せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2003年05月31日(土) ラ・カンパニー・アン「犬の恋」 トレーニング

 下北沢の本多スタジオにラ・カンパニー・アン公演「犬の恋」を見に行く。
 すっごい雨が降ってる中、当日券の列に並ぶ。これ自体がイベントっぽくておもしろかった。
 劇中で西山水木さんが演じてる「雨女」にもかぶる気がして。
 去年やっぱりここで上演された「ねむれないよるのうた」とおなじように、九州の言葉がとってもいい味を出してる。
 ここの舞台を見ていつも思うのは、「女」の強さというものだ。
 生む性である女性の強さとしたたかさと、弱さと、ずるさと、そんなものいっさいが、ぽーんと投げ出されてる。そんな気がする。
 「犬の恋」というタイトルで、永井秀樹さんが演じる犬の恋がつづられるのかと思ったら、はぐらかされて、いろんな恋の形がめくるめくように登場する。
 永井さんは、今まで見たことのない素朴な役でびっくり。
 生まれ変わる前の犬として、明樹さんにじゃれついてる姿(お腹を上に向けてね)が、なんだかセクシーというか、かわいかった。当たり前の犬の動作なんだけど、まんま人がやるとこんなに「エッチ」なのねってかんじ。
 さりげない始まり方とそれぞれの役者さんの力の強さは、今回もとてもみものだった。
 同じ舞台の中で、とってもカジュアルな顔を見せる時間と、とっても真剣な、すさまじい時間を一緒に生きてるのがおもしろかったな。
 西山水木さんが、北沢二丁目の踏切をつくりだすのがすごかった。あと、犬のように吠えるのも。
 前回も思ったけど、この人は、ほんとに空気にとろみをつける力があると思う。それと「業の深さ」も天下一品だ。
 物語になりそうなところを、どんどんはずしていって、あちこち、物足りないところはあるんだけども(もっと「犬」の恋「ばっかり」を見たかったとかね)、最後は、出演者全員の歌で打ち出しになって、とても気持がいい舞台になってた。

 夜は、トレーニング。
 久々の荒くんの登場。
 基礎トレを、しみじみやって、それから、ハムレットの二回目。
 今日は、じっくり読むことができたと思う。
 早瀬くん、マッスー、小林くん、僕の4人で一つの独白をつくりあげていく。
 だんだん息が合ってきた。
 後半は、二人組になって、「尼寺へ行け」の場面。
 僕は、前回に続いて、喉の調子が悪くて、ハムレットの勢いのある台詞がしゃべれない。
 つらい。
 あらく立ってみようということになって、僕は早瀬くんとやりとりをする。
 台詞がしゃべれないということもあり、昔はあんなに練習してたハムレットがもうできない……というような気持になる。
 少なくとも、あのころ、イメージしてたハムレットを、今の僕はもう体現できないんだと。
 やや、ショック。

 帰りは、雨が上がって、例によって、おしゃべりしながらの駅までの道。
 駅近くにできた「はなまるうどん」。その向かいの定食屋も、また「讃岐うどんや」に改装中。うどんってそんなにニーズあるのかしら?


2003年05月30日(金) 「サド侯爵夫人」@新国立劇場

 鐘下辰男演出の「サド侯爵夫人」。満席。上演時間第一幕(戯曲の一、二幕)が2時間。休憩15分。第二幕(戯曲の三幕)が1時間。7時に開演して、終演は10時15分。「たっぷり」とか「しっかり」とかそんな言葉がぴったりの豪華な上演だった。とっても気持ちがいい。
 ステージを横に使って、どこからも舞台の距離が近い構造にしているのが、まず成功している。台詞がとっても聞きやすくなってる。
 衣装は、基本的に一役一ポーズで、ロココ時代のドレスがベースになってて、いいかんじ。
 寄せ木細工の床の舞台にセクレテールと椅子が一脚。装置はこれだけ。
 舞台奥に、上手と下手へ通じる長い廊下がある。
 役者さんはみんなとってもよかった。
 三島の台詞に負けてる人は一人もいなかったし。
 モントルイユ夫人の倉野章子さん、サンフォン伯爵夫人の平淑恵さん、シミアーヌ男爵夫人の新井純さん、つまり「大人組」がとってもよかった。
 倉野さんは、南美江さんが持ち役にしているこの役を、全く違った造形で成功していると思う。南さんが、どこかおっとりした「貴族」だとしたら、倉野さんは「戦う女」だろう。
 台詞だけで展開するのこの戯曲は、上演すると、とってもヘビーで、どうしても「うとうと」してしまいがちなのだけれど、今回の上演は、人物どうしの関係がみっちり作り上げられているので、緊張の糸がゆるむことがない。ので、ずっと見ていられた。これってすごいことだと思う。
 ただ、その緊張=人間関係を強烈に作り上げているので、「軽やかな、華やかな会話=言葉遊びの影にある真意」のようなものには全然ならなくて、「全部本気」なところがちょっと重かったかもしれない。
 女の無邪気さの象徴である妹アンヌ(片岡京子)が、真剣に姉ルネ=サド侯爵夫人と対立してたり、召使いシャルロットを若い中川安奈さんがやっているのだけれど、この人の「とがり方」もどうかなと。この役はやっぱり戯曲の指定どおり、ほんとにおばさんで見たいなと思ったりもした。
 とてもいい上演で、おもしろくみてきたのだけれど、欲を言えば、ヒロイン、ルネの変化のしかたがもっとあってもいいのじゃないかと思った。
 初めから、ルネは、岩のようにしっかり「自分」というものを持っていて、終幕まで変わらない。
 演じる高橋礼恵さんは、口跡もとってもよいのだけれど、終幕の回想の台詞に出てくるような「華奢なやるせない姿」ではない。もとい、そういう人物像をつくっていないのが気になる。
 夫に尽くしていた、弱々しい夫人が、母と闘い、「アルフォンスは私だったのです」と言い切るまでの変貌が、この芝居のおもしろみの一つなはずなのに、元から、強さを持った女性像なので、戯曲の二幕(上演の一幕)のラストの母モントルイユ夫人とのやりとりのすごさが際だってこない。
 三島由紀夫は、元々、芝居芝居した芝居をねらって書いてるところがあるから、ここは存分に
「やってしまって」いいと思うのだけれど、ちょっと物足りなかったかな。
 あと、一番最後の「侯爵夫人はもうけっしておめにかかることはありますまい、と」というルネの台詞。この、最後の「、」のところで切れるのが、なんだかおかしかった。ルネの気持としては、そうなんだろうけど、おまけのようにくっつく「と」って、かなりおかしかった。その前のシャルロットの台詞の最後も「……フランソワ・サド侯爵だ、と」っていうんだけどこっちも、はっきり、最後の「と」を独立させてるんだよね。すっごい微妙なところなんだけど、二連発で聞くと「あーあ」ってかんじだったね。さらっと最後まで言った方がぜったいにいいと思うんだけどな。
 カーテン・コールは全員が登場しての挨拶、すっごいきれいだった。
 ともかく、とってもクオリティの高い上演です。興味のある方はぜひ。おすすめの舞台です。


