V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
まず従来型の組織は、「トップとそれ以外を分ける」。するとこの分離の箇所に問題を抱え、組織は病んでいく。権力の不平等な分配が起こるからだ。これにより会社全体のモチベーションがダウンする。「仕事に無関心」「支えられていないと感じる」「意欲を持とうとしない」など。権力の不平等な分配はそれだけでやる気を削いでしまうのだ。上司が部下をコントロールする、という発想がないのがティール組織だ。
ティール組織と言う言葉を巷で聴く。私がベンチマークしている西精工などがその好例だと言うので勉強会に参加してみた。そこで学んだことは、ティール型組織とは進化型組織であり、指揮・統制がない組織だという。従来の組織は「機械」や「家族」に例えられていたが、進化型組織は「生命体」や「生物」に例えられる。上司が部下に対し親のように気を配ることはなく、奉仕もしない。生命に対し誰も指揮命令しないように、各部位が自分の意思で進化していく。「生命体」のような会社は…確かに存在しそうだ。
エフピコの工場には自家発電設備が設置されている。北海道のブラックアウトの時も、自家発で稼働していたという。災害時に食品の供給は重要課題だ。が、どれだけ食品を製造しても食品を入れて運ぶ容器がなければ食品は運べない。だからこその自家発電設備。自社の危機管理対応と言うよりも世の中の危機管理に対応するのは、食品トレイが電力や水道のような社会インフラであることの証だと思った。
同社のトレーの仕分け作業は主に障がい者が担っている。彼らは6人1チームになり、一心不乱に作業をしている。法律では10人に1人のサービス管理者が就いていれば良いのだが、同社の基準では障がい者6人にサービス管理者1人が良いバランスなのだろう。健常者でも10人に一人の管理者は多すぎで、8人に1人が限界だと私は認識しているが、自社の最適人数となる基準を持っている会社は、育成や採用に迷いがなくなるためそれだけで強いと思う。
同社のトレーは長いプラスチックシートを型で押し出して成形する。このシートの製造過程で時々キズがつく。通常なら機械を停めてそのキズの手当てを優先するところだが、同社はそれをしない。そのままにしてキズのあったシートの端に印をつける。そしてトレーが出来上がった後で、そのキズの合った箇所のトレイを回収する。回収したトレイはまた原材料化して再利用する。「キズ発見→すぐ修理」ではなく「キズ発見→後で除外→再利用」の合理性優先の流れに驚いた。
ペットボトルから生まれた原料は、トレーの製造工場に運ばれてトレー生産の原料になる。このとき原料を数百メートル離れたトレー工場までどのように運ぶか散々検討されたという。袋に入れてトラックで往復便を走らせるのか?クレーンで釣って運ぶのか?それともパイプを作ってその中を空送するのか?ここで輸送コストがかかっては、儲からないビジネスになってしまう。それゆえにいくつもの選択肢を出し、長期的なコスト計算し、空送を選んだという。見たことのない無人の輸送システムに感動した。
エフピコの工場内でペットボトルの原料化の工程を見学した。ペットボトルを再資源化するにはどこかで洗う工程があるが必要だが、最初にボトルを洗いそれから裁断する方法と最初に細かく砕き、それから裁断する方法とがある。同社は最初に砕き、砕いた後に不呪物を取り除き、それから洗うプロセスを踏んでいた。言われてみたら当たり前のことかもしれないが、ペットボトルをゴミ出しするとき洗って出すことに価値がないことが分かった。
エフピコの生産するトレーは白以外に透明なものやカラフルな色のついたものなど多数ある。色付きのトレーは同社が始めたもの。お寿司などを売るには下が白のトレーよりも、黒に赤や金のラインが入ったトレーの方がよく売れるからだ。近年では、コンピニでチンして食べるスープ類のように3層式のトレーも開発している。こうしたトレーは回収すると、色付きのため次のトレー原料にできない。ハンガーなどの原料になるとのことだったが、「売れればいいの」で売りっ放しに姿勢に感心した。
