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2021年12月31日(金)
2021年あれやこれや

ちいさな声を聴き逃さないようにしなければ、正義という名の大きな波に呑み込まれないようにしなければとこれ程思った年はありませんでした。あのとき誰が何をいったか、何をしたか。憎みも恨みもしないけど、忘れることはないだろう。

★は特に印象深かったもの。

◾映画
 『チャンシルさんには福が多いね』
 『KCIA 南山の部長たち』
『アメリカン・ユートピア』
やーもう『アメリカン・ユートピア』と『ストップ・メイキング・センス』再上映にはほんと助けられた。今年観ることが出来てよかった

◾ライヴ
 菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール コンサート2021 in オーチャードホール
DC/PRG Hey Joe, We're dismissed now/PARTY 2-TOKYO
 TOKYO No.1 SOUL SET『WE LOVE T1SS』
ちょっとした日にちの違いで延期になったり中止になったり。DC/PRGがあのタイミングで最後を迎えられたことは奇跡的ともいえる。喪失を受け入れろ、か

◾音源
https://flower-lens.tumblr.com/post/672107917531594752/%E6%97%A5%E8%A8%98%E7%94%A82021%E5%B9%B4%E3%81%AE%E3%83%98%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%AD%E3%83%86

Shame『Drunk Tank Pink』
DC/PRG『20 YEARS HOLY ALTER WAR - MIRROR BALLISM Tour Live』
Squid『Bright Green Field』
Black Country, New Road『For the first time』
『American Utopia On Broadway: Original Cast Recording』
折坂悠太『心理』
Sam Wilkes『One Theme & Subsequent Improvisation』
三宅純『Whispered Garden』
METAFIVE『METAATEM』

◾舞台芸術
飴屋法水 × 山川冬樹 × くるみ『キス』
 ケムリ研究室 no.2『砂の女』
 『パ・ラパパンパン』
 さいたまゴールド・シアター最終公演『水の駅』
飴屋さんは現在休養中。時間とともに“古く”なっていく身体と、創作活動によって受ける負荷。「生まれてきたから生きている」という作品の怖さをいつも思い知らされる。あのときあの場でしか起こらず、二度と体験出来ないもの。ゴールドシアターの面々もそれを見せてくれた

BÉJART BALLET LAUSANNE JAPAN TOUR 2021
  『人はいつでも夢想する』『ブレルとバルバラ』『ボレロ』
 『バレエ・フォー・ライフ ─司祭館はいまだその魅力を失わず、庭の輝きも以前のまま』

小林十市の仕事
 『International Choreography × Japanese Dancers 〜舞踊の情熱〜』
 『エリア50代』
 Noism Company Niigata × 小林十市『A JOURNEY〜記憶の中の記憶へ』

 フランソワ・シェニョー × 麿赤兒『ゴールドシャワー』

コロナ禍だからという訳ではないが、昨年から台詞のない身体表現を観る機会が増えた。十市さんが帰国していた9〜11月は毎週のように横浜と上野に通っていたなあ。充実の秋でした

◾配信
Dumb Type『S/N』
 テキストには残していないもので
 『FUJI ROCK FESTIVAL 2021』のMETAFIVE(META TWO)
 『METALIVE 2021』

さて来年、疫病は終息するとは思わないが収束にはなるだろうか。



2021年12月26日(日)
『ただ悪より救いたまえ』

『ただ悪より救いたまえ』@シネマート新宿 スクリーン1


いやー待った待ちました。日本での撮影があったと知り、本国で公開されたときファン・ジョンミンに「熱い夏を救うアジェファタール(※アジョシ+オムファタール)、夏が愛した魔性の男」というキャッチコピーがついたと知り、いつ! 日本での公開は! はよ! と思い続けて一年以上。なんとクリスマスイヴの封切り、何の冗談か。原題『다만 악에서 구하소서(ただ悪より救いたまえ)』、英題『DELIVER US FROM EVIL』、2020年、ホン・ウォンチャン監督作品。

最後の仕事を無事終わらせ、南の島で余生を送ろうとしていた殺し屋インナム。その最後の殺しの相手というのが日本のヤクザだったんだけど、その弟・レイがヤベーやつで、復讐してやる〜とどこ迄も追いかけてくる。東京から仁川、そしてバンコク、ランヤオ。周囲の人間を巻き込んで、ふたりが通り過ぎたあとには死体の山が出来上がる……。

