井口健二のOn the Production
筆者についてはこちらをご覧下さい。

2002年07月16日(火) スクービー…、ブレッド&ローズ、ジョンQ、阿弥陀堂だより、アバウト・ア・ボーイ、13ゴースト、スチュアート・リトル2、タイムマシン

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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
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『スクービー・ドゥー』“Scooby Doo”         
日本では『弱虫クルッパー』の題名で放送されたハナ=バー
ベラ製作テレビアニメーションの映画化。        
オリジナルのアニメーションは日本ではほとんど放送されて
おらず、僕も最近、この映画化が決まった後で数回、参考の
ためにカートゥーンチャンネルで見ただけなのだが。アメリ
カでは69年から91年まで22年間も続いた人気番組。その人気
番組の映画化とあって、アメリカでは封切2週間で1億ドル
突破の大ヒットになっている。             
シャギー、ダフネ、ヴェルマ、フレッドの男女4人と、人語
を喋るグレートデンのスクービーをメムバーとする「ミステ
リー社」は、アメリカ中の幽霊騒動を解決する人気会社。今
日もおもちゃ工場に出没する幽霊の謎を解いて大喝采を浴び
たのだが、その直後に意見の対立から4人は別れ別れになっ
てしまう。                      
そして2年後、スクービーと共にヒッピー生活のシャギーの
元へ、若者向けリゾート「スプーキー・アイランド」のオー
ナーから仕事の依頼が来る。本当は臆病で幽霊退治なんて真
っ平のシャギーとスクービーだが、食事が食べ放題の条件に
釣られてOK。島へ向かう飛行場に来てみると、そこには他
の3人もいて「ミステリー社」の再結成となる。     
テレビシリーズでの幽霊騒動は、どれも結局は人間の仕業、
というものだったのだが…。島に来てみると、本当に何かが
起こっているらしい。こうしてアミューズメントパークのよ
うな島を舞台に、「ミステリー社」の活躍が始まる。   
ハナ=バーベラのアニメーションの実写化もすでに『フリン
トストーン』などの成功作があるが、正直なところアニメキ
ャラを人間が演じるのには抵抗がある。どうしてもアニメの
動きを真似ると演技が大げさになるし、表情の作り方なども
不自然さを否めない。                 
実はこの映画でも、最初はそんな違和感があったのだが、島
に着いて、表情の作り方ではアニメに輪を掛けたようなミス
ター・ビーンことローワン・アトキンソンが登場した辺りか
ら、そんな感じは吹っ飛んでしまった。         
それに人間のメムバー4人を演じるのが、『スクリーム』や
『ラスト・サマー』などのティーンズホラーの常連の若手俳
優たち。そんな彼らが結構のって演技をしていることもあっ
て、この雰囲気の中では、何かそういう演技も不自然に見え
なくなってしまったという感じもある。これはある意味作戦
だったのだろう。                   
なお、犬のスクービーはオールCGIの合成で描かれている
ので、これはもうアニメーションそのままという感じだ。 
若年向けの作品であることは間違いないが、いろいろなギミ
ックも一杯で結構楽しめた。              
                           
『ブレッド&ローズ』“Bread and Roses”        
イギリスのケン・ローチ監督が、初めてアメリカを舞台に撮
ったイギリス=ドイツ=スペイン合作の00年の作品。   
主人公のマヤは、ロサンゼルスで暮らす実姉を頼って、メキ
シコから不法入国する。しかし姉はその手引きの代金を用意
できず、マヤは男たちにホテルに連れ込まれるが、機転を利
かして脱出。こうしてマヤのアメリカでの生活が始まる。 
ところが姉と一緒に働き始めたビルの清掃員の仕事では、ピ
ン跳ねや不等解雇が横行し、医療保険も満足に得られない状
態。そんなマヤと姉の基に組合のオルグが接近してくる。そ
してロサンゼルス最大の高層ビルで働く彼女らに組合活動の
手解きを始めるが…。                 
ローチは、社会の底辺で生きる人たちを描いて多くの秀作を
発表しているが、本作では、メキシコからの不法移民を主人
公に、ジャニターと呼ばれるほとんどが不法滞在者からなる
ビル清掃員の生活の実態が描かれている。        
しかも組合活動や、会社からの制裁、そして裏切りなど、か
なり重たいテーマなのだが、そこに多くのユーモアや感動の
シーンを入れることで、秀作と呼ぶにふさわしい作品になっ
ている。見終って本当に上手いとしか言いようがなかった。
僕自身、ハリウッドを抱えるロサンゼルスは大好きな街で、
不法移民の問題もいろいろな映画などで見聞きしているが、
この問題をこんな風に温かく優しく描けるのは、ローチ監督
の素晴らしさだろう。                 
因に題名は、1912年にマサチューセッツ州で起きた1万人の
移民労働者、特に低所得の女性たちによる労働争議の時に掲
げられたスローガンの‘We want bread but roses too’
に由来している。バラは生きて行くための尊厳と夢の象徴だ
そうだ。                        
                           
『ジョンQ』“John Q.”                
今年のアカデミー賞で、アフリカ系の俳優としては38年ぶり
に主演男優賞を獲得したデンゼル・ワシントンが主演し、ア
メリカでは今年の2月、ちょうどその本投票の行われていた
時期に公開されて、受賞の後押しになったのではないかと言
われた作品。                     
主人公のジョンQは製鋼所で働いて17年間、しかしリストラ
のために半日労働のパートタイマーとされて賃金は減り、普
段の生活もままならない。そんな主人公の一人息子が心臓疾
患で倒れ、生き続けるためには心臓移植しか手段がないと宣
告される。                      
ところが会社が加入していた健康保険は、経費節減のために
保障内容が変更され、家族への適用条項が削除されていた。
このため心臓移植を受けるには、25万ドルの現金が必要とさ
れ、しかも前金で7万5000ドルを用意しなければならなかっ
た。                         
この事態に、父親はマスコミにまで協力を求めて資金集めに
奔走するが、金は集まらない。そして心臓移植の権威が在籍
する病院から退去が要求された日、遂にジョンQは最後の手
段に出る。移植の権威の医師を人質に病院の救急病棟に立て
こもったのだ。                    
映画はプロローグで衝撃的な交通事故から始まる。従って物
語の結末はもう見えているのだが、そこからの話の展開が上
手い。いったんそれを忘れらせてしまう、演出力、演技力、
そして構成の上手さの勝利だろう。           
ワシントンは、受賞作とは打って変って見るからに善良そう
な父親役で、その父親が一人息子のために採る行動は、もし
自分がその立場だったらやってしまうのではないか、と思う
ほど迫るものがあった。                
警察の対応や病院側の葛藤など、もう少し描いても良いよう
な気もするが、主人公の行動をはっきりさせるためには余分
の部分だったのだろう。                
エピローグの本物のニュースショウのコメンテーターたちが
意見を述べるシーンで、1月に急逝したテッド・デミの姿が
あるが、宣伝には使われないようだ。。         
                           
