せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2003年02月28日(金) |
「イラク攻撃と有事立法に反対する演劇人の会」 |
バイトを抜けて、紀伊国屋で開催される「イラク攻撃と有事立法に反対する演劇人の会」に参加する。 どのくらいの人が集まるか全然わからなかったので、とりあえずは、少し早めに到着したら、すでに長蛇の列だった。客席に入る前のひとたちがロビーで列をつくってる。 受付の前で紅王国の野中友博さんとご挨拶。ノグがロビーで観客の誘導をしてる。そして、篠井英介さんにもごあいさつ。今日はリーディングでご出演だ。 なんとか入場して、無事に席につく。 そして、12時、集会が始まった。 青年劇場の瓜生正美さんの挨拶から始まって、「戦争やテロについて書かれた様々な文章」の朗読。出演は、篠井英介さん、三田和代さん、渡辺えり子さん、今井朋彦さん、田岡美也子さん、塩野谷正幸さん、新井純さん、巻上公一さん、KONTAさん、深沢敦さんといった面々。 その後、ブッシュ大統領への手紙を渡辺えり子さんと譲晴彦さんが朗読、ピアノは林光さん。 それから井上ひさしさんの講演。 第二部の始まりは、ラカンパニーアンの「祈りのあとで」からのパフォーマンス。 明樹由佳さんが踊る。 そして、二部のリーディングは、「世界の子供たちは今」と第一部のメンバーに、李麗仙さん、吉田日出子さんがくわわって、ものすごいことになった。 何ていったら、いいんだろう? 舞台が重いっていうかなんていうか。絶対にあり得ない顔合わせっていうかね。 続く、アピールと手紙では、朝倉摂さん、観世榮夫さん、渡辺美佐子さん、岡部耕大さんが登場。 もうものすごいことになってる。 朗読の最後に「少女」になって「もう戦争が起こらないように」祈る三田和代さんがとっても印象的だった。 あとは、はじめはほんとに棒読みにちかかったのに、最後にはものすごいことになってる渡辺美佐子さんの息子を戦場へ送る母親の手紙! それから、他の人が読んでる時に、その様子を、おもしろそうに目をきらきらさせて見てる吉田日出子さん。宮沢賢治の「星めぐりのうた」もすばらしかった。 最後に、ブッシュ大統領への手紙、小泉純一郎首相への手紙、世界への演劇人への呼びかけを、渡辺えり子さん、斉藤憐さん、永井愛さんが読み上げる。政治家のメモを見ながらの答弁とは全然違う、力がすばらしい。さすが言葉のプロだ。 メッセージの中で語られた「言葉の力」っていうのがとてもいいなと思った。 演劇人ならではの闘い方っていうかね。 それにしてもものすごいイベントだった。 演劇人にできること、演劇人の力って、ものすごく「ささやかなこと」かもしれないけど、ものすごく「大きなこと」なんだなと、思ったんでした。 僕の闘い、僕の闘い方はなんなんだろうと改めて思ってきたんでした。 終演後、バイトに戻る。 9時半までかかって、ちっとも終わらない。 また明日も出勤だ。
2003年02月27日(木) |
「Skip」稽古 タクシー |
稽古の前に、ぎりぎりまでパソコンに向かっていたのだけれど、えいっというような思いつきがなかなか出てこない。 魅力的なキャラクターはそろったから、後は物語がどう動くかというところなんだけどね。 様子を見に来てくれた、高市氏としばしおしゃべり。 「どんなかんじなのよ?」と問われるままに答えていると、あらあら、どんどん話ができていったのでした。 誘導尋問?というわけでもないんだけど、思いつくままにしゃべった物語と伏線と物語のオチは、「なんだ、これでOKじゃん」ってくらい、おもしろいお話になってました。 これまでは、けっこう苦労しながら、パソコンに向かって、ああでもないこうでもないと悩んでたんですが、もうすっきりしました。 あとはどうおもしろくしていくか、どう「だましていく工夫」をしていくか、それを考えていけばいい。 新しい台本のページは持っていかずに、今日は稽古の日と決めて、そのくせ、すっかり遅刻の時間に出かける。 渋谷から乗ったタクシーの運転手さんと「夜になって急に寒くなりましたね」というおしゃべりから、「秩父に行ったら、ロウバイと福寿草が満開でね」と話を振られ、「ロウバイっていいにおいですよね」と僕が答えたところから、妙に話が弾んでしまい、ずっとおしゃべり。 田舎から出てきたその人は19まで、千住に住んでいて、その後祐天寺に越したら、あまりに環境が違うんでびっくりしたんだそう。