井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2002年08月16日(金) オースティン・パワーズ ゴールドメンバー、プロフェシー、9デイズ

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
※一部はアルク社のメールマガジンにも転載してもらって※
※いますので、併せてご覧ください。         ※
※(http://www.alc.co.jp/mlng/wnew/mmg/movie/) ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』     
            “Austin Powers in Goldmember”
マイク・マイヤーズ脚本、主演のスパイ・パロディシリーズ
第3弾。                       
実は、僕は第1作は見ていなくて、第2作のときには、確か
『M:I2』に続けての東京フォーラムAでの試写会という
ことで、配給会社の力の入れようは感じたのだが、余りに下
品なギャグの連発にいささかげんなりしてしまったものだ。
従って今回は、ちょっと不安を感じながら試写を見に行った
のだが、これがなかなかの出来。特にプロローグでかなりぶ
っ飛ばしてくれるので、後はその勢いに乗せられて、あれよ
あれよという感じで見てしまった。           
もちろん下ネタもかなりあるにはあるのだが、前作ほど下品
ということもなく、何と言うかかなりスマートな作品になっ
ていた。もっともこれは僕の方が、マイヤーズのペースに馴
れてしまったという可能性もないではないが。      
物語は、またぞろ宿敵Dr.イーブルの悪事で、今回は小惑星
を誘導ビームで地球に衝突させ、人類を滅亡させようという
計画を巡って、過去と現代を股に掛けたオースティンの活躍
が繰り広げられるというもの。しかも今回は舞台の一つが、
東京なのだ。                     
この物語を、下ネタから真面目(?)なパロディまで満載し
て綴って行く訳だが、今回は父親役でサー・マイクル・ケイ
ンが登場。ハリー・パーマーのパロディには気付かなかった
が、エンディングには『アルフィー』の替え歌が流れるとい
った具合で、まあその程度にスマートだったということだ。
なお、東京のシーンでは、日本語の台詞が英語だとどう聞こ
えるかというギャグが連発されるのだが、この部分は字幕を
見ていると台詞が聞き取れなくなるし、台詞に集中すると字
幕が読めないしで、ちょっとフラストレーション。    
アメリカ人は字幕だけで面白がっているのだから、それでも
いいのだが、日本人としてはやはり気になる。どこかでシナ
リオの再録が出ることを楽しみにしたい。後は、福美と福代
という双子のギャグで、字幕はフクユとしなければならない
のも辛いところだ。まあ、末節のことではあるが。    
それから、トム・クルーズ始め、グウィネス・パルトロウ、
ケヴィン・スペイシー、ダニー・デヴィート、ジョン・トラ
ボルタらのカメオ出演が、これがただの通行人という程度で
はなく、半端でなく本当に物凄い。これだけでも一見の価値
はあると言えそうだ。                 
                           
『プロフェシー』“The Mothman Prophecies”      
ウエスト・ヴァージニア州ポイントプレザントのシルヴァ橋
で、1967年12月15日に発生した橋崩落の惨事をクライマック
スに、「蛾男の予言」と呼ばれる超常現象を追ったサスペン
ス作品。監督マーク・ペリントン、主演リチャード・ギア。
ワシントンポスト紙の記者の主人公は、妻の運転する車で事
故に遭う。そのとき妻は何かを見たと言い、やがて事故が原
因ではなかったが脳に腫瘍が見つかり、間も無く亡くなって
しまう。そして後には妻が病床で書いた無数の無気味な天使
の絵が残されていた。                 
2年後、主人公は取材に向かう途中で突然600kmもの空間移
動に遭遇、ポイントプレザントの町に到着する。そして最近
不思議なことが起り続けているという婦人警官の証言から、
自身の異状体験と妻の死との関連を思い取材を開始する。 
しかし憑かれたように取材する主人公に、デスクも匙を投げ
てしまうのだったが…。                
「蛾男」はチェルノブイリの事故も予言していたと言われ、
一説には宇宙人説も言われているそうだが、映画では結局そ
の謎は明かされない。しかし『隣人は静かに笑う』でも、圧
倒的な現実感を演出してみせた監督は、本作でも見事にその
手腕を発揮している。                 
ただし『隣人…』では、余りに冷酷な結末に唖然とさせられ
たが、本作では何となく希望が見えてくるところが好ましく
感じられた。                     
それから、クライマックスの橋の崩壊のシーンは、『ターミ
ネーター』などのFantasy IIのミニチュアワークで描かれて
おり、なかなかの迫力だった。             
                           
『9デイズ』“Bad Company”              
ソ連崩壊後、行方不明になっているポータブル型核爆弾。そ
の取り引きを巡る典型的な巻き込まれ型スパイストーリー。
CIAの潜入捜査官ケヴィンは、プラハで核爆弾回収の取り
引きに漕ぎ着ける。しかしその直後に襲われ、核爆弾の奪取
を狙う組織に殺されてしまう。ところがその死は隠され、C
IAは身代わりに任務を遂行させることを計画する。   
実はケヴィンには生まれてすぐに生き別れた双子の兄弟がい
たのだが、その男ジェイクはチェス・ハスラーとダフ屋を生
業とするお気楽な奴。しかしチェスの抜群の腕前と、メモも
取らずに切符を捌く様子はただものではない。      
そしてCIAに拉致されたジェイクは、ケヴィンの上司だっ
たオークスの指揮の下、9日間でケヴィンに成り済ます訓練
