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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
高橋ふとん店は売上を追求していない。高橋社長は「売上を追求しないから生き残ってこられた。」と語る。同社はピーク時に比べて現在15%ほど売上げがダウンしている。もし売上げを追いかけていたら、ニトリのような本業以外の会社が多く参入してくるこの業界で、無理やり拡大路線を追求すれば、消耗戦に巻き込まれ、会社は争いごとばかりになる。それより社員が幸せになれる会社を目指す。そうすれば会社は存続する。売上はそこそこで社員と楽しい人生を送れる。この考え方に、戦略格差より理念格差と言われる時代の本質を見た。
高橋ふとん店は2000年から毎年大卒者を採用するようになった。当初は11人採用しても9人が辞めてしまうような会社だった。社員に辞められるたびに高橋社長は全人格を否定された気持ちになった。定着率を上げるにはどうすればよいか、高橋社長は悩んだ結果、社員教育で一人ひとりに寄り添うことが大事だと気付いた。特に入社2年目の社員を誰もサポートしていなくて、彼らは一人前扱いされることに不安を感じていた。そこで研修期間を12か月から18か月まで延長。「××しかできない」ではなく「○○ができるようになった!」と認めるようにした。また、教える側が「がんばれ!」と励ますのではなく「大丈夫だよ!」と共感するようにした。そうしたところ定着率が飛躍的に向上した。同社の社是の第一条には「人を育てることが最大の社会貢献と考え、共育を会社の根本とします」とある。こうして人を育てることが同社の社会貢献なのだ。
高橋ふとん店は理念型経営企業だ。会社のマークにはいくつもの笑顔が描かれている。同社のクレドカードのコピーをいただいたが、そこにはこう書かれていた。「我々は笑顔創出企業です! 笑顔は我々にとって最も大切な価値の一つです。笑顔はお客様を含めた他人のためにするのではなく自分がいつもハッピーでいるために必要なのです」。そしては「我々は一致協力して笑顔のあふれる明るい社会を創ります」。そしてコーポレートスローガンは「快眠でくらしに笑顔と夢をそえる」。ここまで笑顔・笑顔で推す会社は珍しい。逆に言えばそれだけ笑顔の価値を知り、大切にしているということだ。
人が寝具を買い替えるときは、生活上大きな変化が訪れたとき。新生活に合わせて毎日を変えるには、どんなベッドで寝て、どんな目覚め方をするか、誰だって大事にしたいと思う。その点、高橋ふとん店川内店のサービスは充実していた。例えば、高橋ふとん店川内店のマットレス売り場にはいくつもの機能性マットレスが展示されていた。シングルベッドがすべて2つずつ並んで置かれていた。2つずつ並んでいるのは、タダ寝転がるだけでなく、そこでゴロゴロと回転するためだ。人は機能的と言われる布団に乗ると転がりたくなる。その心理を捉えた展示の仕方に感心した。
高橋ふとん店の基幹店である川内店を見学した。わが国最大級の店舗で印象に残った第一はシーツの展示法。通常布団シーツはパッケージ化されているのを置いているだけ。これだと広げたときにどうなるか、写真からイメージするしかない。それをカーテン売り場のカーテンのように上から吊るして全体を見せていた。こうした展示の工夫が消費者に嬉しかった。タオルコーナーの充実ぶりにも驚いた。高級タオルを欲しいと思っても実際に触って買うことができないケースがほとんどだ。それを肌で確かめて選べるようになっていて感激した。
楽天で寝具通販No.1サイトである『こだわり安眠館』を運営する徳島市の高橋ふとん店を無敵経営研究会訪問した。そこで高橋社長からふとん店の歴史を教えていただいた。その昔寝具は家で仕立てて作るものだった。着物や家具などと同様に庶民の財産であり、財産分けの対象になった。それが既製品を買うスタイルになり見栄の象徴になった。家具や宝石と同じでブライダル産業の一貫で業界は大きくなり、平成元年には全国に21000件あった。が、庶民は人々は使わない布団は持っていても意味がないことに気付き全国3000店まで店舗数は減少。4℃は宝石でなくアクセサリーで指示されているが、同じように布団は今や財産ではなく、健康に繋がる商品として支持されている。「存在価値」を変えることが必要とされ続ける秘訣なのだ。
