せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2005年08月29日(月) 「猫のヒゲのしくみ」稽古

 まずは歌の練習。シベリウスの「フィンランディア」、ラスト近い賛美歌のようなメロディ。最初に聞いたときはどうなるかと思ったのだけれど、30分ほどで形になってしまった。
 僕は星さんと一緒にメロディ担当のソプラノパート。郡司さんの指導で声の出し方から、自分以外のパートをちゃんと聞いて、声をまぜていく意識を持つことなどなど、とってもおもしろい。そして、なんてきれいなんだろう
 笹木くんが3稿のラストまでを持って登場。
 稽古は、後半を中心に。


2005年08月28日(日) ショーケース

 篠原さんと富士見丘小学校の打ち合わせに、半蔵門へ。卒業公演の台本のた叩き台について。その後、篠原さんは、国立劇場で高校演劇の発表会へ向かった。一度別れたのに、なんとなく、またマックでお茶することになり、おしゃべりをたくさん。篠原さんは、高校演劇の中国大会の審査員をしたそうで、その時の話をいろいろと聞く。十数回も改稿したという話や、みごとな一人芝居のことなど。高校演劇ってなんておもしろいんだろうとあらためて思った。いい芝居の話を聞くのは、とっても楽しい。
 その後、森下スタジオへ向かい、明樹由佳さんから案内をもらった池内美奈子さんのワークショップのショーケースを見る。駅前で、松本くんや江原さんの一行と会う。
 池内美奈子さんの主催するワークショップの発表会。池内さんと俳優たちの「こんなことできます」というプレゼンテーション。
 いろんな芝居の短いシーンを演じていく。演出はどれだけされているのだろう、その場にいる俳優は、信じられる言葉を発することに集中していた。とってもおもしろいもの、ちょっと微妙なものなど、いろいろ。それでも、自分のカラダと声に向き合っている俳優達の姿はとても魅力的だった。
 中でも明樹由佳さんは、いろんな場面を演じながら、いつも生き生きと肉体と言葉がじかにつながったかんじで、目が離せなかった。
 ルールとして、「うまくいっていないと思ったら芝居をとめてもいい」というのがあって、明樹さんは、「メッカへの道」を演じ始めてすぐ、「ソーリー」と言って、芝居を止めた。たしかに、外のスタジオから音楽がどかどか響いてきて、僕たちも集中しずらいかんじだった。池内さんに「どうしたい?」とたずねられて、明樹さんは「さわりながら」演じることに。まずは、相手役の井上可奈子さんと一緒にわーっと走り回って、池内さんの太鼓の合図で芝居が始まった。どこかにさわって、何かを頼っていないと言葉を紡いでいけない状態の緊迫感。そして、しばらく経って、どこにも触れずに一人で立ったときの心細さとそれでも一番ツライ言葉を口にしなくてはいけない、その瞬間の緊張感。明樹さんの抱える葛藤がまるごと伝わってきた。カラダと言葉のありようって、こういうことなのかもしれないと、思った。明樹さんは、いつも「まるごと」の人だと、この頃よく思う。この間のフラジャイルでも、ラ・カンパニー・アンでも。僕にはなかなかできないことだ。尊敬する役者さんの一人だ。
 森川くんと会場でばったり。きっと会うんだろうなと思っていた。
 帰りに、両国の倉庫へ、衣装の第二弾を取りに行って、森川くんの新居におじゃまする。芝居の話をいろいろと。一緒に飲んだビールと、芝居ばっかりに触れた一日の、ほろよいのいい気分で帰ってくる。


2005年08月27日(土) 「猫のヒゲのしくみ」稽古

 今日は、笹木さんがお休み。
 まずシアターゲーム。楽しくテンションが上がる。
 稽古は、ややラフに通していく感じ。みんな昨日に続いてリラックスしたふんいき。とっても楽しい。
 いくつかの場面を終わりまでを通してやることができて、気持ちの流れに納得がいった。字面でわかっていても、やっぱりやってみないとわからないことがいっぱいだ。一つの場面にいる時間の気持ちのつながりができた気がする。
 このところの「見る芝居」を今日もやっていたら、前から見ていてくれた有川くんにそのことを指摘される。「話の中心を見すぎるって言われるんだよね」と答える。僕は、お客さんに「私を見てればだいじょうぶ」と伝えるような芝居をよくしてしまう。僕なりの「座長の芝居」なんだと思う。それでも、今回は違うことをしないと。せっかく役者としてだけで参加してるんだから。僕が演じる「真野吹雪さん」は、目の前で展開するお話の流れにどれだけ乗っているのか? 丸ごとなのか、それとも「関係ないわ」と知らんぷりしてるのか、そのかねあいを考えていこう。というか、いろいろやってみよう。それが稽古だよね、きっと。


2005年08月26日(金) 「猫のヒゲのしくみ」稽古

 台風はあっさり行ってしまって、なんだか拍子抜け。台風一過の晴れた空。 
 今日の稽古は、後半、笹木さんが打ち合わせに出ていったなかで。
 笹木さんがいないと、どこかのびのびとした雰囲気になるのはどうしてだろう?
 羽目を外すというのではなく、リラックスした雰囲気のなか、みんなが好きなことをやっている。この「のびのびした自分」を持ったまんま、笹木さんの前に立てたらいいなと思う。


2005年08月25日(木) 「猫のヒゲのしくみ」稽古

 稽古場では、昨日に続いて、見ることを課題にしてみる。初めて見るような新鮮な驚きを自分の中で見つけていく。
 3稿の愉快な場面を持って笹木さんが登場。どうなるんだろうかとわくわく。続きが楽しみ。
 台風の夜。強く降ったかと思ったけど、それほどでもない雨足と風。
 帰りに高円寺に寄る。阿波踊りの前夜祭。風がだんだん強くなっていくなか、それでも街はどこか陽気な気分だった。


2005年08月24日(水) 「猫のヒゲのしくみ」稽古

 稽古の前、新宿のスペース・ゼロに「レインボーアート展2005」を見に行く。
 ジャイアントワネットさんや、新井さんにご挨拶。作品を見た後、おしゃべりをしばらく。今年は、やや顔ぶれが新しくなったような印象が新鮮。毎年みてきた人がいないさびしさもちょっぴり。

 稽古は、いろんな場面がだんだんなじんでくるかんじ。
 なんだかカラダが重いのだけれど、稽古していると忘れる、そんな気分。
 人を見ることを意識してみる。自分の中に何もないときは、まず外から何かをもらおうと思う。これまで、実はちゃんと見ていなかったいろんな人たちを「じっくり」見てみることにした。加治木くんの後ろ姿、有川くんが背中を丸めて座っているようす、座っている菜葉菜ちゃんの視線の先、入山くんの歩き方。発見がいっぱい。