2003年05月28日(水) 仕込みのお手伝い

 いつも舞台監督でお世話になってる笹原千寿さん=サッコさんが出演する、ROYAL BLUE公演「圏外」@アートスペースプロットの仕込みのお手伝いに、朝から出かける。
 ノグとマミーと三人で、平台を敷いて、パンチを敷き、パネルを移動し、ベニヤを塗る。
 こんなにちゃんと仕込みの作業をやったのは、とっても久し振りだ。
 この頃は「よろしくお願いします」と任せてしまっていることが多い。
 フライングステージが始まった頃、全部、自分でやろうとしていて「少しは人に任せなさい」と言われ、「僕が動いてばかりいたんじゃだめなんだ」と思うようになったのだけれど、この頃は、ちょっと動かなさすぎだったかもしれないなと思う。
 限られた時間の中で、どれだけ要領よく仕込んでいくかということを、高校演劇やその後のアングラ系の舞台で、僕は教えてもらった。その頃の仕込みは、今考えると「どうして?」ってくらい怒号が飛び交う「戦場」のようなところだったなあと懐かしく思い出す。あの頃はどこもそうだったんじゃないだろうか?
 7月の「Four Seasons」の舞台は、今日のように、みんなと一緒にわいわい仕込んでいきたいなと思った。


2003年05月27日(火) トレーニング 

 トレーニングは、ほんとにひさしぶり。
 きっちり、「Four Seasons」のキャストがそろった。
 いつもの基礎トレも、身体がおどろいてるかんじがしてる。
 みんなもそうだったんじゃないかな?
 小林くんは、初「外郎売り」に挑戦。
 後半は、新訳が出た「ハムレット」の三幕一場、ハムレットとオフィーリアの「尼寺へ行け」の場面。第四独白から始まって、一人残ったオフィーリアの独白で終わるところを読んでみる。
 とってもいい訳だと思う。声に出して「?」と思うところがひとつもない。
 最初にみんなで読んだときは、もう「手も足も出ない」というかんじ。
 途中から二人組に別れて、じっくりやってみる。
 僕はのぐとのチーム。
 戯曲が要求するモノがほんとにたくさんあって、いくらやってもやりきれないというかんじ。
 「Four Seasons」の稽古が始まるまでの来週いっぱいまで、この場面をやってみようと思う。
 みんながあんまり「台詞をしゃべることにいっぱいいっぱい」なので(特にマッスー)、ふと、トレーニングがないと、普段ってあまりしゃべってないんじゃないの?と聞いてみる(特にマッスー)。
 マッスーは、仕事が変わって、実際、あまり人としゃべらなくてもいい環境になってる。一人暮らしも始めたしね。
 「一人暮らしだと独り言って言わない」ってノグが聞いてたけど、マッスーは隣に悪いからって、声ひそめてしゃべってるくらいだからね。
 いろんな宿題を出しておしまい。
 ようやく雨が上がった道をおしゃべりしながら駅まで歩く。
 マッスーは、久し振りにおしゃべりできてることがうれしいのか、「おしゃべりしたい心」に火が点いたのか、すごい勢いでマミーと盛り上がってる。どうやら、イケてる男子の話らしい。
 そんな二人を早瀬君と後から見守りながら、「あれって、どこかできっと力つきて、ダウンするよね」「しゃべりすぎて反省モードに入りそうだよね」と話す。「どこで落ち込むか賭ける?」ということになり、早瀬くんは「三軒茶屋のホーム」、僕は「渋谷駅のホーム」ということに。
 三軒茶屋から乗った田園都市線の中で、ふと、静かになってるマッスー。
 「どうしたの?」と聞いてみたらば、「反省してる……」と。
 早瀬くんの勝ち。わかりやすすぎ!


