せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2008年11月18日(火) 最初の練習

 ジオラママンボガールズの練習を、僕の部屋で。
 マルゴリータなす嬢にわざわざ来てもらい、夕飯を一緒にすませてから、始める。
 今日は、とりあえずの選曲の決定と、振りの思い出しの作業。
 いつも一人でいる部屋が、にぎやかになった。
 踊ったりしたのだけれど、下からの苦情もなく、さすがに古い建物はしっかりしているなあと感心。
 あまり一度にがんばると、明日明後日あたりにつらくなりそうなので、さくさくと切り上げる。
 また、週末に集まって続きをやろうと約束。


2008年11月16日(日) フライングステージワークショップ

 フライングステージのワークショップ。
 今日は、ギリシャ悲劇の「エレクトラ」を題材にする。
 決定的な対立とはどういうものか。
 日常ではなかなか起きないほどの厳しい対立、そして、自分の思いを相手にまっすぐぶつけるということをやってみる。
 言葉は思いを伝えるものだったはずなのに、いざ、思いを伝えようとするとき、言葉に何を載せればいいのか、考えてしまう。
 「何を」と考えて思い浮かぶことはいろいろあるけれど、声の大きさやはっきりしゃべることとは、ちょっと違う何かをつかまえたいと思う。


2008年11月12日(水) 中国語指導

 劇団劇作家の合評会におじゃまする。
 台本を書いている真っ最中の今、人の作品について感想を言うのは、言葉がそのまま自分に返ってくるようだ。
 終了後、タックスノットへ。毎週水曜日に店に入っている、古い友人のシムに、「ジェラシー 夢の虜」の中国語の指導をお願いする。
 日本語ばかりじゃなくて、どうしても中国語を登場させたかった。
 舞台がヨーロッパなのに、みんなが変ななまりの英語をしゃべっているアメリカ映画みたいなものじゃなくて、日本が侵略した上海に元からいた中国人のおばちゃんを登場させたい。
 芝居のことや、それぞれの近況など、楽しくおしゃべり。
 返事はまたあらためてということで。
 朝になって、引き受けてくれるとメールをもらう。
 よかった! これで、またおもしろいものになる。


2008年11月11日(火) 自己肯定イベント

 gaku-GAY-kaiでの僕のもう一つの演目、ジオラママンボガールズの打ち合わせを、メンバーのマルゴリータ・ナスと池袋で。
 彼女と僕はほぼ同い年。実は、今回、ばたばたとしていて、今年もやる?という話をしていたのだけれど、「やめるのはいつでもできる」や「一度やめるとまた始めるのはむずかしい」などと、若干、後ろ向きなやりとりをして、今年もやってしまうことになった。
 今日は、リップシンクする曲の選定と衣装の打ち合わせ。
 リップシンクというのは、この頃ははるな愛のおかげでずいぶんメジャーになったパフォーマンスだけれど、もともとは、ゲイ・シーンでドラァグクィーンが、演じていたものだ(はるな愛ももちろんその流れだけれど)。
 ジオラマ・マンボ・ガールズは、ドラァグクィーンの定義としてある、過剰なゴージャスさとは全然違う、ゆるさが身上だ。曲も、かっこいいものとは無縁で、「何それ?」というようなものばかりを選んでしまう。
 年に一回、gaku-GAY-kaiだけで実現するユニットなので、何曲かのうち、一曲は新曲を入れないとねというのが、僕らの暗黙の了解だった。
 でも、今年は、やや後ろ向きに始まったわけでもあり、これまでのナンバーをメドレーでということに落ち着いた。
 そして、食事をしながら、これも例年の恒例で近況報告などなど。
 ナス嬢は、ジオマン(ジオラマ・マンボ・ガールズ)を「年に一度の自己肯定イベント」と呼んでいる。僕も、その意見には賛成だ。
 今年も、また、ゆるゆると自己肯定しながら、gaku-GAY-kaiを楽しみたいと思う。