2005年08月23日(火) 「きょうの猫村さん」

 今日は、抜き稽古ということで、僕は休みになった。
 衣装を探してあちこち歩く。ドラァグクィーンの方はほぼ決まりなのだけれど、最初の衣装をどうしたものか。
 ユニクロでいくつか候補を見つける。すぐになくなるようなものではないので、保留にして他をあたる。
 「Four Seasons 四季」の稽古中にまみーが買った「きょうの猫村さん」というマンガ。どこで探しても見つからなかったのを、ようやく見つけた。
 一日ひとコマずつのネットでの連載を単行本化したもの。家政婦紹介所の門をたたくところから始まる、猫の家政婦の物語。お話はとっても「家政婦は見た」なのだけれど、主人公の猫村さんのキャラがとってもかわいらしい。というか、いじらしい。前のご主人だった「ぼっちゃん」が外国に行ってしまったので、お金をためて英語を勉強したいという気持ちや、派遣されていった「犬神家」の家族に対する気配りのあたたかさが、なんともいえない。
 でも、猫だから、しゃべりながら前足で顔をなでてみたり、「ちょっとごめんなさいね」と言って丸くなった寝てしまったり、初奉公の前の日に緊張して朝まで爪を研いでしまったりと、おかしなところもいっぱいだ。
 「家政婦」といえば、最初にイメージするのは「市原悦子」だったのだけれど、この「市原悦子」のパロディとして登場した「猫村さん」が僕の中ではナンバーワン家政婦になってしまった。
 ぼっちゃんがくれた「Neco」という刺繍入りのエプロンを、「立て結び」でしている猫村さん。衣装で使う予定のエプロンに「Neco」と刺繍してしまいそうだと、マミーにメールで伝えたら、「賛成一票」という返事がきた。どうしようか。とっても地味なマイブーム、猫村さん。


2005年08月22日(月) 「猫のヒゲのしくみ」稽古

 第三稿を受け取って、まずは読み合わせ。先週の稽古を踏まえての修正が入って、人物の輪郭がよりくっきりしてきた印象。
 早替わりに使える時間もほぼ見えた。できることを考える。
 映画作りの現場の気まずい雰囲気がまず生まれるようにと笹木くんから。先週、厳しいところもあるけれど、ベースは気のいいオネエさんというキャラをつくっていたのだけれど、今回の台本では、かなりきっぱりものを言う強い人に。
 後半は立ち稽古。大勢出ているシーンを、まずセリフのリズムを大事にしながら、組み立てていく。
 帰り道、郡司くんに「ヒール役だね」と言われる。たしかにそう。何でこの人が怒ってるのかを考える。先週、わりとアンサンブル重視でつくっていた人物の内面を、今週をさぐっていきそうなかんじ。
 稽古場に行く途中の花屋で買ったリンドウと小菊を玄関に活けた。


2005年08月21日(日) 休みの日

 稽古はお休み。たまっている原稿にとりかかる。一日、部屋にいて、資料を読んで、パソコンに向かう。
 夕方、TBSの報道特集が、このあいだ非戦を選ぶ演劇人の会で講演してもらったマジド・ガウード・ドレイミさんを取材していた。当日の様子も少し放送されていた。その後の彼の日本での様子や、彼がイラクでどんな活動をしているのかが、とてもよくわかった。話を聞いただけではわからないことが、こうして映像を通すと、ものすごくはっきり見えてくる。正直、どんな人なんだろうと思っていた部分もあったのだけれど、彼のしていることの大きさと大事さがよくわかった。彼が言った「レジスタンス」という言葉が心に残った。
 夜、冷やし中華を作って食べる。麺をゆでたり、薄焼き卵を焼いたり、ハムを切ったり、久しぶりの料理。母親と二人で食事をするのも久しぶり。今度こんなひとときが持てるのは、いつになるかわからないので、なんでもない時間をちょっとだけていねいにすごしていく。そんな日。


2005年08月20日(土) 「猫のヒゲのしくみ」稽古

 オープニングCG用の写真撮影と衣装合わせの日。
 両国の倉庫に行って、ドラァグクィーンの衣装をピックアップ。
 駅でマミーと待ち合わせて、大汗をかきながら、必要なものを選び出す。
 涼しくなったら、ちゃんと片付けに来ようねと話す。
 両国の街は、戦争でやけて作り直してあるので、道路が全部まっすぐだ。
 駅に向かう道は、どこもものすごい日向になっていて、隠れるところがない。
 けっこうな大荷物になったのと、初めて行く稽古場なので、用心して、少し早めに稽古場に向かう。
 稽古場では、まず写真の撮影。つづいて、衣装合わせ。
 こんなにちゃんと撮影してもらうのは、久しぶりだ。
 衣装は、ドラァグクィーンの衣装はOKに、もう一点は、もう少し考えようということになった。夏物のおばちゃん服を、早めにさがさないといけない。通販のカタログは、もうすっかり秋冬ものになってしまったので、地元を歩いて探そうと思う。
 藤井くんのイケメンっぽさや、星さんのひっそりとした雰囲気、ワンダラーズのお二人の「何を着てもコンビ」なかんじが、とてもおもしろい。
 マミーが「これ使える?」と持ってきてくれた、帽子に羽根がついたやつも、OKということに。「なんでこんなもの持ってるの?」とみんなに聞かれる。いつの間にかあったのとしか答えようがない。土井さんとも話したのだけれど、捨てないでとっておくと、ほんとにいつか使うことがあるのが不思議だ。
 今日は後半が抜き稽古ということで、僕はお先に失礼する。駅までカートをごろごろ頃がしながら、郡司くんとおしゃべり。
 京王線の駅は、階段がいっぱいで、ちっともバリアフリーになってないことに気がつく。調子に乗って階段を上り下りするとまた腰に来そうなので、今日は、できるだけ階段を上り下りしないで済むルートを選んで帰る。
 新宿から山手線で上野まで。それから、常磐線で北千住まで出ることに。迷路のような新宿駅。外回りの山手線のホームになんとかエスカレーターで出ようと思うが、うまくいかない。一度南口コンコースに上ったのだけれど、結局、階段を歩いて降りる。その後は順調に、迷路orパズルを解いていく気分。
 稽古の早い時期に衣装が決まるとほっとする。もちろん、これから探すものもあるのだけれど。僕の一番の問題は、ヒールの高さだ。ドラァグクィーンの背の高さに慣れるためにも、できるだけ稽古場に靴をもっていこうと思う。


