてもらおう」 ふいに声が聞こえた。
藁をも掴む思いで、矢継ぎばやに出される質問に答えていった。 スパイである自分はどんなことがあっても秘密は守らなければならなかった。 どんな拷問にあっても絶対に守らなければならなかった。 秘密を守るために自らの生命を絶たねばならない状況であればそうしなければならなかった。 もし秘密を知られたら、それが例え両親や恋人であっても殺さなければならなかった。 だが、そんなことはどうでも良かった。 そんな自分が情けなくなり、目から涙があふれ出た・・・
(6月21日へ続く)
2004年06月19日(土) |
S氏シリーズ「天国へのハシゴ」その4 |
(6月18日の続き)
雨の中をどのくらい登りつづけただろう? ようやく上空が明るくなり始めた。 どうやら雷雲の上面に近づいてきたようだ。 いつのまにか雨脚も弱くなっていた。
深呼吸をして落ち着いてハシゴを登る。 ふいに綺麗な虹が目に入った。 その途端、雲の上にでた。 そよ風が気持ちよい。 雷鳴もはるか遠くに聞こえる。 まだお昼前だと言うのに空は紺色になっていた。 だいぶ空に近づいたようだ。
あと一息。 気がつくと身体が軽くなっていた。 手を離すと身体が浮いた。 ついに宇宙に出たのだ。 ハシゴを蹴った。 もう、なにもしなくても空に向かって一直線に上がっていける。
(6月20日へ続く)
2004年06月18日(金) |
S氏シリーズ「天国へのハシゴ」その3 |
(6月17日の続き)
早朝の気持ちの良い風が髪をなびかせる。 ハシゴはまだまだ続いている。一段一段登りつづける。
遠方に黒いものが見えてきた。 雷雲だろうか? 急速に近づいてくる。 隠れる場所はない。 上に逃れようと必死にハシゴを登りつづける。 が、雲はどんどん近づいてくる。
逃げ切れない。 ついに雲に囲まれた。 静電気でハシゴがピリピリとする。
登り始めて数日、初めての雨が降り始めた。 大粒の雨がハシゴを登る手や足を容赦なく濡らし始める。 背後からは強烈な稲光と、激しい雷鳴が襲いくる。 滑りやすくなったハシゴと嵐のような強風の影響で登る速度が落ちてしまう。 だが、雷雲から逃れるために必死でハシゴを登る。
恐怖は感じなかった。 空に上ることしか考えなかった。 濡れたシャツが身体にまとわりつくのが気になった。 しかし、もくもくとハシゴを登りつづけた。
(6月19日へ続く)
2004年06月17日(木) |
S氏シリーズ「天国へのハシゴ」その2 |
(6月16日からの続き)
青かった空は茜色に染まった。 非常に美しい景色だった。 思わずハシゴを登るのを休む。
茜色は徐々に紺色へと変化し、美しいきらめきを放つ星が黒い空を飾り始めた。 下を見下ろすと街を彩る光の点が河のように流れ街を形成している。 上を見上げると星の集団が河のように流れ天の川になっている。
光の点に囲まれながらビバーグしようと星を眺めながら考えた。 空はまだまだ先だ。焦らず、ゆっくり登っていけばよい。
光の点に囲まれていると、まるで空中を浮いているような気分になる。 心地よいそよ風と気持ちの良い浮遊感覚の中、ゆっくりと深い眠りの中へ落ちていく。
(6月18日へと続く)
2004年06月16日(水) |
S氏シリーズ「天国へのハシゴ」その1 |
ハシゴを登る 一段一段しっかりと登っていく。 青く澄んだ、空に吸い込まれるように登っていく。
もう、半日くらい登りつづけているだろうか? まだ、空には手が届かない。
下を見下ろすが、住み慣れた街はもう、点の集合体のようにしか見えない。 家も車もすべて点のようだ。
もしここから爆弾でも落とすと下界ではとんでもない騒ぎになるだろう。 だが、ここでは一瞬爆弾が閃光を放つのが見えるだけだ。 下界の阿鼻叫喚とはまったく縁の無い隔絶された別世界だ。 そう考えると恐ろしくも感じる。 自分には飛行機から爆弾を落とす兵隊にはなれないだろう。 こんなことでよく今の仕事が勤まるものだと思う。
そんなことを考えながらハシゴを登りつづける。
(明日へ続く)
実はS氏には、秘密組織からの接触が頻繁にあったのだ。 もちろん、S氏に秘密組織だと言うことがばれないように 十分な注意が払われていたし、S氏もまったく気がついて いなかった。そして今日も秘密組織の秘密工作員たちが やってくるのだった。
