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2017年10月25日(水)
2017年のSPARKS

SPARKS@東京キネマ倶楽部

SPARKSがやってきたよ〜! 最新作『Hippopotamus』をひっさげての三ヶ月に及ぶワールドツアーが、ここ日本で最終日を迎えます。向かうは鶯谷、東京キネマ倶楽部。グランドキャバレーの跡地を雰囲気そのままに残しているホール、エレガントにいかがわしいスパークスにぴったりじゃあございませんか。鶯谷駅からの道の妖しさ、古いビル、ガタついてる(ように感じる)エレベーター。終演後は6Fのフロアから階段で降り、途中のフロアには社交ダンスの衣装やダンスホールの小道具がおいてある……ショウが始まる前から、ショウが終わってからもその空気を楽しんで帰れるまるで小旅行。菊地成孔関連のバンドが一時期ここでやっていたので何度か行っていたけど、この空気たまりませんなー。新宿にあった頃のリキッドルームも思い出すよねなんて話す。

“Two Hands, One Mouth”があればどこでもスパークスワールドを出現させられるメイル兄弟ですが、今回はThe Last Shadow PuppetsやMini Mansionsのメンバー(後述)を従えた七人編成のバンドセットでガッツリ聴かせてくれました。登場したメンバーたちはおそろのボーダーシャツ。Bの子だけノースリーヴ仕様(昨日迄は袖があったらしい)で海のマッチョくんぽい。ラッセルもボーダーだけどちょっとライン配置が違うフロントマン仕様、ロン兄はいつもと同じズートスーツ……ではなくジャケットとネクタイがボーダーでした。かわゆい。

往年の名曲は瑞々しく、最新作からの曲は既に往年の名曲。ラッセルの声はずっとツヤツヤで、ロン兄のダンスはいつも最高で、眼福耳福でおらは今天国にいるのかと思うような時間。keyのサポートがいたので、ロン兄のエレピだけでなくシンセのエレクトロなアレンジが効いてます。Gはディレイやディストーションのかかった太くて厚いソロや、軽快なカッティングで楽曲を現在の音像にすると同時に70〜80年代のロックの原始的魅力を感じさせてくれるというクロニクルっぷり。50年(!)の活動のあのときこのとき、あんな音こんな音を凝縮して、一夜のショウを見せてくれる。奇妙で、不気味で、最高にキュート。

いんやそれにしてもラッセル、ファルセットヴォイスのコントロール術の素晴らしさよ……。歌詞の内容はエグいものばかりといってもいい。繰り返される言葉の数々が、あのファルセットによって魔法使いの呪文のように聴こえてくる。呪文といってもそれは呪いではなく、聴衆を祝祭空間へと誘い込んでくれるもの。裏声と吐息が溶けあう、魔法の世界。しかも今回衣装があれなもんで妙なヘルシーさも漂っています。終始動きまわって、跳ねて、腕をあげてとキラキラしたポップスターの挙動なのに息切れなどどこ吹く風。元気! すごいよ…見習いたい……ああいう矍鑠とした老人になりたい……。老人と言い切ってしまってますが64歳であんだけ唄えて動けるってやっぱすごいよ……。ロン兄に至っては太平洋戦争が終わる直前に生まれたと記憶しているので御年72ですよ。それであのダンス、転んで骨折とかしませんようにと違う意味でハラハラするようになった。サポートメンバーなんて、こどもどころか孫世代なんじゃないかね……ステージングもおじいちゃんたちをたてつつ奥ゆかしくはっちゃけ、手堅い演奏で場を盛り上げてくれました。

観る度目がちっちゃくなってってるよね(加齢)と話したりしたんですが、それもまたよし。“No.1 in Heaven”つってもまだまだ地上にいてくださいよ。よよよ。

フロアにはさまざまな人種、年齢、ジェンダーのひとたちが笑顔で集ってる。ここはどんなひとも自分でいられる天国だ。自分の前にはビールをガンガン呑みキャッキャ観ている外国人のおっちゃんふたりと、マフラータオルを首にかけ、スーツでノリノリ拳をつきあげ感極まってるおっちゃん。最後にロン兄が「マタアイマショウ」と挨拶し、フロアがわあっとわく。ふたり組はキョトンとなって、ぐるりと振り向きスーツのおっちゃんに助けを求めるような顔をして、同時に「「in English!」」とつめよってた。ウケた…声がそろってたのがもうかわいくてな。一瞬面喰らってたスーツのおっちゃん、シーユーアゲインだよと教えてあげて周囲のひとたちもニッコリでした。ピース。

アンコールではF・F・Sのカヴァーも。日本が大好きと公言してくれている彼ら、最終日を日本で迎えられてうれしいこと、そして日本のオーディエンスに何度も感謝の意を表してくれました。お礼をいいたいのはこちらの方ですよ。元気で、また会いましょう。

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セットリスト(setlist.fm

01. What the Hell Is It This Time?
02. Propaganda
03. At Home, At Work, At Play
04. Good Morning
05. When Do I Get to Sing "My Way"
06. Probably Nothing
07. Missionary Position
08. Hippopotamus
09. Nicotina
10. Scandinavian Design
11. Dick Around
12. Edith Piaf (Said It Better Than Me)
13. Never Turn Your Back on Mother Earth
14. I Wish You Were Fun
15. My Baby's Taking Me Home
16. This Town Ain't Big Enough for Both of Us
17. The Number One Song in Heaven
18. Life with the Macbeths
encore
19. Hospitality on Parade
20. Johnny Delusional (FFS cover)
21. Amateur Hour

Note: Last show of the "Hippopotamus" tour

Ba. Zach Dawes (Mini Mansions / The Last Shadow Puppets)
Key. Tyler Parkford (Mini Mansions)
Gt. Evan Weiss (Into It. Over It.)
Gt. Taylor Locke
Dr. Steven Nistor



