せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2006年09月30日(土) 「許しつづける女たち」稽古

 あっくんこと、加藤敦洋くん出演のシアターギルド公演「オデュセウスの涙」@下北沢「劇」小劇場を見に行く。
 受付をしていたあっくんに挨拶。有賀くん、まちゃ、ミカちゃん、ツナコと合流。
 新生児取り違え事件を発端にした現代の失踪と放浪のお話。
 あっくんが強烈なスーツ姿で登場。「許しつづける女たち」の樋本くんとは全然違うキャラ。終演後、全然違う芝居を書くからね!と話して失礼する。

 夜は稽古。恵比寿にて。
 間の時間に台本を書き進めて、遅く稽古場入り。
 4場の続き。あと1ページで終わるというところまで。
 昨日の4場前半のオトコ達のやりとりに対して、後半はオンナたちがメインの場面。
 もちろん、個性的な男たち、スミケンにツナコがしっかり登場。オンナたちが語る中にマチャと山本くんも登場しての品定めな場面。
 時間がなくて、読み合わせのあと、わたわたと立ってみる。これまでの4つの場面の中では一番芝居芝居したシーンかもしれない4場。
 週明けの稽古でしっかりつくっていきたいと思う。
 帰り、良太郎さん、リマちゃんとおしゃべりしながら。
 次回の火曜の稽古には、とにもかくにもラストまで持っていく約束をする。
 リマちゃんとは、今回、場面の間に流れる曲についての話を。
 別れしなにみんなに話したように、今、僕は台本を書くことも稽古も楽しくてしかたない。台本遅くて迷惑をかけているのに、申し訳ない。キャストのみんなも書いている人物もとても身近に感じられるようになってきたせいだろうか。
 電車の中でそれぞれの人物の着地点と出入りのテンポを再検討する。


2006年09月29日(金) 「許しつづける女たち」稽古

 4場の前半を持っていく。小谷津さん、有賀くん、スミケンのみのオトコばかりのやりとり。
 ずいぶん前に書いて、成立するんだろうか?と思っていたややヘビーな場面を、やっぱりこれで行こうとほぼそのまま構成した。
 昨日の稽古場での小道具についてのやりとりをそのまま使わせてもらって、オトコ二人のやりとりに血が通うようになった気がする。
 最後に、2場を通してみる。それぞれがどういうふうに作用しあっていくのかが、役者のみんなにも俯瞰で見えてきたんじゃないかと思う。
 今日も稽古を楽しませてもらった。


2006年09月28日(木) 「許しつづける女たち」稽古

 ナレーションの仕事。今日はソネットチャンネルの「となりのこぱんだ」スペシャル。パンダの声のアテレコ。中国の四川省のパンダしかいない動物園(パンダ園)の子供パンダの動きにセリフをあてる。メリハリのある動きではないので、なかなか難しい。癒し系をめざすが、この間の「二人でお茶を」の余韻で微妙に札幌なまりのあるパンダになってしまったかもしれない。
 放送は10月1日、CSのソネットチャンネル(749ch)を見ることができる方は、どうぞご覧下さい。

 夜は稽古。幡ヶ谷。
 昨日の続きの2場。息で芝居をしないで・・というダメ出しをきっちりクリアしてくれたミカちゃん。
 2場最後の2人のやりとりをていねいにつくっていく。セリフをどういうかではなく、セリフのないところの気持ちの変化を確認していく。その通過点をおさえながらやりとりが進んでいくことを。
 2場を通してやってみて、ミカちゃんの気持ちのダイナミックな変化を確認してもらう。
 続いて、3場。2場の稽古をみてもらっていたマチャにセリフじゃないところの芝居をていねいにとお願いする。
 あっくんとスミケンの代役はアカネちゃんとタマキちゃん。代役の無責任さでのびのびとしたいい芝居。
 稽古の合間に、この芝居の最後までの流れを説明する。それぞれの人物の着地点について。昨日から考えていたことを話したことで、もう一つ具体的になった気持ち。これはあくまでも僕の気持ちなので、みんなにはとにかく台本を渡さないと。
 稽古を終えて、外に出たら、間に合わないかもしれない覚悟で来てくれたスミケンと合流、ばたばたと彼の役の着地点を話す。
 商店街のクレープやさんに何人かで寄る。クレープなんて何年ぶりだろう。チーズポテトサルサという、別にクレープじゃなくてもなメニューをオーダー。一人じゃ絶対食べないよなあ、クレープ。


2006年09月27日(水) 「許しつづける女たち」稽古

 久しぶりに2場の稽古。絶対王様の稽古で使ったことのある砧の稽古場。
 アカネちゃんとタマキちゃんをメインに。
 やりとりの基本をていねいに積み上げていく。
 ミカちゃんとタマキちゃんの姉妹の場面が、おかしな中にしみじみしたものがあるおもしろいシーンになった。しみじみ向うにおかしさがもっと見えてくるようになったらいいな。
 今日、男性陣は小谷津さん以外、出番がなし。申し訳ない。
 先に進まねば。

 夜、宇宙堂の加藤記生ちゃんと電話で話す。今週末からの新作の稽古の真っ最中。チケットのお願いをしておしゃべり。
 連作の第二部の今回、前回はフライングステージの公演に出てもらっていたため、出演を予定していたものの結局出演できなかった。今回は、その分もというかんじでがんばっているそうだ。
 近況をあれこれ話して、見に行くときには脱稿してきれいなカラダになってるからと伝える。
 
 台本は、後半の展開を再検討。リマちゃん演ずるところの美咲の物語を練っていく。30歳になろうという、派遣OLのホンネ、夢と現実について。
 今回の「許しつづける女たち」は、僕にとっての初めてのフライングステージ意外への書き下ろしだ。
 「ゲイ」のゲの字も登場しない(そうでもないか?)芝居を書くのも初めてで、どこに僕でなくちゃ書けないというものがあるのか、そこが一番心配なところだった。
 書きながら思うのは、ミカちゃん演ずる春菜とリマちゃん演ずる美咲は、どちらも一人の人間が自分の人生を選んだ結果、わかれ道を違う方に進んでいった結果なんだろうということだ。
 僕にとっては、芝居をしてなかったら、何してたんだろうとか、あの時、正社員になれって言われて、そのまんま勤めてたら、今の僕はどうしてるんだろうという思いにとても近い。
 30歳を目前にした彼女たちが、今までを振り返り、これからを考える、そんなきっかけになる、正反対な道を選んだ二人の出会いのお話だ。
 美咲の物語は、とっても軽やかだけど、その向こうはとっても切なくなりそうで、僕はややシビアな展開を用意しなくてはいけないかもしれない。
 アリとキリギリスの物語のキリギリスが冬になって、凍えて死んでしまうんではなく、それでも、ずっと歌いつづけてるそんな話になるといい。
 僕の願望をかなりしっかり重ね合わせることができているのが、不思議なかんじだ。こんなふうに親身になれる芝居になったのは、そうじゃないと書けないという僕の瀬戸際の判断か。
 ともかく、あともう少し。脱稿めざして、がんばらねば。


