井口健二のOn the Production
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2002年09月16日(月) ラストシーン、キスキスバンバン、ゴスフォードパーク、ズーランダー、容疑者

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
※一部はアルク社のメールマガジンにも転載してもらって※
※いますので、併せてご覧ください。         ※
※(http://www.alc.co.jp/mlng/wnew/mmg/movie/)   ※
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『ラストシーン』                   
『リング』の中田秀夫監督が、1965年の映画が斜陽になり始
めていた頃を背景に、映画へのオマージュを捧げた作品。 
主人公は、子役から上がってきた二枚目男優。大部屋時代に
結婚し、その後一人の女優とのコンビでヒット作を連発する
が、女優は仕事に見切りを付けて引退。残された男優にはも
はや若手の引き立て役の仕事しか残されていない。    
そんなときに槽糠の妻が交通事故で死亡し、男優は映画界か
ら姿を消す。                     
そして35年。撮影所は『The Movie』と称するテレビドラマ
の劇場版の撮影の真っ最中。そこにちょい役の俳優が出演不
能になり、その代役として元二枚目の男優が帰ってくる。そ
んな彼を覚えているのは、ほんの一握りの人達だけだったの
だが…。                       
『リング』のイメージからすると全く違う話で戸惑うが、僕
自身1965年頃の映画の観客としては、映画へのオマージュと
いうその気持ちは良く解る。しかしこれを今の映画の観客が
どう受けとめるか。特に中田監督ファンの意見を聞きたいも
のだ。                        
もちろん中田監督らしいテーマが無い訳ではないし、その点
での主人公の動きも理解はするが、それをメインテーマとす
るにはドラマが足りないと思う。            
特に小橋賢児が演じたアイドルの役は、多分主人公と同じよ
うな経緯でスターになっている訳だし、ちょうど彼に相対す
るものとして、その関係をもっと際立たせた方が面白かった
のではないか。そしてそのアイドルが最後は主人公が乗り移
ったような演技を見せる。そんな展開でも良かったのではな
いかとも思った。                   
実際OKカットになるシーンの小橋は、それまでと違う演技
をしていたように感じたし、その辺をもっと活かしたものに
して欲しかった。                   
まあ、オマージュという点を優先させると難しいのだが…。
実際オマージュは65年のシーンだけでも充分伝わるような感
じがしたし、後半はもっと現代のドラマが見たかったという
ところだ。                      
それから最後の「映画を絶対やめない」という台詞は、中田
監督の本人の言葉として受け取って良いのか、念を押して置
きたい。                       
なお本作の撮影は2000年に行われたもので、撮影は『SWエ
ピソード2』と同じHD-24Pで行われているが、これで全編を
撮影した最初の作品ということになるようだ。画質が多少気
になるが、初期の実験段階ということで了承したい。それよ
りこのような新機材に挑戦した監督の勇気をたたえたい。 
                           
『キス★キス★バン★バン』“Kiss Kiss (Bang Bang)”  
初老の元殺し屋の男と、33歳まで子供部屋を出たことの無か
った男が織りなすイギリス製のアクションコメディ。   
男は、テムズ側の川底に巨大な秘密基地を持つ殺し屋組織の
創設者の一人。創設時の仲間はすでに皆死亡し、腕が落ちた
と自覚した男は育て上げた弟子に後を任せて、引退を宣言す
る。しかし組織はそれを許さず、弟子に彼を消すことを命じ
るのだが…。                     
一方、引退した男は初めての堅気の仕事として密輸業者が海
外に買い付けに行く間の息子の面倒を見ることになる。とこ
ろがその息子は、父親の溺愛によって33歳まで子供部屋を出
たことが無かった。そして持て余した男は彼を町に連れ出し
てしまう。                      
ところがそこに組織の暗殺団が襲いかかる。大量の銃弾の飛
び交う中、彼らは危機を脱することができるのか。    
題名は、言うまでもなく「007」のこと。しかし物語は直
接は関係なくて、パロディになっている訳でもない。   
それより物語はもっとストレートに、多分まともな生活を送
ったことの無かった元殺し屋の男が、少年の心を持った男と
共に、自分を見付け出して行く姿を描いている。それは初老
の男が束の間取り戻す青春であったりもして、ちょっと甘酸
っぱい気分にさせられた。               
結末は、イギリス映画にしてはちょっと甘いかなという感じ
もするが、これはこれでほっとする結末ではあった。   
なお題名に付いては、イギリスでは「007」のこととして
辞書にも載っているらしく、かなり広く認知されているよう
だ。従ってイギリスでは、映画の題名にはおいそれと使える
ものではない訳で、原題に括弧が付いているのは、その辺で
「007」側から注文が付いたか何か、そのような理由があ
るのだろう。                     
                           
『ゴスフォード・パーク』“Gosford Park”       
今年のアカデミー賞脚本賞を獲得したロバート・アルトマン
監督のアンサンブルドラマ。              
1932年、イギリスの貴族が所有するカントリーハウス“ゴス
フォード・パーク”に人々が集まってくる。そこではきじ狩
りのゲームと、贅沢な料理が楽しめるのだが、時代は貴族社
会の終焉の頃、集まる人々にもいろいろな思惑がある。  
集まる貴族のほとんどはメイドや従者を連れており、館は階
上と階下に分けられて、階上では腹の探り合いのような会話
が、そして階下ではゴシップが渦巻いている。そんな中で館
の主が殺されてしまうのだが…。            
この物語を、マギー・スミス、ヘレン・ミレン、クリスティ
・スコット=トーマス、アラン・ベイツを始めとする大ベテ
ランに、若手の俳優を配して、見事なアンサンブルドラマが
展開する。                      
階上で優雅な食前酒や食事が進むとき、階下では戦場のよう
な慌ただしさでその準備や調理が進む。そして階上が食後の
会話の時間になると、ようやく階下での食事が始まる。しか
し会話の時間が終わるとメイドや従者は主人の世話に走り回
る。                         
それでもその間に階上での余興の歌を隠れ聞いたり、ゴシッ
プを告げあうといった楽しみもある。そんな中を新米のメイ
ドを軸に、その仕組みや人々の立場などが手際良く説明され
て、当時の様子が上手く描かれている。         
そして最後の犯人捜しが、これもまた見事なドラマになって
いて全体を締め括る。さすがにアカデミー賞を受賞する脚本
だと思わせた。                    
                           