2003年05月25日(日) 東京票房 京劇公演

 昼間、中野ゼロ小ホールで京劇を見る。
 SARS問題で、「西遊記」の来日公演が中止になったりしてるけど、これは、日本にいる京劇好きな人たちによるもの、いわばアマチュア京劇。「票房」っていうのは、そういう京劇好きの集まりのことを言うんだそう。
 毎週日曜日に集まって練習をしてるんだそう。
 ものによって「あ、これは素人さんね」というものから、プロの俳優さんが演じている「す、すごい!」と思えるものまでいろいろ。
 「西廂記・紅娘」「水滸伝・野猪林」、それに現代京劇の「沙家浜・智闘」がおもしろかった。プロの京劇俳優、殷秋瑞さんの演技がすばらしかった。出てくるだけでもう「役者」ってかんじでね。
 今日の演目を見て、これまで見てきた京劇の来日公演が、どれだけレベルの高い、大変なものなのかということがよくわかった。
 一番いいものだけを見てきたんだってことがね。
 ていうか、そうじゃないものを見るのは、難しいわけなんだけど、そういうのわざわざ呼ぼうっていう人はいないわけだから。
 今日の演目は、どれもとっても身近な京劇ってかんじだった。
 好きな人が、好きなように演じて、お客さんもやいのやいの言いながら見てるかんじ。
 それにしても、京劇っていうのは、歌いながら踊る、つまりはミュージカルなんだってことがよーくわかった。それも、半端じゃない難しさの歌だったりするし。
 その難しさを難なくクリアして、当たり前のように演じてみせる、そこに面白さがあるんだなと思った。
 それって、演劇に限らず、パフォーマンスの面白さのおおもとなんじゃないかと思ったんだった。


2003年05月24日(土) 「Four Seasons」顔合わせ

 高円寺にて、7月の公演「Four seasons」の顔合わせ。
 出演者プラス、トシくん、フッチー、キッちゃんが来てくれて、思ってたより大人数な気がしてうれしい。気がしてるだけなんだけどね。
 制作の高市氏からの挨拶&説明と、僕からの抱負(?)を話して、さくっとおしまい。
 今回は、公演回数が9回といつもより多い。そして、出演者は6人だけと、最近では一番少ない(去年の「陽気な幽霊」は5人なんだけど、ダブルキャストで計7人だった)。
 劇団員だけの公演というのも、ほんとに久し振りだ。
 しっかりやろうねと話す。
 終わってからも、なんだかんだと話しこむ。
 フッチーとトシくんが持ってきてくれたおみやげのお菓子を食べながら。
 早瀬くんのバイトの話で盛り上がる。
 微妙に話がかみ合わなくて、妙におかしい(特にマッスー)。
 こういう会話のおかしさが台詞に生きてくるといいな……などとしゃべりながら考えたりしている。
 みんなが帰るのを見送りに玄関に出たら、マッスーがマミーに「あれ見た? 死んじゃうヤツ?」と質問して、「え、何のことなの?」とその場にいた僕も小林くんも思っていたら(たぶん)、早瀬くんが「『黄泉がえり』?」とフォローしてくれた。で、大当たり。
 「なんでわかるの、それだけで?」「マッスー専用の『翻訳こんにゃく』になってほしい」などと玄関先で盛り上がった。ほんとだわ。


2003年05月21日(水) 「四角い夏(1+1=1)+(Friends)=1」

 名古屋のイベント「NLGR2003」応援イベント「四角い夏(1+1=1)+(Friends)=1」の上映会@新宿Qubeに行って来る。
 名古屋のゲイコミュニティが生んだ、HIVについての映画。
 恋人のHIVに感染してると告げられない苦しさ、それを告げられた動揺、怒り、とまどいといったものが、とっても生々しく描かれてる。
 映画については素人のスタッフキャストが、ほんとに手作りで作ったというかんじがいっぱい。
 映画の技術的なクオリティとは別のところで、きっちり胸に届くモノがある映画になってる。
 見てよかった。
 おもしろかったのは、登場人物がほとんど「がっちりorむっちり系」だったこと。細身でキレイ系な男子は、メインキャラには全然いない。
 やっぱりこれがメインストリームなのよね……と思いながら、この手の男子がてんこもりのゲイムービーを見るのはこれが初めて。それも新鮮。
 この映画の詳細はこちらへどうぞ。


2003年05月20日(火) フライヤー入稿

 朝いちでマツウラくんからフライヤーのデータが届き、プリントネットワークさんに入稿に出かける。
 水天宮前で地下鉄を降りて、隅田川大橋を渡るいつもの道。
 気持ちいい風がふいてる。
 データの確認をしてもらって問題なし。よかった。
 今日入稿して、土曜日の顔合わせには間に合う。大助かりだ。
 午後、「絶対鳥フライ」の制作の三村さんが、公演のアンケートを高円寺まで届けてくれる。感謝。スクーターにたくさんのフライヤーをつんで、今日も何カ所も折り込みに出かけるのだそう。
 夕方からは嵐のような雨。雷も鳴って。三村さんはだいじょぶだったかな?


2003年05月19日(月) 台本

 完成!と書きたいところだが、まだまだ道は遠い状態。
 それでも、制作の高市氏に「初めて」読んでもらい、「これならば」ということで、7月の公演が正式に動き出すことになった。
 明日から、フライヤーの入稿やら、情報誌へのコメントやら、封筒の増刷やら、DMリストの追加やら、具体的な作業が始まる。
 台本は、今まで書いたことがないようなものを書いている。
 人物が作者の駒じゃない、一人一人が生き生きと立ち上がっているような。
 続く場面がどうなるか、わからないとしても、この人たちを放り込んでしまえば、勝手に動いてくれるだろうと思えるような人物が生まれてる。
 今回は、吠えもうなりもしないで、わくわくと書けている。
 演じている役者たちの姿を想像しながら、るんるんと書いている。
 そんなの当たり前じゃないかと自分でつっこみながら、これって、もしかするとひさしぶりなのかもしれないと思ったりもしている。
 明日は、新しい仕事の面接にも出かけることになった。どうなることやら。
 いろんなことが始まる、動き出している。そんなかんじだ。