『阿弥陀堂だより』                  
元黒澤明監督の助監督だった小泉堯史監督の第2作。前作は
黒澤監督の遺稿を映画化した『雨あがる』だったが、今回は
南木佳士の原作を自らの脚色で映画化した。       
主人公は、売れない作家と女医の夫妻。妻は東京で最先端の
医療に携わっていたが、精神的な圧迫による病で夫の故郷の
無医村だった村にやってくる。そして村立の保育所に間借り
して週3日の診察を始める。              
その村には、亡くなった人々を祀る阿弥陀堂があり、その堂
は96歳の老女が守っていた。そして村の広報誌に「阿弥陀堂
だより」というコラムがあり、そのコラムは、一人の口の利
けない女性による老女からの聞き書きで綴られていた。  
その女性は喉にできる肉腫で声を奪われていたが、女医はそ
の肉腫が転移し、危険な状態になっていることを診断する。
そして彼女を救うためには、自分自身が最先端の医療の現場
に立ち返らなければならないということも。       
一人の女医の、そして女性の再生の物語だが、決してお涙頂
戴に陥るようなこともなく、淡々と描き切る。そのすがすが
しさが素晴らしい。                  
長野県で1年をかけて撮影され、季節の移り変わりの中で営
まれる人々の生活が見事に描かれる。それにしてもすごいの
は老女を演じた北林谷栄だろう。91歳の現役俳優は、特に女
優では奇跡に近い。                  
                           
『アバウト・ア・ボーイ』“About a Boy”        
ヒュー・グラント主演のイギリス製コメディ。      
父親の残した遺産のおかげで、38歳になっても働いたことも
なく。当然独身で女漁りに明け暮れている男が、12歳にして
欝病の母親を抱え人生に悩み続けている少年と出会ったこと
から、人生の転機を迎える。              
『ブリジット・ジョーンズの日記』の製作会社が手掛けた作
品ということで、グラントは前作の脇キャラ同様のグウタラ
男を上手く演じている。グラントは一見真面目そうなところ
が、特にこの手の役柄に填るようだ。          
ただし映画は、グラントの主人公と同時に、12歳の少年も対
等に描いており、その辺の交錯が見ていて納得できる作品に
なっている。この少年の扱い方を考えると、どちらかと言う
と女性向けの作品だろう。               
なお、プロローグでイギリス版の『ミリオネア』が見られ、
日本版と全く同じなのが面白い。また、『フランケンシュタ
インの花嫁』がかなり長くフューチャーされているのも僕と
しては嬉しかった。それから少年の顔つきが何となく『スタ
ー・トレック』のロミュラン人的で、態度もそんな感じなの
も笑えた。                      
                           
『13ゴースト』“Thir13en Ghosts”           
99年に『TATARI』を発表したホラー専門会社ダークキ
ャッスル・エンターテインメントの第2弾。前作と同様50、
60年代に活躍したウィリアム・キャッスルの作品をリメイク
したもので、本作のオリジナルは60年に製作されている。 
火災で家と妻(母親)を亡くした一家に、急死した叔父の遺
産の屋敷が贈られる。そして弁護士の案内でその屋敷を訪れ
た一家は、束の間素晴らしい屋敷に喜ぶが、やがてそこが恐
ろしい儀式のために作られた巨大な装置であることを知る。
叔父は、現世に迷う12人の幽霊を捕獲し、彼らのエネルギー
を利用して未来を覗く装置を作り上げようとしていた。そし
て一家がその屋敷を訪れた時、装置は始動し、屋敷に閉じ込
められた一家を、集められた幽霊たちが襲い始める。   
典型的なお化け屋敷ものということで、それなりに面白かっ
た。まあ物語にちょっと変なところは有るけれど、いろいろ
なVFXを駆使したギミック満載で押し切ってしまうところ
は、最近の映画らしい。                
監督は、ILMなどで視覚効果の美術を担当していた人のデ
ビュー作だが、呪文の刻まれた強化ガラスで仕切られた迷路
と言うかミラーハウスのような屋敷や、不思議な動きを見せ
る機械など、造形の面白さには納得できるものが有った。 
なおオリジナルにはマーティン・ミルナーが出ていたようだ
が、本作には『スクービィ・ドゥー』でシャギー役のマシュ
ー・リラードが出ている。続けて見るとちょっと面白い。60
年作も**1/2の評価を受けているが、そちらもどんなだった
か見てみたい気もした。                
                           