を始めるのだが…。                  
このケヴィン/ジェイク役をコメディアンのクリス・ロック
が演じるので、お笑いになるのかと思いきや、オークス役を
アンソニー・ホプキンスが演じて、軽妙な中にもしっかりと
した、しかもアクション映画になっている。       
確かにミスマッチの面白さみたいなものもあるが、全体とし
ては緊張感も心地よい上出来のスパイアクションと言えるだ
ろう。                        
特に、最初は素人を巻き込むことに反対というか、多分ケヴ
ィンへの思い入れの強すぎるオークスが、徐々にジェイクを
認めて行く変化の演じ方は、さすがにホプキンスが演じただ
けのことはあるという感じがした。           
それにしても、『トータル・フィアーズ』といい、この作品
といい、こんなにも簡単に核爆弾が取り引きされてしまって
良いのだろうか。                   



2002年08月15日(木) 第21回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 今回は久しぶりに記者会見の話題から。        
 8月5日に、17日から公開される『スクービー・ドゥー』
の主演シャギー役のマシュー・リラードとヴェルマ役のリン
ダ・カーデリーニ、監督のラジャ・ゴズネル、それに製作者
による来日記者会見が行われた。いつものように本編に関わ
る話題はここでは扱わないが、本作では前々回にも紹介した
ように、すでに続編の情報が解禁になっており、会見でもそ
の質問が出たので、その話題を紹介しておこう。     
 この続編では、前々回紹介したように主演の4人と監督に
ついてはすでに契約が結ばれているということだが、前々回
の情報と異なっていた点では、題名が“Scooby Doo 2”では
なく“Scooby 2”になっているようだ。         
 そしてその内容について振られた製作者は、「元々は完全
に秘密の計画で進めていたものだが、監督があちこちで勝手
に喋ってしまったので、後は監督に聞いてくれ」とのこと。
これに対してゴズネルは、ちょっと恐縮したような雰囲気で
「物語は、ミステリー社が過去にテレビシリーズなどで退治
したモンスターたちが復活し、一つの町を占拠している。そ
れを彼らが解決する」ものになるということだ。つまり、テ
レビアニメーションの2Dのモンスターが大挙して3Dで復
活してくる訳で、これは面白くなりそうだ。       
 一方、リラードは、本作が4度目の共演になるというフレ
ッド役のフレディ・プリンズJrとの関係について聞かれた際
に、「お互いそろそろ別々の道を歩みたいと思っているが、
5度目の“Scooby 2”と、できたら6度目の“Scooby 3”
はやりたい」ということで、どうやら『スクービー・ドゥー』
が3部作になる可能性は高そうだ。           
 それにしても、リラードは凄いハイテンションで会見をリ
ードしていたし、カーデリーニも映画の中のヴェルマとは違
って華のある、それでいてしっかりした感じをみせて、なか
なか良い雰囲気の会見だった。             
        *         *        
 以下はいつものように製作情報で、まずは待望の第3作の
監督が決定した。                   
 『ハリー・ポッター』シリーズの映画化で、現在製作中の
第2作“Harry Potter and the Chamber of Secrets”に
続く第3作“Harry Potter and the Prisoner of Azkaban”
の監督に、以前に紹介したアルフォンソ・キュアロンの抜擢
が正式に発表された。                  
 このシリーズでは、第2作までの監督はクリス・コロンバ
スが担当しているが、結局毎年1作ずつの監督を続けるため
には、その間ずっとロンドンでの生活が続くことになり、帯
同している家族がアメリカに戻りたいと言い出したのが降板
の理由のようだ。しかしコロンバスは、今後の作品に関して
も製作者として責任は負い続けるということで、言ってみれ
ば『スター・ウォーズ』の映画化におけるジョージ・ルーカ
スのような存在になるようだ。             
 ということで、コロンバスが後を預けられる監督の選考が
進められていた訳だが、最終的に当初から最有力と言われて
いたキュアロンに決着したものだ。これについてコロンバス
は、「アルフォンソのような、才能があって、人を興奮させ
ることの出来る監督に引き継いでもらえたことには、スリル
を感じている」という談話を発表している。       
 キュアロンは、以前にも紹介したように公開中の『天国の
口、終りの楽園。』での大胆な演出で話題を集めているが、
ハリウッドでは95年の『リトル・プリンセス』と97年の『大
いなる遺産』の成功が評価されており、これらの作品が共に
名作の映画化であったことも今回の抜擢に繋がったようだ。
 それと、実は『天国…』の公開に併せて監督の来日記者会
見があり、その時は他の作品に関する質問は封じられてしま
ったのだが。ちょうどワールドカップ開催中のときで、『天
国…』の中でもサッカーに興じるシーンがあるが、本人もサ
ッカーフリークであることを表明していた。その感覚が第3
作のクィディッチのシーンに活かされることを期待したい。
 なお、撮影は来年早々に開始され、公開は04年の夏の予定
になっている。                    
        *         *        
 お次は、またまたリメイクの話題がまとめて届いている。
 まず最初は、カナダの映画作家デイヴィッド・クローネン
バーグの出世作“Scanners”のリメイクが、『ブレア・ウィ
ッチ・プロジェクト』などのアーチザンの製作で行われるこ
とになった。
 81年に発表されたオリジナルは、相手の心を読むと同時に
相手の脳を爆発させることもできる超能力者たちの闘いを描
