せきねしんいちの観劇&稽古日記
Diary INDEXpastwill


2006年03月31日(金) 「ミッシング・ハーフ」稽古

 稽古場に、ミラクルのオーナーである、メッセージの社員、マツダリクさんが顔を出してくれる。今回、彼にはとってもお世話になっている。どうもありがとうございます。
 いっこうちゃんもきてくれる。見られていることにやや緊張しながら、がんがん芝居しきってしまう。
 稽古は、森川くんの登場シーンから。そのあと、大門さんの2つのキャラクターを順に演じていってもらう。
 音響の青木さん、舞監の中西さん、美術、衣装の小池さんが来てくれる。打ち合わせ。具体的なイメージに背中をどーんと押されたような気持ち。


2006年03月30日(木) 連想のゆくえ

 稽古はお休み。これでもう何度目かの「モロッコ」のDVDを見る。
 今回の「ミッシング・ハーフ」は、もともと考えていたイメージに、次から次へといろんな連想が重なっている。
 映画がサイレントからトーキーへ移行するなかで、仕事をなくした「女形」というのは、オリジナルのイメージじゃないかとは思うのだけれど、これにはやはり悪声ゆえに失敗する「雨に歌えば」の中の悪役女優リナ・ラモントのイメージがある。
 でも、サイレントからトーキーへ移り変わる時代というのを初めて知ったのは、「雨に歌えば」ではなく、実は市川崑の「悪魔の手毬唄」だ。
 殺人事件の大きなきっかけになる背景として、仕事をなくした活動弁士の話が登場する。
 僕は、中学生の頃、映画小僧だった。ラジオの深夜放送を聞いては試写会に応募をし、前売り券をいつもポケットに入れては、銀座や上野の映画館に出かけていた。市川崑の横溝シリーズはほぼリアルタイムで見ている。「獄門島」「女王蜂」「病院坂の首縊りの家」あたり。
 小学生の頃から、赤いシリーズに登場する「パリのおばさま」役の岸惠子が大好きだった。同様に耐える母親役の草笛光子も。テレビシリーズの「犬神家の一族」の京マチ子、それに、有吉佐和子原作のドラマ「悪女について」の主演、影万里江も大好きだった。あこがれの女優というと、若いアイドルに行きそうところ、僕はなぜか、大人の女優さんにばかりひかれていた。
 「悪魔の手鞠唄」には、映画「モロッコ」が登場する。最初に字幕、スーパーインポーズが入った映画として、ラストシーンがそっくりそのまま挿入されている。
 これは僕が初めて見たマレーネ・ディートリッヒだ。今回の「ミッシング・ハーフ」は映画女優についての話なので、最初のプランの中には、当然のように「モロッコ」そして、ディートリッヒがいた。
 そして、モロッコといえば、カルーセル麻紀さんの性転換の手術で有名な地名だ。これは、僕らの世代だけかもしれないが、今でも、モロッコ=性転換という連想は共有されているような気がする。
 「ミッシング・ハーフ」の主人公は、文字通り、女になろうとするので、僕は、彼女に大きな影響を及ぼす映画として、何の迷いもなく「モロッコ」を選んだんだった。
 いっけんバラバラなイメージが、微妙につながって、一本の芝居になっているのは、何だかとても不思議な気もするし、まったく当然のことのような気もしている。
 歌舞伎の趣向でいえば、これは「吹き寄せ」というものかもしれない。一つの世界に、あるイメージを共有する、全く関係ない世界の人物が平気でまぎれこんでくる。
 つながったイメージの先にどんなオリジナルの世界が生まれてくるのか。そこからが何より肝心だ。
 はじめのうちは予想もしなかったのだけれど、ずっと昔からの映画へのあこがれがオマージュとして実現したような舞台になるのかもしれない。
 大切にに、そして大胆につくりあげていきたいと思う。


2006年03月29日(水) ネットのおかげ

 今日は稽古はお休み。
 十数年前にミュージカルの舞台で共演した古い友人からメールが届いた。
 びっくりするくらい昔の話だ。
 ネットサーフィンをしているうちに、僕の日記、フライングステージのサイトにたどりついたそうだ。
 とっても懐かしい。うれしくて、すぐに返事を出した。
 彼は、今、アメリカ在住とのこと。
 ながい時間もはるかな距離もなんでもないことのように思えてしまう。
 これも、みんなインターネットが普及したおかげだ。
 このあいだ卒業した富士見丘小学校の子ども達が、ネットで僕のことを知っていたということが、最近わかった。
 その上で、つきあっていてくれたんだねと、とてもうれしく、ありがたい。
 これもまた、ある距離をちぢめてくれるのに、ネットの存在が役にたったということだと思う。
 今回の「ミッシング・ハーフ」は調べなくてはいけないことがいっぱいで、本だけを頼りにしていたら、とてもじゃないけど、書けなかったと思う。本を探す、その前に、僕はネットで検索をしていたくらいだから。
 今日は急にとっても寒くなった。
 灯油はきれいに使い切ってしまったところなので、ヒーターのお世話になる。
 花冷えの日だったけれど、うれしいメールで心があたたかくなった、そんな一日。


2006年03月28日(火) 「ミッシング・ハーフ」稽古

 稽古5日目。
 今日は森川くんはお休み。
 昨日の稽古のあとの実寸のテープで、位置と動きの確認。ドアの位置が反対になったのでその調整。それよりも、部屋が微妙に正面向きではなくなったことから来る「正面はどっち?」なかんじに少し戸惑う。
 冒頭の大門さんとの場面の確認をしたあと、一休みしてから、大門さんの2人目の人物、キャラクターでいうと3つめ、四世沢村源之助が登場する場面。
 読み合わせのあと、立ってみる。といっても、ずっと座っているような、座敷での芝居。基本的には洋間でくり広がるこの芝居に、突然割り込んでくる座敷。市村座の楽屋。
 新派や大衆演劇のテイストをおもしろがりながら、とりこんだ場面。大門さんには伝説の女形を存分にやってもらう。
 サイレントからトーキーに時代が移るなか、世の中の「女形」という人たちがどうしたかということが描かれる。対照的な2人の女形が、丁々発止のやりとりをする。
 今日もまた書いたときには思いもよらなかった気持ちになってしまう。恥ずかしいのだけれど、芝居をしながら泣けてきてしまった。僕がじゃなくて、劇中の川野万里江が泣いていた。
 思い切って書いた七五調のセリフのおもしろさとおかしさを、どう活かすか。どっぷり浸ってしまわずに、突き放して演じることを、僕は考えなくてはいけない。
 それでも、また一つおもしろい場面ができあがりつつあることは間違いない。川野万里江がたどった道すじが、また一つ、僕のからだにしみてきた。そんな稽古。
 今日は稽古場に、早瀬くんが来てくれた。紹介、挨拶のあと、ずっと稽古を見ていってくれる。いつものフライングステージとは全然違う芝居になっててびっくりしたかもしれない。
 雨が降る中、駅までおしゃべりしながら歩き、僕は樺澤氏と制作のうちあわせ。
 最寄り駅についたのは0時過ぎ。雨はすっかり上がって、星が光ってる。
 駅前のセブンイレブンで、注文して置いた本を受け取る。たぶん、これが、本番までにぜひ読んでおきたい本の最後の一冊。
 家までの道を少し早足で歩き、少し汗をかく。もうそんな季節になったんだ。
 


