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2011年10月30日(日)
『MY GREATEST HITS』

入江雅人 グレート一人芝居『MY GREATEST HITS』@CBGK!

入江さんのひとり芝居は『爆走CLASH 17★吠えよ、ストラマー★』以来8年振り。7年振りだった昨年の『マイ・バニシング・ポイント』を逃したのが悔やまれる、どーしても日程が合わなかった。多分入江さんがひとり芝居始めて2本目からずっと観てるんだよね…学園祭(本人曰く「営業」)の迄観に行ってたもん。すごいファンみたい…いや、実際このひとのひとり芝居、すごく好きなのです。

今回はタイトルのとおりベスト版。その営業用にやっていたネタからもチョイスすると言っていたので楽しみにしていたら、出た名作「メカカ」!「橋本茂の一生」!あと「アンクルおじさん」は比較的最近(つっても8年前か)のものだ。憶えてる、憶えてるよ!で、ちゃんといまどきのものにヴァージョンアップされていた。「メカカ」はエヴァネタが加えられてた。CBGK!は映画館だったシネセゾンの機能を殆どまんま使っている劇場でスクリーンも映写機も残っているので、ステージに映像をドーンと映せるんですね。これは使いたくなるでしょー、「メカカ」のCGが豪華ですよ!(笑)

熱さは常にある。その熱さを俯瞰し、のたうちまわる自分をシニカルに捉え舞台に載せる。これはずっと変わっていないところ。今回ネタの端々に現状への怒りを感じたし、それを前面に出したものも多かった。あまりに押し出すと観客が退く。そのギリギリ迄怒りを持っていって、俯瞰で笑いに転じる。

いちばんキたのは「橋本茂の一生」だなー。だいすき。今の歳になった入江さんが演じるとすんごいせつなさが増すし、こちらも歳をとった分掬いとれるニュアンスが増えている。それにしてもこれ、いちばん最初に観たのはいつだったか…それこそ20年近く前だと思いますが、当時の年齢でこれを書いて演じていた入江さんの老成振りに改めて唸りました。波瀾万丈は平々凡々と表裏一体、それがひとの一生。



2011年10月29日(土)
『威風堂々!!』

シエナ・ウインド・オーケストラ『威風堂々!!』@北とぴあ さくらホール

エルガー『威風堂々 第一番』
ホルスト『吹奏楽のための第一組曲』
リード『アルメニアン・ダンス パート1』
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バーンスタイン『キャンディード 序曲』
バーンスタイン『シンフォニック・ダンス(ウエスト・サイド・ストーリー)』
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バーンスタイン『スラヴァ!』
スーザ『星条旗よ永遠なれ』

宮本文昭さん指揮。オーボエ奏者を2007年に引退し、現在は指揮者として活動されています。来年から東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の音楽監督に就任が決まっているとのこと。一曲毎に指揮者のお話が入るのですが、シエナで指揮をするのは初めてだそうで「完売と聞いて驚いたし悔しい、僕が指揮する東京シティフィルでも完売にならないのに」みたいなことを言っていました。

「近くのホールに来るって嬉しいよね、すぐ帰れるし」と嬉しそうに話していたひとの声を聞きました。家族連れも結構見掛けた。部活で吹奏楽をやっている学生の多さ、そして部活を引退しても趣味として演奏を続けているひと、吹奏楽を聴くのが好きなひと。そのどちらにも門戸が開かれている。学生が聴きに来られるチケットの価格設定、細かい地域をしっかりまわる演奏会(公共ホールとの協力体制もしっかりしているのでしょう)。気軽に遠出出来ないひとも聴きに来れる。

ちなみに今回のホール北とぴあでは、ロビーでミニ物産展も開催されており(毎回やってるのかな?)地元名産がいろいろ売られておりました。ロールケーキを買ってみたよ、おいしかったー。

楽器を演奏する楽しさが実感出来る参加型の構成がいい。宮本さんが「シエナの演奏会では恒例だそうですね、今日も最後に皆で演奏しますよ。楽器持ってきてるひといる?ステージにあがろうと思ってきたひと?」と挙手を求めたら6人しかいなかったようで「ええ〜、どうすんの?」なんて言っていたけど実際最後になってみたら上がるわ上がるわぞろぞろと(笑)。楽器を片手に嬉しそうに走っていく制服姿のこどもたちの嬉しそうな表情と言ったら。

考え抜かれた興行だなあと感心するし、吹奏楽の聴衆層の厚さ、幅広さについていろいろ考えた。そして音楽を聴く楽しさ、演奏する楽しさを伝えてくれる演奏会っていいなあとしみじみ思いました。管弦楽とは違った迫力も魅力です。

数々の名曲が聴ける選曲もいい。当日配布のパンフにもあったけど、『ウエスト・サイド・ストーリー』ってホント「全編が名旋律」。OSTからの抜粋で構成された『シンフォニック・ダンス』には「トゥナイト」も「ワン・ハンド、ワン・ハート」もほぼ出て来ないのに!『キャンディード』も初めてライヴで聴けて嬉しかったよー。バーンスタインは生演奏で聴いてみたい曲沢山ある……。



2011年10月23日(日)
『芸術祭十月花形歌舞伎』夜の部

『芸術祭十月花形歌舞伎』夜の部@新橋演舞場

日乃出のおべんとうを買えないこの喪失感…ううう何故だ、何故なくなっちゃったんだー(泣)。ぐんまちゃん家になっている店舗跡をうらめしく見やり、基礎工事中の歌舞伎座を横目に演舞場へ。夜の部、猿之助演出『猿之助四十八撰の内 通し狂言 當世流小栗判官』。「市川亀治郎、市川笑也 天馬にて宙乗り相勤め申し候」!段四郎さんが体調不良のため休演(しょぼん)、横山大膳久国役は右近さんでした。

いやー猿之助歌舞伎の演出は派手で爽快!スピード、スペクタクル、ストーリーの「3S」と言うだけある……。と言いつつ二幕の血の瀧見て貧血起こしそうになった自分もヤワになったものです…我に返ってからはすごいアガりましたが。血がドバーとか内臓がベチャーとか平気なたちなんですが、とめどなくさらさらさーと小川のように流れる血の瀧を見てたらああもったいない…とか思ってな……ええ、貧血が全然改善しないもので。そしてタ師匠に指摘されてああそうかと気付きましたが、これ猿之助演出ではあるけど、スーパー歌舞伎『オグリ』とは別ものなんですよね。これでもドガンドカンと派手なのに、スーパー歌舞伎だとどうなっているのか…み、観たい!

一幕における小栗と荒馬の格闘から碁盤に載っての曲馬、二幕退路を断ち闘いを制した浪七の絶命、三幕宙乗りで天空を駈ける白馬。ビシリビシリと見得を切り静止画になるそのさまの華やかなことと言ったら!キャー!か、かっこいー!粋ー!ブロマイド買うー!ってなキマリっぷりです。見得が決まるごとに鳴るツケにもテンションあがります。いやもう荒馬を乗りこなしたときの見得にはシビれたわ。後ろ脚のみでヒヒーンと立つ馬を表現するためにワイアーで馬の上半身をつり上げるのですが、歌舞伎の馬だから脚はふたりの役者さんがきぐるみに入っているんですよ勿論。で、前脚役のひとは宙に浮いてる訳です。その動きがイキイキしてて!すごい高さで!馬さん役の役者さんホント素晴らしかったよー。

それにしても二幕が白眉でした、立役の亀治郎さん大熱演。ちょー益荒男!ってなタイプではないからこその…あのーなんて言うんだ、マッチョではないからこその、僕の力ではもう無理!だから自分の身を犠牲にしてでも姫をー!と言う決死の行動として映る闘いっぷりが情に訴えまくりです。浪七ちょーいい子!(泣)櫂を繋いで舟の形にする場面も格好よかった…波の青、血の赤といった色彩も鮮やかで、めちゃ優れたヴィジュアルワークのめじろおし。

一、三幕での亀治郎さんは小栗判官役、王子っぷりがステキング。三幕での小栗判官とお駒の早替わりも見事。見掛けは勿論声色も全然違うし、なんと言うか身体の線さえも違って見える。所作の美しさでそう見せるんだけどここ迄違うとなんともまあため息が漏れますね。先日観た『HOPE JAPAN』でのギエムやルグリのような性を超越した美しさでした。で、そのお駒は小栗判官との結婚が破談となり母親お槇に殺されて化けて出る(いやーこの経緯も波乱バンジョー過ぎた。お駒もお槇もかわいそう!)のですが、好く役も好かれる役もひとりで演じる訳ですよ(笑)ニクいわー。

