るるるるる。
「はい〜。あっどうもお世話様ですぅ」 「はい。はい。よろしくお願いします〜」
かちゃり。
「棚が来るってさ」 「あんた待望の本棚」
おお。 そうですか。 やっと僕の「M0NSTER」を入れる棚が来るんですね。
「え?別にアンタのマンガを入れる棚ってわけじゃないけどさ」
むっ。
そうこうしているうちに棚が届く。 運び込んでもらい、梱包をといてもらう。
…
こ、この部品の多さ。 これを今から組み立てるんですか。 えーっと…。
…
わ、わからない。 説明書を読んでもわからない。
「何してんの」 「まずこれとこれをあーしてこーしてこーすんのよ」
おお。さすが。 この人パズルだけは得意なんだよな。 えー、これとこれをあーしてこーして…
「あっ。この部品ちゃんとはまってない」 「なんではまってないのに、そのままねじどめすんの?」 「とにかくはずしてよっ。まったくもう」
え?でもそれをはめたのはアナタですよ。 僕はねじをとめただけで。
「だから確認してって言ったじゃん!」
ちきしょー。 でも、ここで妻を怒らせたら自分で図を解読しなければならない。 我慢我慢。
しかし、はめてもはめても、とめてもとめてもちっともでき上がらない。
「で、でかすぎる…」 「なんでこんなでっかい棚にしたのさ…」
はあ。サイズを決めたのはアナタですよ。 どうせならでかいほうがいいって言ったのもね。
そのうち妻は口ばかりで手が動かなくなってきた。
「電池切れだ〜。手が動かないよう」
はあ。あんまり性能のいい電池じゃないですもんね。
「今、なんて言ったの?」
しまった。 僕も電池が切れてきたらしい。
「あっ。アンタ、それはそこじゃないでしょ」
あ、あれ? こっち向きで…これ?あれ?
「ぷ。アンタはアタマの電池が切れてきたね」
な、なにをっ。
などと夫婦の危機を迎えながらもなんとか本棚が完成した。 おお。なかなかいいじゃないか。 えっと、ここにこれを…
「あっ、なによ。そんなとこにそんなもの入れるの?」 「MONSTERはともかく」 「何その知性のない本!」 「どっからそんな古い本持ってきたの???」
何を言っている。 これは名作だぞ。
再び夫婦の危機だ。
すったもんだの末、棚のいちばーん上のほうに置かせてもらいました。 なんで僕は棚の位置さえ選べないんだ。 ちなみに妻に古い、汚いと罵倒されたのは、 「あしたのジョー」と「赤いペガサス」 どちらも素晴らしい名作である。
「はいはい」 「また前世紀の遺物ですね」
ものの価値のわからないやつだ…。
昨日は飲み会だった。 飲み会と言っても同じ役職の者がいろんな営業所から集まり、 その会議の延長としての飲み会だ。
帰ると妻の機嫌がよろしくない。 年金がなんだかんだ言っている。 帰ってくる早々。 こっちもいろいろあって疲れてるんだよ。 で、ちょっと不機嫌な答えをしたら、ふて寝された。 まあ、うるさいより寝てくれたほうがいいですけどね。
今朝になっても機嫌は悪い。 天気も悪いもんなあ。
「この天気の中、地区の仕事で学校に行かなきゃなんないんだよ」
あー、そっちでしたか。 しかし、アナタ、役員役員って言うけど、 僕も昨日の役職の会の事務局の役員になったんですよ。 使い走りの書記ですけどね。
と、とたんに機嫌がよくなった。
「まー、そりゃそりゃたいへんだねえ」 「え?会長は?」 「そう。トラのようなあの同期の女性?」 「んまー」
人の不幸が大好きなんだな。 同病相哀れむ?
しかし、昨日もそのトラのような同期に 「いいわよ、私が会長やるわよ」 「えーと、じゃあ、あとは○○さんとけちぞうさんでいいわね」 と、勝手に指名されたのだったなあ。
部署が別になったのに、またあのトラと1年つきあうのか。
内でも外でも猛獣使い…
「ちょっとアンタ」 「あれほど言ったのに、捨てたね」
は?何を? 何のことでしょうか。
「レシートだよ」
え? ああ、だってお財布パンパンでしたよ。 お金補給しようと思ってあけたら、レシートでパンパン。 お金入れるとこないんですもん。 だから、いらなそうなのは捨てました。
「生協のレシートも?」 「わざわざハンコ押してもらったのに?」 「やっとポイントカードが届いたから、入れてもらおうと思ったのに?」
えっ。 あ、そういえば、なんだかそんなこと言ってましたねえ…
「ひどい!」 「主婦の唯一の楽しみをっ」 「こつこつシール集めたり」 「こつこつポイントためたりするのが主婦としてのひそかな楽しみなのにっ」
アナタ、それドラマの見過ぎじゃないですか?
