せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2001年11月30日(金) 「夜曲」初日!

 朝10時に劇場入り。
 僕はその前に、亀戸にある劇団の倉庫に舞台に敷く「地がすり」を取りに行く。
 本当はパンチカーペットを使いたかったのだけれど、タカツからの道具を車で持ってきてもらえることになってしまったので、わざわざ車を調達するのも何なので、手で運べる「地がすり」にした。
 あ、「地がすり」っていうのは、舞台の床に貼る布のことです。
 うちのは、地域区民センターの会議室とかで稽古場発表会をやってたときに、壁に吊ってた大きな黒布、この夏、鍋茶屋での稽古場発表会の時に、床に敷くことにしたやつ。
 どのくらいの重さかよくわからなかったので、とりあえずカートを持っていく。
 亀戸に8時過ぎに着いて、倉庫まで歩く。
 「ひまわり」の道具を置きに来た時は、車だったから、どのくらい駅から歩くのか心配だったんだけど、さくっと到着。
 布と延長コードを袋につめて、カートにくくりつける。
 総武線の各駅停車でのんびり新宿まで行き、9時半過ぎに鍋茶屋到着。
 上村くんの劇団の磯貝くんと山崎くんの友だちの川野くんがいる。
 役者2人をのぞく全員が揃ったところで、劇場の中へ入る。
 まずは、舞台づくり。
 地がすりを貼って、照明をつくっていく。
 タカツからトラックが来て、道具を運び入れる。
 ソファが思ってたより大きくて、ドアから入らないんじゃないかと一瞬あせる。
 が、斜めにしてなんとか通過。
 舞台の上手下手に置く、エレクターを組み立てようと思ったら、棚板を固定するためのストッパーがないことが発覚。
 タカツの中村さんに連絡したところ、「あ、忘れてた」とのこと。
 午後一番で届けてもらうことになる。
 鍋茶屋には、大きなミラーボールがあるのだけれど、こいつが、照明の仕込みのすごい邪魔になる。
 取り外してしまおうにも、難しそうで、結局、うまく「逃げる」ことになった。
 磯貝くんが、とっても器用にシーリングを仕込んでくれた。
 トラブルがもう一つ。
 上手下手両方のエレクターに置く、ボールランプを2つ借りてきたのだけれど、そのうちの1個が「メロディランプ」なことが発覚。
 点灯しても薄暗かったり、色とりどりだったりしたうえに、さわって点けると「音が鳴る」。
 ドレミファソラシドのかわいい音が。
 分解して、色つきの電球を外してみたりしたんだけど、結局、新しいのを「買ってくる」ことに。
 歌舞伎町のドンキホーテで2800円也。
 ただし、他のランプと一緒の電源につないでも、一緒には点かない。
 そこで、丁田くんに、登場して、部屋の灯りが全部点いた後、「何でこいつだけ点かないんだ!」という風な芝居で点けてもらうことにした。

 2時頃にタカツのトラックが「また」やってきて、今度こそ、エレクターの組み立て。
 劇場入りした丁田くん、桜澤さん、それこそ総掛かりで組み立てる。
 上手下手の2つの棚の間隔を同じにするのがけっこう大変。
 こいつができあがったので、舞台上のSS(ステージスポット)の位置を合わせて、仕込みは終了。
 卓がないので、ほんとに不自由な照明、音響の段取りを上村くんに練習してもらって、テクリハ、そして、ゲネプロ。
 衣裳の鳥居さん、撮影の中川さんもいろんな意見を言ってくれて、みんなでわいわい作っていく。
 当たり前なんだけど、このみんなで作ってるかんじがとっても楽しい。
 そして、初日、開演。
 お客様も用意した客席いっぱいに入って、なかなかいいかんじ。
 桜澤さんのお客様は、年輩の方がいっぱい。
 作劇舎の川和さんも来てくれた。
 芝居の出来も、まずまずといったところ。
 終演後、スタッフ、キャストで乾杯。
 いつまでも飲んでしまいそうなのを、一足先に失礼する。
 明日、僕は、「VOICE」の舞監をしなくてはいけないので、鍋茶屋には顔を出せない。
 みんなに「よろしくね」と話して、劇場を後にする。
 今日の舞台を見に来てくれたオカダさんと待ちあわせのタックスノットへ。
 金曜日だけミセコのマサルくん、それにやたらめったら濃ゆい顔ぶれとわいわいしゃべる中、オカダさんと今日の芝居の話を「みっちり」する。
 明日は朝が早いので、終電ちょい前できっちり帰る。


2001年11月29日(木) 「夜曲」最後の稽古

 「夜曲」最後の稽古。
 今日は、上村くんと優希ちゃんが都合でいない。
 山崎くんも制作のあれこれで最初の顔を出して、慌ただしく出ていく。
 衣裳の鳥井さんが、桜澤さんの衣裳を「作って」きてくれる。
 ちょうどいい布がなくって、古着のパンツをばらしてつくってくれたそうだ。
 動きやすそうで、とってもいいかんじ。
 今日は、まず通してもらう。
 昨日のダメ出しを軽く確認してね。
 と、なかなかいいかんじに通った。
 ダメ出しの後、今度は、全体のピークがどこかとか、そういうことを話してみる。
 短い芝居だけれど、だからこそ、山があって、谷があって……ということをちゃんと考えないとね。
 むちゃくちゃいいテンポで運んでいるようでも、終わってみれば、そんなに時間は変わらない。
 やりとりがはずんでる分だけ、余計、楽しい。
 二度目の通しをしてみる。
 一番の山場で、桜澤さんが「もう一段あがる」ところを、逆に「下げて」しまう。
 表現として、それはアリなんだけど、場面としては、もったいない。
 どんどん上がっていって、「それでどうなるのか?」っていうのが、おもしろいんだから。
 「怖がらなくていいから、行っちゃって」と話す。
 二度目の通しの途中で、山崎くんが、森下さんを連れて戻ってくる。
 森下さんは、本番が仕事で見れないそう。
 ちょっとでも見てもらえてうれしい。
 あたふたと片づけて今日はおしまい。
 明日は、朝から小屋入りだ。


2001年11月28日(水) 「ビューティフル・サンデイ」 「夜曲」稽古

 朝方まで、ビデオを見てしまう。
 いったんやめた「グリークス」第一部を「全部」と、こないだの「TOGETHER」でシナノさんに貸してもらったサードステージの「ビューティフル・サンデイ」。
 「グリークス」は「アキレウス」と「トロイアの女」を。
 「アキレウス」は田辺誠一がなかなかがんばってる。だけども、すごかったのは、「トロイアの女」麻実れい!!
 自分の子供が殺されるってことがわかってからの苦悩と絶望の深さ。
 「さあ、連れて行きなさい! 私の子供は死にました」と言って、子供を渡してしまってからの、何かが滅んでしまったようなかんじ。それは、「悲」とか「哀」とかじゃなくって、やっぱり「滅」ってかんじだった。
 ビデオで見て、もうぼろぼろになってしまう。
 すっかり目が覚めてしまったので、「ビューティフル・サンデイ」に突入。
 この芝居は、以前、「せりふの時代」に掲載された戯曲を読んで、むちゃくちゃ感動して、去年の今頃、稽古したもの。
 ていうか、僕が札幌に行ってた間、稽古しといてねって言って残していった「宿題」の台本。
 「すっげえ!」と思った時には、もう公演は終わってて、いつか見たいと思ってた念願の舞台。
 おおよそのお話は……、ゲイのカップルが住んでるマンションの一室にその部屋に以前住んでた女が転がり込んできた日曜日、一日の物語。
 って、これは全然「正確な」紹介じゃないんだけど、くわしく書くと「ネタバレ」になるので、このくらいで。
 作者は中谷まゆみ。元もと第三舞台の演出部にいた人で、今はシナリオを書いてる。テレビの「ぽっかぽか」とかね。
 この人の書く本が、むちゃくちゃいいんだ!
 とっても「今」で、「ここまで拾うか?」っていうくらい、網羅してて、「あんたハッテン場行ったことあるんじゃない?」ってくらい、生っぽくって、それでいて、全然「勉強しました感」がない。
 これは、日本のゲイを扱った芝居の中ではダントツにすばらしいと思う。
 出演は、小須田康人と堺雅人と長野里美。
 この三人もとってもいいんだ。
 いやあ、よくできてる。
 まあ、「深く」はないんだけどね。とっても「ウェルメイド」なことは確か。
 ほんとたくさんの人に観てもらいたいわ。
 ていうか、負けてられない。
 真剣に、そう思ったんでした。

 夕方から「夜曲」の稽古。
 昨日やったラストまでの場面をさらってから、通してみる。
 と、なんだかちぐはぐな芝居になってしまった。
 こういう通しもありだと思って、とにかく最後までやってもらう。
 終わってダメ出し。
 セリフとセリフの受け渡しの間に、余計な「ひと間」がある。
 それは、「何かしてやろう」とする間で、それがあるせいで、見ている僕たちには、実際に何かが起こる前に、何が起こるのかがわかってしまう。
 聞いたセリフの反応がすぐに起こるのを、一度、ためてしまうから、やりとりがはずんでいかない。
 積み重なっていかないで、ただただ「並んで」いるだけで、初めと終わりで何の変化もない。
 こんなんでおもしろいわけがない。
 ちゃんとやりとりをするように、説明しようとしないこと、それから、相手がやりやすいよういやることが、結局自分がやりやすくなることなんだと、結局、いつもの稽古で話したことを、また話して、もう一度通してもらう。
 二回目は一回目よりは良かったんだけど、どうもうまくいかない。
 桜澤さんは、「回転」させようとするんだけど、意識だけが回って、カラダがついていかない。
 イライラしてるのがとってもよくわかる。
 ようやく、後半、いつものペース、小返しで丁寧にやってる芝居に近くなる。
 本当は、もう一度、通すつもりだったんだけど(短い芝居だからね)、さすがに疲れたようなので、通し稽古はこれでおしまいにする。
 中盤のシーンを小返しする。
 何度かやってうちに、いつもの調子に「ふっと」戻った。
 丁寧にというわけじゃない。たっぷりというんでもない。
 すごい勢いの中で、複雑なニュアンスがどんどん盛り込まれていく。
 おもしろい芝居に、立ち戻った。
 すごく力を入れて、複雑なことをやってるわけじゃない。
 ふっと、軽い気持ちでいて、だからこそ、のびのびと軽々と、気持ちやカラダが動いていく。
 しばらく、いろいろとやってもらって、自信を取り戻してもらった。
 できるときと、できないときの違いが、とってもよくわかる、今日の稽古だった。
 すごく微妙なことのような、わかりすぎるくらいはっきりしてることのようなそんな、芝居の「命」のようなもの。
 小返しではできてることが、通しではできなくなるのは、「全体」を相手にしようとするからだ。「全体」は結局、「一瞬」の積み重ねでしかない。一瞬一瞬を、正直に生きて、積み重ねていくことでしか、「全体」は立ち上がってこないんだよと話す。
 そんなまとめをして今日はおしまい。
 明日は最後の稽古。
 明後日は初日だ。
 帰り道、新井薬師駅前のラーメン屋「一徹」で晩ご飯。
 こってり系でボリューム満点。とってもおいしかった。
 帰りは、中野の駅まで、上村くんと山崎くんの道案内(?)で歩く。
 抜け道をずっと辿る、ほとんど猫の通り道。
 カーナビで「最短距離」を選んだみたいなかんじ。
 部屋に戻って、「グリークス 第二部 殺人」を結局見てしまう。
 全三部の中でも、ここが一番好きだ。見るのはもう何度目だろう。
 「ヘカベ」のラスト、復讐を遂げた後、気が狂い、犬のようにうなるヘカベ=渡辺美佐子がいいなあ。
 第一部では、「小者」っぽかったアガメムノン=平幹二郎が、ここではとっても大きい人物になってる。
 今日はここまで、続きは明日。


2001年11月27日(火) 鍋茶屋下見 「夜曲」稽古

 歌舞伎町の鍋茶屋コンフォール劇場を下見に行く。
 僕は7月に稽古場発表会で使ってるし、山崎くんは見に来てくれたんだけど、二人の役者と優希ちゃんは今日が初めて。
 みんな「入口の雰囲気と全然違う」と驚いている。「キレイじゃない!!」って。
 そうだよね。まさか、こんなところにこんなモノがあるなんて誰も思わない。超穴場。
 この間の早朝の火事があったビルの並びです。
 与三郎ビルという名のとおり、小さな舞台には引き幕がちゃんとついてて、編み笠(違うな、菅笠だと思う)の大きな絵と、「鍋茶屋」というロゴ(?」が入ってる。
 ちなみに、今回は使いません。
 声の通りはどんなかとか、しばらくいろいろやってみてもらって、撤収。
 西武線に乗って、今日の稽古場野方まで。
 揃って腹ぺこだったので、松屋でご飯。
 小学生のたぶん一年生くらいの男の子が、一人で牛丼を食べてた。
 すっごくかわいくて、なんだかかわいそうで、ずっと見てしまったんだけど、それも失礼だなと思って、やめる。
 一人でご飯が牛丼って、どうなんだろう?
 僕らの頃は、せいぜいが「もんじゃ」だったなあ。しかも、友だちと一緒で。
 さて、稽古。
 昨日の通しがいい出来だったので、今日は、ラストをていねいに作り込むことにする。
 その前に、久し振りのゲームをいろいろと。
 しりとりをやって、それから、こないだフライングステージで見た、自分の名前を3回呼ばれてるうちに自分も名乗らないとアウト!というゲームをやる。
 フライングステージの真似(?)をして、鳥の名前でいってみる。
 わし、すずめ、かけす、つばめ、あひる。
 単純に「三回言うと、口が回らない」ということに気付く(!)。
 他愛のない遊びなんだけど、けっこう盛り上がって楽しかった。
 で、稽古に。
 昨日の通しで勢いで出来てしまったところを、やりとりの意味の確認をしながら、ていねいにつくっていく。
 本当は、最後に一度通したかったんだけど、今日はなしにして、じっくり。
 最後に、持ってきた曲を当ててみる。
 いいかんじだったので、これでいくことにする。
 帰りは、新宿に出て、ツタヤで効果音のCDを借りてくる。
 昼間録画したBSの「グリークス」第一部を少し見る。
 オープニングの山川静夫と阿刀田高の話がありがたいような邪魔なような……
 宮本裕子のイピゲネイアがすごい。母親役の白石加代子に全然負けてない。
 押入から冬物第二弾を出してみる。
 もう真冬モノのコートがいる。部屋が狭くなるなあ。
 夜中、3CHの料理番組でお菓子を作ってる布川敏和が左耳にピアスをしてるのを発見!
 なんかいいかんじ。