隣同士のあいさつもないんでね。 会社を興して、娘は結婚して外国へ、息子も独立してから、「もう働くのはいいや」と思って、会社を解散したんだって。知り合いがやってる会社に従業員をみんな世話して、あとは、「いつのまにか二種免許を持ってたので(昔ってそうだったのね)タクシーの運転手でもやるかと」思って運転手さんに。 その頃は、「蛇崩」に住んでたんだそう。道すがら「ここ曲がったところですよ」と教えてくれる。 年金もちゃんと入ってくるんで、週に二、三日だけのタクシー運転手さんなんだって。 それでも、営業所のナンバー3以下になったことはないんで、「もう71になるんだけど、やめないでくれって言われるんですよ」だって。 「西澄寺前の信号で……」と言うと、「西澄寺……、昔、ここでお灸すえたことあるな。仕事のしすぎで胃を悪くしたときにね」とまだおしゃべりは続くのでした。 成績いいのわかる気がするわ。ほんと気持のいい人だった。 降りるときに、つい「お元気で」と言ってしまったんでした。
稽古は、冒頭の流れを、きっちり立ち稽古。 よしおの剛ちゃんのキャラが、おもしろい。 「ひまわり」に出てきた剛ちゃんは、マッチョっぽい、ある意味おもしろみのないお兄さんだったんだけど、今度の剛ちゃんは、むちゃくちゃ人間くさい。 あ、「ひまわり」の剛ちゃんの堅さは、よしおのせいっていうよりも、作者の僕のせいです。
初日まであと20日。
2003年02月26日(水) |
プリーツ・プリーズ イチゴ |
熱がある。 風邪か花粉症かよくわからないんだけど、微熱が続いて、具合が悪い。 台本のための知恵熱かと思うんだけどね。だったら、さくさく書くがいいってかんじ。 今日は稽古はなし。 CDを探したり、衣装を探したりしに、新宿に出る。 買い物ついでに、銀座の古着屋(って言い方は違うか?)「rt」まで足をのばす。 ここはお正月にパチパチと一緒に来たとき、超イカす「イッセイ・ミヤケ」のフェイク・ファーのコートを見つけたところ。 結局、買わないで帰ったんだけど、今も後悔してる。ほんとすごかったんだから。 羽織って鏡に映る姿を見てたら、パチパチに「目に力が入ってるのはなぜ?」と言われたくらい。 今日は、「Skip」で使えそうなドレスはないかなと思って見に来たんだけど、まんまと発見。 ただし、使えるかどうかは未定なんだけど。かなり「ナチュラル女装系」なのよね。 わからない人は、美輪さんがいつも来てるやつっていえばわかるかしら? イッセイ・ミヤケの「プリーツ・プリーズ」の黒のドレスと白いアウターを。 試着するのも気が引けたので、違うフロアのメンズのボディに着せてみた。 さすが「プリーツ・プリーズ」、女性用の3っていうサイズなんだけど全然着れちゃう。 ゲットすることに決定。 ただし、持ち合わせがなかったので、「お取り置き」してもらうことにした。 やや、衝動買い。でも、お買い得だと思うので、自分を許してしまう。 風邪もひいてるし。そのくらいはいいでしょ? と甘やかす。 台本は、なかなか進まない。 30分過ぎて、どんどん事件が起きていかないといけないんだけど、なかなか思い切れない。 もっと慎重に伏線をはって、巧みな構成を考えていかないと、すぐに破綻してしまいそう、もしくは、何が何だかわからないものになってしまいそう、または、全部、これまでの僕の書き方の手の内で終わってしまいそうで、臆してしまう。 スーパーで買ってきたイチゴが、とっても巨大で食べがいがあって、しかも美味。 いくつか食べてみるが、「丸かじり」という言葉がぴったりだ。
体調が悪い。 なんとかバイトに出かけて、大急ぎで戻って、それから稽古。 高市氏と約束した、予定の枚数に達しないんだけど、勘弁してもらう。 稽古場にほんの3ページだけを持っていく。 場面は終わったけど、さあ、次はどうなる?というかんじ。 あれもこれもと、気持は決まらない。 桜澤さんが、「そうやるか?」というような演じ方をつぎつぎしてみてくれておもしろい。 結局、そのまんま「いただいて」しまうことにした。プロット的にもね。 帰り、新宿のツタヤにCDを返しに行く。 まっすーも一緒に降りて、ドンキホーテにカーテンを探しに行く。 山手線から降りて、まみーは向かいの総武線に乗り換え、早瀬君は南口から徒歩で帰って、僕とまっすーは中央口から出るかんじなんだけど、まっすーは早瀬くんに「こっちからだっていいじゃん!」と腕をつかんで「からんで」いた。 一人暮らし開始3日目。さびしいのか?