セットリストもらった方のツイート。うう、よかったですよね(涙)。

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FBでこの日のライヴ映像がアーカイヴ公開されています。24日のもある。確かにBの子の袖、ある(笑)。

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・フロアでヘイチンとバッタリ。ヘイチンとはここ数年SPARKSでしか遭ってないな……(笑)てか毎回待ち合わせとかしてなくても会える。元気そうでよござんした

・物販コーナーには勿論? 岸野社長。グッズもCDもアナログ(最新作のアートワーク、アナログ映えするよね〜)もバンバン売れ、札束が散らばってコミケの大手サークルのようだった。MIOさんが拾ってあげてた(笑)。エンケンさんの件は帰宅後知った

・FAのKIMONOSもよかった! 向井秀徳のあの粘着力のあるヴォーカル久々、ああそうだった〜と思う。そしてLEOくんはいつも客席に対して威嚇というかなんだおまえという挙動不審っぷりを見せ、唄いだすとその迫力になんだそのギャップとか思うんだけど、「あれは緊張してる故の挙動だから許してやって」といわれる(笑)。そうなんですか……。それにしてもこの人選、やっぱキモノ繋がりですか

・前日迄のベックちゃんのサポート仕事を終えたジェイソン・フォークナー(ex. Jellyfish)が観にきていました。失礼乍ら存じあげず、しかし明らかにカタギじゃねえキラキラしたオーラをまとっており、暗がりのフロアでもハッとする程目がいく輝き。終演後フロアで撮影会になってた。行列みたいになってた(笑)気さくに応えておりました。笑顔が素敵な方でした



2017年10月21日(土)
『ウエアハウス〜Small Room〜』

『ウエアハウス〜Small Room〜』@アトリエファンファーレ高円寺

もう何ヴァージョン目かわからなくなっている『ウエアハウス』です。わからなくなってるので自分でリスト(後述)つくってるんですけど合ってますか…もう自信がない……。しかし自分の知らないヴァージョンがもしかしたらどこかに存在してるんじゃないか、とうたぐりたくなるこの増殖っぷりをどこかで面白がってもいます。まああるんだろうよ…いやはや漏れがあったらどなたか教えてください……。

さて、今回は高円寺での公演。約90席の小劇場で、緊密な芝居が楽しめました。ストーリーの内容からして楽しむというのは語弊があるかもしれないが、演者の力量や、芝居に呼応する観客の緊張感を身近で感じられるのがたまらない。うえー先月だったら絶対行けなかったわ、喘息おさまってよかったわ。ときには空調の音が大きく感じられるくらい、役者の発する言葉だけでなく一挙一動の音が伝わるくらいのビリビリとした空気。消耗度は高いが、これこそが会話劇の醍醐味。やる方はたいへんだよね……。しかも今回、フリーな場面が皆無といっていいくらいだった。フリーというか、雑談シーンといえばいいだろうか。緊迫が続く場面に投げ込まれる緩和というものがなかった。鈴木勝秀作品にしては珍しい、というかスズカツさんのモードが今そうなのかな。必ずあった飲食シーンも、いつのまにやら水飲むだけになってますしね。ここは台詞量に応じてのケアも含まれそう。

肝腎なシーンが前列のひとの頭に隠れて見えなかったり(段差はあるんだけどね……)、遅刻者入場のばたつきで芝居のバランスが崩れたのは残念でしたが(リカバリは見事でした。うーーーんあれは演者が気の毒だった)、「演劇は演者と観客の共犯関係によって成り立つ」ということを思い出させてくれる時間でもありました。作品とその登場人物を、観客は家につれてかえることになる。ラストシーンのふたりから、あるいはその前のシーンで消えた人物から受けとったバトンを、誰に渡すか。あるいは渡さないで自分で終わりにするか。

公演により人数が増えたり減ったりする作品ですが、今回は三人。ちなみにベースとなるエドワード・オールビーの『動物園物語』はふたり芝居です。ベースに近かった初期『ウェアハウス』の登場人物は三人、うちひとりは音楽家でセリフはない。劇空間に音楽を提供し、それはときにノイズとしての存在感を示す。そういう意味では、今回のヴァージョンに登場するテヅカは音楽家ともいえる。ホワイトノイズを好み、常に聴けるようにアプリで持ち歩く。それらを他者に紹介してシェアする。聴きようによっては彼が発する言葉もノイズになる。「ジェリーと犬の物語」のテキストはいつからか語られないようになり、ギンズバーグの「吠える」がバトンを受けとった。

そうそう、ひとつ新しい発見。今回のヴァージョンには、青山円形劇場へのオマージュみたいなものを感じました。円形では上演されたことのない作品なのに不思議なものです。不明瞭な都合で閉鎖され、解体もされず、未だに存在感を示している建物。近くを通るたびにあの空間で観た作品の数々を思い出す。コミュニティの場は消え、愛情の物語はすれちがい、ひとりひとりが去っていく。

演者三人とも台詞が明瞭、聴いていて心地よい。ラストシーン、佐野瑞樹のモノローグが素晴らしい。味方良介、言葉と表情が乖離していくさまに悪魔的な魅力。猪塚健太の挙動はスマート、すごいイラっとする(笑・役がですよ)。

音響はおなじみ井上正弘。音楽は大嶋吾郎。萱嶋亜希子による照明はなかなかの曲者。所謂照明機材だけでなく美術としての役割も果たす、多数吊るされたランプの明滅で登場人物や状況の不穏さを表現する。そのチカチカっぷりがときには過剰でむしろハッピーなものに見えてくる。クリスマスシーズンの家の電飾みたいでな……緊迫感あるシーンとのギャップがすごくて笑いがこみあげそうになるが、ここで思い出したのがこれ。



うーむ、怖くはなかったんだけどね……。いやさ、話それるけど現在わたくしスクエアプッシャーふりかえり中でして(しつこい)、いろいろ探索してるときにこのツイートを見つけたんですね。



冴島さんは自分が聴いている音楽たちと縁の深いところにいたので、90年代からよく名前やお姿を拝見していた。で、まあいろいろ思いを馳せた。記憶の照会としての演劇、音楽、そして更新されていくものについて。

観劇前後は街をうろうろ、トリアノン本店にも行けて満足。雨が降ってなかったら古本屋巡りもしたかったんだけど、それはまたの機会に。

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・『ウエアハウス』リスト
今回の情報追加しときました。てかヌケがあったら誰かおしえて!

