何でも帳。


同じ星を一緒に観る事が出来たのなら



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2001年10月27日(土) September-rain・5





どちらかが言葉を発するのを苛々しながら待っていた。
けれども、いくら待っても、心の中で10数えても部屋に『音』は発生する事無く。
ティアラが何も言わないのはまだ、判る。困惑とか、どうしたらいいのか判らないのとかで頭の中がパニック状態になってしまっているのだろうから。
問題は…部屋に入ってきた青いの、だ。
どうしてここで怒るなり、慌てるなり何らかのアクションを起こさないのやら。呆れるを通り越して、蔑みそうにさえなってしまう。青いにも程がある。

更に10、数えても何も変わらなかったので甚だ不本意ながら、青いのに向けて言葉を発してやる。大きく溜息ついたり、眉を顰めたり、口調が嫌そうになってしまうのはもう仕方が無い。
   「……例え話、をしようか?
   声を発する事が出来ない者がいるとする。
   もし君が、その者にも言葉、を望むというのであればあまりにも愚かだ。
   …知恵があるのならば、考えればいい。
   その意味と理由を」
僕がそう告げると青いのは、呆けていた瞳に光が戻って言葉の意味を考え出す。
それから、まだ僕の下にいるティアラに。
優しい声になる様、努めて、ちゃんと意味が届くようにと思いを込めて伝える。
  「…言いたい、と思う気持ちがあるのなら今の内に言うべきだよ?
   いつか、判ってくれる。判ってくれたらいいな…そう思っているかも知れないけれど。
   でも正しくは判ってくれないよ?ティアラがちゃんと口に出さないとね」
ティアラはまだ微かに潤んだ紅茶色した大きな瞳で見上げてくる。
恐らくは僕が青いのに告げた言葉とティアラに言った言葉が相対しているからなのだろう。
だから笑って、薄墨色の髪の毛を梳いてやりながらそっと耳元に唇を寄せて。
  「……ティアラがこれだけ悩んだんだから、青いのだって少しは悩むべきだろ?
   ………君の上には、幸運の風が吹いているのだから案じる事はない。
   繋いだ手は、離したらそこで終りなんだからね?」
祈りを込めて、静かに頭に口付けを落として、ティアラの顔を覗き込むと…久し振りに見た、造り物ではない笑顔。僕にとって何より嬉しいモノ。
そして瞳を合わせてぎゅっ、と僕の手を握って微かな吐息みたいに。
  「……ありがと。ルック」
  「…お礼、なんか要らないよ。今度こそちゃんとしたお茶、淹れてよね?」



ティアラの上から降りて、ベッドサイドに腰掛けながらそんなやりとりをしていると、急に影が陰って。
  「……じゃあ、ティアラ、連れてくから。世話になったな」
とか何とか言いながら、青いのは不意打ちを食らって呆然としているティアラの身体を引き寄せて、肩に担ぎ上げる。
……思考回路は壊れていないんだろうね?
それでも僕が出来るのはここまで、だ。後は当事者同士でカタをつけるしか無い事なのだから。
  「ちょっ、ちょっと!!フリックっ!!!」
いきなりの事で流石に慌てるティアラ。
…まぁ、荒療治は必要だとは思うけどね。でもあと少しだけ、おせっかい。
  「……僕が言った事、ちゃんと聞いていたんだろうね?青二才。」
ティアラを肩に担ぎ上げたまま、扉に向かってすたすた歩いている足を止めて、振り向かずに返ってくるいらえ。
  「………強情は幸運を逃してしまう、ってコトだろ?」
答えたらすぐ歩き出す辺り、何か気に入らないんだけど?
  「……34点、ってトコかな。赤点は何とか免れたって感じだけど。
   そうそう。ティアラ、ほぼ5日、寝てないから…理由は判るよね?」
そう言ってやると、歩みが一瞬止まって、内心ほくそ笑む。
  「ルック!!余計な事、言わないでよーっ!
   フリック!降ろしてってばーっっ!!!」
……君は、黙っていなさい。今は体力気力を温存させておくべきだ。
青いのは、自分の肩の上でじたばた藻掻いているティアラを担ぎなおす。
  「責任、はちゃんと取らせてもらうよ」
とだけ言うと、後ろ手で手を振って扉を開けて出て行った。
どう責任取るかは知らないけどね…でも、甲斐性ナシの事だから、まぁ。
ティアラにとって、不幸な事にはならないだろう。
彼等が入る門が、広い門では無く、狭い門であります様に。広い門に幸があるとは限らないのだから。
細く長い道でも、お互いの気持ちが通じていれば、それは幸せへと辿り着く為の過程だろうから。
そんな事を考えていると、急激に襲ってくる疲労。
随分と神経とか頭とか風の力を使った所為だろう。とりあえずは、扉の鍵をかけておく。
万が一、ティアラが青いのから逃げおおせた場合でも、逃げ場所が無いように。
いつでも逃げ場所、は作っていたけれど…今回だけは、敢えて。
チャンスは天使の前髪より掴み難い物なんだからね?