『ズーランダー』“Zoolander”             
ベン・スティラー製作、原案、脚本、監督、主演のニューヨ
ークの男性モデル界をの実情(?)を描いたコメディ。  
正直に言って、「『オースティ・パワーズ』よりお馬鹿な映
画」という宣伝コピーで、ちょっと見に行く気を無くしてい
た。ああいう類の映画はたまに1本は許すが、続けて見よう
と思うものじゃない。公開は時期がずれるのだろうが、試写
は同時期だったのだ。                 
しかし時間の関係で見てしまった。それで見た感想は、本作
は、比較されている作品よりずっとまともで、良くできたコ
メディだった。                    
主人公はキメ顔でトップ街道を走り続けてきたニューヨーク
の男性モデル。しかし4年連続のトップモデル賞の受賞式の
目前に新人に追い上げられ、ついにトップの座を奪われてし
まう。傷心の彼は引退を決意、故郷の炭坑町に帰るが父親は
彼を冷たく追い返す。                 
そこへ今まで使ってくれなかったトップデザイナーからイメ
ージキャラクターへの出演の依頼が来る。しかしそれは彼を
洗脳して、児童保護法でアパレル界に打撃を与えるマレーシ
ア新首相の暗殺者に仕立てようとする陰謀だった。    
スティラーと共演のオーウェン・ウィルスンは『ザ・ロイヤ
ル・テネンバウムズ』(ウィルスンの原案)にも出ており、
それには乗れなかった僕だが、これはOK、最初から最後ま
でかなり楽しむことができた。             
物語自体はかなり使い古しのものだし、ギャグもそれほど新
しいとも思えないが、比較されている作品のような下品さは
ほとんど無いし、とにかく全体が親しみやすい感じで、好感
が持てた。スティラー一家や仲間たちが総出で支援している
感じも良い。                     
比較されている作品と同様、たくさんのゲストが登場してく
るが、エンディングの配役表で、himself、herselfと延々
と続くのは笑えた。                   
                           
『容疑者』“City by the Sea”             
ロバート・デ・ニーロ主演の警察ものと父子ものを併せたド
ラマ。                        
プロローグで「夕日に赤い帆」の歌と共に往年のロングビー
チの風景が写り、音楽が変ると現在の荒廃した風景になる。
自分の故郷の隣町にその海岸の名を冠したプールリゾートが
あり、この地名には親しみがあったので、その荒廃ぶりはち
ょっとショックだった。                
それはともかく、主人公はこのロングビーチの出身だが、妻
と子を捨てニューヨークで刑事となっている。ある日、麻薬
の密売人の死体が上がり、その住所がロングビーチだったこ
とから町に戻る必要が生まれる。その町には元の妻子が暮ら
している。                      
そしてその殺人犯を追う内に、その容疑者が自分の息子であ
ることを知る。やがて捜査を外された主人公のところに、捜
査に向かった同僚が殺されたという連絡が来る。父親として
何もしていなかった自分が、今できること、それは息子を逮
捕することだった。                  
当然、息子が警官殺しという重罪を犯しているはずはなく、
後半はその嫌疑を晴らすというサスペンスになるのだが、こ
れに主人公の父親も誘拐殺人罪で死刑になっていると云う事
実が加わってくる。                  
ストーリーは実話に基づいているということだが、本当に事
実は小説より奇なりという感じの物語だった。      
映画では、主人公の愛人としてフランシス・マクドーマンド
が出演している。これは多分フィクションの部分なのだろう
が、この役柄が一種のコメディ・リリーフになっていて、実
に巧みな感じがした。                 
大体、マクドーマンドにしてからが、『ファーゴ』の妊娠中
の女性刑事の役でオスカーを受賞しているのだから、何とい
うか警官の主人公の心情を良く理解していそうで、見ていて
安心感があるのも良かった。              
実は、この作品も9月11日の影響を受けて公開が延期された
ものだが、その手の宣伝をした作品が軒並みこけてしまった
ので、今回はそのことは伏せられているようだ。アメリカで
は、逆にこの時期に公開される訳で、その結果が注目されて
いる。                        