質疑応答に時間に、西精工の係長に参加者から次の質問が出た。「もっと昇進したいですか?」。「係長=給与は決して高くない」という認識から出た質問だ。これに対し、係長本人は「役職は単に役割。部長も課長も係長も単なる役割に過ぎない。部下育成の現場にいる今に充実感を持っているので、昇進のために仕事はしてないです」。100点満点の回答だが、これがさっと出てくるところに、自分で考え伝え、議論することを恐れず、納得するまで語り合う同社の社風を垣間見ることができた。
「成長して欲しいから評価をちゃんとする」。西精工の評価への目的意識に驚いた。西精工の評価は7段階の絶対評価。現在、一番下のD評価とC評価は0人だが、下から3番目のBC評価が5人いる。「BC評価者が5人いるのは会社が悪いからだ」と西社長は語。250人の中の5人である。「出来ない・やらない社員が悪い」で片付けそうなものだが、社長はBCを一生懸命育てて0人にしたいという。ここが0人になれば会社はもっと働きやすい場所になる。その社員育成意識に驚いた。
西精工の評価システムを教えていただいた。評価表には「何をするか」「ゴールの姿」「目標達成のための戦術」「結果」「評価」の欄がある。一般の会社と違うのは、「ゴールの姿」の中に「誰が喜ぶのか?」「そのために自分のどんな能力を高めるのか?」を記載させる欄があることだ。通常の企業だとここは数字のみとなる。誰が喜ぶかは、その先にある「目的」。目的を書かせているのは秀逸だ。
西社長は「うちはホワイト企業大賞をとったがホワイトではない」と笑う。残業も少なくない。残業が罪悪視されているが、「社員に負荷をかけるのはいい。問題は上司が負荷をかけた後、ちゃんと見守っているかどうか」だという。部下はリーダーが正しいかどうかではなく、自分を気にかけてくれるからついていくのだ。同社の現場は、一人ひとりが機械に張り付くスタイル。だから、日常のコミュニケーションは必然的に少なくなる。朝礼とか週報などどっかで濃密なコミュニケーション時間をとらないと、「見守り」ができない。だから1時間の朝礼が逆に生産性を上げるのだと気が付いた。
西精工の朝礼を見学した。毎日社長が書いたフィロソフィ(クレド)について話し合うミーティングで、社員約30名が参加している。この日のテーマは「『儲ける』とは貢献すること」だった。社長は「『儲ける』と言ったら何だか悪いようなイメージがあるが、決してそうではない。起業はしっかり儲けなければ誰も幸せにはできない」という京セラの稲盛会長の言葉を引用していた。社員はこれを自分ごとに置き換え、自分の言葉で自分の体験や自分の想いをその日くじ引きで決めたグループの仲間5人と語り合った。その後、各グループ代表が全員の前で出された意見を紹介した。これに対し、司会の係長が突っ込んだり認めたりして発表者はもちろん、全員の納得感を引き出していた。社長が向き合った問題と社員も同じように向き合い、考え、伝えてフィードバックを貰う。そうすることで価値観が揃いベクトルが合ってくる。クレドミーティングの理想を見ることができた。
西精工のミッションは「私たちは『高品質・高機能のパーツ・ナットの創造事業』を通じて、ものづくりを支え、人々の豊かな生活と幸福・社会の発展に貢献します」だ。以前は社是に「�‐錣某靴靴っ亮韻鮨箸防佞韻銅�け持つ職場の第一人者になりましょう �∪儷謀�に仕事に当たり失敗を恐れず常に責任を持ちつつことに当たれる人になりましょう �F盈宿�下ともに長所を認めましょう…」があった。社長はこの社是に違和感があったという。それは「こうあるべき」という「べき論」ばかりで、それをやった先が描かれていなかったから。仕事の目的は、社員が幸せになること。その視点が抜け落ちて、社員に要求ばかりしていた。故に今の行動指針は「�〇笋燭舛録佑反佑箸里佞譴△い斐�を大切にして、自己の人間力を高めます �∋笋燭舛浪�善・改革に努め、革新の技術で安全安心の製品を提供します」など、その先にどうなるが明記されている。こうした微妙な違いに敏感な西社長は本当に凄い。
西社長が着任した当時、社員は自分たちがやっている仕事に誇りを持っていなかったという。挨拶や5Sはおざなりで、製品が足元に落ちていたこともあった。その意識を変えるために社長は「私たちの製品は最高級車のレクサスに使われているんだぞ」と社内啓蒙活動をした。実は自動車部品会社では、自分たちの部品がどこにどのように使われているか知らない社員が多い。農業でも、自分たちが育てた野菜や肉がどこでどのように売られているのか知らない人が多い。これでは「お客様のために」と言ったところで気合は入らない。「モノの先にある幸せを見ないといかん」と言った松下幸之助の言葉を思い出した。