2005年08月19日(金) 予告編・CM大会

 池袋演劇祭の予告編・CM大会を見に行く。
 とってもなつかしい。豊島区民センターとなりのホール。
 ここに立ったのはもう何年前だろう。前の公演で稽古したことを思い出す。
 エレベーターで菜葉菜ちゃんと会う。終演後、またねと別れる。
 やる気まんまんないろんな劇団の面々が、それぞれの衣装に着替えて、ロビーや客席にあふれてる。人数はそれほどでもないので、ひとりひとりがかさ高いというか濃ゆいので、なんだかとても暑苦しいかんじ。
 絶対王様のメンバーは、これまでの公演で使った「コスプレ系」の衣装を着て、第九の合唱、途中から、公演の案内をかねた替え歌に。
 登場した瞬間から、客のふところにしっかり入り込む笹木くんのトークが見事。ただの予告編を抜粋で演じるんじゃないセンスのよさもすばらしかった。何より、舞台にいるみんなのチームワークの気持ちいいこと。それぞれがそれぞれの役割をちゃんと担ってて、一人一人全然違う。なんて素敵なんだろう。
 2分という短い枠がとても充実していて、さすがだなあ!と思った。とってもうれしく、誇らしい気持ちになった。
 テレビの取材を受けているみんなに軽く挨拶して、早々と失礼する。
 宇宙堂の稽古場で非戦を選ぶ演劇人の会の打ち合わせ。
 講演会から帰ってきたばかりのえり子さんは、宇宙堂の稽古を終えたところ。劇団員のみなさんが、細かく気を遣ってくれて、いつもながら、申し訳ない。
 8月2日のリーディングの報告と、次回の予定を立てる。年内にリーディングを行うことになった。9月11日の選挙の前に何もできないのは、どうにもはがゆいけど、選挙の後に何をしていくのかということも、もちろん大事なことだ。
 いつもはMLでやりとりしている会の運営だけど、こうして顔を合わせると、やっぱり全然違うという気がする。
 10時過ぎまで話して、今日はここまで。駅までの道をくまがいさんとしゃべりながら歩く。絶対王様の舞台が終わると12月のgaku-GAY-kaiまではしばらく間がある。僕にできることは何だろう? もちろん自分の仕事も忘れずに。来年の公演の準備もどんどん動きはじめた。もう8月も終わりなんだなと感慨深い。


2005年08月18日(木) 「猫のヒゲのしくみ」稽古

 道ばたにセミが何匹も死んでいる。あんまりまん中だと車や自転車に轢かれてしまうと思い、端によけようと仰向けにひっくり返っていたそいつを軽くけっとばしたら、あわてて、起き直ってじーじー鳴いた。なんだ、生きてたんだ。大きさといい顔つきといい、こないだ部屋にはいってきたのと同じヤツかもしれない。もし違ったとしても、あいつも今頃、どこかでひっそり死んでってるんだろうか。セミの夏の短さを考える。
 
 稽古4日目
 今日もゲームから。今日は「聖徳太子ゲーム」。好きな食べ物を言いながら、誰かを指す。指された人は、自分の好きな食べ物を言いながら、また誰かを指す。これを全員でひとまわり。好きな食べ物を、好きな街、好きな電化製品、好きな俳優に変えていって、その流れを同時にやっていく。指した相手が、ちゃんと受け取ったかどうかわかるまで、何度も念を押すこと。同時に何人もから流れてきたりするから、つまり何人もの人の声を聞かなくちゃいけない、聖徳太子。大声を出したもん勝ちのようで、実は、ちゃんとアイコンタクトをする練習になった。おもしろい。
 稽古は、後半の荒ら立ち稽古。昨日より、やや細かい笹木さんのダメ出しが入るかんじ。
 苦手な場面、なんとなくやりやすい場面、それぞれをああでもないこうでもないとやってみながら積み上げていってる、そんな気がする。
 昨日、沖本さんと打ち合わせしたショートコント、アバウトながら、何度もやってみる。その場で練習しているということでOKなので流れを見ながら。沖本さんの、間合いの計り方に僕も合わせるようにしてみる。なんとなく感じる「一緒にやってる感」がうれしい。
 永井正子さんから、ボブのウィッグを貸してもらう。ありがたい。オープニングはこれでいけるかな? 明後日の衣装合わせで相談してみよう。
 稽古の後半、劇団のみなさんが、明日の池袋演劇祭のCM予告編大会の練習をするということで、客演陣は早上がり。
 今日は一人でさくさく帰ってくる。台本を読みながら、セリフをいれていく。


2005年08月17日(水) 「猫のヒゲのしくみ」稽古

 北千住のマルイに寄ったついでに、レディースの「大きいサイズ」コーナーをのぞいてみる。「SALE」の文字につられた。今回はともかく、gaku-GAY-kaiの衣装をそろそろ探さないといけない。何かないかなと見ていたら、店員さん(女性)に「どうぞ試着してみてください」と言われる。違う人から二度も。いつもなら「あ、舞台で使うんで」なんて返事をするのだけれど、今日は「あ、どうも」と普通にリアクションしてしまった。稽古中だからかと自分でもおかしい。
 それにしても、男性が試着OKって、すごいなあ。昔はこんなじゃなかった。っていうか、「大きいサイズ」だからそういうニーズが多いのか。いずれにしても、ちゃんと対応してもらえるのはうれしい。今度またゆっくり来よう。

 稽古3日目
 今日もゲームから。「ジップザップ」と「竹の子ニョッキ」。3回ミスったら、「おもしろいこと」をしなくてはいけないルール。遊びながら、距離がどんどん近くなる。僕は「竹の子ニョッキ」でミスを連続。もう少しで3回アウトか?というところで、タイムアップで台本の稽古に。ちょっとほっとする。
 昨日に続いて、中盤からの立ちながら通していく。昨日、どうなるかわからない、真剣勝負な即興のやりとりが、今日は少し「やってみよう」と思った分、なぞる芝居になったかもしれないと反省。
 今回、全編女装の「特殊」なキャラなので、プリーツプリーズのワンピースにウィッグをかぶって「稽古着」にさせてもらう。
 ワンダラーズの沖本さんとのやりとり、セリフのない部分を、いろいろやってみたあと、沖本さんが「ショートコント」を書いてくれて、とてもうれしい。どこでどう入るかわからないし、ボツになるかもしれないのだけれど、明日からやってみようと思う。
 自分のことでいっぱいな状態から、ちゃんと受けて返すことができるように、はやくなりたいと思う。ワンダラーズのお二人は、この受けて返すという息がとってもちゃんとしていて、やりとりをしているとそれだけで楽しくてしかたない。
 途中、衣装の打ち合わせをはさんで、また頭に戻って、今日もおしまい。明日も楽しみ。