2001年11月26日(月) 道具選び 「夜曲」稽古

 山崎くんと2時半に京王線国領で待ちあわせ。
 いつも舞台のための道具を借りている「タカツ」に行く。
 担当の中村さんは、ひさしぶりなのに、僕のことを覚えていてくれて、うれしい。
 ほんとにたくさんの人の相手をするんだろうに、すごい人だと改めて思う。
 ここに来るのは、ちょうど2年ぶり。
 「美女と野獣」以来だ。
 あれから、フライングステージは舞台上で小道具を何も使ってない。椅子以外はね。
 ソファにテーブルに冷蔵庫とリストアップしたものを、さくさく選んでいく。
 大きな倉庫に、たくさんの道具。
 現金以外、ないものはない!っていうくらいのモノ、モノ、モノ!
 とってもいいかんじのソファが見つかってほっとする。
 あと、冷蔵庫の庫内灯が点いたのもうれしかった。

 帰りは新宿に寄って、やっぱり「夜曲」関係の買い物をオカダヤで。
 オカダヤは、どんどん「ゲイフレンドリー」になってる気がするな。
 訂正。「ドラァグさんフレンドリー」。
 メーク用品はむちゃくちゃ充実してきたし、ウィッグの種類も増えてる。
 またきっと来るんだろうな、gaku-GAY-kaiの準備で。

 一度、高円寺に戻って、沼袋の稽古場まで自転車で。
 またもや迷いまくってしまって、情けない。

 今日の稽古は初めてギャラリーがいる。
 衣裳の鳥居さんと撮影の中川さんだ。
 鳥居さんとははじめまして。中川さんとはほんとにおひさしぶりだ。
 昨日、桜澤さんのうちで「抑えて」つくった場面を、思い切り作り直して、最後まで作り上げた。
 短い芝居なんだけど、芝居の最後、物語の最後っていうのは、やっぱりとっても気持ちのいいものだ。
 だけど、あまりいい気にならないように(僕が)、ストイックに演出する。
 9時から初めて通してみる。
 とってもいいかんじだ。
 さっき作ったばかりのラストは、やっぱりぎこちないんだけど、それでも出来上がっている。
 場面場面の稽古でやったことを「再現」しようとするんじゃなくて、二人の役者さんは、今、この時間を生きて、今まで見たことのないような、素敵な時間を作り出してくれた。
 これまで、いい稽古を積み上げてきてくれたんだということがとってもよくわかった。
 その思いはみんな同じだったみたいだ。
 とってもいい顔をしてる。
 桜澤さんも丁田くんも、山崎くんも上村くんも優希ちゃんも、それから鳥居さんも中川さんも。
 初日までの稽古でもっともっとよくしていこうと思う。


2001年11月25日(日) 劇場下見 デザインフェスタ TOGETHER 「夜曲」稽古

 朝10時のアポで、劇場の下見に行く。
 来年6月の「陽気な幽霊」の再演のための劇場。
 そこは、青山にある「東京ウィメンズプラザ」のホールだ。
 「男女平等の推進に関わる……」っていうのがコンセプトなんだけど、電話で相談したら「だいじょうぶ使える」ということになった。
 以前、パレード関係のレズビアンの集会で視聴覚室には来たことがあるんだけど、ホールは初めて。
 小屋付きのスタッフさんと話しながら、舞台を見せてもらう。
 完全に円形の客席の一隅に舞台がある。
 幕も袖もなにもない。
 あるのは、ただの壁だけ(ウソ。「大理石」の壁)。
 1階席は遠くなるに連れてだんだん高くなってるけど、全部床に収納して、フラットにすることもできる。
 2階席は、常設キャパ244のホールにしては「大劇場」なかんじ。
 壁面が真っ白な大理石(?)づくりなのがちょっと心配なんだけど、やってしまおうと決心した。
 これまで「陽気な幽霊」は黒い舞台で上演してきたんだけど、今度は「白い舞台」でやってみようと思う。
 2階席につながるギャラリーは、そのまんま舞台の上にもめぐっていて、ここも演技エリアにすることが可能かもしれない。むちゃくちゃ走り回らないといけないけどね。
 もともと演劇用に作られたホールじゃないから照明だけがちょっと心配。でも、機材表を見せてもらって、なんとかなりそうだと安心する。
 7月の「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」はすぐそこのスパイラルホールだ。
 6月にフライングステージがここで芝居を上演するのはなかなかおもしろいんじゃないかな?
 「どんなふうに使いたいか」と小屋付きさんに話したら、「これまで、そういうふうな演劇用の使い方をされたことはないけど、新しい可能性が広がるかもしれない」と言ってもらう。
 かなり元気になってホールを後にした。

 表参道から半蔵門線、有楽町線を乗り継いで新木場まで。そこからりんかい線で東京国際展示場まで。
 フライングステージのフライヤーのデザインをしている松浦くんが参加している「デザインフェスト」に顔を出す。
 会場のビッグサイトは初めてだ。
 デザインフェスタも初めて。
 たくさんの「お店」が並ぶ中、パンフレットを元に松浦くんのブースを発見。
 まず一言「早いね!」と言われる(笑)。かもしれないね、僕にしては。午前中だし。
 となりのブースの「レインボーアート」の富平くんと石井くんと、おしゃべりする。
 今度の「gaku-GAY-kai」のフライヤーの男子がさっそく作品になってる。
 石井くんから「ひまわり」のキャラはとっても売れ行きがいいと聞いて、何だかうれしい。
 あわただしく、さよならをして、会場を後にする。
 と、その前に、どこからかスパイシーな匂いがするので、そっちに行ってみたらば、フードコーナーだった。
 アフリカンなおネエさんが売り子をしていた「ガーナレストラン」で「ビーンズシチューライイス」を食べる。
 かなり美味。
 軽く腹ごしらえをして、帰り道は「ゆりかもめ」!!
 実は、初「ゆりかもめ」なんでした。
 感想は、「まるでSF!」ってかんじ。
 窓から見る景色は、不思議な建物でいっぱいで、遠近感が全然わからない。
 「カンブリア紀」にいっぱい生まれちゃった変な生き物たち(アノマロカリスとかオパビニアとかっていう)の「建物版」ってかんじ。
 終点の新橋に着いたら、逆の電車はもう満員ですごかった。
 僕が乗ったのはがらがらでとっても快適だったんだけどね。
 早く行って正解だったみたい。

 で、今度は、井の頭線で高井戸まで行って「TOGETHER」のギャザリング。
 いつもの(ほとんど)メンバーと楽しくおしゃべり。
 こないだのミーティングの時とおんなじで、なぜか「年齢」の話がいっぱい出る。
 「もうじき30歳」なメンバーが多くて、いいかんじ(!)。
 一緒に年取ってるかんじが、うれしい。

 5時に会場を後にして、高井戸の駅前からバスで、荻窪まで行き、バスを乗り継いで下井草まで。
 今日の「夜曲」の稽古は桜澤さんのおうちでだ。
 ところが、環8が混んでるみたいで、5分間隔のバスが15分も来ない!!
 ようやく来たのが超混出てぐったり。荻窪のバスターミナルで「下井草駅」行きのバスがみつからなくて、ぐったり×2。
 下井草駅前6時の約束にやや(?)遅れて、ようやく合流成功。
 桜澤さんのうちでの稽古は、最後の場面をしっとりと。
 美猫(雑種♂去勢済)の「ぴゅー」に「モンプチ」をおみやげに。
 ぴゅーのすごく間のいい合いの手の鳴き声を交えながら、9時半まで稽古。
 やっぱり大声が出せないので、静かなやりとりをいろいろやってみてもらう。
 最後に宿題をいくつか出して、今日はここまで。
 あとは、桜澤さんの手料理で、ご飯。
 寄せ鍋に豚汁、れんこんのきんぴら。どれもとってもおいしかった。
 僕と桜澤さんの養成所時代の卒業公演のパンフレットが出てきて、みんなで見てしまう。
 もう全然違う。当たり前だよね。15年だもの。
 帰りは、下井草から終電の新宿行きに乗って、JRで高円寺まで。
 なんだか、今日は「旅行」の日だったなあ。
 ていうか、いろんな乗り物に乗ったってかんじ。


2001年11月24日(土) 大野一雄 「夜曲」稽古 FS稽古 葛飾柴又

 昼前、ぼんやり見ていたテレビで、舞踏の大野一雄さんのことをやっていた。
 NHKの「関東ネットワーク」とかそんな番組。
 去年、公演中に足を怪我して、ずっとリハビリを続けてたんだけど、老人性のアルツハイマーになってしまって、それでもまだ、踊ろうとしている95歳の現役ダンサー。
 すごいものを見てしまった。
 カラダが動くとかそういうことじゃなくて、彼の踊りが何かをちゃんと伝えてくれることにびっくりする。
 日本舞踊で、すっごい高齢の踊り手さんが見せるどこか達観してしまった「枯れた芸」とは違う、即興で動いているからこそ、その時々でいっぱいいっぱいのそれがすべてである表現っていうのが、なんともいえないものを生み出している。
 「何はともあれ、カラダを動かすことは楽しい。それは間違いないことです」っていう大野さんのコメントにも重みがあったなあ。

 夕方から「夜曲」の稽古。
 鷺宮の稽古場。
 僕と桜澤さんは、養成所時代の同級生なんだけど、そのときに一緒に録った写真を持っていく。
 今から15年前。
 最後の演習の課題だったテネシー・ウィリアムズの「ロング・グッドバイ」。その中の兄妹ジョーとマイラの場面をやるにあたっての小道具にした写真だ。
 それは家族の肖像で、父と母と兄妹が写ってる。
 僕はジョーをやっていて、桜澤さんは、お母さんだ。
 芝居には全然関係ないんだけど(登場もしない)、僕が考えた演出(!)プランでは、この「家族の写真」っていうのがとっても大事だったんだ。
 で、隣のクラスの桜澤さんに「お願い、お母さんやって」とお願いした。
 父親は、今も劇団にいる石住さんだ。
 写真を見た、丁田くんと山崎くんは、僕が「やせてること」に驚いてた。
 そうだと思う。僕もびっくりだよ。
 桜澤さんは、今の方が若々しいくらいだ。
 こないだ、二人で、「あの頃ってほんとに生意気だったよね」と話した。
 「自分たちくらいうまい役者はいないって思ってた」って。
 二十歳そこそこなのにね……。
 いつか、こんなふうに一緒に芝居をやる日が来るなんて思ってなかったよ。
 十五年も経ってさ。

 今日の稽古は、昨日の続き。
 昨日、とってもうまくいかなかったところを、もう一度さらってみる。
 エチュードのように、つくっていく。
 僕がよくやる「違くやって」というダメ出しをしてみる。
 と、急にのびのびとしてきた。
 で、じゃあ、こうしようか?と、あれこれ、おもしろがって、アイデアを言い合っているうちに、出来てしまった。
 昨日、あんなに苦労したのに、あららってかんじ。
 途中からやってきた上村くんも驚いてた。
 いいかんじなので、そのまま先に進む。
 さくさくさくと進んで、ラスト近くの静かな場面の直前まで行く。
 僕は、フライングステージの稽古のため7時に稽古場を出なくてはいけない。
 ぎりぎりの時間に、それまで軽くさらっただけの場面に、「これだけはやって」という指示を出して、少し通してもらう。
 と、これも出来てしまった。
 びっくりだ。そして、また感動してしまう。
 タイトな稽古スケジュールの中で、今日の稽古では、何としてでも、ここまでは作り上げておきたいと思ってた。
 でも、昨日の稽古で、思わぬ壁にぶつかって、ちょっとムリかなと思ってたところだった。
 が、きっちりできてしまった。たどりついた。これで最後まで行ける。目途がたった。
 もちろんまだ荒いんだけど、方向性は間違ってない。
 後半の稽古を上村くんにお願いして、稽古場を後にする。