2006年09月26日(火) 「許しつづける女たち」稽古

 成城学園前が最寄りの稽古場。駅からさらにバスに乗る。
 大雨ですごい天気。バスで一緒になったアカネちゃんと稽古場へ。
 3場のラストをもっていく。
 大勢の人間がばたばたと登場するにぎやかな場面。
 まずは読み合わせをして、立っていく。
 めんどくさいオトコ達がわらわらいるのがおかしくもうっとおしいシーン。
 最後は、時間ぎりぎりまで3場を通しておしまい。
 帰りはまだ雨模様。最寄り駅に着いたらひどいどしゃぶり。30分雨宿りして小降りになるのを待って自転車で帰る。家に着く頃にはすっかり止んでしまっていた。まただよ・・と納得がいかない。
 舞監の田中さんから床材の写真を送ってもらった。
 きれいな木目のリノ。これでいこうと思う。


2006年09月25日(月) 稽古休み

 昼間は仕事。急に涼しくなったせいか、風邪気味の人が多い。僕も鼻水が出るのだけれど、これは風邪というよりは秋の花粉症じゃないかと思う。マルゴリータ奈須に教えてもらった、鼻の穴に直接塗るタイプのクスリでなだめておく。
 森川くんから札幌の写真をもらう。今回、上演中の写真はないので(ビデオも)、思い出のよすがは、一連のスナップだ。
 ここしばらく「二人でお茶を」と「許しつづける女たち」、それに劇作家教会の仕事にかかりきりで、何本も芝居をごめんなさいしてしまった。
 あきやんが出ていた心日庵、しいたけをさんたちの絶対王様、松之木天辺さん出演のイデビアンクルーなどなど。ほんとうに申し訳ない。
 何も抱えてない、きれいなカラダで、シンプルに芝居を見ることができるよう、まずは今月中の脱稿を目指す。


2006年09月24日(日) 台本

 久しぶりにどこにも出かけない日。一日、家にいて、台本にむかう。
 窓を開けていると、気持ちのいい風が入ってくる。
 札幌のからっとした陽気を思い出す。
 夜、gaku-GAY-kaiの新たな出演者になりそうな人とメールのやりとり。
 「許しつづける女たち」にかかりきりでいるけれど、gaku-GAY-kaiの準備もはじめないといけない。
 今月末締切の原稿と、今月末脱稿予定の台本。2つを行ったり来たりしながら、覚悟をきめて、一歩も外に出ない。


2006年09月23日(土) 「許しつづける女たち」稽古

 続きの台本をとにかく書いている。
 全体の構成とはりめぐらした人物の伏線の改修にとりかかる段取りで、数学の問題かパズルを解くような頭の使い方をしている。
 結局、これが正解というものにたどりつかず、今日も新しい場面を保留させてもらう。申し訳ない。
 3場のラストで、何が起こるかがとても大事で、ここにどんなコマをはめるかで全体像が大きく変わってくる。ピシッとはめて、一気に芝居が動き出すにはどうしたらいいか。久しぶりにパソコンを前にうなる。
 稽古は、そんなわけで、小返しを中心に。
 久しぶりのタマキちゃんの登場シーン、最後の登場人物、スミケンのキャラについてをいろいろと。
 美香ちゃんのキャラがぐーんと大人っぽくなってびっくり。どう作ろうかではなく、やりとりをつづけていくうちにできあがってきたかんじがおもしろい。
 続く、3場の冒頭、稽古の続きで2場の終わり方を踏まえてくれるかなとお願いしたマチャと有賀くんのやりとりが、とっても軽やかにはずんできた。とても楽しい変化。
 その後、登場した美香ちゃんは、大人なかんじがそのままで、登場したスミケンとのやりとりのベースが、きっちり見えてきた。いいかんじだ。
 今日はスタッフ打ち合わせ。稽古を早めに上がって、千歳船橋から三茶までバスで移動。竜太郎さんと美香ちゃんと一緒に。
 舞監の田中さん、音響の鈴木さんと、打ち合わせ。
 まだ完成してない台本を前に、もろもろの確認。
 とっても早い土曜の終電のせいで途中でばたばたと失礼する。駅まで走って、ぎりぎりで間に合う。
 終電の中でずっと膝を抱えてうつむいていたリーマンのお兄さん。ゲロというか黄色い液体をテロテロと吐いて、次の駅で降りていってしまった。僕は少し離れたところだったので、被害なし。匂いもそんなになかったので、逆に近くまできてびっくりする人が続出。空いたシートに近寄っては驚いて離れていく。ミュールを履いたほろ酔いの今時のギャル×2がもろに踏んづけて大騒ぎ。お気の毒でした。


2006年09月22日(金) 「許しつづける女たち」稽古

 久しぶりに1場の稽古。前にとっても苦労していた動きが、するっと当たり前に出来ている。芝居が体になじむというのはこういうことなんだろう。
 前は、客席を意識しないで、まずは相手との関係だけでそこにいてほしいと言っていたのだけれど、今日は、見え方を考えて、立ち位置や動きを整理していく。
 1場前半は有賀くんが舞台を引っ張っていく。前に進むことと、セリフを相手にかけていくことをきっちり意識してほしいとお願いする。
 初めのうちは、さらさらした印象だったのが、稽古の後半になって、芝居が生き生きと動き出した。この違いはなんなんだろう? この違いをきっちり言葉にして伝えるのが演出の仕事なんだろうな。
 ピンポイントで登場するアカネちゃん、それにツナコが、一回毎に新鮮に芝居をしてくれていて、おもしろい。
 最後に一度通せるかなと思ったのだけれど、今日はここまで。
 先に進もう。


2006年09月21日(木) 金木犀

 仕事のため、急遽稽古をお休みさせてもらうことに。ほんとうに申し訳ない。
 昨日から風のなかにキンモクセイが匂っている。ずっと昔、世田谷で独り暮らしをしていた頃、その年はじめてキンモクセイの匂いを感じたのは、9月15日だった。以来、9月15日にはそんなことを思い出すのだけれど、近頃は、10月になるまでなかなか匂ってくることはなかった。今年はちょっと早い気がする。
 匂いの記憶と一緒に、とっても一人で部屋にいたあの頃の自分がいつも思い出される。ちょうどフライングステージを始める前、芝居をやめていた時期だ。
 夜、ほっかりと時間が空いた。なんだかとってもひさしぶりなかんじ。少し落ち着いて台本を読み返し、書き進めていく。
 夜中、外から猫のケンカする声が聞こえてくる。うちのもいるんだろうか? ずいぶん遅くなって帰ってきた猫は、怪我はしてなかいものの、毛並みが荒くなっていて、やっぱり暴れてきたんだねえというかんじ。