S氏は鉄腕アトミ型ロボットの設計図を書きかけたのだが 途中で止めてしまった。 鉄腕アトミはロボットながらとても人間的で平和を愛する ところが気に入ったのだが、どうしても問題解決に暴力を 使うところが納得行かなかった。もちろん必要最低限の 暴力はやむを得ない気はするが、それは自分で作らなくて も、きっと政府の秘密組織のようなものがあって、そこが 作るに違いないと考えてやめてしまったのだ。
だが、その秘密組織は現実に存在しており、その組織は S氏の発明を頼りにしていたのだった。 なんとかS氏に鉄腕アトミを開発してもらわなければ ならなかった。そこで、秘密組織の優秀な工作員がS氏の 家に向かうことになった。
S氏がとある休日に庭でノンビリとお茶を飲みながら 読書をしていると、近所の子供たちがやってきた。 S氏は近所の子供たちが遊びに来るのをいつも楽しみに していた。S氏の発明を喜んでくれるのはほとんどが この近所の子供たちだったからだ。
007の自動的に消滅するカセットテープをせがまれた ときには、その日のうちに自動的に消滅する手紙を作って 子供たちと007ごっこをして遊んだ。
自ら開発したクモ型ロボットを最初にお披露目したのも 近所の子供たちだった。だが興味を示したのは試作の 小型のものだったのがS氏には残念だった。
S氏は今日はなにを見せようかと、考えをめぐらせた。 そのとき子供たちはS氏のテーブルの上に乗っていた 鉄腕アトミの本に興味を示した。 S氏はすぐに鉄腕アトミを作り始めた。設計図はほと んど完成しており、あとは組み立てるだけだった。
完成した鉄腕アトミと遊ぶ近所の子供たちを嬉しそうに 眺めるS氏だった。
夕方、こどもたちはS氏に手を振りながら帰っていった。
S氏は優秀な秘密工作員と接触をしたことにはまったく 気付いていなかった。
穴を埋めている。 スコップで穴を埋めている。 もう何時間もやっているがだいぶ穴が埋まってきた と言う成果が見えてこない。 いくらやってもきりが無い。
スコップをシャベルに持ち替える。 しかし、それでもきりが無い。 穴はどこまでも続いているようだ。 シャベルで放り込んだ土はいったいどこまで落ちて 行くのだろう?
仲間を何人も集める。 大勢でやっても穴は埋まらない。 いつまでやってもきりが無い。
ダンプで運んできた土を直接穴の中に入れる。 すでにダンプは100回以上土を運んできている。 だが、穴は埋まらない。
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子供を連れた親子が通りかかった。 「なにをしているの?」 「穴を埋めているんだよ」 「どうして穴を埋めているの?」 「人が落ちたら危ないでしょ」 「なんで穴を埋めているの?」 「だから人が落ちたら、怪我をしちゃうでしょ」 「ちがうよ、マンホールみたいにふたをすればいいのに、 なんで埋めなきゃいけないの?」 「う〜む・・・・そうだね。そうすれば私たちの税金は 無駄にならないで済むのにね・・・」
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穴はついに埋まった。
政治家の汚職が発覚し、企業との癒着が断ち切られた。 その途端に穴はなにごとも無かったかのように消えてなくなったのだ。
本当は穴などなかったのだ。
S氏の発明は政府の秘密組織にこっそりと盗まれていた。 S氏の発明はほとんとが特許になっているため、発明そのものは、特許の 公開公報を見ればだれでもマネをすることができる。だが、秘密組織は S氏が発明したクモ型ロボットを使って、翌日にはその情報を得ていた。 その上でS氏の発明が公開されないように裏から手を打ち、S氏の特許は すべて申請時点で却下されていた。
S氏のクモ型ロボットは試作の小型版が、S氏が作った1週間後には秘密 組織のスパイロボとして実践配備されていたし、開封すると60秒後に 自動的に消滅する手紙は、007が使っていたテープレコーダー型のものと 完全に置き換えが済んでいた。 S氏の開発したトラえもんは1匹が、過去に遡り、野比のひ太の手助け をすると言う名目で、のひ太が学校に行っている間にこっそりと過去の 歴史を変えるという任務についていた。 S氏はドラえもんの漫画を見て、トラえもん型ロボットを作ったのだが 実はS氏が作ったロボットが元になってトラえもんの漫画が出来たことは 知らないのだった。
なにしろ、秘密組織の新規導入のスパイキットはほとんどがS氏の 発明を頼りにしていた。 そんな秘密組織は、新しい任務を遂行するために鉄腕アトミが欲しかった。 しかし、S氏に面と向かって鉄腕アトミの製造を依頼するわけには行かな かった。そこで秘密組織はS氏の「好きな夢を見る装置」に細工を仕掛け S氏に鉄腕アトミの夢を見させた。