三階席だったので花道はモニタで観ましたが、宙乗りがすごく近くて亀治郎さんのちょうドヤ顔を有難く拝見。ドヤッ!白馬が暴れたヨ!と宙乗りの状態で馬をガタガタと揺するところがあってこっちの肝が冷えた…王子の無邪気は恐ろしい。固定してあるとは言え姫は文字通りお姫さま座り(馬を跨いでない)なので、滑って落ちたら…とか考えてしまったよ!高所恐怖症の役者さんだったらさぞや…笑也さん怖くなかったかしら。

亀治郎さんの立役を観る機会がこれ迄あまりなかったので、これからいろいろ観てみたいと思いました。いやあ格好よかった…。浪七の女房、お藤役の春猿さんもとても素敵。春猿さんの女房役って珍しい気がするけど、落ち着いた芯の強い女の魅力に満ちていてよかった…沁みた……。右近さん演じる胴八が斬っても斬っても死ななかったり(何度も訂正:琵琶湖でした失礼、に落ちるんだけど何度も這い上がってきて、その度「また!」と客席がドヨヨとわく)、獅童さんの橋蔵がアホの子だったり(演舞場で細マッチョゴリマッチョのおどりが観られるとは思わなかったわ)で笑いも満載。泣いて笑ってため息ついて。ああ歌舞伎っていいなあ。

先日亡くなった芝翫さんのこと、もうすぐ猿になる亀治郎さん(今「さる」の一発変換が「申」と出て、今後亀治郎さんがTeam申に出演することになったらネタにされそうだなあと思った)や中車さんのこと、菊地兄弟(秀行成孔)やチェブラーシカの話などをして帰宅。楽しかったー。



2011年10月22日(土)
『泣き虫なまいき石川啄木』

シス・カンパニー『泣き虫なまいき石川啄木』@紀伊國屋サザンシアター

いやー…この手の困窮+家族がいつも揉めてる話ってすんごい苦手で……いや困窮してても揉めてても面白みがあればいいんですが(自分基準)、実際面白みもあったんですが、その面白みに行き着く迄がすんごいしんどかったー。

デフォルメは多少あれど史実がもとになっており、執筆当時の劇作家の家庭環境をも反映されている。そしてどちらのいざこざも作品紹介テキストに必ずと言っていい程記されていて、あたかもそれが観劇前の基礎知識のようになっているものだから、あーなんでもかんでも予習するってのも考えもんですなとしょんぼりしました。いやでも予習してなくてもあれはキツい。笑えねー。

し・か・も!役者さんが皆巧過ぎる程に巧過ぎる。嫁をいびりまくる姑とか、孫の位牌を質に入れて酒買っちゃうダメ坊主とか、もう、つらい!(泣)なんで金払ってこんなつらい話観なければならんのだと観劇の基本を振り返る程でした。理不尽なことを言っているのは自覚していますよ…家族のいざこざを楽しんで観る才能が私にはないんですよ……。いやーえりさんも段田さんもすごい…いつもすごいとわかっちゃいるが今回はすごい腹立った(笑・役にですよ)。しかもえりさん、盛岡弁があまりにも自在で台詞がところどころ聴き取れない…(笑)。信心深いクリスチャンの妹がいちばん正論を言ってるんですが、基本が信仰心にあるからオールマイティではない。西尾まりさんの声と台詞回しは、言葉の強さをズバリと通すのに効果的。

この家族が常に六畳二間にぎゅうぎゅう、劇中八割は揉めてんじゃなかろうか。啄木でなくてもムキョーてなる!逃げたくなる!いやむしろあの環境で作品を書き続けた啄木尊敬する!仕事あんまりしてない割に不満ばっか言ってるとかだらしないとかツッコまれてるけど、そうなっても仕方ないよー!と叫びたくなる追い詰められっぷりでした。

で、残り二割でいい話が…と言うか、こんなしんどい環境でもちょっとひといき、なこともあったんですよ。と言うエピソードのこころ休まることと言ったら。皆できしめん食べるとことか、夜鳴きそばを呼ぼうとするところとかね。どっちも食べもの関連か。そして浩介さん演じる金田一京介がいてくれてホントーによかったー!いいひとすぎると言うよりひとがよすぎて気前がよすぎる人物で、石川家にお金とかポンポン渡しちゃう。破った十円札を渡したシーンでは、客席の各所から「ええ〜!(またあげちゃうの?)」と悲鳴をあがりましたよ。このときの金田一って結構打ちひしがれてたんだよね…まーなんと言うか、育ちのいい子のおおらかさが嫌味なく出ていてよかったです。登場するタイミングもよくて。家族が揉めまくって、もういやー!席立ちたい!劇場から逃げ出したい!と言う思いがピークに達する寸前に出てきてくれると言う。いやー浩介さん有難うと思う程、劇中のオアシスとなっていましたよ!

濃い家族の濃いいざこざに囲まれて、稲垣さん演じる啄木はふてくされたりのたうちまわったり悶々としたり。さまざまなことを受け流しつつ、友人の金田一に愚痴をこぼしたりお金をせびったりの日々。金田一がいないときはあまり喋らず、仕事をさぼり、家族が揉めている部屋のすみっこで我関せず(と言うかなるべく関わりたくない)とものを書いている。そんな「実人生の白兵戦」を過ごす彼が二幕に輝きます。大逆事件を知り憤り、金田一と激論を交わす。その怒りは実人生からの逃避なのか、作家としての自負なのか…抑え込んでいたさまざまな感情が溢れ出るこのシーン、とてもよかった。

嫁の貫地谷しほりさんが、最後に啄木の日記を燃やすまいと、ほぼ初めて自分の意見をはっきり言うラストシーンは心に残りました。いやでつらいことはどんどん忘れていって、楽しかったひとときだけが濾過されて残るといいなと思うものですが、その楽しかったことはつらいこととセットになっている場合も多いですよね。はー、人生って。



2011年10月19日(水)
『HOPE JAPAN』

シルヴィ・ギエム・オン・ステージ 2011 東日本大震災復興支援チャリティ・ガラ『HOPE JAPAN』@東京文化会館

シルヴィ・ギエムが発起人のチャリティガラに行ってきました。趣向を凝らしたプログラム、心のこもった演技と演奏。静かに、しかし熱い思いのこもった作品ばかりの充実した内容でした。

東京バレエ団によるベジャール振付『現代のためのミサより“ジャーク”』で開幕。続いてアンソニー・ダウエルが登場、挨拶と詩の朗読。挨拶文は字幕が出ていたので原稿があったのでしょうが、ダウエルはカンペ等持っておらず、定型文を読み上げるようなこともしませんでした。ちゃんと自分の言葉で思いを語ってくれたのだと、ちょっとしたことですがジーンとしました。朗読された『満ち足りた幽霊』『子どもの言うには…』は、英国ロイヤルバレエ団の創設者であるニネット・ド・ヴァロアのもの。追悼の意を深く感じ、静かに聴き入りました。会場が礼拝堂のような雰囲気に。

ギエム登場、ベジャール振付の『ルナ』。ベジャールとギエムの出会いの作品でもあります。真っ白いシンプルな衣裳を身に着けたギエムの格好いいこと!美しさってある一線を越えると両性具有的なものになるなあ…曲線と直線、滑らかに動きピタリと止まる長い四肢。続いて登場したマッシモ・ムッルのプティ振付『「アルルの女」より』は男性性を押し出した踊り。アルルの女に魅了され破滅して行く青年の姿を狂おしく情熱的に踊り喝采を浴びました。

一変、次は日本から。花柳壽輔の舞踊、藤舎名生の横笛、林英哲の太鼓による『火の道』。重力と闘うかのようなバレエと、重力に根差した舞踊を続けて観るのはとても興味深い。どのプログラムもセットは皆無に等しく、裸舞台に身体ひとつで立つ演者たちからは、ジャンルは違えど地鎮と鎮魂と言った共通の祈りのようなものを感じました。