 三軒茶屋の稽古場へ。
 やっぱり一時間ちょうどかかってしまう。
 みんなで、ゲームをしているところだった。
 少人数で緻密に作っていく稽古場の後で、のびのびと笑う大人数の稽古場はとっても新鮮だ。くったくなく笑う声が外にまで聞こえてた。
 なんてかわいいんだろうと思う。もちろん「夜曲」組だってみんなかわいいんだけど。
 今日は、gaku-GAY-kaiの稽古に入る前の最後の稽古なので、「エレクトラ」の発表をしてもらう約束だ。
 2人組になって、ずっとやってきた53場を見せてもらう。
 人数が半端だったら、僕も何かやろうと思ってたんだけど、ジャスト偶数だったので、僕は完全に見てるだけだ。
 演出だけをずっとしていると、何かやりたくてしかたなくなる。
 でも、その欲求不満をきっちり積み上げて、別のものにしていかないとダメなんだよね。
 今日は、みんなとってもよかった。
 「夜曲」の稽古場で僕がよく言う「相手のセリフをちゃんと聞いて、それからちゃんと相手に話す」ということを、うちの連中はちゃんとやっているんだなと思う。
 セリフは全然うまくないけど、やりとりだけは、なんとかちゃんと成り立っている。
 同じ目で、二つの違う現場を見るのはおもしろかった。
 帰り道は、フッチーと細川くんにダメ出しをしながら。
 それも「聞かれたから答える」かんじで。
 ノグは、祐天寺の「みやぢ」の15周年のパーティへ。
 みやぢさんは、フライングステージのお客さんで、僕の昔からの知り合いだ。
 是非伺いますと言っていたんだけど、ノグによろしく伝えてねとお願いする。

 帰ってから、録画しておいた「アド街ック天国」の「葛飾柴又」を見る。
 寅さんがいっぱい。
 懐かしい店がいっぱい出てくる。
 コンセプトはやっぱり「おかえりなさい」だ。
 なんていい言葉なんだろうと改めて思った。


2001年11月23日(金) 「夜曲」稽古

 夕方から「夜曲」稽古。
 上高田の稽古場で昨日の続き。
 芝居の中盤の一番「微妙な」場面をつくっていく。
 が、なかなかやりとりが成り立たない。
 最後に、エチュードをやってもらって、今日は終わる。
 丁田くんも桜澤さんも疲れてるみたいだ。
 いくら短い芝居だとは言え、二人芝居っていうのは、ほんと大変だと思う。
 休んでる時間ないしね。
 僕も経験がある。
 一度、慣れてしまうと、後はラクに息ができるようになるんだけど、そこに行くまでが一番ツライ。
 稽古の間には、どうしても上がっていけない日が一日はあるもんだ。
 でも、そういう日がないと、次には進んでいけない。
 だから、心配しないで、明日頑張ろうと話す。

 帰り、今日も自転車ではないので、新井薬師から西武線で新宿へ。
 丁田くんと電車の中であれこれ話す。
 丁田くんとは、かれこれ10年くらいの付き合いになるんだけど、二人で話すのは、はじめてかもしれないな。

 丁田くんは高田馬場で降りていって、ぼくは新宿へ。
 昨日、ちゃんと挨拶できなかったので、「アイランド」へ向かう。
 と、郡司くんと水島くんとばったり。
 二人で僕の噂をしていたそう。
 水島くんは、僕の高校の同級生だ。
 実家もとっても近い。小中は学区域が違ったんだけどね。
 何年か前に再会してしまってからは、ちょくちょく会うようになった。
 幼なじみってわけじゃないけど、限りなくそれに近いかんじ。
 フライングステージの芝居もいつも見に来てくれてる。
 しばらくあれこれしゃべって、僕は、「タックスノット」へ。
 ほんとは明日と思ってたんだけど、出てきてしまったので、ついでに……ってかんじ。
 セツオとコタくんと会う。
 ついしゃべりこんでしまい、コタくんと「ココロカフェ」に。
 その後、「ラピス」でひろしさんとおしゃべり。
 途中、福島から来たというお客さんが「嵐のように」やってきて、しゃべるだけしゃべって、あっという間に帰っていった。何だか、すごかったなあ。


2001年11月22日(木) ネットラジオ お引っ越し 「夜曲」稽古

 「lavi soft」でこの間、録りきれなかったHP用のコメントとネットラジオの録音をする。
 事務所に行くと、一緒にラジオのトークをするノグに、早瀬くんもいる。
 コメントは、ノグのを参考に「ややセクシー系(?)」をねらった。
 さくっとテスト本番で録ってもらって、OKが出たので、うだうだ言わずに、これでいいことにしてもらう。何度もやってると、ツボにはまってしまいそうだったので。
 それから、ネットラジオ。
 ノグと、自己紹介やら、何やらいろいろ話す。
 10分くらいで、自己紹介と声の仕事について話した後、趣味やら何やらだらだら話していって、そのまま録ってしまおうということになる。
 司会の「番長」さんに仕切られながら、結局、45分ほどしゃべってしまう。
 あららってかんじ。
 初めは、「あまり濃ゆいキャラを出さない」つもりだったんだけど、ノグのトンチキぶりにつっこみをいれてるうちに、何もかもがうやむやになってしまい、まるで、「行きつけの店でしゃべってるみたい」なことに。
 でも、楽しかった。
 ノグはほんとにトンチキで、聞いていた、早瀬くんと「lavi soft」の藤さんは、笑いをこらえるのが大変そうだった。
 だって、車のレースに出場してるとき、車が転倒して一回転したっていう話をしてて、「その時、これまでのいろいろなことが『走馬燈』のように見えた」なんて言うから、「どんな走馬燈?」って聞いたら、「怒られたらどうしよう?とか」だって。
 それは「走馬燈」じゃないでしょ!! まったくもう。
 延々しゃべって、後は編集をお願いしますねと言って、さくっと上がる。
 ノグとしゃべるのは実はかなり久し振りだ。
 前は、公演の楽日の翌日の返しで一緒に車に乗ってたんだけど、この頃はノグじゃなくて、早瀬くんと一緒だ。
 「へえ、そうなんだ」ってなこともいっぱい聞けて、何だかうれしかった。
 ネットラジオの公開は、12月の20日過ぎだそう。
 またお知らせいたしますね。

 その後、僕は、新宿へ移動して、「メゾフォルテ」にある、今年のパレードの荷物を、「アイランド」の上の部屋に移動する作業。
 メゾの前で光生さんと待ち合わせて、光生さんダーリンのアキラさんと三人で。
 メゾからおろすのはラクだったんだけど、アイランドに上げるのはけっこう大変だった。
 今年のパレードは、実行委員長だった光生さんのお店「メゾフォルテ」が実行委員会の拠点だった。実行委員会もずっとここで開催されてたし、関連の荷物もみんなここに置いてあった。
 来年は、アイランドの上の部屋を貸してもらうことにした。
 今年の夏、稽古場発表会の稽古で時々貸してもらってたんだけど、新宿の真ん中のとっても便利なところだ。
 広さもちょうどいいし。
 「アイランド」シマさんとラクちゃんに、何かで使わない?と言ってもらって、すっかり甘えてしまうことになった。
 お店の開店前に、とりあえず全部上に上げて、今日は、あたふたと失礼する。

 それから、「夜曲」の稽古に野方に行く。
 今日の稽古は久し振り。
 頭からさらっていって、ていねいに作り込んでいく作業をする。
 最後に、ダメ出しをして、もう一度やってもらったら、丁田くんが見事に変わっていて、見ていたみんなで感動してしまう。
 理屈では同情できない男なんだけど、どこかかわいそうに見えてくる。
 これからどうなるか楽しみだ。
 野方は、高円寺にとっても近いので、絶対に自転車が便利なんだけど、今日は徒歩……と思いきや、あんまりくたくただったので、タクシーに乗ることにする。
 阿佐谷に住んでる山崎くんと二人で高円寺まで。
 またもやダウン。
 へとへとだ。


2001年11月21日(水) ダウン

 一日ダウンしてしまう。
 今週の頭からOLバイトが忙しかったせいか、ひたすら眠ってしまう。
 微熱もあって、へろへろだ。
 夕方からのフライングステージの稽古を休むことにする。
 「エレクトラ」の自習をしておいてちょうだいと連絡をする。
 その後、また眠る。
 冬眠のように。


2001年11月20日(火) TPS「遊園地、遊園地」

 TPS(シアター・プロジェクト・さっぽろ)の「遊園地、遊園地」をシアタートラムに見に行く。
 去年、「ゴッホからの最後の手紙」で一緒だった、山野久治さん、宮田圭子さん、それにいろいろ裏の手伝いをしてもらった、木村洋次くん(キム)が出ている。
 作・演出は、札幌のHAPPという劇団を主宰している北川徹さん。
 札幌で稽古している間、よく聞く人と劇団だったので、かなりわくわく。
 開演前にロビーで斎藤歩さんと会う。
 久し振りだ。
 今、いろいろな映画に出たり、テレビに出たりと忙しいそう。
 軽く挨拶をして、客席へ。
 「ゴッホ」でお世話になった高田久男さんの装置の大きな階段が圧倒的な迫力で建て込んである。
 席について、しばらくすると、隣に、やっぱり「ゴッホ」で一緒だった堂下さんが。
 彼ともとっても久し振りだ。
 おしゃべりしているうちに開演。
 お話は、つぶれてしまった遊園地の跡地(埋められてしまっているから)に集まってくる様々な人達の物語。
 遊園地の技師と彼の先輩。その妹である口をきかない女。
 デートしているような若い男女。
 そして、ここに住み着いているらしい、不思議な風体の三人の男女。
 芝居づくりのためのエチュードでよくやるごっこ遊びがずっと繰り広げられる。
 北川さんは、海外でパントマイムの勉強をしていたそうで、動きをとてもていねいに作っている。
 今回のキャストは、彼の劇団のメンバーは一人だけ、他は札幌の役者たちの中から「演劇が好き」そうな人を選んだとのこと。
 たしかに、みんな楽しそうにやってる。
 でも、だから何?という気もしてくる。
 一番芝居をしてたのは、高田さんの装置かもしれない。
 終演後、ポスト・パフォーマンス・トークがある。
 松本修さん、斎藤歩さん、北川徹さんが観客と語る30分。
 初日だけあって、濃ゆい客席。
 流山児さんが来ていて、イカすコメントをはいていた。あえて憎まれ口だって言っていく、芝居に対する体温の高さにちょっと感動する。
 その後、ロビーで初日の乾杯のご相伴。
 宮田圭子ちゃんや、スタッフの黒丸さん、舞監の熊倉さん、カメラマンの高橋さんたちと、あれこれ、おしゃべり。
 山野さんは、お客さんと飲みに出てってしまったらしく会えなくて残念。
 去年の今頃は、パブリックで「ゴッホ」をやってたんだなと感慨深い。


2001年11月17日(土) 「夜曲」稽古

 今日も自転車で稽古場へ。
 鷺宮まで、約30分。
 このあいだ初台まで行ってしまってから、ずいぶんとラクにあちこち行ってしまえるようになった。
 中杉通りというのは、中野と杉並をつないでるからそういう名前なんだと、はじめて気付く。今更ってかんじだけども。
 稽古は、昨日の続きをさくさくと。
 オープニングと違って、ちゃんとしたやりとりが続くので、どんどん出来ていく。
 テニスやバレーボールの芝居がおもしろいように、二人の役者のやりとり自体がおもしろい、そんな芝居にしてほしいと話す。
 これは、こないだの「コペンハーゲン」を見て、考えるようになったことだ。
 桜澤さんには、今日もたくさん動いてもらう。
 昨日の稽古では、頭ではわかってるんだけど出来なくて、ずいぶん悩んでたみたいだけど、今日はしっかりしたもん。
 セリフが先にあるんじゃなくて、まずカラダがあって、その後で言葉がついてくるような芝居をしてほしいとお願いする。
 これはなかなか難しいことだ。
 自分にはできないことをやってもらう。
 そして、それがどんどんできてくるのを見ているのは、とっても嬉しく、そして感動的だ。
 今日もたくさん感動させてもらった。
 帰り道、上村くんと二人で阿佐谷の駅まで、自転車で一緒に帰る。
 こんな風に自転車で連れ立って(?)走るのは、高校の時以来だと思う。
 僕の折り畳み自転車はやっぱりスピードの点では、かなりトロいもんだと気が付く。
 そりゃそうだよね。
 エレベーターに人が乗ってしまったので、今日は、畳んだ自転車を階段で部屋まで上げる。
 前ほど、重くない気がするのは、重さに慣れたからだと思う。
 決して、鍛わったわけじゃない(たぶん)。
 体重もほとんど変わってないし。
 ただ、指輪がずいぶんゆるくなった。
 くるくる回るようになって、時々邪魔な気がするように。
 指から痩せるっていうのも、どうなんだろうか……?