S氏はそんなこととは知らずに、鉄腕アトミの漫画を読み始めるのだった。
シャープが海外の液晶テレビメーカーを特許侵害で訴えた。 それが不服としてイオングループがシャープ製液晶テレビの 販売を中止したと言う。
いったいぜんたい、なにを考えているのだろう? 特許侵害をしたメーカーの液晶テレビの販売を中止したのなら まだしも、された側の液晶テレビ販売を中止したと言うのだから あきれてしまう。
遠まわしに特許侵害してもよいと言っているようなものだ。 本来、他社の特許を使うなら特許料を支払って使うべきであり 支払わなければ多額の損害賠償を支払わなければならない。 つまり、他社特許を無断で使用した場合、他社が特許を持っていたと 知っていようが知っていまいが、それは違法行為である。
時速40kmに制限されている道路を、時速60kmで走行すれば、 速度違反になる。仮に標識が暗くて見えなかったとしても、それは 運転者の不注意と言うことになる。知っていようが知っていまいが 違反なのである。 特許の場合、特許庁に行けば、どんな特許があるか公報が公開されて いる。今はオンラインでも確認できる。知らないでは済まされない。
イオンの行為は、速度違反をしたドライバーを検挙した警察に、 ケンカを売っているようなものだ。
・・・それに対してシャープがイオンに謝罪をしたらしい。 まぁ、イオンのような常識のない相手とまともにケンカするのも ばかばかしいと思ったのだろう。謝罪までする必要があったかは 別にして、子供でもわかるイオンの常識のなさに対して、シャープ ははるかに大人だったと言うことだろう。
私だって、頭のおかしい奴にケンカを売られてもまともには取り合わない。 それと同じことだろう。
S氏はニュースを見ていた。 S氏がテレビでニュースを見るのは珍しい。 いや、テレビを見ること自体が珍しい。 普段テレビのスイッチを入れるときは大概がビデオなどで 映画を見るときであって、ニュースを含め普通のテレビ 番組を見ることは滅多にないのだ。
S氏がテレビニュースを見ようと思ったのは、帰り道に パトカーや救急車がたくさん集まり、野次馬が黒山の人だかり になっている場所に出くわしたからだ。 野次馬の一人になにがあったのか聞いてみたのだが、その人も S氏と同じくなにがあったのか知りたくて立ち止まったらしかった。
S氏はしばらく様子を見ていたがなんの動きもなかったので その場を離れた。だがなにがあったのか気になったので テレビニュースを見てみることにしたのだった。
目的のニュースはなかなかやらなかった。 だが、気になることがひとつあった。
お昼休みに食堂で与党の代表が記者会見をしている場面を生中継していた。 S氏はあまり見ていなかったのだが、与党の幹部が不当に政治献金を 受け取っていたという疑いがかけられたことに関する記者会見であった。
会見の内容は、「マスコミ等で指摘の通り本来一つの団体もしくは個人 から1年間に受け取ることができる額以上の政治献金を受け取っていた ことを認めるものであった。 ただし、その幹部はその団体から複数回に分けて献金を受け取っており、 その時点ではその団体からの合計の金額が判っておらず、後日集計をして 上回っていることを確認。通常であれば余剰分は返還するのだが、この ときは、すでに年度が変わっており、その団体から手数料等が無駄になる ので、新年度分として扱って欲しいと言うことで返還しなかった。 節約した手数料についても新年度分の献金の一部として扱っており、 問題はないとの判断をしている。 ただ、本来であれば一度返還して改めて納めて頂くべきであり、厳重注意処分 とした。ということでしめくくられた。
これに対し、S氏が今見ているニュースでは、許された金額以上に 献金を受け取ったことを認める場面と、厳重注意処分にしたと言う ところだけを映しだしており、これでは昼の生中継を見ていなければ 与党の代表が開き直っているようにしか見えない。 これでは公平を謳っているテレビ局が情報操作をしているようなものだ。 これだからS氏はニュースが嫌いだった。
しばらく見ていると、S氏が昼間見た光景がテレビに映し出された。 それによると某ホテルで、人質事件が起きたことを想定した訓練が 行われていたとのこと。抜き打ちテストのように事前に職員はもちろん 住民にも知らされていなかったため野次馬がたくさん集まったと報じていた。 S氏は少しがっかりしたが、画面をよく見るとS氏がほんの少しだけ映って いるのを発見して、嬉しい気分で床についた。