2003年05月18日(日) 高円寺

 台本はまだ目標ページに到達しない。微妙な設定の変更をしたりして、行きつ戻りつなかんじ。
 この日記は、ちょっと一息のつもりで書いてみる。
 高円寺の南口のアーケードが新しくなって、先週から週末になると阿波踊りをしてる。
 ほんとはもっと夏のイベントなんだけど、特別ってかんじ。
 西友に牛乳を買いに行きがてら、生で見てしまった「阿波踊り」。
 高円寺に越してきて、もう5年近く。
 でも、阿波踊りってちゃんと見たことがない。
 夏のその時期にはいつも台本に追われていて、盛り上がってる音だけを聞きながらパソコンに向かってる。
 稽古ぎりぎりまで書いて、人混みをすり抜けて、駅までダッシュなんてこともあったな。
 今日もそうだ。少しだけ見て、すぐに戻ってくる。
 パソコンに向かってる今も、外からはにぎやかな太鼓の音が聞こえてる。
 今月いっぱいで、実家に戻ることに決めたので、こうして台本を書きながら、この祭囃子を聴くのは、最後になるんだなとふと思う。
 今年の夏は、ちゃんと見物に来ようと思う。
 今、がんばっておけば、きっとだいじょぶなはず。


2003年05月17日(土) トレーニングはナシ

 今日のトレーニングは、僕が台本に専念したいのでということで、ナシにしてもらった。
 7月の台本「四季 Four seasons」に向かう。
 稽古なしでごめんなさいと思いながら、好きなように時間を使えることの倖せをしみじみと感じる。
 今日、明日で見たい芝居が何本もあるけど、我慢。
 体調は、喉だけがいつまでも痛い。


2003年05月16日(金) 03-04 Fall/Winter paris collection

 パリコレのMAの後半2本@乃木坂のスタジオ。
 後半はわりと地味目なメゾンがならぶ。
 香水で有名なロシャスが新進デザイナー、オリビエ・テイスケンスを迎えてブランドの建て直しをしてる。
 「蜂」をテーマにした作品がとってもおもしろい。あちこちが微妙にふっくらしてたりして。
 日本のブランド「アンダーカバー」は、着せ替え人形がモチーフだ。
 紙でできた人形に服を着せるように、モード史の見本なようなドレスの数々を「着せて」いく。のりしろのようなマジックテープの「タグ」がいっぱいついてて、それをぺたっと貼り付けて着せ替え完了。普段で着るのはむずかしそうだけど、とってもかわいくて、いいかんじ。
 熱は下がって、喉の痛みだけになる。
 台本の追い込みにかかる。まっしぐらだ。


2003年05月15日(木) 風邪ふたたび

 昨日からまた風邪をひいてる。
 熱と喉の痛みがだらだらとやってきて、夕方から夜にかけてピークになる。
 この頃の雨模様の天気がとってもうらめしい。
 早く暖かくならないかな……


2003年05月14日(水) 迷惑メール

 このところ、携帯に迷惑メールがよく届く。
 1日に5〜6通。しかも出会い系の勧誘。当然のように「ノンケ向け」。
 一番最初に来たときの「不要なら返信を」という指示のとおり、返信したら、その後、じゃかすか来るようになった。
 後で聞いたら、そうして返事があったところは「これはOK」とばかりに送り続けるんだそう。どういうことよ!
 なので、せめてもの抵抗。昨日の夜から今朝まで、メールアドレスを一時的に変更してみた。
 夜中なので普通の人からはメールはこないだろうし、また、そんな夜中にだって例のメールは来るのよね。
 で、見事に止まりました。やった!
 まだ安心出来ない気もするんだけど、今度は何かが来ても、絶対に返信しないでおこうと思う。


2003年05月13日(火) トレーニング

 下馬の稽古場。
 早くから三軒茶屋に行っていたら、小林くんとマッスーから相次いで連絡。
 「新玉線が渋谷駅の停電のため止まってる」らしい。
 二人には、バスの道筋を連絡する。
 確認しようと思って、改札口に降りたら、すごい人。
 制服姿の学生が自動改札に座ってくつろいでる。あら、止まってるのねってかんじ。
 7時を過ぎていたので、とにかく稽古場へ。
 事故に関係なく来ていたマミー、僕、道に迷いながら来たマッスー、それに二子玉からバスで来た小林くんがそろったのは9時前。
 ようやく「砂村新田」を読み始める。
 マッスーと小林くんは、前回にいなかったので、僕とマミーはこの話を読むのは二度目なんだけども、結局はじめてなかんじでゆっくり進む。
 結局、終わりまで行けずに時間切れ。
 「電車動いてるかね?」といいながら駅まで歩く。
 大量に駅方向から流れてくる人波に、だいじょぶそうな予感。
 案の定、動いてました。
 総武線に乗り換えて、マッスーが中野で降りた後、イワイさんが登場。
 仕事帰り。半蔵線も止まって大変だったんだって。
 会った途端「イワイさんだ!」と叫んでしまって、車両中の人に「あの人イワイさんって言うのね」と教えてしまったかんじ。アウティング?
 こういう条件反射は、かなりおばさんくさいと反省する。


2003年05月12日(月) ココロカフェ〜タックスノット

 「絶対鳥フライ」で演出助手をしてくれていたスーパーくんこと、佐藤くんと新宿で会う。
 ゆっくり落ち着ける2丁目のココロカフェへ。
 芝居の話をあれこれ話す。
 その後、タックスノットへ。久し振りに。
 タックさんとしばらく二人きり。ここでも芝居の話をいろいろと。
 その後、パチパチ、ウタちゃんがやってきて、わいわいと。
 さくっと帰ってくる。
 熱はようやくさがってほっとする。よかったよ。

 こないだの日曜深夜にやってたNHK-BS「深夜劇場へようこそ」、浅丘ルリ子主演の「悪の華」のビデオも少し見てみる。
 本編の前のインタビューで、植本潤と横内謙介の「映画と舞台はどう違うかという質問」に、「TVで見た『アクターズ・スタジオ・インタビュー』で、スーザン・サランドンが『セックスとマスターベーションの違い』と言っていて、私もそうだなって思うのよね」(略)と話していた。「マスターベーション」なんて言葉をクチにするルリ子って……
 それに、さらっとこういうことが言えるのは、とってもステキだと思う。ていうか、びっくり。ルリ子、素晴らしい!