2006年03月27日(月) 「ミッシング・ハーフ」稽古

 稽古4日目。
 今日から、歌舞伎町のスタジオ、ミラクルでの稽古。
 公演も打てるスタジオでの贅沢な稽古。サンモールスタジオの実寸がとれるメインのスタジオに、広い楽屋も。フライングステージの稽古で、あちこち移動しない稽古場というのは、初めての経験。
 劇団制作社のみなさんが、ていねいに稽古場づくりをしてくれて、ほんとうに気持ちよく、稽古ができる環境になった。もともとがステキな空間なので、「さらに」というかんじ。
 照明の青木さん、舞台監督の中西さんたちが来てくれての稽古。サンモールスタジオの吉田さんも顔を出してくれた。
 大門さんにやっていただく三役、厳密には時代が変わるので四つのキャラクターの二番目の人物が登場するシーン。
 読み合わせて、すぐ立ち稽古。というか、読みながら、荒立ちにどんどんさせてもらってしまう。
 場面は、川野万里江が女になるための手術をしようとする場面。時代背景やらややどきつい描写が続く、暗くヘビーな場面をぼくは書いた。
 それが、大門さんとのやりとりの中で、思いも寄らないドラマのスジが見えてくる。暗いだけじゃない、切なさもにじんでくるような。不思議なかんじ。稽古してみて、はじめてわかる「あ、こんな場面を書いたんだ」という新鮮な驚き。
 続いて、冒頭からの場面。森川くんとのやりとりを中心に。突き放した軽さのようなものをさぐっていく作業を一緒に。
 稽古のあと、美術、衣装の小池さんも加わって、スタッフ打ち合わせ。
 装置の基本デザインを決めて、中西さんたちは、さっそく実寸の寸法を床にテープでとっていってくれる。
 明日からは、ここで実寸での稽古。ほんとうに恵まれた状況に感謝しながら、いいものを作り出していかなくてはと、改めて思う。
 帰りは、佐久間さんと総武線。地元の亀戸の昨今について、いろいろおしゃべりする。


2006年03月26日(日) 「ミッシング・ハーフ」稽古

 稽古3日目。阿佐ヶ谷にて。
 森川くんが登場する場面を中心に。
 冒頭の大門さんと僕の場面は、芝居が「大きく」なっている。上演するサンモールスタジオの寸法よりは、やや大きめの芝居。
 昨日の帰りの電車で、森川くんとそのへんのことを話したのだけれど、彼と僕のやりとりは、もう少し、寸法をおさえていきたいと思う。その方が、それぞれの良さが光ってくるだろうから。
 いろんな謎を秘めたまま、最後の最期に「実はこういう人だった」というのがわかる芝居ではなく、今回は、初めのうちに全部、お客さんに手の内を明かして、こんな人たちですよというのが、わかった上で、物語が動いていく構造になっている。
 なので、今日の森川君とのやりとりも説明しなくてはいけないことがいっぱい。読み合わせをして、すぐに立ち稽古になったのだけれど、初めのうちは、芝居の寸法の変化と、それぞれの人物の説明だけでなく、気持ちまでも説明しようとしてしまって、なかなかうまくいかない。
 繰り返すうちに、結局は相手からもらって、それを返していけばいいんだということに気がつき、身体がそのように動いていくようになり、だんだん場面ができあがっていった。
 森川くんの役もまた特殊な役だ。アンビバレントな感情をいっぱい抱えたまま、上海に来ている。
 それでも、めちゃくちゃといってもいいくらい特殊な僕と大門さんの役にくらべれば、ややナチュラル。このバランスがなかなかむずかしいところ。
 帰りは、お花見日よりのあたたかな夜。一本先の電車に乗ってしまった大門さんと竜太郎さんと僕。新宿で2人を見送って、一本後に乗っていた、クニオさん、森川くん、佐久間さんと合流。今日もおしゃべりしながらの総武線。


2006年03月25日(土) 「ミッシング・ハーフ」稽古

 稽古2日目。阿佐ヶ谷にて。
 冒頭の場面を読み合わせ、そして、立ち稽古。
 大門さんと僕の2人の場面。芝居のはじめの、言ってみれば筋売りの部分。
 ここがどこで、いつなのか、私たちはだれなのか、2人はどんな関係なのかを、芝居の初めにお客さんにわかってもらうため説明的なセリフが続く場面。
 最初の読み合わせから、あれ、こんなふうに書いたんだっけ?と思うくらい、おもしろくて、わくわくしてくる。
 説明になってしまうセリフの背景に流れる気持ちのやりとりが、短い場面のなか積み重なっていくおもしろさ。
 稽古場の温度がふわっと上がった、そんなかんじ。
 大門伍朗という役者さんの力とあったかさが、この場面をふしぎなところまでひきあげてくれている。僕は、何の心配もなく、やらなければいけないことだけを、その場で、感じて、動いていくことができた。
 言葉じゃない気持ちの積み重ねが見えてきて、その気持ちをぶつけあうやりとりが見える場面になった。
 びっくりしながら、今日の稽古が終わった。なんともいえない、いい気持ちだ。芝居ってなんておもしろいんだろう。
 帰りの電車、方向が同じ、森川くん、佐久間さんと、芝居の話でもりあがる。
 こういう稽古を毎日積み重ねていきたいと思う。


2006年03月24日(金) 富士見丘小学校卒業式 「ミッシング・ハーフ」顔合わせ

 台本にむかって、結局、朝まで起きてしまい、そのまま富士見丘小学校の卒業式へ。
 控え室になっている特活室室へむかう6年生が階段を降りてくるところに出くわす。みんなブレザーでドレスアップ。髪型もずいぶん変わっている子がいて、一瞬、誰だかわからないほどの、あらたまりかただ。
 劇作家協会からは、青井さんと篠原さんと僕が出席させていただいた。控え室から並んで体育館に入場。これもまたドキドキする。
 来賓席に着くと、5年生の合奏に合わせて、6年生が入場する。一人一人しっかり間をあけて。その姿を見ているだけで、なんだか胸がいっぱいになる。早くも涙。
 自分が歩いたときには気がつかなかったのに、卒業公演で使った「花道」のカーペットがきちんと敷かれていることに気がついた。後で聞いたところ、副校長先生が是非ということで敷いてくださったそうだ。この間は高木先生を見送った花道を通って今日は彼らが卒業していく。すてきな演出だ。
 その後の卒業証書授与では、畑先生が弾くピアノ曲の中に「大切な友情」があって、このへんから僕はハンカチで涙を拭っていた。一人一人のこの一年の様子、「放課後の卒業式」でのこと、休み時間に話したことのあれやこれやが、思い起こされる。
 校長先生のお話は、今日も漢字を紙に書いて。今日は、「友」と「汗」。みんなで手をあげて宙に字を書いた。
 「友」と「汗」、両方についてお話された中で、どちらでも演劇授業と卒業公演について触れてくださっていた。
 なかでも、演劇授業で学んだこととして、コミュニケーションの大切さに触れられて、「お芝居は、人と人との間にあるということを学びましたね」と言ってくださったのには、感動した。
 演劇授業が、演劇という枠を超えて、もっと普遍的なものとして、先生方、そして子ども達に、とどいていたのだなと、ほんとうにありがたく、嬉しい気持ちになった。
 6年生がひな壇に並んで、全員であいさつを述べたなかにも、演劇授業が取り上げられて、「華道(さくらみち)」をみんなで歌ってくれた。ありがとう。
 式が終わって、控え室で一休みしたあと、校庭で5年生が作るアーチを通っていく6年生を見送り、そして、挨拶。保護者の皆さんにも。ご挨拶、そして、記念撮影。サイン帳に慣れないサインをしたり。
 今年もまたとてもいい卒業式に参加させていただいて感謝だ。彼らが、これから中学生になり高校生になり、大人になっていくなかで、今年一年の演劇授業のことを思いだしてくれたらいいなと思う。
 来賓として紹介されたときの一言の挨拶、僕は「卒業おめでとうございます。楽しい一年をどうもありがとう。これからも元気で」と彼らに言った。ほんとにありがとう。楽しい一年だったよ。