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その頃S氏が見た現場では、政府の秘密組織の幹部がテレビ局の幹部と 話をしていた。 「こんなこと報道したら国民が不安になってしまいます。避難訓練と 言うことにしてありますからご安心下さい」 「おぬしも悪よのぉ。与党の幹部も我々の計画通り失脚間違いなしだ」 「えぇ、それもあなた様のお陰です」 テレビ局の幹部はそう言うと、重たそうなスーツケースを秘密組織の幹部が 床に置いたまったく同じデザインのスーツケースとこっそり交換したのだった。 テレビ局側のスーツケースの中身は与党の幹部が3年に分けても貰うことが 出来ないほどの多額の現金、そして秘密組織側のスーツケースには次の悪事の メモが1枚入れられていた。もちろんメモは、スーツケースから出すと、60 秒後に自動的に消滅するような仕掛けが施されていた。 この仕掛けはS氏が考え出したものを秘密組織がこっそり盗み出したものだった。
S氏は雨が好きであった。 だが、雨の中出かけるのは好きではなかった。 だから梅雨のこの時期S氏は出かけるのがとても億劫である。
S氏は傘をさして道を歩いていると、大きな水たまりがあった。 台風でも近づいているのだろうか? 激しい雨で、もう、靴もズボンの裾もびしょ濡れである。 S氏は気にせず水たまりに足を入れた。
「うわっ!」 S氏の身体が突然浮いた。
目の前にあぶくがいくつも見える。 水の中に浮かんでいるようだ。 上を見上げると水面が見える。 水たまりの中をのぞき込む子供の顔あ見えた。
どうやらS氏は水たまりの中に入ってしまったようだ。 まさかこんなに水たまりが深かったとは・・・ これでは水たまりではなく池ではないか。 どうして町中のアスファルトの歩道にこんな大きな池が広がっているのだろう。 いや、いくら何でもそんなことはないだろう。
これはS氏が突然小さくなってしまったに違いない。 その証拠に上に見える子供の顔はとても大きい。
子供がこちらを指さして誰かを呼んでいる。 S氏は突然恥ずかしくなった。 できればそっとしておいて欲しかったが、子供は容赦ない。 いや、助けを呼んでいるのかもしれない。
「やめろ」と言おうと思ったところで、ふと息をしていないことに気が付いた。 そうだ、水中だから息が出来るはずがない。 突然苦しさを感じて必死で水面に向かって泳ぎはじめた。 傘が邪魔だったので傘を投げ出した。
S氏はもともと泳ぎが上手くなかったのでなかなか水面が近づいてこない。 子供がこちらに手を伸ばしてきた。 必死でその腕を掴む。 子供が慌てて手を引いた。 その弾みでS氏は水面に顔を出した。
S氏は我に返ったように必死で空気を吸い込んだ。 どうやら足を滑らせて転んでしまい、気を失っていたようだ。 全身びしょ濡れで水たまりの横に倒れていた。 それにしても気を失っている間に嫌な夢を見てしまった。 いくら夢の中とは言え、水たまりの中に落ちるなんてどうやったら思いつくのだろう。 自分の夢のばからしさに呆れてしまう。 これだから雨の日は嫌いだ。
先ほどの子供が親を連れて戻ってきた。 「大丈夫ですか?この穴深いんですよ、何人もここで溺れてるんです。 まったく役所に何度も言って・・・」 S氏は身体を起こそうと手を水たまりにつこうとしたとたん、 再び水中へ転落したのだった・・・
S氏は読んでいた本を枕もとに置くと、スタンドの明かりを消して 布団に潜り込んだ。暗闇の中、月明かりが窓際を怪しく照らし出す。
そう、今日は満月だ。
S氏はなかなか寝付けなかった。 満月で血が騒ぐ・・・と言う訳ではなく、月の明るさが気になりだしたら 眠れなくなってしまったのだ。
月の明るさは今日に始まったことではない。当たり前の話だがS氏が 覚えている限り昔から明るかった。S氏に子供のころがあったのか どうか覚えていないが、月明かりで影絵を作って遊んだこともある。
太陽の光が月面に反射し地上に降り注いでいる。知識としては知っているし なんの不思議も感じていなかった。だが、今日はふいに「なぜこんなに 明るいのだろう」と思ってしまったのだ。