『スチュアート・リトル2』“Stuart Little 2”     
リトル家に養子に来たネズミのスチュアートが活躍する99年
公開の大ヒット作の続編。               
本作では新しいキャラクターの小鳥のマーガロも加わって地
上から空へと大冒険が繰り広げられる。         
前作から3年、リトル家には新たに女の赤ん坊が誕生してい
る。おかげで両親は新しい子に掛かり切りだし、兄のジョー
ジは同級生とプレステ2に夢中、猫のスノーベルも中々相手
にしてくれない。                   
そんな訳であまり楽しい日々とはいえないスチュアートに、
ある日空からガールフレンドが落ちてくる。恐ろしいファル
コンに追われて翼が傷つき、助けを求める小鳥のマーガロを
スチュアートは懸命に介護し、いつしか恋心を抱いたのだが
…。実は彼女は同情を曳いて家に入り込み、悪事を働くファ
ルコンの手先だった。                 
CGIの技術は前作で完成されているので本作で特に言うこ
とはないが、今回はCGIのキャラクターが増えたことでア
ニメーションっぽいシーンが増え、実写との絡みがちょっと
少なくなっている感じがした。             
しかし新たな敵キャラクターの出現で、冒険の範囲は大幅に
広がり、1時間18分の上映時間の割には盛り沢山な感じがし
た。今年の夏の作品は余り見ていないが、お子様向けには、
最も安全で、良い作品だと思う。            
ただし、中で登場するサッカーのシーンは明らかにオフサイ
ドポジションで、アメリカ人のサッカー知らずと言うところ
だった。                       
                           
『タイムマシン』“The Time Machine”         
H・G・ウェルズの名作の2度目の映画化。監督は原作者の
曽孫のサイモン・ウェルズ。因に、前の映画化の邦題は『タ
イム・マシン』。リメイクで「・」が無くなるのは『キング
・コング』と同じだ。                 
リメイク版は舞台をニューヨークに移し、コロムビア大学の
助教授の主人公が、初めてプロポーズし、その直後に亡くな
った女性の命を救うためタイムマシンを完成させるが…。結
局、彼女の死の運命を変えられないことを知る。     
そしてその命題の答えを探るために未来へと旅立つ、という
ことになっている。                  
ほぼ原作通りだった最初の映画化のようにシンプルではない
が、それなりに冒険活劇に仕上げた脚色は合格と言えるだろ
う。過去と未来にそれぞれ女性を配し、過去は変えられない
が未来は…、という結論も判り易くて良い。       
タイムパラドックスも何とかクリアしているようだ。   
登場する装置が80万年も動き続けるとは思えないし、未来社
会の裏に潜む黒幕というのはちょっと無理な感じもするが、
原作では不明瞭な未来の社会形態をそれなりに説明したのは
よく考えたと言うことで評価はしておきたい。      
物語の最初の方で野外スケート場が出てくるのは『ジェニー
の肖像』を意識したのかどうか、しかし旅行者が最初に訪ね
た2030年の世界で、ホログラムの案内人が中指と薬指の間を
開いてV字を作り「長寿と繁栄を」と言ったのには参った。