ここで一部終了。客電がつくとざわめきとともに「はあ〜」と言う感嘆のため息の気配があちこちから。一演目が終わる毎に歓声や拍手が大きくわくし、会場の雰囲気は高揚しているけれど静かで落ち着いた感じ。二部はバッハ『無伴奏チェロ組曲』から構成されたジェローム・ロビンズ振付の『ダンス組曲』からスタート。チェロ演奏は遠藤真理、ダンスはマニュエル・ルグリ。遠藤さんって『龍馬伝紀行』の曲を演奏している方でした!華やかで柔らかい笑顔に真紅な衣裳が映えるルグリも両性具有のオーラを纏っていました。踊り終わるとレディファーストでとってもジェントル、全ての仕草が優雅。

続いてソプラノ、藤村実穂子さんの歌唱で『十五夜お月さん』『五木の子守唄』『シャボン玉』『赤とんぼ』『さくらさくら』。無伴奏、広いステージにたったひとりで、声だけを響き渡らせます。客席の止まらない咳も響いてしまったのは気の毒でしたが、その唄いきる力強さと美しい声に釘付けでした。そして静けさも音楽なのだなあと感動しきり。

そしてプログラムの最後を飾るのは、ベジャール振付によるギエムと東京バレエ団の『ボレロ』。アレクサンダー・イングラム指揮、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団による生演奏。生オケの『ボレロ』は2003年の『奇跡の響宴』で観たとき(ダニエル・バレンホイム指揮、シカゴ交響楽団演奏)、演奏と踊り自体は素晴らしかったけどテンポやリズムの感覚が噛み合わない部分があり、難しいものだよなあと思ったのでした。今回はそういったストレスは感じず。相性もあるのかも知れません。オーケストラピットがあるためステージが若干後方に退いている分全体のフォーメーションが綺麗に見えました。ギエムは確かに跳躍等が低くなった印象はありましたが、それを凌駕する力強さ、しなやかさが全身から青い炎のように立ち上がっており、若返った印象すらありました。彼女の踊る『ボレロ』を何度か観ていますが、鬼神のような迫力でリズムのダンサーたちを支配し、自身もろとも焼き尽くしてしまうかのような激しいメロディから、リズムたちを鼓舞する母性すら感じさせる、おおらかなメロディへと変化していった印象がありました。今回は鋭さと包容力が絡み合い、柔らかく静かな、しかし強靭なメロディに感じました。

封印された『ボレロ』が日本で上演されたのは二度目。一度目はベジャール追悼のため、今回は「日本との絆を再確認するため」、「日本を心から愛したベジャールの魂をつれてくるため」。ボレロが復活するのは何か不幸があったとき。複雑な気持ちではあります。でも観られるのは嬉しいし、この踊りにはいつも力づけられ、生きる意味を考えさせられるのです。踊りは祈り。ギエム、本当に有難う。

3月11日以降、来日公演の延期や中止が続きました。特にオペラ界はメインキャストの降板が相次ぎました。残念なことだけど、外国のひとからすれば、福島も東京も福岡もそんなに変わりはないのでしょう。それを責める気持ちは全くありません。あの国に行くなんて恐ろしい!と思われるくらいのことを日本はしでかしてしまったのです。ギエムは長いメッセージを送ってくれ、4月にパリでチャリティ公演を開催してくれました。そして予定通りのツアーに、この日の特別公演も加えてくれました。シンガポールから二日前に現地入り。他の出演者の方々もハードスケジュールのなか集まってくださって、しかもこの内容。

その行動力と優しさ、プロフェッショナルとしての仕事ぶりに、尊敬と感謝の気持ちでいっぱいです。素晴らしいステージでした。



2011年10月15日(土)
『トータル・リビング 1986-2011』

遊園地再生事業団『トータル・リビング 1986-2011』@にしすがも創造舎

フェスティバル/トーキョー(F/T11)四本目、ようやく屋内での上演です(笑)。いやあー…よかった……。ラストシーン、1986年の“気分”を実際には知らないであろうあの女優さんの笑顔には胸がギューッとなった。不機嫌な感じ、ゴキゲンな感じ、イライラしていて優しい感じ。その記憶を持ったまま2011年にいる自分たち。以下ネタバレあります。

一幕45〜50分ずつの三幕、150分。休憩二回。休憩時のBGMはPSBやスクポリ等80年代の音楽。2011年3月11日前後と現在、そして1986年を行き来する(2011年に生きるひとが1986年のとある日を映画に撮影する)シチュエーション。場所はビルの屋上。欠落の女が忘却の灯台守を訪ねてくる。自分の欠落を埋めてくれることを期待してきた女を、灯台守は忘れてしまう。何度来ても、何度同じことを訊ねても。2011年を記録し続ける「記述者」たちは、メモを拾い、起こったことを読み上げ続ける。

バブル前夜に浮かれる1986年と、震災後の不穏が続く2011年が対比的に描かれる。1986年の4月、四谷四丁目のビルの屋上には大きな広告看板があった(今もある)。「クリナップ」の「ッ」と「プ」の間から、当時人気絶頂だったアイドルが飛び降りた(今の看板も「クリナップ」だ)。その数週間後、チェルノブイリ原発事故が起きた。2011年3月、東日本大震災と福島原発事故が起こり、5月に南の島出身のアイドルが首を吊った。80年代にも2000年代にも、不穏は常にある。彼らは(自分たちは)それを忘却して生きていく。どんなことがあっても、何度も、何度でも忘れてしまう。そして、また不穏なことが起きると過去の不穏を思い出す。

その時代に憧憬をも含めて育った世代である自分(1971年生まれ)と1956年生まれである宮沢さんが抱いている80年代の“気分”には差異があるだろうし、ましてや舞台上でそれを演じているひとたちの殆どは1986年のときいくつだったか…生まれてさえいないかも知れない。『3人いる!』にも出演していた上村梓さん(忘却の灯台守役)は1986年生まれだ。

観たひとの世代によって印象は違うと思う。しかし、当時はよかった〜ってハナシではない。1986年に限らず“過去”を体験し生きてきたひとたちが2011年を体験したとき、何を思って過去に思いを馳せるか、現在と未来に思いを馳せるかを問われる作品だ。忘れはするもののその記憶を持ち(=思い出すことが出来)、どうやって灯台に灯をともし続けるか(=忘れないでいることが出来るか)、現在をどう生きるか。忘れた自分への悔しさと戒めは示されるが、忘れてしまうことを否定はしていない。

そして、2011年を知らずにこれから生まれてくるひとたちもいる。

個人的にはふたりの監督…1986年の映画を撮ろうとしている人物と、2011年に自殺したアイドルについて取材するため南の島へ旅立った人物の対比がとても興味深かった。瞬間を逃すまいと反射的と言ってもいい撮り方をする前者、対象の懐に飛び込むべく撮影前に念入りな取材をする後者。後者は前者の教師でもある。前者は携帯やスマフォで何でもインスタントに撮れる世代、「間は編集して繋げてしまえばよい」。後者は上書き出来ないフィルムで撮ってきた世代。そして後者は自分が3月に死んでいることに気付いていない(≒忘れている)。永井秀樹さん、よかったなあ。

そして随所にコントとして見せるパートがちりばめられている。重いテーマを扱っているものなのに、かなり笑いました。個人的には「かねもち!」がツボに入り、そこから躊躇なく笑うようになった。序盤はこちらも堅かった。独特の軽さと独特な重さ。深刻さと不謹慎。エモさからは程遠く、淡々と飄々と的確にポイントを突く。パースが歪んで見える狂った静謐な美術(林巻子さん)、ポップなノイズとメロディの音楽(杉本佳一さん)、POTTO山本哲也さんの衣裳もよかった。軽さのなかに辛抱強さ(後述アフタートークでも話題になった「兆しで留まる」と言うこと)と誠実さが感じられました。

宮沢さんといとうせいこうさん、今作品のドラマトゥルク桜井圭介さんのアフタートークも面白かった。開演が遅い+上演時間が長かったため尻切れトンボな感はありましたが、非常に興味深い話が聞けました。不穏さは物語の萌芽を生み、その物語の兆しは萌えになる。そこに「不穏の快」がある。兆したまま萌芽に留まることが大事であって、耐えきれず語りだしてしまうとバランスが崩れ、今の日本の「がんばろう日本」みたいな気分になる、と言ういとうさんの指摘に納得。平常心であることを制限しない、と言うことだ。