話としてはもうこんだけなんですが、インナムに実は娘がいて、その娘がタイに住んでて臓器売買目的で誘拐されたとか、タイってことで性別適合手術を受けようと韓国から来ていたトランスジェンダーのユイがインナムに協力することになるとか、レイはレイで在日朝鮮人としての複雑な家庭関係とか、いろいろあるんですが、そこら辺もうちょっと、もうちょっと練ってくれよ〜と思わないでもなくてですね……インナムの娘たまったもんじゃないな! とか、ユイと警察んとこのジョーク滑ってるなとか、インナムの元恋人(=娘の母親)役が『金子文子と朴烈』での名演が記憶に残るチェ・ヒソだったんですが、このストーリーで彼女に日本語の台詞ないとか勿体なさすぎる! とか。

しかし、ん? んん? と引っかかりつつも、皆さんの演技が素晴らしすぎる+レイちゃん(といいたくなる)の勢いが凄すぎてもはや笑いが出るという状態で、最後迄一気に観せられたという感じ。もうレイちゃん面白すぎたよ…トゥクトゥクの運転手さん無事だったかしら……タイのマフィアも警察も、追ってる案件とは全く関係ないひとが現れて大暴れ(なんてもんじゃない、災害だあれは)したら「ちょ誰、何」てなるよね……レイちゃん落ち着いて! インナムを追う理由も途中で忘れたとかいうところ、ホントはシリアスなシーンなんだろうけど「ちょレイちゃん、思い出して!」とかいいたくなった。もはや楽しい。

そうそう、画ヅラがめちゃめちゃよかったです(『パラサイト』『母なる証明』の撮影監督・ホン・ギョンピョ。来年公開予定の李相日監督作品『流浪の月』でも撮ってるそうです)。仁川の夕暮れは圧倒的な色彩だったし、インナムを演じるファン・ジョンミンの瞳の撮り方が、あーこの色を撮りたかったんだな、観客もこの虹彩が観たかったです! という光の当て方でした。アクションの撮り方も独特で、打撃部分は本当に当たって見える(顔が曲がるし、汗も飛ぶ)ので「え、本当に殴ってんの!?」と驚いた。実際に当てているアクションをスローで撮り、スピードを上げて編集しているそうです。

しかしホント演者がよかった……ジョンミンさんの、物語る無表情の表情の見応えあること。一方レイを演じたイ・ジョンジェのぶっ飛び方も面白すぎた。スタイリッシュヤクザここに極まれりのキメキメファッション、登場する度衣装替えして楽しませてくれました。そうした見た目だけでなく、あの金網越しにインナム見るときの表情もめちゃめちゃ衝撃的。あんな顔するか、と驚かされもした。獲物を見つけたって顔じゃなかったじゃん、逃げないでえ、とすがるような目をしてたじゃん。こういうところ、ジョンジェさんの面目躍如ですね。ふたりが同じ作品に出るのは今やソフトが入手困難の(今観たらBlu-rayはプレミアついてた分も品切れになってるな)『新しき世界』以来ということで、この作品で韓国映画(とファン・ジョンミン)にハマった者としては、再びふたりのガチンコ共演を観られて感無量でした。なんでもこの話が来たとき、ジョンジェさんジョンミンさんに「ヒョン、この話受ける?」って連絡したそうじゃないの……「うん、やるよ」「じゃあ、僕もやる」で決まったそうですよ〜最高か。エレベーターアクションや延辺からの…‥とか、ちょこちょこオマージュもあってニコニコしました。

あともうひとりのジョンミンさん、パク・ジョンミンがめちゃめちゃよかった。噂には聞いていたが演技の天才といわれるだけのことはある。性別適合手術を受ける前のトランスジェンダーの役ですが、適合手術前だからヒゲは伸びてしまうし、手術費用を稼ぐためにショウの仕事をしているので所謂おネエのキャラクターとして働いている。心身の不一致に違和感があっても、それを表に出すか内に秘めるかは個々の人間性。明るさと強さを持つユイという人物そのものにフォーカスした演技だと感じられました。個人的には、近年の映画におけるLGBTQの描写についてドラァグクィーンとオカマを自称する人物が置いていかれている感じがしていたのですが、パク・ジョンミンの演技はその色付けのグラデーションが見事だった。

惜しむらくは、レーティングの問題かゴアなシーンが少なかったことか。解体しまーすとかいうたらワクワクするじゃないか、『殺し屋1』好きとしては。あそこ迄セッティングしてるんなら見せてくれると思ったのに! 本編より6分長いファイナルカット版があるそうなんだけど、そちらに期待したい(何を)。