2002年09月15日(日) 第23回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 今回は最初に続報を2つ紹介しよう。         
 まずは、前回紹介したウォルフガング・ペーターゼン監督
の“Troy”で、この大作の主人公アキレス役を、ブラッド・
ピットが演じることが発表された。ピットは、98年の『ジョ
ー・ブラックをよろしく』では死神の役を演じたが、今度は
神の子という訳だ。なお、アキレスは女神テティスの子で、
トロイア戦争ではギリシア軍随一の英雄として、原作「イリ
アス」の中心人物の一人とされている。しかし最後はアポロ
ンの放った矢によって、不死身の身体の唯一の弱点だった踵
のアキレス腱を射られ死亡したというものだ。      
 まあピットの風貌なら、神の子でも問題なく演じられると
は思うが、ギリシャ神話というと、あの短いスカートのよう
な衣装が思い浮かぶ訳で、ピットはあれを着るのだろうか。
それとアキレスは不死身の英雄と言われる人物だが、いずれ
にしてもかなりのアクションシーンはありそうで、特に剣戟
シーンはかなり激しくなりそうだ。それをどのように演じる
か、ピットのアクションシーンも早く見てみたいものだ。 
 ということで、ペーターゼン監督の新作の準備は着々と進
んでいるようだが、ピットとワーナーでは、別に第18回で紹
介したダーレン・アロノフスキー監督、ケイト・ブランシェ
ット共演のSF大作“The Fountain”の計画も進んでいた。
この計画は、前回にも紹介したように、元々は昨年の秋に撮
影開始の予定だったものが、1年近く遅れてようやく動き出
したものだったが、実はこの計画に対しては、ワーナーから
の公式発表で製作延期が報告されたようだ。       
 ただし今回の発表では、ワーナーから「“The Fountain”
の計画を進められなくなったことを非常に残念に思う。アロ
ノフスキーは非常にユニークな視点と優れた才能を持った監
督であり、我々は彼との共同作業を今後も続けて行く」とい
うコメントが付けられており、同時にピットからも、「1年
半に亘ってこの計画を一緒に進めてきたので、今回のことは
私自身も非常に残念に思っている。ダレンには友情と尊敬の
気持ちを持っており、何時か“The Fountain”をやれる日が
来るまで、彼を励ましていきたい。」というコメントが発表
されている。                     
 つまり、計画は中止という訳ではないようだが、すでに進
んでいた計画を一度中断して再開するのは、最初から始める
よりも大変だという説もあり、前途は多難なようだ。しかし
この計画はピットも気に入っているようなので、アロノフス
キーには再三の延期にめげずに頑張ってもらいたいものだ。
 因に、アロノフスキーとワーナーの間では、バットマンの
誕生を描いた“Batman Year One”という計画もあり、当面
アロノフスキーはその計画を進めることになりそうだ。しか
しそうなると、前回でも紹介したようにペーターゼン監督の
“Batman vs.Superman”が04年の公開で、“Year One”の
公開がその翌年としても、“The Fountain”をやれるのは、
早くて05〜06年ということになりそうだ。         
        *         *        
 続報のもう1本は、これも前回紹介したニューライン製作
“Freddy vs.Jason”の計画で、主演に予定されていたブラ
ッド・レンフロの降板が報告され、その後任にジェイソン・
リッターという俳優の抜擢が発表された。        
 リッターは、この9月の第2週に全米公開されて、No.1ヒ
ットを記録したハイスクールスリラー“Swimfan”にも出演
しているが、このときはクレジットで6番目の配役だったか
ら、それが主演はかなりの抜擢と言えそうだ。なおアメリカ
では、後任者の名前の影響で、一部でレンフロがジェイソン
役だったという報道もあったようだが、前回も紹介したよう
にレンフロ→リッターは、「2大殺人鬼に挟まれて、果たし
て彼はエンドクレジットまで生き延びられるのだろうか…」
という役。                      
 因に、ジェイソン役についてはすでに撮影が始まっている
はずの9月中旬になっても公表されておらず、これはかなり
の隠し玉が用意されている可能性が高くなっているようだ。
そういえばジェイソンは、『ジェイソンX』でも大変な変身
ぶりを見せてくれたが、今度はもっと凄いことになっている
のかも知れない。                   
        *         *        
 お次は、またまたビデオゲームの映画化で、昨年末にアク
ティヴィジョン社から発売された“Return to Castle Wol-
fenstein”をソニー傘下のコロムビアで映画化。その脚本を、
コロムビア傘下のリヴォルーションが製作したこの夏のヒッ
ト作『トリプルX』のリッチ・ウィルクスが担当することが
発表された。                     
 ゲームの内容は、第2次世界大戦下、ナチ親衛隊長ハイン
リッヒ・ヒムラーの野望を阻止するため、アメリカ陸軍レン
ジャー部隊の兵士が秘密の研究施設のあるWolfenstein城に
向かうというもの。元々は92年に発表されたWolfenstein 3D
というゲームをリメイクしたものだが、オリジナルは3Dアク
ションゲームの最高峰と呼ばれ、言ってみれば先に映画化さ
れた『バイオハザード』の元祖のようなものだ。     
 そして物語では、まず兵士が捕虜になった城から脱出(こ
こまでがWolfenstein 3D)。そしてその後に、兵士は機密作
戦部隊に転属して再び城に潜入、研究施設を破壊するという
展開だが、ここで行われている研究というのが、オカルトや
遺伝子工学の集大成といった感じで、立ち向かう敵は、地獄
から蘇ったダークナイトや遺伝子操作による異形の生物たち
という具合。通常の第2次大戦の戦闘ものとはかなり違った
雰囲気の作品のようだ。                
 なおウィルクスは、現在は『トリプルX』の続編“X2”の
脚本を執筆中で、この作業が後2カ月くらい掛かるというこ
と。そしてその作業が終り次第、“Return to Castle Wol-
fenstein”の脚本に取り掛かるということだ。       
 因にゲームは、PS-2とXboxでの発売が年末に決定している
そうだ。                       
        *         *        
 最初の記事でも「イリアス」映画化の話題を紹介したが、
00年の『グラディエーター』の成功以来、歴史大作の映画化
の計画が次々に発表されている。            
 その例は、以前にこのページで紹介した“Alexander the
Great”や“Hannibal”、“King Kamehameha”と言ったと
ころだが、ここに新たに1本が加わってきた。北欧フィンラ
ンド出身のレニー・ハーリン監督から、9世紀のデンマーク
の王子の物語を監督する計画が発表されたのだ。      
 この計画は、ドリームワークスで計画されているコミック
スの映画化“Cowboys & Aliens”や“House of the Dead”
の脚本家クリス・ホウティが執筆した“Land of Legend”と
いう脚本を映画化するもので、舞台は9世紀のスカンディナ
ヴィア、主人公のデンマークの王子は、子供の頃に奴隷とし
て売り飛ばされ、15年経って母国に帰還、自分を過酷な運命
に陥れた者たちに復讐をするという物語だ。       
 そしてこの脚本をハーリンが主宰するミッドナイトサンと
いうプロダクションが入手、立案した企画を設立2年半のク
ルセイダーという製作会社に持ち込んで実現を目指すことに
なってもので、同社では「全ての年代の観客を対象にできる
ドラマとアクションに溢れた作品で、これこそ我社が求めて
いた作品」と紹介している。              
 なおクルセイダー社では、以前に紹介したレイ・ブラッド
ベリ原作“A Sound of Thunder”を、ピーター・ハイアム
ズ監督、エドワード・バーンス、キャサリン・マコーミック、
ベン・キングズレーの共演で、プラハで撮影中で、この作品
はワーナーが全米配給をすることになっている。また10月撮
影開始で、クライヴ・カッスラー原作のアクション・アドヴ
ェンチャーシリーズの第1作“Sahara”の映画化も進めてお
り、この作品の全米配給はパラマウントが担当するようだ。
 この他に同社では、リス・アイファンズ、ミランダ・オッ
トー共演の“Danny Deck Chair”と、ラッセル・マルケイ
監督で、ジェフリー・ラッシュ、ジュディ・デイヴィス共演
による“Swimming Upstream”という作品がポストプロダク
ション中。さらに86年の『愛は静けさの中に』でアカデミー
賞の脚本賞候補にもなった劇作家のマーク・メドフが監督デ
ビューするトルーマン・カポーティ原作“Children on Their
Birthdays”の映画化を今秋撮影開始で準備中だそうだ。  
        *         *        
 続いてはSF映画の計画をいくつか紹介しておこう。  
 まずは『インソムニア』を製作したアルコンから、SFの
要素もあるロマンティック・スリラーで、“Hindsight”と
いう作品の計画が発表された。この計画は、アレキサンダー
・トレスという脚本家のオリジナルに基づくもので、その内
容は秘密とされているが、情報ではタイムトラヴェルと低温
学を中心にした物語だということだ。低温学、つまり人工冬
眠とタイムトラヴェルの組み合わせというと、SFではロバ
ート・A・ハインラインの名作『夏への扉』を思い出すが、
映画はどのような物語が展開されるのだろうか。     
 因にトレスは、すでに“Hit the Misses”というアクショ
ン・コメディ作品をソニー傘下のコンラッドと契約している
他、超常現象を扱ったスリラーの“Indigo”という作品をミ
リアッドと、さらに“Mercury Effect”という脚本をワーナ
ーと契約しているということだ。また今回の作品は、アルコ
ンとワーナーとの5年間に10本の契約に従って、アメリカで
はワーナーが配給することになっている。        
 お次は、新人のスコット・スワンと、Webの映画ニュース
の執筆者としても知られるドリュー・マックィニーが提案し
た“Post Human”というアイデアが、リヴォルーション・ス
タジオで取り上げられ、映画化に向けて動き出すことが発表
された。このアイデアは、軍事研究所が兵士の新陳代謝を高
める技術を開発したことから始まるSFアクションで、リヴ
ォルーションでは彼らから口頭でアイデアの説明を受けるな
り、直ちに映画化の契約を進めることにしたということだ。
 そしてマックィニーは自らのWebページで、「これから脚
本の執筆を始めるが、自分は契約した会社がどのように作家
と接するかも心得ているし、この会社と一緒に仕事をできる
ことに興奮している」と心情を発表している。とは言えマク
ィニーは、すでに“The Ring”の内部試写にも立ち会って批
評を載せるほどの業界内部に通じた人物で、同時に映画作品
についても過去にはいろいろな発言をしているということな
ので、これから彼が作り上げる作品には、いろいろな意味で
の注目が集まりそうだ。                
 もう1本はフェニックス社で進められている“Warrior”
という計画を、ソニー傘下のコロムビアが取り上げ、共同製
作と配給を担当することになった。この計画は、W・D・リ
ッチャーという脚本家が執筆したもので、内容はこれも公表
されていないが、情報によると、ハイテクを搭載した無人の
戦闘機が機能不全を起こし、エリートパイロットで構成され
る有人の戦闘機部隊の主力を全滅させてしまう。そして生き
残った一人のパイロットに、そのハイテク機破壊の任務が任
されるが…、というものだそうだ。           
 なお、脚本のリッチャーは、78年のリメイク版“Invasion
of the Body Snatchers”や、スティーヴン・キング原作の
“The Needful Things”、それにジョディ・フォスターが監
督した“Home for the Holidays”などの脚本で知られてい
るということだ。                   
        *         *        
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 『トリプルX』でヴィン・ディーゼルの相手役を務めたイ
タリア女優アーシア・アルジェントがアメリカのエージェン
トと契約。本格的なハリウッド進出を果たすことになった。
アーシアは、イタリアンホラー監督ダリオ・アルジェントの
娘で、父親の新作『Sleepless』ではテーマとなる
歌の作詞も担当していたが、今まではロンドンのエージェン
トと契約して、その関係で何本かの英語圏の作品への出演も
していたようだ。その一方で、00年には自ら脚本、監督、主
演による『スカーレット・ディーバ』という作品も発表して
いる才女。従って今回の契約も、俳優だけでなく全ての分野
を網羅したものになるということだ。なおアーシアは現在、
監督第2作となる“The Heart Is Deceitful Above All
Things”という作品を準備中で、この作品は22歳のカルト作
家J・T・リーロイの短編集を映画化するもの。アーシアは
この作品でも、脚本と主演も務めることになっている。   
 『トータル・フィアーズ』ではベン・アフレックの相手役
を務めたモーガン・フリーマンが、ジム・キャリー、オーウ
ェン・ウィルスンの相手役を次々に務めることが発表されて
いる。まずキャリーとの共演は8月6日撮影開始の“Bruce
Almighty”で、キャリー扮するテレビのレポーターが神の怒
りを買ったことから飛んでもないことになるというコメディ
の神様役。トム・シディアック監督で、キャリーのガールフ
レンド役でジェニファー・アニストンも出演する。一方、ウ
ィルスンとの共演は“The Big Bounce”という作品で、ウィ
ルスン扮する流れ者がとある町で理想の美女に巡り会うが、
その前に地元の大立者が立ちはだかるという大立者の役。ジ
ョージ・アーミテイジ監督で、撮影は10月28日開始の予定に
なっている。                     
 ハーヴェイ・カイテルが製作、主演した『季節の中で』の
トニー・ブイ監督が、ワーナーで“Lazarus”という作品の
脚本、監督を手掛けることが発表された。この作品は、超常
現象を背景とした物語で、不良仲間の2人の若者が、古代ア
ジアの呪いによって互いに不倶戴天の敵になって行くという
お話。元々は“The Crow”シリーズの第4作として計画され
たものだったが、現在はシリーズからは独立して進められて
いるということだ。製作はエドワード・プレスマン。ただし
現状ではブイ以外のスタッフ、キャストは未定のようだ。 
 ジョン・マクティアナン監督で“The Booster”という作
品がインターメディアで計画されている。この作品は伝説的
な2人の盗賊が、冬の嵐の中でシカゴのシアーズタワー・ビ
ルの91階に外部から侵入しようとするもの。何か聞いただけ
でも壮絶な物語のようだが、ユージン・アイズィの原作で、
シェルドン・ターナーという脚本家が脚色を進めている。な
おターナーはもう1本、ワーナーでアリス・ブランチャード
原作の“The Breathtaker”という作品の脚色も手掛けてお
り、こちらは竜巻のときにだけ犯行を繰り返す連続殺人鬼を
追う、オクラホマの小さな町の警察署長の物語だそうだ。 
 トム・クルーズが主宰するクルーズ/ワグナーとインター
メディアの共同製作で“Suspect Zero”という作品が製作さ
れている。この作品のジャンルはファンタシー・スリラーと
いうことだが、内容は連続殺人の犯人を追うFBIのエージ
ェントが、同僚に疑惑を感じ始めるというもの。これでファ
ンタシーとはどういうことなのだろうか。E・イライアス・
マーヒッジ監督で、アーロン・エッカート、ベン・キングス
レー、キャリー・アン=モースが出演している。配給はパラ
マウント。因に、この作品の撮影はニューメキシコ州で行わ
れているが、この地での撮影は州政府の便宜が図られ、カナ
ダに行くより製作費が削減できるということだ。     
 最後に続編の話題で、97年にギレルモ・デル=トロがアメ
リカでのデビュー作として発表した『ミミック』の続編が、
インディ系の監督J・T・ピティの脚本、監督で作られるこ
とになった。この続編は“Mimic Sentinel”という題名で、
物語は狭いアパートに住む24歳の喘息持ちの若者が、自分を
蔑ろにするアパートの住人たちへの復讐のために、前作のモ
ンスターを蘇らせてしまうというもの。配役等は不明だが、
10月に撮影開始の予定で、ルーマニアで4週間の撮影が行わ
れることになっている。製作配給はディメンション。   