西精工のビジョンは「私たちは、人づくりを基点に『徳島から世界へファインパーツの極みを発信する』創造力・技術力ナンバーワン企業を目指します」だ。このビジョンを作るため、会社の沿革を振り返った。すると「こういう領域で勝負がしたい」という自分たちの強みが見えてきたという。さらに「徳島」という言葉が出てくる。西社長は「うちの会社を良くしたいと思っていない。徳島や日本を良くしたいと思っている。そう考えることで視野が広がる」という。レッドオーシャンにいたときはコストダウンのために中国進出も考えた同社だが、「徳島から」というひと言に同社の起点・原点への想いを感じる。
赤字事業を止めた後、社員と納得に向かって対話したがこれが大変だったという。「なぜ止めるのか?」「代わりに何をするのか?」。社員一人ひとりに本音で何を考えているのかレポートを書いてもらったという。西社長が選択したのは「強みのあるモノだけ作っていく」こと。ライバルが出てこないようなモノを作る。一番ライバルが出てこないのは複合製品。前後工程で8社が関わって作るモノは管理や品質保証などが面倒くさいからそれを担う。同社はそれら強みのある商品をファインパーツと命名した。ファインパーツの新製品は原則粗利40%以上。(少なくとも35%)。ファインパーツへの特化が経常利益10%以上経営の源だ。
西精工の物語は高付加価値化のための事業再編から始まった。西社長が赴任する20年以上前、同社はベアリング関連の製品も製造していた。が、過去20年間技術革新がない分野でレッドオーシャンだった。毎日のようにコストダウン会議を行っていた。原価計算をしたら20%が赤字でこれ以上ライバルに太刀打ちできず、赤字製品からの撤退を決めた。車メーカー大手4社のうち2社との取引を止め、売上の3割が減った。撤退の決断は経営者にとって最も難しい決断のひとつ。これができたのは、西社長が外から来たからだと自分で振り返る。生粋のたたき上げではできないことかもしれない。
ワークライフバランスは仕事と人生の調和だが、社長は「ワークアズライフ」だという。ワークアズライフは「「仕事とプライベートを分けることなく、寝ている時間以外はすべて仕事であり趣味であるという考え方」。同社の社員はそのくらいロコレディでの仕事を楽しんでいる。社長は社員を徹底的に信じている。任せたら本気で任せる。最初は100万円くらいから仕入れ権限を付与する。それが上手く行ったら200万、300万と増やしていく。そして最大8000万もの仕入れを任せている。この強い信頼に社員が力強く応えている。
不特定多数でなく特定多数を狙う。羽富社長は3.11の時に2千万の被害を受けた。店長の家もぐちゃぐちゃになった。にもかかわらず、当時テナント出店していたイオンは「明日から店を開けるので来い」という。このとき「これはいかん」と思ったという。店長は50〜60代の店長だ。孫の面倒を見ないといけない。自分の親、旦那の親の面倒も見ないと言えない。女性店長は21時までとても働けない。そのためにイオンを出た。すると売上げは30%落ちた。が、経費も1/3になった。売上が下がっても利益が出る経営に変えたら、社員は辞めなくなった。同社の平均勤続年数は30年。
売り込むときは本人ではなく「女、子供、ペット」を狙う。これはユダヤ商法の教えだが、店長はお客様のペットに年賀状を送る。「メリーちゃん、あけましておめでとう!ワン!」と書いて送ると受ける。ネコにも書く。建物でもトイレに一番金をかけている。お洒落と言うより面白いトイレだ。「あそこのトイレ、面白いんだよなあ」と噂になるトイレ。ロコレディのトイレは、高校生が利用すると「持って帰りたい、ここに住みたい」と言ったというが、これだけでも見たくなる。社長の噂づくり力には脱帽だ。
人の口コミでなく家族内の口コミを増やす。同社の自販機のジュースは只。そこで女子高校生たちが毎日のようにやってくる。一人で1日3杯も飲む子もいる。彼女たちはジュースがタダで飲めることをインスタなどでアップする。どんどんタダで飲む子が増える。そんな彼女たちは卒業したら初任給でお母さんやおばあちゃんにエプロンを買ってプレゼントする。結婚する前には彼氏を連れてくる。羽富社長は趣味で作ったドールハウスをプレゼントする。すると感激して泣き出すという。こうした物語が家族の中に広がる。家族内の口コミには嘘がない。高校生を基点にお母さんもおばあちゃんも客になる。「CSVは回りくどい」と羽富社長は笑うが、高校生と普通に話せるのは社長ならではの武器だ。