2005年08月16日(火) 「猫のヒゲのしくみ」稽古

 ヒゲをそった。「二人でお茶を TEA FOR TWO」以来だから5カ月ぶりになる。土曜の写真撮影までは生やしておこうかと迷ったのだけれど、ヒゲヅラのまま女装の役をやるのは、僕もめんどくさいし、まわりにも迷惑だと思ったので。ついでに爪もみがいてしまう。
 この間、テレビでセミがさなぎから抜け出して成虫になっていくようす(羽化っていうんだっけ?)を見た。僕にとっての稽古の時間は、この「さなぎの時間」だなあと思う。
 蝶もセミもカブト虫も、あの固いさなぎのなかで、一体どんなふうになってるのか、それまでとは全然違った形になって、新しく生まれてくる。
 どうなってるのかわからないけど、とにかくカラダを変えて、新しく生まれる。僕もヒゲを剃って、女装に慣れて、普段から、歩き方やしゃべり方が微妙に変わってきて、新しい人物のカラダに少しずつなっていく。女性や女装の役をやるとき、僕の一番大きな変化は、カラダの重心が上がることだ。ぐだっと落ち着いてるんじゃなく、少しだけ背筋が伸びる、そんなかんじ。

 昼間、地震。またかというかんじ。これ以上大きく揺れたら、逃げようと思いながら、何もしない。そのまんまゆれはフェードアウト。こういう落ち着きがきっと命取りになったりするんだろうなと思いながら、自分にとっての「これはやばい!」ってどのくらいなんだろかと考える。それって動物的な勘なんだろうか。そんな勘が自分にあるかどうかはずいぶん心許ないけど、なんだかそんなものをあてにしてしまっている。うちにいる唯一の動物の猫は、地震のあと、しばらく経って、外からのんきに帰ってきた。

 稽古2日目
 初めての稽古場で迷わないかドキドキしながらたどりつく。僕と同じように、おそるおそる歩いているワンダーズの土井さんを発見。入り口で合流する。
 読み合わせということだったので、カラダを動かす用意はしていなかったのだけれど、荒らく立ちながら読んでいくということに。この場面に誰が出ているのか、どんな場面なのかを理解するには、こっちの方がとってもわかりやすい。
 まず、名前鬼ごっこを。役名と、役者さんそれぞれのお名前の両方で。ルールにも慣れず、初めての人たちとやりとりすることにも慣れなくて、あっというまにいっぱいいっぱいになる。それでも、何分かするうちにどんどん楽しくなってくる。汗だくになりながら、みんなとの距離も自然に近くなった気がする。
 立ちながらの読み合わせ。昨日の座ったままとは、全然違うことが、当たり前だけどわかってくる。
 誰にしゃべってるのか、どうきいているのかなど。確認することがいっぱい。もちろん、芝居をうめていかなくてはいけないので、課題もいっぱい。
 とにかく動くことが目標になったので、初めてのみなさんと、打ち合わせもなしに、いろんなことをどんどんやる。とってもおもしろい。
 無言のときの視線のやりとりや、ただ立っているときでさえ、自分のことも考えながら、人のこともいろいろわかってくる。
 ひととおりを通して、頭に戻ったところで、今日はここまで。二日目にして、なんて中身の濃い稽古だったんだろう。
 帰りは、みんなで電車で帰ってくる。今日も楽しいおしゃべり。


2005年08月15日(月) 「猫のヒゲのしくみ」顔合わせ

 お盆で弟がやってきた。奥さんと子ども達は、長野のおばあちゃんのところに出かけて、それを送ってきた帰りだという。ひさしぶりに会った弟はなんだかほっそりしていて、それじゃあと、僕が着られなくなった服をいくつか持っていってもらうことにした。

 夕方から、来月客演する絶対王様公演「猫のヒゲのしくみ」の顔合わせ。
 一昨年の「絶対鳥フライ」以来の砧の稽古場。なつかしい。
 テーブルをかこんで、顔合わせ。笹木さんからの挨拶のあと、順に挨拶。僕は、「全編女装の役は久しぶりなのですが、よろしくお願いします」と。言ってから、すぐ、去年gaku-GAY-kaiでマリーさんやってたじゃんと思い出す。ま、gaku-GAY-kaiは別枠ということで。
 制作さんからの連絡のあと、読み合わせ。
 初めてのみなさんとの最初の読み合わせ。緊張して、ドキドキする。でも、とても楽しくやらせてもらえた。
 終了後、衣装の打ち合わせ。
 このあたりから、外で雷がゴロゴロ鳴り出す。みんなで稽古初日乾杯に行こうという頃にはどしゃぶり。
 稲光がきれいに光って、ちょっとワクワクする。
 しばらく出発するのを待ってから、外に出ると、雨はずいぶんおさまってる。
 なんとなくおしゃべりしながら駅までの道を歩く。
 稽古初日の飲み会は、大勢でにぎやかに。おしゃべりのきっかけとして「年」の話になり、僕は、青木十三雄さんの次に年長だということがわかる。ま、みんな「切り上げ」れば100歳。
 ワンダラーズのお二人が、ほんとにおかしい。読み合わせのときも素敵だったけれど、この飲み会でのおしゃべりもすばらしかった。って感動してしまうのもどうかと思うんだけれど、プロの芸人さんなんだなあとあらためて思う。二人の息の合い方も、また合わないかんじもとてもおかしくて、素敵だ。
 終電に間に合うように一足お先に失礼する。同じ下町方面の入山くんと千代田線に乗り換えて北千住までご一緒する。芝居の話をたくさん。今回の芝居の話というより、芝居全般の話を。こうして話しているかんじが、なんだか芝居の中の設定そのまんまのような気がして、妙に作者の笹木くんが書いている世界にまだいるようなかんじだったとあとから思う。
 駅に着いたら雨はすっかり止んで涼しい風が吹いてる。これから一ヶ月の稽古、そして本番。どうなるか楽しみだ。るんるん自転車をこいで帰ってくる。