2002年09月02日(月) サイン、8人の女たち、ドールズ、トリプルX、スパイキッズ2、記憶のはばたき、ダウン

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
※一部はアルク社のメールマガジンにも転載してもらって※
※いますので、併せてご覧ください。         ※
※(http://www.alc.co.jp/mlng/wnew/mmg/movie/) ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『サイン』“Signs”                  
ミステリーサークルの謎を描いた『6センス』『アンブレイ
カブル』のM・ナイト・シャマラン監督作品。      
主人公は、妻を不慮の事故でなくして信仰を捨てた元牧師。
元マイナーリーグのホームラン王だった弟と、喘息が持病の
息子と、水について異常に神経を使う幼い娘と共に農場で暮
らしている。                     
そんな主人公のトウモロコシ畑にミステリーサークルが出現
する。それは誰かの悪戯か、それとも何かが起る予兆なのだ
ろうか。                       
物語については、映画を見ていただくのが一番良いが、『6
センス』がオカルトを逆手にとった作品、『アンブレ…』が
ヒーローコミックスを逆手にとったオタク映画だったとする
と、本作はSFの1ジャンルをある意味で逆手にとった作品
と言える。                      
出だしの音楽から、ちょっとレトロっぽく来るのだが、後半
はモロに50年代のその手のSF映画そのものという感じがし
た。                         
主人公が元牧師だったり、信仰の問題が絡むのがちょっと気
になる人もいるようだが、僕はシャマランが初めてSFを意
識してくれたことを素直に歓迎したい。         
                           