そこに身体があると言う事実があり、ときには不都合となるその身体を消すことが出来ないのが演劇、バーチャルが自在な文学。例えば分裂した「わたし」と言うキャラクターを扱うとき、文学では全てのわたしを「わたし」で書くしかないが、演劇では5人の役者が皆「わたし」と語ればよい。僕(宮沢さん)は作家だから記述する(いとうさんも同意)。その違いを考えて、演劇にしか出来ないものをつくる。と言う話にも感銘を受けました。

発売中の悲劇喜劇に今作の戯曲は掲載されている。この作品が戯曲としてどう記述されているか、読んでみようと思います。

ちなみに今回の舞台は八百屋。そこに椅子とテーブルを置いてのトークだったので、お三方とも「座ってるのがキツい」と言ってました。お誕生日席のいとうさんは「テーブルによりかかってちょっと楽してる」(笑)。おつかれさまでした。



2011年10月14日(金)
『“ALTER WAR IN TOKYO” DCPRG』

『“ALTER WAR IN TOKYO” DCPRG 2010/10/09〜2011/06/06 ライブドキュメント』@シネマ ジャック&ベティ シネマ・ベティ

『ALTER WAR IN TOKYO』リリース記念で一度きり、とのふれこみだった豊洲での上映を見はぐって(『ウエアハウス』初日と被った)しょんぼりしていたところ、ジャック&ベティで一週間限定上映されると言うのでわーいと黄金町へ。もともとシネマ・ベティでは冨永昌敬監督の『アトムの足音が聞こえる』がかかっていて(これも逃している…)、関連上映としてレイトのスケジュールには「冨永昌敬 撮りおろし新作上映」と記載されてたのね。で、何だろーと思っていたらこれだったと言う。

やっぱりさあ、一度きりってのはあまりにも勿体ないじゃない…行けなかったひとも多いと思うしー。ソフト化も予定されてないとか言うしー。助かりました。と言えば、以前はペペやNKDSの映像は冨永監督、DCPRGは夏目現監督が撮ってたけど、今は全部冨永さんが請け負ってるのかな。

DCPRGが再始動してからのライヴ三本(昨年10月の野音今年2月の新宿文化今年6月のリキッド)の映像と菊地さんのインタヴューで構成。淡々とした流れで、新譜のリリースに合わせてと言っても『ALTER WAR IN TOKYO』を音盤にすることになった経緯や、再始動に到ったきっかけと言ったことは然程語られません。演奏の映像を見せ、間のインタヴュー映像で菊地さんが曲構成について、プレイヤーについて等の解説をする。『ALTER WAR IN TOKYO』がライヴレコーディングされたリキッドの映像はあるけれどアート・リンゼイがどうこう、とはならず、「『New York Girl』の構成を暗記しているのは俺と田中ちゃんとアリガスだけ」ってインタヴューで言ってるけどそこで「New York Girl」の映像は使わない(笑)。もともとがいつ公開する、と言ったことを目指して撮っていたものではないのでしょうね(冨永さんは菊地さんの上記プロジェクトのライヴ映像を普段から全部撮ってる筈)。経過報告と言った態なので、ソフトにする予定はないと言うのも頷けます。ライヴアルバムをリリースと言うのもアートがゲストと言うのも後付けだったそうだし、そこに触れないのは必要がないから、と言うことなのでしょう。

しかしDCPRGを新編成にするに辺り、菊地さんが何を考えてメンバーを集めたかや、リズムに対しての感覚の鋭さを語っていたことが聞けたのは大きな収穫。解説聞いてから曲聴くといろいろ腑に落ちて面白い。普段ライヴ観て「あああ、ここ崩壊する!」「わああ、ここすげえバッチリハマッた!」と言うのは素人聴きでも判りはするけど、何故そうなったか迄は理解出来ていないことが多いので、その原因はここから探ればいいんだと沢山ヒントを貰った感じでした。

そして映像がステージ側から撮られているので、プレイヤーがどんなふうに乗っかっていくのかの流れや、誰が誰をガイドにしているかがよく判った。前述の「暗記」の話で、「千住くんも憶えてないんだから!」なんて言われていましたが、千住くんむっちゃ田中ちゃんのこと見てますわ。で、田中ちゃんは暗記を忘れないようにするためか、と言うか没頭しないとこんがらがっちゃうよね、基本叩いているときは楽器と指揮以外見ていない感じです。いやホント大変ですね…野音の最後なんて、魂が抜けたような背中が映っていたよ(笑)。そんな田中ちゃんが、「CATCH22」アウトロでの千住くんのソロ(このときは休める)をノリノリで見ている一瞬があって微笑ましかった。

しかし、憶えてなくてあんだけ叩ける千住くんもおそろしいわ……。

客席側からだと普段は見えないところが見える!譜面台や機材で隠れている部分も見え、自分もステージにいるような覗き見感もあってワクワク。メンバーの表情をしっかり見られるのも楽しかったー。特に菊地さんは基本客席に背中を向けているので、このサイン出してるときはこんな顔してるんだー、メンバーのソロ聴いてるときこんなにニヤニヤしてるんだー(笑)と言うのも見られて面白かった。「PLAYMATE AT HANOI」での坪口さん、丈青のKeyに菊地さんがKeyフレーズを噛ませて行くやりとりもよかったな!三人ともいい顔してました。丈青はDCPRGでの演奏だとにこやかだね。高井くんもいい笑顔が多かったです。

それにしても「MIRROR BALLS」が流れたときはうえーんてなりそうでしたよ、先日のリキッドで聴けなかったのが余程ショックだったらしい。「MIRROR BALLS」も「HARDCORE PEACE」も、すっごい久し振りに旧友に再会した気分だったよ!新録して次のアルバムに入れる予定だと言う「CIRCLE/LINE」、この間のリキッドのヴァージョンはなんつうか地獄のような重さだったんだよね…「HARDCORE PEACE」に繋げないとこんなに不穏になるかと。それにゾクゾクもしたんだけど。もともとの菊地雅章さんのヴァージョンが15分近く演奏してそのままフェイドアウトってものだけど、新しいヴァージョンのアウトロがどんなふうになるのかは気になるところです。

再始動から一年。新しいフェイズに入り、ハードコアなピースを封じた(と感じた。9日に観たときは)DCPRGはこれからどんなところへ行くのかな、と思いました。

インタヴューに応える菊地さんが被っていたキャップにタグがつきっぱなしだったのがとても気になりました。このひと言うこともやることもキレッキレなのに、いきなり抜けてるとこがあるのが面白いよね…と言うか、いつも目まぐるしくいろんなこと考えてるからお留守になる部分があるのかね……って、撮影の前に誰か教えてあげればいいのに(笑)。ええと、心身元気であるといい……いやホント。



2011年10月12日(水)
『ウエアハウス[circle]』楽日

演劇集団円『ウエアハウス[circle]』@シアタートラム

ひぃぴーとさん有難うございます、おたくですみません……。

千秋楽。『ウエアハウス vol.1』『ウエアハウス vol.2「地下」』の上演台本を再読してから臨んで考えたことなどをおぼえがき。

・(元)教会の地下、と言うのは『vol.2「地下」』から続く状況設定でしたが、これは『vol.2』以降『ウエアハウス』が上演され続けホームの装いさえ見せていた劇場、ジァン・ジァンがまさにそうだった。ジァン・ジァンは渋谷公園通りに今でもある日本基督教団東京山手教会の地下にあったスペースでした(現在はCafe Miyama)

・そういえば今回「教会の地下」と言う言葉を用いずに「地下」である、と言うことを示した簡潔な台詞のまとめ方が何げにすごいなあと思いました。ちなみに劇中エトウが口にしない「暗唱の会」と言うサークル名をオリベが言う場面も面白いなと。この名称、オリベがサークルの活動内容から想像してこの名前をつけたのか、他の要素で知る機会があったのか(オリベが部屋を出入りする描写が何度もあるので)考える作業も楽しいです
・ちなみに「教会の地下」「暗唱の会」と言う情報は、観客には当日配布のパンフ等で提示されている。舞台にそのまま載らない情報を観客が持っていることで、何らかの誤読が生じる場合もある訳ですが、この敢えての(と思われる)ミスリードも興味深いところ