・『パターソン』
ギンズバーグ繋がりで観ると面白い。ちなみにここにも張ったリンク記事(『パターソン』は詩をモチーフにした映画 |CINEMORE)には『吠える』誕生のエピソードが載っています↓
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ギンズバーグが師と仰いだのが前出のウィリアム・カーロス・ウィリアムズなのだ。この二人には有名なエピソードがある。ギンズバーグが詩韻を踏んだ作品群をウィリアムズに見せ、アドバイスを求めた時、「韻を踏むならもっと徹底的にやらないと」とダメだししたことで、ギンズバーグは荒々しくシャウトする文体の『吠える(Howl)』を発表。当時の若者たちに多大な影響を与え、詩の一大革命が起きたのである。
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・呪文のような暗唱が響き渡る・・・佐野瑞樹×味方良介×猪塚健太の3人芝居『ウエアハウス』稽古場レポート | エンタステージ

・佐野瑞樹×味方良介×猪塚健太「演劇の楽しさを五感でヒリヒリと感じて」舞台『ウエアハウス』インタビュー | SPICE



2017年10月15日(日)
WWW & WWW X Anniversaries『cero × DC/PRG』

WWW & WWW X Anniversaries『cero × DC/PRG』@WWW X

WWW X一周年おめでとうございますー。ここんとこ周年記念多いな。そして小田朋美祭りでした。こういうのも最近多い(笑)。

先攻DC/PRG。やっと新しい編成が観られる! と思っていたら、TpとGがトラだったので未だ全貌が掴めず。しかしそういうときのDC/PRGはいいライヴしますし(いつもすごいが)、そのとき限りのソリスト招聘は一期一会感もあって楽しい。類家くんはほっぺたがやぶけちゃったのでお休みとのことでした。またもう主幹はそういうこという〜、と笑っていましたが「いや、ホントホント」とかたたみかけるもんだからすごく不安になってしまったよ。破裂はしてないにしろ怪我でもしたか? って。帰って類家くんのスケジュール調べたら山下洋輔につれられて中国に行ってました。ホッとした〜、大ボスにもってかれたら仕方がない…のか……? しかしceroのファンとか、信じちゃったひといそうだなあ。あの「ホントホント」で空気変わったもんね、そよ〜と「ええ?」って声も聴こえたし。菊地さん罪な男よのう……。ちなみに大村くんは何かしらとこちらも調べてみたらBABYMETALサポートでした。そう、そうね……。

という訳で今回のトラはTp石川広行、G宮嶋洋輔。石川さんは中低音で攻めるタイプ、宮嶋さんはフュージョン度が高い。どちらも柔らかい音、初期DCPRGを彷彿。ソリストのトラはスリルがあって楽しいなあ。そこへ新B近藤佑太、新Drs秋元修太郎が絡み、バンド自体のモードも随分変態した様相。いやーよかった!

そこで思ったが、このバンドのリズム隊をトラで…というのは厳しい。今回オーディションに落ちたベースのひとの話題がちょっと出たんですが、それは多分このパートはDC/PRGがスケジュール最優先になるというか、他のサポート仕事も忙しいひとを選んだらいずれどっちも身動き出来なくなって困ってしまうからじゃないかなあと思ったりしました。彼ら不在では動けない、というくらい重要なパート。Drsはまだよくわからないけど(両ドラムともに殆ど見えなくて、どっちが今叩いてるんだかの判断もすぐには出来なかったので。しかし既にソロを振られてたのには驚いた)Bの子は相当な鬼っ子と見た。イケイケドンドンオラオラ度は歴代一ではなかろうか。ブリッジとなるとすかさずアドリブ入れてくる。ボトムを支えるパートだけど、上モノに喰らいつくような演奏も見せる。やんちゃ小僧なイメージで、栗原さんやアリガスのような安心感はありませんが、これが面白い方向に転がるのではという期待もふくらむ。菊地さんも結構かまっていて、キュー出しだけでなくサインやアイコンタクト、続く展開をジェスチャーで指示する場面も多かった。うんうんそうそうって頷いている様子が先生ぽい。田中ちゃんとのやりとりを思い出す。

「Circle/Line」からスタート、「Hard Core Peace」に繋いだんで狂喜乱舞。今ではレアだ、俺生まれ変わったら大儀見に(略)。「Playmate at Hanoi」でガン踊り、「fkA」アウトロのせつない美メロに悶絶。「構造1」〜「Hey Joe」ではゲラゲラ笑う。というかここのブリッジが相当危なっかしい=面白いことになってて。秋元さんのソロがどこで終わるか周知されなかった様子で、坪口さんがシンセのループ入れるタイミングも意図通りだったのかハプニングだったのか判らない。切り替えがグダグダになりかかり、坪口さんはラジオ体操みたいなダンスを踊り、小田さんもやってよ! と目配せしたのか小田さんが自主的にヘルプに入ったか、ふたりして体操(に見える)ダンスを展開したのには笑った。それにしてもこの「Hey Joe」のループ、強烈にリズムの表情がかわる。シンセの音の選び方もあるだろうけど、ラガマフィン度がグッと増す。高速で演奏したらジャングルにもなりそうよ。そこへ小田さんがショパンばりのピアノをブッ込んでくる。菊地さんはパナマ帽を被っており、なんつうかリゾート地獄みたいな瞬間もあり、ああバリ島行きたいとかわけのわからないことを考えてました。アホか。呪術呪術〜。