2001年11月16日(金) MA 「夜曲」稽古

 朝から「ファッションチャンネルニュース」のMA@乃木坂。
 久し振りにお世話になるスタジオは内装がすっかりかわってて、とっても綺麗になってた。 
 そのかわりに、塗装の溶剤の臭いがぷんぷんして、目がしぱしぱする。
 「2002春夏ミラノコレクションレポート」の後半2本を、中出順子さんの解説でおしゃべり。
 「グッチ」のトム・フォードが、きりっとしたいい男になっててびっくり。
 彼はNYのテロを間近に見てたそうで、事件の後、今回のコレクションの構成をもう一度やりなおしたのだそう。
 いつものパワフルでセクシーなデザインが影をひそめて、今回はリラックスしたゆとりのあるものが多い。
 同じことを変わらずやり続けることも大事だけど、こういう素直な反応を自分の創作活動に反映できるというのも素敵だなと思った。
 いつもは、苦手なトム・フォードなんだけどね。

 夕方からは、「夜曲」の稽古。
 自転車で上高田の稽古場まで。
 ここは、どの駅からもとっても遠い不便な場所。
 と思いきや、山縣くんの家の近所でした。
 丁田くんが仕事でおそくなってる間、桜澤さんと、この芝居の話をいっぱいする。
 演出の方針とか、そういうものをあれこれと。
 丁田くんが来てからは、オープニングの場面をていねいに作り直してみる。
 上手と下手を逆にするプランは、却下。今のまんまでいくことに。
 缶ビールを使っての芝居を細かく作ってみる。
 桜澤さんにいっぱい動いてもらって、緊張と弛緩がうまく連続するおもしろい場面になってきた。
 もう少し先まで行きたかったんだけど、今日はここまで。
 続きは明日。

 帰り道、自転車で帰る途中、中野通りと早稲田通りの交差点にある閉店間際の花やさんで、小さな花束を買う。玄関に咲いてた百合が終わってしまったので。
 衝動的に買ってしまってから、どうやって自転車に乗ろうかと考える。
 片手に持つのはあぶなっかしいので、ショルダーバッグのポケットにさしたんだけど、結局、ずっと、落ちやしないかとハラハラしながら、こぐことに。
 白いトルコ桔梗は、暑い時期だとすぐにしおれてしまうけれど、この季節なら、わりと持つかもしれない。
 久し振りに青いガラスの小さな花瓶を出してきて、活けてみた。


2001年11月15日(木) 合同稽古

 今日は、フライングステージと「夜曲」組の合同稽古。
 二つの稽古のスケジュールがブッキングしてしまったので、一緒にさせてもらった。
 フライングステージは「エレクトラ」の稽古を一休み。
 「夜曲」組は、いつもと違う大人数のトレーニングをしてみようと思って。
 といっても、今日はフライングステージはお休みが多い。
 高市氏とマミーは風邪でダウン。
 結局、僕とノグと荒くん、それにフッチーと細川くん。以上がフライングステージチーム。
 「夜曲組」は、桜澤さんと丁田くん、それに上村くんと優希ちゃんの4人。
 計9人でいろいろ遊んでみる。
 ストレッチから、いつもの拍手を回すのをやって、しりとり。
 それから、椅子とり鬼ごっこ。
 サカナのエチュードもやってみる。
 後半は、外郎売りをみんなで。
 さすがに丁田くんと桜澤さんは立派なもんだ。
 最後に、2チームに分かれて、「お話聞かせて」をひさしぶりに。
 細川くん、荒くん、上村くん、ノグチームは、「一寸法師」を。
 優希ちゃん、フッチー、桜澤さん、丁田くんチームは「カチカチ山」を。
 それぞれ10分くらいを、順番にしゃべってもらったんだけど、なかなかおもしろかった。
 「一寸法師」はオリジナルの話にほぼ沿いながら、みんなちゃんと語ってるかんじ。
 荒くんのお話し慣れしたかんじと、上村くんの「芸能」っぽいかんじがなかなかおもしろかった。
 対する「カチカチ山」は、なかなか大変そうだった。
 出だしから、優希ちゃんが「キツネとタヌキが……」って始めてしまって、どうなることやらってかんじ。
 次から、キツネはどこかに行ってしまって、ウサギとタヌキになったんだけど、かなりむちゃくちゃな進み方だった。
 おもしろかったけど、チーム感はイマイチだったかな。
 時間が来たので今日はここまで。
 はじめて一緒にやったんだけど、思いのほか、楽しく気持ちよく遊んでしまえることができて嬉しかった。
 「夜曲」組のみんなも楽しんでくれたみたいでほっとする。
 三軒茶屋の駅で、昨日、新国立劇場で会ったフライングステージのお客さんのヒメノさんと遭遇。
 彼とは、新国立劇場に行くたびに、何故かばったり会ってしまう不思議な間柄。
 今日は、コクーンで「地下鉄1号線」を見てきたのだそう。
 僕はこういう偶然が大好きだ。それにしても、2日連続っていうのはスゴイよね。
 と思ってたら、JR渋谷駅のホームでいっこうちゃんにも遭遇!
 「タックスノットに行こうかどうしようか迷ってる」ということだったので、「これは運命よ」とばかりに一緒に行くことにする。
 パチパチやエイジさんとしゃべり、きちんと終電で帰る。
 今度は自転車で新宿までっていうのをやってみようかと思う。


2001年11月14日(水) 新国立劇場「コペンハーゲン」

 朝10時発売の新国立劇場のZ席をゲットするため、出かける。
 ほんの出来心で、自転車で行くことにする。
 高円寺から初台までは、青梅街道→山手通りというのが一番簡単そうなのだけれど、途中でふと「近道」がしたくなり、何の根拠もないのに、右折してしまう。
 思い切り坂を上り下りし、中野新橋の駅前を通り、延々とくねくね曲がり、幡ヶ谷の駅前で甲州街道に出る。
 道は細いし、人は多いし、かなり後悔。
 それでも、無事にチケットはゲット。
 自転車を、初台駅前の地下駐輪場に100円でとめて、OLバイトに向かう。

 夕方、電車で初台まで行き、ずっと見たかった「コペンハーゲン」を見る。

 内容についてはこちらを→ コペンハーゲン

 この席には何度座っただろうってかんじの、2階下手側ギャラリーの舞台寄りの席。
 今回も舞台を張りだしているのでとっても見やすい。第一とっても近いしね。
 15分の休憩をはさんで2幕、2時間50分の芝居。
 これは、とってもすごい芝居だった。
 もう、すごいとしか言えない。
 セリフの芝居が好きな人にはたまらないだろうな。
 登場人物は3人だけ。この3人がとにかくしゃべりまくる。
 原子物理学のお話だから、きっと「勉強させられてしまう」だろうと思ってたんだけど、全然そんなことはなかった。
 死んでしまった3人が、過去の一日を再現検証するというお話は、それだけで複雑そうなんだけど、この芝居では、その過程がほぼ3回繰り返される。
 なのに、全然、わかってしまえる。
 たくさん出てくる、日付や人名も、ちっとも気にならない。
 一番すごいのは、「不確定性原理」だとか「相補性原理」とかっていう、物理学の理論が、芝居が終わった後では、理解できてしまっていることだ。
 ハイゼルベルク(今井朋彦)と彼の師であるボーア(江守徹)とその妻のマルガレーテ(新井純)。
 1941年の秋、ハイゼルベルクは何故コペンハーゲンのボーアの家を訪ねたのか?
 この芝居はその謎を解くための物語。
 ハイゼルベルクはドイツ人、ボーアはユダヤの血が半分混ざってる。
 ナチスがヨーロッパ侵略を進めていく中、二人は、それぞれ、原子物理学の研究をし、結果、原子爆弾の開発に関わることになる。
 ハイゼルベルクは、ナチスのもとで原子炉の開発をし、ボーアはロスアラモスでアメリカの加原子爆弾の開発に携わることになる。
 死んでしまった現在から過去の一日を照らし出すという構成は、ある一日を、それ以後彼らがどうしたかということも含めて検証する。
 人の一生の中のたった一日というものが、ほんとにかけがえのないものとして浮かび上がっている。
 そのたった一日を、大事に大事に見つめ直す三人の人物のいとおしさ。
 第二次大戦の最中、戦争を憎み、原子爆弾の開発を何とか食い止めようとする二人の科学者の葛藤の切なさ。
 そして、この膨大なセリフ劇を、見事に立ち上げている、役者達のすばらしさ。
 僕は、1幕の途中から、泣けて泣けてしょうがなかった。
 まさか、こんなに感動するとは思わなかった。立ち上がったら、足が震えてるのにびっくりした。
 2幕はわりとほのぼのしたやりとりで始まるんだけど、戦争の悲惨さはどんどん浮かび上がってくる。
 不確定性原理っていうのは、「粒子の位置と速度を同時に正確に測定することはできない」というハイゼンベルクが提唱した原理なんだけど、この「正確に測定できない」っていうことが、ある一日を再現しようとするときにいつも浮かび上がってくる。
 人物の記憶が曖昧になってくるとかそういうことじゃなくて、一日を、そしてある人物を、物事を把握しようとするとき、物事とは、どんどんわからなくなってくる。
 一つの事柄が見えたと思うと、もう一つの別の事柄はわからなくなってくる。
 このお芝居は、そんなふうな、大きな謎、ほとんど哲学的といってもいいような、大きな謎の存在をぼくらの前に提出してみせる。
 それもとってもスリリングでおもしろく。
 難しい用語や、人名が、すんなりどころかとってもワクワクして見れたのは、彼らのやりとり自体がおもしろいからなんだと思った。
 舞台には椅子が三脚だけ、大きなアクションもない、とってもシンプルな芝居なのに、とってもドキドキさせられた。
 そして、芝居ってやっぱりすごいんだと思わされた。
 この大変な戯曲に挑戦した三人の役者さんは、すばらしかった。
 同じ役者として、ただ頭が下がる思いだ。
 今度、出版されてる戯曲を買って、読んでみようと思う。
 きっとすごい大変な戯曲なんだと思う。
 読んでわかるよりも、たくさんのことを、舞台は僕に伝えてくれたんだろうと思う。

 帰りは、自転車置き場から自転車を出して、山手通り、青梅街道という、素直な道順で高円寺まで。
 きっと上り坂ばかりで大変……と思ってたのに、それほどでもない。
 ともあれ、自転車は、ほんの少しの坂のありなしが如実にわかる不思議なのりものだ。
 ていうか、ただ歩いてるときには、ちっとも気にしない、自分の鈍感さが見えてくるかんじ。


2001年11月12日(月) 「2002春夏ミラノコレクションレポート」

 朝から、ファッションチャンネルニュースのMA(録音)。「2002春夏ミラノコレクションレポート」。
 久し振りの中出順子さんとのかけあいの番組。
 ニューヨークのテロは、やっぱりいろんなところに影を落としてる。
 9月11日は、ニューヨークコレクションの2日目にあたってて、初日にショーがあったブランド以外は、ほとんどが中止になってしまった。
 ロンドンコレクションも、半分くらいが開催をとりやめ。
 それでも、ミラノコレクションは、スケジュール通りにきっちり開催された。
 それもまた、テロに屈しない、ある種の抗議だと思う。
 ドルチェ&ガッバーナのように、平和へのメッセージをあらわしたメゾンもいくつもあった(彼らのショーでは、一番最後に、モデル全員が「I LOVE NY」のロゴの入ったTシャツで登場した)。
 ファッションはテロに負けない。もっと言えば、テロにうち勝っていく。
 僕は、そういう闘い方が好きだ。

 夕方から、タカユキくんと会って、話す。
 2丁目のココロカフェにて。芝居の話をもりだくさん。
 その後、タックスノットに行く。
 大学のゼミで「異文化交流」の研究のため「ゲイバー」に来ている、男女3人と遭遇。
 「異文化」ってすごいよね。まあ、がんばってね。
 今、ヨシオが出てる映画を撮ってる今泉くんがやってきて、ロケハンをしていく。
 キタヤマさん、ハヤブチくん、そしてマサキさんと、おしゃべり。
 しばらく、顔を見せないうちに、僕は「引きこもってる」と思われたらしい。
 「台本が書けてないんじゃない」と言う、タックさんに、ケイちゃんは「書けてなければ、出てくるはず」と言ったらしい。……そのとおりです。
 タカユキくんの終電に合わせて帰ってくる。
 と、新宿の駅で、昼間買ったばかりの傘を店に忘れてきたことに気が付く。
 またかってかんじ。

 部屋に戻ると、ニューヨークで飛行機が墜落してる。
 外から帰って、こうしてテレビの前に座り込んでしまうことが、この頃なんて多いんだろう。
 この手のニュースが僕は苦手だ。ドキドキして眠れなくなってしまう。
 でも、今日は早く眠るよう頑張ろう。できるだけね。


2001年11月11日(日) 「彼女を見ればわかること」

 夕べ飲んでるときには、今日は、新国立の「コペンハーゲン」のマチネを見に行くとか、タックさんが出てる薔薇族映画を上野に見に行くとか言ってたんだけど、全部キャンセル。ていうか、思いっきり起きられなかったので、夕方から映画を見に行くことにする。
 ロードショーで公開中の「同級生」を見ようかとも思いつつ、「彼女を見ればわかること」を下高井戸まで見に行くことにする。
 グレン・クローズ、キャリスタ・フロックハート(アリーよ!!)、キャメロン・ディアスやらが出てる、オムニバス(のような)映画。青山さんのオススメで、来年の芝居の参考になるかもしれない……という下心もあり。
 よーし自転車で行っちゃうぞ!と思ったんだけど、かなり寒かったのと、下高井戸までの道が、めんどくさそうだったので、電車で行くことにする。
 映画はなかなかおもしろかった。もっとも芝居の参考にはあまりならなそうだったんだけどね。映画じゃなきゃできないことを、存分にやってる、とっても見応えのあるもんだった。

 内容についてはこちらを→ 「彼女を見ればわかること」

 キャリスタ・フロックハートが、レズビアンのカップルの片一方をやってた。彼女の仕事は占い師。
 彼女が一緒に住んでるパートナーは、病気で死んじゃいそうなんだけど、彼女(占い師)はそれを受け容れられない。
 「初めてで会ったときのことを話して」って病気の彼女に言われて、だんだん話していくところがとっても「ちゃんとしてて」すっごいよかった。
 シュニッツラーの「輪舞」のように、みんながみんなどこかでつながってて、一人一人孤独に向き合ってる女達が、それでも一人じゃないんだと、ほっとさせてくれる。
 痴呆になってしまった母親や、占い師や、盲目の少女やら、ちょっと気が触れてる(らしい)ホームレスのおばあちゃんなどなど、いろんな人が、真実を語ったり、伝えたりする。
 ちょっとファンタジーっぽいと思ったのはそのせいかもしれない。
 5人の女優たちが、低予算のこの映画に、出演を志願したというのは、とってもよくわかる。
 グレン・クローズもいい芝居をしてた。
 キャシー・ベイカーが自分の息子(15歳)が学校に行く前に、「口が臭くないかどうか私に息を嗅がせなさい」っていうところ。「じゃあ、今日で最後だよ」って言われて、息を嗅ぐところが、妙にエッチだった。親子なんだけどね。
 あとでは、もう彼女とセックスしたことがあると告げた息子が口を開けて眠ってるところにそっと近づいて、もう一度、同じことをする場面がある。ここもとってもいい場面だったな。
 下高井戸シネマはとってもきれいな映画館。また来ようと思う。