音楽(Mowg。今後気にしとこ)もヨハン・ヨハンソンマナーですごい好みでした。なんだかんだいいつつもリピートするだろうな、というか早くまた観たいんですけど! クセになる作品です。

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・『ただ悪より救いたまえ』┃輝国山人の韓国映画
いつもお世話になっております。どこよりも詳しいデータベース

・「いきなり自分の子どもの存在を知って、そこからどうしたらいいのか」『ただ悪より救いたまえ』ホン・ウォンチャン監督 インタヴュー┃A PEOPLE
「ファン・ジョンミンは一切、観客に目配せすることなく、抑えたトーンの中で様々な感情表現を見事に演じきってくれたと感謝しています。」
いやホント抑えた演技が素晴らしいよねジョンミンさん……


上田現はマレーシアだったがインナムはパナマに行きたかったようですヨ! 夢の南の島!


本国での予告編公開時話題になってたとこ。このあと豊原功補さん(役名がコレエダってとこにもニコニコ)や白竜さんの出演が判明したのでした。しかしこんなに日本で撮影してたとは……パンフレットにもロケ地メモ載ってたけど、中野とか高円寺とか、普通〜の街角にファン・ジョンミンが! この頃(2019年頃)はあちこち外国でロケも出来たんだなあとしみじみもしたなあ。遠い昔のことのようだ……



2021年12月25日(土)
さいたまゴールド・シアター最終公演『水の駅』

さいたまゴールド・シアター最終公演『水の駅』@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール


最後にこんなの見せられちゃ、次を、新作を期待せずにはいられないよ。悔しいけれど、これでおしまい。やはり杉原邦生はすごい、と思わされた公演でもありました。しょっちゅういってるがあの鳥の目……舞台、演劇において視点を選ぶのは観客と承知した上で、その選ばれる視点全てに応える目。

旗揚げから15年。創設時66.7歳だった集団の平均年齢は、今81.7歳だ。最後の公演に選ばれた作品は、太田省吾の沈黙劇。客演にはゴールドのメンバーと同世代の小田豊と、若い世代から井上向日葵。

照明・美術バトンが降ろされた状態の裸舞台には、装置用のトランクや台車が点在している。前方中央に水道の蛇口。細く水が流れ続けている。舞台下手側にちいさな花道。観客が劇場に足を踏み入れた時点から、作品は始まっている。蜷川さんの手法でもあり、杉原さんの手法でもある。水の滴る音を聴き乍ら開演を待つ。真っ白なワンピースを着たひとりの女性が舞台に駆け込んでくる。バスケットからプラスティックの赤いコップを取り出す。それに水を受け、ゆっくりと飲む。徐々に客電が落ちていく。いつの間にかそこは、水の駅だ。

壊れた蛇口から流れ続ける水に、行き交う人々が触れていく。男性同士、女性同士、男女のふたりづれ。ひとりで、ふたりで、集団で。飲む、浸かる。足を洗う。水辺でひとを愛し、ひとを憎み、ひとを葬り、そして去る。生命の源でもある水を得て、彼らは花道から去っていく。鴻上尚史の『ピルグリム』を思い出す。水辺はひとが行き交い情報を交換するオアシスだ。目的地ではない。いつかはそこを去らねばならない。それは人生と同じこと。

開幕してすぐに気付く。老人だから動作がゆっくりなのではない。実際、幕開けに登場した「少女」役の石川さんはとても軽やかに機敏に動く。「2mを2分で歩く」稽古を経て、彼らはゆっくり動くことが“出来る”のだ。そうでなければあのポーズはとれない。筋力がなければスローモーション、ストップモーションはもたない。動作と動作の間、演者たちの肉体は引力に、時間にしっかり向き合っている。彼らは一言も発することなく、人生を見せてくれる。表情、伸びる腕、高く上げる脚。

とはいうものの、「水、冷たくないかな?」「一気に飲んでむせてしまったら、誤嚥性肺炎の危険が……」「お湯かな? いや、湯気が出てしまうし」なんてハラハラした。終演後の帰り道で同じようなことを話している声を複数聴いたので、そう感じたひとは多かったかも。長年の信頼関係とケアがあるのだろうとも思う。15年一緒に作品をつくり、海外ツアーも経験している。演者とスタッフ、どちらもプロとして作品に向き合っている。