・オリベとエトウの会話は「説明的な台詞」を意図的に使わないようにしてるのかな、と。極力説明せずに続く会話が少しずつズレていく。「わかります」「そう?」、「わかります?」「はい、なんとなく」、「わかります、その気持ち」「どの気持ち?」
・反面タナカさんの台詞は説明的なものがとても多いですね(笑)この対比が面白い

・教会、と言うモチーフから考えると、オリベの最後の姿が十字架刑にされたキリストのようなポーズであったりするデザインが興味深かったです
・トラムのシンメトリーな裸舞台に映える映える。タブロー!
・そういえばスズカツさんが演出した『BENT』の終盤のシーンでも、マックスが同じようなポーズをとって有刺鉄線に飛び込もうとしていたな
・オールビーはキリスト教的にタブーとされることについて、執拗な迄に追究を続ける作家と言うイメージがあります。それをスズカツさんがリデザインすると、ある種の祈りのような敬虔さが浮かび上がる。ここらへん、ご本人もよく言及されているスズカツさんの出身校と、そこでの生活に深く関係があるのかなと思ったりもします

・と言えば、ふたりがもみ合った際、オリベが転倒して偶然ナイフが刺さったような描写があるけど、きっかけは事故として設定してあるところも気になったなあ
・『LYNX』の再演を続けるうちに、オガワが自殺から事故ともとれる描写になったことを思い出しました
・その辺りは『クラウド』にも繋がりますね。どう死ぬか、どう生きるか
・ちなみに上記どちらの動作も、上演台本には指定がありませんでした。あのポーズは橋爪さんのプランなんだろうか、それとも?

・と言えばそのポーズ見たとき思ったけど、橋爪さん腕ながーい!
・そしてかめに似てると思うの…鼻の下から口許にかけて……
・ほ、ほめてる!ほめてる!
・そしてジャケットを被るとジャミラに見えます
・か、かわいい!かわいい!
・そういうシーンではないですよ……

・話が逸れた。そのーなんだ、スズカツさんの意匠と言うか「デザイン力」についていろいろ考えた今回でした、と言う話です。SOUND+VISIONですな
・と言えば音響オペが初日、2回目と違うように聴こえたのは気のせいか。席の位置にもよるかな

・スズカツさんのアンビヴァレンスっぷりについても考えちゃったな…登場人物たちの引き裂かれは、ひとりの人間の頭のなかから出てきたものだ。最近は言わなくなったけど、自称シゾイドくんと言うだけはありますよね
・そこからして、今回のごあいさつにあった「世界中に存在するすべての戯曲のあらゆる役は、ひとりひとりの俳優の中にすでに存在している」と言う考え方には納得。共感、と言っていいかもしれない

・それにしても橋爪さんと金田さんのポンポンとしたテンポのいいやりとりは聴いていて気持ちがよかったなあ
・暗唱の会メンバーの関係性を考えるのも楽しかった。ズシくん→シロヤマさん、ウメザワさん→ズシくんの辺りとかね。冒頭のシーンは日替わりアドリブだったそうですが、自分が見られたのはアライさん×ウメザワさん、アライさん×シロヤマさん、ズシくん×シロヤマさん。タナカさんとザイゼンさんのインプロも見てみたかったなー

・観客は円観劇常連さんの方が多い+年齢層が高めだったように思いましたが、そのひとたちのタフさに感心したりもしました。どこ迄笑ってられるか、と言うタフさなんだけど。おお、ここでも笑うか、ここでもまだ笑うか、と。自虐的とも、無神経とも感じなかった。これはなんだろうなー、人生の先輩としていろいろ伝授願いたいものです

・あーあと意識/無意識に関わらず、ひとはレノンにおけるチャップマンを探しているのかも知れないな、と思いました。結果それが事故になるか事件になるかは、きっとそのときにならないと判らない。そして判ったときには何もかもがもう遅いのだ



2011年10月09日(日)
『ウエアハウス[circle]』2回目、DCPRG『ALTER WAR IN TOKYO』レコ発

演劇集団円『ウエアハウス[circle]』@シアタートラム

2回目。当時ザズゥシアターで物販されていた『ウエアハウス vol.1』『ウエアハウス vol.2「地下」』の上演台本を読みなおしてから観たのですが、いろいろ思い出すところがあり、新しく興味を持ったところもあり。千秋楽にもう一度観に行くのでそのときに。

物販が増えてた(初日もあったっけ?気付かなかった)、『ウエアハウス[circle]』の上演台本も売られてたー。Tシャツと上演台本をセットで買うとポスターがつきおトクです(笑)。

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帰宅後掃除洗濯をして仮眠とってたら雨音で目が醒める。ま、また雨かい…やっぱり丈青が雨男としか思えない。ソイルもJ.A.MもDCPRGも、丈青絡みのバンドのライヴに行って雨降らなかったのって一割もないよ……それとも関東甲信越に限るのか?関西とかでは晴れるのか?

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DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN@LIQUIDROOM ebisu

『ALTER WAR IN TOKYO』レコ発パーティ。久々のオールですがな、みるく以来とかじゃないんでしょか(追記:そういや『AMERIKA』リリース時にもあったわ、行かなかったから忘れてた…他にもイーストやら何本もありましたね、失礼しました)。23:59開場開演となっててなんなんだと思ったが、10月9日が丁度DCPRG再始動一周年なんですよね。もともとこの日のリキッドは普通に他の公演があったので、それが終わってからセッティング替えして開場と言うブッコミよう。どーしても9日開演にしたかったようです、プロデューサー高見さんが(笑)。菊地さん事前のトークイヴェントやらピットインやらで無茶なブッキングー、俺のせいじゃない!とか言ってましたが大丈夫、リキッドはそういうの慣れてるから!いつもライヴには菊地さんが名付けたタイトルがあるところ、今回それもなかったのでいろんな思惑を感じないでもなかった。それはそれでいいのですが。そういえば「東京JAZZでは菊地成孔DCPRGって表記になってるけどこれはわかりやすくするために今回はそうしますって言われたんで!」とかも言ってたなあ(笑)。ここらへんの菊地さんと高見氏のコンフリクト(このインタヴューがいろいろヒントになる。『HMV ONLINE:【インタビュー】DCPRG 菊地成孔』)は今後注目しておいた方がよさそう、どう転がるか…。

しかしなんというかこういう状況は燃える(笑)。菊地さんも喧嘩腰でしたからねー。このひととリスナーの関係性みたいなものが現れているような気がしないでもない。いつでもどこでもそこに音楽があるのなら最大限のもてなしをするよ、と言う。それだけのメンバーをこっちは揃えてるぜ。このことが解っているのでハードコアなクラウドが集まるのだ。菊地さん本人も客入りについて牽制していたし、正直こちらもちょっと心配でしたが、蓋を開けてみれば満杯でした。

あとあれだ、普段はフロントアクトのあとに3時間前後のライヴやられると帰路が気になるんだ。電車大丈夫かな、とか。夜中はそーいうーことを一切気にしないで没頭出来るのがいいよね…逆にライヴ終わった頃には電車も動きはじめてて丁度いい(笑)。

しばし2FでCRYSTALのDJを聴きつつ待機、準備が出来た1Fから呼び出しがかかる。大谷くんのDJです。ピッチの高い「あたりまえー」と声が鳴ればそりゃあその前につくのは「調子悪くて」だろ、VIBRASTONE!と思っていたらブッツリ切ってしばしの沈黙(ホントはここスムースに繋ぎたかったんじゃないのか・笑)しかし続けてドロップされたのは「ジェットコースター」だ!ギャー!おおお、やっぱいい…やっぱ名曲だ……。前日タモリ倶楽部に近田さん出てたなそういえば(笑)。まだまだ元気でね!