いたもので、当時の同系の作品の中では群を抜くセンスを持
った作品と言われ、その後の多くのフィルムメーカーの手本
となっている。しかし当時のクローネンバーグ作品は、いず
れも監督自身は権利を持っておらず、この作品を含む初期の
“The Brood”“Videodrome”などは、カナダで大手プロダ
クションを経営するピエール・デイヴィッドとレネ・モロと
いう人物が権利を保有しているということだ。      
 従って91年以降シリーズ化された作品にはクローネンバー
グは一切関与していないものだった。そして今回の計画も、
実は状況は変わっておらず、アーチザンとカナダの権利者た
ちとの間で契約されたものだ。因に、権利者たちは当初オリ
ジナルに基づくテレビシリーズの企画を練っていたところ、
アーチザンからリメイクの申し入れがあり、「オリジナルを
知らない観客にも受け入れられるような作品を作る」という
ことで契約が結ばれたそうだ。             
 脚本、監督などは未定だが、アーチザン側は「この手の作
品は観客を読み易い」とのことで、製作費は中級映画のレヴ
ェルで行くとしている。といってもオリジナルは典型的な低
予算作品だし、VFXの進化は20年前とは比べものにならな
いので、まあそれなりの作品になりそうだ。後は作り手のセ
ンスの問題ということだろう。             
 なお、アーチザンは『ブレア・ウィッチ』の大ヒットで一
躍注目され、その後は海外作品の配給やかなり意欲的な作品
も作っているのだが、いまだに「『ブレア・ウィッチ』の」
と前置きされる状態は変わっていない。その原因の一つは、
『ブレア・ウィッチ』の大ヒットの直後に即席で製作した続
編の失敗も影響しているということだが、現在はその失敗を
反省し、オリジナルの作家たちと再契約して『ブレア・ウィ
ッチ』の第3弾を作る計画も進んでいるそうだ。     
 それに併せての今回の“Scanners”のリメイクの計画とい
うことで、新たなジャンル映画のプロダクションという期待
もされているようだ。                 
        *         *        
 2本目は、以前にも1回紹介していると思うが、66年製作
のジョン・フランケンハイマー監督作品“Seconds”のリメ
イク計画で、同じパラマウントの製作で11月1日に全米公開
予定のSF大作“The Core”のジョン・アミエル監督の起用
が発表された。                    
 オリジナルは、ロック・ハドスンの主演で、整形手術で風
貌を変え、自分自身を抹殺して買い取った他人の人生を歩も
うとした男が、結局他人にもなり切れず、自分自身に戻るこ
ともできなくなって苦悩するというサイコスリラー。題名は
「2度目」という意味だが、それが複数形になっているとこ
ろがオリジナルの無気味さだった。           
 そしてこのリメイクの計画では、最初はリック・ジャフェ
の脚本から、アマンダ・シルヴァ、ロジャー・エイヴァリ、
さらにジョン・ブランカト、マイクル・フェリスらの脚本が
検討され、監督にも一時はジョナサン・モストウの名前も上
がっていたということで、決定までにはかなりの曲折があっ
たようだ。                      
 なお、今回発表されたアミエル監督は、93年の『ジャック
・サマースビー』、95年の『コピーキャット』、99年の『エ
ントラップメント』などの作品歴があり、そして新作は、ヒ
ラリー・スワンク演じる宇宙パイロットとアーロン・エック
ハート演じる科学者による地底探検という、かなり本格的な
SF映画。まあいろいろな傾向の作品をそつなくこなしてい
る感じだ。因に、93年の作品はフランス映画がオリジナルの
リメイクでもある。                  
 キャスティングなどは未定だが、来年早々の撮影が予定さ
れている。                      
        *         *        
 3本目は、68年イギリス製作のスパイスリラー“A Dandy
in Aspic”のリメイクをソニー傘下のコロムビアと製作者の
メイス・ニューフェルドが計画している。        
 このオリジナルは、日本では『殺しのダンディ』の邦題で
公開されているが、実は監督のアンソニー・マンが製作中に
死去したという曰く付きの作品。映画自体は主演のローレン
ス・ハーヴェイが引き継いで完成させたが、ベルリンを舞台
にした二重スパイの物語で、主人公は自分自身への暗殺命令
を受けてしまうというもの。元々話が複雑なところへ、それ
ぞれの側を描くシーンの切り替えが速すぎて、ガイドブック
によると「物語を追うのがほとんど不可能」という飛んでも
ない作品になってしまっている。            
 それでも、ガイドブックでは星2つが付いているというこ
とは、まずまずの評価ということになる訳だが、さてリメイ
クではこれをどのように料理してくれることか。脚本は、ア
シュレイ・ジャド主演の『ハイ・クライムズ』などを手掛け
ているユリ・ツェルツァーとカリー・ビックリーが6桁半ば
($)の契約金で担当することになっている。      
        *         *        
 コロムビアでは、もう1本、63年製作のミュージカル映画
“Bye Bye Birdie”のリメイクも検討されている。この作品
は、先日亡くなったジョージ・シドニー監督の絶頂期の作品
の一つで、元々はエルヴィス・プレスリーが兵役にとられた
際の騒動にヒントを得たとも言われるブロードウェイ・ミュ
ージカルから映画化されたもの。オリジナルは『アラビアの
ロレンス』に次いで70mmで製作された。なお、95年にはテレ
ビ化もされているようだ。ただし、オリジナルの内容をその
ままリメイクしてもピンと来ないような気がするが、どうす
るのだろうか。                    
        *         *        