食品トレーはスーパーの店頭で回収した後、同社の帰り便を使って同社に戻る。そこで再生可能なトレーを分別して、再びトレーの原料とし、同社工場内で再生トレーとなる。この一連のサイクルをトレーTOトレーという。同社はトレーメーカーであると同時に、原材料メーカーでもあるのだ。「ごみはどこかに引き取ってもらいましょう」という安易な考え方ではなく、ここまで背負うのが今どきのメーカーなのだ。
食品トレーのNo.1企業であるエフピコ㈱の中部リサイクルセンターを訪問、見学した。わが国では94年に環境基本法ができたが、その4年前の1990年から包装容器の回収システムをつくり取り組んできた。きっかけは87年に起きたマクドナルドの不買運動。当時ハンバーガーの容器はプラスチックだったが、それが社会問題となったのだ。こうした先を読んだ取り組みを同社は「企業防衛」と呼んでいる。マスに対し消耗品を供給するビジネスは、社会問題と常に隣りあわせだ。ピンチを読み、チャンスに変えるべく先手を打つ体質が、同社の成長を支えている。
今年度ホワイト企業大賞を受賞した岡山の荒木組の荒木社長と話す。荒木社長は同社の理念の中に登場する「品格」「誇り」「働き甲斐」について社員と話し合う機会を大切にしている。そして、社員を動機づけているという。また、社内には様々な制度があるが、この制度をもっと従業員のために活かす、お客様のために活かすにはどうしたらよいか、社内でワークショップを開いているという。改善提案制度等はその際たるものであろう。この2つの切り口のうち前者は私もコンサルでよくやるが、後者の切り口はなかった。今後実践してみたい。
クライアントがホワイト企業大賞特別賞を受賞した。これを受賞するには相当熱い理念経営型の集団にならないといけないが、受賞したクライアントは私が火を点けた後、毎年ホワイト企業大賞を見学し、ネッツ南国の横田会長はじめ多くの方に学び、自分でやり方を習得して受賞したのである。私ができるのは火を点けるところまでで、後は自走した人でないとこんな賞には届かない。自走するには出会いの場を設定し、そこから勝手に突っ走ってもらうこと。そのような機会はまた作りたいと思う。
どうしてここまでできるのか?日本ウエストンの臼井麻紗杜社長から名入れストラップが届いた。このストラップ、臼井社長が贈りたい人の分を作成し、それを持って伊勢神宮にお参りし、御祈祷を受けて、送ってくださったもの。名入れストラップだけでも嬉しいのに伊勢神宮の御祈祷済とは…何をしたら人が喜んでくれるのか、考え抜いた行動。毎年頂戴するが、そのたびに感動する。臼井社長、ありがとうございます!
受験生応援CMは毎年カロリーメイトがガンバっていますが、今年は名鉄がグッときた。以下はそのコピー。「受験は家族を強くする。受験に立ち向かっているのは、ひとりじゃない。がんばるキミをいちばん近くで見ている家族が、誰よりも心配して、祈って、応援してる。支えてくれる人がいるからこそがんばれる。この1年間で強くなったのは、キミだけじゃなく、家族の絆かもしれない。私たち名鉄さくらプロジェクトは、全ての受験生と、周りでサポートする人たちを応援しています。」受験生の親として共感。こどもの野球部を応援していた時は、自分も野球がキャッチングと遠投が上手くなった(笑)。
成人式をかつてのように1月15日に固定化せず、月曜に変ったことで複数の同窓会に出ることが可能になった。私の息子の場合、12日に高校の同窓会があり、13日昼に小学校の公民館で正式な成人式、その夜は中学の同窓会に参加している。この日に会ったら今後何年も会えないのだから、いろんな同窓会に出られるようにできるこの仕組みは素晴らしいと思う。15日を動かすことに当時抵抗する意見もあったが、経験してみるとよくわかる。ナイス判断だ。
13日は息子の成人式だった。式場の公民館に集まっているお母さんたちの慶び方を見ると、達成感があるのがひしひしと伝わってきた。一生懸命育てて、「育て上げた!」という感覚があるのでしょう。一方、父親には達成感はなし…子育てらしい子育てを何もしていないので当たり前ですが…ただ「ようやくこっち側に来たな」というWelcome感はある。これから息子とどんな話ができるのか、楽しみだ。