菊地さんは戦闘体制になるといつにもまして喋りがとまらなくなるようにお見受けしますが(躁モードともいう)、この日は久しぶりの対バン、相手がceroともあってそのスイッチが入っていたようです。「アウェイなもんですっごい不安」「初めてのひとも多いだろうから説明しますと」「はじまったらひとことも喋らないで続けますんで」「ワタシはフロアに背を向けっぱなしなんでなんて失礼なやつかと思われるかもしれませんが」云々、まず自己紹介とメンバー紹介。ときどきどもる。「怒らないから正直に拍手で教えて、両方とかダメだよ! 我々DC/PRGヘッズのひと?」「じゃあcero?」と訊いたらなんと8:2くらいでDC/PRGだったのには驚いた。菊地さん本人も面喰らったようで、即「嘘つけ! うひゃひゃひゃひゃ」とかいうてました。ceroヘッズの方々はおとなしいひとや遠慮深いひとが多かったのではと思うが実際はわからん。こちらもチケットとるとき「ceroのファン多そうだし、すぐ売り切れそうだから」と早めに確保したもんなあ。

昨年WWW Xの杮落としイヴェントで面影ラッキーホール(とつい書いてしまったがO.L.H.であってOnly Love Hurtsでしたね。といいつつなおさない)観たとき、フロアにミラーボールがあるのに気づき、新dCprG(当時)のお披露目はここもいいんではと思ったんだった。お披露目ではなかったが、ここで観ることは叶った。しかし「Mirror Balls」はやらなかった。残念。またの機会を楽しみに。今度はここで、単独でどうでしょう。

開演前と転換時のDJはOMSB。途中から酔ってきたのか仕込みがなくなったか「あと何分?」「何かけよっか」とかいいだす。質問コーナーがはじまり、DC/PRGとceroそれぞれとの縁の話とかしだす。やがて「DJなんてやってられっか、ラップする」「いいトラック持ってきてる」とライヴをはじめる。面白かった〜。

後攻cero、初見。観る前は洗練されたシティポップでアシッドジャズより、というイメージでした。実際ジャミロクワイみたーいと思ったアレンジもあって格好いい。そのうちリズムをかなりひねった展開で聴かせてきて唸る。Fl、Tpの管も入り、PrcとDrsで厚みのあるアフログルーヴ。こりゃ踊れる!「新曲ばかりやってますが」といっていたので今がそういうモードなのか、もともとこうなのか気になるところです。

両方出演の小田さん、「父兄参観のよう」だって。それはceroに対してですか。ceroの方々の年代しらないんだけどお姉さんなのかしら小田さん。ダブルヘッダーおつかれさまでした! いい夜でした!



2017年10月14日(土)
『関数ドミノ』

『関数ドミノ』@本多劇場

「『イキウメ』門外不出だった代表作のひとつを、初のプロデュース公演で」。イキウメ版は2014年に観ています。前川さんのツイートによると、今回の上演は「2009年版をベースに、2014年版のいいところを移植した」ものだそう。演出は寺十吾。

やーやっぱ演出でかわるわー。前川さんは「やや希望残る」「重い話ではない」と言っていたけれど、イキウメによる上演(2014年版)の方が笑えるシーンが多かったという不思議。乾いた笑いと恐怖、世界の不条理を受け入れるしかないというやさしい諦観。自分は前川さんの書くものが好きだと思っていたけれど、演出も相当好きなんだわとようやく自覚した。そしてイキウメの役者陣の特性を改めて実感。怒りを悲しみに、静かに転換してみせる。

とはいうものの、寺十さんの演出には気づかされることが多かった。人間の嫉妬、羨望、満たされない思いというものは他者がいるからこそ生まれるもの。しかし、他者の存在なしにひとは生きていけない。そのしんどさに焦点をあてる。信じるということの美点ではなく、グロテスクな面を見る。若さ、という要素も大きな位置を占める。若者が見る夢と明るい(筈の)未来が、他のひとの心の闇を呼び起こすこともある。誰かのせいにすることは決してイージーではないが、そうすることで安息を得られるということでもない。そのやりきれなさを描く。

それを体現する瀬戸康史が見事。彼が演じる人物が、何故ああいう考えをもつに至ったかの説明は、劇中一切ない。演じる側はそれを考え、表現しなければならない。好青年の顔がどんどん歪んでいく(ように見える)。同じ前川作品『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』でもしんどい役を演じていたが、いい役者さんです。勝村政信、千葉雅子の年長組が、その若者に向きあう。戸惑い、怒りを抑制の演技でみせる。勝村さんは随所にコミカルな演技も織り込んで、緊迫した舞台と客席間のよい緩衝材になっていた。保険の調査員と精神科医は、社会に欠かせない存在を象徴している。そこにちいさな希望を見る。

何故か上田現ののこした楽曲のことを思い出したりもしていた。「だましてもいいぜ ずっと待ってる」。諦観とは、信じることをやめることではない。



2017年10月09日(月)
2017年のWILKO JOHNSON

WILKO JOHNSON@Shibuya CLUB QUATTRO

御年七十のメモリアルイヤー、ウィルコじいちゃん元気だったよ〜! ノーマンもディランも元気。 そういえば先日スティーヴ・ハウの息子のドラマーが…という訃報が流れてきてディランのことかとギョッとした。弟のヴァージルのことで……弟さん、鍵盤弾きとしてしか知らなかったんだけどリトルバーリーではドラムを叩いてたんだね。まだお若い……。