2003年05月11日(日) Dotoo!(ドトォ!)「マンボ・ジャンボ」

 このところの急な寒さで、風邪を引いてしまった。
 あきらかに「ひき始め」といったかんじで、体中がいたい。肩やら、背中やらがミシミシ言ってる。喉も腫れてきてる。葛根湯を飲んで、水をがぶがぶ飲んで早く治すよう心がける。

 スズナリへDotoo!(ドトォ!)「マンボ・ジャンボ」を見に行く。
 「絶対鳥フライ」で一緒だった、ピエールくんこと杉浦理史くんが出演してる。
 スズナリでチケットを受け取ってたら、郡司くんと合流。あら、今日だったのね。
 一緒にご飯を食べて、いざ……。
 3組の全然違うグループが、公共施設の集会室を舞台にすれ違いとニアミスを繰り返す、ほろ苦いコメディ。
 1枚の「サマージャンボ宝くじ」が、後半、3組をよりあわせていく。
 人物から徹底的に距離を置いてる本の書き方が新鮮。みんなを突き放してる。
 これは台詞の書き方のせいだと思うんだけど、ねらい気味のギャグや台詞のねらった先が「ああ、そうですか」ってかんじで、笑いにまでいかない。その微妙なかんじがよしなのかもしれないけど、ちょっとくどかったかも。「ほら、ひねった、おしゃれな台詞でしょ?」みたいなかんじがだんだん鼻についてきた。
 役者さんはみんな達者。ピエールくんは、1組の家族の末っ子の役で大活躍。彼がいるこの「家族チーム」が一番おもしろかった。どうしてだろう? 同じような台詞なんだけどね。やっぱり役者の力なんだろうか。後半、ずっとそんなことを考えながら見てました。
 終演後、ピエールくんに御挨拶。そしたら、加治木くんと入山くんも来てました。まあ……。
 帰ったら寒気がするので熱を計ったら、7度7分。あらら……
 知恵熱だったらいいんだけどな。

 水野晴郎が週刊現代でカミングアウトしてる。
 「水奴(みずやっこ)」って呼ばれてるって話は聞いたことあるし、やっぱりね……ってかんじで、びっくり!ではないんだけども、いいことよね、これって。

 ちょっと補足。こないだの「扉を開けて、ミスター・グリーン」の作者ジェフ・バロンと劇中の人物の設定「似てるところ」っていうのは、「ハーバードを卒業してるところ」とか「アメリカン・エキスプレスに勤めてる(た)」ってところ。ほんとに「まんま」なんだよね。ちょっとびっくり。


2003年05月10日(土) トレーニング

 ホソちゃん、マミー、僕、途中からフッチーが参加。小林くんは、風邪に続いての急性胃腸炎で今日もお休み。
 「堪忍箱」の最終話「砂村新田」。
 この短編集の中で、僕はこの話が一番好きだ。娘から見た、母親の若き日のほのかな恋心のようなものが、娘の成長とともに描かれてる。
 一回みんなで読んでから、宿題にしていた「キャスティングするとしたら誰?」という話をみんなでした。
 具体的なイメージをもとにして読んで人物を立ち上げる、さらには、みんなで共有できるイメージで読むっていうことをしたかったので。
 主人公である娘役には、モー娘。の加護ちゃん、小川麻琴、中山忍から、まな・かな 小林綾子などがエントリー。
 母親やおばさんには、いろいろな人の名前が挙がるんだけど、職人の親方なんてキャラクターがなかなか浮かんでこない。
 つい、小林綾子(娘)、泉ピン子(母)、角野卓造(父)、三田村邦彦(母のおさななじみ)なんていう「橋田ファミリー」なセットができあがってしまう。
 他には、石橋蓮司、蟹江啓三、根岸季衣なんていう、やや「アングラ」な3人組も。
 次回のトレーニングで、もう一度やってみようと思う。
 今度は、一人一人に長くじっくり読んでもらうことにしよう。
 今晩、ホソちゃんは2丁目朝までコース(一人で!)。
 「何かあったら電話しなさいね」と言って別れる。
 でも「何か」って何?


2003年05月09日(金) 03-04 Fall/Winter paris collection

 ファッションチャンネルニュースのMA。
 今日は、パリコレ、全4本のうちの前半、2本。
 中出順子さんとと一緒。
 ディレクターは、久し振りの八木さん。となりのスタジオに、久し振りな香川くんが来ていて久し振りに会う。
 しばらく会わないうちに、すっかり大人に。でも、相変わらずのおしゃれさん。
 ジョン・ガリアーノ、アレクサンダー・マックィーンが、見事なショーを見せてくれる。
 マックィーンのショーで、半裸に打ち掛けのようなものを羽織った富永愛が、ものすごい風にさからって歩いていく姿が凄絶。っていうか、あれは何なの?
 今日のベストは、ジャン・ポール・ノット。ほんとにきれい。
 過激なメークも演出もなく、静かなほんとに服だけを見せるコレクション。
 アレクサンダー・マックィーンが、すっかりスリムになって、ショーの最後に登場してびっくり。すっかり普通のお兄さんになってる。もとい、髪をブロンドにしてたりして、何だか「ブラッド・ピットみたい」!
 ダイエットしてワークアウトしましたって感じじゃない、自然さが、いいかんじ。
 対極にいるのは、前回のコレクションで、自分のメーキャップのために開演を送らせたっていうジョン・ガリアーノ。この人は、鍛えまくり&演出しまくり。今回も、見事なブルーフォックスを一匹肩に載せて登場してました。
 スタジオは、六本木ヒルズのすぐ近く。「ちょこっと寄ってみようかしら?」と思うものの、さくさく帰ってくる。