2006年09月20日(水) 富士見丘小学校演劇授業 「許しつづける女たち」稽古

 富士見ヶ丘小学校の演劇授業。子供たちに書いてもらったお話をもとにした、発表のための授業の第一回目。
 朝から気持ちが落ち着かなくて、6時に起きてバタバタする。途中、新宿線が遅れて、昨日平田さんと早めに行きますと言ったのに結局ぎりぎりになってしまいそうになる。富士見ヶ丘の駅から平田さんに電話したら、「今日は3,4時間目ですよね」と言われる。1時間早く出てきてしまった。駅前のドトールで一息ついて落ち着いてから学校へ。
 今日は、篠原さん、青井さん、健翔さん、里沙ちゃんと、これからの授業で一緒に芝居をつくっていく大人が勢揃いした。
 校長室で子供達のお話の感想を言い合ったあと、特活室へ。
 渡り廊下で、六年の女子に「あ、メガネない」と言われる。「こわしちゃったんだよね」「私、ちゃんと見える?」「ビューティフルに見える」「よし!」とおしゃべり。
 授業は、篠原さんがちゃっぴーこと小林くんの書いてきたタイムマシンのお話をもとに構成したテキストを使う。お父さんが発明したタイムマシンに子供たちが乗って未来に行くお話。原作の登場人物が生き生きとおもしろく立ち上がっている。簡潔なわかりやすいセリフには、今時の言葉使いが自然にはいっていて、聞いていてもとても楽しい。
 初めにみんなが書いてくれたお話がどれもとてもおもしろかったこと。今年はその中から何本かを選んでそのまま使うというのではなく、あちこちからおもしろいところを集めて芝居をつくろうと思うこと。まだどんな芝居になるかわからないけど、今日はみんなの書いたお話がこういうふうに台本になるんだよということがわかってもらえるよう、小林くんのお話をみんなで演じてみたいと思います。ということを話す。
 まずは里沙ちゃんによるウォームアップ。扉座の豊橋でのワークショップ公演の準備から戻ったばかりの里沙ちゃん。子供達のまとめかたがとてもすてきだ。
 その後のテキストを使っての授業は、健翔さんにお願いする。
 まずは、全員で輪になって、「。」までを区切りにセリフとト書きを読んでいく。おお、こういう話かというのがよくわかる。
 続いて、セリフだけ読んでいく。やりたい人に立候補してもらって、全編を。
 この最初のチームは、さすがやりたい人だけあって、なんだかすごかった。生き生きとした芝居としてのおもしろさがいっぱいだった。
 その後、テキストの後半部分を使って、とにかく全員が読むことに。役を順に提示していってやりたい人の名前を黒板に書いていく。呼んでほしい名前で。全員分。
 一人1人名前を書くというのは、大変なことだけど、間違いがない、その後、劇中で呼ぶ名前の確認にもなる。
 割り切れなくて、人数的にこぼれてしまった男子は、携帯電話のベルの役を全部の回で。僕はこそっとそばに寄っていって、「もっといろいろな音やってごらん」とか「みんなが見えるような位置に立ったほうがいいよ」などとアドバイス。
 短い場面だったけど、子供達は生き生きと演じてくれていた。何より、やりたい人!?と手を挙げてもらったとき、どんどん「はーい!」と手が上がっていったのが素晴らしい。みんな楽しんでくれてるんだねえ。
 一人余ってしまった女子と携帯電話の彼を中心にラストにもう一回、全編を詠んでみる。初めよりも深まったおもしろさを子供達も感じただろうと思う。
 最後に、タイムマシンに乗ってる感覚というのを感じてもらうエチュード。ただの読み合わせじゃなくて、こういうことをやってくれるのが健翔さんのステキなところだ。
 タイムマシンにすごいスリルを期待していたのに、あれ、こんななの?というのを、セリフにも出てくるジェットコースターの場合との比較でやってみる。
 僕は、「じゃあ、行くぞ。せーの。、ゴー!」というおとうさんの役。ちょっと芝居をする。60人の子供達を相手の芝居。
 最後に青井さんから、「声を大きく出してとかはっきりしゃべってというようなことではなく、気持ちをはっきり、しっかり持てば声もしっかりしてきます」とお話。
 授業のあと、篠原さん、阿部先生と歩きながらお話、今日の感想、これからのことなどを簡単に。
 給食をいただいて、うちあわせ。感想を言い合う。これから、子供達が書いてくれたお話をもとに、僕と篠原さんは台本をつくり、大人達みんなで一本の芝居をつくりあげていく。
 久しぶりに大勢が集まって、あらためてなんていいチームなんだろうと思った。誰も仕切らず、ずるをせず、きちんと子供達に向き合っている。
 今日も、いろいろなアイデアが生まれた。まだまだどうなるかわからない、今年の6年生の卒業公演。どんな芝居になるか楽しみだ。

 夜は、「許しつづける女たち」の稽古。初めて行く、久品仏の稽古場。
 昨日の続きの3場。スミケンの登場シーンを中心に。いろいろやってもらう。エチュードを交えながら、同時にいくつものことをやってもらわなければいけない、この人物、この場面をていねいにつくっていく。
 帰りは、これからバイトに向かうアカネちゃんと日比谷線。夜のバイトの苦労とおもしろさについて、いろいろ聞き話す。


2006年09月19日(火) 「許しつづける女たち」稽古

 初めての稽古場、世田谷の鎌田で。
 二子玉川からバスで行こうかと思ったのだけれど、出来心で歩いてしまおうと思う。徒歩20分。道はずいぶん簡単だ。ただ、川沿いの道はどんどん暗くなって、最後の最後でちょっと道に迷う。
 一週間ぶりの稽古。
 読み合わせをしただけで自主稽古をお願いしていた3場(途中まで)を作っていく。
 札幌で芝居をしてきたばかりか、また違った目でみんなの芝居をみることができているような気がする。
 最初の立ち稽古なので、即興の要素もいろいろ取り入れて、セリフをどうしゃべるかではない、どんなふうにそこにいるかということを、確認していってもらう。
 セリフを相手に渡してはじめて、やりとりが成立する。自分の気持ちだけを表現していっても、芝居は積み上がっていかない。
 はじめやや調子が悪かったマチャがどんどんおもしろくなった。有賀くんもいいかんじ。その後登場した、美香ちゃんがマチャに負けていたのが、だんだんそこにいられるようになり、最後のスミケンとツナコ(あっくんの代役)登場では、また違った相手とのやりとりの違い方をかんじていってもらう。
 おもしろい稽古だった。
 はじめの予定では、3場をやったあと、1場から通したいなと思っていたのだけれど、途中で2場をやりますと宣言。それも、結局時間切れで今日は3場のみになってしまった。出番がなくなってしまったみんな、ごめんなさい。
 帰りはバスで二子玉まで、竜太郎さんと二人、芝居の話をしながら。
 すわりっぱなしの田園都市線の中で、明日の富士見ヶ丘小学校の授業の準備。子供たちが書いてくれたお話をもう一度全部読み直してみる。