昼間はみぞれまじりの雨。むちゃくちゃ寒い。 熱っぽくてからだがだるい。 夜から稽古。 桜澤さんが登場する場面をもっていって、これで全員が登場したことになる。 ざっと読み合わせをしてもらって、桜澤さんに「そんなかんじでいいよ」と話したら、「これだけじゃ何の役作りもできない」と言われる。そのとおりです……。「この続きは?」と聞かれて、「まだないです」と答える。ほんとに申し訳ない。 今日の阿佐谷地域区民センターは、夜間の延長使用をしているのは、うちだけだそう。 そのせいか、終わって、外に出たら、階段がまっくらだった。 そういえば、僕が遅く行って、コピーをとってたら、その時にもうロビーの蛍光灯は消されてたんでした。まだ、片づけ終わってないのに。 「韓国の地下鉄の火事みたい!」と話しながら、おそるおそる降りてくる。やや、不謹慎。
2003年02月23日(日) |
ラジオ収録 「Skip」稽古 |
午後から、有線ラジオの録音のため笹塚に向かう。 今度の合同公演の制作をしてくれる三村さんの紹介だ。 番組は、ゆうせん-WIDEの「東京ACT CITY」とmusic birdの「イケイケ! ラジオぶたい」というもの。 パーソナリティの森雅紀さんと曲をかけながらのおしゃべり。思い入れのある曲を持ってきてほしいということだったので、「サンセットブールバール」でグレン・クローズが歌ってる2曲「With one look」と「As if we never said good bye」と、「ゲイが好きな曲」ということでウエザー・ガールズの「ハレルヤ・ハリケーン」、それに「コーラスライン」から「What I did for love」。 森さんはとてもハンサムな(!)な気持のいい方で、楽しく収録を終える。 「ラブソング」の中から、台詞を少し読んだんだけど、かなり「かんで」しまう。だめじゃん。 収録が終わって、スタジオの外に出ると、三村さんが来てくれていた。 あいさつして、大急ぎで戻って、台本に向かう。 今日はここまでと決めた枚数までなんとかたどりついて、稽古場へ。 今日は、次の場面、「ビデオ制作会社のオフィス」だ。 森川くん、三枝嬢、小林くん、それに二役目のいっこうちゃんが登場する。 阿佐谷まで、自転車で大急ぎで向かう。 昨日に続いて、読み合わせ。 みんないろんな芝居をしてておもしろい。 キャラクターが目の前で立ち上がってくのは、僕をとても元気づけてくれる。 稽古の後、中野にひっこしてきたまっすーの家まで自転車で行ってみることにする。 よしおとまっすーと三人並んで自転車で走ると、高校の演劇部の帰りみたいな気分だ。 まっすーの部屋は、不思議な部屋で、天井が妙に低くて、ちょっと背伸びすると天井に手が届く。僕でさえ。 窓も微妙な高さについてて、部屋に入ると、「これはマジックルームか?」みたいなへんなかんじ。 よしおと三人で、ついてなかった「電灯」をとりつけ、開封してなかった新品のヒーターを取り出す。 どの窓からも景色がとってもいい。 都庁も中野サンプラザも、きれいにさえぎるものなく見えている。 しばらくしてナルミがやってくる。 お隣を気にして、ささやき声でずっとしゃべって、どこに何を置く?なんて話をあれこれする。 部屋を出て、自転車に乗るときも、まだささやいていることに気がついて三人で笑う。もういいんだって。