『8人の女たち』“8 femmes ”             
1917年生まれのダニエル・ダリューから、43年生まれのカト
リーヌ・ドヌーヴ、65年生まれのエマニュエル・ベアール、
79年生まれのリュディヴィーヌ・サニエまで、フランス映画
の各時代を代表する女優8人が織りなす舞台劇を思わせるダ
ークコメディ。                    
時代は1950年代、雪に閉ざされた郊外の大邸宅に、ロンドン
に留学していた長女がクリスマス休暇で戻ってくる。   
その家は企業家の主人のもので、普段家には、妻と次女、妻
の母親、妻の妹、2人のメイドが暮らしていた。しかし長女
の帰宅直後に、主人が書斎で背中を刺されて死んでいるのが
発見される。やがて主人の妹も現れ、8人による犯人捜しが
始まるのだが…。                   
邸宅に他人が出入りした気配はなく、電話回線は故意に切断
され、自家用車も動かない。さらに門も雪で開かなくなり、
塀を越えることもの不可能になる。そして8人の告発の仕合
いから、一家を巡るいろいろな問題が明らかにされて行く。
この物語に、8人の女優それぞれに1曲ずつの歌と踊りが添
えられ、時代を写したファッションと共に、華麗に且つダー
クに進行するというものだ。              
最後にはグランドフィナーレも用意されているし、構成は舞
台劇そのもの。その中で大女優たちが大演技を繰り広げる。
僕としてはダリューのカクシャクとした姿や、ドヌーヴが久
しぶりに歌って踊る姿を見られただけでも大満足といった作
品だった。                      
                           
『Dolls[ドールズ]』              
いろいろな意味で1作ごとに話題を提供する北野武監督の第
10作。                        
僕がこの映画が好きかどうかと問われれば、多分好きと答え
るだろう。しかしどこが良いかと問われたら、かなり答えに
苦しむことになりそうだ。               
映画は、3つの物語が錯綜するちょっと変形のオムニバス形
式になっている。                   
その一つ目は、近松の「冥土の飛脚」を下敷きにして、婚約
者を捨てて社長令嬢との結婚に走った男と、それを聞いて自
殺未遂の末に精神に異常をきたした女が、互いを赤い紐で結
び合わせて四季の中を彷徨う姿を描いている。これはかなり
前衛芸術映画風だ。                  
これに、事故で顔面に傷を負って引退したアイドルと、自ら
眼を潰し相手の顔が見えないようにして彼女に会いに行く男
の物語。それにやくざの親分になった男と、毎週土曜日に一
緒に弁当を食べた彼を待ち続ける女の物語を絡ませる。  
3つの物語は、どれも壮絶な愛の物語で、それはそれで良い
のだが、最初の前衛映画風の部分に比べると、他の2つの物
語がかなりシンプルで、そのギャップが何とも不思議な感覚
になる。多分狙いなのだろう。しかしこの構成自体は過去に
あるような気がする。                 
今までの北野作品は、僕の見た範囲では常に暴力の匂いがつ
きまとって、僕にはそれが苦痛だった。それはヴェネチアで
受賞した『HANABI』にしても、『菊次郎の夏』にして
も同じで、明らかにそういうシーンが続くであろう前作は、
僕は見に行かなかった。                
しかし本作では、皆無ではないが、今までのように、ただ描
写のためだけの殴り合いというようなシーンはない。多分そ
ういうシーンに頼らなくて良いという監督の自信の現れだと
思うが、それを僕自身は好ましく感じた。        
ただし前衛映画風の部分は、多分北野なりの芸術映画を目指
したのだと思うのだが、四季を写した画面はただ美しいだけ
で芸術にまでは至っていない。簡単に言ってしまえば、自然
の美しさと山本耀司が担当した衣装の凄さに明らかに負けて
しまっている。                    
他の物語の部分では、映像や音声にいろいろ工夫の凝らされ
たシーンもあって、それはそれなりに楽しめたのだから、肝
心の前衛映画風の部分でもっと何かやっても良かったのでは
ないかと感じた。                   
                           
『トリプルX』“XXX”                 
『ワイルド・スピード』のヴィン・ディーゼル主演、ロブ・
コーエン監督によるアクション作品。ディーゼルは本作の製
作総指揮も務めている。                
このホームページで最初に取り上げた話題がディーゼルのこ
とだったから、何となく愛着を感じる俳優だが、本作は2作
連続での同じ監督の作品ということで、息が合っているとい
うか、前作のイメージをうまく引き継いでキャラクターを作
っている。                      
今回の主人公はX−スポーツ、つまり過激な裏スポーツの達
人ということで、主人公の最初の登場シーンは、保守派議員
の車を盗んでカーチェイスの末に車ごと橋からダイヴ、その
ままベースジャンプの要領で逃走するというもの。    
つまり前作のストリートレーサーのイメージからうまく本作
につながるという仕組みだ。しかもその模様をヴィデオ撮影
し、ネットで販売するというしたたかぶりが本作の主人公の
キャラクターという訳で、若者狙いという線ははっきりして
いる。                        
この主人公が、冷戦崩壊後、まともなスパイだけでは任務が
果たせないと悟ったアメリカ国家安全保障局の、毒には毒を
という戦略の下、カリフォルニア州の三振法の適用から免れ
ることと引き換えにスパイのテストを受けることになる。 
そして主人公は合格し、チェコのプラハでアナーキー99と自
称する悪たちの様子を探る任務に着くのだが、その任務はそ
れほど簡単なものではなかった…、というものだ。    
ある種の巻き込まれ型のスパイ物だが、正直言って物語の方
はスパイ物の定番だし、それほど重要ではない。それよりも
最初と最後に設えられたアクションシーンの見事さが、アメ
リカでのこの映画の大ヒットの要因だろう。       
最初には上に書いたカーアクションとテストでの戦闘アクシ
ョン、そして後半には大雪崩を背景にしたスノーボードと、
さらに・・・という具合だ。しかもこれらが、一旦始まると
それこそ息を継がせぬ感じで次々に打ち出されてくる。  
『ワイルド…』は、言ってみればカーアクションだけだった
から、そこにCGを入れたりいろいろ工夫していたが、今回
は手を変え品を変えいろいろなアクションのオンパレードで
ストレートに楽しめる。アクションだけなら『007』の2
倍はありそうだ。                   
なおヒロイン役に、イタリアのホラー監督ダリオ・アルジェ
ントの娘で、自身も監督でもあるアーシアが共演している。
                           
『スパイキッズ2/失われた夢の島』          
      “Spy Kids 2: The Island of Lost Dreams”
ロベルト・ロドリゲスの監督で昨年大ヒットした作品の第2
弾。前作で大活躍した姉弟が再び登場するが、何せ子供が主
人公だから来年第3弾、再来年には第4弾の公開が予定され
ているということだ。                 
物語は、前作の活躍でOSSの正式部門となったスパイキッ
ズ。そのナンバー1はカルメンとジュニのコルテス姉弟だっ
たが、彼らにライヴァルが登場する。          
それは父グレゴリオと次期局長の座を争うギグルスの子供の
ゲイリーとガーティ。試作ツールを駆使した彼らの働きは顕
著で、ついにジュニは切れてミスを犯し、OSSをくびにな
ってしまう。                     
そこに謎の島の秘密を探るという最高級の指令がギグルス兄
妹に下り、カルメンの策略でその任務を横取りした姉弟は潜
水艇でその島に向かったが…。その島は奇怪な生物が棲む恐
怖の島だった。                    
前作は、アントニオ・バンデラスらの両親も多少活躍してい
たと思うが、本作では完全に子供たちだけが主人公になって
いる。しかもライヴァル役にもかなり実績のある子役を配す
るという念の入れようで、完璧なキッズ映画を目指したよう
だ。                         
なお、ゲストでインディーズ系の映画でお馴染みの怪優ステ
ィーヴ・ブシェミが登場するが、彼すらも毒気を完全に抜か
れた感じで子供たちの引き立て役に徹している。そしてこの
キッズ映画に、文字通りおもちゃ箱をひっくり返したような
大量のVFXを注ぎ込んでいるのだ。          
印象として監督、脚本、製作、編集、美術、撮影、音響、作
曲のロドリゲスは、大人の観客など全く眼中にないのではな
いかと思う。ひねた大人の視線などを気にすることなく、完
全に子供だけを対象にした作品を作り上げているという感じ
がした。                       
だから観客も、童心に帰って純粋な気持ちで楽しまなくては
いけない。それが出来れば本当に楽しい映画なのだから。 
因に、副題はH・G・ウェルズの『モロー博士の島』を33年
に映画化した“The Island of Lost Souls”から来ていると
考えられ、従ってブシェミが演じるのはモロー博士というこ
とだろう。中の台詞もそれに準えている気がした。    
                           
