せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2008年03月31日(月) 「ミステリア・ブッフ」

 のいのいと待ち合わせて、tpt「ミステリア・ブッフ」@ベニサンピット。篠原さんにもばったり。
 90年前に書かれたマヤコフスキーという人の作品を、作者の指示どおり、現代にアレンジしての上演。
 洗練された演出、俳優もみんな健闘しているのはとてもよくわかるのだけれど、なかなか芝居が入ってこない。退屈はしないのだけれど、見ながら、なんで?なんで?とずっと考えてしまう。
 原作の戯曲がおそらくそう書かれているのだろうけど、人間が描かれていない芝居は苦手なんだと気がつく。
 おもしろいなあと思う瞬間は、人と人がぶつかりあったり、ただそこにいるだけの人のいかたに惹かれたりするときなんだと思った。魅力的な人がいっぱいいたけど、それが大きなうねりにつながっていかないのがもったいなかった。
 終演後、出演していたコバヤシくんとユカさんにご挨拶。お疲れ様でした。
 帰り、のいのいとお茶をして、「新・こころ」の話をあれこれ。とりあえずの記録映像も渡してみる。どんなだか見てみてちょうだいと。
 芝居が終わってから、ひさしぶりに「しゃべったなあ」という感覚。身体があったまったような気持ちで帰ってくる。


2008年03月30日(日) Mac・・・

 「新・こころ」の記録映像を編集。というか、家庭用のデジタルカメラで撮ったものをなんとかDVDに焼ける形までもっていく。
 Macに入っているiMovieを、初めて使ってみる。便利なような不便なような・・・。ハードディスクがみるみるいっぱいになる。
 テープからパソコンに落とすことはできたのだけれど、その後のDVDに焼くことは断念。iDVDはわけがわからない。余計なお世話の機能がいっぱい。ただ、焼ければいいんだけど・・・。
 とりあえず小さなサイズで保存しようとクイックタイムに圧縮することにしたら、いつまで経っても終わらない。なんじゃこりゃ? もっといいやり方あるんだろうか? 僕のMacの力不足なんだろうか?


2008年03月29日(土) 浅草

 仕事を抜け出し、「百雀会」@浅草公会堂へ。
 春謡妙左京さんこと、マミィの出番には間に合わず、春謡妙左さんと春謡流家元による「婦系図」を見る。有名な湯島の境内の場面をほぼそのままに、歌謡曲に乗せた踊りも交えて。けなげに耐えるお蔦を演じる妙左さんが新鮮。先代水谷八重子の芸を研究したあとがありあり。
 誰にも会えぬまま、ばたばたと仕事に戻る。浅草の桜もしばらくはおあずけ。
 仕事場の近くの桜並木をのんきに見るだけで、いい気持ちになった土曜日。


2008年03月27日(木) 片付ける日

 始発直後の電車でいったん帰宅。仕事をひとつ片付けて、すぐに出かける。
 両国の倉庫で、樺澤氏運転の返しの車を待って、荷物を倉庫に入れる。
 いつのまにか、満杯になりつつある倉庫。そろそろ整理しないといけないなあ。
 その後、仕事に向かい、たまった仕事を片付ける。
 昨日の今頃は劇場にいたなあと思ったりする。久しぶりの感覚。
 芝居が終わったことをしみじみ感じる。
 徹夜明けのせいだけではない、腰の痛みがちょっと心配。


2008年03月26日(水) 「新・こころ」千穐楽

 長丁場の公演も今日でおしまい。
 今日は開演前のダメだし、小返しもなし。何人かにいくつか気をつけてほしいことを伝える。
 マチネ。平日の昼にもかかわらず、大勢のお客様に来ていただく。ロビーでのご挨拶がとても楽しい。
 ソワレ。開演して間もなく、お客様のアクシデントでいったん中止して、40分後の改めて初めから上演することに。
 ずっと見守り、お待ちいただいたお客様に感謝。
 終演後、いつもにまして大きな暖かい拍手をいただいた。
 ソワレ千穐楽は、ひさしぶりだ。
 大急ぎでばらして、かたづけて、0時過ぎに撤収。
 劇場の地下の坐和民で打ち上げ。大いにもりあがる。こんなに楽しく、みんなでお酒が飲めていることに感謝。
 遅く始まった打ち上げは、朝を待つまでもなく、すぐに朝になった。
 なんとなく別れて帰るのが名残惜しい。
 ほんとにいい仲間と一緒に作り上げた芝居だったなあとあらためて思う。
 どうもありがとう。
 そして、ご来場いただいたみなさんにも。
 どうもありがとうございました。


