せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2005年01月31日(月) |
富士見丘小学校演劇授業 |
3、4時間目の授業。今日は、新しい歌の練習。 オープニングのファンファーレのような、子ども達の「卒業!」というフレーズの繰り返し。 西野さんの曲が、ほんとうにかっこいい。どんどん盛り上がる。 子ども達は先週つくった台本を手にしている。いつもより集中しているような気もする。やっぱり台本もらうってうれしいのは、誰も同じなんだな。 中学受験の直前ということで、何人かお休みしている子がいる。大人しい気がしたのは、人数が少ないせいだったのかもしれない。 あるところをどんどん練習して、授業はおしまい。よし、いける、いける!! 給食をいただいて、図工の時間につくっているオブジェとして飾る鳥を見に図工室へ。 子ども達は画用紙をつかってで、ユニークははばたく鳥を一人一羽つくっている。廊下には新しい作品がいっぱい。そちらも楽しく拝見する。ロボットを黒の濃淡と金一色で描いたもの。やっぱりというかんじでドラえもん系の勢力は目を見張るものがある。なんじゃこりゃ?なものも含めて、みんな愛らしい。 劇中で読んでもらう、子ども達の演劇授業についての感想文をコピーしてもらう。ちゃんとしゃべれるようになったという感想が多いなか、とっても正直な、それぞれの講師へのコメントや、とまどう講師を心配するものまで、こちらものびのびと素晴らしい。
一日家にいる日。パソコンに向かい、資料を読み、一歩も外に出ない。 夜、近くで火事があった。アパートの一室が全焼して、留守番をしていた二人の子どもが亡くなった。買い物帰りの母親が取材に来ていた記者にインタビューされ、母親の職場の同僚の方の家だとわかったという。取材には応えられず、自転車で大急ぎで逃げてきたと母は言っていた。 一度に二人の子どもを亡くす悲しみはいかばかりだろうと思う。 十数年前、二人暮らしをしていた僕のところから友人にもらわれていった猫が亡くなったという話を、彼女のホームページで知った。家族同様に長く共に暮らした彼を失った悲しみの大きさに、僕はまだ連絡もとれずにいる。 このところ続く戦争や災害の被害者の痛みを想像していたはずなのに、今日ひさしぶりに悲しみは痛いのだということに気がついたような気がする。 アムネスティの台本を構成しながら、もう一度自分に言い聞かせることがたくさん。
2005年01月29日(土) |
ワークショップ最終日 |
ソネットをみんなで言いながら、ボールをパスしていく、ソネットボール。 今日も3人組でやってみる。初めの頃にやっていた4人組よりも格段に難しい。 昨日、今日は、ギャラリーで暗唱しているみんなの声の調子が落ち着いている。 プレーヤーと一緒に盛り上がるんじゃなくて、冷静に、抑えた調子で着実に進んでるかんじ。 大きな変化だなあと思う。 2まわりして、終了。 ロジャーがバナナを配る。今日は、これを使ってソネットを演じることに。こないだはみかん、そして今日はバナナ。 みんないろんなアイデアを出してくる。それでも、みかんのときのように「遊んで」という指定がなかったので、落ち着いて、リアルに語りかけてる。最初の日にロジャーが言った、韻文をきっちり読むということと、内容をちゃんと伝えるということの、いっけん矛盾することが両立してる。そうか、こういうことなんだなあと思う。 僕は、バナナを受話器にみたてて、電話をかけることにした。椅子を持ってきて、バナナを置いて、電話をかける。電話の向こうにいる相手に思いを伝える。いつもとは違うかんじで、ていねいにできた気がする。たしかに電話って、相手を想像しながら話すもんね。ほんとは、電話の途中で、受話器が逆さまになってることに気がついて、バナナを上下逆にするっていうのを考えたんだけど、おかしくやる必要はないなと思って却下。シンプルに思いだけを伝える。 KUDOUちゃんの、鏡を見ながら鏡の中の自分にソネットを語りかけてるのが、とってもおもしろかった。鏡に見立てた椅子の背もたれ、座面にはずっとバナナがおいてある。どうするつもり?と思ってたら、最後に香水orスプレーのようにもって、自分に吹きかけてた。やられた。爆笑する。 ヘンリー5世の序詞役の台詞。昨日やってない人ということだったので、僕はパス。今日は昨日のようなセールスマンじゃなくて、リアルな思いをきっちり伝えるようにとのこと。台詞を覚えてる人が何人もいて感動する。みんな、序詞役として自分たちの劇団を代表して、そこにいた。当たり前のように舞台と客席を支配してる。拍手。いい台詞だなあとあらためて思った。最後の「われらが芝居」という言葉は、何度聞いてもほろっとする。 続いて独白。最後の発表会。今日はみんなのネームプレートを集めて、ロジャーが一枚ずつ取り出す。 みんな感動的だった。