 帰りに、ちょっと人恋しくなって、タックスノットに寄る。
 スクエアダンスのエドエイツのメンバーがいっぱい。
 タカノリとハヤブチくんも。タカノリは、ヒゲがすっごい似合ってきてて、なかなかイカス男子になってる。
 ほとんど唯一、エドエイツのメンバーじゃないコバくんと、インターネットのサイトをあちこちのぞいて、占いをしたりしてみる。
 終電前にさくっと帰ることに。コバくんと駅まで。映画の話をいっぱいしながら。
 部屋に戻ると、弘前に転勤した砂上さんからリンゴが届いてた。この季節にリンゴが届いたりすると、もう冬なのねってかんじがひとしおだ。次のフライングステージの稽古に持っていってみんなで分けよう。


2001年11月10日(土) パニック TOGETHERミーティング 飲み会

 録画しておいた、昨日の「アリーmyラブ4」を見る。
 アリーの二股の恋は、あっという間に、ロバート・ダウニーjrとの恋に乗り換え成功!
 そのあっという間の展開がとっても小気味いい。これからどうなるのか、楽しみだね。
 でも、この人(役者さん)ったら、麻薬不法所持かなんかで、このシリーズで降板しちゃってるんだよね。ようやくカムバックしたと思ったのに。
 声をあててる郷田ほずみさんもこのシリーズのみってわけ。なんだか気の毒。
 それよりも、ショックだったのは、前回、すっごい素敵な展開になったMTFのシンディとマークのおつきあいが、終わってしまったこと。
 前回のラストは、絶対に「セックスあり」なおつき合いの始まりだと思ってたのに、そうじゃなかったんだ。
 そのことで、マークはうじゃうじゃ悩んでる。バカじゃないの、もう?
 それにしても、二人がつきあい始めたことについての事務所の面々の「偏見」と「好奇心」いっぱいな視線にイライラ。
 やっぱりダメってことなの、こういうお話は? 限界は超えられないってことなわけ?
 ちょっと、ていうか、かなりがっかり。

 今日は午後から、「TOGETHER」というグループのミーティング。
 「TOGETHER」っていうのは、ゲイとビアンとバイセクシュアルと、その他いろいろ何でもありなコミュニティ。
 始まって、もうじき10年なんだけど、当初の「コミュニティ」として、東京のゲイシーンであるポジションをしっかり守る(?)みたいなノリとはずいぶん様変わりしてきた。
 初めは、ぽっと出の新人くんから、プロまで、何でもOKで、とにかく「ちゃんと話すこと」を目的としたコミュニティだった。「コーカウンセリング」をやってたメンバーがたくさんいたせいもあってね。
 今は、どうなんだろう?
 コミュニティの存続って、中心メンバーのある目的が達成されちゃうと、その時点で難しくなってくるんだよね。
 たとえば、出会い系のところだったら、メンバーのほとんどにパートナーができたら、もうやってる意味がないとか。これは一番よくあるパターン。
 僕たちの場合で言えば、「自分自身にちゃんと向き合おう」ってことをある程度やっているうちに、自分のことは「とりあえずだいじょぶ」ってことになった。
 そうすると、次は、「誰かのために」やってくってことになる。
 右も左もわからないゲイやビアンに、東京のゲイ&レズビアンシーンっていうのは、こういうところよっていう、オリエンテーションをする。もちろん、自分に向き合うってことを、経験してもらう。っていうと、堅苦しいけど、まずは、自分の話をしてみようってこと。
 でも、そんな「人のため」にやってるコミュニティって、どこかで「何でやってるの?」ってことになってくるわけ。
 僕らもそうだった。
 特に、この頃は、インターネットの普及で、「右も左もわからないぽっと出の新人」なんていうのは、さがしても見つからないような状態なんだから。
 だから、僕たちも、どうするか考えた。これからも続けていくかどうか。今から3年くらい前かな。
 で、出した結論は、もう一度、自分たちのためにやっていこうっていうこと。
 「TOGETHER」っていうコミュニティは、発展向上してかなくて、全然いい。
 人数が増えるとか、注目されるとか、そんなことちっとも期待しない。
 ただ、僕たちが楽しければそれでいいっていうふうに。
 隔月の「ギャザリング」っていう例会と、その準備のためのミーティング。そのたびに僕たちは集まって、わいわいしゃべって、またねと別れる。
 そして、一緒に年をとっていけたらそれでいいじゃないのってことに決めた。
 開き直ってしばらくは、これでいいの?ってかんじだったんだけど、この頃は、すっかり居心地がいい。
 間違いなく、僕らは一緒に年をとっていってるし、僕についていえば、フライングステージのような、大きな目的と意志をもったグループと、全然違うノリの「TOGETHER」は、ほっと息がつけて、弱音がはける、大事な避難場所になってる。

 で、今日は、1時半頃、部屋を出て、コンビニで印刷物をコピー。
 色の用紙をこっそり入れたら、つまってしまって大いにあせる。
 2時に、山崎くんと荻窪の駅で待ちあわせをしていたので、あたふたと駅に向かう。
 「夜曲」のHPを新しくつくるためのソフト(ページミル)を渡すため。
 電車に乗って、荻窪の改札で山崎くんにソフトを渡し、地上に出る。
 今日のミーティングは、メンバーのワカちゃんとクミちゃんのマンション。
 荻窪からバスに乗っていかなくちゃいけない。
 地上に出て、ふと気が付いた。ていうか、愕然とした。
 バッグがない!
 いつも持ってるサムソナイトの四角いショルダーバッグがなくなってる。
 手には、TOGETHER関係のものを入れた紙袋とiBookと傘だけ。
 ちょっと重たいフェイクレザーのコートを着ちゃってたので、いつどこでなくなったのか、全然気が付かなかった。財布も今日はコートに入れてたし。
 もうパニクってしまう。
 JRの中だろうか? 駅に置いてきた? それともコンビニ? 全然記憶がない。
 とりあえず、山崎くんに電話する。「僕、あなたに会ったとき、バッグ下げてたよね?」「ええ、たしか」。
 それから、コンビニ、「レジか、コピー機の前にバッグ置き忘れてませんか?」「ないですよ」。
 ああ、やっぱりJRだ!と思いつつ、とりあえず、高市氏にも電話する。ポストの前で郵便のチェックをしたときに置き忘れてるかもしれない。
 電話はなかなかつながらなくて、かなりいらいらする。
 ようやく出てくれた高市氏に尋ねる。「どこかにバッグを置き忘れてきたみたいなんだけど、一階の郵便受けの前か、もしかしたら、玄関に置きっぱなしになってないかな? 悪いんだけど、ちょっと見てきてもらえるかしら」「わかった、ちょっと待ってて」。
 しばらくの間の後、高市氏の声「あんたのバッグってグレーの四角いやつ?」「そうそう」「あんたの部屋にあるわよ」「…………」。
 初めから持ってなかったんでした。何やってんだかってかんじ。
 バッグの中には今日の稽古着しか入ってないので、このまんまミーティングに行って、稽古場に直行すると伝えて、電話を切る。
 と、次の瞬間。バッグの中に「TOGETHER」関連の印刷物が一式入っていることを思い出し、あわてて電話。「やっぱり、一度戻るわ」。
 大急ぎでJRの改札口に向かい、切符を買って、ホームへ。一息ついた、エスカレーターで、これから録りに戻ろうとしている書類は一式、手に持ってる紙袋に入ってることに気付く。何やってんの?
 ホームで、立ち止まって、深呼吸をして考えた。で、もう一度電話して「全部、持ってたので、やっぱり戻るのやめます」と伝える。
 このへんで、完全にどうかなってるような気がしたので、落ち着こうと思って、今買った切符を改札で渡して、駅ビルで、手みやげの豆大福を買って、コーヒーを飲んで、気持ちを落ち着かせる。
 よし、大丈夫と思ってから、バスに乗って、ワカちゃんのうちに向かう。
 ワカちゃんとクミちゃんのマンションはとってもきれいな新築で、動物がいっぱいいる。
 インコのグーに、ギニーピッグ(たぶん。毛のないモルモット)の博士(はかせ)と、チワワのうずらちゃん。
 みんなもう集まってて、マドンナの新しいベストを聞きながら、動物たちと遊んでる。
 いいね。動物は。僕はうずらちゃんにどうしてもなついてもらえなくて、それでも、諦めないで、あの手この手でチャレンジ。
 その合間にTOGETHERの案内の発送作業もさくさくと完了。
 その後、みんなといろいろ話す。
 仕事のこととか、年のこととか(笑)。
 ちっともお仕事ノリじゃなくって、こうしてのんびりおしゃべり出来てる時間がとっても気持ちよかった。そして、なんて贅沢なんだろうと思った。
 もちろん、さっきのバッグの顛末を報告したら、みんなに笑われた後、「あんたってほんとにそうよね」とジャスミンさんに断言される。
 夕方になって、僕は稽古があるので、先に失礼することに。
 ワカちゃんとクミちゃんが見送ってくれた。
 雨はほとんど止んでたんだけど、傘を忘れずに持って帰る。
 高井戸の駅までてくてく歩いて、ホームで「エレクトラ」のセリフをさらってるうちにふと、気が付いた。僕は、誰のだかわからない見たことのない傘を持っていた。
 ワカちゃんに電話して、「ドジのとどめってかんじなんだけど、誰かの傘を持ってきちゃったみたい」と話す。
 ワカちゃんは「気を付けてね。今日、どうかしてるみたいだから、間違って吉祥寺行きに乗らないようにね」と言ってくれる。
 だいじょうぶ。ちゃんと渋谷行きに乗りました。

 で、今日のフライングステージの稽古は用賀の稽古場。
 思ってたより時間がかかって、着いたのは7時半。
 みんな集まってて、すぐに基礎トレを始める。
 でも、僕はちょっと大人しくしてようと思って、見学。
 まみーもこないだに続いて調子が悪いので見学。
 まっすーにストレッチと発声をしきってもらう。その後の、しりとりや何かも。
 途中から、どうもだらけてきたので、立ち上がって、まるで「試験の監督をしている教師」のように、みんなのまわりをてくてく歩いてみる。目を光らせてるってかんじかな。
 後半は、この間できなかった、細川くんとフッチーの組の稽古をみっしりと。
 ほとんど口やかましく、演出をつけていく。
 僕のダメ出しに「はい。はい」と返事をするフッチーに「演出家のダメの一言一言に『はい』って返事しなくていいから。全部聞いてから一度でいいから。そんなことしてると他の演出家は怒ると思うよ」と、また「いやなかんじで」お行儀関係のダメを出す。
 予定していたラストまで行けずに途中でおしまい。
 続きはまた今度。
 一昨日から、3日連続で、演出ばかりしている。
 これは、自分が芝居するよりもよっぽど疲れる。
 この間の「粘土のエチュード」じゃないけど、自分ができること、してほしいことを、相手に伝えるのは、本当に難しい。
 でも、その難しさがあるからこそ、おもしろい。
 予想してなかったものがひょこっと出てきたりするしね。

 夜は、新宿に出て、来年3月のプロデュース公演のキャスト、青山吉良さん、郡司くん、いっこうちゃんと飲み会。この顔ぶれでちゃんと飲むのは、実は初めてだ。
 電話で聞いた、「東方見聞録」っていう居酒屋に行ったら、イワイワと森川くんがいた。
 久し振りだ。
 わいわい芝居の話をしながら、結局、朝まで飲んでしまう。
 4時過ぎに店を出て、始発にまだ間がある、郡司くんにつき合って、僕といっこうちゃんの三人は「ラピス」へ。
 マスターのヒロシさんは、いつもフライングステージを見に来てくれてる、とっても芝居好きな人だ。
 始発の時間をとっくに回ってるのに、わいわいしゃべって6時頃、店を出る。
 外はぼちぼち明るくなってきてるなか、無事に帰宅。
 濃ゆい、一日だったわ。ぐったりってかんじ。


2001年11月09日(金) 「夜曲」稽古 タックスノット

 「夜曲」の稽古。
 自転車に乗って、稽古場に行きたいんだけど、今日は雨降り。
 今日は、初めて、バスと電車を乗り継いでいく。
 自転車で通った道が駅から稽古場までの道が、歩くとけっこうあって驚く。
 今日の稽古から、演出助手の服部優希ちゃんが参加してくれてる。
 群馬県の奥の方でやってた野外劇の演出助手の仕事が終わったそう。お疲れさまでした。
 丁田くんの指導でストレッチをやったあと、今日は、オープニングから、どんどん芝居をつくっていってもらう。
 部屋に一人で帰ってきた丁田くんに、桜澤さんがからむんだけど、まず最初に丁田くんの芝居をつくってもらうことにする。
 桜澤さんがいなくてもだいじょぶなように。
 動線を決めてもらって、そこにからんでいってもらうことにする。
 台本を読んだだけではわからない、決定的な「動き」を、具体的に決めて、その段取りも確認していく。
 ほんとに、「この場面はどうなってるの?」ってよくわからないまんまのこの間の読み合わせとは全然違う、しっかりした芝居になった。
 二人ともさすがに経験豊富なので、僕の細かいダメ出しにちゃんとついてきてくれる。
 実は、僕は明確な演出プランをもって、この場面にのぞんだわけではなくって、一緒につくってった。
 ので、とっても思いがけないものがたくさん生まれてきて、それがとってもうれしかった。
 そして、楽しかった。
 この調子で最後まで行けたら、なんて素敵なんだろう。