2006年09月18日(月) レトロノート「ラン・エンド・ラン」

 札幌に来るといつも寄っている地下鉄円山公園の駅の上にある珈琲やさん「BOYS BE」に行くが、月曜は定休日でやってない。しかたなく、珈琲は諦めて、駅近くのパンやさん「円山ベーカリー」へ。ここでパンを買って帰るのも恒例になっている。イートインコーナーでパンを食べて、珈琲を飲む。ほっとする時間。
 一昨年の9月レインボーマーチで来たとき、僕は「二人でお茶を TEA FOR TWO」の取材のため、このあたりをずいぶん歩いた。
 劇中では語られないが、舞台になるホテルは、地下鉄の西18丁目と円山公園の間あたりにあるイメージだ。実際、6年前、僕が札幌の劇団に客演していて、稽古の間中、ずっとお世話になったホテルもそのあたりにある。
 お礼参りのきもちで今日もまた少し歩く。と、小雨が降りだしたので、地下鉄に乗り、琴似経由で千歳へむかった。
 森川くんとなんとか落ち合うことに成功して、ぎりぎりの時間で搭乗手続きを終える。機内では、森川くんと芝居の話をあれこれ。
 二人での稽古は実質4日しかできなかった今回の舞台。セリフはきっと「一時保存のメモリー」のようなところでおぼえてるから、きっとすぐ忘れるねといっこうさんと話したのだけれど、それでもこんなに出てくるということは、初演のときにしっかりハードディスクに書き込んであったのかもしれない。レパートリーってこういうことなんだろうか。最初の読み合わせでは「こんなにしゃべるんだ・・・」と途方にくれたのだけれど、芝居をしていると、何でもなく場面が積み重なっていく。
 いずれにしろ、信頼している森川くんと2人の芝居だからできたことだと思う。僕は芝居することだけに専念できた。舞台上でしか出会わないというのも、相手によっては心配でしかたがなかったかもしれないけど、今回は一度もそんな気持ちにならなかった。
 照明と音響を急遽お願いしたいっこうさんと本田さんにも感謝だ。よく引き受けてくれたと思う。ありがとうございました。
 そして、札幌のみなさん。特にトモコちゃん。何度お礼を言っても足りない気がしている。お疲れさまでした。
 パレードという大仕事と一緒に、また全然違う大仕事の芝居を上演するという企画をたててくれたこと、そして、忙しいなか、全部の公演につきあい、舞台に登場までしてくれたこと。ほんとうに感謝だ。
 ほんとにあっという間に羽田に着いてしまう。森川くんと浜松町の駅で別れて、札幌公演も一区切りな気分。

 喫茶店で少し原稿を書く時間をとって、夜はサンモールスタジオへ。小林くんが出演しているレトロノート公演「ラン・エンド・ラン」を見る。
 高校の野球部の仲間が、卒業後10年経って、当時の監督の3度目の結婚パーティの準備をしている。花嫁は、仲間の一人、今はプロ野球で活躍している彼が当時大好きだった女の子。仲間達は、彼を傷つけまいと、必死になって、その事実を隠そうする。あたたかなコメディ。
 役者さんたちはとても達者で、小林くんも野球部の元マネージャーという役をチャーミングに演じていた。
 途中、なんでそんなに隠さないといけないの?と思いながらも、やりとりのおかしさでずっと見続けていくことができた。はちゃめちゃなキャラクターの今は青果店の主人をしている彼が、とても達者でおもしろかった。
 終演後、同じ回を見ていた三枝嬢と一緒に小林くんに挨拶。座長の中村公平さんにもご挨拶。富士見ヶ丘中学校の発表会で会って以来だ。お世話になりました。
 帰り、三枝嬢と地下鉄で、彼女が11月に上演する舞台についての話を聞く。どんなものになるか、たのしみだ。