絶妙なタイミングと音量で、さまざまなアレンジが施されたエリック・サティ「ジムノペディ」が流れる。Taichi Kaneko(TAICHI MASTER)によるトラック――激しいビートとノイズ、煌びやかな音色、静謐なピアノ。長い人生で直面するさまざまな出来事と呼応するよう。バトンから降ろされた「GOLD」モニュメントの、圧倒的なインパクトと美に高揚する。ゴミの山に命が消費するモノについて思いを馳せる。戦争か自然災害か、光と音により破壊される日常。動かなくなる若者。彼女は老人たちに包まれて見送られる。生きてきた長い時間のなかで、消えていく命を見つめる。

最後の登場人物は舞台の奥からひょっこりと現れ、ゆっくりと近付いてくる。さい芸の舞台の奥行きを活かした演出は、蜷川さんが得意とした手法でもある。ホームレスのような姿だが、その背中にはいくつもの風船がフワフワと浮いている。ブラックとグレーの間のような、モノトーンの風船だ。この絵ヂカラは凄まじいものがあった。終わりが近づいている。彼はかつての登場人物たちが散らかしていったゴミを、綺麗に拾い集めて去っていく。残るのは更地、そして蛇口。鮮やかとしかいいようがない。演じる遠山さんの愛らしさが、現実とリンクする。

ああ、遠山さんは杖をつくようになったんだ。佐藤さんは車椅子に。ゴミの山の頂点にいる盒兇気鵑稜惴紊砲浪燭あったときのためだろう、黒衣が控えているのが見える。彼らの姿は、作品のなかで違和感どころか必然として映る。

欲をいえば最後の公演、役者の声を聴きたかったな……と思っていたらあのカーテンコール。最後の「ジムノペディ」は蜷川さんが使用していたヴァージョン。出演者たちはまっすぐに立ち、明晰な声で自分の名前と年齢を語る。ゴールドシアターのオーディションで、最初の公演で語られた“台詞”だ。なんて粋な。降りてきた蜷川さんの遺影を背に挨拶する役者たちに、万感の思いを込めて拍手を送り続けた。

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千秋楽のカーテンコールでは今回出演されていない方々の写真が登場したそうで、遺影かと衝撃を受けた方も多かったようです。この方のツイートによると「体調やご都合で出演されなかった方のお写真もあった」とのこと。ホッとしましたが、いつかは、誰にでもそのときは来る。当日パンフレットには全員の今の年齢が記載されていました。

亡くなった方がいても敢えて公表はしない方針なのだろうなとも思っていました。当初の発表では出演予定だった葛西さん、最年長の重本さんのお姿も拝見したかったですが、どこかで楽しくしてらしたらいいな。ゴールドは最後迄このメンバーで行く、と蜷川さんも仰っていた。これからもずっと、彼らはゴールドのメンバーだ。

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・【連載】さいたまゴールド・シアターとわたし┃ステージナタリー
当日パンフレットにも掲載されていた、歴代作家、演出家たちの寄稿。どれも頷き膝を打ち、それぞれの公演を振り返る。岩井さんのテキストが説得力あるおかしさ


歴代作家や演出家が相当手を焼いたと思われる(蜷川さん曰く「老人は天使なんかじゃねえ!」)ゴールドのメンバーの心をぽっかり開かせた(ように感じた)杉原さん空恐ろしいわ。遠山さんは『ワレワレのモロモロ ゴールド・シアター2018春』『よみちにひはくれない 』と数々の名演を見せてくれました


観ているときこれ思い出してた。ナミブ砂漠のオアシスはまさに水の駅。ライヴ配信されています。いろんな動物が来るよ。クリスマスはサンタが来たそうです(笑)


いつか観ることが出来ないだろうか。と今でも思っているし、これからもそう



2021年12月18日(土)
TOKYO No.1 SOUL SET『WE LOVE T1SS』

TOKYO No.1 SOUL SET『WE LOVE T1SS』@CLUB Que


Queの店長さんの前説があって、「有観客でライヴが行えて、久しぶりにこんなにお客さんがたくさん来て、お酒の販売もOKになって本当にうれしい。でもまだ油断出来ないので、お互い思いやりを持ちましょう」って。始まる前からほろりときてしまった。前回ソウルセットがQueでやったライヴは無観客で配信のみ。「僕ファンなんです、興奮してます!」と店長さん。本当によかった!
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BIKKE:vo
川辺ヒロシ:tt
渡辺俊美:vo, g
笹沼位吉:b
三星章紘:perc
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権利関係やら何やらでリイシューも配信も出来ない過去作のナンバーをリレコーディングした『SOUND aLIVE』。そこから生まれたトラックがよくてですねえ。近年のライヴではこちらのトラックに移行していましたが(というかライヴから生まれたトラックであるともいえる)、作品としてリリースされ多くのひとに聴かれる機会が増えたこと、とてもうれしいです。

という訳で二日目の三人セットも非常に気になったのですが、一日目のみの参加。二日目も配信あったんだけどアーカイヴされないので観られなかった。無念。三人セットは早くも次回決まったので日程空けときます! チケットとれますように!