 帰りに、チラシのデザイナーの方からの差し入れのプリン(手作り)と優希ちゃんのおみやげのお菓子を、稽古場の外でいただく。
 雨はまだ降ってる。
 こないだの「つぼ八」でまた軽く飲み。
 おうちが遠い優希ちゃんはさくっと帰って、シアターΧの森下ちゃんがやってくる。
 こないだ、丁田くんは電車がなくなって、最後タクったそうなので、今日は早めに切り上げる。

 僕は、その後、久し振りのタックスノットへ。
 ウスイさん、セツオ、アナグマックス、有吉さん、そして、ロンドンから帰ってきたマサルと会う。
 終電で帰るつもりが、大いに盛り上がり、途中で、こないだ会ったばかりの西野さんもやってきて、2時半頃まですっかり長居をする。
 ウスイさんに、うちまで送ってもらった。マサルも途中まで一緒。
 いやあ、今日は、たくさん、しゃべったなあ。稽古場でも、お店でも。


2001年11月08日(木) 「エレクトラ」稽古 トムヤムクン

 フライングステージの稽古。
 今日も稽古場へ自転車で行ってみる。
 火曜日に乗ったときに、折り畳もうとしたら、つなぎの部分がこわれて、ネジやらスプリングやらが飛んでって、パニクった。買ったばかりで、もうこわれちゃうの!!?
 30分ほどかけて、ようやく復旧。
 おかげでちょっと「身近」になりました。
 今日は、そんなこともなく、「畳んだまま」下におろして、道路で組み立て。
 快調に稽古場に向かう。
 今日の稽古は、新人三人衆と、僕とまみーとのぐ。
 基礎トレの後、まみーの具合が悪くなって、見学。ていうか、廊下で休んでた。
 人数が少ないのをいいことに(?)、ノグとキッちゃんの組の「稽古」をきっちりしてしまった。
 場面は53場のほぼ全部。最初のクリュタイムネストラの長ゼリフの終わりから、最後の「祈りの言葉」の前まで。
 途中で、細川くん&フッチー組にチェンジと思ったんだけど、けっこう時間がかかって、結局丸々一時間ほどをかけて、ああでもないこうでもないと作り上げてしまった。
 ノグがセリフを覚えてきて、クリュタイムネストラ。キッちゃんがエレクトラ。
 ノグのセリフが相手にかかっていかないとか、キッちゃんがずっと同じテンポで歩いてしまうとか、そういう細かいところを丁寧に確認していってもらって、対立して言い合い→後悔から和解→また対立して言い合う、っていう、流れを作っていった。
 どういう場面だかわかったでしょ?
 どうしゃべるとかそういうことを積み上げていくと、ある流れができてくる。
 逆に、流れをつくろうと思ったら、細かい一つ一つをちゃんと積み上げていかないといけない。
 今日、ずっと見学だった細川くん&フッチー組には、同じことを土曜日にやってもらおうと思う。どんな場面になるか、楽しみだ。

 帰りも一人自転車で。
 てきぱきと畳んで、部屋へ。
 こないだ安かったので、買っておいた「エビ」で、トムヤムクンをつくる。
 すっごい前に買ったまんま放置してた「オムヤムクン」のキットをようやく使う。
 たくさんスパイスが入ってて、それを一緒に入ってた布袋に入れて、煮出す。
 いろんなペーストを入れて、最後にエビを「殻ごと」入れて、火が通ったら、少し牛乳を入れて完成(レシピどおり)。
 辛さよりもさわやかな酸味が強くて、なかなかおいしかった。でも、やっぱり強烈に辛くて、辛いものに強い高市氏も「さすがの私も辛い」と言っていた。
 海老以外に具が入ってないので(「シメジ」とか書いてあったけど、省略)、「逃げ場」がなく、ひたすら、辛い。
 そこで、思いついて、冷蔵庫から、買い置きしてある「絹ごし豆腐」と一緒に食べてみることにした。
 つまり「トムヤムクン&冷や奴」。
 これは、なかなか正解でした。
 一緒に煮てしまわないで、冷たいまんまの方がいいと思うな。
 って、かなり、ヤクザなレシピですね。はい。


2001年11月07日(水) 録音 READING SESSION「桜の園」 朝までコース

 声のお仕事でお世話になる「Lavi Soft」さんへ、WEB上で公開する「コメント」の録音に行く。
 すっかり遅刻してしまったので、ごめんなさいのおみやげに「茂助」の団子を池袋の東武で買っていく。
 「茂助」は、築地の場内にある団子屋さんで、大昔に河岸でバイトをしてた時いらいのひいきだ。築地は遠いけど、デパートの中ではここでだけ売ってるので、時々、買ってくる。
 録音は、2つのうちの1つが、あっという間に終了。もう1つは、僕の自己紹介なんだけど、もう一度、原稿を考え直して、来週にリベンジということにしてもらう。

 その後、友だちのオカダさんと、サントリーホールの小ホールで「桜の園」のリーディングに。
 企画自体は何となく知ってたんだけど、どうしようかなと思ってたのを、さそわれて、慌ててチケットをとった。
 ほんと、行ってよかった。見て(聞いて)よかった。とってもいい舞台だった。

READING SESSION「桜の園」 サントリーホール・小ホール

 作 :チェーホフ
 訳 :神西 清
 潤色:堀越 真
 演出:金子こうじろう

 配役 ラネーフスカヤ:山田五十鈴  アーニャ   :田中美里
    ワーリャ   :島田歌穂   ガーエフ   :三橋達也
    ロパーヒン  :市村正親   トロフィーモフ:高嶋政伸
    ピーシチク  :桜井大造   シャルロッタ :火田詮子
    エピホードフ :稲垣雅之   ヤーシャ   :尾崎右宗
    ドゥニャーシャ:鳥居かほり  浮浪者    :神戸 浩
    フィールス  :内山恵司   語り     :丹阿弥谷津子

 原作の四幕の戯曲を1,2幕と3,4幕をくっつけて、全2幕の上演。
 舞台は、客席に大きく張りだしたT字型。
 手前から奥に向かって、三段の段が組んである。
 一番上に、布張りの豪華な椅子が2つ。その左右に木の素朴な椅子が3つずつ。
 一段降りたところに同じ木の椅子が2つ。もう一つ下にまた2つ。
 音楽とともに暗転すると、オープニングに丹阿弥の語りが入る。
 「今、私の庭にある桜の木は、あの桜の園にあった桜ではありません」
 っていうような。
 このホールの背景になってる、木の壁に桜のシルエットが浮かぶ。
 聞きながら、僕は、「これはラネーフスカヤの回想なのね……」と思ってたんだけど、途中で年老いたワーリャの回想なんだってことがわかる。
 これはとっても「やられた!」ってかんじだった。
 「桜の園」っていう芝居全体が、ワーリャの回想の劇として再構成されてる。
 語りが続く中、登場人物が順に登場してきて、椅子に座る。
 一番上の豪華な椅子には、ラネーフスカヤとガーエフ。その下手側にアーニャとドゥニャーシャとヤーシャ。上手側に、ワーリャとシャルロッタとエピホードフ。
 真ん中の段に、ピーシチクとフィールス。一番下に、ロパーヒンとトロフィーモフ。
 これは、「階級の順」なんだね。上から順に。後から気が付いたんだけど。
 ゆっくりすわった全員がシルエットで浮かび上がると、何だか、もうすごい迫力だった。
 陰の語りの途中で、今、舞台にいるワーリャ、島田歌穂が語りを引き継いで終える。
 一度暗転して、本編が始まる。
 うまくできたオープニングだった。
 本編ね、一言で言えば、「キャスティングの勝利」ってところかもしれない。
 だって、こんなに見事なイメージキャストってちょっとないと思う。
 みんながみんな「ぴったり」だった。
 今回の企画は、リーディングをずっとやってた高島政伸が、山田五十鈴と市村正親の舞台を見てたら、二人のトークで「いつか『桜の園』がやってみたい」っていう話が出たんで、そのまんま楽屋に行って、「僕が企画しますので是非!」って言って、実現したんだそう。
 すごいよね。
 見直しちゃったよ、高島おとうと!!
 よくこれだけのキャストを集めたってかんじ。
 山田五十鈴のラネーフスカヤは、往年の東山千栄子(小津の「東京物語」のおばあちゃん。俳優座に所属して、ずっとこの役をやってた)はこんなだったんだろうなって思わせる、おっとりした、「女王」のようなラネーフスカヤだった。
 たとえばね、原作の二幕のピクニックの場面で、浮浪者がやってきて「おめぐみを!」って言うんだけど、いつものラネーフスカヤは、浮浪者におびえて、「銀貨がないわ。じゃあこれ」って金貨をあげてしまう。桜の園が競売にかけられるっていうくらい、お金に困ってる人なのにね。
 山田五十鈴のラネーフスカヤは、ちっとも動じないんだ。浮浪者にね。
 神戸浩さんの浮浪者は、とっても「異質」で、この人だけ、座ってないで、この場面で初めて客席のドアから登場する。
 だけど、芝居をちゃんとするわけじゃない。
 リーディングだから、本を持って、客席に向かって「おめぐみを!」って言うんだ。
 すっごい迫力があるから、みんな「キャー」とか言ってるんだけど(ほんと)、山田五十鈴はちっとも動じない。
 で、段の一番上で、「銀貨がないわ。じゃあこれ」って金貨を投げてしまう。
 その同時なさとおうようなかんじが、すごくてね。
 すぐ後で、みんなに怒られるんだけど、これまたちっとも動じないで「ロパーヒンさん、後で貸してくださいね」なんて言う。
 この場面で、僕は、全然OKになってしまった。
 山田五十鈴は、歩くのも大変そうで、声も終盤になると、ちょっとかすれ気味になるんだけど、とにかくずっとマイクなしでしゃべってた。
 いつもはだいたい日本髪のかつらのイメージなんだけど、今日は、金髪を結い上げてて、それもまた見れてよかった。
 この頃は喜劇として取り上げられる「桜の園」なんだけど、これは、ほんとにオーソドックスな、どちらかと言えば「古くさい」演出がされてる舞台なんだけど、山田五十鈴っていう人をラネーフスカヤにしたことで、それが「失われていってしまう、なつかしいもの」のお話にちゃんとなってた。
 他の役者もみんなよかった。
 まず、市村正親のロパーヒンは、「たたき上げ」なかんじがちゃんとしてるのがいい。
 もういい年なのに、劇中の「農奴のせがれで、子供の頃は棒きれでおやじになぐられてた」っていうセリフがあると、小さな子供の面影がちゃんと蘇ってくる。
 これはすごいと思った。
 前に「ラブレターズ」っていう朗読のお芝居のこの人を見てるんだけど、それは何だかお行儀が悪くてね、もっとちゃんとやって!ってかんじだったんだけど、このロパーヒンはほんとよかった。
 山田五十鈴とのコンビっていうのもよかったんだと思うけど。
 ワーリャの島田歌穂は、手堅い芝居をきっちりしてるし、アーニャの田中美里は初初しい。来年の一月には新国立で「かもめ」のニーナをやるんだってね。
 高島政伸のトロフィーモフは、万年大学生の理屈ばっかりなところが、キャラクターにぴったりだった。
 フィールスの内山恵司さんは、見事なフィールスだったな。神西清の訳なので、うちの「オープニング・ナイト」で登場するセリフがまんまラストのセリフなんだよね。どきどきした。
 ヤーシャの尾崎くんは、とってもかわいくってね。昔の織田裕二みたいなの! フランス帰りの気取り屋のヤーシャがとってもいい出来だった。
 彼がいつも座ってるのが、僕のちょうど正面で、かなり「堪能」しました(笑)。
 休憩の挨拶を尾崎くんがして、ここから、ピアノとバイオリンとチェロの楽団が入ってきて、演奏を始める。
 2幕が始まると、この人達は、舞踏会に呼ばれてきた「ユダヤ人の楽団」ってことになって、舞踏会の場面の音楽をずっと演奏する。
 サントリーホールっていうのは、もともと音楽のホールだから、この演出も心憎かったね。
 2幕の頭にもワーリャの語りがあって、「競売の当日に舞踏会をやると言って、お母様はきかなかった」って言うんだけど、これは、原作の戯曲にちゃんと書かれてないんだけど、とっても大事なことなんだよね。うまい脚色だと思った、ほんと。
 競売から帰ってきたロパーヒンが「桜の園は俺が買った」っていうところは、やっぱりよかったな。市村さんは、リーディングなのに、ほとんど芝居だった。
 僕は、この辺で泣けてきてしまってね。
 今まで「桜の園」っていう芝居は何本も見てるんだけど、泣いたのは初めて。
 最後、みんなが出ていった後(みんなが椅子から立って、客席に背中を向ける)、フィールスが一人残って、セリフを言って、本編は終わり。
 ワーリャがこちらに向き直って、最後の語りをして、暗転。
 おしまい。