ディランもまだ四十代。このトリオをはじめた頃はじっちゃんコンビに小僧が加わったよって感じで、ふたりの自在なやりとりと阿吽の呼吸についていくのに必死、あるいは遠慮が見られるイメージだった。今ではすっかり三人の“バンド”です。容姿もいい感じのおっちゃんになり、渋いドラムを聴かせてくれます。

いつもどおり、フィールグッドのナンバーからもソロからも。「Keep on Lovin' You」「Back in the Night」〜「She Does it Right」の流れもおなじみ、そのおなじみが聴けることがうれしい。日本に来てくれることがうれしい。ギターは一本、アンプに直結、ピックは使わず指で弾く。彼だけのスタイル、多くのフォロワーを生んだスタイル。マシンガンのポーズをとると大歓声。僕を撃って! 私を撃って! フロアが一斉に手をあげる。その光景もおなじみだけど、それがうれしい。

おなじみの場面ににっこりしつつ、ワンパターンで飽きるということはない。前述のとおりディランがなじみ、ノーマンのむっちりしたベースとウィルコの乾いたギターのからみのスリリングなこと! 間奏やアウトロがどこへ転がるかわからない。楽器に指が吸い付いているかのようなノーマンの演奏、一見するとすごい弾きづらそう、手が動かないのかななんて思ってしまうんだけど(なんかベタベタガクガクしてるんだよ……)出音は歪んだ渋いサウンドで格好いい。三人とも汗だく、そろいの黒シャツが汗で光沢のあるサテンみたいに見えてくる。全編で一時間半ほど。以前よりマシンガンの場面は減り(単純に掲げ続けるにはギターが重いのだろうと思う)、あのカニ走りも減った。でもダックウォークでステージの端から端迄移動してきて、視線は殆どフロアへ向いている。

「Bye Bye Johnny」がはじまると、もうすぐショウが終わりだとさびしくなる。いっしょに唄うのは楽しいけど、やっぱり寂しい。アドリブでウィルコが「here comes the train!」なんていうから、いやいやいやまだ乗らんといて! とか思った。

客出しでXTCの「Sgt. Rock (Is Going to Help Me)」が流れる。“Hey, Rock! Rock! Hey, Rock! Rock!”……タイトルからもうねえ。これにもほろり。会場を出たとき声をかけられる。ふりむいてみれば前いた会社の先輩が。お元気そうでよかった! お互いの連絡先も知らないしSNSも知らせあってないけど、ライヴ会場では会うんですよね。普通に「じゃあ、また!」と別れた。きっと会うだろう。一度はお別れしたウィルコじいちゃんにまた会えているんだもの。いつか終わりがくるのはわかっているけど、そのときがくる迄は何度でも会いたい。

ウィルコもノーマンもディランも、元気でまた会おう。きっと会える。



2017年10月08日(日)
大駱駝艦・天賦典式 創立45周年『超人』

大駱駝艦・天賦典式 創立45周年『超人』@世田谷パブリックシアター

大駱駝艦45周年おめでとうございます(再)! 新作連続上演、先週の『擬人』に続き、『超人』。KUMAさんこと篠原勝之演じる男に捕らえられた麿赤兒はどこへ? 開演前の舞台には『擬人』にも登場したガラスケースが並び、人形が吊るされている。どれもつくりものだと判るものだが、一体だけ顔が麿さんのものがある。その顔がエラいリアル。この日の席は最前列だったんだけど、それでも「ひょっとしてホンモノかも…ボディ部分は着ぐるみになってて首だけ出してるんじゃ……」と開演迄まじまじと見てしまった。そしてその、ボディ部分がけっこうなマッチョで。映画『殺し屋1』のジジイとか、最近では笹野高史がボディビルしてるCMとかが印象深い、顔とボディのギャップがすごいやつを思い出してしまってニヤニヤした(笑)。

後ろのひとも「ホンモノ?」とか話してて、開演してちょっと動いたら「あっ、やっぱり?」「ホンモノ?」とそよそよ声が出ていた。実は人形を持ちあげたダンサーが浄瑠璃よろしく麿ヘッドの後ろ、頸部を掴んで操作していたのだが、その動きがとてもリアルだった。身体を操る舞踏家は、自身だけでなく他者の身体も理解し操れるものなのだな。ひいては人間ではないボディをも。それにしてもあの顔、素晴らしい出来だった……。

バレエ等の西洋のおどりとは対極をなす、日本土着の、大駱駝艦の「をどり」。サイボーグやアンドロイドを演じるときは所謂ロボットダンスになるのだが、それも西洋ベースのものとは違う。膝と足首を直角に曲げ、大地を踏みしめる。正座や胡座で下半身を沈め、天へと伸ばす腕にも関節ごとに方角が散る。その力強さと、据わった体幹。それらを観るだけで自分も地に足がついたような気分になる。スペクタクル、エンタテイメントな要素を多分に含む大駱駝艦なので観るときに気構えは必要ないが、それでも鑑賞後は東洋に生まれ東洋に育った自分の身体について自覚を深くする。

そうそう、AIが反乱起こすお話って必ずひとりやめてーって人間助けてくれるAIがいるじゃない。ウルトラマンにおけるピグモンみたいな……(ちがう)。その子の動きがちょーかわいかった。他のAIをとめようと掌をひらき、腕を伸ばすおろおろの動作。腕を引き抜かれた開発者をそろそろと抱えあげ、ガラスケースへ運んであげる。怖いシーンだけどちょっと和んだ。開発者が襲われる際に流れる血液は糸で表現されており、赤い糸と青みがかった照明、装置との対比が美しかった。蜷川演出の『タイタス・アンドロニカス』を思い出した。大駱駝艦、年々メイクや衣裳、装置が洗練されていく(以前がダメということではなく)。