 続いては、学園ものの映画の話題が2本届いている。  
 まずは、『スクービー・ドゥー』にダフネ役で出演してい
たサラ・ミッシェル・ゲラー主演で“A Semester Abroad”
という計画が発表されている。この作品は、ゲラーが出演中
のテレビシリーズ“Buffy the Vampire Slayer”の02−03
年シーズンの撮影終了後に予定されているもので、多分ゲラ
ーにとってはこれが最終シーズンとなった後での、本格的な
映画女優として歩み始める第1歩の作品になるということだ。
 物語は、ニューヨークの下町クイーンズで育った負けん気
の強い少女が、奨学金を得てロンドンのエリートが集う大学
に留学するというもの。当然そこでのカルチャーギャップな
どが描かれるものだが、紹介文では、「現地の勿体振った男
の子」などという表現もあるので、これをダフネのキャラク
ターで全部ぶっ飛ばしてしまうような作品になりそうだ。も
ちろんコメディ作品で、脚本はニナ・コールマン。    
 なお、製作はディープ・リヴァーという会社が担当。00年
に設立された同社では、ピアーズ・ブロスナン製作によるロ
マンティックコメディの“Laws of Attraction”という作
品を、ようやくこの秋に第1作として製作に漕ぎ着けたとこ
ろで、本作はその第2作として計画されているものだ。   
        *         *        
 学園ものもう1本は、00年の映画『ハイ・フィデリティ』
などにも出ていたギター奏者で歌手のジャック・ブラック主
演による“School of Rock”という作品が計画されている。
 この作品は、先に“Orange County”という作品が公開さ
れた主演のブラックと脚本家のマイク・ホワイト、それに製
作者のスコット・ルーディンが再びチームを組むコメディ作
品。物語は、ミュージシャンの主人公が、自分の母校で厳格
な校風の私立学校に代用教師として赴任することになり、そ
こで、彼のミュージシャンの雰囲気と、反骨精神が生徒たち
にいろいろな影響を与えるというもの。         
 何だか日本のテレビドラマにありそうなお話だが、いよい
よハリウッドがそういう作品を作り始めるということだ。製
作会社はパラマウント。監督は未定だが、早急に決定して来
年夏の公開を目指すことになっている。         
 因に、ブラックとゲラーは今年のMTVムーヴィアワード
の司会を共同で務めたそうだ。             
        *         *        
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 まずは上でも紹介したアーチザンの情報で、『ビューティ
フル・マインド』の脚本家のアキヴァ・ゴールズマンの製作
で、ヴィンセント・ヌゴーという脚本家による“Tonight,He
Comes”という作品が計画されている。この作品は、12歳の
問題児の少年と、堕落した元スーパーヒーローの関係を描い
たダークドラマということで、ヌゴーが最初に書き上げた長
編作品。そしてこの監督には、トニー・スコットの名前が上
がっているということだ。実はヌゴーは、以前にスコットが
製作したテレビシリーズ“The Hunger”でいくつかのエピソ
ードの脚本を担当したということで、その繋がりで今回の計
画となったようだ。なおアーチザンの首脳は、この脚本につ
いて「新世代のスーパーヒーローを生み出すような、不思議
な雰囲気に溢れたシナリオ」と評している。       
 『シュレック』に続くドリームワークスの長編アニメーシ
ョンで、05年公開予定の“Over the Hedge”という作品に、
ジム・キャリーが声優で初挑戦することになった。この作品
は、マイクル・フライとT・ルイスによる同名の人気新聞連
載マンガをアニメーション映画化するもので、脚色はビル・
マーレーのデビュー作の『ミートボール』などを手掛けたレ
ン・ブラム、監督は『アンツ』のティム・ジョンスンが担当
する。なおキャリーは、主人公の悪戯好きのアライグマで、
ちょっと悪のR.J.というキャラクターの声を演じる。また同
じく主人公で神経質なカメのヴァーンの声は、こちらも初挑
戦のゲイリー・シャンドリングが演じることになっている。
因に、ドリームワークスの長編アニメーションでは、03年に
“Sinbad”、04年に“Sharkslayer”が予定されている。  
 またまたヴィデオゲームからの映画化で、83年から続くミ
ッドウェー社のゲーム“Spy Hunter”の映画化権をユニヴァ
ーサルが獲得し、ザ・ロックことドウェイン・ジョンスンの
主演で映画化する計画が発表された。なお、オリジナルのゲ
ームは昨年PS2とXboxにも移植されたそうだが、元は
アーケードゲームで、一応のストーリーは、元戦闘機パイロ
ットの主人公が変形機能を持ったインターセプターを駆って
危険なスパイや暗殺者を捕まえて行くというもの。脚本はこ
れから検討されるということだが、ユニヴァーサルとしては
準備中の“Helldorado”に続く作品としたいということで、
以前に紹介したコロムビアで計画中のカメハメハ大王の計画
を阻止したい意向のようだ。              
 最後に続報で、以前に紹介したダレン・アロノフスキー監
督、ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、エレン・
バーンスティン共演のSF超大作“The Fountain”に、ワー
ナーからついにゴーサインが出た。僕はこの前の報道でゴー
サインが出たものと思っていたが、さすがに製作費7,000万
ドルに達する作品には慎重にならざるを得なかったようで、
その後も検討が繰り返されていたようだ。しかしついに計画
が承認されたもので、10月末からオーストラリアのシドニー
とクイーンズランドで撮影が行われることになっている。な
お物語は、ピット扮する一人の男の、過去から現在、そして
未来に続く500年間の愛と死の遍歴を描くものだそうだ。  