2006年09月17日(日) 第10回レインボーマーチ札幌 「二人でお茶を」千穐楽

 第10回レインボーマーチ当日。
 あまり早く行っても、メガネなしでよく見えず、相手が誰だかわからず失礼をいっぱいしてしまいそうだったので、ホテルと喫茶店で原稿を書き、出発時間のちょっと前に集合場所に到着。いっこうさん、パチパチと合流。札幌のみなさん、全国から集まった、なつかしいみなさんにご挨拶。至近距離で。
 札幌のパレードは規制の厳しい東京と違って、すべてがおおらかだ。フロートの高さや警察との関係も。もちろん道路の幅のひろびろとしたかんじは言うまでもない。
 今回の札幌のレインボーフラッグは、いつものレインボーカラーに白を加えた7色だ。この場にいない人、いろんな理由で来れない人、すでにこの世にいない人、彼らとも一緒に歩くという意味を込めたのだそうだ。そんな話をひさしぶりに会ったマーガレットさんと立ち話。
 出発! ゆるゆると実行委員会フロートの後あたりを歩く。時々、沿道にまわって、外からも見てみる。
 パレードを歩くのは一昨年の札幌以来、二年ぶりだ。出発のカウントダウンで涙ぐんでしまう。歩きながらも泣けてきてしまって困った。
 みんな思い思いのかっこうで歩いている。バッチリ決めている人もいるけれど、微妙にゆるいテイストがここでもとてもステキだ。
 僕のすぐ前にいたのはピンクのファーでつくったビキニをはいたゴーゴーボーイの2人。かなりいい男な彼らが、シンプルに手を繋いで歩いている後ろ姿が、とてもかっこいい。
 のどかな雰囲気のパレードだけれど、実行委員は大忙し。トモコちゃんがカメラを片手に撮影しているのに出くわした。ゲイが撮影した記録をちゃんと残しておこうということで、急遽かりだされたそうだ。
 「二人でお茶を TEA FOR TWO」やその他のイベントの準備でへとへとだろうに、ひとしきり撮影すると次のポイントまで駆けだしていった。
 隊列の整理をしているケンタさんともおしゃべり。実行委員会フロートの選曲について。あまりにバラバラでイカしていたので、「誰が選んでるの?」と聞いてみた。ケンタさんはフロートを指さすと、「あそこにいる女装たち」と答えて、また歩いていった。
 何日も寝てないというケンタさんは、とっても白っぽい顔色で、なんだかやるだけのことをやりきった人の美しいオーラが出ているようだった。他の実行委員のみんなからも、そんなすがすがしさ、というか美しさをかんじた。
 駅前通りで空に風船を飛ばす恒例のイベント。白を加えた7色の風船が空に飛んでいった。今年もまた感動的な瞬間だった。
 帰着後の集会では、今年も札幌市の上田市長が挨拶をした。人権の大切さについて話されたあと、ようこそ札幌へと今年も言ってもらう。会場は大きな拍手に包まれた。
 その後、大阪府議でありカミングアウトしているレズビアンの尾辻かな子さんの挨拶も。パレードとの関わりについての熱い想いをうかがう。こちらも、とっても感動的だった。
 微妙に予定がおして劇場入りの時間が迫ってきたので、親の会の方の挨拶までを聞いてお先に失礼することにした。
 親の会というのはゲイやレズビアンやその他のセクシュアルマイノリティの子を持つ親の集まりだ。今年は、集合場所のブースでおにぎりをにぎって売っていた。
 元気な母さんが一生懸命語っていた。「親はどうせ子供より先に死ぬんだから、大体の場合。好きなように生きなくては。思ったことは、どんどん伝えなくては」と。「おにぎりは午前中で完売したので、来年はこの3倍にぎります」と。
 その後、札幌に来たら必ず食べたい大通り公園のとうきびを買ってかじりながら劇場へ向かう。このとうもろこしはほんとうにおいしいと思う。大好きな札幌B級グルメだ。
 劇場入りして、トモコちゃんとおしゃべり。パレードの感想を。
 さっき親の会を代表してしゃべっていたのは、僕の知っている友人のお母さんだったそうだ。この間彼の消息を聞かれたときには言えなかったのだけれどと、前置きして、トモコちゃんは、その彼がこの間、自ら命を断って亡くなったのだと話してくれた。
 あの母さんは、自分の息子が亡くなったのに、親の会の活動をがんばっているのだそうだ。みんな自分の子供だと思うと。みんなも、みんなの母さんのように慕っているのだそうだ。
 芝居の3場に僕が母親に電話でカミングアウトするシーンがある。東京でも盛り上がった場面だけれど、札幌ではよりいっそう楽しんでもらっている気がする。
 それはきっと、僕がしゃべっている相手の母親の人物像が、観客の頭の中にしっかりイメージされるからだと思う。まさに、親の会の母さんのような人なんだなあと、思っていたところだったので、余計に感慨深い。
 最後の舞台を、今はいない彼と、彼のお母さんのために演じようと思った。
 開場前に、1場と2場を森川くんとさらって、準備をすませて、開演。
 途中、2場で持って出るジンギスカン一式が入ってる紙袋を袖で探したり(このジンギスカンの鍋とコンロも札幌で用意してもらった)、4場でややセリフが前後したけれど、いいかんじで6場の最後のセリフまでたどりつく。ドリス・デイが歌う「TEA FOR TWO」の歌詞「We are the Family〜」というところ(たぶん)で最後の暗転。札幌での「二人でお茶を TEA FOR TWO」の幕は下りた。
 終演後の挨拶でトモコちゃんが声をつまらせる。森川くんも。僕は「やだ、僕だけ泣かないと悪い人みたいじゃない!」とつっこんでいた。
 最後の挨拶は長くなるかと思ったのだけれど、思うことがいっぱいで、いつもより簡単になってしまった。ほんとうにありがとうという気持ちでいっぱいだ。
 ロビーで、見に来てくれた尾辻さんにご挨拶。僕が非戦を選ぶ演劇人の会で活動していることも知っていてくれた。来月の大阪のパレードの成功をお祈りします!
 終演後の片づけは、舞台は劇場のみなさんにそのままでいいと言っていただいたので、楽屋の片づけのみ、来るとき持ってきた分も含めて、宅急便で送る手配をばたばたとする。
 僕らが楽屋を片付けている間に、札幌で用意してもらった舞台上の家具が車に積まれていく。カネゴンのところから来たベッドは、ビアンのカップルのところに行くことになったそうだ。
 劇場の前田さんにご挨拶。ほんとにいい劇場だった。気持ちよく使わせてもらったお礼を言う。
 トモコちゃんたちスタッフと別れて、東京からの4人は、打ち上げをしようということになった。
 たどりついたのは狸小路の炭火焼き居酒屋。昨日は、フロアの中央で焼いてるところだったけど、今日はそれぞれのテーブルに備長炭がやってくる。決して若くはないギャルソン風のお兄さんたちに焼き方のコツを教えてもらいながら、今日もまた海鮮ものをおいしくいただく。おいしいお酒も。
 こんなに気持ちよく、幸せな気持ちで乾杯できているのが夢のようだ。炭の遠赤外線でほかほかと暖まりながら、気持ちもとても暖かくなった。
 閉店時間まで飲み、しゃべり、解散。
 僕は、後夜祭に出かける。今夜もまた札幌のドラァグ勢を堪能する。
 十年ぶりだというショーコとヤッちゃんのショー。曲は「マンマ・ミーア」。映画「プリシラ」の最後に登場する曲だ。エアーズロックまでの旅をして戻ってきたドラァグさんが、この曲でショーをして、最後に「やっぱり家は最高!」と言う。目の前にいるショーコと映画がだぶって見えた。
 明日の飛行機は千歳発13時、午前中は少しあちこち歩こうと思う。


2006年09月16日(土) 「二人でお茶を」初日

 初日。ホテルはススキノのはしっこ、劇場まではタクシーで1000円くらいなのだけれど、少し早めに歩いて出かけることにする。約30分。いい気持ち。
 途中、地下街でよく通っていたパン屋さん、北欧に寄ってお昼の買い物。
 劇場入りして、準備をしていたら、メガネが壊れてしまった。ネジが外れたとかじゃなくてフレームが折れた。ああ・・・と思うが、舞台上ではメガネなしで芝居している。コンタクトはこの頃、合わなくて用意していないのだけれど、なんとかなるだろう。安いメガネを買うのも時間が微妙だし、札幌ではメガネなしで過ごすことにする。
 本番前のアップは、昨日のゲネプロで微妙だった5場と6場をていねいにさらっていく。
 今回の舞台では、初演のときと違って、楽屋が別々だ。というか、開演してからの着替えを森川君は上手の袖で、僕はやや大がかりなので(女装など)下手の楽屋を使うことにした。
 なので、開演前に、二人並んで準備を済ませ、よろしくお願いしますと挨拶して別れると、もう舞台上でしか会わない。これが今回、とってもおもしろい。
 場面が進むごとにどんどん変わっていく森川くんにドキドキわくわくしながら、新鮮な気持ちで舞台の上で生きている気がする。
 という話を楽屋でしていたら、これって仲の悪い、大物女優二人みたいだよね・・という話にもなったのだけれど。
 昨日のような緊張感はそれほど感じずに、さらっと初日マチネ15時開演。お客さんにたすけてもらいながら、また芝居が立ち上がっていった。
 初演よりもややタイムが短くなった1時間35分で終了。何が変わったのかはよくわからないけど、5分も短くなるなんて思わなかった。初演の時の「思いをこめる」芝居が、今回、さらさらと流れているからかもしれない。その分、間をとるところはずいぶん長いこと黙っているような気もするのだけれど。
 休憩時間に、バディさんの取材。見ていてくれたイケメン読者モデルの2人からインタビューを受ける。とっても若くて、かわいくて、あきらかに、「母親」な気持ちで質問に答える。思うことをいろいろしゃべらせてもらった。相澤さん、いい機会をどうもありがとうございました。
 ソワレは19時開演。間の時間があまりなくて、ちょっとあわただしい。コンビニで買ってきた食事をして、全6場の衣装、6ポーズの準備をしていたらすぐに開場時間になった。
 で、無事終了。お客さんにたすけられて楽しく終演。ありがとうございました!!
 森川くん、いっこうさん、本田さんとすすきのに出て、4人で初日乾杯しようということになった。海鮮ものがいいという話になり、なんとなく見つけた炉端焼き系の居酒屋。
 素朴なバイトの男子や、まっすぐ目を見てオーダーをとってくれるおねえさん(女子)など、とっても気持ちいい店。料理もお酒もおいしくて、満足。
 解散して、僕は明日のレインボーマーチの前夜祭に。微妙に遅くなったので、一度ホテルに戻って、第二部の札幌のクィーンたちのショーから見ることにする。
 買い出しに寄ったコンビニで会った、実行委員のイイくんから、昨日の舞台の感想を聞く。楽しんでもらえたようでとてもうれしい。
 ちなみに僕の札幌弁は、三分の二が合ってて、三分の一は微妙だとトモコちゃんに言われた。でも、そのおかしなところがおかしいから、今のままでいいと思うとも言ってもらう。
 会場に戻って、第二部のショーを堪能。札幌のショーは、いい意味でゆるゆるなかんじがとてもあたたかい。東京勢のメイリーやエンジェルが、ステキな貫禄で舞台を引き締めていた。
 ホールの隅で昼間の舞台を見に来てくれたジュソくんとおしゃべり。彼には、「二人でお茶を TEA FOR TWO」の札幌のエピソードをほんとにたくさんもらった。初演を見てもらうことができなかったので、今回とてもうれしい。
 ショーが一段落して、ダンスタイムになったところでお先に失礼する。調子に乗ってがんがん踊ってしまいたい気分だったのだけれど、メガネなしでよく見えないプラス、左耳が聞こえないので、おしゃべりもやや難しい。耳を治しておけばよかった、メガネをつくっておけばよかったとちょっと後悔。