そういえばステージ上はもうDCPRGのセッティングになっているけどMAX TUNDRAはどこでやるのんと思っていたら、DJブースの隣でライヴがスタート。こーれーがーよかった。ええ、このひといつもこんな感じなの?BEN FOLDSのTシャツ着用でちょーアッパーにピアノ弾くピアニカ弾く機材いじる演奏と関係ない妙な動きをする、そして顔がBOBAさんに似ている。強烈なキャラクターでチャーミングな曲を連打連打。そういえば演奏前の挨拶が「コンニチハ、ワタシハ、スーザン・ボイルデス」だったよ。ツカミもオッケーか。「キクチサン呼んでくれてありがとー」とか言ってたわ。彼目当てで来てたであろう子たちがブースに殺到、笑顔で踊りだす。自分を含め多分初見だったDCPRGリスナーも「なに、オモロい!」てな感じか、フロア全体が蠢きだした。いやーこれはいい対バン…ちょっと天才マタバくんを思い出すブッキング…と言うか映画美学校な感じか。異種格闘技戦なんだけどこれの噛み合わせはよかったなー、アガッたわー。
(追記:と書いてたら、MAX TUNDRAはティポグラフィカの大ファンだったそーです。異種格闘技戦でもなかったか。いい共演だったよー!)

その熱(とざわめき)冷めやらぬフロアに間髪入れず登場したDCPRG。オバマ演説からカオスな滑り出し、ゴリッゴリの「ジャングル・クルーズ〜」でスタート。

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セットリスト

01. ジャングルクルーズにうってつけの日
02. CIRCLE/LINE
03. New York Girl
04. CATCH22
05. PLAYMATE AT HANOI
06. 構造I(現代呪術の構造)
encore
07. Duran

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オバマ演説をCDJでズタズタに、は一年前の野音の初っ端に落とされた新生DCPRGの爆弾かつ航路でしたが、今回そこにアミリ・バラカ a.k.a. リロイ・ジョーンズが加わりました。オバマとバラカの関係性については、検索するといろいろ出てきます。これは先日のロスト・クインテットで初めて披露したのかな?うわあすげえ殺気、おっかねー。DCPRGでの菊地さんのドレスダウンは見ていて毎回面白いのだが、今回バリッとスーツだし!Tシャツじゃないし!ハーフパンツじゃないし!なんですか晴れの舞台ですかと言うより完全に戦闘態勢です。こえー!

そこからはもう気が狂いそうなどハードコアポリグルーヴファンクの連打。途中フロアで誰か倒れたらしく、一部のひとがステージに手を挙げて必死にアピールしていたのを坪口さんが気が付いて、菊地さんに知らせてくれたのね。そのとき菊地さんが初めてフロアを振り向いて、セキュリティに指示を出したついでにクラウドに向かって軽く手を振ってやっとひと息つけたんだけど、ここ迄の緊張感と言ったらなかったよ。そしてそれも一瞬、すぐまた吐きそうな程濃厚なサウンドでフロアは満潮。窒息しそうだ。

セッティングがこれ迄と違っていたのであれ、とは思ったのです。下手ギリギリに位置していたホーンがドラム、パーカッションとコンダクターの間に入ってる。しかもいつもより譜面台の位置が高い(特に研太さん)。よって田中ちゃんは手しか見えない、しまった…今回田中ちゃんとアリガスを重点的に見る予定だったのに。と言うのも『“ALTER WAR IN TOKYO” DCPRG 2010/10/09〜2011/06/06 ライブドキュメント』での菊地さんのコメントをサさんから聴いて(『ウエアハウス』と同日で行けなかった)、腑に落ちたところがあったんですね。曰く「曲の構成をちゃんと憶えているのは俺とアリガスと田中ちゃんの3人だけ」。ソリストは基本インプロですしね。「前期のリズム隊には言いにくかったんけど、今のふたりは若いから『全部憶えろ』って言える(笑)」。生徒さんだしね……だーかーらーあんななんだー!田中ちゃんを鍛えてるもしくは田中ちゃんに任せてるように見えたのはそういうことだったのか…ものっそい納得した!

そこでハッとしたのは、一年前野音で初めて新編成見たとき「今度は田中ちゃんのソロも聴きたいわ」なんて思ったけど、それは基本無理な話かも知れんと言うことであった。千住くんはソリストとして招聘されてるんだわ。田中ちゃんは屋台骨としての面が強いんだわ。……と言うことは、彼とアリガスがいなければDCPRGは演奏出来ない訳ですよ。ちょーーーーー重責!すみませんこれからは教順さんと呼びます…と言いつつ田中ちゃんて言っちゃうけどな……。

そんな訳で田中ちゃんの献身っぷりを、襟を正して聴かせて頂きました。すっごい大変!涙ぐましい!これからも宜しくお願いします……!アリガスもね!このふたりと菊地さんが言葉なしで会話しているのを見るのはスリリングでゾクゾクします。

話が随分逸れた。上記のような話を聴いたあとだったので、今回皆さん譜面もコンダクションもガッツリ見てるところにああこれ迄とは確実に違う、と思って……そしたら展開がすげえ変わってた。レコーディング中とのことなのでいろいろ試してる最中なのかも知れない。「CIRCLE/LINE」を「HARDCORE PEACE」に繋げずアミリ・バラカの声からソフトランディングさせたところで「うわあ今日から新章だ」と確信、これは楽しく聴いている場合ではない。

そこから「New York Girl」〜「CATCH22」と怒濤の新展開。CDJのスクラッチをリズムトラックとしてより効果的に使っていたり、コンダクションの威力も増している。統率力を前面に出してきた。ユニゾンパートがガッツリ仕込んである上、展開が変われば当然ソロも変わる訳で、ガラリと違う様相のソロが沢山聴けて腹いっぱいでした。研太さんの循環呼吸使ったソロ盛り上がった!そして高井くんのソロはマジでいい!マイルスのナンバーを2曲やったこともあり、類家くんのたっぷりとしたソロも堪能出来ました。

そして出音が相当デカかった。DCPRGで耳ヤラれたのって初めてかも。7月のリキッドでデカいと言われた坪口さんの音がときどき聴き取れなかったり、丈青の入りも見てないと気付きづらかったりする程。田中ちゃんの前に位置していた高井くんが終始耳を押さえたりモニタの音上げてくれとサイン出したりしてたので、初めてのセッティングに試行錯誤してる面はありそうでした。しかしこういうのはすぐに改善されるから、今回観たのはある意味貴重。そういえば丈青の機材が増えてたな、エレピだけじゃなくなってた。レコーディングにも反映されてそう。

そんな訳で演奏はキレッキレであり乍らいっぱいっぱいと言う珍しいものが観られました。てかこれ、プレイヤーが彼らだからいっぱいっぱいなのにキレッキレでいられるんだよね…こんなギリギリな世界、寿命が縮むわ。皆身体はだいじに!健康でいてください!

はー、こういうことがあるからDCPRGのライヴは見逃せない…セットリストだけ見ると「毎回一緒じゃん」て思うかも知れないけど、全然違うんだよ……。あ、あと千住くんのソロがどんどん長くなってるよ…サさんの後ろの女の子がソロ始まったとき「キター!キター!」、あまりに続くので「長ッ!長ッ!」と連呼していたそうです(笑)。しかし今回ばかりはいつも涼しい顔の千住くんが真顔になっておったよ。

アンコール前にべらべら喋る恒例のコーナーもなし、声を発したのは「我々の名はDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN」と名乗りをあげ、続けたメンバー紹介のみ。今夜のリキッドは戦場でしたね……。まあそこで大村くんのことを木村と呼び間違えて(しかも間違えたことに全く気付いてない)ズッコケたのだが。ある意味期待を裏切らない。そして「Duran」のとき明らかに振付けな踊りを始めたので何だ…?と思ったら、あれ少女時代の「MR. TAXI」だそうです(爆笑)思わずYouTubeで確認しちゃったよ…ホントにそうだった、最高。

興奮気味のアンコールの声がやまなかったがこれ以上はないよ、甘いものもないよ(そーです久々に「MIRROR BALLS」をやらなかった。それで『Frantz Kafka's AMERIKA』リリース前後の不穏さを思い出したのだが、そもそもがDCPRGは有事に現れるバンドなので、不穏が「あたりまえー」ですね)、と言う訳で大谷くんが出てきて1曲まわしおひらきです。明け方と言う時間帯を差し引いても、嵐のような3時間弱にただただ呆然。

そーうーだーよー「我々の名はDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN」だ。菊地成孔はDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN主幹だった。いろいろ考えちゃって帰宅後第一期の頃のクイックジャパンの特集とか読み直しちゃったんだけど、主幹って言ってたよねー。戦場にいる音楽家がいつでもどこからでも必ず生還出来るよう、リスナーはひたすら祈るのみです。