2002年08月02日(金) ジェイソンX+ミーン・マシーン+カット!+スズメバチ

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『ジェイソンX』“Jason-X”              
スプラッターホラーの代表作の一つ『13日の金曜日』のシリ
ーズ第10作。                     
と言っても、80年に第1作が発表されてから1、2年と置か
ずに続いていたシリーズが、前作の公開が93年ということは
9年ぶりの復活となったものだ。            
という訳で、この9年間ジェイソンは何をやっていたのか、
ということになるのだが、これがあっと驚きの冷凍保存で、
ついでに物語は、一気に400年後の未来へと行ってしまうの
だ。                         
一応、物語の発端を紹介しておくと、シリーズの都合上不死
身という設定になってしまったジェイソンには死刑の判決も
無意味となり、確実に殺せる時代が来るまで冷凍保存するこ
とが決定される。                   
しかし手違いで、ジェイソンの冷凍は行われるものの、一緒
に女性の研究者も冷凍され、さらに他の関係者が全滅したた
めに、その出来事自体が忘れ去られてしまう。      
そして400年後、今や人の住めなくなった地球に研究班が降
り、冷凍状態の2人が回収されるのだが…。       
この後の物語は、第2の地球に戻る宇宙船の中で勝手に解凍
したジェイソンが、『エイリアン』張りの恐怖をまき散らす
ことになる、というものだ。              
ところが、宇宙船を脱出しなければならなくなったときに、
解凍された女性が「転送ビームはないの?」と発言した辺り
から、おや?という感じになり、後は万能のアンドロイドが
活躍したり、ホロデッキ(ヴァーチャル装置)が登場したり
と、ほとんど『新・スタートレック』のパロディ。    
とは言うものの、随所にスプラッターシーンは有るが…。 
製作総指揮のショーン・S・カニンガムは第1作の監督から
ずっとシリーズに関わってきた人で、その愛情が込められて
いると言うか、バイオ装置でジェイソンを新たな姿に変身さ
せてみたり、ホロデッキでクリスタルレイクの湖畔を再現し
て大暴れさせるなど、お楽しみも盛り沢山で面白かった。 
                           
『ミーン・マシーン』“Mean Machine”         
身を持ち崩した元イングランド代表チームのキャプテンだっ
た男が、収監された刑務所で看守相手のサッカー試合に挑む
というイギリス映画。                 
このストーリーから、おやと思う人もいるかも知れないが、
実は本作は74年にロバート・オルドリッチ監督、バート・レ
イノルズ主演で映画化された『ロンゲスト・ヤード』からイ
ンスパイアされた作品。そのことは初めのタイトルにも明記
されている。                     
オリジナルは、アメリカンフットボールの花形選手だった男
が主人公で、それを実際にカレッジ時代に選手だったレイノ
ルズが演じたものだが、本作の主演のヴィニー・ジョーンズ
も元プロサッカー選手だったということで、披露されるテク
ニックは中々なものだ。                
それにしても、アメリカ映画がイギリス映画になって、アメ
フトからサッカーに変わるというのは判りやすい。そして試
合のシーンは、さすがサッカー母国イギリスの作品らしくル
ールの解釈は正確だし、ゲーム展開も理に叶っていて見てい
て気持ち良かった。                  
といっても、その試合が囚人たちにとって日頃のうっぷんを
晴らすものであることには変わり無く、かなりえげつないプ
レーの続出となるのだが、それでも何となく納得できるもの
になっているのも見事だ。中に登場する23の秘技というのを
全部知りたくなった。                 
イギリス映画らしく、ユーモアも決してからっとしたものば
かりではなく、内容的にかなり重たいものを持っているとこ
ろも、結構見応えが有る。『少林サッカー』とは違った意味
で、面白いサッカー映画だった。            
                           
『カット!』“Familia”                
スペイン映画界の登竜門と言われるゴヤ賞で、96年に最優秀
新人監督賞を受賞した作品。              
スペインの監督では、『アザーズ』のアレハンドロ・アメナ
ーバルの人気が高いが、本作のフェルナンド・レオンもかな
り捻った題材を自らの脚本でうまく作り上げている。   
父親の55歳の誕生日、その準備に忙しい家族たち。しかしち
ょっとおかしい。それもその筈、実は家族は一人暮しの男に
雇われた劇団のメムバーで、その日1日だけの家族を演じよ
うとしているのだ。                  
やがて開演、目覚ましのベルの音と共に男が登場し、家族は
予め渡された脚本に沿って芝居を始める。ところが男は脚本
にない質問をし始め、芝居は混乱、そこは何とかアドリブで
破綻無く切り抜けて行くのだったが…。         
予定外の展開で右往左往する劇団員たちの姿に、最初は場内
に笑いが沸き起こるが、やがて演じられている内容が、普通
の家庭でも起こる話であることに気付かされる。しかしそれ
は決して嫌みな感じのものではなく、常に暖かい雰囲気なの
が素晴らしい。                    
                           
『スズメバチ』“Nid de Guepes”            
12,000発の弾丸が飛び交うという02年製作のフランス製アク
ション映画。                     
飛び交う銃弾の数だけなら、ハリウッド映画ではもっと多い
ものも有るかも知れないが、フランス映画でここまでハード
なアクションが描かれるとは思わなかった。       