ベッドに倒れこむように、横になって。分散させていた風を一つにまとめて瞳を閉じる。
今の自分に出来る事は全部やった筈。だから後悔はしていないけど、心配だとは思う。
以前はこんなにおせっかい焼きじゃなかったのにな…と思うと、何だかくすぐったいのだけど。
でも、自分がする事で、自分にとって大切な人が幸せに笑ってくれるのなら。
そんな事をつらつらと考えている間にも、意識はとろとろと溶けてきて。
眠りに落ちる寸前に窓の外から見えた景色はうっすらと明けかけてきている空。





……おやすみなさい。よい夢を。
次に瞳を開けた時は、憂いが消えています様に。






何か、ルックちゃんが偉そうというか思想家というかでアレなのですが。
魔法を学んでいる分、真理とかを知識として知っているかな…と思ったので。
フリックさんは甲斐性があるのかないのか、今回の話ではまだ判りませんがとりあえず『回収』は出来たのでいいかな、って(笑)
次回以降に期待っ!<兄さん甲斐性。
そして結局、ルックちゃんはフリックさんの事を名前で呼ばずに終わってしまいました〜(^-^;

ちなみにルックちゃんの出番はこれで終了、なので(寝てしまいましたしね…)次の話からはティアラの一人称になると思います。多分。
あと1、2話で終わると思いますので、よろしければお付き合いの程を♪


2001年10月21日(日) September-rain・4




即答で来ると思っていた返答は来なくて、ただじっと様子を見据える。
…見当違い、だったか?
何にせよ、沈積してしまっている感情を何もかも吐露させるのが一番だと思って、口にしたんだけれど。何も反応が無い、というのはちょっと予想外で。
ゆるやかな呼吸を10回はしただろうか?
俯いていたティアラが顔を上げて、困った様な表情で答を返してくる。
  「……ううん。殺したりなんか、しなくていい。ルックの気持ちはすごく嬉しいけど。
   でも、僕はルックの手が血に染まるの、見たくないし」
  「………それは、僕が青いのに返り討ちされる、って意味?」
それは確かかも知れないけれど、こういう状況でそう言われるのは心外で。思わず声音が幾分冷たくなってしまう。
  「!そうじゃなくてっ!!僕はルックもフリックも大切なの!!
   ルックが言ってくれた事は、僕を気遣っての事だと思うから、すごく嬉しいんだってば!」
…何もそこまで顔を赤くして、懸命に説明する必要はないと思うんだけど。
怒っていても仕方が無いので、ぽんぽん、とティアラの頭、撫ぜてやって、もうすっかり冷めてしまった紅茶を一口飲む。
…さて、こういう状況になるとはちょっと予想外だったかも。
頭の中で、問題点を復唱してみる。