 夜、阿佐ヶ谷で「ミッシング・ハーフ」の顔合わせ。高円寺に寄って、台本の印刷をして、まみぃと一緒に稽古場へ。
 大門伍朗さん、森川くん、そして制作の樺澤氏、竜太郎さん、佐久間さん、中川さん、それに記録のドキュメンタリーを撮影してくれているクニオさん、フライングステージからはノグとマミィが参加。
 挨拶のあと、今回の芝居についての説明を僕から。全体の構造とそれぞれの役柄について。
 大門さんにお願いすることになる3人のとっても特殊な人物についての説明。それから、当時の上海と時代背景についてのあれやこれや。
 スケジュールの確認をして、今日はお開き。
 その後、駅近くで稽古初日乾杯。芝居の話ばかりをぞんぶんに。
 さあ、いよいよ始まった。これからの稽古も、できるかぎり、この日記で紹介していこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。


2006年03月23日(木) 「上海リル」

 劇中で使う音楽のことを考えている。何もなしというのは、特殊な緊張感を観客に強いてしまうような気がして、一曲だけ(今のところ)、ほんの少しだけ、音楽を使おうと思っている。
 曲は、「上海リル」。「上海帰りのリル」じゃなくて。
 ずっと昔、芝居を始めた頃に親しかった、GHQリズムシスターズというグループが、この曲や、「桑港のチャイナタウン」「支那の夜」「夢淡き東京」や「河童ブギウギ」なんかを、すっきりとしたアレンジで歌っていた。
 その頃から、この曲の持っているエキゾチックな雰囲気が大好きだった。
 もともとは映画音楽だったこの曲を、1940年の上海のムードを出すために使いたい。音源は、これから探そうと思う。
 「ミッシング・ハーフ」の主人公、川野万里江が、実は「上海リル」本人という話も考えたのだけれど、さすがにそれは嘘が破綻してしまいそうで、却下。
 何種類もある歌詞の中で、僕が好きなのはこんな詞だ。うろおぼえなので実は大間違いかもしれない。実際に使うのは、歌詞のないバンドが演奏しているものの予定です。

  霧は海に落ちて 街に夜が来れば
  赤い口 あだな姿 歌うは上海リル
  恋の街よ上海 流れ来るメロディ
  高らかに口ずさめば 遠くへ響く
  街の女王 洒落たリル 踊るよ
  輝ける芥子の花の 粋なリル
  懐かしき面影 素晴らしきはリル
  つぶらな黒い瞳 うるわし上海リル


2006年03月22日(水) 絶対に起こらなかったこと

 台本のための資料を読んでいる。新しく読みたい本が見つかって、ネットで注文する。1940年の上海のことが、もっともっと知りたい。
 台本を書きながら、そして、この芝居のことを考えるたびに、三島由紀夫の「鹿鳴館」の作者による外題のことを思い出す。
 「明治十九年十一月三日の鹿鳴館における天長節夜会には、ここに見られるような事件は絶対に起こらなかった。但し、歴史の欠点は、起こったことは書いてあるが、起こらなかったことは書いてないことである。そこにもろもろの小説家、劇作家、詩人など、インチキな手合のつけこむスキがあるのだ」
 「ミッシング・ハーフ」で描かれる1940年の上海での出来事、そして、サイレントの女形俳優、川野万里江の存在、その全てが「絶対に起こらなかった」ことばかりだ。
 でも、書いていて、こんなに親身に感じる登場人物もいない。絶対にいなかった架空の人物を描いているのに、絶対にいたとしか思えなくなってくるような不思議な感覚。
 彼女の人生は、すっかり目の前にあって、あとは、どう舞台化していくかということだけが問題の、誰かの「評伝劇」を書いている、そんな気分だ。
 彼女がどんなにめちゃくちゃで、そして、大胆に自分の生きる道を選んでいったか。
 過酷な彼女の人生のレールをひきながら、それでも、なんとか幸せになってほしい、しあわせでいてほしかったと願っている。そんな不思議な感情も、今の僕のなかにある。


2006年03月21日(火) お彼岸

 朝方まで起きてしまい、目が覚めたのは10時過ぎ。母親と妹一家が出かける墓参りには、一緒にいかないことにして、家にいることに。
 そのかわりに、近くの花屋で仏壇に供える花を買ってくる。ついでに玄関用も。安売りだったスプレーカーネーションと麦の花束に、こでまりを1本。
 台所で花を活けている時間が好きだ。華道をやったことはないのだけれど、花ばさみを手に、アバウトに仕上げる。
 水に手をつけているのと落ち着く、あのかんじに似ているなと思う。
 天気がいいので、毛布を洗う。昼に干して夕方には、きれいに乾いた。いい天気の一日。
 やけにもさもさしてきた気がする猫にブラシをかける。ものすごい量の冬毛がとれた。もう春だ。
 母親は夕方になって帰宅。墓参りのあと、三郷のゲームセンターに寄ったんだそう。こどもたちと一緒に過ごす休日だ。
 夜中、NHKの「英語でしゃべらないと」で、釈由美子がオーストラリアの演劇学校に体験入学していた。いくつものエクササイズがとても新鮮。声に関してのもの、「母音に色をつける」というのもおもしろい。
 HPを更新する。

 「ミッシング・ハーフ」の予約は、劇団制作社のサイトからのWEB予約のほかに、フライングステージでも受け付けています。
 劇団のアドレス stage@flyingstage.com まで、どうぞ。
 僕がお返事をさしあげています。
 チケット代は、当日窓口精算で承ります。
 ご予約をお待ちしています!