2002年07月15日(月) 第19回

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 まずは、ちょっと期待が膨らむこの情報から。     
 ワーナーで長らく中断している『スーパーマン』と『バッ
トマン』の両シリーズについて、これらを合体した“Batman
vs.Superman”という作品をウォルフガング・ペーターゼン
の監督で製作する計画が発表された。この計画ではすでに、
『セブン』のアンドリュー・ケヴィン・ウォーラスの脚本も
契約されており、04年夏の公開に向けて製作が準備されてい
るということだ。なおペーターゼンとワーナーでは、前々回
紹介のSFシリーズ“Ender”の計画が先に発表されている
が、この状況では今回の作品が先行することになりそうだ。
 一方、ワーナーからは、J・J・エイブラムス脚本、『チ
ャーリーズ・エンジェル』のMcG監督で“Superman”の復
活作。また、フランク・スタック脚本、『π』のダレン・ア
ロノフスキー監督で、“Batman: Year One”の計画がすで
に発表されているが、これらの計画はそのまま進められると
いうことで、今回の計画は、それらのシリーズ復活の前祝い
的な作品になるようだ。                  
 とは言え、この作品の出演者がそのまま復活シリーズの出
演者になることは当然考えられることで、その辺りの選考も
気になるところだ。これに関してペーターゼンの発言では、
「スーパーマンにはマット・デイモンが希望」のようだが、
これはあくまでも希望ということで、さてどうなることか。
これに対してバットマンの主演者に関する発言は無かったよ
うだが、こちらはジョージ・クルーニーで決まりなのだろう
か。だとするとアロノフスキー監督の“Batman: Year One”
は若き日のバットマンの物語だということなので、出演者は
変更になる可能性も有りそうだ。            
 また関連でこちらはちょっと残念なニュースだが、『バッ
トマン』からスピンオフされる計画の“Catwoman”で期待さ
れていたアシュレー・ジャドの主演がキャンセルされたよう
だ。降板の理由はスケジュールの調整ができなくなったとい
うことだが、映画の方も直ちにということでもなくなってい
るようなので、その内スケジュールの調整もつくようになる
かも知れない。差し当たって代役の発表はないようだ。  
        *         *        
 お次はファン待望と言うか、計画が発表されてからすでに
6年が経っていると言われるジョン・グリシャム原作“The
Runaway Jury”の撮影が、9月16日に開始されることが発
表された。                       
 この作品は、『ザ・ファーム』や『ペリカン文書』などの
ベストセラー作家グリシャムの同名の原作を映画化するもの
だが、実は、96年にやはりグリシャム原作の『評決のとき』
を映画化したニュー・リジェンシーとワーナーが、1,500万
ドルという当時最高額の契約金で映画化権を獲得。前作と同
じジョエル・シュマッチャーの監督、出演者には、エドワー
ド・ノートン、ショーン・コネリー、グウィネス・パルトロ
ウという布陣で映画化が発表されていた。        
 ところが翌年になって、シュマッチャーとコネリーの間で
意見の相違が表面化。これを切っ掛けに、ノートンが『ファ
イト・クラブ』に引き抜かれるなど、計画は多難を極める。
これに対してニュー・リジェンシーでは、監督にアルフォン
ソ・クワロンや、フィリップ・カウフマンらを招請するが、
いずれも途中で降板。さらに共同製作のワーナーも離脱を発
表して、遂に計画は空中分解してしまった。       
 しかし諦めないニュー・リジェンシーは、昨年新たにマイ
ク・ニューウェル監督を招請して、ウィル・スミス主演によ
る計画を再発表。ところが今度は原作者のグリシャムが配役
に難色を示し、計画は白紙に戻された。この事態に、遂にニ
ュー・リジェンシーも計画を断念、一旦はグリシャムとの契
約の破棄を通告したのだったが、結局グリシャムとの間で再
契約が成立。今度はニュー・リジェンシーがフォックスで製
作した『サイレンス』のゲイリー・フレダー監督を迎えて、
映画化が進められることになったものだ。        
 そして出演者には、ジョン・キューザック、ジーン・ハッ
クマン、ダスティン・ホフマンが契約、さらに女性の主役に
レイチェル・ワイズが発表されて、遂に9月16日の撮影開始
となっている。                    
 なおワイズは、『ハムナプトラ』シリーズでの活躍が話題
だが、近日公開の『アバウト・ア・ボーイ』ではヒュー・グ
ラントの相手役を務め、さらにダスティン・ホフマン共演の
“Confidence”と、製作も務める“The Shape of Things”
の公開が控えている。さらに現在は、ドリームワークスでク
リス・ロック製作、バリー・レヴィンスン監督によるコメデ
ィ作品の“Envy”に出演中で、その撮影が終り次第、今回の
作品に参加するということだ。             
 因に、今回の製作費は全額をニュー・リジェンシーが調達
しており、このためアメリカ配給権は未定ということだが、
内容はマイクル・マン監督の『インサイダー』などでも話題
になったタバコ訴訟に関するもので注目度も高く、しかも出
演者の顔ぶれも揃ったということで、配給権の行方も面白く
なりそうだ。常識的には、ニュー・リジェンシーが現在本拠
を置くフォックスが有力だが、前回紹介した“Fountain”の
ではワーナーとの関係も修復されているようなので、どうな
るか。なお海外は個別に契約されているようだ。     
        *         *        
 続いてはリメイクの話題を3つ。           
 まずは、これもファン待望だったジェームズ・バリー原作
『ピーター・パン』“Peter Pan”の実写版のリメイクが、
『ベスト・フレンズ・ウエディング』のP・J・ホーガン監
督の手で、今年の秋からオーストラリアのクィーンズランド
の撮影所で開始され、03年クリスマスの公開を目指すことが
発表された。                     
 この計画もここ数年に亘って噂が絶えなかったものだが、
元々は53年のアニメーションを製作したディズニーと、俳優
のメル・ファーラーが所有していた映画化の権利を継承した
コロムビアとの間に、元ディズニー社々長だったジョー・ロ
スのリヴォルーションが加わって、3社での共同製作が計画
されていた。                     
 しかし総額9,000万から1億ドルと予想される製作費を巡
っては、3社で折半ということで決着したものの、その後の
配給権を含む権利の分け方で話し合いが着かず、遂に今年の
1月にディズニーが離脱を発表していた。        
 これに対して残った2社がパートナーを探したところ、新
たにユニヴァーサルが参加を表明、コロムビア、リヴォルー
ション、ユニヴァーサルでの製作が発表されたものだ。因に
配給権は、ユニヴァーサルは北米とイギリス、オーストラリ
ア、南アフリカおよびその他の英語圏、リヴォルーションが
北欧とポルトガルとイスラエル、そしてその他の地域がコロ
ムビアとなっている。従って日本はコロムビア=ソニーとい
うことになるようだ。                 
 脚本は、ホーガンとマイクル・ゴールデンバーグが担当。
ジェームズ・バリーの原作から生じる全ての権利は、1937年
以降、ロンドンの小児病院が管理することになっているが、
その担当者は、「2人のシナリオは、原作が求めた観客との
コミュニケーションなどの思想を、現在の感覚で見事に表現
しており、素晴らしい作品だ」と高く評価している。一方、
ホーガンは、「ここに描いたピーター・パンは、英雄的で、
魔法的で、決して歳を取らない本物の少年が、海賊と戦い、
子供たちを救い出す、バリーが描いた通りのものだ。自分の
個人的に好きなものを、世界中の観客に見せることにスリル
を感じている」とコメントしている。          
 この他のスタッフでは、撮影監督をドナルド・マッカルパ
イン、装置をロジャー・フォード、衣装をジャネット・パタ
ースン、音楽をジェームス・ニュートン・ハワードが担当。
視覚効果は『コクーン』でオスカー受賞のスコット・ファー
ラーがILMを率いて担当することになっている。因にティ
ンカー・ベルはCGIで描かれることになるそうだ。   