クライマックスの「迷走行列」は、人間、AI、そして超人三つ巴のパレードだ。三者の椅子とりゲームも熾烈を極め、その光景はさながら地獄絵図。マッチョではない(笑)麿さんがドレス姿で登場、その美しいこと! マッチョではないが、細身の皮膚の下には切っ先鋭い筋肉が見える。フレンチカンカンよろしくドレスをまくりあげ腰を振る、履いているのはレースのボクサーパンツ。ヒップと脚のラインが綺麗だ。そしてかわいいのだ、いつものこと乍ら。老獪な少女といおうか、その身体には恥じらいが見える。生まれたことこそが才能、しかし生まれたことそのものが恥ずかしい。道を間違えた人類は、自分たちがつくりあげたAIたちとどこへ行くのか? 地獄への道行のようなパレードに、それでも惹かれる。

「フィナーレ」からのカーテンコール、「まろー!」と大向こうが飛ぶのにまたシビれる。千秋楽だったのでいちだんと盛り上がりました。フィナーレ自体が一曲で、その際とられるポーズ、礼等がもうひとつの作品だなと常々思っているのですが、今回この方のツイートに成程と思った次第。



今回は歌舞伎も連想したのでした。三すくみの構図や、『擬人』の頁にも書きましたが一曲一曲の完成度がとても高いので、バラにして幕見でも観れそうと思った。先述の浄瑠璃といい、ここでも伝統芸能から、東洋の日本という国で生きる身体について考えさせられました。

カーテンコールは続き、金銀の紙吹雪が降ってくる。最後の最後はロッド・スチュワートの「Sailing」(艦だから?)をBGMに麿さんがポーズをとってご挨拶、素敵でした。大駱駝艦を観るようになって四半世紀(ひぃ)、フィナーレや大団円の曲が終わっても拍手が鳴りやまず、同じ曲をもう一度頭からかけなおすという場面には何度か遭遇したことがある。しかし「Sailing」は初めてだったような……驚いたー。次作は来年三月、御安航を祈ります!

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大駱駝艦のFBより。これこれ、素晴らしい出来よね……



2017年10月07日(土)
ホールのPenguin Cafe

Penguin Cafe 来日公演 2017@すみだトリフォニーホール

フライヤー記載の来日メンバーとパートを書いておきます(自分用メモ)。
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Arthur Jeffs(Piano, Cuatro*, Ukulele, Percussion)
Cass Browne(Percussion)
Andrew Waterworth(Double Bass)
Rebecca Waterworth(Cello)
Darren Berry(Violin)**
Oli Langford(Violin)
Clem Pillal(Violin)***
Vincent Greene(Viola)
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* 四弦のミニギターみたいなやつ。ウクレレのもとになったラテンアメリカの楽器とのこと→クアトロ|民族楽器コイズミ
** 今回のツアーではヴァイオリンは弾かず、ウクレレやパーカッションetc. のオールラウンダーでした
*** 新加入かサポートか。アー写にも姿がありません
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前々日のクラブ公演から一転、メンバーの衣裳もシックで、何人かは一部と二部でおめしかえも。特に女性陣、一部ではカーテンみたいな柄(語彙…調べた。ダマスクというらしい)のロングドレス、二部ではシックな黒のドレスととても素敵でした。そうそう、ヴァイオリンのクレムはクアトロではミニスカートで、綺麗な脚のラインにドキドキしたもんでした。このときアーサーに今回のツアーのオフ日はサーフィンしたとかしたいんだってと紹介されてたのも頷ける、スレンダーでヘルシーな容姿の持ち主。

アーサーとダレンはペンギンヘッドにガウン姿で登場、その扮装のまま一曲目をまるっと演奏。手元見えてるのか? まあ見えなくても弾けるか。サービス精神あふれるひとコマでした。中山晃子によるアライヴペインティング(別室で描いているものをリアルタイムでステージのスクリーンに投影)やゲストミュージシャンとのコラボと、ホール公演ならでは、プランクトンならではの楽しく華やかな趣向。

サイモンとアーサーの曲がバランスよく並んだ今回の演奏を聴いて思ったのは、アーサーの曲はドラマティックで、エモーショナルで、情熱的。それも静かにふつふつとわきあがる風情のもの。アンコール一曲目、ステージにひとり現れたアーサーが演奏したピアノソロ「Harry Piers」にそれを顕著に感じました。軽やかに滑り出したリフが次第に熱を帯びる、悲哀にも歓喜にも振れるような感情を呼び起こされる。新作のタイトルは『The Imperfect Sea』。不完全な海を、ペンギンたちがわたっていく。地上ではよちよち歩きだが、水中では敏捷に、自由に泳ぎまわる。しかし弦の響きには震えるような波があり、それが不安をかきたてる。ペンギンたちは流されているのか、流れに身を任せているのか。それとも荒波のなか、力尽きる迄泳ぐのか。哀歌のような響きを持つ「Cantorum」に涙。

中山さんのアライヴペインティングは、そんなイメージにぴたりと寄り添うものでした。砂、水と色を用い、マーブリングのような技法も。波打ち際、潮の流れによって流されていくもの、流れ着くものを連想させる。漂流と漂着。少し恐ろしく、寂しく、しかし安らぎを覚えるものでもありました。