2006年03月20日(月) ひとだんらく

 昨日の夜中のうちに洗って部屋干ししていた洗濯物を外に。部屋の窓も、思い切り開けて、風を中にいれる。
 年度末の仕事も今日で一区切り。送るものは送り、引き継ぐものは引継いで一段落。
 帰り、木村佐都美さんの仕事先に寄ってお買い物。元気な顔を見てほっとする。
 ビデオを見て、DVDを見て、本を読んで、メモをとる。台本に向かう。ほっとする時間。


2006年03月19日(日) ラムネ天色堂「チュチュ!」

 天気が良くて暖かいのに、風がものすごい。洗濯は断念する。外を歩いていると手袋がほしくなる。春物のコートに薄着で出かけて、少し後悔。
 ラムネ天色堂「チュチュ!」@明石スタジオ。松本たけひろさんの作・演出。
 男子禁制のバレエスタジオにニューハーフが無理矢理入会しているというところから始まるお話。「浅草シルバースター」でご一緒した、おちないリンゴの方波見さんのバレエ(!)や、小豆畑さんのニューハーフぶりを堪能。江原さん演じる小4の娘がいる母親役が、とても「いるいるこういう人!」というかんじだった。
 ラストの豪華な4羽の白鳥&4羽の黒鳥の男女入り乱れてのバレエ、お見事でした。
 終演後、松本さん、方波見さんにご挨拶して、失礼する。
 明石スタジオ近くの雑貨屋「アジアン」の閉店セールにひっかかり、寄せ木細工のボックスと夜光貝でできた猫の置物を購入。高円寺の街はこのところ急に変わった。駅の改装にともないいろんなお店が進出している。それにしても、古着屋の増え方はどうだろう。
 NHKの芸術劇場を見る。プッチーニのオペラ「ジャンニ・スキッキ」。アリア「私のお父さん」が有名でタイトルはよく聞くのだけれど、見る(聞く)のは初めて。一時間弱の遺産相続をめぐるドタバタ。なかなかおもしろかった。美術がとてもきれいで、いいなあと思っていたら、ヴィッキー・モーティマーによるものだった。なるほど、終幕、壁にずっと水が流れているような効果は、「ナイン」を彷彿とさせる。
 夜中、原稿を書きながら、テレビをつけっぱなし。教育テレビの時間つぶし系の音楽コレクション、特殊は「サティ」。気持ちがやすまるような、ちょっといらっとするようなふしぎなかんじ。ジムノペディ、グノシェンヌ、サラバンド。久しぶりに、サティのピアノをたっぷりと。


2006年03月18日(土) ダイヤ改正

 強い風のせいで電車が遅れて、乗り継ぎがうまくいかない。最寄りの東武伊勢崎線は今日からダイヤの改正で、電車の種類が複雑になり、ややいらいらと出かける。
 仕事の日。年度末の仕事が山積みになって、ほんとに終わるんだろうか?と心配になり、休日出勤。一日、家にいて、台本に向かっていたいところなのだけれど、これが終わらないとそれもままならない。
 帰り、夜になって急に寒くなったので、北越谷からバス。電車のダイヤに連動した時刻表が、ダイヤの変更でとっても不便なものに一変。さっそく20分待つことに。いつもならスーパーで買い物をするところを、駅前にあるこの界隈では一番大きな本屋で立ち読みと買い物。昨日と同じ北越谷の駅前が、普通の風景になっていて、昨日の夜の不思議な空気をあらためて思い出す。


2006年03月17日(金) ピンズログ「ル坂の三兄弟」

 高田馬場の駅で絶対王様の笹木くんとばったり会って、一緒に神楽坂のdie pratzeへ。ピンズログ「ル坂の三兄弟」。森川くんが出演している。
 ある教会の家族をめぐる約2週間のお話。ピンズログは前回の旗揚げ公演「サラミの会」がとてもおもしろかった。はじめのうち、いったいどうなるんだろう?と思っていたのが、最後には完全に引き込まれて見てしまっていた。途中、うわ、もう暗転?と思ったりしながらも、最後には、それもよしと思えてきた。拍手。
 登場人物みんなが、切ってはめたような、いるいるこういう人なかんじで、無理がない。森川くんが演じる、牧師である父親役も。キャバ嬢も、三兄弟のキャラクター違いも、和田好美ちゃんの女子高生も、ストーカーも。キャスティングがとてもうまくいっていて、役者たちは、無理に何かをつくることをしないで、素直に「その先」のことをしている。それが、とてもいい結果を生んでいると思う。セリフをしゃべっていないときの芝居が、印象的だ。微妙な恋心を秘めた高校生が、だまって話をきいているかんじ、携帯をもてあそんでいるかんじ。
 途中、ほんとにいやなヤツだと思って同情できなかった長男の妻が、見終わってみるととても心に残る。なんでそんなことするのかなという思いを、途中までずっと種明かししないままに描いて、最後に実はという背景が見えてきても、それでも彼女が抱える心の闇の、言葉では説明できない部分が心に残るんだと思う。
 森川くん演じる、甲斐性のない父親の「神への思い」が、この芝居全体を包み、支えている。正面向きになりがちなこの空間で、当たり前のように客席に背を向けて、そこにいる彼の背中がとても雄弁だった。
 終演後、みなさんにごあいさつ。一緒に見ていた永山くん、本田さん、キキコロモさん、そして笹木さんと、飲み会に合流する。
 いい芝居を見た後は話がしたくなるものだと思う。今日も芝居の話をいっぱいした。作・演出のピンさんとも、初めましての役者さんたちとも。
 確信犯で終電を逃して、上野から深夜バス。大江戸線の駅から歩く道の途中、上野公園のはじっこの桜が何本か満開になっていて、思わず「満開だ!」と声を上げる。
 一足先のお花見、ほろ酔い気分。いつもならぐたっと寝てしまうバスの中でも芝居のことをずっと考えている。
 北越谷で降りてタクシーに乗る。いつも通る駅前も初めて来る知らない街のように見える。酔っているせいか? 運転手さんと桜の話になり、今見てきた上野の桜の話をしたら、「あそこは早いんですよね」と言われる。上野で働いていたことがあるそうだ。
 家についても、なんだかとってもいい気分の夜。眠ってしまうのが惜しくて、時々部屋の窓を開けてみたりしながら、朝方まで起きている。


2006年03月16日(木) 沈丁花

 気がつけばもう3月も半ば。芝居の稽古と本番でわたわたしていると、あれ、もうそんな?というかんじで、季節が変わっていく。
 外を歩いていると沈丁花のにおいがする。切り花の沈丁花を花屋に出くわすたびに探すが、なかなか見つからない。肉厚の花は水揚げがむずかしいのかもしれないが、なんでだろう?
 そういえば、秋のキンモクセイの枝も花屋では売ってるのを見たことがない。あんまり香りが特徴的なので、家中お手洗いになってしまうからか? それにしても「沈丁花の香り」なものは、ないよなあと思ったりする。
 町を歩いていて、あまり身近に香るものではないのかもしれないと思う。遠くからふとただよってくるのがちょうどいいのかもしれない。