ティアラは青いのが好きで、青いのもティアラを好きで。
青いのはティアラに『愛してる』と口にしていて、でも、ティアラはその言葉を言いたいのに言えなくて。
更には、青いのが『抱きたい』(率直に言ってしまえばそうだよね?)とティアラに言って…ティアラはそれに返事が出来ないでいる。
その原因は『生と死の紋章』をティアラが持っている所為で。
魂喰いの紋章に青いのが喰われてしまうのが嫌で。
だからといって、青いのが魂喰いの紋章以外の所為で死ぬのも厭っていて。


……なんだ。だったら話は簡単だ。




風の音に聴覚を集中させる。
ずっと降り続いていた雨はようやく小降りになっていて、石版の前の風は通りすがりの人物を伝えてくる。
普段は大抵、石版の前にいるから風もそこに留めているんだけど、離れる時は必ずひとつの風を置いておく事にしている。僕がいない時に何かあったら、責任問題だしね。
複数ある入口、どこから入っても石版の前を通らないと上の階には行けないから。
頭の中で、ざっと予測を立てて、まぁこんなモノかな…と。
…願わくば、嫌われない事を祈りつつ。



  「……ティアラ=マクドール、ふたつ、聞きたい事があるんだけど答えてくれるかい?」
あえてフルネームで呼ぶと、ティアラは真剣な表情で僕の瞳を見据えてくる。
  「………何?」
真剣な分、心なし硬い声音。
それでもちゃんと瞳を合わせてくれるのが、嬉しく思った。
  「まずひとつは……君、一体いつから寝ていない?」

一瞬、瞳が逃げた。
  「ちゃんと寝ている、とか適当な誤魔化しはしないでよね」
このぼんやりが、ここまで思いつめるのにはそれなりの時間が必要だった筈だ。日中はあまり会う機会も無かったから気付かずにいたけれど。
逃げた瞳を捕まえて、尋ねるとティアラは視線を落として、びくびくと答える。
…だから、怒っている訳じゃないんだってば。
  「……フリックが遠征に行った日から、だから……でも、微睡んではいたから……」
という事は、5日はロクに寝ていないという事だ。莫迦にも程がある。
  「そう……じゃあ、とりあえず寝台に入りなよ?目を閉じているだけでも違うから」
出来うる限りの優しい表情と声で、そう誘導すると、ティアラは何の疑問も持たずにぼてぼてと寝台に入って、枕元に移動した僕を不思議そうに見る。
  「……何か、寝台の側にルックがいるのって不思議かも。
   あれ?聞きたいこと、ってもうひとつ、あるんだよね?」
あまりに無防備すぎて、いっそこのまま眠りの風で寝かしつけてしまおうかとも思った。今更ながら言いたくない様な気がするんだけど…まぁ、仕方が無い。
小さく息を整えて、何でもない様な素振りで最後の質問を。
  「あぁ…それね……
   ……ティアラ、君、フリックに抱かれたい、って思ってる?」
  「!!ル、ルック!?」


――― いや、だからそこまで顔を赤くしなくてもいいんだけど。大体、僕だってこんな出歯亀みたいなコト、言いたくないんだし。



顔を深紅に染めて、口を金魚みたいにぱくぱくさせていたティアラが、聞き取れるかどうかの微かな声で返事を紡ぎ出す。
言いかけては止めて、また言いかけての繰り返しに僕は耳を凝らしていて。
  「………よく判らないけど……でも、夜もずっと一緒にいれたらいいな、って……」
ぽんぽん。寝ている頭を撫ぜてやって。動揺している隙を狙って、追加の問い。
  「そう……ティアラ、僕の事は好きかい?」
動揺しているから、会話の流れが変なのに気付かないでいるらしいティアラは、にっこりと微笑んで答えてくる。
  「今更、何、言ってるの?ルック〜?好きに決まってるでしょぉう?」
くすくす微笑って、そう言われるのは内心、嬉しいんだけどね。