イベントではなく場立て。イベントは「売り」が目標。一方場立ては人が集まって来るもの。同社はこれを明確に区別している。人を集めようと思うと、どうしても値引きする。一方、場立ては一緒になってつくる。今企画しているのは、高校生が企画・演出する音楽フェスティバル。そこでは春をテーマに20代の曲、30代の曲などいろんな世代が集まる曲を演奏する。市長がサザンが大好きなので市長を交えたバンド演奏もやる。場立ては集めるんじゃなくて集まってくる仕組みづくりなんだ。
俳優が来る店にする。同店には羽田美智子さんや山本學さん、堀内正美さんなどが訪れている。方法はフィルムコミッション。映画、TV、CMの撮影に自分の店やオフィスを無料でどうぞ使ってください、時間帯は相談に応じますと市のフィルムコミッション制度に登録するのだ。すると、すぐオファーがあるという。またエキストラの話があると参加する。するとおまけがもらえるので、それをお客様にプレゼントする。当然、お客様は喜ぶ。常総市は映画撮影が盛んな街。その地の利を生かしたPR法だ。
水害に遭ったとき、避難所に支援物資が置かれていた。長靴の横に女性用の下着が置かれているのを見た羽富社長は「これはいけない!」と思い、女性用の下着をS、M、L、2Lのサイズ別にラッピングして各避難所に配れるようにした。「こんな緊急時に何やっているんだ」と言われながらも、女性心理を知る婦人服商として許せなかったのだ。また、Facebookで「女性用の下着を私に送ってください」と呼び掛けたところ、全国から460もの支援が届いた。社長はそれもラッピングして避難所に届けた。こうした活動が評価されて、社長は陛下が被災見舞いに訪れたときに市の推薦で言葉を掛けられる。彼の市民に寄り添う姿勢の賜物である。
仕事としてのボランティア活動。一般にボランティア活動は、社員が勤務時間外に自主的に地域のために活動する。それを、会社の活動とした。勤務時間内に社員が花火大会のゴミ拾いや募金活動を行う。このとき、社名の入ったジャンパーを着たりしない。逆に募金活動の時は怪しまれないように、市のマークを借りてくる。仕事だから皆、一生懸命やる。2−3万円集まったら市長に持って行って市長と写真を撮る。その結果、市の信任が厚くなるだけでなく、社員も育つという。
多くの会社の商工会への参加動機は「参加していれば市から仕事が来るんじゃないか」という下心だ。しかし、そんな下心が見え見えの会社に市はなかなか発注しない。すると参加者は「商工会なんて…」「市役所なんて…」と市の悪口を言い始める。一方市は、少ない予算であれこれ運営せざるを得ず四苦八苦している。また予算集めもしたい。そこで羽富社長はボランティアで運営に参加、募金集めだってやる。市の困っているところを助けるため、行政にフォーカスする活動をする。すると、市からの信任が積みあがる。愚痴る人と、信任を積み上げる人。この差はとても大きい。
さびれた商店街。ネコ一匹通らない。そんな茨城県常総市のシャッター通りで婦人服店「ロコレディ」は繁盛し続けている。きっかけは会議ファシリテータ普及協会の釘山代表の言葉。「さびれているのはそこに歴史や伝統があるということ。それを活かしましょう」。物事にはすべて裏と表がある。悲観して見えるのはすべて一方の側からしか見ていないから。それをもう一方の側から捉える。羽富社長は物事を見て「how」を考える癖がついた、という。ロコレディの成功はまさに常識を逆に見てhowを考える逆転経営にある。
従来型組織の考え方のひとつが「人は仕事を待っている」。上の人が仕事を出さないと人は仕事をしないと思っている。しかし、下の人は与えられた役割を果たすのではなく「目的に適った自分の役割を果たしたい」と考えている。指示命令されなくても、「ここはこうした方がいいな」と自分で考え、自分で行動し、そもそもの目的を果たしたいのだ。そのような気持ちを持った社員がどんどん増えて、管理的仕事が経営陣に集中しないのがティール型組織だ。星野リゾート、赤城乳業、西精工、河合電機製作所、google…最近見たな中ではこの辺りがこの組織スタイルに近いかもしれない。
私のクライアントにはティールに近い組織の会社がある。というか、私は知らず知らずのうちにこのティールに近い組織づくりを支援してきた。V字編隊飛行などは、まさにティール型組織で、多くの二世経営者はこのティールを指向している。このような組織で必ず発生するのが役員クラスと現場の対立。現場が役員を「必要ない」と考えるのだ。なぜなら現場の力が強くて、かつ理念とか経営方針に則って結果を出すからである。存在価値のない役員ほど肩身の狭いものはない。ティール組織は素晴らしいが、役員に何をやらせるかこそが課題である。
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