2003年05月08日(木) ひょうご舞台芸術「扉を開けて、ミスター・グリーン」

 昨日の朝日の夕刊に劇評が載ってた。大沢健がゲイの役をやってるらしい。
 そんなの全然知らなかった! だったら、これは見とかなきゃ!というわけで、当日券で見てきました。
 紀伊国屋サザンシアター。前から5列目のど真ん中。すっごいいい席。今日が千秋楽。
 お話はこんな(フライヤーより)

 交通事故を起こし、被害者グリーン氏(木場勝己)の介護を裁判所から命じられた加害者ガーディナー(大沢 健)。毎週木曜日にグリーン氏の自宅を訪問し、身の回りの世話をすることがその内容だった。
 最初は拒否をするグリーン氏だが、ガーディナーの温かな気遣いにやがて心を開いてゆく。いつしか打ち解けて互いの過去を語り合ううちに、グリーン氏がかつて娘を勘当したことがわかる。ガーディナーは二人の仲を取りもとうと考え、その娘をグリーン氏のアパートに招待することを提案するのだが・・・。

 この紹介文はとっても「よろしくない」です。
 お話の結末を明かしてしまってるくせに(娘を招待する云々というところ)、このお話のとっても大切なモチーフを無視してるから。
 それは、まず、二人がユダヤ人であるということ。
 グリーン氏は、ユダヤの戒律を厳しく守るユダヤ教徒。だから、どこの誰ともわからない男の世話にはならないと言う。
 ところが、ガーディナーもユダヤ人だということがわかり、二人の交流は始まる。
 でも、ガーディナーが、自分はゲイだと話すと、二人の関係には微妙な影が……
 親に孫の顔を見せてやりたくないのか?!と……
 ガーディナー氏の娘は、異教徒の男と結婚したために勘当された。
 親と子の問題、グリーン氏の場合と、ガーディナーの場合とが、のっぴきならない重なり方をしていく中、それでも最後に二人は抱き合い、和解する。
 で、一番最後の場面が、娘を迎える場面。ドアを開けて娘がやってくるその瞬間で芝居は終わる。

 全部とは言わないけど、どうして、こういう大事なことを書かないのかね?
 ユダヤ人だとかゲイだとかっていうと、拒絶反応があるから? だったら、もういい加減にしてってかんじ。
 唯一明かしてる、「娘を招待云々」なんて、ほんとに芝居の最後の最後なんだから。
 しかも、芝居を見た限りじゃ、ガーディナーは「招待」なんかしてないしね。ずっと送られてた手紙の住所を頼りに、電話番号を調べて、グリーン氏に教えただけ。電話も、誰がかけたのかはよくわからないようになってる。
 つまり、これって、すっごいネタバレじゃないのかな? それも、かなり余計なお世話の。
 それより、ユダヤ人であるってこととか、ゲイであるっていう、この芝居の大事な対立の要素を明かしてくれた方が芝居の予備知識としては、大切なんじゃないだろうか?
 その方が、この芝居を見てみたいと思う気持ちは強まるんじゃないんだろうか?
 僕間違ってるのかな?

 と、ずいぶん熱くなっちゃったんだけども、芝居はなかなかおもしろかったんです。
 何しろ、僕が、この芝居を「見なきゃ」と思ったのは、大沢健がゲイを演じるという、ほとんどその一点なんだから。
 大沢健は、とってもよくやってました。
 1幕の終わりで、お互いにユダヤ人だとわかってうち解けてきたところで、カミングアウト。
 グリーン氏はとまどいながら退場。そこで、幕(ていうか、暗転)。
 すっごいベタな展開なんだけどね。
 2幕の最初の場面、前の場面から一週間後、で大沢健は、自分がゲイだってことをグリーン氏に説明する。
 ここがすっごいよかった。彼がどれくらいゲイかってことが、実にリアルでね。
 彼は、女の子とつきあったりもしてたんだけど、20歳のある日、となりに住んでるポールって男の子と仲良くなって、告白された。そんな馬鹿なと思ったんだけど、いつかこれは恋なんだと気がついた。でも、しばらく経って母親に「あなたとおとなりのポールは特別な関係なの?」と質問されて、おしまい。そのときから彼とは一度も会ってない。
 両親はガーディナーがゲイだってことを絶対に認めない。
 彼自身も、自分がゲイだってことに強烈なアイデンティティをもってるわけじゃない。
 「もう何年も誰ともデートしてない。ゲイが集まるところにも行こうとも思わない。僕はもう恋なんてしないんだ」なんて言う。
 そのかんじがね、切なくてね。
 彼が最後に、ゲイの友達を見つけるところで終わるのが、僕はうれしかった。
 マラソンが趣味の彼は、セントラルパークで「フロントランナー」っていうゲイのマラソンチームと出会って、「どうなるかわからないけど、一緒に走ってみようと思う」って言う。
 木場勝巳は、八十過ぎの老人、しかもがちがちのユダヤ教徒を、とても丁寧に演じてる。映画「トーチソングトリロジー」でアン・バンクロフトがやってたユダヤの親のテイストがむちゃくちゃ上手く出てる。時々ぼけちゃってたりするんだけど、一番切なかったのは、ガーディナーのことを怒鳴った後に、「無心に」彼が持ってきてくれたデリカテッセンの料理を食べてるところ。ただ食べてるだけなんだけどね。すごい良かったんだよ。泣けてしょうがなかった。