瞳を閉じて、意識を集中させてもう一度だけ、願う。
願わくば、これから自分がする事によってティアラに嫌われない事を。

息を静かに吐いて、そっとティアラの頬に触れる。
  「……だったら、僕で予行演習、してみたらいい。
   君を抱いた後でも、僕が生きていたら…青いのからの誘いにも応えられるだろ?」



……念の為に言っておくけど、僕はその位で魂喰いの紋章に喰われるだなんて思っちゃいない。
僕が真の紋章持ち、という事を除いても、だ。
だから、ティアラは青いのの誘いに応じても、『愛してる』と応えても、何ともないと思っている。
でも、こればかりは本人が克服して納得しないといけない事柄だから。
思考回路が真っ白になったらしいティアラの頤を掬い上げて、そっと触れるだけのキスを落とす。
そっと触れては離れるキスを繰り返していると、何回目かのそれで、やっとティアラは我に返ってこれ以上はない位の赤い顔をして、じたばたと藻掻き始める。
  「ちょっ!ちょっとっ!!ルックっっ!!!」
僕は眉を顰めて見せて、ティアラの上に覆い被さる。大体、いくら藻掻いたって、僕が体力無いからってロクに寝ていないティアラが振り落とせる筈は無い。
  「……何?ティアラ?」
甘い声、優しい口調で耳に囁くと、肩を振るわせる。ついでだから、上着も少しはだけさせて。
白い肌に、細い首にそっと唇を落とすと、ティアラは声を殺して瞳に涙を浮かばせていた。
  「……ルック……冗談、にしてはタチ悪いと思うんだけど……」
  「冗談じゃない、って言ったら?」
風が流れてきて、此処からが正念場だと諦める。
  「………ティアラ、好き、だよ?」
今度は先刻よりも濃いキスを落とす。ティアラは、呼吸が上手く出来ずに僕の手に腕を伸ばす。
見方によっては、縋っているようにも見える体制。



微かなノック音と同時に入ってくる人影。
  「…ティアラ?こんな時間まで起きていたのか?」




――――― そして、沈黙が部屋を支配する。






ルク坊まがいはここで終了ですーっ!!(涙)コレ以上は流石に書きませんっ!!
あとは青兄さんの甲斐性に期待ーーーーーっっ!!!(脱兎)

……実はこの後、プロットありません(^-^;

2001年10月14日(日) September-rain・3





僕は何を口にしたら、いいのだろうか?
ティアラが持っている『生と死の紋章』については、少なからず知っている。
そして、前の戦いでティアラがどれだけ辛い思いをしたのかも。

手を切り落とす事で、紋章の呪いから離れられる筈も無く。
大切な友達、から受け継いだ以上、自分の身体や命を粗末に出来る訳も無く。
…それらの事を他の連中より少しだけ知っている分、言葉を探しあぐねる。