2008年03月25日(火) 卒業式 「新・こころ」7日目

 富士見丘小学校の卒業式。電車が遅れて、ぎりぎりに到着。体育館の入り口で入場する6年生の最後尾と一緒になる。順番を待っていたにひくんと目が合う。にっこり笑った笑顔がとてもすてきだ。
 今年もまた、卒業証書授与で名前を呼ばれるときに、一言ずつスピーチをする6年生。今年は、去年の卒業生以上にはっきり、きちんと自分の思いを伝えてくれた。
 式のあと、控え室で、校長先生、平田さんと来年度の授業についての打ち合わせを簡単に。まもなく始まる新年度。「100年つづける」と言ってくださった富士見丘小学校の演劇授業。その2年目が始まる。100年続けるにはどうしたらいいか、そんなことも考えていく。
 「新・こころ」はあと2日目。同じ時間に劇場入りして、同じようなアップをして、そして開演の準備をする。
 芝居の現場は、いつも新鮮な何があるかわからない、新しく何かを生み出していくものだけれど、そんな舞台が毎日同じ、準備の上にあるのだということがおもしろくかんじられる。だからこその新鮮さか。
 本番の舞台は、楽日近くのややていねいに演じようとする芝居になっていたかもしれない。それでも、最後にはあたたかい拍手をいただく。どうもありがとうございました。
 終演後、お客様にご挨拶。
 22時完全退出な中、大急ぎで着替えて片付けて、外に飛び出すのであわただしい気持ちのままのご挨拶になってしまい、もうしわけない。
 いつもの、そして、なつかしいみなさんに会える。芝居を続けていることのご褒美のような時間。
 帰り、見に来てくれた今井くん、まみぃ、早瀬さんたちと、早瀬さんの知り合いのおでんやさんに食事に行く。桑島さんたちも偶然一緒になり、おいしいおでんを楽しくいただく。
 明日は千穐楽。


2008年03月24日(月) 「新・こころ」6日目

 平日、ソワレのみ。
 朝から雨降り。桜も咲いたというのに、花冷えとはこういうことを言うのだろう。
 ゆっくりと劇場入り。ここ数日、毎回やっているマッサージと舞台と客席の両方を使ってのアップを今日も。
 開場前に、場面の小返しを。微妙なニュアンスを確認。
 今日も暖かい客席に支えられながらの2時間強の旅をする。
 楽屋での僕のいかたに若干の変化。早変わりで忙しい、のいのいとまみぃのお手伝いができるようになった。帯を結ぶお手伝いを、モニターに耳を傾けながらさせてもらう。すぐ近くでヤケ太さんは脱いだ着物や帯の片付けをしている。
 終演後、今日も大急ぎで着替えて、メークを落として、外に出る。今回、この着替えが一番忙しいかもしれない。
 劇場の前でお客様にご挨拶。「夏のせいかしら」でお世話になった、藤井さん、柏木さん、板垣さん、タックさん、マサキさん、アイザワさん、うれしい感想をいっぱいいただく。
 帰り、今日もタックスノットヘ寄る。芝居の宣伝をかねて。たくさんの方にみていただけたらと本当に思う、今回の「新・こころ」だ。


2008年03月23日(日) 「新・こころ」5日目

 14時開演のマチネのみ。
 少しだけ芝居を広げてもらえるよう、みんなにダメだし。
 大声を出すということだけじゃなく、客席の一番後ろの人をもっと意識してほしいと。
 「新・こころ」は、書かれた言葉とは、微妙に違う気持ちの積み重ねで場面ができている。字面どおりではない、その裏にある気持ちといっていいようなものは、ただ声を大きくするというだけでは、きっと失われてしまうかもしれない。
 そのあたりとていねいに説明して、それでも芝居を広げてみてほしいと話した。
 そして、今日のマチネの公演は、何が変わったというほどの変化はないものの、明らかに芝居の輪郭がくっきりした印象。
 終演後、楽屋をのんびりと片付ける。衣装もていねいにケアをしておく。
 ロビーでいただきもののビールをちょうだいする。制作陣、スタッフ、そして役者衆がぱらぱらと残っておしゃべり。結局、22時近くまで話し込んでしまい、夜公演があるのと同じような時間に撤収する。
 久しぶりのタックスノットヘもっちゃんと一緒に顔をだす。
 舞台を見てくれたぱちぱちや、エスムラルダさんとおしゃべり。あっという間の土曜の終電で失礼する。