2006年03月15日(水) 一年前

 新作を書いているとき、台本に煮詰まると僕は、自分がこれまで書いた台本を読み返す。最後の「幕」や「おわり」という字を見て、「あんなに苦労したけど、書き上げられたんだから、今度だってできる!」と自分をはげます。
 今回の「ミッシング・ハーフ」では、そんなふうに煮詰まるということがないまま書き進めることができている。
 もっとも資料をあたったりするのに手一杯で、それどころじゃないという理由もあるのだけれど。
 「二人でお茶を TEA FOR TWO」の台本を送るねと約束したままうっかりそのままになっていたことを、改めて人づてに連絡をもらい、あ、そうだったと、久しぶりに台本を印刷してみる。
 去年の今頃、夢中になって書いていた本だ。つい読み返してしまい、いろいろなことを思い出す。というか、ちょうど一年前の今日、僕はこの台本を書き上げたんだった。感慨深い。
 うわ、これよりおもしろいもの書かなくちゃいけないという、追いつめられたような気持ちにはならず、たんたんと、ここはおもしろい、ここはまだ手を入れられると冷静に読むことができた。
 そして、やっぱり、これより絶対おもしろいものにするぞと思う。
 この期に及んで見ておきたいビデオが出てきた。明日借りてこよう。


2006年03月14日(火) 前にすすむ

 仕事に出かける。電車の中でも聞こえる音の変化が気になってしかたない。まだおさまらないということは、王様の芝居から来るストレスじゃないんだ、ほらね、と妙に勝ったような気分。あ、でも、これから続く舞台から来る緊張だろうか。とにかく、芝居がらみでストレスがきて、耳が聞こえなくなるのは、納得がいかない。予定を立てて、来週には病院に行こうと思う。
 たまっていたメールに返事を書く。HPも更新する。BBSにもお礼と連絡事項の書き込みを。
 楽しくていい気分だけを大事にして、前に進もう。余計なことは考えない。たんたんと歩くように、やらなきゃいけないことを、楽しくやっていこう。


2006年03月13日(月) 左耳のこと

 ちょっとだけ眠るつもりが爆睡してしまい、仕事に行くことを断念する。休みの連絡をしたあと、今度は覚悟をきめて二度寝した。
 この間から続いている左耳の耳鳴りと難聴は、まだおさまらない。どういうタイミングで激しくなるかというのを、探ったりしているのだけれど、しばらくは病院に行けそうもない。まるっきりの突発性難聴は発症してから1週間が大事という話を聞いたけれど、僕のように聞こえたり聞こえなかったりというのは、もう少し様子を見てもいいだろうと、自分で決めた。
 それにしても、声が聞こえにくいときと、妙に頭に響くときがあるのは困る。どっちかひとつにしてほしいもんだ。
 夜、NHKのドキュメンタリーで、不思議なタコの生態や、富山湾の生き物たちを見てしまう。
 実際に入ったり潜ったりするのは、苦手だけれど、海のことを考えると、気持ちがとてもおだやかになる。イライラしたとき、僕がイメージするのは、深い静かな海にまっすぐに沈んでいく自分だ。


2006年03月12日(日) 「宇宙人の新撰組」千穐楽

 2日だけの公演なので、今日は千穐楽。
 gaku-GAY-kaiのように一回きりというのとはまた違う、不思議な感覚。
 普通なら、2日落ちしそうなところを、これで最後!といういきおいで、気持ちはずいぶん盛り上がっているかんじ。
 アルピーナさんとこの劇場のあたたかさについて話す。公共ホールの冷たさとは全然違う、この劇場のこと。上のコマ劇場につめかけるたくさんのお客さんの思いや、それを受け止めて、芝居で食べているたくさんの舞台人の思いが、地下のこの空間にも満ちてるんじゃないだろうか? 楽屋入りの前、楽屋口の前で北島三郎ショーの自由席のために並んでいる多くの人たちを見て、さらにその思いを深くした。
 開場前に全員舞台に集合して挨拶。ダンスと立ち回りの確認を、僕たちは客席から見せてもらう。
 そして、開場、開演。
 出番が終わると階段を上って楽屋へ向かい、衣装のチェンジ。実は舞台からとても遠い楽屋も、ここなら許せるかんじ。二度目の着替えは舞台下手から、ロビーを歩いて楽屋まで戻る。歩きながら、息が切れるのは、距離のせいではなく、稽古でいためた胸のせいで、呼吸が浅くなっているからだ。
 カーテンコール、緞帳が降りる舞台はひさしぶりだ。昨日は、頭を下げて緞帳が降りるのを待ったのだけれど、今日は、笹木さんによる演出の変更で最後に顔を上げて、緞帳が降りきるのを待った。出演者全員と今日も握手&ハグ。お疲れさまでした。
 ロビーに出て、お客様にご挨拶。どうもありがとうございました。
 楽屋を片付けて、打ち上げまでの時間、アルピーナさん、小林くんとサザンテラスのアフタヌーン・ティーで話をする。今回の舞台ことをいろいろ。
 21時からの打ち上げは、23時には失礼して、終電で帰ろうと思っていたのだけれど、楽しくおしゃべりしているうちにあっという間に0時近くになってしまい、朝までいようと予定変更。みっちり話しこんでしまう。
 始発が出る時間に、一足お先に失礼する。アルピーナさん、小林くんと「出てよかった」という話をして解散。
 徹夜明けの朝は寒さを余計に感じるものだけれど、今朝はなおさら。乗り継ぎのよくない電車を乗り継いで、最後は朝日に照らされる雲をながめながら。7時過ぎに帰宅する。
 今回の王様の舞台は、出番は少なかったけれど、とても好きになれた舞台だった。ミュージカル風というわくぐみというよりも、いいセリフがいっぱいあったのがうれしかった。
 近藤勇の「人にやさしく自分に楽しくしてれば、そこがお前の場所になる」という言葉や、「仲間をつくれ」というセリフは、それを語る有川くんのすばらしさともあいまって、僕は毎回、袖で聞きながら、ほろっとしていた。
 フランスの劇作家ジャン・アヌイには、内容にあわせて「黒い戯曲集」「桃色の戯曲集」というのがある。笹木さんがこれまで書いてきた戯曲が、同じように分ければ「黒い戯曲集」に入ると思うのだけれど、今回の「宇宙人の新撰組」は、間違いなくもっと明るい色の本になるのではないだろうか。その両方を持てるということは、とてもすてきなことだと思う。
 ともあれ、楽しく舞台に参加させていただいて感謝だ。今回の舞台に出てなかったら絶対に知り合えなかった劇団鹿殺しのみなさんと会えたこともとてもうれしく感謝している。
 みなさん、ほんとうにお疲れさまでした。そして、どうもありがとうございました。