2011年10月08日(土)
『風景画 ―東京・池袋』

維新派『風景画 ―東京・池袋』@西武池袋本店 4階まつりの広場

フェスティバル/トーキョー(F/T11)野外公演三本目。維新派、東京では20年振りの野外公演だそうです。池袋ビル群のド真ん中で聴くあの声と音、観るあの身体。夕暮れから夜への風景。

まつりの広場は西武別館の屋上。西武本館等もっと高いビルに囲まれているところなので、野外であり乍ら他の建物から見下ろされている感覚もあります。空中にぼこっと掘られた穴のよう。実際上演が始まると、付近のビルで仕事をしていたらしきひとたちが窓際に集まってこちらを窺っているのが見えた。かなり爆音も使っていたので、この時間は仕事にならないのではないか…(笑)。こういう面のケアもきちんと気配りしておかねばならないので、制作は大変でしょう。

維新派の野外公演と言うと、屋台村ごと“維新派村”がその土地にやってきて、あの世界を見せてまた去って行くと言う現象的なもの。20年前東京でやった野外公演は汐留の国鉄跡地だったし、そーんなには周辺に影響がないと言えばなかったんですよね。更地に大掛かりな風景を立ち上げるスタッフワークもすごかった。

F/Tが提案した維新派の「いま・ここ」は、変則的な繁華街での上演。屋上の石畳にバミリを貼ったまんま使い。セットもシンプル。寄せ木で作られたミニチュアのビル群(新宿、中野周辺が見事に再現されていた)と実際のビル街。すぐ横にあるターミナル駅をひっきりなしに発着する電車の轟音、構内アナウンスは、実際の音と、音響としてスピーカーから増幅して鳴らされるものが混在している。そして強い風。その場にふらりと訪れた維新派はやはり維新派で、高層ビルに囲まれた箱庭のような“野外”での維新派を見せてくれました。

10のシーンからなる構成。当日配布のリーフレットに、「演出の都合により変更」として、ひとつ新しいシーンが加えられたことが書かれていました(その分オープニングのシーンがなくなったらしい)。その最後のシーンタイトルは「2011〜」。記号的な言葉をうたうように発声し乍ら演者は移動していき、その発せられた声がある数字を表していることに気付く。西暦年が連想される4桁の数字。2011がやってきて、それはただの通過点のように次々と数字が読み上げられ、2011はどんどん過去になっていく。どんどん遠くなる。白いシャツ、黒い半ズボン姿のあの子たちは「いま・ここ」に気まぐれで立ち寄って去って行く。私たちは彼らが通り過ぎていくのを見送るばかり。どの時代でも、どの風景でもそれはきっと繰り返される。美しくも悲しい、「東京・池袋」の「いま・ここ」の風景画。

演者たちのフォーメーションにポリグルーヴ的なものも感じ、終演後真面目にDCPRGの話なぞしてしまった。言葉のリズム分担にしても、移動の噛み合いにしても、かなり訓練が必要なものだと思います。ええーともう時効だろう、1993年に晴海で『ノスタルジア』を観たとき、動きを間違えたかした演者さんに松本さんが「どアホッ」つってキック入れたのを見たことがありまーす(笑)ハケきったと思ったんだろうが見えてますよ、聞こえてますよ!今はどんなふうに稽古をしてるんでしょうね。

ちなみに観客席はイントレに組んだ階段状のベンチなのですが、板の隙間に荷物を落として狼狽するひと続出(笑)ご注意をー。隣の兄さんチラシ類をバサーと落として「あああ!」と叫んでおりました…で、隣のひとに「俺も落としました…」なんて声掛けられてた。これから行く方お気を付けて。

そして今また雨が降っている。『宮澤賢治/夢の島から』にしても『風景画 ―東京・池袋』にしても、上演が終わってから雨が降るのはラッキーですね。しかし『無防備映画都市』は荒天で二日遅れの初日になった。野外公演の綱渡り、大変な労力だと思います。リスクを承知でこのプログラムを組んだF/Tを支持。実際毎回刺激的なラインナップ。

ごはん食べつつDCPRGの話から何故か演出家の話になり、松尾さんとスズカツさんについてものすごく真剣な話をして帰りました。ははは、楽しかった。



2011年10月07日(金)
『RED HOT CHILI PEPPERS LIVE: I'M WITH YOU in Theater』

『RED HOT CHILI PEPPERS LIVE: I'M WITH YOU in Theater』@新宿バルト9 シアター8

ギリギリすべりこみ。客入りが…と言うのを聞いており、“レッチリ”ですらか…といろいろ考えたものですが(ここらへん後述)、最終日だったこともあり結構入ってました。ひとがそれなりに入るとフィルムコンサートのような盛り上がりもあり、あちこちで拍手が起こったりちいさな歓声がとんだりと楽しかった。実際何度も腰が浮きそうになりました。やっぱりいいライヴバンドだなあ。以下おぼえがき。

いや何がビックリって、アンソニーほんっと歌上手くなったね!それなりにRHCPのライヴ観て+聴いてきているけど(ライヴブート盤をいちばんアホ程聴いたバンドです。これを抜くバンドは自分にはもう現れないと断言する)、ライヴだとこっちも舞い上がってるもんでそんなに気にならなかったりして、後日音源聴いてあれれ…となったことが何度あったか(笑)。ところが今回は全くあぶなげがない。声出てるし、安定してるし。ピッチもしっかりしてる。もともとが美声だし、鬼に金棒ですわ。とうとうここ迄…ここ迄来たか!と感慨深くなる程ですよ!いやほんっとこのひと陰で努力してる!で、それを指摘されるの大嫌い、きっと!あーほんっと難しいひとだわ。なんだかんだで落ち着いたなーと思うし、「感性の美しい発言(@kaollyさん)」は健在だけど、ライヴとなるとあんた何かキメとんのかとギョッとするような目をしますね…あーこのひとはホント信用出来ん、今迄が今迄だけに。きっと一生安心して観ることなど出来ん。だいすきー!(バカ)

そんなアントワンが「(18歳の自分に向けて)もっと自分をだいじに、身体をだいじに、あんまり無茶をするなよ」と言っていたのにはもう…実感ありすぎまくりで涙ぐみそーになりました。どんだけ痛い目見たのかって言うね……。

そしてこのアンソニーの歌の強さがフルシアンテ在籍時に間に合わなかった(最後の方はなんとか…くらいだが)ことを嘆くのもありだが、個人的にはこのファクターがRHCPの未来を照らすものだと思いたいです。そしてそれはフルシアンテとともに歩んだ年月から得られたものだと言うことも心に留める。安定や平和や幸福、これらがいつでも長続きしないバンドだと言うのも了解しています。どんな姿も見届けるし聴き届けるんだー。

いきなりアントワンの話から始めましたが、内容的には新譜とジョシュのお披露目と言ったものです。もともとは『I'M WITH YOU』リリースに合わせて生中継された映像。ドイツの会場で、新譜のナンバーをアルバムの曲順通りに演奏する。「(生中継だけど)劇場公開用にも撮ってるから」と、機材トラブルがあったらしい「Did I Let You Know」は二回演奏。劇場公開映像でも両方のテイクが使われてますがな(笑)。サマソニから二週間ってとこで撮られたものですが、サマソニのときはどうこう言える程こっちが落ち着いていなかったので、ようやくジョシュをちゃんと観た感じです。ああ、こういう子だったんだー、こういうギターを弾くんだなー。この子がこれからRHCPのギターなんだ、と改めて思いました。

フリーが「緊張してる」「新曲ばかりだから」「殆どが初めてひとまえで演奏する曲」と何度も言い、曲間になると終始手首を動かしてリラックスしようとしていたところからも感じられましたが、このバンドは常に豪傑な顔の裏に繊細さを潜ませている。ライヴ前にインタヴュー映像もあったんだけど、そこには終始穏やかな空気が流れていました。ここ10年程で見せるようになってきたこんな姿は、年齢による落ち着きと、それによって肩肘を張らなくてよくなったことからくるものなのでしょう。フリーとジョシュなんて父子のようだったけど、静かで穏やかではにかみやさんみたいなジョシュはバンドの繊細な面をよりひきだしてくれそうな期待がもてます。

『I'M WITH YOU』はとても好きな曲がいっぱい入ってる。と言うか好きな曲ばっかりで、アルバムを通しで、とばさず何度も聴ける。長年聴いているバンドの新譜が、メンバーの入れ替わりとか、その背景のあれやこれやを気にせずとも、一聴して「好き!」と思えるものばかりなんて、とても幸せなことだなと思いました。ライヴでも映えるナンバーばっかりだった。そして最後には「Me and My Friends」「Give It Away」をやってくれたのも嬉しかったな。思わず「おお!」と声が出た。ピアノ入りの「Give It Away」なんて初めて聴いたよ!