2008年03月22日(土) 「新・こころ」4日目

 二回公演の日。今回、「きっと大変そうだから」と二回公演の日はいつもより少ない。
 予想通りの大変さは、芝居自体のテイストよりも、むしろ着替えの多さかもしれない。
 劇中、一番多く着替える柳内さんは、都合6回着替えなくてはいけない。
 マチネ終演後、下北沢の町を買い物がてら歩く。
 細かい手直しをして、二回目の舞台の開演を新鮮な気持ちで迎える。
 本番中の役者の居場所がほぼ同じになってくる。狭い舞台裏と楽屋で誰がいつどこにいるかは、着替えと転換の多い、この舞台ではとても大事なことだ。
 僕は、自分の準備をしながら、舞台袖では舞台の声に、楽屋ではモニターに耳を傾ける。微妙なニュアンスが積み重なる場面の、その微妙さをチェックする。それもまた楽しい。


2008年03月21日(金) 「新・こころ」3日目

 夜公演のみなので、少し余裕のある劇場入り。
 抜き稽古を少しして、昨日のダメだし、というかいくつかの確認。
 その後は、各自が準備をして、開演に備える。
 当たり前のように、一人一人のやることが決まって、そのことをすんすんと運んでいく、そんな時間が流れていく、開幕何日目かの雰囲気が、僕はとても好きだ。
 確認したことをきっちりクリアしながらの舞台。僕がえ!?と思うようなミスをしてしまい、みんなに平謝り。お客様には、気づかれなかったかもしれないのだけれど。
 今日のポストパフォーマンストークのゲストは、エスムラルダさん。すっぴんで「こころ」について話をする。お父上が、漱石の「こころ」をプレゼントしてくれたという話で盛り上がる。
 帰り、エスムラルダさんと食事をしながら、おしゃべりの続き。ポストパフォーマンストークでしゃべりきれなかったことを、お互いに。


2008年03月20日(木) 「新・こころ」2日目

 マチネのみの2日目。昨日からの雨が本降りに。朝方からとても寒い一日。
 キャストのみんなで舞台上でアップをする。しりとりを舞台上で、客席を使って。駅前劇場全体を自分のものにできるよう。
 マチネ開演。大勢のお客様に見てもらいながらの2日目の舞台。雨の中のご来場、ほんとうにありがたい。
 暖かな客席に助けられて、いろいろな発見をしながら、ラストまで。
 終演後は、溝口彰子さんを向かえてのポストパフォーマンストーク。漱石の「こころ」、ヤオイについて、いろいろ語り合う。
 その後、いただきものの缶ビールを空けて、ロビーで幕内の乾杯を軽く、というかさくさく飲み話す時間。音響オペの小宮さん、照明のオペの中能くん、舞台監督の鳥養さんに「gaku-GAY-kai」について熱く語る。
 劇場を出て、まちゃ、えんちゃん、のいのい、もっちゃんと肉を食べようという話になり、焼き肉屋へ。肉をがつがつ食べながら、しゃべりまくる。
 帰り道の乗り換え駅、代々木上原。えんちゃんへの出演のオファーは、この駅が最寄りの稽古場で稽古中にしたんだった。トイレでたまたま一緒になって、用を足している最中の彼に、「来年の3月の公演に出ない」と話しかけた。トイレで出演依頼なんて・・とすぐに反省した。それでも、結局、出演してもらうことになった。この駅を通るたびにふと思い出す、そんなこと。
 同じ舞台でご一緒したさこぞのさんからいただいた花束を、部屋に活ける。春分の日の今日、春がようやく部屋にもやってきた気分。