2008年11月10日(月) 岡崎藝術座「リズム三兄妹」

 西田夏奈子さん出演の岡崎藝術座「リズム三兄妹」を見に、駒場アゴラ劇場へ。
 客席に入ったところで、加藤記生ちゃんと田辺愛美ちゃんにばったり。おとなりで観劇。
 岡崎藝術座は、前回の上野広小路亭での公演を見ただけ。今回も、にしやんが、国民的歌手「巣恋歌(すごいうた)」を演じて、バイオリンの演奏&歌も歌っちゃうということだけを頼りに。
 初めの三十数分は、延々と無言のシーンがつづき、それから、トイレと入浴の場面が舞台上で。
 「ソファを演じます」と言ってずっと動かないでソファになっている役者さんの存在がなかったら、もう耐えられないぎりぎりのところまで連れていかれた気分。
 そのぎりぎりで、巣恋歌が登場して、あとはもう一気に、リズムに乗っけられたよう。
 リズムに敏感なリズム三兄妹と、最近リズムが少しずれてしまう巣恋歌、それに、俳優の坂田さんが好きでたまらない三兄妹の末っ子、夢子の友人のお話が、なんだかむちゃくちゃな身体能力の高さで繰り広げられる。
 前回の上野でも思ったことだけれど、誰に向けての演技なのかということを、すごくていねいに考えていると思う。
 「三月の5日間」を寄席芸人たちが観客に語るというスタイルで演じた前作は、語る相手をしっかり意識した上で、それを外し、また積み上げるということを繰り返していたと思う。
 今回も、ラストの恋が成就した坂田さんとファンのセックスのような「とんでもない動き」の後、客席に向かって「ほらね」とでも言ったような夢子の表情で芝居は終わる。
 終演後、物語を見たという感慨はないのだけれど、しっかりしたパフォーマンス、それも身体の表現に特化したものを見たという、満腹感と高揚感があった。すごいねえ・・・と記生ちゃん、愛美ちゃんと言い合った。
 にしやんのバイオリンと歌も、他の俳優のリズムをとる身体に負けない表現で拮抗していたと思う。
 受付で販売していた、巣恋歌のCDを購入する。
 にしやんに挨拶して、来年の夏の舞台のことをあれこれ話す。
 それと12月3日の歌謡ショーのことなども。
 にしやんもやたらなハイテンションでどうしたの?と聞いたら、「これで終わったから」とのこと。芝居が終わった後というよりは、マラソンとか体操とかのやっぱり体を使ったことを思い切りやったあとのような、高揚感がここにも。

 家に着いて、1月の新作「ジェラシー」がらみのやりとりをいくつか。
 出演をお願いしていた、藤あゆみさんから、出ていただけるとお返事をいただいた。
 これで、10人のキャストが全員決定だ。
 藤さんは、劇団劇作家の劇読みでご一緒しているベテランの女優さん。
 昨年のvol.1で相馬杜宇さんの「在り処」を演出させてもらった。
 ほんとに個性豊かな、幅広い層のキャストが集まった「ジェラシー」、ますます楽しみになった。

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劇団フライングステージ第33回公演「ジェラシー 夢の虜」「ミッシング・ハーフ」

一昨年、サンモールスタジオ最優秀作品賞、最優秀女優賞(関根信一)を受賞した「ミッシング・ハーフ」と新作の2本を同じ装置で上演します。

日程:2009年1月24日(土)〜2月1日(日)
会場:下北沢 駅前劇場
作・演出:関根信一
出演:(50音順)

「ジェラシー 夢の虜」
  石関 準(フライングステージ)
  遠藤祐生
  岡田梨那
  加藤裕(クロカミショウネン18)
  岸本啓孝(フライングステージ)
  日下部そう(ポかリン記憶舎)
  相楽満子(青年劇場)
  関根信一(フライングステージ)
  高山奈央子(KAKUTA)
  藤あゆみ

「ミッシング・ハーフ」
  日下部そう(ポかリン記憶舎)
  関根信一(フライングステージ)
  大門伍朗

1940年の上海が舞台の「ミッシング・ハーフ」
「ジェラシー 恋の虜」は1932年の上海が舞台
男装の麗人として名高い川島芳子と
「ミッシング・ハーフ」のヒロイン、女装の川野万里江
川島芳子の物語を描く作家の不思議な共同生活の物語
 