月をじっくり観察すると、真っ白である。きっと真っ白な土で出来ている ので、こんなに明るく反射しているのだろう。 でも・・・いったいどんな土で出来ているのだろう? 白い土なんて想像できない。 地上の土とそんなに変わるとは思えないが、地上にもそのような土はある のだろうか? S氏は自宅の庭を思い浮かべた。赤土である。そう言えば昔旅行で行った 先の公園の土は白かった。だが月のような白さではなくどちらかと言うと 黄色に近かった。 そう言えば月の石を博物館で見た事があるが白くはなかった。
そうか、太陽の光が明るすぎるので真っ白に見えるのかな? とっても明るい照明の下に手をかざすと、肌色の手が真っ白く見える。 きっとそれと同じなんだろう。太陽と月の距離を考えると、相当太陽って 言うのは明るいんだな。 でも、待てよ、地上ではどんなにお天気が良い日でもすべてのものが 真っ白に見えるなんてことはないなぁ。
S氏はベットの中から顔だけを窓の方に向けて、改めて月を見てみた。 満月だけあって、いつもよりも大きく感じる。とっても大きい。 月に吸い込まれそうな気分になる。 月はどんどん大きくなって窓枠からはみださん勢いだ。 S氏は月から目が離せなかった。 窓枠からはみだした月は部屋の中に侵入して、S氏を飲み込もうとする。 S氏は身動きが出来ず、ついに逃げ場を失ってしまった。 そのままS氏は月の明るい光にすっぽりと包み込まれた。
あたり一面真っ白な光に包まれてS氏は目覚めた。 年に1度あるかないかというほどの、とても気持ちの良い朝だった。
いったいどうしてしまったのだろう? 今日、さらに93件もの不具合があったと報道されていた。 93件とは・・・
先日、かみさんのクルマ、三菱ミニカをPTクルーザーに 買い換えたのだが、気になって三菱のHPをチェックしてみると、 我家にいたミニカに該当しそうなリコールが2件あった。 マニュアルミッションの不具合と4WDの不具合の2件
このうちどちらか一方は、年式からみて該当しないようだが これだけ不具合隠しがあると、その該当しない方も後日 「実は・・・」となるのではないかと疑ってしまう。
今日発表されたのは三菱ふそうの方であって、乗用車の方は 関係ないかもしれない。 だが、とにかく、かみさんのクルマを無理してでも買い換えて 正解だったように思われる。
三菱のクルマ、特にパジェロなどは良いクルマだと思っていたし なんとか信頼を取り戻して以前のように良いクルマをどんどん 作って欲しいと思っていた。 だが、ここまでくると・・・無理かなぁ〜。
S氏は、初心者マークを購入した。 いよいよ、正々堂々と公道を走行できるのだ。 この一ヶ月、クルマのことはかなり熟知した。 ディーラーのメカニックでさえS氏には敵わないだろう。 実は自宅の庭での練習中に大破してしまったS氏のクルマだが すべて自分で修理してしまったのだ。
壊れたエンジンは修理工場に行って、一番性能のよい中古の エンジンを貰ってきて載せてしまった。最初は入りきらなかった ので、エンジンルームを切って少し伸ばして入るようにした。 ボディーはすべて自分の好みで取り替えてしまった。
別に問題の無かった室内にも手を加えた。 メータ好きのS氏的には、速度計と回転系と燃料計だけでは 物足りなかった。水温計はもちろん、油温・油圧、電圧・電流 吸気温・圧、排気温・圧などなどなど、考えられるメータは すべてつけた。それらはすべて助手席に乗せたパソコンに 測定データを送信し、少しでも異常が見られると必要な情報だけ を、フロントガラス付近に取り付けたヘッドアップディスプレイに 表示するようにもした。 なんどもあちこちにぶつけて懲りたので、車体の周りには 監視カメラを取り付け安全に配慮し、天井に取り付けたレーダー によって、常時周囲を走行するクルマや自転車や歩行者を監視し 危険が迫ると自動的に速度を押さえたり、ハンドルを切ったりする。 さらに、監視カメラやレーダーの情報をもとに車庫入れも自動で 行ってくれる。 環境に配慮するため、排気ガスはトランクに設けた排気ガス浄化 装置で有毒な成分をすべて回収し、さらに二酸化炭素は同じく トランク内に設けた温室内の植物が可能な限り回収してくれる。 お陰でトラックのような形になってしまったが、S氏は気にしなかった。
さっそく初心者マークを貼るとS氏は運転席に乗り込んだ。 シートベルトが自動的に着用される。 「エンジンスタート」 S氏は言うと自動的にエンジンが起動する。 と、突然エラーランプが点灯する。