物語は、アルバニアマフィアの大ボスでヨーロッパ中の売春
組織を仕切る男が逮捕され、フランスで裁判を行うために護
送されてくる。空港で特別仕様の装甲車に移された男は、女
性でありながら特殊部隊の中尉というヒロインの指揮の下、
裁判の行われる町まで移動することになっているのだが…。
一方、町のチンピラを集めて関税倉庫に眠るラップトップを
強奪する計画が進行。近隣の携帯電話を不通にするなどの準
備万端、軽業まがいの進入方法で数千台のパソコンの奪取に
成功する。しかし、そこにマフィアの策略で追いつめられた
装甲車が逃げ込んでくる。               
外には重武装した数百人のマフィア、携帯電話は不通で本部
との連絡は取れない。                 
シチュエーションは問題なしとは言わないが、そこそこ理に
叶っているし、まあ通常のアクション映画ならこんなものだ
ろう。                        
それより、『クリムゾン・リバー』のナディア・ファレス、
『ピアニスト』のブノア・マジメル、『TAXi』のサミー
・ナセリの顔合せが良く、特にファレスのヒロイン像は、新
しいフランス映画を象徴しそうだ。           



2002年08月01日(木) 第20回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 まずは、ビディングウォー(bidding war)と呼ばれるオ
ークションの話題から。                
 エージェントの力が強いアメリカでは、予め脚本と監督、
場合によっては出演者までをセットにして組み上げた企画を
各社に提示して、その企画の買い取り価格を競らせることが
行われる。このやり方が製作費の高騰に繋がっているとも言
われるが、逆に言えば買い手側は先に内容を吟味してからオ
ークションに参加する訳だから、企画自体の完成度も高くな
ってくる。そして売り手側は如何にアピールするかをまず考
える訳で、この相乗効果で話題作が次々生まれ、業界全体が
活況になっているとも言えるものだ。          
 そんなビディングウォーの話題で、まずは『スパイダー・
マン』のサム・ライミが発表した“30 Days of Night”と
いう企画に、オークションで100万ドル台の契約が成立して
いる。                         
 この企画は、“Hellspawn”や“Fused!”などのコミック
スのライターで、最近“Savage Membrane”というグラフィ
ックノヴェルも発表し、準備中の“Spawn 2”の脚本もトッ
ド・マクファーレンと共同で手掛けているスティーヴ・ナイ
ルズという作家が発表した、同名の3巻本のコミックスを映
画化するもので、内容はヴァンパイアもの。       
 といっても舞台はアラスカの北極圏に近い町バロー。そし
て季節は冬。つまり『インソムニア』で描かれた白夜とは反
対に、ほとんど1カ月に亘って夜が続く状況の中で、町を守
る保安官の夫妻がヴァンパイアの襲撃に対峙し、彼らの活動
が止まる30日後の夜明けを待つというお話。ヴァンパイアも
ので夜明けを待つというのは定番だが、それが30日も続くと
いう訳だ。                      
 そしてこのコミックスに目を留めたライミが、たまたまナ
イルズとエージェントが同じだったこともあって製作に名乗
りを上げ、一気にビディングウォーの状況になったものだ。
ただしこの計画で、ライミは『スパイダー・マン』の準備に
忙しいために監督はせず、製作の形でしかタッチしないとい
うことだが、それでもライミ+コミックス=期待作というこ
とでこの価格になったようだ。             
 なおオークションには、ドリームワークスとMGM、それ
にドイツに本拠を置く独立系のセネター社が参加。ドリーム
ワークスはニュー・ラインで『ブレイド』を手掛けたマイク
ル・デ=ルッカが代表して獲得を切望したようだが、結局セ
ネターが契約を結ぶことになった。因にセネターは、5月に
ライミが企画を立上げた際に海外配給の交渉を受けており、
その時から企画に興味を示していたということだが、最終的
に映画の製作そのものも行うことになって、全世界の配給権
を得ることになった。                 
 契約の付帯条件で、脚本はナイルズが執筆するということ
だが、これから出演者や監督も選考する訳で、仮に今度の冬
に現地ロケとなると準備はかなり急ピッチになりそうだ。そ
れと日本配給はセネターとの契約になるようだが、これもこ
れからオークションということになるのだろうか。    
        *         *        
 ビディングウォーの話題もう1本は、00年の東京国際映画
祭でグランプリを獲得した『アモーレス・ペロス』の監督ア
レハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥと、脚本ギジェルモ
・アリアガ・ホルダンによる初めての英語作品“21 Grams”
に対してオークションが行われ、こちらは総製作費2,00万ド
ルという作品の世界配給権をユニヴァーサル傘下のフォーカ
ス・フューチャーズが獲得することになった。      
 映画の内容は、一人の女性の精神的、肉体的な存在価値の
探究を巡る物語で、元詐欺師の男と女のだまし合いの恋が描
かれるということだ。それにしても、題名の「21グラム」と
いうのは一体何の重さなのだろう。           
 なおこの計画では、先に映画の製作は独立系の会社で行わ
れることが決定されており、配給権のオークションでその製
作費の調達が行われたものだ。因にオークションには、他に
ミラマックスとニュー・リジェンシーが参加したようだ。 
 そしてこの契約が成立したことを受けて、今年の12月に予
定されている撮影開始に向けた出演者の交渉が進めれられて
いる。その交渉相手は、ベネチオ・デル=トロ、ショーン・
ペン、ナオミ・ワッツということで、一応事前の下交渉は進