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2008年11月09日(日) ミュージカルしばり

 「贋作・大奥2 ATSUHIME」の稽古。
 冒頭部分を何度も。
 お約束のナレーションから始まり、ミュージカルナンバーへ、あらあらというかんじに突入。
 最初に歌うのはATSUHIMEの母役のモの字さん。
 もう一気に「ミュージカル」だ(笑)。
 その後、ATSUHIMEの少女時代を駆け足で。
 養育係を演じてもらうノイノイこと柳内さんのソロも歌ってみてもらう。
 まだ、作詞が完成していないので、聞き慣れたあの歌詞で。
 おお・・!見ていたみんながどよめく。
 続いて、中盤でやっぱり、有名なあのナンバーをソロで歌うマヤ吉さんに、こちらも聞き慣れた歌詞で歌ってもらう。こちらもまたすごい迫力で、みんな拍手!
 どちらも、カットがむずかしい曲なので、フルコーラス歌ってもらうことした。
 稽古のあと、マヤ吉さん、ノイノイ、モの字さんとカラオケへ。
 歌の練習をしなくちゃというよりも、もっと歌いたくなってしまったというのが正直な気持ち。
 「ミュージカルしばり」ということで、ミュージカルナンバーばかりを歌う、男子(一応)四人。
 マヤ吉さんとノイノイの「ミス・サイゴン」からのデュエットが、もうすごかった!
 いいもん聞かせてもらいました。
 帰宅して、ノイノイのナンバーの詞を書き上げてメールで送る。
 真夜中なのにノイノイから返事をもらう。
 よし、これでだいじょうぶ。
 思いの他シリアスになってしまったけれど、存分に歌ってもらおう。


2008年11月05日(水) 「贋作・大奥2 ATSUHIME」顔合わせ

 というか、最初の稽古。
 台本がまだ完成しないので、今日は、配役と歌ってもらう歌の確認。
 gaku-GAY-kaiのいつものメンバー、アルピーナさん、エスムラルダさん、永山くん、モの字さん、マヤ吉さん、ヤケ太さんに、「新・こころ」以来のノイノイこと柳内さん、えんちゃんこと遠藤くん、初めましての大塚零さん、そして、フライングステージのマミィともっちゃん。大人数。そして、なんだか豪華。
 gaku-GAY-kaiはフライングステージの本公演以上に、いろんな人とわいわいやるおもしろさがある。今回もとても楽しみ。
 帰宅してから、マヤ吉さんの役どころと、エスムラルダさんの歌の変更をメールする。
 一人で考えていても浮かばないアイデアが、みんなと話していると当たり前のように生まれてくる。そのおもしろさを栄養にして、今回も走っていこう。


2008年11月04日(火) わらび座「火の鳥 鳳凰編」

 いただいたチケットで、わらび座公演「火の鳥 鳳凰編」を観に、シアター1010へ。
 手塚治虫の原作をうまくまとめて、1時間50分のミュージカルにしてある。
 なんとなくもう少しシリアスなものをイメージしていたので、キャラクターの造形というか、遊びのような部分が気になりながら、それでも、全編をおもしろく見た。
 歌は、歌詞がまず先にあったようなかんじで、メロディよりも詞が聞こえてくるような印象。
 役者さんは、みんな歌がうまくて、安心して聞いていられるのだけれど。
 片腕の盗賊、我王に利き腕を傷つけられた仏師の茜丸。我王も後に仏師となって、茜丸と東大寺大仏殿の鬼瓦を競作することになる。
 被害者だったはずの茜丸がどんどん邪悪な心に染まっていく過程、そして、悪人だったはずの我王の中に芽生えた思いの対比が鮮やかだ。
 終盤、競作には勝ったものの、茜丸に「自分の腕を傷つけた盗賊は我王だ」と帝に告げられた我王は、もう一本の腕も切り落とされてしまう。残酷な結末。
 地に倒れて、苦しむ我王の姿が、なんともいえない迫力だった。

 その後、越谷の母親のところへ。
 トイプードルとネコ二匹とうさぎがいる大所帯。
 久しぶりに会ったうちのネコを抱き上げる。
 近所の野良猫たちとは違う、どっしりとした重さ。
 誰にもできないからと、ネコの爪を切る。
 駅まで妹に車で送ってもらい、車中であれこれ話す。
 帰ったというよりも、寄らせてもらったというような気持ち。
 でも、遠さは感じない。
 今度、会うのは暮れかお正月か。どっちだろう。