僕は今日で38歳になりました。 誕生日メール、それにカード、電話をくれたみなさん、どうもありがとうございました。 人生折り返し……なんてことをいいますが、僕は「折り返さない」ことに決めたので、これからもこのまんま、やっていこうと思ってます。「お肌の曲がり角」も曲がらないことに決めてるし。 どうぞよろしくお願いいたしますです。
台本をついに持っていく。 7ページ。ほとんど人物紹介なんだけどね。 今回の「Skip」は、「ひまわり」の続編だ。 あの世界、「男はつらいよ」の寅さんの世界のパロディで始まった物語が、今回もくり広がる。 前回に続いて登場しているのは、ドラァグクィーンのサンドラ(僕)、ベリンダさん(いっこうちゃん)、マルガリータさん(まみー)、それに、おとなりの剛(ごう)ちゃん(よしお)。 その他には、いっこうちゃんが演じる、僕(サンドラ、ドラァグクィーンじゃないときは「健太郎」って名前)の母親、まみーが演じるとなりのおばちゃんも登場する予定だ。 オープニングの場面は、「いつもの」ゲイクラブの楽屋から始まる。 お約束のやりとりに、前作の軽い説明。 女装三人衆によしお、それに早瀬くんとまっすーが登場する。 どうなるんだろうか? わくわくしながら、聞いてみる。 さあ、どんどこ書いていこうっと!
2003年02月20日(木) |
グリング「ヒトガタ」 |
ザ・スズナリでグリングの「ヒトガタ」を見る。 あ、そういえばと思いついて当日券をあてにして出かける。 下北沢について、駅前の大好きな定食屋「松菊」さんで晩ご飯。「かれいの煮付定食」 やっぱりおいしいねえ。 久し振りのスズナリだ。 芝居はとてもおもしろかった。 だから、何なのよ?みたいなお話ではあるんだけど、ちっとも退屈させないで見せてしまうのはすごいと思う。 ひな人形の首(顔?)をつくってる父親と、折り合いが悪い息子。おばあちゃんのお通夜に集まった親戚一同で、この家をこれからどうするか? 父親を息子の家に同居させて、いっそ売ってしまおうかという親戚たちの話が、くり広がる。 自殺した、息子の弟が、見えない存在でずっとこの空間を支配している。 彼がなぜ死んだのか。死んだときに恋人のところに行っていた父を許せないでいる息子、彼の妻は妊娠していると告げるのだが、「こんなに父親のことを憎むようになるなんて」と息子は「父親」になることをためらい、みんなに妊娠の事実を告げられずにいる。 弟がなぜ死んだのかということがはっきりわかる、そのための謎解きの芝居ではない。 息子が父を許す、もとい、自分も親になることを受け入れた後に、ふたりで「乾杯」と酒を飲見始める。その場面で芝居は終わる。 仲直りの説明的な台詞も何もなく、ただ「乾杯」だけ。この語らなさに、僕はやられてしまった。 出演者はみんな、それはいい腕を持っていて、見ているだけでうれしくなってくる。 こんなにさもない話なのに、ただただ楽しい。 「見終わった後に、何も残らないようなコメディがやりたい」と三谷幸喜さんは言っていたが、ある意味、この芝居も「何が残るか?」と言われれば、言葉にできないような気がする。 ただ、とんでもなく楽しい。見終わった後、理由のわからない涙が流れてきてびっくりする。 これは、物語の感動ということではなく、ただ「芝居を見ることの醍醐味」というものなのかもしれない。 以前見た「ハッシュ!」の舞台版「3/3(サンブンノサン)」に続く、2度目のグリング。 物語の筋以上に、その他の何かが感動を生んでる。その何かは何なんだろう? しみじみ考えながら帰ってきました。
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