2006年09月15日(金) 「二人でお茶を」公開ゲネプロ

 4時に起きて、ばたばたと準備をして出かける。
 3日間留守番のデリ子さんに森川くんが今日一日分のご飯をまとめてあげる。ものすごいいきおいで、わしわし全部食べてしまった。とってもうれしそうに。朝と夜の分をまとめて食べたら、明日の朝、シッターさんが来るまで食べるもの何もないのに・・・とちょっと心配する。
 6時55分羽田発。JALのカウンター前でいっこうさんと待ち合わせをして、さくっと新千歳空港着。
 本田さんとも合流して、札幌へ。会場のブロックは微妙に駅から遠い(近い?)ので、時間もあるし、歩いてみようということになり、カートを引いてテクテク歩いていく。
 10時に劇場入り。お世話になる劇場の前田さんにご挨拶。照明、音響のセッティングを全部しておいてくれた。ありがとうございます。
 トモコちゃんから、オペレーターをお願いしていたメンバーが来れなくなったという連絡をもらい、心配になり、急遽、照明をいっこうさん、音響を本田さんにお願いすることにする。さっそく打ち合わせ開始。
 お昼、となりにある「ファクトリー」のライオンでランチ。何を食べてもおいしく思えるのは、なんでだろう。札幌に着いて最初に食べたものがおいしくてちょっとほっとする。
 劇場にもどり、がつがつ準備をすすめるが、微妙に眠気におそわれ、アンコントロールな時間がやってくる。しかも、僕と森川くんは時間差で。
 2時に来てくれたリョウコちゃんに小道具、消えものの買い出しをお願いする。フライングステージの最初の札幌の公演の手伝いをしてくれたリョウコちゃん。今回もまたお世話になる。
 3時に、ベッドや机、その他の小道具が到着。ベッドはカネゴンの家から。机はリサイクルショップで見つけてくれたもの。舞台にならべて、位置を決めて、よし、これで行こうということに。今回、25年間過ごす、ホテルの一室ができあがった。
 今回、舞台の転換(小道具の出し入れ)を札幌のスタッフにお願いすることにしていたのだけれど、転換の時間がどれくらいかかるかわからなかったので、もう一つの保険として、場面の年代を書いた紙を持って、舞台に登場してもらうという演出を付け加えた。1980年から2005年まで6つの場面をきっちりマークしてもらう。これは照明や音響のきっかけをとるのにもとってもいいアイデア。これをトモコちゃんがやってくれることになった。転換の際の小道具の細かい出し入れ。年代を書いた紙をもってどっちから出て、どっちに引っこむか、などなどやってもらうことがほんとにもりだくさん。それでも、メモをとりながら、きっちりやっていってくれる。
 僕らはとにかく着替えの練習をしなくてはいけないので、照明、音響、それに舞台の転換のトモコちゃんの動きと合わせて、5時から場当たりを始める。
 確実に舞台に出ているときより、楽屋で着替えている時間の方が忙しいこの芝居。メークはしないものの、着替えを必死になってやっているうちに、眠気と疲れはどこかに飛んでいった。
 転換稽古が終了して、ちょっと安心する。本番は、もちろんメークあり。あとは僕は2分でつくる4場のドラァグクィーンがはたしてうまくいくかだ。
 初演のときはどうしても淡泊なメークになってしまったのが心残りだった。今回は、大きなまつげを奮発。それに、リキッドのライナーでなく、パウダータイプの黒いシャドーを用意。1場からアイラインを薄く、でもしっかり入れておくことにした。(この日は、開演前にうっかりシャドーまで入れてしまい、あわてて落とした。それでも微妙に濃いメークが残ってしまい、森川くんに「歌舞伎?」と言われた)
 明日明後日はレインボーマーチ関係のイベントが目白押し。スタッフや実行委員は本番を見ることができないので、公開ゲネプロをやってくれないかとトモコちゃんに言われていた。
 稽古期間も少ないし、朝来て、準備して、夜ゲネプロってできるんだろうか?と思いながら、通し稽古を見てもらうくらいのノリでお願いしますと言っていたのだけれど、ともかくはゲネプロをやってみることにした。もうやるしかないというかんじ。
 僕たちの予想より多くのお客様に見てもらいながらのゲネプロ開演。ものすごいいきおいで着替えをすませて、舞台に出るとほっとする。今回もまたそんなことを繰り返しながら、芝居ができあがっていくことにわくわくして、どんどん気持ちがもりあがって、終演。
 終演後の挨拶でトモコちゃんが声をつまらせた。客席から「がんばれ!」という声がかかった。僕も森川くんも楽屋で感動していた。みんなで芝居をつくったという実感がしみじみとわいてきた。
 トモコちゃんに呼ばれて、舞台からご挨拶。ホントは舞台装置が一式あるのだけれど、送料が大変だったので札幌のみなさんに用意してもらったということ。いいかげんな札幌弁をしゃべってごめんなさい。あれはちょっと・・・というのがあったら、こっそり教えてください、と僕。去年の春に初演したこの芝居をこんなに早く舞台になっている札幌で上演できたことに感謝しています、と森川くん。暖かい拍手をいただいた。
 終演後はとにかく、衣装のかたづけ。今回は、初演のときのマミーのように楽屋でスタンバイしてくれている人がいないので、全部自分できっちりやっておかないといけない。本番中に脱ぎ捨てていった衣装の山をかたづけていく。
 ホテルに近いすすきのに出て、トモコちゃんにカネゴンが新しく始めたお店に連れていってもらう。ご飯をおいしくいただく。カウンターの中のハイビスカス江さんともおしゃべり。
 カネゴンは、トモコちゃんと二人で今回の上演を実現してくれたイカすビアンだ。初めて会ったときの素朴な印象が、今は堂々とした存在感に変わった。最初に会った時以来の札幌の話をあれこれ。10回目のパレードという節目にこの芝居をやれていることが、ほんとにうれしい。どうもありがとうございます。
 その後、トモコちゃんと一緒にハーティ@カフェへ。ケンタとそれになつかしいショーコたちと会う。
 ホテルに着いて、原稿を一本書き、台本を読もうとするが、バタンキューと眠ってしまう。


