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2002年02月03日(日) メール4(さらにヤマト)

ピーっ・・・
「はあ・・・」
ポケットの中のDターミナルのメール着信の音に、ついため息がもれてしまう。
どうして午後の授業中になるとメールしてくるんだろう。あの兄は。
どうせ、眠気ざましの退屈しのぎにされてるんだろうとは思うけれど、そして、どうせ大した内容じゃないんだけれど。
休み時間に見ればいいものを気になるので、つい開いてしまう。
どうせ、ああ見なきゃよかった、なんて内容にちがいな・・。
「だあああ・・・っ!!」
思わず叫んでガタッ!と立ちあがったタケルに、前にいた先生がにこりと黒板を指差す。
「ちょうどよかった。高石、問2やって」
「あ・・・はい」
赤面したまま、仕方なしに黒板に向う。
ああ、だから言わんこっちゃない。
やっぱり休み時間になってから見ればよかった。いや、家に帰ってからにした方が・・・。
算数の計算をしながらも、心の中でしきりに後悔をするタケルだった。


「さっきのなんだあ?」
放課後になって、何気に不機嫌なタケルに、大輔がタケルの机に腰を降ろしてその顔を覗きこむようにして言う。
「お兄ちゃんから、メール」
「・・・おまえら、相変わらず兄弟でメール送りあってんの?」
「・・・向こうが勝手に送ってくるの!」
ランドセルに少し乱暴に教科書を詰め込むタケルに、大輔が“ったく、兄弟でメールして何が楽しいんだか・・”と呆れたように肩をすくめる。
「読む?」
いきなりDタ―ミナルを差し出されて、大輔がぎょっとしたようにそれを見る。
「え? い、いや、いいって」
「どうぞ」
「なんだよ、いいって!」
「どうぞ!ったら」
「おまえなあ・・・」
なおも強引に突き出されて、しぶしぶ受け取るものの“愛してるよ、タケ
ル”とかでも書いてたらどうしようと(ありうる・・)恐る恐るそれを見る。
「え・・と? ・・・・・の女の・・・おい、これ何て字だ?」
「淫靡」
「淫靡・・に・・・・・おい・・・・これは? 春?の下に虫2つ」
「蠢く」
「・・・・・・・これは?」
「襞」
「? 何がなんだか、さっぱりわかんねえんだけど?」
「だから! 『淫靡に蠢く男の舌が、女の襞をまさぐ・・』
 ・・読ますなああぁぁーーーー!!!!(///////)」


「何ニヤニヤしてんだ、ヤマト?」
教室の外の廊下で、携帯を手にほくそえむヤマトに、太一がポンとその肩を叩いた。
「太一か。・・・いや、別に」
「おまえ、また変しなメールしてんじゃねえだろうなあ。タケルに」
「いや、ちょっと本の内容の抜粋を」
「は? まーいいや。それより、川嶋から新しいの借りたぜ。例の」
こそりとヤマトの耳に囁く太一に、ヤマトが涼しい顔でそれに答える。
「今月号か? また回せよな」
「おう。どーでもいいけど、タケルには口止めしとけよ。ヒカリにバレたら、うる
せえから」
「ああ、ってか、あいつちっとも見ねーんだよな。恥ずかしがって」
「まだ小学生だから、そういうトシなんじゃねえ? 俺らぐらいになったら止めても見るって」
「ま、からかいがいがあって楽しいけどv」
「・・・へ?」


「もお、大輔君なんか知らないからね!」
ランドセルを背中に背負うと、ずんずんと先に帰ってしまうタケルに、大輔が慌ててそれを追いかける。
「なんだよ、何怒ってんだよ! 待てって、タケル!」
「先帰るから、ばいばい」
「待てってば! けど、おまえすっげえなあ。あんな難しい漢字すらすら読めるなんて、よっぽど家で勉強・・・・いってえ!」
「大輔くんのばか!」
真っ赤になって怒るタケルに、いきなり頭を殴られた大輔が困惑して叫ぶ。
「な、なんで怒るんだよ、殴るんだよ! おおい、タケルー!」
「うるさいっ」
まだまだ純粋無垢な小学生の二人の、長い影を道に落として、夕陽がそれを見送っていた。
平和で、おだやかな夕暮れに。
タケルだけは心おだやかではなかったのだけれど・・。


そして、2002年。あらたな戦いの火蓋はまた切って落とされた・・。


END



久々にメールの続きを書いてみました。相変わらずなヤマト。
こんなに続けるのなら、タイトルをもう少し考えてつければよかったよ・・。
あ、3の後にもう1コあったのに忘れてました。まあいいか。またそのうち。
とっても健康な中学生の2人と、まだまだ子供な小学生が書けて楽しかったですが、こういうのスラスラ読めるタケルってどうよ?という気も。実はこっそり、お兄ちゃんの置いていった本を読んでたりするのかも? なにはともあれ、私が書くと、タケルはやたらと大輔に絡むというか怒ってるのが自分でも笑えます。「なんでオレにばっか怒るんだよ!」というのも、気にしてる証拠だと思うんですが、怒られてる方はわかんないのでしょう。(そこがまたヨイv)
また続くかどうかは・・・わ、わかんないです・・。

てなことで、かわしまさんに捧ぐv 元気だしてね。(風太)


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