2006年03月11日(土) 「宇宙人の新撰組」初日

 朝、1カ月分をためてしまった古新聞を廃品回収の集積所にもっていく。予定した電車に乗れず、新宿までのショートカット、つくばエクスプレスで向かうことにする。
 メイクがあるので少し早く入ろうと約束した十時入りに少し遅れて劇場入り。
 早めに入ったというものの、場当たりの前にメークを終えるのはなかなかあわただしい。仕度が終わった頃に、ちょうど昨日の続きの場当たりが始まって、ラストまでを順に。
 初めての回り舞台を経験する。おおーっと思わず声が出るかんじ。動き始めと止まったときにカラダがぶれないよう気をつけるが、なかなかむずかしい。それでも、かなり気持ちは「上がった」!! その後、懸案だったキックボードにも挑戦。リノとパンチで微妙にすべりが違うのではじめややとまどう。段取りをアレンジしてなんとかめどがたつ。
 予定を少しだけ過ぎた時間からゲネプロ開始。これまでなかった小道具や衣装が、続々投入されて、なんだかものすごいことになっている。
 芝居もラストに向かってどんどん熱くなっていき、いい終わり方になった。
 休憩のあと、準備をすませていったん舞台に全員集合した。
 みんながそれぞれ、きっといるだろう劇場の神様にあいさつをした。シアターアプルは、とても気持ちのいい劇場だ。初めてなのに、しっくりとあたたかく、とても広いのに広さを感じさせない懐の大きさがある。昨日小屋入りしての今日で、すっかり僕らの味方になってくれた、やさしい劇場だ。
 小道具と表方の段取りの都合で開演をずいぶん押させてもらって初日の幕が開いた。
 開演前、絶対王様、鹿殺しのみなさんは、それぞれ、開演前の気合い入れの儀式(?)を。ひとつながりの楽屋なので、僕たちもやらなきゃねえと、みんなが舞台に向かったあと、アルピーナさん、小林くん、トシくんの4人で、手を合わせて気合いをいれてみる。ゆるゆると。
 今回もまたお客様にたすけられ、ささえられながら、2時間の芝居が誕生していった。稽古場では思いもよらなかった結末が見えてくるのが、本番の面白さ、舞台のおもしろさ、そして、それを信じて芝居をする役者達のすばらしさだと思う。
 最後の幕が下りて、緞帳のうしろでみんなで握手&ハグ。
 終演後、楽屋口で、去年「猫のヒゲのしくみ」でご一緒した星さん、ワンダラーズの沖本さん、土井さんはじめ、大勢のみなさんにご挨拶。どうもありがとうございました。
 あと一回のステージ、楽しく、怪我のないよう、つとめたいと思う。


2006年03月10日(金) 「宇宙人の新撰組」仕込み

 夕方から、シアターアプルへ。客演の僕らは、すっかり舞台ができあがってからの劇場入りだ。
 小屋入り前に、紀伊國屋の下のセイセイドーでメイク用品を買う。残り少なくなったフェイスケーキ、ドーラン、それにいつのまにかどこかにやってしまったらしい板刷毛も購入。いつもよりは少し大きな劇場なので、メークもぱっちりやってしまおうと思う。一昨日、マルゴリータ奈須に教えてもらった、鼻の穴に塗るタイプの花粉症のクスリもゲットする。
 劇場入りは、とても新鮮。王様のみなさんがわりふってくれた楽屋に化粧前をこしらえて、メークを始めて、場当たり開始前に無事終了。昨日の通しの時にちょっとピンクっぽいかもと思ったメークを少し手直ししてみた。
 場当たりを頭から始める。僕たちは、とりあえず出てみて、衣装とメークのチェック。動きや転換は、明日あらためてということに。
 客席から舞台を見て、あれこれ考えることがいっぱい。初めての劇場なので、わからないことがいろいろあるけど、少しでも早く劇場を味方にして、いいものを見ていただけるようにしたいと思う。
 チケットの予約を受け付けています。絶対王様さんのご厚意でフライングステージ割引がありますので、どうぞご利用下さい。僕宛にメールをいただけたら、折り返しご連絡いたします。前にも書いたのですが、僕はこの芝居をとても楽しんで、そして愛しています。多くのみなさんに見ていただけたらと思っています。みなさんのご来場をお待ちしています。


2006年03月09日(木) 「宇宙人の新撰組」稽古

 朝、高円寺に寄って衣装その他のピックアップ。稽古は、稽古場での最後の通し稽古。
 衣装を着て、メイクもする。昨日買ったプリーツプリーズに、その他の衣装を組み合わせて、3ポーズを決めた。でメイクをして、ウィッグを重ねて(!)、できあがり。
 メイクをすませて巨大になったアルピーナさんと2人、これでだいじょぶとちょっと安心する。
 昨日小林くんにお願いしたキックボードに乗ってみる。ローラースケートの代案だ。ちゃんと乗るのは実は初めてでやや心配だったのだけれど、なんとかなりそうだ。
 本番前の最後の通し稽古。衣装ありで。自分が出ていない場面を前の方から見せてもらう。新撰組のそろいの羽織は、殺陣をしているとほんとうにきれいでかっこいい。ホンモノの新撰組も、それを考えてこの装束を選んだんじゃないだろうか。
 劇中のレビュー(!)場面で、今日高円寺からピックアップした衣装を持ってでた。ばかでかくて派手で、「あり」ということになったのだけれど、通し稽古のなか、だんどりで倒れたら、支柱にしていた棒が肋骨にもろに当たってしまった。ものすごく痛い。転がっているシーンだったので、苦しそうにもだえてもぜんぜんありなので、しばらく苦しむ。立ち上がっても、痛みはそのまま。咳やくしゃみをすると、痛みが走る。
 通し稽古終了後の休憩に小林くんと2人で食事に出る。大通り沿いのラーメンやで、とんこつみそラーメンを食べる。なかなかおいしかった。
 休憩後は、小返しの稽古をあちこち。全員揃うラストシーンの稽古が、細かいアイデアを言い合いながら、ていねいに組み立てられていった。
 今日は小道具等の荷積みのため稽古はやや早めに終了。全員でトラックに荷積みをして解散。
 今回、稽古場として借りた、ここは元小学校。それもかなり手入れされている廃校で、使っていてとても気持ちがいい。終了の時間が9時をちょっと過ぎても、他の公共施設のように頭ごなしに怒鳴られたりすることもない。とてもありがたい、うれしい稽古場だった。お世話になりました。


2006年03月08日(水) 「宇宙人の新撰組」稽古

 朝から出かけて買い物。衣装を探す。今回、僕は、イメージとして「美輪さん」を考えているので、衣装は美輪さんがよく着ている、イッセイ・ミヤケのプリーツプリーズで行こうと思っている。手元に2着あるので、カラフルなものをゲットしてコーディネートしたい。今年の新作でこれがいいというのがあったのだけれど、5月にならないと発売にならないということで断念。それなら古着屋さんで見つければいいやと、時々のぞく銀座の「rt」で派手目なものを2着ゲット。
 もう一つ探していたローラースケートはどこを探しても見つからず断念。代案を考える。
 今日の稽古は、通し稽古。早い時間に体育館で。鹿殺しのプレラさんが、それほんとに着るの?というようなすごい衣装。アスリートのようなすがすがしさ。
 通しのあと、夜、アルピーナさんが復帰。衣装を笹木くんに見てもらいながら、僕らの場面を中心に小返し。明日の通しは衣装メイクありでいくことに。どうなるか楽しみだ。
 高円寺からの荷物のピックアップは中央線が遅れているので明日に。まっすぐに曙橋のマルゴリータ・奈須邸へ向かう。去年のgaku-GAY-kaiの荷物をピックアップ。大荷物を宅急便で送って、少し身軽になって帰ってくる。最寄り駅からはタクシー、ちょっとへとへとだ。