 拍手とともに、舞台が明るくなるとみんなこっちを向いていて、カーテンコール。
 最後に、みんな引っ込んでいくんだけど、拍手は止まなくてね。
 山田五十鈴はほんとに歩くのも大変そうで、市村さんと高島弟に手を引かれてるんだけど、もう一度戻ってきた。
 客席の何人かは立ち上がって拍手してて、僕も立ち上がったんでした。
 なんだか、ほんと、いいものを見たって気持ちです。
 話はちょっと変わるんですが、僕はデビュー前の高島弟の舞台を見たことがあって、その舞台(別役実の「雰囲気のある死体」)で、彼は包帯でぐるぐる巻きにされてる病院の患者の役をやってました(セリフはなくて、ただ、うなってるだけ)。
 今日の舞台で、エピホードフをやってたのは、その劇団にいた稲垣さん。
 あれから、十何年って経ってるのに、まだこうやって一緒にやってるんだっていうのが、何だかうれしくって、やっぱり「いいやつ」なんだなあと思いました。
 客席には、お母さんの寿美花代さんがいらしてて、さすが「芸能一家」ってかんじ。
 あと、犬のぬいぐるみを抱いた星由里子さんも。山田五十鈴はぬいぐるみ大好きだそうなので、「ぬいぐるみ友だち」か?ってかんじ。

 終演後、オカダさんと新宿に出て、ご飯、そして、アイランド→ココロカフェで「朝までコース」になっちゃいました。
 おもしろい芝居を見て、芝居の話をたくさんして、とってもいい夜でした。
 アイランドでは、西野浩司さんと会って、パレードの話をたくさんして、それもうれしかったな。


2001年11月06日(火) 「淀川長治物語」 明和電機@「おしゃれ工房」

 今日はテレビの話を……

 夕べの夜中ていうか朝方、「淀川長治物語」っていうのを、全部見ちゃいました。
 監督は、大林宣彦。
 もともとはテレビだったそうなんだけど、これは、映画として、カットしてた場面も復活させたものだそう。
 神戸の芸者置屋に生まれた淀川長治少年が神戸を出て行くまでのお話。
 活動写真の映画館の場面がいっぱい出てきてね、なかなかおもしろかった。
 長治少年を演じる子役がとってもよくって、しかもかわいいんだ。仲良しの貧乏な子と一緒に神戸の丘から町を見下ろしている時の絵は、まるで「きいちのぬりえ」みたいだった。
 って、あんまり的確な譬えじゃないけど、映像は、さすがに大林監督、どこもとってもきれいだった。
 長治少年の家族が映画を見てて、その映画は、彼の生い立ちを語ってるもの。しかも弁士は長治自身っていう趣向がとってもうまくいってる。
 父親の柄本明、母親の秋吉久美子、それに祖母役で白石加代子が出てるのが豪華!!
 長治少年はとってもおばあちゃん子なんだけど、そりゃそうでしょってかんじのおばあちゃんだったね。
 柄本明の病気がちな本妻が根岸季衣で、長治少年の足をつかんで死ぬっていう場面もすごかった。
 脚本は、大林宣彦と市川森一。大林さんは、編集もやってて、さすがの切れ味だ。
 無声映画のコマ落としみたいに、微妙に食い気味に次の場面に移っていく。その「カタカタ」したかんじが、とってもいい。
 ラスト、神戸を出ていく汽車におばあちゃんの目を盗んで乗り込む長治少年が、実際の駅から映画館に移動していて、彼はスクリーンに映った映画の中の汽車に乗り込んでいくあたり、まるでウッディ・アレンの「カイロの紫のバラ」なんだけど、それも見事だった。
 追いかけてきた白石さんは、呆然とスクリーンの横に立ってて、その「映画」を見てた長治少年の家族は、映画が終わって、一人一人帰っていく。
 で、「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」って言っておしまい。
 劇中の「さよならの数だけ出会いがあるんだ」っていうセリフもよかったな。
 大林宣彦監督は、最近はそうでもないんだけど、昔はとっても好きだっ。
 「時をかける少女」とかね。
 僕が初めて自分のお小遣いで見た映画っていうのは、実は大林監督の劇場デビュー作「ハウス」っていう、なんだかすごいホラー映画。でも、好きなんだよね。
 あと、テレビでやった「怪猫伝説」とかいう入江たか子(往年の化け猫女優さん)が出てくるドラマもおもしろかったな。それから、タイトル忘れたけど、すっごいきれいな女の子が次々人を殺していくやつ。赤座美代子の頭に花瓶が落ちてきて、花瓶をかぶったままくるくるまわって死ぬやつとか……。って、誰もわかんないよね。ビデオにはなってると思うけど。
 
 で、もうひとつ。
 今日の夜、何となくテレビを見てたら、教育テレビのおしゃれ工房に「明和電機」が出てた。
 例の指パッチンをすると背中の(正確には、背中に背負った羽の先にある)木魚が鳴る「パチモク」を背負った土佐信道さんが、司会(?)の堀ちえみとしゃべってる。
 「パッチーナ」っていう、「指パッチンだけで音が鳴る」モノを作るらしい。
 プラスチックの板を2枚(?)つなげて、ワッカをつけて指にはめて、指をパッチンってやると(ていう、指を折ると)「パッチン」っていう可愛い音がする。
 小さな女の子が髪をとめる「ぱっちんどめ」。あれに限りなく近い。
 プラスチックの板には、カラフルな絵が書いてあって、たしかに「アクセサリー」なかんじ。
 ワッカもほとんど指輪ノリだもんね。
 安藤広重の東海道五十三次の絵なんかのシリーズもあって、それはアクセサリーじゃないだろう!ってかんじ。
 番組後半は、サバオや、合唱団が登場して、ライブ。
 女子アナに「たくさん着替えますね」って突っ込まれてたけど、そのくらい、エンターテインメントしちゃってる。
 この「おしゃれ工房」って、編み物の広瀬光治先生やら、辻村ジュサブロウさんやら、やたらと「濃ゆい」人が登場する、なかなかあなどれない番組だ。
 広瀬先生は、カラオケボックスで「柳ヶ瀬ブルース(by美川憲一)」歌ってるしね。

 って、今日は、稽古も芝居もなかったんだけど、つい書いてしまいました 。
 ほんとは、新国立の「コペンハーゲン」を見に行くはずが、挫折。来週はかならず!!


2001年11月05日(月) 「夜曲」稽古初日 自転車

 11月30日初日の「夜曲」の稽古初日。
 「夜曲」というのは、僕が所属する劇作家の集団「作劇舎」のメンバー山崎哲史くんの戯曲。大がかりじゃなくてもいいから、自分のかいたものをさくっと上演できるといいねという話をしていたところ、7月にフライングステージが稽古場発表会をやった、新宿の鍋茶屋コンフォール劇場が、規模的にぴったりということで、話がどんどん決まった。
 で、「いいから、やっちゃいなよ。やりたいと思ったことはやらなきゃだめ!」とあおった僕が、演出を引き受けることになった。
 男と女の二人芝居で、出演は、桜澤凛さんと丁田政二郎くん。
 桜澤さんは、僕の円の養成所時代の同期で、作劇舎の例会で「読み手」として協力をしてもらっているという縁からの出演。今彼女は、声優の仕事をしている女優さん。
 いつかいっしょに芝居をしたいと思ってて、「ひまわり」が今のような形になる前、「普通のホームドラマ」として構想してたときに、「寅さんのパロディをやるんだけど、僕の母親役をやってくれないかな」と話をしたことがあった。たしか「陽気な幽霊」の再々演の芸術劇場小ホールだったと思うけど。
 「ひまわり」はご存じの通り、あんなふうに芝居の構造が変わってしまったので、その話は「なんとなく」流れてしまっていた。
 今回、ようやく一緒に芝居ができることになった。もっとも、僕は演出のみなんだけど。
 丁田くんは、僕が昔通ってた朗読のワークショップ「舌体舎」からの知り合い。「舌体舎」は演出家の川和孝さんの主催する会で、出来たばかりの両国のシアターΧで何度かワークショップ公演を行ったりしてる。
 僕が、参加したのは、ちょうど今から十年前で、僕は芝居をやめてた頃だった。友だち(やっぱり円の養成所の同期)が一人で行くのは何だからと僕を誘って、僕は、「どうせやるなら、ゲイだってカミングアウトして、芝居をしよう。そうじゃないと、もう一度やる意味がないから」、そう思って、また芝居を始めたんだった。
 舌体舎では、新しく参加したメンバーに「私の俳優としての適性について」という作文を書かせて、それをみんなの前で「朗読」させるというのが、しきたりだった。
 僕は、自分がゲイだとカミングアウトして、「僕は、自分じゃない何かにはなりたくない。僕はどこまでも自分でいたい。それが僕にとって俳優になるということだ」と書いた、今思うと恥ずかしいような作文を読んだ。
 それを聞いたみんなは、川和さんを含めて、僕を受け容れてくれた。
 フライングステージはその直後に始まってる。
 あの「決意表明」がなかったら、今の僕はきっといなかったと思う。
 その「舌体舎」のメンバーだったのが丁田くんだ。
 彼は、テアトルエコーの養成所の研究生だった。卒業後、声優の勉強をしていて、今はプロダクションに所属している。
 NHKの「大人の試験」という短い番組で声優の大塚明夫さんと一緒にアテレコの勉強をしているのが、彼だ。
 この間まで、中村玉緒さんの舞台に出演して、明治座から、スタートして日本全国を回っていた。
 稽古は、今日がはじめてなんだけど、1ヶ月ほど前に、一度だけ読み合わせをした。
 1ヶ月のブランクは、丁田くんの度公演のスケジュールのせいだったんだけど、上演時間も短い二人芝居なので、まあ、のんきにやっていこうと思ってた。
 セリフも覚えて来なくていいからと言って……。まあ、それには別の目論見もあったんだけどね。

 稽古場は沼袋なんだけど、高円寺の事務所からは、とっても曖昧な遠さ。
 どのルートをたどっても電車とバスを乗り継ぐか、新宿経由で延々と電車に乗るかっていう、めんどくささ。
 自転車があったらなあ……と思ってたんだけど、なかなかコレというのがなくて。
 ところが、今日、たまたま、ずっとほしいと思ってた「折り畳み自転車」がセールになってるのを発見。半額以下というのに惹かれて、衝動買いしちゃいました。稽古場に行く途中の駅前で。
 もう暗くなってたので、あわててライトも買って、電池はついてないとのことで乾電池も買って、いざ出発。
 こぎ出してから気が付いたのは、自転車に乗るのが、エライ久し振りだってこと。
 葛飾にいた頃は、がんがん乗ってたんだけど、越ヶ谷に行ってからは、駅まで徒歩15分だったのに「雨の日がめんどくさい」と徒歩通勤。以来、全然乗ってない。
 自転車って、いろんなことを同時にしなくちゃいけないのねと気が付く。
 ペダルを漕ぎながら、前を見なきゃ行けないし、どっちに行くのか決めなきゃならないし(道がよくわかってなかったので)。
 暗がりで、久し振りの自転車乗りは、正直とってもこわかったです。
 だって、人はどいてくれないし、向こうから走ってくる自転車はみんな無灯火だし。
 それから、驚いたのは、坂がすごく多いこと。
 特に沼袋の駅から新青梅街道までの道は、いつもバスで通ってたのに、あんなに急な坂道だとは気が付かなかった。
 こないだ、上野から新宿まで歩いたと時とは違って、「坂=疲れる」があからさま。
 六段変速のギアもまだうまく切り替えられなくてね(笑)。
 でも、折り畳みの自転車の小さい車輪の割には、とっても快適。
 稽古場まで20分ほどでたどり着きました。

 で、稽古。
 今日、作者の山崎くんは、バイトで遅くなるので、桜澤さんと丁田くん、それに舞台進行の上村くんの4人。上村くんは、山崎くんと同じ「作劇舎」のメンバー。
 最初に、ストレッチ。
 フライングステージと同じで、日替わりで誰か一人にリードしてもらうようにする。
 今日は、桜澤さん。
 彼女はずっとバレエをやってたので、体の線がどこか「バレエ」してる。
 丁田くんは、ストレッチでアキレス腱を伸ばしたりしてると、ものすごく腰が決まってる。
 「何か武道ってやってた?」と聞いたら、ずっと柔道をやってて、2年前から空手を始めたんだって!! しかも「極真」!! 決まるわけだわ。
 続いて、これもまたフライングステージでやる、拍手を回すゲーム。それから、しりとり。
 こないだ桜澤さんがフライングステージの稽古場にきて、しりとりのできなさに落ち込んでたけど、「今日は負けないわよ」って顔してたね。
 ともあれ、4人のしりとりは忙しい。やっぱり、みんな慣れてないもんだから、すぐにつまってしまう。不思議なモノで、慣れてるはずの僕までもが、いつもとは勝手が違う。チームってそういうもんなんだよね。
 それから、マッサージ。二人組になって、おしゃべりしながら。丁田くんと桜澤さん。僕と上村くん。
 上村くんと、こんなにしゃべるのは初めてだったかもしれない。しかもマッサージ付きでね。
 次には、「粘土」のエチュード。
 相手を、ある形につくりあげていく。粘土役は、自分から動いちゃいけない。「喜び」と
「驚き」をそれぞれつくる。
 で、今度は、こないだフライングステージでやった(って、そればっかりだけど、いいの。確信犯だから)いったん寝転がった粘土を立ち上げるっていうやつ。
 これは、時間がかかることが予想できたので、僕と上村くんはおやすみ、て言うか、実況中継。丁田くんと桜澤さんが交替でやってみた。
 さすがに最初の稽古、なかなかうまくいかない。自分ではできることが、なんで相手にはさせられないんだろう?って二人とも、かなり悪戦苦闘してた。でも、最後にはできたんだけどね。
 それから、また別のゲームをやろうとしたんだけど、4人ではできないことが、初めてみてから判明。しかたないので……というようなかんじで、台本にとりかかる。
 まず、一度通して読んでもらう。何も言わずに。
 で、その後、10行ほどのセリフをその場で覚えてもらって、二人で言い合うっていうのをやる。
 僕と上村くんもついでに、覚える。この頃、山崎くんが登場。
 で、発表してもらう。男と女が言い合う場面。さて、どっちが勝つか?
 最初、言葉が全然相手にかかっていかない。
 それをだんだん相手にかけていってもらうように、あれこれいろいろやってみる。
 一番大事なのは、自分が勝とうと思ったら、相手に勝たせないといけないということ。
 その兼ね合いの難しさと面白さだ。
 テンポは変えないで、相手のセリフのオシリを必ず食っていってもらう。
 二人とも、経験は豊富なので、僕の言ったことは、ちゃんと自分なりに解釈して、すぐにやってみせてくれる。
 今日の稽古は、相手と芝居するってことの練習だ。
 一人でやるんじゃなくてね。
 次回の稽古のために「覚えておいて」という宿題をたくさん出して、今日はここまで。