生き方学生塾に参加している志賀内さん、他の講師の方を見てとても楽しそうなのに驚く。若者に自分の知見を伝えることはとても楽しいことなのだ。人は、他人の悩みの解決策を考えるとき、自分の悩みを忘れることができる。短時間で的確なアドバイスをしなければならないからだ。故に他人のことばかり考える人は、悩みがなく(悩んでいる時間がなく)、明るく輝いている。医者の不養生、コンサルタントの不養生の発生原因はまさにここにある。
生き方学生塾で知り合った女性の先生と話す。「私、今小学生に付加価値を教える授業をしているのです。生卵50円を茹でるとゆで卵80円になります。これを煮卵にすると150円になります。3倍で売れます」。それを聴きながら、なるほどこうやって付加価値を説明するのかと感心した。材木は加工すれば椅子や机になる。付加価値は何倍にもなる。封筒は速達にすると80円が320円になる。スピードにはそれだけの付加価値がある。スタバの珈琲はドトール等の倍近い。空間・雰囲気・接客にそれだけの価値がある。付加価値の講義は考えるととても面白い。
A先生の話の続き。今はできるだけ〇×のジャッジをしないことが大切だと語った。今までマナスだと捉えていたことも、それを活かせばプラスを生む栄養になる。「受験に失敗した→マイナス」ではなく「受験に失敗した→これをプラスに変える努力をする→その後の自信・勇気・ネタになる」ができるという意味だ。沖縄の住民投票も2択ではなく3択の時代。今の時代は成否を請求に問うのではなく、選択肢を多く出したりストーリー的につなげていく時代なのだ。
昨日の続き。うんちを便所から外に出している生徒を見たら、普通なら「何やっているんだ!!」と怒る。ところが校長先生は①「どうしたの?」と確認する。②「そうか、そういうことか。大変だね」と認める。③「じゃあ、どうするの?」と自己決定力を引き出す。この3段階を踏むことが人の成長を引き出す。そして、「先生の多くはいきなり怒る。その多くが事情を理解しない勘違い。でも謝らない」と語った。自分も冒しがちな過ち。冒さないように3段階を意識したいし、冒したら素直に謝ろうと思う。
生き方学生塾で学んだ話。中学A先生が学生にこんな話をした。『窓際のトットちゃん』からの引用だ。「トットちゃんが財布を汲み取り便所に落とした。それを取り出すために、汲み取りのうんちを全部掬いだした。当然凄い匂いだ。そこに校長先生が通りかかった。先生はトットちゃんにこういった。『何をしているの?』トットちゃんは事情を説明した。すると校長先生は『ああ、そうかい。戻しておいてよ』。その後トットちゃんはそれを元に戻した。土に染み込んでいたので土まで戻した」。A先生はこの校長先生に感心したと続けた。
生き方学生塾で学んだ話。「人は自分を理解しようとしてくれる人の話は聴く。が、自分を正そうとする人の話は聴かない」。あるカウンセラーの話だが、本質を突いているなと感心した。私自身いろんな人のコンサルを受けることがあるが、やはり自分を正そうとする人の話は素直に聴けない。そして私自身、お客様を正そうとして失敗したことが幾度もある。このカウンセラーさんの話で、「本質はそういうことだったんだ」とストンと腑に落ちた。
作家で友人の志賀内泰弘さんが主催している生き方学生塾に参加した。この塾は学生は5人。決して一流ではない大学生が中心だ。そこに1講演10万は取るような講師を職業としているが4人参加し10人で勉強をする。まず講師が15分話す。質疑応答が15分。これで1人完結。次の講師が15分、質疑応答が15分…こうして講師4人が2時間で5人の学生に伝えたいことを伝える。その多くは表では語れない大人の本音。学生たちは「こんな大人は見たことがない」と感想を漏らす。とても良い試みだと思ったので参加してみた。