2005年08月12日(金) 青年座「明日」

 昼、篠原さんと巣鴨で待ち合わせ、食事しながら、富士見丘小学校の打ち合わせ。後期の授業についてと卒業公演の台本について。ひとだんらくして、リアルタイムのクィーンファンだった彼女と、12時篠原さんと「WE WILL ROCK YOU」話でもりあがる。あそこまでやってくれれば文句はないと。同感。
 15時、巣鴨の改札で良ちゃんと待ち合わせ。お話しましょうということで。芝居の話、もろもろ。近くのメジャーリーグの事務所におじゃまして、話の続き。デスクのカワイさんとも楽しくおしゃべり。gaku-GAY-kai、来年の公演のことなどなど。
 帰り、地蔵通り商店街で衣装を探すことにする。まずはとげ抜き地蔵におまいり。小さなペキニーズを抱いたおばあちゃんとすれちがう。さわっていいですか?ときれいな犬をなでさせてもらう。
 「シャンプーしたばかりなの。毎日、一緒に『南無南無』するの好きなのね」というおばあちゃん。別れて振り返ったら、ほんとに一緒にお参りしてた。なんだかうれしくなる。
 ひさびさの「マルジ」に寄るが、これといったものはなく、どうでもいいバカ安の浴衣を1枚買って買い物欲を満たす。
 夜、青年座公演「明日」紀伊國屋ホール。井上光晴原作の舞台。原爆が投下される前の日の長崎の普通の人々のごくごく普通の日常のお話。黒木和雄監督の映画が大好きなので、舞台化がどうなっているかとても楽しみ。
 ピアノとバイオリンとチェロの生演奏でつづる、ほんとに静かなささやかな人々のくらし。
 何もないからこそ、いとおしい、そんな生活の尊さ。
 長崎弁の美しさに心洗われる。標準語はなんて多くのものをうしなってしまったんだろう。
 若い二人の新婚初夜の初々しさ。市電運転手の夫婦の弁当をめぐるやりとり。病院から娘を引き取れと言われているカトリックの夫婦。誰もがいとおしい。
 情緒でながれていってしまいがちなこのお話を、鈴木完一郎の演出は、ところどころに群読の場面を入れたり、一人の役者が何役も演じるなどして、これは芝居だということを、きわだたせる。そのことが、よりいっそう、感動を深めている気がする。
 終演後、益富さんとごあいさつ。益富さんは、職場で物資の横流しをしたと疑われて留置所に入れられている夫。面会に来た妻とのやりとりが、僕には初めて見る益富さんで、とても新鮮だった。
 受付の手伝いをしていたアオキさんにご挨拶。ひさしぶりでうれしい。相変わらずのいい男ぶり。タカヤマくんとロビーでばったり。日に焼けてすっかりたくましくなってる。帰りには、ほんとにひさしぶりな相模原のヤマダさんにもご挨拶。1Fに降りたら、ヤマザキくんにもばったり。この前会ったのはいつだろう。なんだか、いろんなひとと会う、不思議な日。
 帰り、北千住まで来たら、電車が止まっている。せんげん台の駅の信号に落雷したらしい。北千住も雨と雷がものすごい。電車が全く動かない。北越谷までの折り返しでそこから先はバスで振り替え輸送とアナウンスがあったのだけれど、電車はちっとも来ないようで、むちゃくちゃ混んでいるようす。覚悟を決めて止まったままの区間準急に乗って待つことにした。北千住駅を出発したのは、1時40分。3時間半、待ってしまった。大袋に着いたのは、2時20分。止んだと思った雨が、けっこうな本降りに。ずぶぬれになりながらようやく家にたどり着く。


2005年08月11日(木) 「WE WILL ROCK YOU」

 朝、ツクツクホウシの鳴き声で目が覚める。秋のセミがもう鳴いてるんだ。
 夜「WE WILL ROCK YOU」@新宿コマ劇場。トシくん、小林くん、ウダくんと。
 コマがすっかりきれいになっていてびっくり。若い人ばっかりだし。いや、厳密には、おじちゃんおばちゃん率が低いだけだと思う。実は、年齢層はそれなりに上かもしれない。
 クィーンの楽曲ばかりを使ったミュージカル。とはいうものの、ミュージカルというのは、あまりに台本がアバウトで、ちょっとストーリー性のあるロックコンサートというノリかも。
 それにしても、出演者の歌唱力はものすごい。フレディにも、クィーンの面々よりも、うまいんじゃないだろうか? シャウトしまくりのソロも、コーラスも、ただただびっくり、そして感動。
 ダンスは、振付がもう少しどうにかならないだろうかと思いながら、ブリトニー役の彼のガタイと躍動感にくぎづけ。1幕のラストに殺されてしまい、2幕は個人的にやや盛り下がったかんじ。
 お話も伝説の楽器を見つけるという流れから、レマン湖からフレディの黄金の像が出てきたあたりから、もうなんでもあり、どうでもいいでしょの展開。
 それでも、まあ、いいよね、と楽しく盛り上がってしまう。
 コマで総立ちっていうのは、なかなかいい気分だった。芝居のできとは関係なく、どうせなら立っておけというノリもゆるくて素敵だった。
 終演後、みんなで食事。芝居のゆるさを反芻しながら、楽しくおしゃべり。


2005年08月10日(水) 台本!

 東京芸術劇場に花伝公演、野田秀樹作「パンドラの鐘」を見に行く。元劇団員のフチヤくんとお友達のオノサカくんが出演している。
 久しぶりな芸術劇場の小ホール2。「オープニングナイト」を上演して、もう6年になる。あんなにきれいで大きいと思ったこのホールが、あれ、こんなだったっけ?と思えてしまうのはなんでだろう。小屋入りしたとき、ホールのあちこちをじっくり見て、指さしながら、話したエチュードを思いだした。
 今日の「パンドラの鐘」は、大きく組んだイントレを縦横に使った、シンプルな装置。ムーブメントを多用したみやすい演出だった。反面、セリフがあまり届いてこなくて、難解な野田秀樹のロジックが伝わりにくかったと思う。
 ミズオを演じる構成・演出の方は、みごとな身体能力ですばらしかったけれど、やや前面に出過ぎだったかもしれない。座長の芝居としてのひっぱりかたが、役をおいこしてしまっていたような気がする。
 フチヤくんとオノサカくんは、それぞれ健闘。ひさしぶりに二人の芝居を見ることができてうれしかった。
 帰りに、メールで絶対王様の「猫のヒゲのしくみ」の台本を受け取る。池袋から西新井までのバスの中で、じっくり読む。おお、こういう役だったのねと、にんまり。さて、これからどんな準備をしていこうか。まずは来週の顔合わせが楽しみ。