2008年03月19日(水) 「新・こころ」初日

 衣装で使う帯枕が見つからずさがしまわる。ふと目についた隣の部屋の箪笥の引き出しをあけたら、そこに入っていた。その箪笥は亡くなった叔母の形見で、中に着物がどっさり入っている。長く料理屋の仲居をしていた叔母は、着物が仕事着で趣味でもあった。どうしてその引き出しを開けようと思ったのかわからないが、なんだか「これを使いな」と言ってもらったような気がした。ありがとうと声に出してから、部屋を出た。
 今日は11時入り。少し前に下北沢について、スタバでコーヒーを買って駅前広場にもどったら、キャストがほぼ全員駅前に立っている。まだ開いてないみたいというまみぃ。と鶴丸くんがペルモビルの階段を上っていくのを見て、みんなで「つるちゃん!」と呼び止めて、「まだ開いてないんだって」と合流したところに、まちゃが来て、「何してんの?」と言われる。微妙なタイムラグだったらしい。みんなで集団登校のように劇場入り。
 14時からのゲネプロの準備。稽古もあちこち。今日の炊き出しは、親子丼。
 ゲネ終了後、もろもろの確認。
 初日開演の前の、客席作りをキャストのみんなと制作陣で。10名の男子が一緒になって作業している姿が、とてもほほえましい(僕は主に見ていたので9名か)。
 開演。お客様の前で、今回も芝居が立ち上がって、生まれていく。
 僕は、うっかり長く着てしまった着物の扱い、特に衣紋の抜きの微妙さにとまどいながら、それでも今ここにいることを存分に楽しませてもらう。そして、初日終演。
 終演後、お客様にご挨拶。初日乾杯に流れる。
 久しぶりに飲んで、電車を乗り過ごし、一駅先の綾瀬まで行ってしまう。電車が遅れていたせいで、なんとか無事に帰宅。


2008年03月18日(火) 劇場入り2日目

 場当たり。照明と音響のきっかけと、舞台上の位置の確認。
 昨日一日かけてできあがった装置の上で、どう動いて芝居していくかをどしどしやっていく。
 稽古場でできると思っていたことができなかったり、そのかわりに思いもしなかったことをやることになったりと、たくさんの変更を加えながら舞台ができあがっていく。
 昨日から、樺澤氏、そしてマチャの手によって、炊き出しが昼食、夕食に登場。
 カレーライス、麻婆ライス、すき焼き丼、焼きそば、豆乳鍋と、豪華、そして盛りだくさん。暖かいものが食べられるのはとてもうれしい。
 今日は、初めてかつらと着物をつけての稽古。ドラァグクィーンのなりをしているときよりというか、また違った緊張がいつも頭の上にあるかんじ。歩くのには足下を気にしながら、頭も気になるという別々なかんじにとまどう。
 舞台転換、早変わりと、全員がばたばたと動き続ける今回の舞台。みんなでつくっているというかんじがひとしおだ。
 昨日はちょっとよそよそしく思えた劇場が、今日は味方に思えてきた。そんな一日の変化。

 「新・こころ」、いよいよ明日初日です。どの回もまだチケットのご用意ができます。
 今までのフライングステージにはなかったような、でもフライングステージでなければできない、そんな舞台になっています。
 みなさまのご来場をお待ちしていますね。ご予約は関根または劇団までどうぞ!
 よろしくお願いいたします。


2008年03月17日(月) 劇場入り

 朝から仕込み。久しぶりの駅前劇場。2003年の7月以来。
 舞台装置がどんどん組み上がり、照明も入っていく。
 稽古場で平面だった舞台が、立体になる。
 役者衆は、それぞれの衣装の確認や楽屋づくり、セリフあわせに余念がない。
 小道具の確認やらなにやらの買い出しに出たり入ったりしながら、ここで芝居をやるんだという気分で下北沢の町を歩く。これもまた久しぶりの感覚。
 メーク用品の買い出しに行ったスズナリのならびのブティック。
 対応してくれたお姐さん(!)にいろいろ相談して、いつもは使わない「落ち着いた」色のファンデーションを購入。知り合いに新橋の芸者さんがいたとのことで、「芸者はね、あごと背筋よ」とアドバイスをもらう。芸者役だとは言ってないんだけど、日本髪をかけると話したら、そんな伝わり方を。参考にさせてもらおう。どんな芝居?と聞かれて、「こころ」の話をする。僕の役柄も。「いいと思う。がんばって!」と言ってもらう。
 夜、明かりあわせを時間まで。
 シンプルな、でも、こんな装置、フライングステージは駅前劇場で建てたことないという規模の装置に、照明が入って、どんどん世界が新しく生まれていくのを見る。
 家にかえって、小道具で使う漫画、よしながふみの「大奥」を手にとってしまう。この人の嘘は、つよくて、そして美しい。
 これから劇場で生み出していくはずの、大きな嘘もこうでなくっちゃねと、はげまされた気分。