ちなみに「Too Drink To Live」のトラックは、おなじみ「Rip Van Winkle」のループ使ってました。これはねえ、特別だものね。スカフレイムスは同日クアトロでライヴ中(何故被る)、トシミくんがエールを送ってた。以下おぼえがき。

・トシミくん出てきて開口一番「ありがとね」。イワゴーさんの「いいこだね」と同じトーンだわと今更の気付き
・久しぶりに終了後耳がキーンとなるライヴハウスのうれしさよ
・緊急事態宣言が解除されてからのQueには初めて行ったけど、換気のため途中休憩が入るんですね。ジャズ箱の1st、2nd Setみたいな構成になり、いい感じにリフレッシュ出来てよかったです

・同じ曲を二回唄うトシミ、最高潮に盛り上がったところで曲順を間違えるトシミ、慌てるビッケとはなちゃん、歌の入りを間違えて「間違えたー!」と絶叫するトシミ、しかしトラックをとめない鬼のヒロシくん、ゲラゲラ笑うビッケ、M1が観たいので明日の出演を渋るトーイ、俺だってM1観たいよとビッケ
・本日のライヴのタイトル案「二日はつらいよ」
・いやあ、でも『WE LOVE T1SS』ってタイトルすごくいいよね。その通りよ〜。ちなみにマネジャーさんの案だそうです
・ちなみに本日のセットリストはビッケ案。確かにいつもと違う流れだなあと思った。普段はトシミが決めるんだって
・ビッケ「年末で忙しいからかなんか知らないんだけど、今回誰も決めないんだもん!」

・いつものことだがトシミくんの挙動が読めなさ過ぎて「なに、何すんの?」とビクビク(ピリピリ?)するビッケとはなちゃん。が見ものであった
・あんなに真剣な顔して確認しあってるビッケとはなちゃん……
・てか今日のはなちゃん、マスクしっぱなし、メガネ、キャップのツバで顔の9割が見えず。学生運動のひとみたいであった
・そんなおっかないはなちゃんが、演奏中に外れたトシミのストラップをなおしてあげたもんだからステージもフロアもざわめいたよね
・てかわざわざ、ステージの反対側から歩み寄って…なにごと……
・ヒロシくんは無双なので問題なし。ああ格好いい川辺ヒロシ、見習いたい

・トシミくんがアカペラで唄う導入からトラック入るって構成がいくつかあるんだけど、満面の笑みでナチュラル of ナチュラルにさっきやった曲を唄い出し、ステージもフロアも「???」と固まる
・気持ちよく唄い終わった(そう、最後迄唄いよった)トシミくん、にっこり「これさっきも唄ったね」
・意図的なの? とザワザワするステージとフロア
・「いやーまた唄っちゃった、さっきも唄ったよね。(フロア)見てたら顔見合わせてるひとがいたよね。『さっきやったよね?』」
・…………
・「いやー、好きなんだよねー」
・…………………
・ソウルセット聴くようになって四半世紀超えてるけど、未だにトシミくんの挙動は読めないわ……

・それを受けてのビッケの発言が素晴らしく、「そうだよね、好きなら何度でも唄えばいいんだよ!」「一回のライヴで同じ曲何度もやればいいじゃない!」
・「『Sunday』何度やってもいいじゃない。5回くらいやると客が発狂する。『日曜日もういいです! 働きます! 働きますから! もうやめて!』」
・それを黙って聴いている微笑の川辺ヒロシ
・ソウルセットがなんでこの三人なのか、なんで続いてんのかがわかるような場面であった

・その後も「Elephant Bump!!!」とキメキメでタイトルコールしてギターを弾き始め、他の四人がぽかーんとなる
・このときのヒロシくんの顔忘れられん
・テヘ☆ と仕切り直した「Stand Up」の格好よさよ
・で、改めて「Elephant Bump」を始めたら今度は歌の入りを間違えて絶叫
・またかというかもう慣れたという感じでトラックをとめないヒロシくんであった