2005年08月09日(火) カサとサギ

 雨が降るという予想だったので一日傘を持ち歩いた昨日。それでも、一度も降られることなく、傘も開かないまま。
 今日も朝からいい天気、傘はいらないと出かけたら、まんまとにわか雨にやられた。しかたなく傘を買う。帰る頃には、きれいに上がり、出先の置き傘にしてきた。
 今日行く予定だった「WE WILL ROCK YOU」は、明後日に変更。そのかわりといってはなんだけれど、クニオさんと新宿で待ち合わせ、食事しながら、芝居の話をいろいろする。「Four Seasons 四季」の感想も。どうもありがとうございました。
 読むものがなくなって買った「散歩の達人」。特集は「ミュージアム」。ほお、なるほどねえというところがいろいろ紹介されているのだけれど、よし、行くぞ!という気にはなかなかならない。
 そんななか、一度見てみたいと思ったのは、吉川の「サギ・ロード」として紹介されていた、吉川市の中川沿いに棲息する鷺たち。吉川は越谷のとなり。家の近くのいいかげんなドブ川にも、きれいな白鷺がきりっとした姿で立っているのを見たことがあるけれど、そうか、ここから来てたのかもしれない。
 自転車はちょっときびしそうだけど、電車とバスを乗り継げばなんとかなるかも。夏休み中の目標にしたいイベント発見。


2005年08月08日(月) 読書とテレビ

 仕事の行き帰りに読書三昧。森村泰昌「時を賭ける美術 〜芸術家Mの空想ギャラリー」。古今東西の名画を、彼の独自の視点でぶった切る評論、というか、読み物。取り上げられている名画について考えるというより、森村泰昌という人の言葉とセンスがとにかく爽快だ。岡本太郎の項の「『太陽の塔』は埴輪になったウルトラマンだ」という言い切り方に感動。
 井上ひさし「もとの黙阿弥」。今月、新橋演舞場で上演中の戯曲。大竹しのぶ、片岡孝夫(現、仁左右衛門)だから成り立っていた部分は、今回どうなってるんだろう? なんとか見に行きたいなと思う、大好きな芝居。名セリフの数々、作者独特の「演劇論」の展開もうれしい。
 昼間、越谷は雨が降って、涼しい夜。さすが立秋をすぎただけのことはある。ほんとにあてにならないよねと思う旧暦だけど、なんだかんだと季節感にはフィットしているのかもしれない。 参議院の解散のニュース、ヒロシマ・ナガサキのドキュメンタリーを見てしまう。こんなにじっくりテレビを見ているのもひさしぶりかもしれない。


2005年08月07日(日) 「Four Seasons 四季」報告会

 高円寺にて「Four Seasons 四季」の報告会。キャスト全員プラス、高市氏と水月アキラ。制作関係の数字の確認のあと、ひとことずつコメント。
 たまにつける日記だと、公演が終わったことのご挨拶というのも、きっかけとしてありなのだけれど、毎日書いている日記だと、なかなかどかんとしたことが書きにくい。なので、あえて書いてみるとすると……
 今回の「Four Seasons 四季」を終えての僕の感想は、初演の一昨年と今で「こんなに変わった」ということに気がついたということだろうか。演出も演技も、僕も、他のキャストのみんなも。
 初演の時に半ばいきおいでやってしまったことを、今回、勢いでなくつくりあげていくなかで、そんなことを何度思っただろう。前はこんなじゃなかったよなあと。
 僕は変わり続けていくし、昔のことをなぞろうとはこれっぽっちも思わない。あのときはよしだったことも、今は絶対に許せないということもある。その変化を確認する稽古と本番だったと思う。
 今、この時期に、そんな芝居ができてよかったと心から思っている。
 来年の8月の新作についてのプランを高市氏に話す。はたしてこれができるんだろうか? キャスティングはともかく、戯曲としては、成立可能なはすだと思う。どんどんつめて、書き始めていこうと思う。
 お疲れさまの乾杯のあと、いただきもののお酒をとにかく飲む。テレビでやっていた「特命課長 只野仁」の高橋克典を見ながら、わいわいしゃべる。あと、サッカーの日本vs韓国も。
 いろいろあったけど、こうしておいしいお酒を飲める今日があってよかった。
 ご来場いただいたみなさん、ほんとうにありがとうございました。
 僕の次の舞台は、絶対王様への客演、そして、年末のgaku-GAY-kai、それから先は、まだわかりません。
 役者としての出演がしばらくないあいだには、作家として、はやばやと新作にとりくんでいこうと思っています。
 フライングステージの公演としては、来年の8月までずいぶん間があきますが、楽しみにお待ちいただけたらと思います。ではでは……


2005年08月06日(土) 「かもめ」とネズミ

 ワカさんが出演している「かもめ」を見に、中野新橋まで行く。会場はマンションの一室。1時間40分に構成された台本。訳もほとんどおぼえている神西清版なので、なつかしい芝居に会いに行くような感覚。
 芝居は、なんだか微妙だった。「なんでこんなになっちゃったんだよお!」というかんじ。終演後、ワカさんにご挨拶して、そそくさと帰ってくる。飲みに行ったら、全部しゃべらないとおさまらないような気がして。演出家にきいてみたいというか、問いただしたいことがヤマほどある。
 むかし、銀座のみゆき館で同じ「かもめ」を見て、終演後、感想というか文句を大声でしゃべりながら歩いていたら、後から靴が飛んできた。芝居とは関係ない酔っぱらいが投げたものだったのだけれど(たぶん)、目の前の壁にバシンとぶつかって落ちた革靴のことは今も忘れない。今日の芝居は、もし靴を投げられたら、拾ってそのまま投げ返したくなりそうなもんだった。なんであんなになっちゃったんだろう?