だいたい、主婦の楽しみって主婦の仕事なんかしてないくせに。 こんなときだけ主婦を気取るのはやめてください。
「きー、正論をはくんじゃないよっ。お小遣いからポイント分引くからねっ」 「2000円分だからねっ」
うそつくな、レシートの合計がそれくらいだったぞ。 何がこつこつだ。 ポイントためる前にむだ遣いをヤメロ。
「今年も発売前にパンフレットを手に入れたいよねえ。沖縄」
ふっふっふ。 僕にぬかりはないのだ。 パンフレットはとうの昔に申し込み済みだ。
「それって発売になってから送ってくるんじゃないの?」 「確実に発売前に来るんだろうね?」
むむ。 そういわれると、いつまでに送るとは書いてなかったかも。
と、ちょっと不安になったのだが、ちゃんと来ましたとも。 ええーと、いつも申し込んでるやつのパンフは… おお、これだこれだ。
ふむふむ。 よしよし、日程からいってこれだな、これ。
じゃあ、これ申し込んでおいてくださいね。
「え?」 「アンタ、ちゃんと検討したの?」 「こっちのパンフは見た?」
いや、それ去年見ましたけど、そっちのほうが高いんですよ。 だから、いいんです。
「何言ってんのよ。一応チェックするのよ」 「いいよ、もう私が見るから」
「ん?んんん〜?」 「うちがねらってる日程はこっちのほうが総額で3万くらい安いよっ」 「いったい何を見てるのさ」
ええ?そんなはずは。 むむー。 確かに妻の言う通り。 こちらのほうがかなり安そうだ。
「だから3万円くらいだってば」
いや、ちゃんと条件をつめて計算してみなければっ。 かちゃかちゃかちゃ…。 んー、すんばらしい。 エクセルで比較表が出来たぞ。 ITリーダーにかかればこんなものちょろい、ちょろい。 3万800円の差だな。
「だーかーらー、3万円くらいって言ってるでしょ」 「私計算間違いは多いけど、概算は得意なんだよっ」
まーまー、そうおっしゃらず、この表を見てくださいよ。 メールでそっちのパソコンに送っていいですかね。
「いいけど、見られないよ、エクセル入ってないんだから」 「PDFにしてよ」
は?なんですって? これはエクセルのファイルですから。 そのピーなんとかにはできないでしょ。
「えー、書き出せないのかなあ」 「私もエクセルはよく知らないからなあ」
あっそうだ。 いいことがありますよ。 フロッピーに入れればいいんですよ。
「は?」 「そういう問題じゃあありません!」
はっ。何か間違えたのか?僕。
「ひっひっひ。ネタ提供ありがとうございます」
やっぱり何か失敗したらしい…。
いやー、さわやかな天気が続いて素晴らしい週末だ。 洗濯物を干していてもほんとに気持ちがいいなー。
「えー、そう?」 「私、休みの日に晴れてるのってキライ」 「雨が降ってたりして、あー、これじゃあでかけられないなって」 「ゆっくりしたい」
ふっ。 つくづく人生が正しくない人だ。 晴れた休みの日に外で楽しく遊ぶ。これが正しい休日なのに。 だいたいアナタいつもゆっくりしてばっかりじゃないですか。
まー、何はともあれ朝ご飯だ。
あれ? おかゆいっぱい…? これだけですか。
「ごはんこぼしちゃったからさあ」 「割り当てが少なくなっちゃったのよ。ごめんね。うひひ」
まあ、仕方ない。 イ、インスタントラーメン作っていいですかね。
「どーぞ、ご自由に」
そういうわりには作って食べてるとなんだか機嫌が悪いんだよなー。 空気を読まないムスメたちがラーメンを食べにきたりするからなおさらだ。 しっし。あっちに行きなさい。 おかあさんの顔をみてごらん。
「みんなラーメンがいいなら、最初からおとうさんにつくってもらえばよかったじゃん」
むむー。 人がせっかく気分よくラーメン食べてるのに。 でも、ここで言い返すとせっかくの休日が台無しになるのだ。 ここはオトナの僕が我慢するのだ。
そうだ、天気がいいのだから布団を干そう。 それから掃除機もかけなければ。
子供が向こうにいっている今がチャンスだ。 こっちにくるなよー、あっちいってろー。
「さっきから子供くるなー、くるなーって言ってるね」 「そんなに子供キライならつくんなければよかったのに」 「そしたら私のめんどうだけ見てればよかったんだよ。楽だったのに」
え? いや、アナタがいるから子供が邪魔なんで、 子供だけならたぶん邪魔じゃないような…。 それにラクっていうけど、そんなこともないですよね。
その証拠に掃除機をかけていると…
「ゆっくりしたいのに、なんだかゆっくりできない〜」
…。 もう十分ゆっくりしたでしょうに。 とりあえず、そこどいてください。 また戻ってきていいですから。
「仕方ない。かおあらってこよー」
ま、まだ洗ってなかったのか…。
掃除機をかけ終えたら皿洗いだ。 さすがにちょっと疲れてきたぞ。
すると、妻がパソコンに向かったまま、 「まだお皿洗ってなかったの?」
ってあまりといえばあんまりだと思う。
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