2006年03月07日(火) 富士見丘小学校授業 「宇宙人の新撰組」稽古

 今朝起きたら、左耳が聞こえない。昨日スタジオでヘッドフォンをかけたときから、なんだかおかしいとは思ったのだけれど、あららというかんじ。
 ぼくは、ずいぶん前から左耳がよく聞こえなくて、耳鳴りが持病なのだけれど(台本書けなさのストレスから来た、突発性難聴だと思ってる)、今朝はまるっきり聞こえない。びっくりする。ストレスって何?と不思議な気持ちだ。
 絶対王様の稽古はとても楽しくて、今回初めての鹿殺しさんたちもとてもすてきな人たちで、芝居をしてることそれ自体がとってもハッピーなのに、それで何がストレスになってんの?と自分に問いただしたい。
 今日は2時間目から富士見丘小学校の授業を見学させていただくことになっているので、シャワーを浴びて、とりあえず出かける。ラッシュにもまれて、明大前に着いた頃、ようやく「あ、戻った」というかんじで電車の音が立体的に聞こえてきた。まずはよかった。
 授業は、2時間目が長崎先生による5年1組の国語。4月から演劇授業を一緒にやる子供たちだ。伊藤さんと拝見する。教科書を使っての授業だけれど、子供たちが話し合う。情景を考えて、それぞれの意見を言い合う。発表のしかたもとてもいい、自分の意見だけでなく、人の意見も代弁する。演劇授業の参考にと思って、うかがったのだけれど、とてもおもしろかった。
 3時間目までの20分休み、今日は全校での持久走。3Fの教室から、みんなが(先生方も)走っているようすを見させてもらう。
 初めは、「それは持久走じゃなくて、ダッシュでしょ?」というくらいだったのが、だんだん落ち着いていく。走り方も一人一人ばらばらで、知っている6年生の子たちは、やっぱりその子らしい走り方。一緒に走っている仲間とのようすもほほえましい。先に下級生が終わって、上級生だけになると、またペースが速くなった。わざとじゃないんだろうけど、なんだかいいねと伊藤さんと話す。
 3時間目は、甚野先生による算数。篠原さんも一緒に。少人数クラスでの授業。さっきの持久走の話から授業に入っていくその自然さとうまさに感動する。
 学校の先生というのは、教壇に一人たって、授業時間いっぱい一人芝居をしているようなものだと思っていたのだけれど、今日の甚野先生の授業は、そのイメージをぐーんと上回るおもしろいものだった。
 授業を進めていく先生の話し方もとてもおもしろいのだけれど、子ども達一人一人との会話、そして、ぴりっと厳しくなる瞬間のあざやかさ、そして、何よりも算数を教えるプロとして子供たちに向き合っている姿がステキだった。
 4時間目は、2組で長崎先生の国語。1組と同じ内容だったのだけれど、子供たちが違うとこれだけ違うんだというのがおもしろかった。
 教室の雰囲気も1組と2組とは全然違う。そのこともあらたな発見だった。
 授業のあと、給食をいただいて、今日の授業のこと、そして来年度の演劇授業の打ち合わせ。今年以上に先生方に参加していただくかたちの授業になりそうだ。今日初めて間近で見た子供たちとのこれからの一年。楽しみがいっぱいだ。
 休み時間に6年生と再会する。あいさつやおしゃべりをいろいろするなか、「放課後の卒業式」のセリフをまたやってくれる子が何人もいてうれしい。
 中でも、「未来の友情」の炎役だったジュンヤくんが、女の子たちに「炎やりなよ!」と言われて、「え……?」と言いながら、「違う、違うんだ!」という場面をやってくれて、うれしかった。終わった芝居で遊べるっていうのは、彼らの中に、芝居がいい思い出として残ってることだと思う。今度会うのは卒業式だ。「泣かないでね」とさんざん言われて、いつもなら「泣かないよ!」と言い返すのだけれど、もうボロ泣きしてしまうことは明らかなので、「泣くよ、泣くとも」と返事しておく。
 夕方から稽古場へ。笹木さんは昨日よりも少し顔色がいい。稽古も順調。稽古のあと、王様チームは今日もまた音響さんの事務所へ。朝から夜までほんとに大変だ。
 僕らは、稽古だけで参加させてもらっているのだけれど、王様のメンバーのがんばりには頭が下がる。
 夜、高円寺に寄って、荷物をピックアップする予定が変更に。まっすぐ帰ってくる。


2006年03月06日(月) 「宇宙人の新撰組」稽古

 仕事に行くが早めに上がらせてもらって稽古場へ。
 通しには途中から参加できるかと思ったら、笹木さんの体調がとてもよくなくて、有川さんを中心にした小返し稽古。
 笹木さんはほんとに具合が悪そうで顔色が悪い。代役?という話もちらちら出て、ドキドキする。
 それでも、笹木さんとは、僕が劇中で歌う歌についての打ち合わせをさせてもらう。ついでに今回の芝居についての話もあれこれ。
 僕は、今回の「宇宙人の新撰組」、いい話だなと思える。最初の読み合わせのときにはなかったラストシーンを先週もらってから、なおさらそう思うようになった。歌ったり、踊ったりの、笹木くん流に言えば「でたらめにもほどがある」お話の中に、ほのぼのと暖かいものがちゃんと流れている。
 僕らがいつもやっているような歌ったり踊ったりというのは絶対王様の公演では久しぶりだ。着物を着て、がんがん踊っているみんながとてもかっこいい。
 稽古後、早稲田にある音響さんの事務所へみんなで行く。待ち合わせがなかなかうまくいかなくて、駅の上のコンビニの前で、しばらく立ち話。お茶やら軽くお酒なんか飲んだりして、ちょっと早い、お花見の気分だ。
 事務所に移動してバタバタと作業。終電に間に合うように気を遣っていただいて、演出助手のキクチさんと一緒に帰ってくる。


2006年03月05日(日) 「宇宙人の新撰組」稽古

 小返しのあと、通してみる。稽古初日に読み合わせをして以来だ。
 全体の流れがよくわかった。
 今回、僕たちはピンポイントで登場するので、インパクトがだいじだと考える。
 稽古帰りの池袋までの道を打ち合わせしながら歩く。一週間の集中稽古、楽しく思い切りやっていきたいと思う。


2006年03月04日(土) 「宇宙人の新撰組」稽古

 水月アキラことトシくんと待ち合わせして、池袋の稽古場へ。要町近くの元小学校がとてもすてきなスペースになっている。
 挨拶のあと、小林くんも合流して、すぐ、立ち稽古。
 今日、初めて会う「劇団鹿殺し」のみなさんとからむ、ラストシーンから。
 のっけから、「○○してもらえます?」と言われ、そのアイデアにわくわくのっかる。その後の芝居のやりとりでも、しっかり目を見て、言葉をぶつけてきてくれるまっすぐさに感動する。王様のみなさんとの稽古も実に楽しくて気持ちがいいのだけれど、鹿殺しさんたちが加わっての今回、なんだかわくわくの度合いがぐーんと高くなった。
 夕方から参加のアルピーナさんも加わって、稽古はすすむ。フライングステージチームの出番を中心に稽古していただき、かたじけない。
 あっという間の終了時間、帰り道、しいたけをさん、アルピーナさん、小林くん、トシくんと、稽古の感想をるんるん話しながら駅まで歩く。どんな芝居になっていくのかとても楽しみだ。