『記憶のはばたき』“Till Human Voices Wake Us”    
少年期に負ったトラウマが、不思議な現象を呼び起こすオー
ストラリア映画。                   
主人公のサムは父子家庭に育ち、父親と離れてメルボルンの
学校に通っているが、休暇で故郷に帰ってくる。そこには幼
なじみのシルヴィも待っていた。足に障害のあるシルヴィだ
ったが、聡明な彼女とサムは本当に心の通い合う友だった。
ダンス集会の夜、踊れない彼女を湖水の水面に浮かべ、二人
は星空を眺め続ける。しかし流れ星を見たその時、彼の手を
離れたシルヴィは湖水に沈み行方不明になってしまう。遺体
のない葬式、彼女の親も事故だと諭すが、彼には深いトラウ
マが残る。                      
やがてメルボルンで精神科医として大成したサムは、死去し
た父親の遺言で遺体を葬るために事故後初めて故郷に戻って
くる。その故郷へ向かう列車で、彼はルビーと名乗る不思議
な女性と遭遇する。                  
次にサムは彼女が鉄道橋から身を投げるのを目撃、救出する
が彼女は記憶を失っている。その彼女を生家に連れて行き、
看護を始めたサムは、彼女の奇妙な行動に戸惑わされる。そ
して彼女がシルヴィの愛読していたT・S・エリオットの詩
を暗唱し始め…。                   
結末はいろいろに解釈できるが、配給会社は心の癒しと取り
たいようだ。僕にはもっと恐ろしい結末も想像できるが…。
いずれにしても不思議な雰囲気を持った作品だったし、多分
ほとんどの観客の心は癒されそうだ。          
                           
『ダウン』“Down”                  
オランダの映画作家ディック・マースがニューヨークを舞台
に監督したアメリカ、オランダ合作のホラー作品。    
舞台はNYのランドマークと呼ばれるミレニアムビル。  
102階建てのこの近代高層ビルで、エレヴェーターの運行異
常が頻発する。それは最初は、階の中間に停止して扉が開か
なくなる程度のことだったが、やがて人の命に関わる事態と
なってくる。                     
主人公のマークは技術者としての腕は確かだが身持ちは…、
という男。その彼が仲間に誘われてエレヴェーター保守の仕
事に就き、現場にやってくる。そして最初は異状を発見でき
ないのだが、事態は悪化の一途をたどり、ついには自然では
ありえない現象が起こり始める。            
ということで、いわゆるオカルトホラーの雰囲気で始まるの
だが、後半はマッド・サイエンティストの存在が明らかにな
り、テロ事件の疑いから、ついには軍隊まで動員される事態
に発展する。                     
とまあ、展開はかなり強引なのだが、これが結構テンポ良く
作られていて、その辺の上手さは合格だろう。さすがに処女
作で、過去の受賞者にスピルバーグ、キャメロン、ピーター
・ジャクソンらが並ぶアヴォリアッツ映画祭のグランプリを
獲っただけのことはあるというところだ。        
なお、主人公に絡む女性記者のヒロイン役で、今評判のナオ
ミ・ワッツが共演。日本ではこれが売りになりそうだが、実
はその脇を、ダン・ヘダヤ、マイクル・アイアンサイド、ロ
ン・パールマンという、SF映画やアクション映画ファンに
はお馴染みの顔ぶれが固めていて、中盤でこの3人が並んで
登場するシーンには思わず拍手をしたくなった。     
01年の作品で、撮影は9/11以前なのだろう。美しいNYの
夜景が何度も登場する。ただし後半にはツインタワーのこと
もあるからなどという台詞も出て、ちょっとその辺りは、悪
い意味ではなく不思議な感じに捉らわれた。       