2006年09月14日(木) 「二人でお茶を」稽古

 札幌行きの荷物をまとめる。ああ、もっと早くにやっておけばよかった・・と後悔しながら押入から衣装をひっぱりだす。結構な大荷物になってしまったことにびっくりしながら、カートをごろごろ引いて稽古へと向かう。
 今日は後半の3場を中心にした稽古。分量としてはそれほどではないのだけれど、短い場面でふたリの関係がどんどん変化していく気の抜けないシーン。
 1995年、2000年、20005年の3つの場面。時代が今に近いのと、二人の人物の距離が長い年月を経て近くなっているので、人物を作ることはちょっと横において、ただやりとりの深さを追求するかんじ。
 たった一年しか経っていないのに、稽古しているときの気持ちが微妙に違っているのがとてもおもしろい。それは、あれから何本もの芝居が僕の体をとおっていったせいかもしれないし、一度全部作ったものにあらためてもう一度取り組んでいるせいかもしれない。
 前はただただ一生懸命にやるしかなかったのが、今回は、少し距離をおいてああやろうこうやろうと楽しめているのだと思う。
 明日の朝の飛行機がとっても早いので、今晩は森川君の家に泊めてもらう。美猫のデリ子さんを見ながら、初演の初日前にデリ子さんがいる横で台本を書いていたことを思い出す。


2006年09月13日(水) 「二人でお茶を」稽古

 全6場のうちの前半、3場の稽古。
 動きながら、芝居を作っていく。
 この芝居は、短い場面の連続なので、仲の良かった二人が2分後には大喧嘩をしている。
 そのめちゃくちゃなかんじに体を乗せていくのがおもしろい。
 わくわくと稽古する。
 さもない台詞とやりとりが、あ、ここいいなあと思える場面になったりしているのを、確認しながら。
 札幌のブロックの前田さんとやりとり。照明や音響のお願いを快く聞いていただいた。感謝だ。
 前半3場といいながら、台本のページ数としては2場の終わりでちょうど半分になる(1場は長いので)。
 一番大変な1場が手に入って、2場と3場を稽古して、今日はここまでにする。いいかんじに頭がいっぱいになってる。
 帰りの電車で台詞を頭の中でさらう。初演の稽古では一度もしなかったことだ。覚えていることに驚きながら、ぶつぶつとしゃべり、冷たい雨の中帰ってくる。


2006年09月12日(火) 「二人でお茶を」稽古

 昨日につづいて稽古。
 今日も全体を読み合わせしながら、台詞の確認。
 この芝居は、相手とのやりとりがすべてで、緻密な動きが必要な場面というのはそんなにない。
 段取りも初演と同じでいこうと思うので、まずは、体にこの芝居を入れていく作業を緻密に。
 札幌の劇場、ブロックは楽屋が下手側。初演時の部屋の入り口は上手だったので、「出入りを逆にする?」という案もあったのだけれど、体が覚えている感覚を大事にしておきたかったので(変換する作業がめんどくさかった)、舞台奥の大黒幕の後ろを通り抜けることにした。
 もっとも舞台には壁がないので、板付きは、下手からそのまま可能だ。
 いっこうさんが来てくれて、森川くんのプロンプターをしてくれる。
 僕はいつものように、まだ台本が放せない。
 それでも、ああ、こうだったと思い出すことがいっぱい。この膨大な台詞の芝居がだんだん、手の内におさまってくるような感覚。
 帰りはいっこうさんと駅まで。 


2006年09月11日(月) 「二人でお茶を」稽古

 週末の札幌での「二人でお茶を」の稽古。
 昨日千秋楽だった森川くんの舞台の話などをして、まずは、読み合わせ。
 去年、1場ずつ稽古しながら書いていった芝居を、初めて一気に読む。
 いまさらながら、2人しか出てこないこの芝居の、台詞の量の膨大さにびっくりする。
 よくこんなものやったなあとおもってしまう。
 僕も森川くんも、この舞台の初演以来、何本もの芝居の台詞が体をとおりぬけていった。
 そんな体であらためて向き合う、この芝居の人物が、とてもなつかしい。
 さっくりと読んだあと、発送する荷物の確認。
 今回は大道具がない。
 この芝居のために用意した机や椅子、電気スタンドは、ほんとに古臭くていい芝居をしてくれるのだけれど、札幌往復の運賃がバカにならないということで、今回は全部札幌で用意してもらうことにした。
 舞台になるホテルの壁もなし。
 リノリウムの床と大黒幕と袖幕にかこまれて、ベッドと机と椅子だけの装置。
 照明も音響も札幌のみなさんにお願いすることになった。
 東京での初演とはずいぶん違った印象になることは間違いないのだけれど、このやり方もありだとおもう。
 とっても身軽に役者だけで出かけていって、全部用意してもらって、芝居だけをしてくる、そんなかんじ。
 荷物を確認したあと、もう一度読み合わせ。
 さっきよりは、ずいぶん体になじんできた印象。よーく覚えているところ、ぜんぜん記憶がないところなど、全体に濃淡がある。
 このムラをならしていく稽古をしていくことになるのだと思う。
 今日はここまで。


2006年09月10日(日) 「許しつづける女たち」稽古

 今日も劇作協で原稿書き。でかけに渋谷のデパ地下のラ・テールでお昼のパンとシュークリームを買っていく。僕はここのパンがとても好きだ。ついでがあると何かしら買ってきてしまう。
 体調を崩した、篠原さんのところの猫ボンネットちゃんは今日も入院している。突然具合が悪くなったんだそう。酸素テントの中でぐったりしているのに、篠原さんが少しなでたら、ニャーと鳴いたという話を聞き、僕もせつない気持ちになる。
 今日は、ドキュメンタリージャパンの角田さんをまじえて映像のからみを中心にした構成の打ち合わせ。
 全体像が見えてきて、作業もぐーんとすすんだかんじ。
 