ゲストの相対性理論とは三曲をコラボ(セットリスト参照)。当初の発表ではやくしまるえつこ、永井聖一、山口元輝とそれぞれ個人名でアナウンスされてたんだけど、普通にアーサーに「ソータイセーリローン」と紹介されてましたね。楽しいセッションだったけど、ペンギンカフェの二曲はアコースティック編成のままで聴きたいという思い入れの強い曲だったのでクラブ公演もいっててよかったな。まつもと公演のゲストは大貫妙子、こちらも楽しそうだなあ。

父と息子の色がありつつ、共通するのは優しいユーモア。オーラスの「Salty Bean」でアーサーは、小さなおもちゃみたいな笛(あれなんて楽器だろ)をふたつ同時にピーピー吹いて、ステージと客席をニコニコ眺めていた。思わずこちらも笑顔。楽しい時間は必ず終わる。アーサーが地声で「Hey!」と手を挙げる、礼をする。また会えますようにと拍手を贈る。

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セットリスト

参照:


01. Telephone and Rubber Band
02. Protection
03. Swing the Cat
04. Bird Watching at Inner Forest (Cornelius' cover)
05. Ricercar
06. Franz Schubert (Kraftwerk's cover)
07. Cantorum
08. Rescue
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09. 弁天様はスピリチュア* (相対性理論's cover)
10. Perpetuum Mobile*
11. Air a Danser
12. Now Nothing (Rock Music)
13. Landau
14. Wheels Within Wheels (Simian Mobile Disco's cover)
15. Beanfields
16. Black Hibiscus
encore
17. Harry Piers
18. Music for a Found Harmonium*
encore02
19. Salty Bean

* w/ やくしまるえつこ、永井聖一、山口元輝(相対性理論)

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よだん。左隣のひとがオリ(上手側)ロックオン状態で、こちらはアーサー(下手側)をよく観ていたので視線がまあぶつかること(笑)。席が逆だったらよかったね……流石に替わりましょうかとはいえなかった

(20171013追記)


「Harry Piers」誕生の秘密。そうだったのか…大好きな曲。今回の演奏には本当に感銘を受けた



2017年10月05日(木)
クラブのPenguin Cafe

Penguin Cafe 来日公演 2017@Shibuya CLUB QUATTRO

ペンギン・カフェがやってくる季節ですよ〜。現編成になって三枚目のアルバムをリリースし、三年ぶり(1:2012年2:2014年)の来日公演です。招聘は毎度おなじみ信頼と実績のPLANKTON。公演タイトルがいつも「来日公演」とか「特別公演」てな感じでシンプルな、というかむしろそっけないところも好きです。余談だが先日「来日公演ってフェスシーズンの夏にくると暑いやら蒸すやらで外タレさんもしんどかろう、心地よい春や秋にきて日本の気候もいいもんだなと好印象をもって、またきてほしいものだ」なんて話していたのでした。で、ペンギンカフェはいつも秋に来るから気持ちよかろうなあと思っていた。しかし今年は、最新作『The Imperfect Sea』リリースにあわせたプロモーションとイヴェント出演のため、ミニ・ペンギン・カフェとして七月にもきていたね。あの暑さのなか、スーツ姿でバリッとキメて街なかで撮影していたアーサーとダレン、おつかれさまでした……。

さて、今回のツアーはクアトロからスタート。土曜日のホール公演にも行くしどうしようかな、とチケットとるときちょっと迷ったのですが行ってよかった。クラブ規模で観られることってなかなかないですもんね。フロアには椅子が並び、いつものクアトロと違う雰囲気。20分の休憩を挟んでの二部制、ゆったりとした進行。秋の夜長のホームパーティのような親密さ、贅沢でゆたかな時間でした。当初はフルメンバー12人での来日、と発表されていましたがこの日の出演は8人(ニールはいつもこないなあ・苦笑)。それでもステージはぎゅうぎゅう、ストリングセクションの5人以外は楽曲によって担当楽器もかわるので、ジャンベを持ちあげて交換したり、狭い楽器間をそおっとすりぬけたり。アーサーとダレンはピアノやハルモニウムを共有するので、入れ替わり立ち替わりのたびに笑顔でよいしょっとすれちがう。そのさまが愛嬌たっぷりで、思わずこちらもニッコリ。そういえばダレンはヴァイオリンも担当するけれど、今回はノータッチ。集まるメンバーによって、柔軟にパートをかえているようです。マルチプレイヤー揃いの大所帯の強みかな。

『The Imperfect Sea』のナンバーを中心に、ペンギンカフェと、ペンギンカフェオーケストラのレパートリーを演奏。新譜に収録されたカバー(Kraftwerk「Franz Schubert」、Simian Mobile Disco「Wheels Within Wheels」、Cornelius「Bird Watching At Inner Forest」)は全部やったかな。一曲ごとにアーサーがお話してくれる。これは僕がつくった曲、これは父がつくった曲。あのとき僕はちいさくて……とか。クラフトワークやコーネリアスの名前が出たときにはフロアがふわっとざわめきましたね。すっかりペンギンカラーに生まれかわった楽曲が心地よく響きます。洗練された静謐なサウンド、打楽器はソフトマレットを使用したやわらかい音色。アイリッシュフィドルの震えるようなハーモニーと野趣あふれるリズム。ピアノやヴィオラの力強いリフ、パーカッシヴなピチカート。サイモンがのこした楽曲は勿論聴きたいし、演奏されるとわあっとなるけど、アーサーたちの曲ももはや馴染み深い。レパートリーが増えるにしたがって、とりあげる曲の選択に悩みそうだけど、この日はそれらがとてもバランスよくおさまっていた。ストリングセクションとウクレレ、四弦のミニギター(クアトロというらしい。こちら参照)が渾然一体となり、ブレイクごとにぐんぐんスピードアップする「Swing the Cat」では拍手喝采、会場がパブになったかのような盛り上がり。ギネス呑みたいねえ、呑めるひとはいいねえ。

ドラマ『カルテット』でも楽曲が使用されていたし(シナリオブックにタイトルも明記されていたのにトラディショナルでクレジットされたのは解せないが。大人の都合かしら…このドラマ好きだっただけに残念なことでした)、おとうさんのことを知らない若いリスナーがそれで増えていったら楽しいことです。それでふと思ったけど、カバーされ受け継がれていくに従って作曲者や演奏者の情報がうすれていき、ひとびとの記憶には曲のよさだけが残る。そういうものが「トラディショナル」になるのかもしれないなあなんて思った。複雑な気分にもなるけど、楽曲そのものにとっては幸せなことなのかな?