められていたようだが、最終的にどうなるか。もちろん配給
権の判断にはこの配役も考慮されているはずだが、今のとこ
ろフォーカス側はノーコメントだそうだ。
 デル=トロとペンは『プレッジ』でも仲が良さそうだが、
ワッツとの関係はどうなのだろうか。          
        *         *        
 次はまたまたユースファンタシーの映画化の計画で、イギ
リスの作家ジョナサン・ストラウドが執筆する“Bartimaeus
Trilogy”という新シリーズのアメリカ出版権と映画化権に
ついて、出版部門も所有するミラマックスが300万ドルで契
約したことが発表された。              
 この契約は、元児童書編集者というストラウドが執筆した
シリーズ第1作の“The Amulet of Samarkand”の中から
120ページの抜粋と概要が提示されて行われたもので、物語
は、反抗的な若い魔法使いの弟子が、偉大な力を持つ魔法使
いから魔法のアミュレットを盗み出し、バーティミュウスと
名乗る古代の魔神を呼び出してしまうというもの。      
 原作者のストラウドは、「この時期『ハリー・ポッター』
のような物語を出すのは、亜流と見られるリスクが大きいこ
とは意識している」そうだが、同時に「自分の成長期に読ん
だC・S・ルイスの『ナルニア物語』のように、子供たちは
常にこのような物語を必要としている」とのことだ。また本
作は、若者の側からだけでなく魔神の側からも物語が語られ
ているということで、その点で『ハリー・ポッター』とは大
きく異なっているそうだ。               
 なおミラマックスでは、先にエオイン・コルファー原作の
“Artemis Fowl”の映画化権と続編4冊のアメリカ出版権を
獲得、その最初の続編“The Arctic Incident”は先頃出版
されたが、このシリーズ第1作の映画化についても、ロバー
ト・デ=ニーロ主宰のトライベカとの共同で、この秋から撮
影開始されることが正式に発表されている。       
 またミラマックスでは、製作前の経緯から『ロード・オブ
・ザ・リング』の権利の一部を所有し、配給収入からの分け
前を得ているが、それより自前の作品での大きな利益を目指
し、この分野への進出に期待を寄せているそうだ。    
        *         *        
 続いてはテレビシリーズからの映画化の情報で、ソニーで
長年企画されていた“S.W.A.T.”の映画化がついに実現する
ことになった。                    
 この原作は、75〜76年にABCで放送されたもので、シリ
ーズはロサンゼルス市警所属の特殊部隊の活躍を描いている
が、実際には60年代から活動していたという全米各地の大都
市の警察に所属する部隊の公式記録や隊員の実生活に基づい
て描かれており、放送当時には、かなりの反響を呼んだ作品
だった。因に、題名は‘Special Weapons And Tactics’
の頭文字を取ったものとされている。           
 そしてこの映画化は、元々は90年代の後半にトライスター
で立上げられたもので、一時はオリヴァ・ストーン製作で、
主演はアーノルド・シュワルツェネッガーなどという情報も
あったものだが実現はできなかった。          
 その計画が、ついにコロムビア映画として実現されること
になったもので、今回の主演には、サミュエル・L・ジャク
スンと『ジャスティス』のコリン・ファレル、それに『バイ
オハザード』の映画化にも出ていたミシェル・ロドリゲスが
紅一点の部隊員として出演することになっている。    
 また監督は、テレビシリーズ『ホミサイド』などの俳優出
身で、TVムーヴィの監督では実績のあるクラーク・ジョン
スンが長編監督デビューを飾る。そして脚本は、『ワイルド
・スピード』や、デンゼル・ワシントンにオスカーを導いた
『トレーニング・デイ』のデイヴィッド・エイヤーが担当。
つまり警察ものに実績豊かな顔ぶれが揃ったということだ。
 なお物語は、前の作戦に失敗して窮地にいるジャクスン扮
する隊長が、もはや失敗の許されない状況の中で、隊員を率
いて犯罪目撃者の警護の任務に就くというもの。スワットを
呼ばなければならないほどの警護というのが、一体どんなも
のか想像もつかないが、恐らくは組織絡みの犯罪の目撃者と
いうことなのだろうか。                
        *         *        
 もう1本、テレビシリーズからの映画化は、これも長年企
画されていたイギリス製人形劇シリーズ“Thunderbirds”
の実写版映画化が、03年初めの撮影開始を目指して進められ
ることになった。                    
 この原作は、65〜66年にイギリスで各60分の全32話が放送
されたものだが、元宇宙パイロットで巨万の富を築き上げた
ジェフ・トレイシーが、自らの財力と科学力で南海の孤島に
秘密基地を作り、国際救助隊と称して人々を災害から守ると
いうお話。日本でも66年にNHKで初放送がされているが、
そのミニチュアワークの素晴らしさは今再放送を見ても遜色
がないといえるものだ。                
 そしてこの計画も、イギリスのワーキングタイトル社の計
画として数年前から報告され、一時はピーター・ヒューイッ
ト監督、クリスティン・スコット=トーマスのレディ・ペネ
ロピー役ということで話題になったこともあったが、実現さ
れないまま今に至っていた。しかし、最近になってこの計画
の監督としてジョナサン・フレイクスが参加、これに対して
ワーキングタイトルの提携先のユニヴァーサルから製作承認
が出て、ついに映画化が実現することになったものだ。  
 なお、監督のフレイクスは、テレビシリーズ『新・スター
トレック』のライカー副長役で知られているが、その映画化
の『ファーストコンタクト』『叛乱』の監督を務めた他、最
近ではパラマウントとニッケルオディオン共同製作のファン