 外に出ると「大雨」!!
 どうしようかと思ったんだけど、自転車を押して、みんなで駅前の「つぼ八」にながれる。
 芝居の話をいっぱいして、外に出ると、雨が止んでる。と思いきや、ちょっと小降りになっただけでした。
 駅でみんなと別れて、傘をさして、自転車に乗ると……、ライトが点かない! さっきスイッチを入れたまんまにしてたんでした。
 仕方ないと走り出すと、雨はどんどん降ってきて、びしょぬれになりながらの自転車漕ぎ。
 もうコワイものないです。
 坂とか、そんなのなんでもない。自転車通勤はすっごい快適なはず。雨が降らなきゃね。
 高円寺に着いて、いざ、折り畳んでみる。が、なかなかうまくいかない。
 結局、「そのまんま」でエレベーターに載せて部屋まで連れて行き、部屋で畳む。
 今、自転車は、この部屋で畳まれてる。
 だけど、眠ってる枕元に自転車のタイヤがあるっていうのは、どんなもんだろう。
 ちょっと考えないとなあ。


2001年11月04日(日) HPの引っ越し J.28 Theater「ショーボーイ・エジンバラ」

 夜中から、急に思い立って、HPの引っ越しをする。
 いつでもできたんだけど、ふとやってみたくなって、さくさくと。
 新しいURLは、http://www.flyingstage.com/ 
 ちょっとかっこいいよね。
 さっそく、BBSにいっこうちゃんから「フライングステージどっと混む。かっこいいわあ。千客万来ってかんじね」というお祝いのカキコをいただく。
 そんなこんなで寝たのは朝方。起きたのは昼過ぎでした。

 で、夕方からは、フッチーが一年ほど前からワークショップに行っている神ひろしさんのスタジオの公演。
 会場は、新宿のティップネスの前から線路沿いに歩いていったビルの地下。
 50人も入ればいっぱいのスタジオの、最前列のど真ん中に席を用意していただいて、まみーと二人で見せてもらった。
 神ひろしさんは、今年の夏の英国演劇祭エジンバラ・フェスティバルで、カンパニーEASTの『王女メディア」とJ-Boysの「Gay Samurai Revue」を上演してきたそうで、今回はその「帰国報告ライブ」。
 「王女メディア」が初日直後に地元の新聞で5つ星の評価を受けたのに対して、「Gay Samurai Revue」は酷評されたそう。今回のライブは、それでも、現地で作り直し、最後には大評判になるまでのお話を、エジンバラでの気持ちをつづった日記と、「王女メディア」「Gay Samurai Revue」の場面の抜粋で構成したもの。休憩なし2時間のとっても濃密なショー。
 僕は、神さんのことをずっと昔から知ってはいたのだけれど、実際にお会いするのは、はじめて。
 正確には、今から10年ほど前に「パラダイスハウス」というHIVのお芝居を見たときに、神さんが出演してました。
 その芝居は当時、三枝嬢が所属していた事務所が制作にかんでいて、僕は、「ゲイの芝居」だったもんで、すっごい楽しみに見に行ったんでした。場所は、神田のパンセホール。終演後、作者のアレクサンダー・マーチンというお兄さんと少しだけ話したりして……。その彼も、先年、エイズでなくなったそうです。
 さて、今回、僕は、初めて、神さんのダンスを見て、何て熱い人なんだろうと思いました。
 登場するダンサーたちは、神さんを含めて、みんなとっても体温の高い人たちばかりで、劇中で神さんが自分の日記のなかの「僕は自分のカラダだけが頼り」という言葉に、とても納得させられました。
 「カラダだけが頼り」 僕も昔はそんなことを思ってたよなと、懐かしく思い出しました。そう思わなくなったのは、いつからなんだろう。
 ていうか、そう思わなくなっている自分に気が付いたといった方が正確かもしれない。
 「Gay Samurai Revue」では、ダンサーの男子の鍛え上げられた肉体にドキドキし、「王女メディア」では、悩み吠え、怒り狂い、踊る登場人物たちに圧倒されました。
 エジンバラで30日間、毎日毎日上演して練り上げられたその存在感。というか、それは「観客の前で」演じるという経験が積み重なった結果、鍛え上げられたたたずまいなのだと思います。
 きれいにソフィスティケートされたものとはちょっと違う、ある種の荒々しさと、たくましさ。
 僕が感じたのはそんなものでした。
 終演後、神さんと握手して、ご挨拶をして、「神ひろしのスピリチュアルダンス」という本をいただいて帰ってきました。
 来年の2月には、オーストラリアのアデレードのフェスティバルに同じ演目で参加するそうです。
 フッチーも、メンバーとして参加するとのこと。どうぞよろしくお願いいたしますです。
 ともあれ、知ってはいたけど知り合ってはいなかった先輩とようやく会えて、僕は、とても嬉しかったんでした。


2001年11月03日(土) 「アリーmyラブ4」 Peace Maker「PRIVATE OPINION」

 録画してた「アリーmyラブ4」を見る。
 今度のシリーズは、アリーの独白(ナレーション)が多いみたいだ。
 それから、レネの歌もね。
 お話は、年上のおじさまとデートをしてるアリーなんだけど、そういう時に限って、若いイカす男子との出会いが多いのは何でよ?という「揺れる女心」モノ。
 おじさまとデートするレストランで出会った若い男子と、別の日に道でまたばったり会って、「僕って運命を信じるほうなんで……」と誘われて、絶対に「それだけは許さない」ハズだった「二股をかける」ことに。
 オフィスで二人の男がニアミスしてしまいそうになるのを必死で阻止したのに、その日の夜、家族に紹介するというおじさまが連れて来たのは、例の若い男子だった……というお話。
 って、本筋はまあいいとして、おもしろかったのは、別なところ。
 こないだも書いたFTMの女子シンディがアリーの事務所のマークっていう男子とつき合ってるって話。
 今回ついにシンディは、自分が「男子」だってことをマークに告白する。
 それも「話す」んじゃなくて、「抱きしめて」「もっと強く」って言って。イカすよね。
 「あらら、これでおしまいになっちゃうの?」って、僕は思ったし、シンディもそう思ったんだけど(きっと)、そうじゃなかったの。
 シンディの部屋をためらいがちに訪ねたマークが言うんだよね。「僕には君が女だとしか思えない。今まで通りつき合おう」って。
 もう、やるじゃん!!ってかんじ。
 このマークっていうお兄さん、このドラマの中では僕的に一番イケてない人だったんだけど、もうびっくり。
 これから、どう展開していくのか、楽しみだわ。

 昼間、友達の小野坂くんが出演してる「Office Peace Maker」の芝居を見に、小金井へ。
 東小金井の駅から10分くらい歩いたとこにある「現代座」という劇団のアトリエが会場。
 「PRIVATE OPINION」というお芝居。
 往年の超人気ロックバンド"Rumble Fish"。解散して今はそれぞれが別の生活を送っている。そんなある日、再結成の話が持ち上がり、彼らは、アメリカツアーへ出発する。
 っていうお話。
 以前のHPの日記コーナーでは、「感激」した芝居についてだけ、書いてたんですが、この形にリニューアルしてからは、「何でも書く」ことにしました。
 ので、書いてしまいます。
 このお芝居、僕は、とってもつらかったです。
 舞台上で生演奏されるロックバンドのテクニックがどうという問題じゃなくてね。
 どこにも生身の人間がいない気がして。
 まるでアニメの登場人物みたいな気がしてしかたがなくて。
 すべることが前提のようなギャグも、登場人物全員がカタカナの名前だってことも(ロイドとかジャックとかアレンとか。たぶん舞台は日本なんだと思うけども。それとも架空のどこか?)、一世を風靡したロックバンドのメンバーだったってことを納得させてくれるものが全くないこととか(演奏の腕じゃくてね)。
 芝居はウソで全然いいんだけど、そのウソをちゃんと信じさせてくれないと。
 見ながら、とってもつらくって、そのツラサの理由をずっと考えてたんだけど、一番の理由はこれなんだと思う。
 彼らがOKだと思ってることが、僕には全然OKじゃないってことについてのショック。
 芝居として観客の前に立つってときに、何がよくて、何がダメなのかってことについての基準みたいなものが、全然違うんだってことに気が付いてしまって。
 「映画のような芝居」をしたい人たちのようなんですが、僕は「アニメ」みたいだと思っちゃいました。
 この頃、若い人の劇団を見て時々思うんだけど、芝居をやりたい!って気持ちのもとがアニメだったりすると(特に作者)、登場する人物が「それはアニメでしか成り立たないでしょ」としか思えないときがある。
 やってみるのは別にかまわない。
 でも、アニメが成り立ってるのは、声優さんがちゃんとしたテクニックを持ってるからで、どんな他愛のないセリフだって、それなりにおもしろくしてしまえる。
 だから、そんな腕がない人たちが、しかも舞台で生身のカラダでやったりすれば、成り立つはずがないんだと思う。
 でも、今の芝居ってそれでもOKなのかもしれないね。 
 事実、配られたアンケートにお客さんはていねいに書き込んでたし。
 でも、僕はだめだったな。
 開演が10分押したのはまあいいんだけども、その開演直前に僕の前に座ってた女のお客さんがトイレに行ってしまって、「あ、この人が帰ってきたら開演ね」と思ってたら、その前に始まってしまった。そして、彼女は、芝居が始まる前の暗転中にドアを開けて入ってきた。
 開演前にトイレぐらいチェックしようよ。開演中はドアの前に誰か立って、暗転中はドアが開かないようにしようよ。もしくは、ドアがあいてもだいじょぶなように、幕をつっておくとかね。
 きっと、旗揚げ2回目で、舞台っていうものに慣れてないんだと思うけど、そのくらいは常識として知っておいてほしいと思う。
 そのへんがちゃんとしてたら、おもしろかったのかな? 人物の名前がちゃんと日本人してたらもっと見れたのかな?
 こんなに「なぜなんだろう?」って考えながら見てしまった舞台も久し振りでした。そういう意味では、おもしろい舞台だったかな。

 夕方からは稽古。
 久し振りに大人数が集まって、今日は10人。
 仕事でずっと来れなかったキッちゃんも高市氏も登場。
 大人数で基礎トレをして、外郎売り、そして「エレクトラ」。
 稽古前に、僕はずっと細川くんとセリフをさらってたんだけど、それが結構おもしろくって、あれこれ注文つけたりしながら、いろいろやってみた。
 みんなでの稽古は、二人組に分けて、53場の最後近くのクリュタイムネストラとエレクトラの激しいかけ合いの場面をやってみる。
 まずは、いつものしりとりのように、相手のセリフのラストを食い気味にテンポよく。自分のセリフは同じテンポで、決して早口にならないこと。
 しばらくしてから発表。
 相手にちゃんと言葉がかかってるか、というのはもちろんなんだけど、今日は、「相手の言葉に対して言い返す」というのをやってもらう。
 どう言うかじゃなくて、相手の言葉に対して、ちゃんと言葉が返っていくように。
 台本持ってる組は、なかなか難しそうだった。相手にちゃんと届かないから、返し方もちゃんとしなくて、何だか気持ちが悪い。
 覚えてる組はそれぞれ面白かった。
 久し振りのキッちゃんの相手は僕。彼はとってもよくやってた。
 1チーム2回ずつの1回目、僕は途中で一カ所セリフが出なくなってしまったんだけど、その後のキッちゃんの芝居が急にのびのびしてきた。……いいことですね。
 2回目は、「負けるもんか!」って頑張った結果、引き分けくらいになりました。
 一歩も引かないその度胸はすばらしいと評判に。
 ひと休みして、今度は通してみようかねと思っていたら、何と今日は9時でおしまいだったんっでした。
 日曜・祭日は、延長使用ができないっていうのをすっかり忘れていて。ていうか、今日が祝日だっていうのを忘れていて。
 あわただしく片づけて帰ることになりました。
 稽古場には、来週から稽古が始まる「夜曲」の作者、山崎くんが来てくれてたのに、あんまり話ができなくてごめんなさい。
 でも、笑いながら見てたから楽しんでくれてたのかな?


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