2008年03月16日(日) 稽古場最終日

 午後、トラックがきて、装置と一緒に小道具、衣装がつまれていく。
 夜、通し稽古。2時間7分というタイム。途中のラップは、昨日までとほぼ同じ。
 切れ目なく続いて、明治と現代を行き来する今回の舞台は、場面の切り替えがなかなか大変だ。
 照明と音響に助けてもらいながら、どんどこ芝居が進んでいく様子をイメージしていく。
 この稽古場とも今日でお別れ。掃除をして、稽古場打ち上げのビールで乾杯。
 駅まで向かう道のジンチョウゲはもうちりかかってる。
 稽古をしているうちに季節はかわっていった。今年もまた。
 明日は小屋入り。


2008年03月13日(木) 時代劇か?

 まみぃと二人、昼から大門さんのお宅に伺い、衣装とかつらの相談。
 かつらをかけさせてもらって、おお、こんなことになるんだ、とびっくり。
 僕が演じる、奥さんは、登場人物のなかで一番年かさで、なので、かつらも一番「時代」だ。
 そのまま、稽古場へ。
 がつがつと稽古する。
 初日まで、6日。


2008年03月12日(水) 小道具到着

 海へ行く場面。男くさい、そしてナイーブな場面。とてもせつない。
 漱石の言葉がもりだくさんの重厚な場面。こちらもせつない。
 もっともっとと積み上げる。
 夜、照明の黒尾さん、音響の中村さん、小宮さん、舞台監督の鳥養さん、制作の樺澤氏、三好さんが来てくれる。
 タカツからの小道具も到着。これから実際の道具で稽古ができる。
 大勢のスタッフの中、あちこちを通してみる。
 役者達は少し緊張気味。でも、そんな状態でも見えてくるものは何かを、しっかり確認する。



2008年03月11日(火) 小道具と衣装・かつら

 濃霧のせいで東武線が動かない。北千住まで1時間近くかかってしまう。
 タカツで小道具の選定。小池れいさん、鳥養さんと。
 味のある小道具をいくつも選ぶ。
 その後、美術の打ち合わせ。
 稽古場へ。
 午後の時間、えんちゃん、まちゃと、「こころ」後半の山場、二人で海に出かける場面、そして、自殺した小宮を発見する場面。原作に描かれていないことを、いろいろやってもらう。
 夜、衣装とかつらでお世話になる大門さんが来てくれる。相談あれこれ。
 稽古は、午後、自主練を外でしていてくれたもっちゃんと早瀬くんの場面から。
 その後、桑島さんの語りの場面、など抜き稽古。
 帰り、樺澤氏とうちあわせ。駅前でずいぶん長いこと立ち話。


2008年03月10日(月) ジンチョウゲとネズミ

 昨日とはうって変わって寒い朝。雨も本降りだ。
 稽古場近くのジンチョウゲが咲いているのに気がついた。春はどんどんやってくる。
 お嬢さんを中心にした場面を午後から。
 その後、昨日の続きの明治2を。積み上がってきた。
 最後は、明治1。先生と小宮(K)の場面と学生たちの場面。柳内さんに竹薮さんの所作のアドバイスをしてもらう。
 遠藤くんから聞いたネズミの話。昨日の夜中、彼の部屋にネズミが出たそうだ。あ、ネズミ!と思った次の瞬間、ネズミは壁を駆け上がり、「ブレーカーを落として」消えたそうな。真っ暗闇の中で呆然とする遠藤くん。なんだそれ?とみんなで笑う。後で調べたら、ブレーカーの中に外への抜け穴が開いていたそう。遠藤くんが困っている様子も含めて、目に浮かぶような情景だった。部屋でネズミを見たのは初めてだそう。これも、春だからか。