タシー映画“Clockstoppers”の監督も手掛けている。そし
て今回の映画化では、一時はかなり観客の年齢層を高く設定
した計画も検討されたが、最終的にテレビ放送当時の対象年
齢層(10歳以下)を中心にしたファミリーピクチャーとして
製作される予定だということで、フレイクスにはその方面の
手腕が買われているようだ。脚本はウィル・オズボーン。 
 それにしても、スコット=トーマスのレディ・ペネロピー
役というのは填りだと思っていたが、それは今回実現するの
だろうか。因に、同シリーズの映画化としては、オリジナル
そのままの人形劇によるものが、67年の『サンダーバード』
と、68年の『サンダーバード6号』の2作公開されている。
        *         *        
 前回は、ちょっと期待の計画としてワーナーの2大シリー
ズが合体する“Batman vs.Superman”の計画を紹介したが、
その後を追うように今度はフォックスから、こちらも2大シ
リーズ合体の計画が発表された。            
 発表された作品の題名は“Alien vs.Predator”。79年の
第1作以降、86年、92年、97年にそれぞれ続編が製作された
『エイリアン』シリーズと、87年と90年に製作された『プレ
デター』を合体させるという計画だ。と言っても、実はこの
合体は、すでにフォックスが99年と01年に発表しているヴィ
デオゲームで実現しているもので、今回の計画はそのヴィデ
オゲームを映画化しようというもの。          
 そこで監督には、『モータル・コンバット』や『バイオハ
ザード』でヴィデオゲームの映画化には実績のあるポール・
アンダースンが招請され、ゲームに基づいて彼自身が執筆し
た脚本の映画化が行われるということだ。        
 とは言うもののそれぞれのシリーズの関連作品であること
には変わりはなく、そのため製作者には、ジョン・デイヴィ
ス、デイヴィッド・ギラー、ローレンス・ゴードン、ウォル
ター・ヒル、ジョール・シルヴァという錚々たる顔ぶれが並
んでいる。因に、ギラーとヒルが『エイリアン』で、残りの
3人が『プレデター』の製作者だ。なおゴードンは『トゥー
ムレイダー』、シルヴァは『マトリックス』の製作者である
ことは言うまでもない。                
 ただし、ワーナーと違ってこれらのシリーズが復活すると
いうものではなく。一応、『エイリアン』に関してはリドリ
ー・スコットとシゴニー・ウィヴァーが話し合っているとい
う情報はあるようだが、取り敢えずは今回だけの計画のよう
だ。もっともこの作品のヒットで、この作品の続編が作られ
るという可能性はない訳ではないが。          
        *         *        
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 まずは続報で、前回報告した“Peter Pan”の実写版で、
主演のピーター・パン役にジェレミー・サムプターという13
歳の俳優の抜擢が発表された。これでフック船長役のジョナ
サン・アイザックスの剣戟の相手が決まった訳だが、前回の
発表ではこの剣戟シーンもCGIを駆使したものになるとい
うことで、13歳相手にワイアーワークというのもあまり考え
られないし、一体どんな剣戟シーンになるのだろう。   
 お次は“XXX”の公開が待たれるヴィン・ディーゼルに、
“Hannibal”の主演がオファーされている。と言ってもアン
ソニー・ホプキンスが演じた殺人鬼の話ではなくて、リドリ
ー・スコットが歴史ものを続けてやるのは嫌だと言った紀元
前3世紀の英雄の物語。カルタゴの名将ハンニバルは、象を
連れてアルプスを越え、ローマ軍を撃破したことで有名な人
物だ。なお、映画はロス・レッキーという人の原作によるも
ので、製作会社はリヴォルーション。当初はデンゼル・ワシ
ントンの主演という計画もあったようだが、生きの良い若手
アクションスターの起用が目指されているようだ。    
 これで前回紹介のザ・ロックのカメハメハ大王に続いて、
若手アクションスターによる歴史上の人物の映画化が競作に
なると、面白いことになりそうだ。           
 続いては、最近『スター・ウォーズ』のシリーズなど映画
作品の導入に力を入れているLegoの話題で、日本でも宣伝が
始まっているオリジナルのバイオニクルシリーズの映画化の
計画が、映画製作で提携しているミラマックスから発表され
ている。このシリーズのコンセプトは、邪悪な力に支配され
た島を舞台に、6人のヒーローが戦いを挑んで行くというも
の。すでにウェブサイトやコミックスでもストーリーが展開
され、03年秋にはヴィデオで第1作が発売される予定だが、
その後の04年にオールCGIによる劇場版の公開が計画され
ているということだ。                 
 因に、ミラマックスではマイクル・シェイボン原作による
“Summerland”という作品のCGIアニメーション化を計画
しているが、今回の作品はその試金石にもしたいようだ。 
 最後に、パラマウントに本拠を置くディーン・デヴリン主
宰のエレクトリック・エンターテインメントから、“Noah”
というSF映画の計画が発表されている。この作品は、ジャ
ン・スクレントニーとニール・タバクニックという脚本家に
よるもので、内容は非公開とされているが、若い科学者のサ
ヴァイヴァルへの戦いが描かれているということだ。そして
デヴリンは、この脚本に6桁($)の契約金を支払って映画
化権を確保したもので、「オリジナリティに溢れる作品で、
シリーズ化も目指せる内容を持っている」と高い評価をして
いる。なお、脚本の2人は、シルヴェスター・スタローンの
『ドリブン』にStoryでクレジットされている他、製作中の
“The Italian Job”の脚本のリライトも手掛けているとい
うことだ。                      


 < 過去  INDEX  未来 >


井口健二