 そんなかんじで、芝居としては、ほとんど文句はないんだけど、転換はやっぱり多過ぎる。
 毎週一度やってくるっていう設定だから、しょうがないんだけど、「これってわざわざ翌週にしなくてもいいんじゃない?」って気が何度もした。
 場面の終わりは、かならず人物にスポットライトを当てて、それを残して暗転。
 しかも、この「残し」のためのフェードアウトが場面が終わりそうになると早々と始まるんだよね。もう「終わりだよ」っていう合図みたいに。
 暗転中には、トーチソングっぽい歌がいろいろ流れるんだけど、この曲は、暗転しきってから始まる。
 この微妙なずれがとっても気持ち悪かった。
 大体、ピンスポットって必要なのかな? 大沢健はずっとフォローされてたけども。
 照明では他にも、劇中で、壊れて点かない壁のライトが、大沢健が電球がゆるんでたのに気づいて直すと、点いた!っていう場面があるんだけど、この時に「異常に明るくなる」んだよね。
 同じ形のライトは他にもあるんだよ、壁に何カ所か。気持はわからないじゃないけど、それってやっちゃいけないことだと思うんだよね。しかも、いつの間にか、他と同じ明るさになってるし。
 全体的に、リアルじゃない照明ってことなんだとは思うんだ。でも、それは思い切りリアルな舞台装置と、この戯曲が要求してるものとは全然違うんだと思う。
 やだな、わりとおもしろく見たくせに、文句ばっかり言ってるね。

 戯曲の疑問は、他にもあって、たとえば、二人が会話の終わり、対立が盛り上がったところで、ふっと場面が終わって、次の場面は一週間後で、お話は前の場面の続きっていうところがあるだけど、それって変だよねと思った。
 こういう二人芝居で、やりとりが緻密に書かれてるものって、二人がいるところで場面が終わったら、その後、何があったのかってことがすごく大事になっちゃうわけじゃない? 一人なら話は進まないけど、二人そろって場面が終わったら、続きはどうなったのかって、気になるわけでしょ。話が進まないわけがないんだから。
 ルールとして、週に一度ガーディナーがやってくるっていうのが、骨格なんだから、毎回、彼が出ていくところで終わらなきゃいけないんだと思う。もしくは、一幕の終わりみたいに、グリーン氏が部屋に引っこんじゃって、ガーディナーが一人残るとかね。
 その辺の無理があるところをうまく流してくれればいいんだけど、サス残しで盛り上げちゃうから、「あれ?」ってかんじがどうしても積み重なる。
 カーテン・コールで、演出のグレッグ・デールが、来日してた作者のジェフ・バロンと挨拶してた。グレッグ・デールは、この芝居のことを「シンプルなすばらしい戯曲」って言ってたけど、だったら、もっとすっきりとやるやり方がもっとあったんじゃないかと思うんだけど。
 暗転が多いのはしょうがない。そういう本だから。でも、毎回を甘い歌でつなぐのはどうだろう?
 戯曲が要求してるのは、もっとシビアなもんじゃないかと思うんだよね。
 次々流れるトーチソングは、とっても「ゲイテイスト」なかんじがして、その辺から考えるとあながち大間違いって訳でもないんだろうけど、それは明らかに、ゲイのガーディナー寄りの選曲なんだよね。でも、そんな甘さは、この芝居のどこにもない。ガーディナーにもグリーン氏にも。
 ラストの娘がやってきたその瞬間で終わるっていう場面は、芝居としては、幕を降ろす方が気持がいいと思う。
 幕が上がって、始まって、幕が降りて終わる、とってもオーソドックスな芝居。
 ずっと書いてきて思ったのは、見せてもらった舞台が、どこか甘さを感じさせるものなんだってこと。戯曲の持ち味に反してね。
 ホロコーストの話も出てくるし、二人はとっても真剣に対立するんだけど、なんとなく和解しちゃうんだよね。
 これも戯曲に書いてあるからしょうがないんだけど、その和解のしかたがなしくずしな気がして、そのなしくずしなかんじが、「厳しさがあるんだけど和解しないではいられない切なさ」みたいなものになってかない。そこがもどかしい。
 役者二人はとってもよかったと僕は思うんだけども、演出については、とっても「?」な感想だ。
 挨拶に舞台に上がったジェフ・バロンはとっても「ゲイ」な人で、見るからにおネエさんでした(たぶん間違いないと思う。服装とかしぐさとか)。この芝居は彼の処女戯曲。きっとガーディナーっていう役には彼のいろいろが投影されてるんだろうな?なんて思ったんでした。

 それにしても、二人芝居で6000円(当日券は6500円)というのは高すぎないか?
 「ひょうご舞台芸術」の制作だけれど、これって半分お役所みたいなもんなんでしょ?(たしか兵庫県がやってるんだよね)
 それとも動員が難しそうだから、保険として、チケット代を高くしたのかな? たしかに千秋楽なのに7割も入ってないと思う。
 これってもっとシンプルに「安く」作っても、全然大ジョブな芝居だと思うんだけど。
 チケットをもっと安くして、もっともっとたくさんの人に見てもらいたい芝居だった。
 それでペイできないっていうのは、何か間違ってるんじゃないかと思う。
 演出家が言ってたとおり、ほんとにシンプルで、二人芝居のおもしろさがいっぱい入ってる。
 小劇場のロングランになったりすると、おもしろそうだ。

 客席には大楽ということもあって、大沢健の女子ファンが大勢。大沢健って、そういうファン層がいるんだと改めてびっくり。僕の前の席の女子は、開演ぎりぎりまで手鏡見ながら、口紅を直してたし、開演中はオペラグラスを使ってた。4列目なんだけどね。
 後は、おばさまとおじさま方がたくさん。となりのおじさまは「おじさんの整髪料」が強烈に匂ってて、しかもずっと寝てた。若くて芝居が大好きだってかんじの人はあんまりいなかった(と思う)。
 そういう客層に相手にされてないっていうのも、制作的にどうかと思う。
 ていうか、とっても気持ち悪い客席だった。率直な感想だけどね。お役所感なのかな? 芝居がちょっとかわいそうだった。って、余計なお世話なんだけども。