2008年03月09日(日) 今日から春

 あたたかな日。
 稽古場の近くの公園の梅が、ずいぶん咲いている。
 14時半開始に間に合うよう、14時着で鍵を持って行ったら、もうみんな入り口で待っていてくれる。ありがとう。
 夕方の食事の時間、今日はカップ麺率が高い。カップ焼きそばも登場。
 細かく細かく組み立てる稽古。漱石のテキストを再構成した場面。読んだだけではわからない気持ちをもとに動いてもらう。漱石が書いてないかもしれない、激しい、そして切ない感情をイメージしてもらう。リーディングのように、シンプルに演じてその先は想像してもらうということではない、切ったら血が出る人物が語る漱石の言葉が聞きたい。
 最後に、いくつかの場面を通してみる。違ったなじみ方、違ったいかたが出来てきている。どうしても重たくなっていた場面のおかしさを、いくつも見つけて、拡大する。せつなくも、おかしい、「こころ」をつくりあげていく。
 稽古場に、制作の樺澤氏と舞台監督の赤坂さんが来てくれた。もろもろ打ち合わせ。
 帰り、薄い春物のトレンチコートでもう寒くない。たぶん、今日から春だ。


2008年03月08日(土) 講談の息で

 午前中、年度末の仕事を何とか片付ける。ほんとうはもっと早くに終わっているはずだったのだけれど、これでようやく僕の手からはなれた。
 稽古は、午後、岸本さんと早瀬くんの場面。緻密に、ディテールを組み立てていく。
 夜は、桑島さんの「語り」。講談の息でお願いします、などとむずかしいな注文をする。
 パソコンに入っていた、白石加代子さんの「百物語」を少し聞いてもらう。その後、明らかに息が変わった、桑島さん。すばらしい!
 漱石の文章は、どこか東京の寄席のにおいがする。漱石が書いたものではないものだけれども、芝居の中に、そんな息がいきづいているのはおもしろいんじゃないかと思う。
 今日も一日、ずっと芝居をしている。家で、台本を書いているときとは違う、みんなで作ってるんだという気持ちが、僕の背中を押してくれる。
 いつもは大人数の座組だと、はじめはこんなにたくさん!と思うものだけれど、今回は、初めからそんなふうな気持ちになることもなく、一人一人がとても近しく思える。今回の座組は、そんなチームだ。


2008年03月07日(金) 明治の学生たち

 昼間、劇作家協会へ。
 その後、れいさん、鳥養さん、王様美術さんと美術打ち合わせ@新宿。
 稽古場へばたばたと向かう。
 明治2の先生がいろんな思想を語るところ。稽古しながら、細かく手直し。
 その後、学生たちの場面。5人の男たちが、志向はバラバラなのに、ちゃんと友達でいる様子が見えてくる。立ち上がる、というのはこういうことなのだろう。
 硬派も軟派も中立派もみんな含めて、やいやい話をしている。このみんなバラバラだけど仲がいいというのが僕が描きたい明治の気分だ。
 漱石の「こころ」には描かれていない、そんな時代の空気感が、この場面にはあるんじゃないか。そう思えてくる。
 帰り、朝から一日出かけて、食事ができなかったので、一人で夕飯。
 駅前の「ぶるだっく」という韓国食堂。店名のぶるだっくは、鶏もも肉を辛いソースで炒めた物。とてもおいしいが、とってもからい。唐辛子と山椒とその他いろいろ。ほかほかとした身体で帰ってくる。


2008年03月06日(木) はいからさん

 午後、女学生たちのやりとり。衣装を着てもらって。着物に羽織りにえび茶の袴、そしてブーツも。
 柳内さんの「はいからさんが通る」の紅緒or「婦系図」の妙子のような袴姿がジャストフィット。いるいるこういう子!なかんじになった。
 衣装のたすけもあって、芝居もいろんなことが見えてくる。
 明治2の先生の家の場面。岸本さん、早瀬くん、まみぃが、漱石の文体をどう身体になじませるか、いろいろなアプローチ。
 夜、学生たちの場面。途中までで時間。続きは明日。