 一方、出演者では、『ブラックホーク・ダウン』や『ハリ
ー・ポッターと秘密の部屋』では敵役のルシウス・マルフォ
イ役を演じているジェイスン・アイザックスがフック船長を
演じることが発表されているが、その他のピーターやウエン
ディーたち子供の配役については、これから世界中でオーデ
ィションを行って決定するということだ。        
        *         *        
 2本目のリメイクの話題は、56年に史上初の70ミリ映画と
して製作されたジュール・ヴェルヌ原作『80日間世界一周』
“Around the World in Eighty Days”で、このリメイク
をジャッキー・チェンの主演で行うことが発表されている。 
 オリジナルは、デイヴィッド・ニーヴンとカンティンフラ
スの主演以下、40人を越すゲストスターが登場するオールス
ター映画で、ニーヴン扮するイギリス紳士フォッジがクラブ
での賭けの為に80日間で世界一周する旅に出かけるというも
の。これに対してリメイクでも賭けは行われるが、その前に
チェンはフォッジの家で盗品の仏像を発見し、フォッジに世
界の異文化との交流の大切さを教え、その心を開かせるため
に、旅の案内を引き受けるという展開が加わるそうだ。  
 脚本は、マイクル・D・ウェイスとデイヴィッド・チッチ
ャー。監督は『ウェディング・シンガー』のフランク・コラ
チが担当することになっている。            
 撮影開始は今年の秋で、チェンが出演中の『シャンハイ・
ヌーン』の続編“Shanghai Knights”の製作が終了し次第
開始されるということだ。                
 なお製作はニューヨークに本拠を置くウォルデン・メディ
アというところで、同社では、先にジェームズ・キャメロン
監督のI−MAX3−D映画“Ghosts of the Abyss”を
製作し、この作品はディズニーの配給が決まったようだが、
基本的に配給先は1本ごとに決めるということで、今回の作
品もこれからその争奪戦が始まるようだ。因に同社では、す
でに長編第1作としてルイス・サッチャー原作のニューベリ
ー賞受賞作“Holes”の映画化を、シゴウニー・ウィヴァー、
ジョン・ヴォイドの共演で進めている他、さらにアン・ホル
ム原作の“Freaks and Geeks”、C・S・ルイス原作“The
Chronicles of Narnia”シリーズなどの映画化も進めるこ
とになっている。                    
        *         *        
 もう1本のリメイクは、87年にジェニファー・グレイ、パ
トリック・スウェイジ主演で公開された青春ドラマ『ダーテ
ィ・ダンシング』“Dirty Dancing”のリメイクというか、
この作品から想を得た作品の計画が発表されている。   
 オリジナルは、60年代を背景にニューヨークのリゾートホ
テルに宿泊する一家の少女が、激しいダンスを通じて自分に
目覚めて行く姿を描いたもので、主題歌がオスカーを受賞し
た他、テレビシリーズ化もされた。またサウンドトラックア
ルバムは2,200万枚を売り上げて、発売元のRCAのベスト
セラーの一つに数えられており、さらにヴィデオとDVDは
今でも毎月157,000巻が出荷されているということだ。   
 そして今回の計画は、題名が“Havana Nights”と発表さ
れ、59年のキューバの首都のホテルを舞台に、17歳の少女が
キューバ革命の激動の中をダンスを頼りに生きて行く姿を描
くというもの。オリジナルとはかなり違った印象だが、報道
では“Dirty Dancing”の第2作と紹介されているものだ。
 監督は、最近のシアトル映画祭で観客賞を受けた“Bang,
Bang, You're Dead”のガイ・ファーランドが抜擢されてい
る。製作はミラマックスと、オリジナルのヴィデオ/DVD
を発売しているアルチザンの共同で、配給は米国内がアルチ
ザン、海外はブエナ・ヴィスタの担当になるようだ。   
 今年の秋に準備を開始するということで、出演者は未発表
だが、因に、この計画では数年前から動きがあり、一時はリ
ッキー・マーティンとナタリー・ポートマンの共演という計
画も有ったようだ。                  
        *         *        
 リメイクの次は続編の話題で、こちらは短いニュースを2
つまとめて紹介しよう。                
 まずは、今回試写会で見た作品の紹介もしている『スクー
ビィ・ドゥー』の続編“Scooby Doo 2”の計画が早くも発表
されている。この作品は、アメリカでは公開2週間で1億ド
ル突破の大ヒットだから続編の製作は当然の話だが、実はこ
の作品の俳優に対する出演契約では最初から続編のオプショ
ンがつけられており、さらに監督のラジャ・ゴズネルに対し
ても先に続編の契約が結ばれたということで、監督と「ミス
テリー社」のメムバーは全員が再結集。製作開始は来年早々
で、公開は04年の春を目指すということだ。また脚本は、第
1作を手掛けたジェームズ・ガンがすでに契約して執筆を開
始しているそうだ。                  
 お次はこれも今年春の大ヒット作『スパイダーマン』の続
編“Spider-Man 2”では、前回脚本をアルフレッド・ゴーと
マイルズ・ミラーが手掛けることを紹介したが、この続編に
クリフ・ロバートスンが出演をアピールしているそうだ。ロ
バートスンは第1作で主人公に名文句を残して死ぬ叔父の役
で、その死が主人公が正義に目覚める切っ掛けにもなってい
る訳だが、ロバートスンは「『スター・ウォーズ』のアレッ
ク・ギネスも第1作で死んだが、その後の2作にも登場した
じゃないか」ということで、何としても出演したいというこ
とだ。アカデミー賞受賞スターにここまで言わせるこの作品
の魅力についても聞きたいところだ。          
        *         *        
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 まずは、ニューラインから、82年の“Tender Mercies”
でオスカー受賞のロバート・デュヴォールと、99年の『サイ
ダーハウス・ルール』でオスカー受賞のマイクル・ケインが、
99年の『シックス・センス』でオスカー候補になったハーレ
イ・ジョエル・オスメントに人生を教えるという“Secondha
nd Lions”という作品の計画が発表されている。しかも『タ
イタニック』でオスカー受賞のディジタル・ドメインが視覚
効果を担当するという作品。一体どんな作品なのだと言いた
くなるが、実はディジタル・ドメインが10年前から温めてき
た企画で、発表では「宇宙船も星の爆発もないが、全ての人
に愛される物語」なのだそうだ。            
 『スコーピオン・キング』でブレイクしたザ・ロックこと
ドウェイン・ジョンスンの次回作にはすでに“Helldorado”
が決まっているが、新たな企画としてハワイのカメハメハ大
王を描いた作品がコロムビアからオファーされている。カメ
ハメハは18世紀にハワイ諸島を支配し、西欧文明の襲来に対
抗した人物だが、コロムビアではポリネシア版『ブレイブハ
ート』のような物語を作るとしている。そしてその主演者に
は、メル・ギブスンやケヴィン・コスナーは到底無理で、こ
の役はザ・ロック以外には考えられないということだ。  
 一部の年代の人にはフォークの神様として知られるアメリ
カのシンガーソングライター、ボブ・ディランが主演する映
画が製作されている。題名は“Masked & Anonymous”。ど
ことは判らない全体主義的な国家を舞台に、そこでカリスマ
的な人気を得た歌手の最後のコンサートを巡る物語だそうだ。
監督はラリー・チャールス。また共演者には、ジェフ・ブリ
ッジス、ペネロペ・クルス、ジョン・グッドマン、ジェシカ
・ラング、ルーク・ウィルスン、アンジェラ・バセットが並
ぶ他、ブルー・ダーン、ヴァル・キルマー、ミッキー・ロー
ク、クリスチャン・スレーターらがゲスト出演している。公
開は03年前半の予定で、配給はインターメディアとBBCフ
ィルムス。                      
 因に、ディランは00年の『ワンダーボーイズ』に楽曲を提
供してオスカー主題歌賞を獲得した他、製作中のアメリカ南
北戦争の最初の2年間を描いた作品“Gods and Generals”
にも音楽を提供しているそうだ。            