大好きな『下町ロケット』のいよいよ最終回だ。『己を修め人を治める道』の中に「地位は低くても、会社と一体であると感じる人はその会社の大人『会社大人』。いくら地位が高くても、自分の出世のためとか生活のためだけで生きている人は小人に過ぎない。会社大人は会社が悪くなればなるほど、どうしたらこの会社を立派にできるか、復興させることができるかを真剣に考えてそれに取り組む。会社大人に地位は関係ない」とある。このくだりはまさに佃製作所の社員たちのことを言っていると思った。彼らは会社と一体になっている。今回のドラマは会社大人VS小人(ダーウインの連中や的場役員)の対立を描いたものだ。
世直し倶楽部「こころの文庫」第九集、イエローハットの鍵山秀三郎相談役の講演録『丁寧な暮らしで積極的な生き方を』の中に、ガンジーの「7つの大罪」があったのでメモしていく。「原則のない政治と原則を伴わない政治」「道徳のない商法」「労働のない行為」「人格を伴わない教育」「人間性のない科学」「良心のない快楽」「犠牲のない信仰、宗教」。このうち下町ロケットのテーマはいつも「道徳のない商法」だ。
下町ロケットの最後のシーンはオープンイノベーションだった。もちろん特許使用料は取るというものだが、「権利を得る→ガメル→独占する→独占利益を得る」というばかりが最近のビジネスではない。「権利を得る→貸し出す→皆で良い商品を世の中に提供する→皆で良くなる(自分の利益は相対的に小さい)」もまたビジネスだ。事業のテーマが社会的課題解決に寄るほど後者のスタンスが貴重になる。
下町ロケットの最後シーンは怖かった。品質上問題があるものを出荷するとこういうことになる、という恐ろしい見本だ。製造業の社長は、不具合が出たときに原因がわからない、原因を探究して探究して「あ、ここだったのか」と真因に到達した時に達成感がある、とおっしゃっていたが、その探究をすることの価値がとてもよくわかった。皆それくらい重い十字架を背負って仕事をしている。コンサルタントはその人たちに選ばれる仕事。同じくらい自分を磨いていかないといけない。
下町ロケットの佃製作所の一体感の源は、現場での「感情の共有」だ。ロケットの打ち上げをみんなで見て、成果を生み出すことから得られる幸せを共有する。皆で田植えや稲刈りを体験して、その問題を解決することの使命の尊さを共有する。共通の体験は、信頼の根拠なのだろう。元本田の小林三郎さんは「お互いを『ちゃん』付けで呼ぶような組織でないとイノベーションは生まれない」と言っていたが、イノベーションを生み出すチームは『感情の共有』が欠かせないのだろう。
下町ロケット最終回を観た。佃製作所の魅力は何といっても社長を中心とした一体感だが、同社の一体感の源はコミュニケーション力にある。TVだから当然かもしれないが、皆本音を口にする。特に竹内涼真君が「やってられないよ」とは「なんですかあれは」「俺辞めます」などあれくらい正直に言ってくれたらどれだけ周囲は楽か。現実にはあれを言わずに内部に溜めてしまう・そしてあるとき突然「辞めます!」といって居なくなる。正直に言ってくれる人は少ないので、言いやすい環境をつくらないといけないと思う。
今年の目標は新しいビジネスモデルの構築。自分が客先にお伺いし、アドバイスをしたり研修をしたりする。それで対価を頂く。これまでずっとこのモデルでやってきたが、働き方改革の影響で、顧客がミーティングや研修に十分な人と時間を避けなくなってきた。また、自分も55歳を過ぎ、体力的に移動がきつくなってきた。自分の移動は少なめにして、それでいてお客様に喜んでいただく方法はないか…今年はそのために時間とお金を費やしている。
『己を修め人を治める道』の中に、大好きな言葉「一隅を照らす」が出てくる。地球は自発していない。太陽の光に照らされて輝いて見えるだけだ。同様に会社の部長も課長も自発していない。その会社のブランドの中で輝いているだけだ。ゆえに、ほのかでも蛍のように自分で光を放ち、照らすことに価値がある。「一隅を照らす者で私はありたい 私が受け持つ一隅が どんなに小さいみじめな、はかないものであっても 悪びれず ひるまず いつもほのかに 照らしていきたい」は田中良雄氏の歌だが、照らすだけでは面白くない。私は今年も多くの社会をもっと良くしたいと願う経営者たちが蛍のように小さく輝くお手伝いができたらと願う。
|