2002年09月01日(日) 第22回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 最初は、第19回の“Batman vs.Superman”、第20回の
“Alien vs. Predator”に続いて、またもやシリーズ合体
の話題で、今回はニューラインから“Freddy vs.Jason”の
計画が正式に発表された。                  
 この作品は題名の通り、『エルム街の悪夢』のフレディ・
クルーガーと、『13日の金曜日』のジェイソン・ボーヒーズ
が対決するというものだが、実は元々はパラマウントでスタ
ートした『13金』シリーズが、89年の“Part VIII”の後で
第1作を手掛けたショーン・S・カニンガムに企画が買い戻
され、製作会社が『エルム街』を抱えるニューラインに移さ
れてからずっと噂されていたものだ。従って今まで紹介した
各作品の中では最も古くから計画されていたことになる。 
 因に、それぞれのシリーズの歴史を辿っておくと:   
 先にスタートしたのは『13日の金曜日』で、まず80年にカ
ニンガム監督による“Friday the 13th”が登場、81年、82
年にスティーヴ・マイナー監督による“Part 2”(Part
2)、“Part 3”(Part3)が続き、84年にジョセフ・
ジトー監督による“The Final Chapter”(完結編)が登場
する。しかし85年にダニー・スタインマン監督による“Part
V: A New Begining”(新・13日の金曜日)が公開され、さ
らに86年にトム・マクローリン監督による“Part VI: Jason
Lives”(Part6ジェイソンは生きていた)、88年にジ
ョン・カール・ビークラー監督による“Part VII: The New
Blood”(Part7新しい恐怖)、89年にロブ・ヘダン監
督による“Part VII: Jason Takes Manhattan”(Part
8ジェイソンNYへ)が公開される。ここまではパラマウン
トが製作した。                    
 そして製作権がニューラインに移り、93年にアダム・マー
カス監督による“Jason Gose to Hell: The Final Friday”
(ジェイソンの命日)が公開され、日本では今年公開された
01年製作の“Jason X”(ジェイソンX)で9年ぶりにジェ
イソンが復活したものだ。なお、ニューラインに移ってから
は、題名から“Friday the 13th”が取れている。     
 一方、『エルム街の悪夢』は、84年ウェス・クレイヴン監
督による“A Nightmare on Elm Street”でスタートした。
そして85年ジャック・ショルダー監督の“Part 2: Freddy's
Revenge”(フレディの復讐)、87年チャック・ラッセル監
督の“Part 3: A Dream Warriors”(惨劇の館)、88年レ
ニー・ハーリン監督の“Part 4: The Dream Master”(ザ
・ドリームマスター最後の反撃)、89年スティーヴン・ホプ
キンス監督の“Part 5: The Dream Child”(ザ・ドリーム
チャイルド)と続き、90年にレイチェル・ターラレイ監督に
よる“Freddy's Dead: The Final Nightmare”(ザ・ファ
イナルナイトメア)が公開されてシリーズは完結した。     
 ところが、94年再びクレイヴン監督による“Wes Craven's
New Nightmare”(ザ・リアルナイトメア)が登場。しかし
この作品は第1作の撮影を再現しつつ、現実の世界とフィク
ションの世界とを交錯させたもの。長年のファンへのプレゼ
ントのような感じで、ある意味ではクレイヴンによる作品へ
の鎮魂歌のようなものだと思われた。          
 つまりこの時点では、すでにニューラインによる『13金』
の新シリーズが始まっていた訳で、多分今回の“Freddy vs.
Jason”の計画も企画がスタートしていたと考えられる。そ
こでそれらのことも踏まえて、クレイヴンが自ら生み出した
シリーズに最後の鼻向けをしたのではないかと思えるのだ。
また、その後クレイヴン監督は、『スクリーム』シリーズに
向かうことになる。                  
 そしてついに長年の企画が実現されることになったという
訳だ。なお“Freddy vs.Jason”の製作は『ジェイソンX』
に続いてカニンガムが当る。ここで敢えてフレディの名前を
前にしている辺りに、カニンガムの思いやりが感じられると
ころだ。脚本はマーク・スイフトとダミアン・シャノン、監
督には香港出身のロニー・ユが起用され、9月9日にカナダ
のヴァンクーヴァで撮影開始となっている。       
 という新作だが、さらにこの作品にブラッド・レンフロの
主演が発表された。『依頼人』などではナイーブな演技が売
りのレンフロだが、2大殺人鬼に挟まれて、果たして彼はエ
ンドクレジットまで生き延びられるのだろうか…、というと
ころだ。なお、フレディ役はシリーズ全作でこの役を演じ、
今度で8回目になるロバート・イングランドだが、ジェイソ
ン役については8月中旬の発表では未定となっていた。9月
9日の撮影開始ではそろそろ決まっているはずだが、何か隠
し玉が用意されているのかも知れない。         
 なお新作のストーリーについては全く明らかにされていな
いようだが、まさか『ジェイソンX』の続きという訳には行
かないだろう。しかしカニンガムが一体どんな仕掛けをして
くることか、あの『ジェイソンX』の後だけに期待が膨らむ
ところだ。                      
        *         *
 お次は、リメイクというか、71年に発表されたサム・ペキ
ンパー監督の問題作『わらの犬』(Straw Dog)に基づく 
“Fear Itself”という作品を、『サイアム・サンセット』
のジョン・ポルスン監督で製作する計画がミラマックスから
発表された。                     
 この作品では、元々はゴードン・ウィリアムスという作家
による“Siege at Trenchers Farm”という原作があるよう
だが、71年の映画化では、ダスティン・ホフマンとスーザン
・ジョージ扮するアメリカ人の学者の夫妻がイギリスの片田
舎に引っ越してくる。しかし村人とのちょっとした行き違い
から対立が始まり、最初は嫌がらせ程度から、最後には集団
暴行に至るというもの。特にその中での妻に対するレイプシ
ーンのリアルさで物議を醸したが、実は村人側を描くことを
ほとんど排したことで、恐怖感を見事に高めた脚本と演出も
高く評価されたものだ。                
 なお、オリジナルの撮影はイギリスで行われたが、物語か
らお判りのように、イギリスでは特に問題となり、実はアメ
リカ公開から30年経った最近になって、ようやくヴィデオで
の初リリースが行われたということだ。         
 そしてこの作品に基づく新作が計画されている訳だが、今
回のストーリーでは、主人公のカップルはニューヨークから
メイン州に引っ越してくることになるようだ。またこの脚本
をスチュアート・ブラムバーグが執筆している。なおブラム
バーグは、『僕たちのアナ・バナナ』などのエドワード・ノ
ートンが監督主演する“Keeping the Faith”の脚本も手掛
けているが、この作品の製作を担当したホーク・コッチと、
ブランバーグ、それにノートンが今回の“Fear Itself”の
製作を担当するようだ。                
 また、今回の作品について製作者のコッチは、「独自性の
ある作品だが、恐怖を題材にした作品であることは認める。
フィンチャーの『パニック・ルーム』や、シャマランの『サ
イン』の観客に受け入れられる作品になるだろう。その方面
でのポルスンの手腕に期待する」としている。      
 因に、ブラムバーグとノートン、それに監督のポルスンは
同じエージェントに所属しているようだ。また『サイアム・
サンセット』は、今年の9月6日にようやくアメリカ公開が
行われるそうだ。                   
        *         *        
 続いては、『ハリー・ポッター』の脚本家スティーヴ・ク
ローヴスと、ブラッド・ピットが手を組んでヤングアダルト
向けの冒険映画を撮る計画がワーナーから発表されている。
 この計画は、マーク・ハッドンという人の原作で、来年6
月に出版が予定されている“The Curious Incident of the
Dog in the Night-Time”という小説を映画化するもの。物
語中心は、「シャーロック・ホームズ」が大好きな15歳の少
年が、隣家の犬が庭仕事の道具で殺された事件の犯人を捜し
出すというものだが、同時に少年の大人への成長が見事に描
かれているということだ。               
 そしてこの映画化を、先にワーナー傘下にプロダクション
を設立したピットと、『ハリー・ポッター』のデイヴィッド
・ヘイマンが組んで製作することになり、さらにクローヴス
が脚色と監督を担当することになったものだ。因にクローヴ
スは、00年『ワンダー・ボーイズ』の脚本でオスカー候補に
なっているが、その前には『ファビュラス・ベイカーボーイ
ズ』や、『フレッシュ・アンド・ボーン』の脚本監督として