2002年07月01日(月) 第18回+DRIVE、クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 まずは訂正で、前回ワーナー製作、ウォルフガング・ペー
ターゼン監督の計画として紹介したオースン・スコット・カ
ード原作の“Ender”シリーズは、85年発表の長編第1作が
『エンダーのゲーム』の題名で翻訳されている他、かなり長
大なシリーズになっているものだった。今回の映画化がそれ
をどこまでやるのかは不明だが、一応、アメリカの報道では
シリーズということが繰り返し書かれているので、映画化も
シリーズになることは間違いないようだ。後は映画化がヒッ
トするか否かということになるが…。ということで、前回は
ちょっと古い資料で書いてしまったので訂正しておく。  
        *         *        
 というのが前置きで、実は同じくワーナーからこれも異星
人の地球侵略から始まる新たな3部作の計画が発表された。
 この3部作は、グレッグ・ベアの原作で87年に発表された
“The Forge of God”(天空の却火)と92年発表の“Anvil
of Stars”(天空の殺戮)を映画化するもの。2作しかない
じゃないかと言われそうだが、実は現在ベアが第3作を執筆
中だそうだ。物語は、地球上に異星人の手になる謎の通信装
置が多数飛来し、それが人類を絶滅に追い込んで行く、とい
うところから始まる。当然それに人類が反撃するという展開
で、さらに第2作では地球人が異星人の星にまで向かうとい
うもの。これから第3作はどのように展開するのだろうか。
 そしてこの原作に対しては、『ブラックホーク・ダウン』
の脚本を手掛けたケン・ノーランが、70ページの脚本の素案
‘scripment’を執筆、この素案がワーナーを含む3社の間
でオークションとなり、結局7桁($)の金額でワーナーが
権利を獲得したものだ。この契約によりノーランは、すでに
本格的な脚本の執筆に取りかかっているということだ。因に
ノーランは、『ブラックホーク・ダウン』の後に続く作品の
素材を探していたということで、そこに前作を見た原作小説
のエージェントが連絡を入れ、送られた原作を読んだノーラ
ンが直ちに素案を書き上げたものだそうだ。       
 それにしても前回紹介の“Ender”や、前々回に紹介した
“War of the World”のリメイク(スティーヴン・スピル
バーグが監督に興味を示しているそうだ)など、異星人によ
る地球侵略を描いた作品が競作になって来ている(他にもフ
ォックスで、ローランド・エメリッヒ監督による“Day After
Tomorrow”という作品も進んでいる)が、これもある意味
で01年9月11日の影響と言えないこともないようだ。    
        *         *        
 続いては続編の情報を紹介しよう。          
 まずは正真正銘の続編ということで、00年に公開されたジ
ェリー・ブラッカイマー製作の“Coyote Ugly”(コヨーテ
・アグリー)の続編が計画されている。         
 オリジナルは、ニュージャージー出身の主人公ヴァイオレ
ットが、シンガーソングライターを目指す傍らニューヨーク
の女性だけのバーに勤め、その中でのいろいろの出来事が綴
られたもの。製作費は4500万ドルだが、全世界での配給収入
が1億ドルを突破、その他にサウンドトラックCDやヴィデ
オの発売もトップセールスを記録したという大ヒット作だ。
 そして今回は、このオリジナルの脚本を執筆したジーナ・
ウェンドコスが続編の原案を書き上げたもので、ブラッカイ
マーは直ちにこれを取り上げて、映画化を進めることを発表
している。オリジナルとは異なる女性たちによる第2話が作
られることになるようだ。因にウェンドコスは、このオリジ
ナルが第1作だったようだが、その後、パラマウントで製作
される“Tulip”や、ワーナー製作の“Amanda's Wedding”
などの作品も手掛けている。              
        *         *        
 お次は、第1回で紹介したユニヴァーサル製作、ヴィン・
ディーゼル主演の『ピッチ・ブラック』の続編で、この脚本
と監督をオリジナルと同じデヴィッド・トゥーヒ−が手掛け
ることになり、さらに複数の作品を作る計画が発表された。
 この計画については、第1回ではトゥーヒーに代ってデヴ
ィッド・ハイターが脚本を担当すると紹介したものだが、実
はこの時トゥーヒーには、ミラマックスで“Below”という
ゴーストストーリーを監督する計画があり、またハーラン・
エリスン原作の“Demon With a Hand of Glass”という作
品の脚色監督の計画もあって、これらの準備のために続編へ
の参加が見送られたとされていたものだった。       
 しかしその後、これらの計画はいずれも中断されることに
なり、一方、ユニヴァーサル側は、ハイターと、さらに『ビ
ューティフル・マインド』のアキヴァ・ゴールズマンにも依
頼して、“The Chronicles of Riddick”と題された続編の
脚本を書かせたものの、主人公の魅力を充分に活かせなかっ
たということだ。                   
 そこで改めてトゥーヒーへの要請となったようだが、実は
トゥーヒーは最初から3部作を狙っていたようだ。因にトゥ
ーヒーの証言によると、「2年前に続編の企画書を提出して
いたのだが、当時会社側はそれを取り上げてくれなかった。
しかしその後の『ロード・オブ・ザ・リング』のヒットで、
複数の続編という考えに賛同を得られるようになった」とい
うことで、主演のディーゼルもシリーズ化を理解していると
いうことだ。そしてついにトゥーヒーが復帰を決断したとい
うことで、これでオリジナルと同じ体制での続編の製作が実
現されることになりそうだ。              
 ということで、続編は少なくとも2本が製作されることに
なるようだが、その1本目は“Riddick”という題名で、内
容は第1回で紹介したように『ピッチ・ブラック』の前日譚
になるということだ。夜目の利くアンチヒーロー、リディッ
クが一体どんな冒険を繰り広げるのか、非常に特殊な設定だ
けに、オリジナルのアイデアを生み出したトゥーヒーには誰
も太刀打ちできなかったということだろう。       
        *         *        
 もう1本は、前回、試写会で見た作品を紹介した『トータ
ル・フィアーズ』(The Sum of All Fears)の続編で、原
作者のトム・クランシーがシリーズの新作を発表、この作品
が次の映画化の原作になりそうだ。            
 クランシーが描くジャック・ライアンの活躍はすでにかな
りの数の小説が発表されているが、実はこの8月に最新作の
“Red Rabbit”が出版されることになっている。そしてこの
新作の全容はまだ発表されていないが、情報では映画化され
た第1作の『レッドオクトーバーを追え!』の前日譚で、当
時のソ連のエージェントがローマ法王の暗殺を企むというも
のだということだ。                  
 そこで今回の映画化で、ベン・アフレックが演じたジャッ
ク・ライアンは前回紹介したように駆け出しの情報分析官と
して描かれている訳で、これはちょうど話が合ってしまうの
ではないかという観測が成り立つのだ。もちろん映画化に当
って物語の現代化は必要だろうが…。映画シリーズ製作者の
メイス・ニューフェルドはすでに新作の映画化権の契約をし
たというとで、同時に製作総指揮にはクランシーが加わるこ
とは間違いないところだから、これはこの新作が次のライア
ンの活躍になる可能性はかなり高いといえそうだ。    
 因にパラマウントでは、『トータル・フィアーズ』にも登
場したジョン・クラークが活躍する“Rainbow Six”の映画
化も進めているが、以前に計画されていたライアンシリーズ
の『クレムリンの枢機卿』の計画は消滅しているようで、現
状でライアンの次回作は白紙の状態になっており、この線で
も、新作が次回作になる可能性は高いといえる。     
 実際のところ小説のライアンシリーズは、その後ライアン
がアメリカ大統領になったり、『日米開戦』なんていう題名
もある訳で、これを映画化するのはかなり抵抗がありそうだ
が、クランシー自身が新たにシリーズの立直しを図っている
のなら、映画化はその線で行ってくれることになりそうだ。
        *         *        
 次は続編ではないのだが、96年に公開された『スペース・
ジャム』で活躍したバッグズ・バニーたちルーニー・トゥー
ンズの面々が、またまた大活躍する新作が計画されている。
 今回計画されている作品は、題名が“Looney Tunes: Back
in Action”というもので、前作と同じく実写とアニメーシ
ョンの合成で製作され、今回の人間側の主人公にはブレンダ
ン・フレーザーが参加、監督は『グレムリン』のジョー・ダ
ンテが当ることになっている。             
 内容は、前作では実写のマイクル・ジョーダンがルーニー
・トゥーンランドに連れて行かれたが、今回は逆にルーニー
の面々が実写ワールドに出現、ハリウッドやラスヴェガス、
そしてアフリカを舞台に大騒ぎを繰り広げるというもの。そ
してメインのストーリーは、フレーザー扮する主人公の行方
不明になっている父親と、神秘のブルーダイアモンドを、主
人公とルーニーの面々が捜すというものだそうだ。    
 脚本は人気アニメーションの『シンプソンズ』を手掛ける
ラリー・ドイルで、製作総指揮は『キャッツ・アンド・ドッ
グ』のクリス・デファリアとドイルが担当。7月29日の撮影
開始で、03年11月の公開が予定されている。       
 またワーナーでは、その前にドイルの総指揮の下で複数の
ルーニー・トゥーンズの短編を製作してワーナー配給の他の
作品に併映することも計画しており、以前の映画館で上映さ
れて評判だったチャック・ジョーンズやテックス・アヴェリ
ーの伝統を復活させるということだ。          
        *         *        
 この他の続編関係の短いニュースを紹介しておこう。  
 まずは、大ヒットした『スパイダーマン』の続編“Spider
-Man 2”で、脚本の担当が前作を手掛けたデヴィッド・コー
プから、『シャンハイ・ヌーン』などのアルフレッド・ゴー
とマイルズ・ミラーのコンビに変更されることになった。こ
れはコープが、やはりソニーで進められているスティーヴン
・キング原作“Two Past Midnight: Secret Window,Secret
Garden”の映画化で監督デビューすることになったためで、
その準備で続編の脚本が執筆できなくなったということだ。
しかしコープはすでに続編の原案を書き上げており、今後は
その原案に基づいて、ゴーとミラーの手で来年1月からの撮
影までに脚本が書かれることになる。          
 同じくソニー製作の『チャーリーズ・エンジェル』の続編
“Charlie's Angels 2: Halo”は8月撮影開始の予定だが、
前作で3人の女優たちとの確執が噂されたボスレー役のビル
・マーレイは結局復帰せず、替ってテレビのコメディシリー
ズなどで人気のあるバーニー・マックという黒人スターが出
演することになった。この役柄がボスレーそのものかどうか
は不明だが、いずれにしてもチャーリーとエンジェルたちと
の連絡役ということではあるようだ。因にマックは、その前
にビリー・ボブ・ソーントン主演のコメディ“Bad Santa”
に共演し、さらにクリス・ロックが監督主演する“Head of
State”という作品にも共演が発表されている。8月末から
は自身のテレビシリーズの撮影も始まるということで、それ
までにこれらの作品を終わらせる予定のようだ。     
        *         *        
 後は普通の短いニュースをまとめておこう。      
 まずは新作“Enough”の公開が迫っているジェニファー・
ロペスの次回作として、再びソニー製作による“Shrink”と
いう作品が計画されている。この作品は、元マーヴル・コミ
ックスのクリエーターだったロブ・リーフェルドがインター
ネット上で発表している同名のコミックスを原作にしたもの
で、一度はスーパーヒーローでありながら、心に負った傷の
ためにパワーを封印してしまった女性の物語。『MIB』と
『アナライズ・ミー』を合わせたような作品ということで、
一応コメディ仕立てのようだが、シリアスな面も持った作品
になるということだ。                 
 『ブレイド2』のギレルモ・デル=トロ監督の計画で、ド
リームワークスから“Sleepless Knights”という作品が発
表されている。この作品は、“Batman: Arkham Asylum”と
いう作品でグラフィックノヴェルの歴代トップの販売記録を
持っているグラント・モリスンが脚本を執筆し、ドリームワ
ークスで“At the Mountains of Madness”を準備している
デル=トロにもたらされたものだそうだ。物語は、タイムマ
シンの実験の失敗で、幽霊や霊魂が現実化してしまった世界
を舞台に、スリープレスナイツと名乗るゴーストバスターズ
が活躍するお話ということだ。             
 『誘惑のアフロディーテ』で95年のアカデミー助演女優賞
を獲得したミラ・ソルヴィノが、自らの製作で“The Beauty
of Jane”という作品を計画している。この作品は、ダン・
アイルランドの脚本監督によるもので、1912年のイギリスを
舞台に、聡明な30代の女性が、20代の頃に愛し別れてその後
失明した芸術家の男性の基へ、言葉の訛りを変え看護婦兼秘
書として仕えるという物語。なお監督は、96年にヴィンセン
ト・ドノフリオとルネ・ゼルウィガーの共演で、『コナン・
ザ・グレート』の原作者ロバート・E・ハワードの逸話を映
画化した“The Whole Wide World”などの作品で知られる。
因にこの作品は、ゼルウィガーが『ザ・エージェント』に抜
擢される切っ掛けになったものだそうだ。        
 98年に発表された『π』などの監督ダーレン・アロノフス
キーの作品で、ブラッド・ピットとケイト・ブランシェット
の共演が予定されている“Fountain”という作品が、ワーナ
ーとニュー・リジェンシーの共同製作で実現されることにな
った。この作品は元は“The Last Man”という題名で紹介さ
れていたものだが、未来もののSFということで、製作費に
は7000万ドルが計上されている。元々はワーナー傘下のヴィ
レッジ・ロードショウが持っていた企画で、実は昨年の秋に
撮影の予定だったが、諸般の事情で延期されていた。しかし
その間に製作費が膨張し、結局同社では賄い切れなくなり、
本来はフォックス傘下のニュー・リジェンシーが参加するこ
とになったということだ。因に、アロノフスキー監督の今ま
での作品は製作費 500万ドル以下ということで、一気に10倍
以上の作品を手掛けることになる訳だが、ワーナーとしては
『マトリックス』での同じようなギャンブルに成功した実績
を踏まえて、今回の賭けに出ることにしたということだ。 
                           