 帰り道丸の内線霞ヶ関の駅のホームで、小さなネズミがホームを歩いていた。
 体長5センチほどの子ネズミ。長いしっぽの先には、アスファルトのようなかたまりがへばりついていて、両方の後ろ足もいやな黒いもので覆われている。
 黄色い点字ブロックをなぞるようにまっすぐ歩いているネズミは、耳が聞こえないのか、近づいても逃げない。ただ、まっすぐ歩いている。どこにいくんだろう? こんなカラダでだいじょぶなんだろうか? こんな時に限って何も入ってないバッグに、それでも干し梅があったので、食べるかな?と前に置いたのだけれど、見向きもしないで歩いていく。
 なんだか、参った。声をあげて泣きそうになってしまった。でも、ネズミはまっすぐ歩いていく。ホームのはしまで行ったらどうするんだろう?と思いながら、背を向けて、歩き出して、乗り換えの電車に乗った。
 


2005年08月05日(金) 盆踊り

 稽古のない夜、仕事のあと、まっすぐに帰ってくる。ひさしぶりに乗るバス。冷房の風をもろに受けながら、のんびりと景色をみながら帰ってくる。
 どんどん夜になっていく街が、みょうに身近に感じられる。ふと降りてふらふら歩いてしまいたくなるのを我慢する。
 西新井近くの交差点、大きなやぐらを組んで、盆踊りがにぎやかに。町内会ののどかなノリ。ゆったりとおどるおばちゃんたちが夢のようだ。
 お盆を境に、夏の暑さもひとだんらく。むしむしした暑さの合間にふとふく風がどこか涼しくなっているのを感じる。早く、そんなふうにならないかなと、蒸し暑い夜に思う。


2005年08月04日(木) 猫とセミ

 朝方、窓の外で猫が鳴いている。網戸を開けてカラダをのりだしたら、物置の上にいるのが見えたので、下に降りて、抱きかかえて、部屋に入れてやる。
 と、何かが網戸に当たる音。この音はセミか? 網戸を開けても何もいない。でも、まだ音がするので、まさかと思ったら、窓際のソファベッドの枕のそばにセミが正座していた。というのは、おかしな言い方だけど、一瞬そんな気がした。5センチほどのこぶりなアブラゼミ。つまんで外に出そうとしても、タオルのループに足がひっかかってなかなかとれない。セミはあばれるでもなく、じたじた足を動かしている。ようやくつまんだセミは、とてもかろがろとしていて、その軽さがとても新鮮だった。窓の外に話してやったら、短く鳴いて飛んでいった。「Four Seasons 四季」であゆみちゃんが作ってくれた音とそっくりで、思わず笑ってしまった。
 猫は、夏の暑さのせいか、すっかりおとなしく、「いい猫」になってしまっている。母親は、「前はあんなにきかなかったのに」と不思議がっている。人二人との生活に慣れたということだろうか? あまり鳴かない猫だったのが、この頃は、顔を見上げてニャアとよく鳴く。意思表示か?
 これだけ、家族の一員となっている彼だが、実は、裏の家には毎日のように上がり込んで、ご主人の膝の上で丸くなって寝ているらしい。ひとなつこくなったのは、もしかするとそのせいかもしれないと、ちょっと淋しい気持ち。


2005年08月03日(水) 「−初恋」

 ウエストエンドスタジオにplug-in公演「−初恋」を見に行く。さゆりんこと松田りくちゃんに誘われて。お世話になっている金さんのご招待。
 土田英生のこの芝居はMONOのオリジナルを何年か前に見ている。今回は、スタジオライフの船戸慎士さんが、要になる笹川の役で出演。
 ゲイばかりが住む、というか、「ホモアパート」と呼ばれている「ハイツ結城」。中学生らの投石や地元の立ち退き要請などに耐えて、立ち向かう、いや、耐えなくて、立ち向かわなかった人たちのお話。
 以前見たときも、ゲイが登場するけど、これはゲイの芝居というよりは、ある共同体がどう変質して崩壊していくかという話だなという印象を持った。
 登場するゲイたちは、現代に生きる人物像としては、やや類型的な描かれ方で、そのことが実はとっても特殊なんだという認識を、作者の土田英生はきちんと踏まえていると思う。
 そう、とっても特殊なお話。ある田舎町という舞台設定も、女装や、バーにつとめるということ、または誇りを持って生きるという主張も、どれもが、みな特殊な状況下(ホモアパートと呼ばれ、石を投げられ、立ち退きを迫られているという)だからこそ成り立っている。
 たとえば舞台が東京だったら、こんなことにはならない。女装しようが、バーに勤めようが別にかまわない。なのに、そのことがこんなに大ごとになってくるのは、今、彼らが置かれている特別な状況によるところが大きい。
 今回の上演は、人物をきっちり掘り下げて、MONOの上演にくらべると、かなり重たい。するすると流れる会話や思いの交錯の中に、ふと見えるホンネの重さが、土田英生の本領だと思う僕には、やや、ヘビーな印象だった。
 悲しいときに、悲しみを力一杯表現してしまいたいというのは、役者や演出家の自然な欲求なのかもしれない。でも、この戯曲に関しては、もっとさらさら流れた方が、いいような気がする。
 この戯曲で一番好きなのは、投石が続くなか源田と真田がおずおずと抱き合う場面なのだけれど、今回の舞台では、この場面の「おずおず」といったかんじや切なさもどかしさが、あまりひびいてこない。
 逆に、終幕、大家の小百合が笹川に「一緒に行っちゃだめですか?」と抱きつく場面と、その後の涙をこらえた別れの幕切れが、そこまでしなくてもというくらい涙で強調されている。僕はここで小百合が抱きつくのはちょっとどうかと思うのだけれど、今回の演出の方向としては自然な流れだったのかもしれない。
 音楽にはビレッジ・ピープルが流れ、壁にはキース・へリングが貼られ、終幕には小さなレインボーフラッグにいつまでも小さな明かりが落ちて揺れている。ゲイというものをきちんと描こうとする姿勢は、とても敬意を表したい。
 ただ、対立の構造が、正しい笹川とそれ以外のメンバーという図式に見えてしまったのが残念だ。「誇りを持って生きるのよ!」と、女装にも、バー勤めにも反対する笹川は、彼自体が、本来おかしな存在だ。今回の舞台は、笹川を演じる船戸慎士がゲイとして、かなり説得力のある人物をつくっているので(ビジュアル的にも)、彼自身が抱えている矛盾が立ち上がってこない。むしろ、彼の主張は全く正しくて、それに対して他の人間は間違っているんだというふうな構造になってしまっている。そこが残念だった。
 それにしても思ったのは、この芝居のむずかしさだ。他愛のないやりとりが続き、外からの暴力がピークになったかと思うと、次の場面では、みんなバラバラになってしまう。そのことを、どうとらえるのか?
 僕は、これは全く正しくない、もしくは、時代遅れな笹川という一人のゲイが、自立していく話じゃないかと思っている。
 それにしても、彼はどう生きていくんだろう?と心配になる。他の登場人物の誰もが、みんななんとかやっていけそうなのに対して、彼だけは、これからが全く見えない。それは、小百合ちゃんのプロポーズを断ったからではなく、彼の「誇りをもって生きる」という主張が全くの具体性を持たないということに気がつくからだ。
 そのへんをも踏まえて読み直すと、この戯曲はよりいっそうおもしろい。
 なんだか、文句をいっぱい言ってしまったようだけど、僕は今夜の芝居をとてもおもしろく見た。久しぶりに見た船戸さんは、「卒塔婆小町」以来だけれど、とてもいい男になっていて、芝居も達者になって、見ていてほんとに楽しかった。他の役者さんたちも同様だ。
 終演後、りくちゃんとお友達のシュトウさん、ナガヌマさんと食事。芝居、特にミュージカルの話をたくさんして盛り上がる。楽しい夜。