うっかりしていた。環境浄化システムが温まっていなかったのだ。 S氏はクルマから降りて環境浄化装置の暖機運転を行うため、 コンセントを挿しに行こうとする。 「シートベルト解除」 さらにエラーが発生する。 エラーを解除しないとクルマから降りられないように安全機構が ついているのだ。 「エンジン停止」 「エラー解除」 S氏は「プログラム変更しなくてはいけないな」と言いながら クルマから降りようとするとさらにエラーが発生する。 プログラムが勝手に書き換えられると困るので、プログラムが 書き換えられそうになるとエラーを発生するのだ。 「いや、うそうそ、変更しない」 エラーが解除される。
コンセントを挿して暖気を行う。 暖気が終わってしまえば、クルマのバッテリーで十分動くのだが 暖気が終わるまでは100Vが必要なのだ。
1時間ほどして十分に環境浄化装置が暖気運転を終えると ようやく、S氏はエンジンをスタートすることが出来た。 さっそくクルマを動かそうとDレンジにギアを入れる。 するととたんにエラー発生だ。 [油温が上がっていません][水温が上がっていません] [排気温度があがっていません]
「めんどくさいクルマだ」 [ピーッ!安全のためです] S氏はおとなしくギアをNレンジに入れなおした。
油温・水温・排気温度、すべてが上がったのを確認すると S氏は再びギアをDレンジに入れた。 サイドブレーキを解除し動き始めると・・・ [ぴーっっ!] [デフオイルの油温が低すぎます] [ミッションオイルの油温が低すぎます] [サスペンションが冷えています] [ブレーキが十分温まっていません]
「ったく!」S氏は声に出さないように注意していたつもりだったが クルマはS氏の表情を見逃さなかった。 [ピーッ!安全のためです]
S氏は今日の運転を諦めようと思った。 すかさずS氏の表情をクルマが読み取った。 [ピーッ!判りました、とりあえずエラー解除します。]
S氏はゆっくりと自宅の庭からクルマを出すととたんに 警察に呼び止められた。
1時間後、S氏のクルマは10m先の自宅までレッカー車で 運ばれていった。 さすがに改造しすぎだったようだ。
S氏は苦労の末、教習所の卒検を終えた。 路上試験に合格すると、さっそく高速教習などの 総仕上げが待っている。
今日の合格者は15名、ほとんどが高校生や大学生 など若い子ばかりだった。だがS氏一緒に高速教習を 受けることになったのはS氏と同世代の社会人ばかりの だった。一人はS氏と同い年の音楽家、もう一人は 少し年下のOLであった。3人とも卒検に合格した 開放感で陽気になっていた上、若い子達のノリについて いけずにうんざりしていたためか、すぐに意気投合した。
高速教習は、それまでの教習と違ってワキアイアイと した、まるで休日のドライブのような気分だった。 お天気もよく、風も心地よかった。 音楽家が運転しているときに何気なくとなりを見ると OLの笑顔がとても素敵に映った。 キラキラと輝く睫毛が印象的だ。 S氏は少し胸がドキドキして幸せな気分だった。 こんな風に胸がドキドキするのはとても久しぶりだった。
OLに心を奪われてしまったS氏だが、さすがにデートに 誘う勇気がでなかった。と、言うよりどうやって誘ったら 良いのか判らなかった。 「そうだ、やはり二人きりになれるシチュエーションで ないとなかなか誘いにくい。なんとか試験場に行く日を 聞き出して同じ日に行こう」
高速教習が終わった後、手続きが一通り済むまで3人で 雑談をしているときに、それとなく切り出した。 「試験上にはみんないつ行くんですか?」 どってことない質問だが、S氏的にはかなり勇気のいる 質問だった。なんとなく声が上ずってしまったような気が するが、咳払いをしてなんとかごまかした・・・うまく ごまかせただろうか、心臓が外に飛び出しそうなほど ドキドキしている。 「S氏はいついくんですか?」と、OLに言われ 赤面するS氏。 「え?あぁ、忘れないうちに・・・明日にでも」 「じゃぁ、私も明日行っちゃおうかな♪」 もう、倒れる寸前のS氏である。 「私も明日行こうと思っていたので、みんなで行きま しょう!」音楽家の提案に反対するわけにも行かず S氏はしぶしぶながら、だが顔には出さずに同意した。
すくなくとも明日もう一度OLさんに会うことができるのだ。 それだけで今晩は眠れないかもしれない。
翌朝、ほとんど眠れなかったS氏は朝早くから試験場へ向かった。 S氏の街の試験場はとても遠くて、電車とバスを乗り継がねば ならず、それでも試験の開始30分前だった。