も知られる。また、アルフォンソ・キュアロンが監督する第
3作『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』の脚本はすで
に書き上げてあるそうだ。               
 なお、今回の計画は、ブラッド・ピットと、製作者でロバ
ート・デ=ニーロの新作“City by the Sea”やグウィネス
・パルトロウの“A View From the Top”などを手掛けるブ
ラッド・グレイという、2人のブラッドが設立した新会社と
ワーナーとの3年契約に基づくもの。因にグレイは、パロデ
ィ作品の“Scary Movie”の製作者でもあるようだ。    
 一方、ピットは『ファイト・クラブ』から『オーシャンズ
11』まで製作者として名を連ねているが、いずれも自分の主
演作で、純粋に製作だけという経験はない。従って今回の作
品では、製作者としてのクレジットは間違いないが、今のと
ころ出演があるかどうかは不明のようだ。まあ15歳の主人公
を演じられる訳はないが、カメオでも良いから出てくれるこ
とを期待したいところだ。               
        *         *        
 もう1本、ワーナーから待望久しいテリー・ギリアムの新
しい計画が公表されている。              
 ギリアムの新作は、98年の『ラスベガスをやっつけろ』以
来ということになるが、まああれはちょっとという人には、
95年の『12モンキーズ』以来ということになる。なおこれら
の作品と『未来世紀ブラジル』はいずれもユニヴァーサルで
製作されたものだが、特に『ブラジル』に関しては、いろい
ろなトラブルがあったことは知られるところだ。     
 しかしその後、00年に計画した“The Man Who Killed Don
Quixote”が、撮影開始3週間前にドン・キホーテ役の俳優
の負傷で撮影不能となり、製作中止されるという事態に見舞
われた。この詳細については、ギリアム自身が協力したドキ
ュメンタリー“Lost In La Mancha: The Un-Making of Don
Quixote”が製作されているそうだ。           
 そんなギリアムに関して、今回公表された作品の題名は、
“Scaramouche”。ラファエル・サバティーニが1921年に発
表した古典的剣戟小説で、フランス革命初期を時代背景に、
スカラムーシュと名乗る男の、復讐と決闘に彩られた物語を
描くものだ。なお同じ原作からは、23年に無声映画と、52年
にはジョージ・シドニーの監督で、スチュアート・グレンジ
ャーが主演、エレノア・パーカー、ジャネット・リー、メル
・ファーラー共演という映画化もされている。      
 また、サバティーニの原作では、この他に、35年と40年に
いずれもマイクル・カーティーズ監督、エロール・フリン主
演で映画化された“Captain Blood”(海賊ブラッド)と、
“The Sea Hawk”(シー・ホーク)などがある。まあこの題
名でも解るように、どの作品も剣戟映画の王道という感じの
作品だ。                       
 ただし、今回の発表で、ワーナーは敢えてリメイクではな
く、同じ原作からの新たな映画化としている。脚色はリチャ
ード・クルティとベヴ・ドイル。そしてギリアムの監督で、
果たしてどんな新解釈が生まれるだろうか。なお製作は、こ
れも『ハリー・ポッター』のデイヴィッド・ヘイマンが担当
している。                      
 なおこの公表は、かなり初期の段階ということで、まだ正
式契約が結ばれた訳ではない。ギリアムの計画では、以前に
報告した“Lara Croft 2”はヤン・デ=ボンが監督すること
になったようだが、他に“Good Omens”という作品もあり、
現状はまだ流動的なようだ。              
        *         *        
 続いては女性主演の作品の話題を2本紹介しよう。   
 まずはソニー・ピクチャーズから、キャサリン・ゼタ=ジ
ョーンズの製作主演で“Flint”というスパイスリラーの計
画が発表された。                   
 この作品は、ポール・エディのベストセラー小説を映画化
するものだが、実はソニー傘下の製作会社のレッド・ワゴン
が出版前から権利を獲得していたもので、主人公はイギリス
の諜報機関MI5に所属する女性エージェントのグレイス・
フリント。彼女は整形手術で風貌を変えて組織に潜入、マネ
ーロンダリングの調査に当るという物語だそうだ。そしてこ
の計画にゼタ=ジョーンズが参加して映画化が進められるこ
とになったものだが、劇中かなりのアクションシーンもある
ということで、彼女には『エントラップメント』で見せたよ
うなアクションが期待されているそうだ。        
 そしてもう1本は、パラマウントからハル・ベリー主演に
よる“The Guide”という計画が発表されている。     
 この作品はトーマス・ペリー原作の“Shadow Woman”と 
“Guide”という作品に基づき、元々はJane Whitefieldと
いう主人公のシリーズの一部をなすものだ。そしてこの物語
でベリーが演じるのは、コンピューターの知識とインディア
ンの知恵を兼ね備えたという女性。彼女は問題に巻き込まれ
た人の存在を消して守るという仕事に就いているが、結婚の
ために退職。しかし彼女が最後に手掛けた一家が、その後に
連続殺人鬼に追われることになり、結婚にも破れて仕事に復
帰するというものだそうだ。               
 なお脚色は、ジョナサン・レムキンが手掛けたものから、
“Valley of the Dolls”のリメイクなどを手掛けるシンシ
ア・モートがリライトしている。監督は未定。また、原作の
シリーズでは、今回映画化の対象となった2作の他に“Vani
shing Act”“Dance for the Dead”“The Face-Changers”
“Blood Money”の4作がすでに発表されているそうだ。  
        *         *        
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 まずは、ロバート・ルイス・スティーヴンスンの古典的冒
険小説『宝島』(Treasure Island)を現代化して映画化す
る計画で、ロング・ジョン・シルヴァ船長役に、ピュリッツ
ァー賞を受賞した舞台劇“Topdog/Underdog”でトニー賞候
補にもなったジェフリー・ライトの出演が発表された。この
計画は、ジャッキー・チェン主演の『80日間世界一周』など
も計画しているウォルデンメディアが進めているもので、マ
シュー・ジェイコブスとフランク・ロンバルディの脚色、ス
ティーヴ・マイナーの監督で来年早々にヴァンクーヴァで撮
影の予定になっている。ライトにはブロードウェイ終演後、
いろいろなオファーがあったようだが、敢えてこの脚本が気
に入って出演することにしたそうだ。          
 なお同じ原作からは、ディズニー製作によるIMAXアニメー
ション作品“Treasure Planet”が11月27日公開されること
になっている。                    
 またもや大作史劇の計画で、ホメロス原作と伝えられるギ
リシャの長編叙事詩『イリアス』を元にトロイア戦争を描く
“Troy”を、ウォルフガング・ペーターゼンの監督で映画化
する計画がワーナーから発表されている。トロイア戦争と言
えば、コンピュータ用語にも名を残す「トロイの木馬」を始
め、古代船による大規模な海戦など、いろいろな要素のある
古代の戦いだが、そのスケールの大きさで今までその全貌を
映画化した記録はないようだ。それにペーターゼンが挑む訳
だが、すでに脚本はデイヴィッド・ベニオフの手によるもの
ができあがっており、次の段階は主人公アキレスを演じる俳
優の選考だそうだ。                  
 なお、ペーターゼンとワーナーの計画では、先に“Batman
vs.Superman”を紹介しているが、その計画では04年の公開
を目指すことになっている。しかし今回の計画は03年の撮影
が予定されており、ペーターゼンとしては、先に“Troy”を
撮り上げてから“B vs.S”に進む意向のようだが…。  
 “T3”を製作中のジョナサン・モストウ監督の次回作とし
て、第17回で紹介した『エンダー』シリーズのオースン・ス
コット・カード原作による“Lost Boys”という計画が浮上
してきた。この作品は、郊外の家に引っ越してきた家族が、
その町で続く少年失踪の謎に挑むというもの。しかもそこに
は超自然的な存在が潜んでいたというお話のようだ。そして
この原作の脚色に、カナル+やハイドパーク、ディメンショ
ンといったファンタシー系の作品を手掛けるプロダクション
に、いずれも6桁($)の金額で作品を売り込んでいるブラ
イアン・カーという脚本家の起用が発表されている。ヤング
向けの作品になるかどうかは解らないが、いずれにしても実
績のある人選のようだ。製作会社はユニヴァーサル。   
 そういえば、『エンダー』シリーズの映画化もペーターゼ
ンとワーナーだったが、その後どうなっているのだろう。 


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井口健二