・恐らくライヴに関してはトシミくんが積極的なんだろな〜楽しそうだもんな〜
・三星くんもトシミくんのコネクションだし。タタキーナ三星☆ 頼りにしてます!
・楽しそうなトシミを観るのはとても楽しい。好きにやればよい
・しかし一応気を遣っているらしい。トーイ出してって自分からはいえないらしい。「いやあ、俺からいうのもね。だからビッケが出るでしょっていってくれてすごくうれしいの」
・ビッケやヒロシくんからすると、来るんなら出て当然でしょくらいの意識だけどっていう
・観客もそうですよ!
・トシミとトーイのハモりで「Innocent Love」聴けるなんて最高じゃんねえ
・てか「Salsa Taxi」のトーイのラップすごくいいのよ
・「Jr.」のタイトルロールがこんなに大きくなって、こんなに美声になって……と毎年のように思う小母

「来る日も来る日も万事快調」ってすごいパンチラインよなと今改めてシビれてる。二十年以上前のリリックが今こんなに刺さるなんてな! まあ人生の残り時間についての話になったりもし、皆元気で長生きしてと思った。ソウルセットがこんなに長く続くと思ってなかったもの。ずっと聴いてこれてよかったし、これからも聴くよ!

よだん。瀧のTシャツ着てるひとがいて(SDPのパロのやつ)トシミくんに「なんでソウルセットのライヴなのに瀧のTシャツ着て来てるの、最高」と笑われてた。よい光景。

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とてもいいインタヴューだったのでこちらにも。占い信じない方だけど「3人とも動物占いが狼」には納得してしまったわ。てかトシミくん、こういうインタヴューだとしっかりしてるように見えるよね。そこが怖いのよ


おまけ。知らずに観ていて(『きょうの料理』を観るのは日課)腰が抜けました

・渡辺俊美さん┃みんなのきょうの料理
講師として公式にも登録されている。レシピまだ載ってないけど、今後出演あったらどうしよう

・《きょうの料理》豆腐バーグ(浜野謙太のがんばれ!父ちゃん弁当)┃Daily Cookbook
こうしてレシピもまとめられている

・渡辺俊美さん(TOKYO No.1 SOUL SET)と、どっこいしょお弁当をつくろう。┃どっこいしょニッポン
<前編>
<後編>
その流れでこんな記事迄見付けてしまった。ライフスタイルがビジネスに繋がってるところに天性を感じる

・普段音楽活動以外追ってないのでこういうの見つけるとヒッてなる



2021年12月17日(金)
『菊地成孔 3DAYS』菊地成孔クインテット

『菊地成孔 3DAYS』菊地成孔クインテット@Shinjuku PIT INN


会場を出て、耳がもげそうなくらい風が冷たくて、でもそれが気持ちよく、清々しく新宿駅へ向かうところ迄がセット。途中から地下道に降りれば寒くないんだけど降りない。いちばん好きな季節。
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菊地成孔:vo, ts, ss
林正樹:pf
宮嶋洋輔:g
小西佑果:cb
秋元修:drs
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そんなこんなでチケット取れた時点でこの日は帰らせてくれ〜とすごい根回ししてなんとか開場時間に間に合いました。緊急事態宣言が出ていないのでチケットは通常の席数販売出来て、立ち見も出て盛況。菊地さんも「立ち見がいる、この景色久しぶり」とにっこり。違ったことといえば、1stと2nd Setの間に換気のためドアを全開にしてたことか。ステージ側のドアの近くだったのでヒィとなった。でもいいのだ。

という訳で菊地さんのピットインは箱舟なもんで、あの場にいた者にしか感じられないものがあり、安易に広めるものではないと思いつつ、書いておかないと忘れるという自分のエゴにより、以下書いてよさそうなところだけおぼえがき。いやさ、曖昧な記憶による記述が後日たいへんなことになる事例を今年沢山見たことですし(根に持つ)。

・野田秀樹みたいな紺のスーツ、ユーネック長袖T
・そういや体型も、体幹の使い方やバランスも似てるかも
・あの椅子で、あの脚の組み方でよく唄えるなとか演奏出来るな〜と思うもんね……体幹しっかりしてないと出来ないことですね
・1st Setは歌に専念、2ndは歌、ss、ts
・そうっと楽器を置く、だいじに扱う
・ソプラノ吹くときは左手の指輪全部外す
・そういうとこ〜
・天下一品の指パッチン