さっそく、OLの姿を探すが見つからない。 それどころか音楽家の姿すら見えない。 バスは15分間隔であった。次のバスでこないと間に合わない。 落ち着かないS氏はうろうろとOLの姿を探しながら歩き回った。 15分後バスから降りる客を一人一人確認していたS氏は肩を落とした。
もう、受付をしなければ間に合わない。OLと並んで試験を受けたかった S氏はOLと一緒に受付をしようと思っていたのだが・・・
ひょっとしてタクシーで来るかもしれない。 試験開始の直前まで入り口で待ちつづけるS氏であったが、 ついにOLはあらわれなかった。
合格発表の後、笑顔の合格者の中、一人悲しげな顔で免許証の交付を 受けるS氏を気にとめる人は一人もいなかった。
******************************* その日の午後。 試験直前まで入り口でS氏を待っているOLの姿があった。 「S氏は私のこと好きじゃなかったのかしら」 音楽家はなんとかなぐさめようと思ったが、良い言葉が思い浮かばなかった。 そんなことよりもS氏のどこが良いのかが気になって仕方が無かった。
それはともかく、とことん運のないS氏であった。
1986年の今日、スーパーマリオブラザース2が発売された。 ゲームフリークではないが、スーパーマリオブラザースには はまった。
一度やり始めると、かっぱえびせん状態・・・ いや「やめられないとまらない」状態になってしまう。 大学生〜大人になってもそんな状態なので子供ころだったら どうなっていたことだろう。
ほんとうに子供の頃にあんなものがなくて良かったと思う。 あんなものがあったら、もっと親に怒られまくったことだと思う。
最近はもっとすごいゲームがあるようで、そんなものをやったら はまりやすい私は仕事に差し支えるほどはまりまくりだろう。
少し前まで少年が犯罪を犯し、その少年がゲームマニアだったり すると、最近の残酷なゲームが犯罪の引き金になったのでは ないかなどと、評論家のおじさんたちが言ったりする。 現実とフィクションの境目がなくなってしまうだのもっと もらしいことを言う。
我々がゲームをするときには親の目を盗むようにしてやったものだ。 「まだ、遊んでるのか、勉強しなさい、勉強!」 仕方ないので勉強をしているフリをしてゲームをする。 だが、現実とフィクションの境目がわからなくなるようなことは なかったし、人の痛みがわからなくなるようなことはなかった。
むしろ、相手の気持ちを思いやったり、相手の立場になって 考えることを親からちゃんと教わっていないような友達は ゲームなんかせずに、外でばかり遊んでいても残酷だったように 思う。もちろん、そんな子達でも、外でケンカをしたり 大人に怒られていくうちに経験上、どこまではやって良い ここからはやってはだめと言うことは学習していく。 ゲームとは関係ない。
むしろ、大人たちが十分に子供たちを理解せず、一元的な 管理をされることによって、ストレスが溜まり、判って いながらやってはいけないことをしてしまう。 そしてまた、大人たちに抑圧を受け、さらにストレスがたまって 悪循環に陥る。 それが徐々にエスカレートしていき、ついに警察のやっかいに なってしまう。
我々が子供の頃はたいがいそんな感じだったように思う。 普通に仲の良かったまじめな友達が、私の知らないところで 他の仲間たちと悪いことをしてしまうなんて言うときには たいていがそのような悪循環に陥ってしまっているような ときだった。
ゲームとかそう言うのは関係ない。 もちろん、悪いことの内容が、万引きや無免許運転で事故を 起こす程度だったのが、あの当時に今のようなゲームがあれば もっと凶悪な内容になっていたかもしれない。 だが、悪いことをした原因はゲームなんかでは絶対なかった。
それとも、我々の子供の頃とは違うのだろうか? そんなことはないと思うのだが。
昨日からニュースは、子供たちにインターネットのルールを 教えるべきではないかと言うようなことが盛んに言われている。 それでなにが防げるのだろうか?
少女の両親は、家ではおとなしく自分の気持ちを言い出せない 子だったそうだ。子供が素直に自分の気持ちを親に言えない。 だれに遠慮していたのか?なぜ遠慮していたのか?チャットで そのストレスを晴らそうとしていたのに、仲の良い友達に 裏切られますますストレスが溜まった。小さな子供には耐え きれなかったのではないか? インターネットのルールを教わっていたらそのストレスが 解消されたのであろうか?