物販のおしらせも(舞台袖からハンガーにかかったTシャツやトートがのびてきて笑った。スタッフさんぬかりない)ご愛嬌、「サインします」と日本語で。アーサーのあったかいひとがらも感じられました。

セットリストはかわるかもしれないけど、ホールだとどう響くかな。土曜日も楽しみです。

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・Penguin Cafe ペンギン・カフェ来日公演|PLANKTON



2017年10月03日(火)
CHON『THE HONEY』JAPAN TOUR 2017

CHON『THE HONEY』JAPAN TOUR 2017@Shibuya WWW

めっちゃよがっだ! マスにサーフにスラッシュにフュージョンに西海岸で変拍子でポリでといろいろブッこんだらなんでこうなるのっていうちゃんこインストのできあがり、旨いー!

きっかけはこのツイート。

ダワさん有難う…どストライクでしたよ! 来日を知ったのは九月に入ってから。しかもゲストアクトがmouse on the keysだったので慌ててチケットとりました。

客層もサークル仲間っぽい若い子のグループからジャズ好きそうなおっちゃんから幅広かった。motkを初見のひともぼちぼちいたっぽいし、ソールドアウトだし(外にチケット譲ってくださいの紙持ったひともぼちぼち)皆どこから情報得てるんだろうという話を終演後してました。こちらはmotkやLITEとか、あのへんのシーンから知っていく感じだけど、思えばそもそもはLITEもマイク・ワットから知ったので、自分のなかでは繋がってるんですね。でもあの学生さんとかおっちゃんとかは何から知ったの…SNSや動画サイトからかなあ。そしてtoeやmotkは四十代、LITEは三十代でCHONは二十代と、世代ごとにこういうバンドがボコボコ現れるシーンの不思議について話した。LITEが当初toeのこと知らなくて、「toeとか好きなの」って言われて「誰ですか?」ってこたえた話だいすきなのよね……「インスト・バンドって一杯いる!」(笑)。こうして独自に音を追究してきたひとたちが交流するようになってシーンが発生していくのだなあ。

閑話休題。そんなこんなでそうなんです、CHONのひとたち若いのよ! 「子」とかいっちゃうよ……近くにいた学生さんがすごい詳しくてともだちに熱く話しているのでついつい聞いてしまったが、彼らがこのバンドをはじめたのは十代で、この日ステージに掲げられたバンドロゴはその頃つくったデモのジャケからのアートワークとのこと。や〜twitterにも公式サイトにもバイオがなくてメンバーの情報全く知らなかったので有難かったわ。アー写(何故野菜を持っている)は三人だけど4ピースバンドと紹介されてて、編成はG×2、B、Drs。ポジションがセンターのGのイケメンくんはアンコールで歌を唄いMCもしてたが彼がフロントマンなのか。ベースの子はアー写にいないけどあとから加入したのか、サポートだったのか。謎は多い、これから調べる。それはともかくま〜バカテクでしたわ。特に下手側にいたギター。この子がマリオくんだそうで、マリオー! ていっぱい声もかかってた。エフェクターもあまり使わず、滑らかなパッセージで抜けのよいクリアな音を次々繰り出してくる。とにかく手数が多い。ドラム(マリオくんの弟とのこと)も手数がめっちゃ多いのにセットはすごいシンプル(BOBOさんくらいよ)、そこがやっぱりハードコアとか通ってるのかなあと思ったり。ちなみにベースの子、多分スクエアプッシャーが使ってるのと同じベース(Ibanez)の5弦のやつ使ってた。序盤トラブって交換してたりしてヒヤヒヤしたが持ちなおしてよかった。テクニカルなのにひけらかし感がなく、音はまっすぐ。どこで何を聴いてどういうルーツからこの音楽に辿り着いたのか見えない…面白いなあ……。

motkも素晴らしゅうござった。「arctic〜」真ん中のパートとか「forgotten〜」の入りとか、新留さんのパートかなり変えてきた! 照明は単色のスポットライト、WWWはスクリーンと壁面を映像に活かせるのがよいですね。インスタレーションとしても楽しめる。そういえば以前より映像が音と同期する場面が多く、そういえばこれ手動なのかしらと思う。シンバルの響きがとっても綺麗で、クラッシュな衝撃音からゴーストの繊細な音迄いつにも増してクリアに聴こえた。PAの腕と、自分のいた位置が丁度よかったのかな。現在国立新美術館で開催中の安藤忠雄展『挑戦』に楽曲を提供している彼ら、今月にはその音源も配信リリースされるので楽しみです。

CHON目当てだったらしい子らが「フィルめっちゃうまい」「パワードラムだね」「スカッとする」「ドラムのひとこわそう」「声がドスきいててこわい」「真ん中のひとめっちゃ足で拍をとってた」「一度(拍を)見失ったらもうダメだよね」「演奏崩壊する」「なんでこんな曲作っちゃったんだろーと思ってそう」つってて、うんだいたい合ってるとニヤニヤしました(笑)。

いやー楽しかった! 文字どおり音楽は楽しい! を体現するバンドを観られてニッコリです。またきてねー。