・歌詞はMacBookを見つつ。休憩後「パスワード忘れちゃった」
・ストラップを楽屋に忘れる
・「それでは秋元くんの静かなドラムソロをお聴きください」と出て行く
・秋元「次の曲のテンポだけ教えてほしいんですけど」
・周知されてないんかい
・それであの演奏だもんな〜
・林さんとかもカウントを復唱したり演奏し乍らBPMをなじませているようだったりと都度対応してた印象。リハやってても本番の流れでいきなり変わったりするんだろうな
・本人も「(乗ってくると)つい早くしちゃうんだよね」といってた
・それでこの仕上がりですよ。こえー
・つか林さん、一緒になってちいさく唄ったりカウントとったりちいさく独り言をいったり口笛吹いたりと楽しそうであった
・なのに菊地さんに「林さんは怖いからいじれない」といわれる。「いつもニコニコして優しそ〜うな顔してるけど怖いんですよ」
・わかる
・「そんなことない……」とちいさく呟いておられました(微笑)

・基本カヴァー。スタンダードを中心に、各プレイヤーのソロもきちんとあり、楽しく聴ける
・しかし全部リズムがなまってるので最高にスリリングでもある
・秋元くんが満面の笑みでのびのび叩く
・秋元くんの風貌がハラカミくんめいてて(髪型、メガネ、フーディスト村)密かに動揺する
・小西さん全編cb。ソロもキレキレ。初見でしたが格好よかった!
・位置的に宮嶋くんはあまり見えなかったのだが、林、秋元、小西の丁々発止は見ものでした。えっそのアイコンタクトで了解なんだとビビる
・皆笑顔でビシビシ当ててくるし、揺らぎのリズムを乗りこなす

・ムーンライダーズ「G.o.a.P.(急いでピクニックへ行こう)」エロくて最高
・あとで知ったことだが、この日はかしぶち哲郎さんの命日であった
・「G.o.a.P.」はこのクインテットではもはや定番だが、前にもライダーズはカヴァーしてたよね。「さよならは夜明けの夢に」とか
・で、高橋徹也のカヴァーも聴きたいな〜とか思ったり。菊地vo.の「ナイトクラブ」とか、最高じゃないの(脳内再生)
・そうなると唄ってサックス吹いてとたいへんですね(妄想)
・「やー最近疲れるのが早くて。MCしてるときは休憩してるときです」つってたしな
・しかし最近のサックスの音、ホントにいい。吉田隆一さんのツイート(スレッドごと読んでみてね)を改めて噛みしめる

・コール・ポーター「Every Time We Say Goodbye」について。“Every time we say goodbye, I die a little.”のリリックは「さよならするのは辛いの」くらいの意味。ジャズメンの間でもこの訳が定番。レイモンド・チャンドラーも『長いお別れ』でこのフレーズを引用しているのだが、訳者の方がそのことを知らなかったのか、「さよならを言うことは、少しだけ死ぬこと」と訳した。これがものすごいパンチラインとなってしまって……という話。「誤訳」とはいわない優しさ
・シナトラが唄うと対象が変わるねって話も

・『機動戦士ガンダム サンダーボルト』のost 2よりサルサの「色悪」からの新曲、メレンゲで「小鳥たちのために 3番」。この流れ最高だった(最高ばっかりいってる)
・「こんなに踊れて盛り上がる曲なのに声出せなくて辛いよね」って。ほんとね
・こういうときの林さんの跳ねる演奏ホント格好いいよね!
・で、腰が抜けたのは「皆知ってる曲、始まったらああってなるやつ」と始めた6/8(と解釈)の「Beat It」。ヴォーカル入る迄全くわからなかった
・ピアノとギターの6拍ユニゾン、こんなメロウな切ない「Beat It」があるかよ
・ひとは痛みとともに生きるのだ
・これはやべーマジでやべーまた聴きたい、てかレコーディングしましょうよ音源残しましょうよこのアレンジは歴史に残そう

・若者三人。トオイダイスケさんに替わり参加の小西さん。今後このメンツで行くようです。「これからも続けていきたいんで宜しくお願いします」って
・「国立音大出身で。あそこいいビッグバンド持ってるんだよね」
・ご両親が菊地さんの10歳下なんですって(微笑)
・特定の世代における石若駿の立ち位置について(微笑)
・「タコ殴りみたいになって」叩いてる秋元くんを見て「小西さんがちゃんとキープしてくれてるから好きにやれるんだよ!」「小西さん長女でしょうって訊いたらやっぱそうで、秋元くんの家族(構成)って?」「末っ子です」「やっぱねー! 俺も末っ子」(爆笑)
・秋元くんはビール4缶空けてたそうです(笑)
・「ジャズ業界でも末っ子で好き勝手やれんの」といってはいたが、山下洋輔んとこの若い衆でキャリアスタートして、今は若い衆を積極的に起用してと、鬼っ子を自称しつつちゃんと人材育てる方ですよねと思った。小鳥たちをどんどん巣立たせてくださいね