2006年03月03日(金) 富士見丘小学校「卒業を祝う会」

 1週間ぶりに富士見丘小学校へ。保護者の方と6年生による「卒業を祝う会」にご招待いただいた。
 校長室からコウヘイくんにエスコートされて、体育館へ。他の6年生とも一緒の入場。体育館には保護者の方が勢揃い。拍手で迎えられててれくさい。先週の6年生のドキドキが想像される。
 お茶とお菓子をいただきながらの会はとても暖かいものだった。
 6年生のかつての担任だった先生方がいらして、彼らの思い出を語られた。そのはしばしが、この子たちがどれほどのびのびと育ってきたのかというものばかりだった。そして、それを撓めることをしないで、見守ってきた先生方の姿勢にも心を打たれた。
 先日いただいたDVDの「これは送る会まで見ないでください」といわれた、最後の章「すてきななかまたち」が上映された。6年生1人1人が低学年の頃のようすや小学校の入学式のスナップが今の写真と一緒に全員分。子ども達と一緒にわいわい楽しませてもらう。続きには、彼らが2年生のときの学習発表会の演目、たぶん「アリババと30人の盗賊」のミュージカル。小さな彼らが、歌い踊っている。去年も思ったことだけれど、6年になっての演劇授業の前に、彼らはいろんな演劇を経験しているんだということが、あらためてよくわかった。
 後半のプログラム「お楽しみ会」では、保護者の方の合唱、合奏。それに、先生方の出し物。なかでも専科の先生方の、「放課後の卒業式」のパロディはすばらしかった。劇中のセリフをすてきにもじって、原作の「冬はきらい」というのを「3月はきらい」にしてたりする。いくつもの名セリフ、名場面が登場して、懐かしい気持ちになり、子供たちと一緒にいっぱい笑った。
 芝居のセリフで遊べるというのは、ちゃんとその芝居がカラダに入ってるってことだと僕は思う。どんな芝居の稽古をしていても、そんなセリフのパロディなんかが普段の会話で出てくるようになるのは、いい稽古ができてる証拠のように思えるからだ。
 最後に6年生の合唱と合奏。それに、全員で歌っておしまい。初めて歌う歌を歌詞を見ながら歌う。歌い終わったら、ココちゃんに「さすが俳優」と言われる。まあね。
 小さなパンジーの鉢植えをいただいて体育館をあとに。校長室で、6年生のかつての担任だったお二方から、いろいろなエピソードをうかがう。玉川上水から枯れ枝をひろってきて二宮金次郎ごっこをしたこと、教室で飼っていた虫が羽化するのを給食そっちのけでみんなで見たことなどなど。いい話をいっぱいうかがう。もっと早く聞いておきたかったと思わずに、うんうん、そうだねと思えていることが、うれしい。
 来月から、もうすぐ次年度の授業が始まる。3週間後には卒業式、来週は5年生の授業を参観させてもらうことになった。年度末と卒業のさびしい季節が、あわただしさのなか、それでも新しい春の準備に向かっていく。一年になかなか節目のないくらしをしている僕だけれど、この季節のかわりめの重さといろんな思いの交錯はなかなかいいものに思えてきた。


2006年03月02日(木) 紅王国「不死病」

 昨日、夜中、いただいた富士見丘小学校の記録DVDを見てしまう。一年間の授業風景の静止画に「放課後の卒業式」の映像。盛りだくさん。
 違うアングルからの映像はとても新鮮。見下ろしているアングルなので、最前列の1年生、2年生のようすがとてもよくわかる。ほんとによく見ている。そして、一緒に楽しんでいる。「未来の友情」のラスト近くの地震の場面、足を踏みならして本舞台に移動する6年生と一緒に、この子たちも一緒に足踏みをしてくれている。「放課後の卒業式」全体で一番かっこいい場面、「未来の友情」で炎役のジュンヤくんが氷役のヒデキくんに見えないボールを投げるシーンは、アングルの外になってしまっていて見えない。ちょっと残念。でも、見えないボールを見ている低学年の子供たちの視線が、ちゃんとボールを目で追っている。
 ノグが出演している紅王国公演「不死病」を見に中野のポケットへ。
 半年来ないうちに、劇場の手前の、元気のない犬がいた平屋は、ナチュラルローソンになっていた。通りがぐーんと明るくなっていてびっくり。
 不死の吸血鬼の物語を、現代のエイズにも喩えたゴシックロマンな舞台。以前、戯曲を読んだ印象では、隠れキリシタンの物語の印象からか、赤と金色のはげかけた漆喰の壁が連想された。今回の舞台は、全編がほぼモノトーンな印象だったのが意外だった。
 全編をいろどる音楽とその入るタイミングが、市川崑の横溝シリーズ、特に大野雄二音楽の「犬神家の一族」のようで、あちこちうならされた。
 帰り、同じ回を見ていた高市氏、マミィと立ち話。久しぶりのホソちゃんと挨拶。宇田くんと今書いている「ミッシング・ハーフ」についてのあれこれを話しながら帰ってくる。


2006年03月01日(水) 富士見丘小学校打ち合わせ

 篠原さんと今年度のまとめと来年度の打ち合わせにうかがう。
 富士見丘駅前の洋菓子の「ミノン」で2人でまずは打ち合わせ。富士見丘にはここくらいしか打ち合わせできるところがないので、何かとよく来るようになってしまった(あとはドトール)。コーヒーや紅茶にサービスしてくれる「東京シュー」というお菓子がとてもおいしい。
 篠原さんがつくってきてくれた次年度のカリキュラムの叩き台をもとにあれこれ話す。まずは叩き台ということで。
 今年度の次年度の6年担任の先生と長崎先生、それに平田さんとのこじんまりした打ち合わせだと思っていたら、ふじみルームでの職員会議の第二部ということで、全校の先生方と共有する。
 24日以降の子ども達の様子(6年生も、他の学年も)がうかがえてとてもうれしかった。
 そして、次年度の方針。具体的なカリキュラムの前の全校での取り組み方についての確認と共有のための話し合い。定時を過ぎても、みなさん残ってくださって、とても有意義な話し合いができたと思う。
 その後、校長室で、少ない人数での打ち合わせ。授業日程、時間の調整などについてのより具体的なことを。
 去年はこうした話し合いがもてるようになるまでとても時間がかかった。今年は、本番が終わって5日だ。何より、それがうれしい。
 見米先生から、記録のDVDをいただいた。昼間の「6年生を送る会」での舞台が収録されているそう。知らないアングルからの舞台が見られそうで楽しみ。
 すっかり遅くなり、篠原さんとわたわたと失礼する。
 渋谷で別れて、僕は、資料と衣装を探す。閉店際の東急でマヌカンのお姉さんに相談してみたり、ずっと探していてツタヤにもなかったDVDがブックファーストで見つかったり。もう1つ探していた本にも出会うが、やっぱり値段が高くて今日は断念。戦前の上海の地図を目に焼き付ける。
 外は大雨、いつの間にか最終のバスにぎりぎりの時間になってしまった。


せきねしんいち |MAILHomePage

My追加