2008年03月05日(水) 100年

 富士見丘小学校の6年生の「卒業を祝う会」に招待していただく。
 授業や発表のときとは違う、子供達と一緒に座って、先生方、保護者のみなさんの出し物を見る。
 「雪の降る日に」の中の「心臓の音が違う女の子を見つけて、その音を聞いてみる」という場面を先生方が、再現してくれる。聞こえてくるのは、6年生の1年生からの思い出の音や声。素敵なパロディになっていた。
 6年生の出し物は、まず「君の瞳に恋してる」の合奏。つづいて「雪の降る日に」から、「ありがとう」の合唱。僕が初めに書いた詞を、みんなでアレンジしてくれて、とてもいい歌になった。今日も涙。
 その後、来年度の授業の打ち合わせを平田さん、先生方と。
 以前から、演劇授業を100年続けたいと言ってくださっている宮校長先生。
 この頃、その100年という歳月の重みを感じるようになった。抽象的な100年じゃなくて、しっかりと手応えのある時間としてと言ったらいいだろうか?
 たぶん、今、生きている僕たちはもういないだろうけど、演劇授業はあり続ける。自分がいなくなった後にあるものというのを、僕はこれまで考えたことがなかった。
 100年先のことを、100年後につながる演劇に携われていることが、とてもうれしい。
 僕の芝居は、たとえば、フライングステージは、どうしたら100年続くことができるのかなとも考えた。
 すっかり遅くなって稽古場へ。
 あわただしい気持ちのまま稽古。
 今回の「新・こころ」には、今からほぼ100年前の時代が登場する。
 今日は100年未来と、100年過去の両方を考えた。これまでとこれからのあわせて200年の間に今生きている自分。200年にわたる芝居のことを考えると、不思議な、そして幸せな気持ちになる。


2008年03月04日(火) 演劇の力

 午後は、原作でいうところの「先生と私」、先生と奥さんと私の場面。
 漱石の言葉を主につなげているのだけれど、それだけで、ええ、そうだったんだ!という意外な空気が浮かび上がってくる。
 夫が鎌倉の海で出会った学生を迎える妻の気持ちはどんなだろうqとか。そんな三人で酒を飲むってどういうことだろうとか。
 今回の「新・こころ」では、そんな舞台化してみただけで浮かんでくるいろいろがおもしろい。文字として読むのと、人物として話すのとでは全然違うんだもの。読み方が甘いということなのか。いや、演劇の力だと思いたい。シチュエーションを生きて、言葉を発してみて初めてわかることがあるということだ。
 夜は、昨日に続いて、着物で稽古。今日は、男子の袴着用率を高くしてみた。
 着物で下駄を履いて歩くと、それだけで芝居の息が変わってくる。
 最後は、学生たちの場面のエチュードをやってみてもらう。
 それぞれが好きな映画について話をしている5人。
 台本では、最近読んだ本についてあれこれ言い合う、硬派と軟派の学生たちだ。


2008年03月03日(月) 着物で稽古

 今日から、固定の稽古場@亀戸。東京の西の方や、神奈川在住のキャストのみんなにはもうしわけない遠さ。
 午後、岸本さん、早瀬くんのやりとり。現代の場面とそっくり同じシチュエーションの明治。漱石の言葉をわりとそのまま使っている場面。どう成立させるか、一緒に考える。
 夜、全体で。実寸のバミリをとった舞台で、動きを確認。微妙な高さの違いが大きな意味を持ったりする。
 今日から、着物の場面はみんな着物を着ての稽古に。僕もひさしぶりの和服。やっぱり余計に汗をかく気持ち。
 ここはどこの稽古場だろう?というような不思議なかんじ。でも、ぐーんと明治が立ち上がってくる。
 今日はひなまつりなので、稽古場に桜餅を持っていった。
 さすがに三月、昼間はぽかぽかと暖かい。
 駅までの自転車にも、もう手袋はいらない。


2008年03月01日(土) 「新・こころ」稽古

 午後、岸本さんと早瀬くんの稽古をみっちり。ヤケ太くんに見てもらいながら、「萌え」ポイントを探る。もとい、芝居を正確に組み立ていく。
 夜は、その続きから初めて、女学生の場面。その後、茶の間の場面に手を入れる。より賑やかに。
 マミィが古道具屋で買ってきてくれた下駄の裏に、「Happy Birth day ○○くん」の書き込みがあった。もう一方には、二人の名前をいれた相合い傘とメッセージも。「こんなこと直に書くから別れるんだよ。なんでカードにしないかね」とマミィ。そのとおりだ。
 稽古の後、小池れいさん、照明の黒尾さん、舞台監督の鳥養さん、照明オペの中野くんと打ち合わせ。
 小池さんが持ってきてくれた美術プランをもとにして。
 やけに早い土曜の終電、週末は深夜バスがないので、駅までダッシュして滑り込みセーフ。


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