何でも帳。


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2002年03月30日(土) 春雨夜 -spring rain's night-

<春雨夜 -spring rain's night->



ここ数日の雨で眠れなくなっていた。
元々寝つきはよくない方なのだけどそれに拍車が、かかってしまって。
夜の雨、は嫌い。
思い出したくない過去(こと)を思い出してしまうから。

23時過ぎに部屋に来てくれたフリックはそんな僕に気付いて、
 『…眠れないのか?』
と心配そうな表情で尋ねてくれたけれど。
でも僕が寝れない理由、はフリックも知っている事で。
これ以上、心配も迷惑もかけたくなくて。
だから。

だから。無理して微笑った。笑顔を造った。

 「……大丈夫。お茶、淹れるね?」

そう言って立ち上がろうとした瞬間。
不意に抱き締められて。耳元で聞こえる、声。
 「お前がそういう風に言う『大丈夫』は…俺は信じないから」
予想していなかったから、どうしても体が竦んでしまって。暖かい体温、優しく抱きしめてくれる腕、心配そうな…それでいて少しだけ苦笑いを含んでいる声。
 「とりあえず、寝れない、って言うんだったら…側についててやるから。
  お前がちゃんと寝れるまで、ずっと側にいるから……それじゃ駄目か?」
何て答えたらいいのか判らずに、抱き締められた胸に顔を埋めていると優しく髪を梳かれて。
近くに感じるフリックの匂い。
ほんの少しだけ、眠りの淵に辿り着いたみたいな感覚。

抱き上げられてベッドに運ばれて、着替えたフリックが同じベッドに入ってきて。
隅っこに寄っていた僕を抱き寄せる。
 「……ほら。もっとこっちにおいで?」
…灯り、落としていてよかった。と心底思った。
だって灯り、ついていたら紅くなってしまっている顔、はっきりと判ってしまっていただろうから。
薄明かりで、よかった。

何度も何度も優しく髪を梳かれて、キスを落とされて。
 「ちゃんと側にいるから…お前の、側にいるから。
  嫌なコトは忘れて、ちゃんと寝ないとな?」
そう言った後で、くすくすと笑いながら耳元で囁かれる。
 「……それとも、夢も見られない様に、してやろうか?」
 「……………」
何も言い返せない。言える訳が無い。
顔が熱くて、紅くなっているの自覚してしまっているからフリックの顔、見られなくて。
 「…だからさ。嫌な記憶、だってこういう風に塗り替えていったらいい。
  ゆっくりでいいんだから…な?」
優しく問い掛けられて、俯いていた僕の顔をゆっくりと上げさせて。
逢った瞳さえも優しくて。
頬に触れている手に自分の手を重ねる。

フリックの手が好き。ううん、手も好き。
彩る全てが大切で、とても好き。その中でも手、は特別。
恥ずかしいから口にしたりなんか出来ないけれど。
髪に、額に、頬に降ってくる優しいキスで意識はとろとろと微睡んできて。

 「おやすみ……よい、夢を」
そして唇に触れるだけの甘いキス。


夢か現か判らない僕が告げた言葉は。

 『おやすみなさい……ありがとう……』

窓の外からはまだ雨音が聴こえているけれど、過去の記憶を思い出してしまう事はこの先、またあるのだろうけれど。
でも、今夜の記憶を忘れずにいたのなら。
例え一人、でも夜を乗り越えられると思うから。

だから、心から………ありがとう。





いきなりの単発話でした。いいカンジに壊れている模様です私(苦笑)
今が何時かは怖くて書けません〜(汗)
今日も仕事だよ私……しかも給料日明けの土曜日でしょう?絶対、忙しいのにね。

それでも尚「話が書きたいっ!でも長いのは書けないっ!!」
という訳で、ちまちまっ。としたワンシーン的な話を書いてみました。
話倉庫にはアップしません。ここまで覗いて下さった方に、こっそりとプレゼント、な話だったり。

そしてこの話…フリ坊なのですが。フリックに敢えて坊の名前を言わせませんでした。
随分と謎が多いかも、な話ですが…その辺りは読んで下さった方の中で補填して下さると嬉しいですv

ではいい加減、寝て……次こそはお年始話の続きを書きます♪

2002年03月25日(月) お年賀話・タイトル未定・前編




   一人で出来る事なんだけど。
   でも、『一人』より『二人』でいたいと思うのは我儘?