そんなこんなで演奏を堪能。ドイツのファンの姿も微笑ましい。『PJ20』を観たときにも思ったけど、好きなバンドの話をするファンの姿ってホントかわいらしい。そして、こんなファンがいるバンドを自分は好きなんだ、とちょっと嬉しくもなるのだ。

時差の関係もあり、生中継が叶わなかった日本では9月下旬から二週間限定での公開となったこの作品。新譜リリースからは時期がずれ、チケット代が高い(何故2,500円…)+バンドヒストリー的な内容ではないのでバンドにちょっとだけ興味があるひとからすると敷居が高い。洋楽不況の昨今、“レッチリ”だからこの規模で公開出来たのだとは思いますが、だからこそもっと気軽に観られる環境があればよかったのにとは思いました。うーん難しい。『PJ20』も苦戦は必至(つうか日本での知名度からしてなんでこんな規模で公開してくれるのんと逆に狼狽してます)。少しでも興味を持ってくれるひとが増えればいいな…そのきっかけには何が必要なんだろう。



2011年10月03日(月)
『ウエアハウス』リスト

えー、これ迄発表された『ウエアハウス』のリストです。ほぼ自分用メモですが、コピペでもなんでもしてってくださいなーって何に使うの…て言うか誰かスズカツさんの仕事まとめたサイト作ってくださいよ……こういう貴重な資料こそクラウドに投げとくといいじゃない!(他力本願)

ちなみにZAZOUS THEATERで上演されたシリーズは『ウ“ェ”アハウス』と『ウ“エ”アハウス』が混在(宣美では『ウ“ェ”アハウス』に統一)、美術展、CDは『ウエアハウス』表記でした。共通する出演者、スタッフは以下。例外は該当箇所に別記。

構成・演出:鈴木勝秀 演出助手:永山理恵
音楽、演奏(出演):横川理彦(『NAKED』以降、名前の表記が「タダヒコ」になっています)
照明:倉本泰史
音響:井上正弘
衣裳:M&E
舞台美術:石塚茂雄
舞台監督:安田美知子
宣伝美術:鳥井和昌 宣伝写真:宮崎佳紀

■1993年
・ZAZOUS THEATER PRESENTATION 16『ウェアハウス』
 6月17日〜27日(13ステージ)@SEED HALL
 出演:佐藤誓(ウチヤマコウジ)、松重豊(ハスミカズヒコ)、横川理彦(スギモトマサオ)
・ZAZOUS THEATER PRESENTATION 16+1『ウェアハウス Vol.2〜地下(Chika)』
 8月20日〜22日(5ステージ)@ジァン・ジァン
 出演:久松信美(チノハルオ)、大石継太(カイダカズヒロ)

※改めて書き起こすとスズカツさんてアナグラム好きだよねー。こういうところを探す楽しみもあります(おたく)。

・『REST』
 10月@日本テレビ
 構成:鈴木勝秀 出演:松重豊、横川理彦
 『演劇ネットワーク 芝居に行こうよ』内の映像作品(約5分)。『ウエアハウス』から派生したと思われる内容でした。

※見直してたら『クラウド』でエンドウが独白するシーンに流れてた曲(音素材?)と似た音が冒頭にかかってたー。サイン波?とピアノで構成されたもの。

■1994年
・ZAZOUS THEATER PRESENTATION 16+2『ウェアハウス Vol.3〜休息(Rest)』
 12月9日〜11日(5ステージ)@ジァン・ジァン
 ゲスト(朗読):巻上公一、松重豊、篠井英介、伊藤ヨタロウ、戸川純

■1996年
・ZAZOUS THEATER PRESENTATION 16+3『ウェアハウス Vol.4〜Noise』
 2月9日〜12日(7ステージ)@ジァン・ジァン
 ゲスト:吉田朝×鈴木勝秀、松重豊×田中哲司、篠井英介×田口トモロヲ
・VISUAL EVENT『ウエアハウス』
 2月9日〜12日@クラフトワークス
 石塚氏製作のオブジェ、横川氏制作のアンビエントミュージック等から成るインスタレーション。『すずかつ人形』の前に設置された旧式ワープロには1978年の夢日記データが収録されており、プリントアウトして読むことが出来ました。フルクサス的。
・ZAZOUS THEATER EXPERIMENTAL STAGE『ウエアハウス VOL.EX〜NAKED』
 10月4日〜5日(3ステージ)@ジァン・ジァン
 出演:井上慎一郎(マサル)、藤本浩二(スグル) 演奏:横川タダヒコ、ライオン・メリー
 照明:鈴木勝秀
 宣美は文字情報が列挙された簡易チラシのみだったと思います。スズカツさんその後何度も「あのときの客は200人くらいで…」と仰ってましたがそれは何なの、すねてんの?(笑)個人的には未だに愛着のある大好きな作品。
 ちなみにマサルくんは勝くん、スグルくんは秀くんと当て字出来ます(微笑)。

■1997年
・ZAZOUS THEATER PRESENTATION 16+5『ウェアハウス Vol.5〜Error』
 ナンバリング表記がバラバラです。やってる方も訳判らなくなってたか?もしくはテーマが“エラー“だったので故意か。当日配布のリーフレットではZAZOUS THEATER PRESENTATION 17+5となっていました。
 8月16日〜18日(5ステージ)@ジァン・ジァン
 ゲスト(朗読):大石継太×田中哲司、田中哲司×佐藤誓×修健、戸川純、篠井英介×田中哲司×修健、篠井英介(CDヴァージョン)

■1998年
・ZAZOUS THEATER PRESENTATION『ウエアハウス』
 CD/7月8日リリース
 NARRATION:篠井英介 TEXT:鈴木勝秀 MUSIC:横川タダヒコ
 except drums on 14 by Peter HOLLINGER, computer engineered by Andreas LOOF
 ZOO Label(I3 Promotion)Distributed by Ratspack RECORDS
・ZAZOUS THEATER 『ウェアハウス Vol.6〜period』
 ナンバリング表記がなくなっていました。
 11月21日〜22日(3ステージ)@ジァン・ジァン
 ゲスト(朗読):戸川純、篠井英介

なんか、8つでは済まなかった…って、いちいち指摘してるこんな自分がいやになる(マリリンマンソン)あーどっかに鈴木勝秀研究家とかいればいいじゃん!てかいるでしょう!(泣)

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(20130319追記:今後『ウエアハウス』が上演されたらこちらにリストを追加していくことにしましたー)

■2011年
・演劇集団円『ウエアハウス[circle]』
 9月30日〜10月12日(15ステージ)@シアタートラム
 出演:橋爪功(オリベトオル)、金田明夫(エトウショウジ)、小久保丈二(タナカマコト)、伊藤昌一(アライタダシ)、坂田真裕子(シロヤマカオル)、高間智子(ウメザワトモコ)、近松孝丞(ズシキョウイチ)、佐藤銀平(ザイゼンサトル)

■2013年
・『鈴木勝秀(suzukatz.)-130313/ウエアハウス』
 3月13日(1ステージ)@SARAVAH Tokyo
 出演:田口トモロヲ(サトウトオル)、ヨシダ朝(トミヤマショウジ)、前嶋康明(ピアニスト)

(20171023追記)
■2017年
・『ウエアハウス〜Small Room〜』
 10月8日〜11月7日(35ステージ)@アトリエファンファーレ高円寺
 出演:佐野瑞樹(エノモト)、味方良介(シタラトオル)、猪塚健太(テヅカ)

(20200203追記)
■2020年
・『ウエアハウス-double-』
 1月25日〜2月2日(7ステージ)@新国立劇場 小劇場
 出演:平野良(ヒガシヤマカツユキ)、小林且弥(ルイケタロウ)