  「………どうして、君一人だけが辛い思い、をしないといけないんだろうね…」

思わず呟いてしまう。
だって。こんなに苦しそうなのは見ている方だって、辛い。
  「僕一人だけ、じゃないと思うよ?
   フリックも。それにルックも……でしょ?」
  「……何のコト、だい?」
話が飛躍しすぎて、理解出来ない。
元々、ティアラは自分の思考内で話を進めるコトが多いから、時々こんな風に理解しかねるセリフを言う事があって。
ティアラは苦笑しながらも、僕が淹れた紅茶のカップを両手に包み込んで答える。
  「え?だって、僕がルックに面倒くさい相談?してるから。
   だから、ルックだって辛いでしょ?……ごめんね」
最後の言葉は、心底申し訳なく思っているのが伝わる分、僕にも苦笑が感染ってしまう。
だから指でティアラの額を弾いて。
  「今更、じゃない?そんなの。
   いいんだよ、好きでやってるんだから。
   ……で、それより『青いのも辛い思いしてる』ってどういう事?」
二人きりの時に、だけティアラにだけする仕草みたいな癖みたいな、をするとティアラは首をちょっとだけ傾げて戸惑いつつも。
  「………だって……誘いを断り続けてるから…だから……」
  「………………あの、莫迦」
どうしてくれようか。
そんなのティアラがオウム返しででも返答してからでいいじゃないか。
何を生き急いでいるのやら。青いのにも程がある。
いくらティアラを狙っている連中が多いからって、時期尚早だ。
怒りに任せて眉を思い切り顰めて呟いてしまうと、ティアラは慌ててフォローをしだす…いいよ、あんなの庇わなくて。
  「で、でもっ!!もしかしたら、アレって誘いじゃないのかも知れないしっ!!
   僕が勘違いしているだけかも知れないしっ!」
  「…誘われた、って、何、言われたのさ?」
不機嫌な声になってしまっているのが自覚出来た。
自覚がある以上は、ティアラにも伝わってしまっているんだろうな…と頭の片隅で思ったけれど。でも、どうにも繕えなくて。
ティアラは言葉の内容、よりも僕の声にびくびくしつつも、小声で返答してくる。
…別に、君に怒っている訳じゃないんだけど?
  「………『お前と一緒に朝を迎えたいんだ』……って…」
俯いているから表情を伺う事は出来ないけれど、でも、間違いなく赤面しているのだと思う。きっと、青いのがティアラに告げた時の反応と同じ様に。
  「…青いのにしては、まぁまぁじゃないの?誘い文句としては」
それが素直な感想。
どこぞの御曹司の『俺とめくるめく夜を過ごしてみない?』とかいうやけに軽い言葉よりはずっといい誘い文句だ。
  「で?ティアラは断ったんだ?」
  「……ん」
こくり、と頷く。気長に続きを待っていると、ティアラは不意に顔を上げて。

どこか辛そうな表情で言葉を紡ぎ出す。
  「好きなの。凄く。自分で気持ちを制御出来ない位。
   でもね…コレ、があるから」
そこで一旦言葉を区切って、擦ったのは右手。
二重の意味で、縛られてしまっているのか。
  「……言う事で、応じる事で喰われてしまう確率、高くなっちゃうなら…
   なら、いいや、って思うの……
   だって僕の所為で死んでもらいたくは絶対、ない。
   それだけは何が何でも、嫌だから」
きっぱりとした口調に瞳。それは死守してでもの望みなのだろうと思った。
自分の願いさえ捨ててでも叶えたい事なんて、そうそうある物じゃない。
そう考えている間にも、ティアラの告白、は続いて。
まるで外で降り続いている雨みたいに紡がれて。


  「…でもね……好きになってもらいたい、って思うの。
    ……我儘で、贅沢だよね…」
  「……感情はいつでも我儘なものだよ?」
僕がそう告げると、ティアラは瞳を細める。笑い顔の様な、泣き顔の様な。
  「側に居ないで、離れよう、とも何度も思った。
   でも、起きて、顔見たら、あと一日だけ、って思うの…」
何も言葉が出なくて、ただ頭を撫ぜてやる事しか出来ない自分を悔しく思った。



幸せになってもいい筈なのにね。
あんなに苦しい思いをしてまで、最後まで頑張って戦ったのだから。
やっと、探していた大切な人、にこの城でまた会えたのだから。



ティアラは自嘲気味に微笑って見せる。
こんな表情をする時は、大抵、自分の中でも判断がついていない時。
  「……どうしたらいいんだろ……いっそ、フリックが嫌ってくれたら、いいのに…
   そしたら、潔く、戦い終わったら別れられるのに」
それで、君が幸せになれるのなら。

それならば。







  「……………殺そうか?」




――― 僕は、喜んで憎まれ役になろう。






折角2話目で少しはフリ坊っぽくなったのに、今回の3話目で再びルク坊に戻った様な気がします(泣笑)
いやん。フリ坊なんですよ。この話っ!!
…やっぱり書く前にQでしていたルク坊がいけなかったのかしら…(遠い目)