 夜は「許しつづける女たち」稽古。幡ヶ谷にて。
 3場のラストまでという約束だったのだけれど、残り2ページを残して、ごめんなさいする。
 それでもキャストが全員登場した! 声の出演の山本くんも含めて。おかしな人たちがせいぞろいだ。
 3場のラストは、全体の構成をもう少し考えさせてほしいということで保留にしてもらう。
 どんどこ読んで稽古していく。
 初登場したタマキちゃん、スミケン、アッくん、それに膨大な台詞のミカちゃん、「意味がわからない」が口癖になってる役の有賀くん。みんなとってもいいかんじだ。
 札幌の「二人でお茶を」のため、僕は一週間稽古に顔を出せないということもあり、初めてみんなでのご飯にご一緒する。「ふらんす亭」で肉を食べる。楽しくおしゃべり。一息ついた気持ち。実は知り合ったばかりんのメンバーとすっかり楽しく一緒にいられる関係になっていることがうれしい。なんだかんだと終電で帰ってくる。
 台本のつづき、もっともっとおもしろいものにしていかなければとあらためて思う。
 なんとか乗り越えた大忙しの週末。ちょっと一息ついて、「二人でお茶を」の台本を読み始める。


2006年09月09日(土) 「許しつづける女たち」稽古

 劇作協で富士見ヶ丘小学校記録DVDの原稿書きを篠原さんと。
 もくもくと構成していく。残っている記録をもとに、授業をまとめていく。
 なつかしく思い出すこと、この3年で講師がどう変わっていったかということもとてもおもしろい。
 作業だけではあじけないので、近くのケーキ屋でケーキを買ってきた。なんとなくお茶しながらののどかな午後。
 夜は「許しつづける女たち」稽古。恵比寿にて。
 ようやく書いた2場、アカネちゃんが登場だ。でも、まだタマキちゃんとスミケン、あっくんは登場してない。「明日こそ」と言いながら、稽古する。
 おかしな人たちがどんどん登場してくる、あと、もう3人。いや、4人か・・・


2006年09月08日(金) 「許しつづける女たち」稽古

 札幌のトモコちゃんと電話で打ち合わせ。
 着々と近づいてくる札幌公演。どうなるの?という心配が、よーし、だいじょうぶ!という気持ちにどんどん変わっていく。
 仕事に出かけて、その後、劇作家協会へ。
 この週末は、篠原さんと2人で、一昨年の富士見ヶ丘小学校の演劇授業を記録したDVDのためのテキストづくり。日曜までの3日間で、あらかたをしあげてしまおうという計画。
 というわけでこの週末は、ここしばらくで一番予定がつまってる。基本的に一度に一つのことしかできない僕には不安がいっぱいで頭がいっぱいの数日。富士見ヶ丘小学校と「許しつづける女たち」の稽古と札幌の準備と。
 篠原さんは沖永良部からの帰り。短い時間にあさってまでの予定と方向性を確認して今日はおしまい。
 夜は、上北沢で「許しつづける女たち」の稽古。
 今日持っていくねと約束した2場が書けず、新しい場面はなし。
 1場の後半を中心にした稽古。
 緻密につくっていってどんどんおもしろくなる。
 帰り、マチャこと中村くんと話しながら帰ってくる。


2006年09月04日(月) オフ

 今日は稽古はなし。
 風邪はまだ治らない。寝ていると、のどがいがいがして起きてしまう。
 去年のようなめんどくさいことにならないといいなと思いながら、タバコは吸わない、寒いところにいかないように気をつける。
 台本を書き、芝居のことを考え、札幌の「二人でお茶を」のこともあれこれ心配する。
 まずは一つずつ片付けないと・・・ わかっているんだけれどね。


2006年09月03日(日) 「ワーニャおじさん」

 駒場アゴラでTPSの「ワーニャおじさん」を見る。
 開演前、大熊さんと久しぶりにおしゃべり。「来週札幌行くんですよ!」と言ったら「寒いよぉ」といわれる。誰かに肩をたたかれて振り向いたら歩さんだった。
 で「ワーニャおじさん」。斎藤歩の演出は、みんなで楽器を演奏したりして、従来の感情のっけて緻密につくっていくやり方とはぜんぜん違う。
 さらさらと、まるでひとごとのように語られるチェーホフの台詞はとても新鮮だった。
 2幕で約2時間半だけれど、こんなにさらっとした印象になったのがびっくり。もしかすると、チェーホフの世界が、僕にとって遠い、りっぱなものじゃなく、身近な、僕のことになってきたからかもしれない。
 夜「許しつづける女たち」稽古。千歳船橋にて。
 1場の台本は持ってきたのだけれど、途中でプロットを変えなくては思い、でも書くことができなかったので、途中まで。
 読み合わせをして、すぐに立ってみる。
 おー、なるほどねえと思うことがいっぱい。まずは楽しく稽古。
 帰り、今回、声の出演の山本くんと電話で話す。イメージがわいてきた。
 中村くん、加藤くんと同じ電車。加藤くんとは千代田線の途中まで一緒。


2006年09月02日(土) 「許しつづける女たち」稽古

 「許しつづける女たち」稽古
 一場の台本は明日配りますと宣言して、それぞれの人物一覧を配る。
 この間の稽古の残りの場面をやるという予定はなんとなくなしになってしまう。ごめんなさい。
 人物の説明と配役についての話をする。
 キャラクターにまつわる、いろいろの質問をうけ、僕からキャストのみなさんにいろいろ質問してみる。
 まずは、動き出した。「許しつづける女たち」。
 よーし、台本書かねば!


2006年09月01日(金) 舞台の後のさびしい気持ち

 今日も体調が悪い。
 仕事に行って、帰ってきて、すぐに寝ている。
 のどが痛い。
 一昨日のリーディング、僕は他のみなさんの半分もしゃべってない。
 演出していて声をからしたのだと思うと、なんだかおかしい。
 2日でえいっとつくった舞台のあと、心にぽっかり穴があいたような気分。
 若いころは、一本芝居が終わるたびにさびしくてさびしくてどうしようもなかったものだけれど、このごろはめっきりそんなこともなくなった。
 体調が悪いのばかり気になっていたが、気持ちが沈んでいる一番の理由はどうやらそこにあるらしい。
 非戦のリーディングをやったという手ごたえと一緒に、なんて楽しかったんだろうという気持ちもある。
 すてきな人たちのすてきなすがたをたくさん見ることができて、とても幸せだった。
 見に行くなら今日しかないという舞台をごめんなさいする。
 今週末のあわただしさも含めて、行きたい舞台にぜんぜんいくことができない。
 新作も書かないと・・・・


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