・若者といえば
・「スケートボードのモデルの子を見て『かっこいー』って、ユニクロでフリースを買ったの。今の着こなしはオーバーサイズだろうって、XL買ったの。キャラメルの。着てみたら東急ハンズで売ってるトナカイみたいになった」
・大ウケ

ピットインではガードが低い。といったら怒られるかな。そういうのも含めて箱舟なのです。書かれたものが全てではない。そこでしか判らないことはあるのだ。菊地さんの音楽に魅せられているひとにはそれぞれの「信じるもの」がある。そして「信じるもの」は皆違う。



2021年12月04日(土)
NYLON100℃ 47th SESSION『イモンドの勝負』

NYLON100℃ 47th SESSION『イモンドの勝負』@本多劇場


大倉くん、元気になってほんとよかった。

大倉孝二が『フェイクスピア』を降板したとき、野田地図制作の対応にいや〜な気分になったものでした。SNS、特にinstaのアレな。で、今回の公演はケラリーノ・サンドロヴィッチ曰く「彼を元気づけるためというわけでもないが、ど真ん中でやらないかと伝えました」。常々思うがKERAさんいい上司。ホームがあるって素敵なことね。

という訳で大倉くんはナイロンでしか観られない大倉孝二を見せ、作品もナイロンでしか観られない作品になりました。以下ネタバレしてます。つってもKERAさんならではのナンセンスコメディなのでネタバレも何も……そしてコメディというには怖すぎたが……。

タモツ(この名前がもうね、『ヤマアラシとその他の変種』を思い出してニヤニヤしますよね)は勝ちまくる男。その腕を買われて世界的な大会に出ることになる。しかし世界的な大会は、そろそろとかいよいよとかそのうちとかいわれつついつ迄経っても開幕する様子がなく、人々は大会のこともタモツのことも忘れていく……という縦糸、タモツの母と姉の思い出を軸に描かれる家族の肖像という横糸。そもそも縦と横はあるのか。だいたいタモツ、勝ちまくってるか? ジャンケンには強いけど。そもそも勝負って何だ。イモンドって何よ、はともかく。「異モンド」には膝を打ったが。という話です。

登場人物が入り乱れて恐怖と笑いを行ったり来たり。タモツを殺そうとする両親。タモツが預けられた孤児院の院長と副院長。タモツの才能を見出す(?)会長。謎を追う良い探偵。タモツが通う病院で薬をくれるテロル婆さん。時折現れる姉はタモツの記憶の投影か、それとも実は姉は死んでいないのか……繋がりや謎解きを諦めて、場面場面を味わうことにする訳ですが、それが出来るのはとにかくリズムが良いから。リズムが良いのは役者が巧いから。そしてそのリズムは演出家が10いえば役者が10理解(1いえば10も、でも10いったのに1しか、でもない)し、その理解を劇作家がよしと野に放つ、長年の信頼関係から生まれるものだ。タモツを演じる大倉くんと長田奈麻演じる姉かもしれない女性が耽る一触即発のままごとなんて、ナイロンでしか観られない凄みに満ちている。

死にゆく母、勝っているのに負けていると言い張る父。家族の繋がりは頼りなく儚く覚束ず、そして常に漂うのは濃厚な死の香り。怖い、怖い、でも何故か心が安らぐ。そうして生まれた今作に、わからないわからないと笑い乍ら、死ぬまでの短い時間を過ごせる愉悦。これもナイロンならではだ。劇団の凄みと、それに寄り添う客演陣。『消失』といい、年末に観るナイロンは記憶の野原にしんしんと降り積もる雪のよう。いいもの観ました。

KERAさんは多作な分、昨年からのコロナ禍で中止になった公演が他の演出家よりズバ抜けて多い。劇作家でもあるので、一からつくりあげた作品全てが雲散霧消する辛さもきっと身に沁みている。KERAさんと同時代を過ごし、その作品に触れられることをうれしく思う。

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・B列、結構前だ〜と座ったが前には誰も座らず、実質最前であった。飛沫対策でA列は空けているんだった