なにが原因なのかは判らないが、インターネットのルール は教えるべきだとは思うが、まるでインターネットが事件の 原因とも取れるような的外れな意見にはうんざりさせられる。
まだインターネットがそれほど盛んではなかった頃、 我々はパソコン通信と言う手段でネットワークに 参加していた。
文字情報だけの世界は、時にバトルモードと言われる ネット上のケンカに発展することもしばしばみられた。 幸いにも私はあまり巻き込まれたことはないのだが、 一度巻き込まれてしまうと、こちらも先方も頭に血が 登ってしまい、際限なく続いてしまう。
ネットワーカーを気取っていても、文字だけの世界に 順応しきれていなかったために起る現象であろう。 いや、文字情報だけの世界であれば大昔からあった。
手紙だ。
だが、手紙と違い、頭を冷やす時間もなく文字情報 だけが相手に届いてしまう。やはり、頭を冷やす 時間が大事だ。 そこのところを上手く認識しないといけないのだろう。
あれから数年が経過し、ネットワークもかなりの進化を 見せている。常時接続が当たり前の現在、接続料金を 気にして、1秒単位で接続時間を節約していたのが 馬鹿らしく思えてくる。
情報量にしてもそうだ。 それこそ無駄な文章をアップロードしたりすると 「バイト数の無駄」などと言われてけなされたものだ。 だが、ブロードバンドが当たり前の今、バイト単位で 気にしていたファイル容量がいまではMバイト単位だ。
あっという間に届くメールに驚いていたのが、相手の 顔を見ながら会話が楽しめる時代になった。
もう、文字情報だけの世界でバトルをしていたのは、 大昔の話だと思っていたのだが・・・
事件の起きた給食の時間までにはお互い何度か顔を 合わせていただろうに、なぜ思いとどまることが 出来なかったのだろうか。頭を冷やすことは出来なかった のだろうか。
非常に残念な事件である。
いい加減、暑くて衣替えの時期だと思っていたが いざ、衣替えの日になってみるとこれがまた寒い。 まったく・・・
6月1日は衣替えの日。 24時間ニュース専門チャンネルのCNNが開局した日であり NHKが衛星放送を開始した日でもある。 どちらも最近のことのように思えるが、NHKの衛星放送は1989年 で15年も前の話であり、CNNの開局に至っては1980年と24年も まえの話である。もっともCNNを私が認識したのはもっとあとであるが 湾岸戦争よりはもっと前である。NHKの衛星放送と同じころであろう。 それでも15年も前である。
10年ひと昔とはよく言ったもので、最近のことのように思えても 10年以上前と思うと、「そんなに昔の話だったか」と思ってしまう。 情報の流れがはやい現代でさえそうなのだから、ゆったりと時間の 流れていた昔は10年と言っても今以上に長い時間だったのではない だろうか?
いや、本当に昔の方が今よりもゆったりと時間が流れていたのだろうか? 時代によっては今よりもダイナミックに時間が流れていたのではないだろうか?
戦国時代などは一つの戦で国自体が代わってしまうのだ。 運が悪ければ(良ければ?)、一生の内になんども戦に巻き込まれ、なんども 国が変わってしまう事だってあっただろう。おそらくそんなときには10年が ふた昔にもみ昔にも感じられたに違いない。
江戸末期から明治政府誕生までも人々の生活は極端に変化したに違いない。 日露戦争で日本はアジアの小さな国から、かなり背伸びをしつつも、 欧米諸国と肩をならべるようになり、太平洋戦争を間に軍国主義から 民主主義へとがらりと国の態勢が変わっている。
敗戦国日本は、急速な発展を遂げ、先進国と言われるようにまでなり、 バブルの崩壊で経済の構造が変わり、 ベルリンの壁の崩壊で世界の秩序が大きく変わった。
このように常に歴史は動きつづけている。 ほんとうに時間がゆっくりと動いていた時代などあるのだろうか?
長く続いた不況のなか息を潜めるように耐えてきた日本人だが、 小泉首相が北朝鮮に行ったことで、それまでうやむやになっていた拉致問題が 前進し、北朝鮮産まれの日本人が帰国した。朝鮮半島の情勢はどんどん変化 している。 今後、我々を取り巻く環境は加速度的に変化していくに違いない。
イラクに飽きたアメリカは、ほとぼりが冷めたらこんどは北朝鮮に矛先を 向けるだろう。朝鮮半島の情勢が変われば我々もうかうかしていられない。 韓国や中国の情勢も見据えながら、大陸との交流がますます盛んになるだろう。 そうなれば我々も日本と言う国に固執していられない。
暑いだ寒いだ言っている場合ではなく、急速に変化してく環境へと 衣替えが必要になってくるだろう。
そう、江戸時代があった。 このときばかりはほんとうにゆったりとした時間が流れていたであろう。 そんな時代に産まれていればよかったのだが・・・
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