それはさておき、今回の話でやっと『話を考えていた当初から「コレを書きたい!!」と決めていたセリフ』(←10/10日記参照)を言ってもらえました♪
ルックちゃんのラストセリフがそうでしたv
ワンフレーズのみのイメージソングは「空と君との間には」だったり!(笑)<♪君が笑ってくれるなら、僕は悪にでもなる〜
でも実はこのセリフ、師匠宅の坊ちゃんセリフなんです。
上目遣いでおねだりして、転載許可をもらった上で使わせて頂きましたvすごくツボだったので、是非とも話に使わせて頂きたかったのです♪(W坊ちゃん(笑)なり茶でのセリフだったので、ルックちゃんに言ってもらっていますが(^-^;)

あと2、3話で何とか終わると思います。
前回の後書きもどき等で『フリックさんが最後まで出てくるか判らない…』と書いていましたが……出しますっ!(笑)
ありがたくも素敵な参考資料を頂いたのでvv
リアルタイムで拝見出来た時は、言葉でいい表せない位の感動でしたv
目指すはフリックさん甲斐性アップ140%(当社比)〜♪


2001年10月01日(月) September-rain・2




仕方が無いから、僕がお茶を淹れなおした。
ティアラは自分で淹れなおす、と言って聞かなかったけれど無視した。僕だって紅茶なら何とか人並程度には淹れられるのだし。
何より、あんな出過ぎたお茶は、体にも…心にもよくない。
幸い、ティアラが持っている紅茶の葉が、最高級品なのに救われて一応は美味しいと思える範疇に入る紅茶を淹れられて。
少しでも落ち着くように、とミルクも勝手に入れて差し出す。
  「………ルックが淹れたお茶が飲めるなんて、何か不思議〜」
落ち込んでいるよりはいいけど…でも、あからさまな表情して物珍しそうに言われるのは心外で。
一応、僕だってレックナート様の元で身の回りのお世話をしているんだから、最低限のコトは出来るんだけど?
  「…前もって言っておくけど味は保証しないよ?
   普段のティアラが淹れる方が美味しいに決まってるし」
あえて『普段』を強調して、そう言うとティアラは沈黙しながらもカップを両手で持って、一口飲む。さもや意外、という表情。
  「ちゃんと美味しいよ?」
  「……それは何よりだよ」
あえて、表情には突っ込まないでおく。
大体、僕がレックナート様以外の誰かの為にお茶を淹れるだなんて、自分でも想像だにしていなかったんだから。
こくこく、と幸せそうな顔をして、僕が淹れたお茶を飲むティアラを頬杖しながら見据えつつ、頃合いを狙って声を掛ける。
  「……で?一体、何があった訳?
   君の唯一無二の特技が、使えなくなってしまう位なんだから…何が、あった?」
言葉を飾るのも、もって回した言い方をするのも性に合わないから、そのままずばりで問うと、目の前のティアラは眉を顰めつつも苦笑する。
  「…ん〜。言わないと、駄目?」
上目使いで尋ねてくる辺り、始末が悪い。
本人は自覚が無いのだろうか?それとも故意にしているのだろうか?
その判断は彼と付き合いが多少は長い僕にも計る事が出来なくて。恐らくは、青いのでさえも計る事が出来ないだろう。
どちらにしても、はぐらかしてやる気など微塵も無い。
  「言いたくないなら、無理には聞かないけどね?
   ……ティアラ=マクドール、君が本当にそれでいいのなら」
多分、これは僕が持っている唯一の切札。
青いのが持っている、ティアラにしか効かない唯一無二の札の様に。
僕がそう告げると、目の前のティアラは一瞬、表情を強張らせる。まるで、目上の者に叱咤された時の様に。
…別に怒っている訳じゃ、無いんだけどね。
ただ、何か、があったのに、笑える状態じゃない癖に回りに遠慮して、造り笑顔を向けているのが気に入らないだけ。
僕にまでそんな気、使ってどうする気さ?
数秒、テーブルに置いたカップを見据えて考え込んでいたらしいティアラが不意に顔を上げて、少しだけ泣きそうな声で、答を。
  「……ううん。ごめん。少しだけ、甘えさせてもらってもいい?」
  「………僕でよければ、いくらでも」
君の運命を変える手助けをした時から、僕は、君の…ティアラの人生につきあう決心をしていたんだから。
ましてや開ける際に、風の紋章にティアラに風の加護と、神の息吹を自分の名に賭けて、誓ったんだから。魔法使い、が4大元素以外の存在に自分の名を賭けて誓う、だなんて、滅多な事でもない限り、ありえないのをきっとティアラは知らないだろうけれど。
それでも誓約、はいついかなる時も、必ずしや叶えられる。
  「…………例えば、好きな相手が自分を好いてくれているとするじゃない?
   そして自分もその相手を好きなのに…なのに、相手に『好き』って言えないのって
   ……結構、辛いものだと思うんだよね……」