2005年08月02日(火) 「イラクの『今』を見る、聞く、話す」

 「あきらめない、夏 2005 イラクの今を見る聞く話す」。今回は、本番直後、そして、リーディングの出演者ということで、事前準備や表方のお手伝いも何もできなくて申し訳ないまま、会場へ。
 楽屋で、出演者の高橋長英さん、根岸季衣さん、楠侑子さんと、軽く読み合わせ。篠原さんが構成した今回の台本は、「殺す側」に立っての「なぜ人は人を殺すのか」についてのものだ。
 元々出演者は3人だけだったのだけれど、篠原さんから連絡をもらって、僕も読ませてもらうことになった。いただいた台本を読んで、涙が出た。こんなことはひさしぶりだ。
 舞台の仕込みが終了したところで、場当たり。全体で15分ほどのリーディングだけれど、全部をやるには、時間が足りないあわただしさ。
 有馬稲子さんの朗読から始まる。「イラク戦争をもう一度考えてみよう」という呼びかけ。さすがの貫禄。
 続いて、今日のゲスト、マジド・ガウード・ドレイミさんの講演。イラクの今についての話が興味深い。
 自衛隊は、「日本軍」と認識されていて、もはや、サマワの人たちは人道援助を期待していないこと。サマワが「放射能の墓場」と呼ばれるほど、高濃度の放射能に汚染されていること。「あなたたちは、彼らのためにも、すぐ日本に呼び戻して、健康診断を受けさせなくてはいけない」と言われる。もっともなことばかり。
 アメリカの侵略に協力する形での自衛隊の派兵に反対するというスタンスから、自衛隊員ひとりひとりの命を守るためにも、今すぐ撤退しなくてはいけないという運動が必要なんだと思った。
 続いて、ジャーナリストの平田伊都子さんの講演、一昨年のファルージャ陥落後の写真と昨年10月のファルージャ総攻撃直後の映像がビデオで流される。
 街が完全に崩壊していることにショックを受ける。その静けさにも。無人の街のなか、本来なら活気のあったビデオ店の窓に女性がもたれかかって亡くなっている。
 そんな中、屈託なく遊んでいる子どもたち。見捨てられた戦車。高い放射能汚染を示す外がーカウンター。イラクの人たちのくらしは、めちゃくちゃになってしまっている。
 最後に、高橋長英さん、根岸さん、楠侑子さんと一緒に、リーディング。篠原さんの「殺す側にたった」言葉は、今までのリーディングであつかったことのないもの。
 「人は人を殺したくないのだ」という言葉が印象的。その「人」がなぜ、戦争で人を殺しても平気になるのか?という問いかけ。
 4人だけの出演者というのは、これまでで一番少ない構成かもしれない。急遽声をかけていただいて、感謝だ。高橋長英さんと、米海兵隊の上官と下士官のやりとりをする。今までのリーディングで一番緊張した。
 終演後、打ち上げ。一昨日打ち上げできた「庄屋」に今日も。イスラム教徒のマジドさんは、居酒屋だいじょぶなの?と思ったのだけれど、彼は、お水を飲んで、鶏肉を食べて、みんなで歓談したのち、明日朝からのテレビ出演にそなえて早くに帰っていった。
 出演者枠で先に移動してしまって、来てくれたいろんな方に会うことができず申し訳なかった。ご来場いただいたみなさん、どうもありがとうございました。


2005年08月01日(月) 返しの日

 の予定だったのだけれど、大寝坊する。あわててノグに電話する。月初めで1日だから、きっと混んでるだろうから、まだだいじょぶ、両国の倉庫で合流!と思ったら、もう浅草あたりを走っているとのこと。中野、高円寺、早瀬くんの家と順に回って、まだこの時間。すごい! 昨日の打ち上げで、こなくてもだいじょぶと言われてもいたので、申し訳ないけど、合流は断念。返しの車に同乗しないのは、ずいぶん久しぶりな気がする。
 三枝嬢との打ち合わせのため三茶に向かう。
 途中、半蔵門線の車内、向かい側に座った女子二名がメークを始めた。かなり本格的。
 アイメイクの前に、眉のむだ毛を剃ったりもしてる。怪我しないんだろうかと心配になる。
 渋谷で降りるとき、使った綿棒を座席にそのままにしていこうとするので、「ゴミ捨てるなよ!」と大声が出てしまった。さすが芝居が終わったばかりというかんじのいい声。しかも野郎くさいし。自分でもびっくり。女子二名は、悪びれるふうでもなく、ゴミを拾って降りてった。
 三枝嬢との打ち合わせは、お茶しながら、原稿の相談、芝居の感想、お互いの近況報告などなど。あちこちに恋がいっぱいだ。それも大人の。ひるがえって自分はどうなんだろうかと考える。考えてみようと思う。
 帰りに新宿に出て、お世話になっている「アイランド」さんの10周年パーティにうかがう。ラクちゃん、シマさんにごあいさつ。ムラポンに、永山くん、それに、おかべさんもいて、楽しくおしゃべり、それでも、早々に失礼する。
 原稿を書きながら帰る途中、小川町から新御茶ノ水への乗り換えのコンコースで、ベビーカーとを押した若いお母さんが、階段で苦労していた。どこかの帰りなんだろうか。ベビーカーでは男の子がぐっすり眠っていて、だっこひもで小さな女の子を前にかかえている。少し大きな女の子が前にいて、カートを持ち上げようとするんだけど、うまくいかない。で、お手伝いする。エスカレーターが整備されて、ずいぶんラクになったよなあと思うのは、元気なときだけで、ちょっと具合が悪くなると、どうして、ここにこんな階段が?と思うことがしょちゅうだ。
 眠っている子どもはなんて重いんだろうと思いながら、十数段の階段をベビーカーをかかえて上がる。じゃあと別れたら、さっきまでじんじんしていた腰がなんだかラクになったような気がした。
 夜中、たまりにたまった洗濯物をついにかたづける。夜干しはよくないと思いながら、部屋干しよりはましと思い、朝方は晴れそうとの予想で、どんどん干してしまう。それだけでも部屋が少しすっきりした。本格的な掃除は週末になりそう。


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