     ………好きにしたらいいんじゃないの?
     それより君、作法、ちゃんと覚えているんだろうね?



 「……あのね。今年最後のお願い、してもいい?」

ティアラに上目使いで、小声でそうお願いされたのは年越しの騒ぎの中。
回りは無礼講とばかりの騒ぎ。新年を告げる鐘を聞く事が出来るのは一体、この中で何人いるのやら。
見上げてくるティアラの瞳が少しだけ真剣、だったから一体、どんな願い事を言われるのかと思いきや。
背伸びして俺の耳元で囁く願いは、いともたやすく叶えられる事で。
思わず微笑って答を返す。

 「……お安い御用。何もそんな深刻な表情して言わなくても良かったのに」
ぽんぽん、と頭を撫ぜてやりながらそう答えると、ティアラは嬉しい表情をしつつも小首を傾げて、ほんの少しだけ戸惑い、が見える瞳で。
 「………でも。迷惑、じゃない?外は寒いと思うし…フリック、結構飲んでるみたいだし…」
 「ばぁか。そんな潰れちまう程は飲んでいないから何ともないぞ。
  それに外が寒いんだったら後から茶でも淹れてもらって、暖めてもらえばいいんだし?」
俺の答が嬉しいかったからか、それとも言葉の裏に気付いてかは判らないけれど、とにかく顔を赤く染めたティアラの耳元に唇を寄せて。
 「じゃあ、あと一時間くらいしたら抜け出すぞ?
  それまであまり飲まされない様にしておけよ。お前、そんなに強くないんだから」
 「……ありがと」



 「やっぱり夜遅くなると寒いな……大丈夫か?ティアラ」
外は雪こそは降っていないが、寒さが厳しくて吐く息が微かに白くて。
凛、とした冷たさ。空を見上げると真夜中に近い濃紺と、ちかちかとまばゆく光る星の群れ。
横にいるティアラは普段の半袖姿ではないのだが、それでもやっぱり幾分かは寒そうに見えて。
初めて目にする白と黒の衣装。
体のラインにぴったりしているものではなく、長袖の上に布を幾重にも巻きつけているような。
ティアラはこれから何をしようとしている?今年最後のお願い事、は簡単に叶えてやれるけど。
 「ん。寒くは無いから大丈夫。フリックこそ寒くない?」
寒さからか頬を少しだけ赤くしたティアラが逆に尋ね返してくる。
 「俺は厚着してきているし、多少は酒も飲んだから寒くはないが…」
 「……そんなに時間、かからないと思うから……側に、いてね?」
不安そうな上目遣いで見上げられて、抱き締めたくなる衝動を堪える。
いつだって側にいてやりたい、と思っているのに。
いつだって側にいて欲しい、と思っているのに。
どうしてこんな事さえ、ちゃんと伝わっていないのだろう?口にしなくても伝わる思い、も確かにあるのだろうけれど…言葉にしても伝わらない事もあるのだろうが。
そんな事をぼんやりと思っていると、不意に柔らかな風が。
肌寒い外で吹いたとは思えない程の、柔らかい暖かい風。
  「……春の、風みたい………そろそろ、僕も始めないとね……」





…あえて日記にも更新記録にも書かずに、こっそりアップしてみたり(苦笑)
書きかけ、なのですが…自分に発破をかける意味もアップしました。
続き、は出来る限り早く書こうと思っています。
タイトルは書き上げてから考えます〜(汗)←タイトル決めるのすごく苦手なのです…
久し振りにルックちゃんが書けて嬉しかったです(笑)


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