……例え話、になっていないと思うのは僕だけなのだろうか?

少しだけずきずきと痛み出したこめかみを押さえつつも、言葉を返す。
  「…いつもあれだけ、青いのになついていて、散々好きだの嫌いだの言ってる君が
   一体、何をもってしてそういう事、言い出してるんだい?」
だから惚気話なら、他の連中相手にして欲しい、と心底、願ってしまう。
それとも、他の誰かに恋愛相談でもされたというのだろうか?まさか。
ティアラに相談する位なら、周りに吹聴されるの覚悟で熊にでも相談した方がまだマシだ。
そんな事を思っていると、ティアラは瞳を閉じて、首をふるふると降る。
紡ぎ出される言葉は、何処か悲痛染みていた。
  「……えっと、ね……好き、とは言えるの。
   でも、違う言葉が、言えなくて…『言いたい』のに言えなくて…だから……」
そこで言葉は途切れてしまうけれど、続きは大体想像がつく。そして『違う言葉』も。
ただ、どうして『言いたいのに言えない』のかまでは判らないけれど。
  「………オウム返しで言えばいいんじゃないの?
   『愛してる』って…青いのが言ってくる言葉、そのまま言えない?」
好きになった相手が、好きになられた相手がお互い同性、というのはこの際、目を瞑るとして。
本人達がそれでいいなら、僕はそれに対して口を挟むつもりはない。馬の足に蹴られたくもないし。
でも、たかがその一言、をティアラが言えずにこれほど困っている理由、が判らない。
好き、とは口に出来るのに?
ティアラは、僕の問いに泣きそうな声で答える。
  「……だって、そんなの言えない……コレ、あるもん……」
コレ、と言って向けられたのは、右手の甲。
テーピングで見えないけれど、その下には『生と死を司る紋章』が密やかに。
そして、僕は大きく溜息をついて、窓の外の空を見上げる。
早秋の空は、真夜中の青。しかも雨まで降らせていた。





…ちょっとはフリ坊の話っぽくなって来たでしょうか?(^-^;
どーでもいいコトですが、ティアラとルックの会話だと『…』が多くて、打つのがちょっと大変。
私のフリ坊師匠のIクラさんは、さぞかし大変ではないかと思ってみたり。(師匠宅の坊ちゃんは三点リーダー多用なさる寡黙な坊ちゃんなのですvラブvv)

更に判る人にだけ判るハナシ(笑)→ルックが思っている『青いのにしか使えなくて、ティアラにしか効かない唯一無二の切札』は残暑お見舞い話フリ坊Verで、フリックさんが言っていたあの言葉、です♪
…いえ、まったく話の本筋には関係ありませんが(^-^;

次回では、も少しティアラが悩んでいる本題、について書けると思います。
ホントは今回の話で書けると思っていたのですが…大概にしなさい。ティアラ(苦笑)

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