この2週間ですごい進歩をとげた人。さまざまなアプローチできらきら輝いてる人、誰もがとってもチャーミングだった。 僕の出番は、最後から2番目。昨日思った通り、自由にやってみる。テーマはジョークとアイロニー。 中盤「誰だそいつは?」と言ったところで、演出コースの人が突然手を挙げた。「俺だ」というわけ。動じてしまうが、軽くいなして先に進む。やった、のりこえたじゃん、すごいかも自分!と思ったところで、次の台詞がわやになった。集中が切れた。だめじゃん。彼のせいじゃない、これは僕の責任。 でも楽しく終われた。今日は朝からコンタクトがうまく入らなかったので、ずっと眼鏡をかけていた。途中で外して、最後にまたかけた。メリハリがついたかもしれない。ともかく、楽しく演じられた。 後でみんなとしゃべってたら、演出部の人が手を挙げたのは「僕の仕込み」だとみんな思ってたらしい。KIMIKOさんに「自分で仕込んだけど、ウケたんで、ちょっと狼狽したのかなと思った」と言われる。そんなことしないよ!と強く否定する。いかにもやりそうなことってことなんだろうか? でも、自分で仕込んで狼狽するってかっこわるいよね。ていうか、仕込むんなら、もっと殴りかかるフリをするとか、もっとちゃんとやるはず。それもよかったなあと、ちょっと思ったりして。ああ、やっぱり、僕のやりそうなことなんだわ。 ロジャーには、とてもおもしろかったと言われる。ただ、途中からもう少しクールになった方がいいとも。たしかに、後半、余計にワクワクしていたかもしれない。眼鏡を外したせいで、みんなの顔がぼんやりとしか見えなかったのも、ちょっと浮ついてしまった原因だったかもしれない。 最後はジュリアス・シーザー。今日もいろんなシチュエーション。 ロジャーに指名されて、ASAKAくんと部屋の外、ホワイエでやることになった。 テントの外でみんなが聞いている、その状況の中での緊迫したやりとりを作り出す。 大声を出すと警備員さんが来るからねと言われる。 壁際のソファに二人で座る、遠く離れて。5メートル以上も。ウィスパーでしゃべっても、届いてるかどうかとっても心もとない。エスカレーターの音がずっと響いてるし。ちゃんと伝えなきゃと思い、身振りがやや大きくなった。 キャシアスの「俺を討て!」というヤマ場の台詞のあとの「剣を納めてくれ!」というところだけ、それまでのウィスパー気味の声とは全然違う、一番響く声を出した。思い切ってホワイエ全体に響かせる。 みんなびっくりしたのがわかった。それまで激昂してたASAKAくんのキャシアスもびっくりして、その後の流れにすぐにうつることができた。どうしたら、このキャシアスをなだめることができるだろうとずっと考えていた。やっちゃいけないよと言われてたことをやるのは、ややフェアーじゃないけど、いいややっちゃえと見切り発車。大声を出した後の台詞を小声で言うときに、「あ、これは本当だ」と思った。いつもだと「ここでちょっと調子を落とそう」と思うんだけど、自然に、自分が大声を出したことを反省して声が小さくなる。外にいる連中に気がつかれなかったかと心配にもなる。こういうことかと思った。 ワクワクしながら、とっても楽しく終わることができた。 僕の発表はこれでおしまい。 その後、何組か、同じ場面を部屋の中で演じて、2週間のワークショップは終了した。 最後にロジャーからのコメント。「何もしないのはいけない。何かしなさい。でも、何もかもやっちゃいけない」「役者としての自分を他人に規定されてはいけない。自分のことは自分が一番知っているんだから」。 飛行機の時間まで、お茶を飲みながら、ロジャーを囲んでみんなでおしゃべり。ロジャーと青井さんを見送って、解散した。 ロジャーに言われたことで一番心に残ったのは、一人の人間として舞台にいるということの大切さだ。 僕は、普段の芝居では、いつも自分でいることが大事だと思うし、みんなにもそうじゃなきゃいけないというんだけど、今回、シェイクスピアの台詞を演じながらも、自分でいることこそが大事なんだということを学んだ気がする。 これまでは、古典の台詞をやろうと思うと、やっぱり「何かになろう」としてた。十数年前の養成所時代を振り返ると、ほんとうにそうだったなあと改めて思う。 今回のワークショップは、僕に俳優として演技することのおもしろさを再確認させてくれた。やっぱりおもしろい。 芝居は僕にとって、どんどん自分自身になることだと、フライングステージを始めるときに思ったものだけれど、ロジャーは「それでいいんだ」と背中を押してくれた気がしている。 いい時期にほんとうに素敵な人に出会えて幸せだったと思う。感謝の気持ちでいっぱいだ。 ロジャーは、ドラマ「ホワイトハウス」に英国大使の役で出てるそうだ。やや苦手なドラマだけど、これからはちゃんと見て、彼を見つけてみようと思う。 そうそう、彼のファンサイトは |