2008年11月03日(月) 「海の告白」

 早稲田大学公認セクシュアルマイノリティサークル「GLOW」の演劇公演「海の告白」を見に行く。早稲田祭でのイベント。
 大学のセクシュアルマイノリティサークルに所属する男の子が、サークルの面々と一緒に鹿児島の実家(海が近い)に夏休み帰省する。
 彼には、そこで一人暮らしている母親に、自分がゲイだとカミングアウトするという計画があった。
 一人だと言えないけど、みんなと一緒だと言えそうな気がして・・・というセリフが、とてもリアルに思えた。
 回想シーン、カラオケボックスのシーン。となりの部屋のノンケの友達にゲイだということがばれてしまい、しかたなくカミングアウトする、主人公の友人の姿も描かれる。カミングアウトされたノンケの友達は、彼を受け入れずに去っていく。
 後半、多くの人物が登場して、それぞれの思いを語る場面がある。
 カミングアウトのむずかしさ、孤独をかみしめるつらさなどなど。彼ら自身の言葉が、しっかりとした強さを持って語られる。
 それは、まるでフライングステージを旗揚げしたばかりの自分の姿を見ているようだった。
 自分たちはゲイだと言って、舞台に立つことの重さ。その重さを彼らも引き受けているんだということが、とてもよくわかった。
 実を言うと、21世紀を生きる現役大学生の彼らは、セクシュアルマイノリティである自分をもっと軽やかに、当たり前のように受け入れているんじゃないかと、勝手に想像していた。
 大間違いだった。世の中がどんなに変わっても、変わったように見えても、一人一人が向き合う自分との問題は、そうそう変わるもんじゃないんだ。
 主人公の母親へのカミングアウトはうまくいくのか。文字通り手に汗をにぎってドキドキしながら見守った。
 その場面で、母親と向き合った主人公が、話し始めた途端に声をつまらせた。涙ぐんでいる。芝居なのに。セリフなのに。演技で揺れている心ではなく、ほんとうに動いている心と体がそこにあった。そして、その場面は、「母さん、実は・・・」というセリフで暗転した。どうなったんだろうか? 観客の一人一人に考えることをゆだねた、いい結末だと思った。
 彼らは演劇に取り組むのは初めてなのだそうだ。それでも、冒頭のダンスシーンや、カラオケボックスでの歌(「天城越え」!)も、とってもレベルの高いちゃんとしたものだった。
 終演後、客席で、抱き合って涙ぐんでいる出演者が何人もいた。
 今日、一回だけの公演。何度も再演してもらいたい、いい舞台だったと思うけれど、きっとむずかしいだろうなと思う。
 見ることができたことに感謝。今の僕が、この舞台を見ることができたことに感謝。
 他のどんな舞台からももらえない、大切な何かを、手渡してもらった、そんな気がした。
 フライングステージの旗揚げ公演は、16年前のちょうど今日だ。


2008年11月01日(土) 鹿殺し「電車は血で走る」

 青山円形劇場をどう使うんだろうと思っていたら、電車の線路を意味する白い線が円形の舞台のぐるりに描いてある。
 電車は鼓笛隊というか楽団の行進だ。
 もうこのアイデアだけでいいなあと思ってしまう。
 実際にあった電車事故をモチーフに、関西のとってもローカルな地域の空気が円形劇場の空間にひろがっていた。
 実は事故で死んでしまった女の子(チョビちゃん)へのほのかな思いを抱えたとってもナイーブな青年が丸尾丸さん。
 このほのかさというか、ピュアなかんじが、なんともいえない。
 劇中で繰り広げられる工務店のアマチュア劇団「宝塚奇人歌劇団」の歌詞には、「ファック」という言葉が思い切り登場するのだけれど、その荒々しさとピュアなかんじが、当たり前のように共存しているのが感動的だ。
 死んだ娘を思っていつまでも電車を走らせている母親(傳田うに嬢)は、ヒゲをつけて駅長としても登場する。ヒールの靴にヒゲというアンバランスがおかしくて笑っていたら、最後にほろりとさせられてしまった。
 つかこうへいの「熱海殺人事件」を新感線ばりのボリュームのある衣装とロックで突っ走る劇中劇が、鹿殺しの原点なんだろうなあと思って、おもしろく見ていた。
 終演後、一緒になったしいたけをさんと楽屋でみなさんにご挨拶。
 劇団というものが本来持っているはずの一体感や熱のようなものが、しっかり感じられたのが、ひとごとながら、とてもうれしい公演だった。


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