                           
                           
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
『DRIVE』                    
96年の『弾丸ランナー』以来、話題を蒔き続けている監督S
ABUの第5作。                   
実はこの監督の作品は今までも試写状は貰っていたのだが、
何となく時間が合わなかったりで見ていなかった。しかしこ
ういう一部で絶賛を浴びている映画作家の作品と言うのに後
から入って行くのはかなりきつい。そんな訳で益々足が遠の
いてしまったのだが…。                
ところが今回、たまたま時間が空いて初めて見ることになっ
た。で、初めて見た感想は、これが結構オーソドックスなコ
メディで面白い。                   
僕自身は、北野武のようなどぎつい描写で来られたら嫌だな
と思っていたのだが、主人公たちに結構あくの強い俳優を揃
えている割りには、展開がそれにおぶさるようなところもな
く、話自体がそれなりに理詰めの展開なのにはちょっと見直
した感じだ。                     
物語は、几帳面な性格で、車を運転していても交通法規を完
全に守らなければ気が済まない主人公の車に、突然3人の男
たちが乗り込んでくる。彼らは銀行強盗をしたところなのだ
が、4番目の男の裏切りに合って、奪った金を持ち逃げされ
ている。                       
そこで男たちは主人公の車で4番目の男を追おうとするのだ
が、男たちがいくら飛ばせといっても、主人公は交通法規通
りにしか車を動かせない。そして主人公と3人の男の奇妙な
ドライブが始まる。                  
3人の男が誰も運転をできないというのはちょっと無理があ
るかも知れないが、その点を除けば、結構ギャグもスマート
だし、面白かった。最近この手の映画の試写会で馬鹿笑いす
る奴らには辟易していたが、今回は僕自身も結構笑わせても
らった。                       
途中のヘビメタでラップを歌うシーンが口ぱくなのがちょっ
と残念だったが、エンディングもそれなりに良い感じだった
し、僕は気に入った。                 
                           
『クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア』         
                “Queen of the Damned”
94年に公開された『インタビュー・ウイズ・ヴァンパイア』
の続編の映画化。                   
前作に主演したクルーズ、ピット、バンデラスらは一人も出
演していないが、本作では、昨年8月に飛行機事故で亡くな
った歌手アリーアの出演が話題になっている。でも、宣伝で
アリーアばかり売り込むのは、他の俳優たちにちょっと可哀
想な感じがした。                   
本作でアリーアが演じているのはタイトルロールのクイーン
ではあるけれども、本作には他に、ヴァンパイアに魅かれて
行くジェシーというヒロインがいる訳で、彼女の存在の方を
もっとアピールしてもらいたいものだ。         
実際ジェシーというのは、ヴァンパイアの研究組織の研修生
という役柄で、ヴァンヘルシンク教授の女性版なのだが、全
てを判った上で、ヴァンパイアと対決するヒロインというの
は、『エイリアン』のリプリーみたいなもので結構魅力的な
存在なのだが。                    
物語は、前作でクルーズが演じたレスタトが 200年の眠りか
ら覚めたときのお話で、つまり前作の前日譚。この目覚めの
理由がロック音楽に魅かれてということで、ヴァンパイアと
ロック歌手の組み合わせというのは、上手い着想だ。   
まあ原作がしっかりしていて、ヴァンパイアの描き方も破綻
がないから、安心して面白く見られた。前作のようなオール
スター大作ではないが、ホラー映画としては良い方だろう。


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井口健二