晴れ渡る空、輝く太陽。
天気を心配したが、運動会日和だった。
上のムスメは白組、下のムスメは赤組。 別れてしまったが、親心としては入学以来1度も勝ったことのない上のムスメを勝たせてやりたい。 許せ、下のムスメ。 しかし、なんとなく下のムスメは応援しなくても勝ちそうなんだよな。 と、いうわけであからさまにではないが白組を応援。
しかし、神様は残酷だ。 中盤になって予想通り赤がリード。 なんだか見ていると白は全然勝てそうにないのだ。 ここは午後のつなひきに僕が白組としてがんばるしかないだろう。
「おつかれさまですぅ。暑いのにがんばったねえ」 「ぷ。でも、負けたね」 「思いっきり負けたね」
ううう、うるさい。
「ところで、ビデオが動かないんだけど」 「もうすぐ1番のお楽しみの花笠音頭なんだけど」
な、なにっ。 ちょっと貸してみなさい。 あっ。 バッテリー切れじゃないか。 だから、五十メートル走をあんなにリプレーしてはならないと言ったのに。
「ええー、あれくらいでバッテリー切れちゃうの?」 「不良品なんじゃないの?アンタの充電が甘かったとか?」 「あっ。アンタが前半にカードとテープの切り替えができずに浪費したからじゃないの?」
なんでも人のせい…。 とりあえず、ちょっとこっちにそのビデオよこしなさい。 アナタにはカメラかしてあげるから。
「仕方ない、変わりに正面からいっぱい写真とろう!」
妻は元気に走っていった。 一応自分が悪いという自覚はあるけど、認めたくないんだな。
ああ、なんだか気持ちが悪い…。 ………。
「あっ!ちょっとアンタ」 「いないと思ったらなんでこんなとこで休んでんの?」 「花笠音頭終わっちゃったよっ」
なんでそんなに花笠音頭にこだわるんだ。 ちゃんと見ましたよ。遠くから。暖かく見守りましたって。
「遠くから?」 「足も遅くて闘争心にもかけるりんごが唯一得意なダンスを」
そ、そんな言いよう…
「遠くからですって?」 「アンタ、それでも運動会ファンって言えるのっ」
運動会ファン…
「帽子かぶんないからだよっ。私なんてなんともないよっ」 「ほら、200円あげるから、ジュースでもかっといで!」
200円…
「買ってきてあげようか?立てないんなら。ぶふ。」
い、いえ。 自分で。 自分で行けますとも。
「ぷ。プライド?」
はい。 ここでアナタを頼ったりしたら、運動会のたびに毎年言われますからね。
スポーツドリンクを飲んだらちょっと元気になった。 先に帰ればって言われたけど、結果を見てこその運動会なのでがんばった。
案の定、白組は負けた。
そして、僕は個人的に妻に負けた気がする。
上のムスメよ、来年はがんばろうな。
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