 だけれども、見てよかった。ほんとに。それは間違いない。
 カミングアウトする大沢健は、むちゃくちゃ感動的だったし、木場勝巳の老けの芝居もとってもよかった。そして、何より、来年からはじめる二人芝居のシリーズのための、すごいいい勉強になった。ほんとにね。

 ネットで検索したら、やっぱりジェフ・バロンはゲイで自分自身の経験をもとにこの芝居を書いたみたいだ。やっぱり!! ガーディナーの設定はまんま彼自身だったんだ。コメントも何だかうれしいなあ。 
 でも、それが、今回の公演のパンフレットにはどこにも書いてないってどういうことなんだろう? 大事なことだと思うんだけどな。
 ジェフ・バロンの略歴はここを見て(ずっと下の方ね)


2003年05月06日(火) トレーニング

 ほんとに久し振りのフッチー、それに茶髪にしてきたホソちゃん、前髪を斜めにカットされてしまったキッちゃん、それにマミー、遅くなってマッスーという顔ぶれ。
 宮部みゆき「堪忍箱」の朗読。「謀りごと」の途中からはじめて、ようやく終わる。続いて「てんびんばかり」。
 こちらは登場人物が少なくて話もすっきりしてわかりやすい。
 当たり前なのかもしれないが、ちゃんと書いてあるモノの方が、明らかに読みやすい。
 大きなつまずくポイントもなく、終わりまでいく。
 マッスーからGWの話をいろいろと。たいへんだったのね。


2003年05月05日(月) 朗読劇「天守物語」

 日本橋にある定席「お江戸日本橋亭」での鈴々舎馬桜さんの独演会の最終日、朗読劇「天守物語」に出かける。
 馬桜さんの他には、佐藤誓さんと山下禎啓さんが出演。
 琴や太鼓や三味線の音を入れながら、義太夫の太夫が座る台に三人並んで座っての、朗読。
 泉鏡花の「天守物語」は大好きなお話だ。
 すっごい昔に玉三郎、孝夫コンビで日生劇場で見たことがある。
 ほんとに夢のような舞台だった。完全に僕の中には「スゴイ舞台」として刷り込まれてる。
 南美江さんの奥女中・薄っていう役がとってもステキでね。あとは、小池朝雄さんも出てたね。
 姫路城の天守閣に住む妖怪の姫と鷹匠の恋物語と言ってしまうと、身も蓋もないお話なんだけども、言葉のきれいなことと言ったら……。
 今日の朗読は、その言葉の美しさを堪能して帰ってきた。
 主な配役は(三人で分担してるからね)、冨姫が山下さん、図書助が誓さん、亀姫、薄、朱の盤坊、舌長姥、近江丞桃六が馬桜さん。
 みなさん、それぞれとってもよかったんだけど、びっくりしたのは、馬桜さんだ。
 噺家さんというのは、なんていうんだろう、古典の言葉がカラダに入ってるのかな、やっぱり。どの役もそれは見事だった。たぶん、「息」がね。
 鏡花の文体って、やっぱりこういうものなんだなあと改めて思った。
 絢爛豪華でキラキラしてるけど、息としては、講談、もしくは落語の世話の語りに近いんだ。 新派ともちょっと違うかんじ。
 「お江戸日本橋亭」は席数200弱のちんまりしたハコ。座椅子がならんで、ほんの少しだけ傾斜してる。
 客席は、花組芝居のファンだと思われる女性がたくさん。男性は、僕を入れても十人もいなかったと思う。
 休日の日本橋はほんとに人がいなくて、不思議な街になってる。
 帰りは、鏡花の台詞をあれこれがんがんしゃべりながら銀座まで歩いてしまう。
 三越本店がすごいイルミネーション。デコレーションケーキか?!
 中央三井信託銀行は、ライトアップでエンタシスの柱がきれいに浮かび上がってる。
 「日本橋」も、全体がきれいに照明で演出されててびっくり。高速道路の裏側まで。
 気がつけば、夜のこんな時間にこのへんを歩いたのは初めてなんだった。
 橋のたもとの「滝の広場」っていうのが、ステキでね。水がいっぱい流れてて。しばらく風に吹かれながら、川面を見てしまった。こんなところに「一人で」いるっていうのが、むちゃくちゃ残念。でも、いい気持ち。


2003年05月04日(日) 「stranger in paradise」

 夕方、ヨシオと待ち合わせをして、「絶対鳥フライ」のビデオとみんなで分けた出演料の受け渡し。
 新宿の改札でさくっと。
 7月の公演で使いたいなと探していたCDをタワレコで買う。
 国内先行発売のそのCDは、「CCCD」(コピーコントロールCD)。
 「これってMDには落とせるの?」と何もわからない僕は、音響の亜弓ちゃんに電話して、教えてもらう。
 だいじょぶだそう。
 それにしても、ウィンドウズなら「なんとか」聞けるのに、Macは「再生できません。再生を試みないでください」って、どういうことよ?
 ともあれ、早速買って帰って、CDデッキで聞いてみる。久し振り。
 それにしても、試聴したのと全然違って聞こえるのは、プレーヤーの違い、それともヘッドフォンの違いかな?


2003年05月03日(土) トレーニングはナシ

 稽古場に来たのは、僕とマミーの二人だけ。
 欠席の連絡もみんなから来てたので、今日はナシにしてすぐに帰る。
 連休の渋谷はなんだか人が少なくて電車に乗りやすくてびっくり。
 それにしても「堪忍箱」はちっとも進まない。
 顔合わせまでの余った稽古日に何か新しい課題を考えなくちゃと思ってたんだけど、ちょうどいいタイミングで終わってしまいそうだ。


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