前作とはガラリと変わった演出でした。私は今作の方が好きだ。
前作は、原作に忠実にあろうとして作った作品だったように思う。ストーリーをそのままなぞった感じがあったなあと。 今作は構成に変化を与え、前作と比べると何だか随分垢抜けた、現代の好む作風だなあと思ったというかなんというか。カメラワークは多彩で、コマ撮りが細かそうだなあと観ながら思った。そういうのが好みです私も。
雑誌インタビューを幾つか読んでいたので、それを踏まえた上で観に行ったから然程違和感もなく入り込んだと思う。 先ず、原作冒頭の、ハコに語りかける男と、ハコの中の少女のシーンが最後にあるしね。それを見た雪絵が千鶴に話すというのも最後。まあ、事件を追っていけば確かにハコの中の少女は最後だよなあ、雨宮さんが胴体と頭だけの加菜子を連れ出すわけだから。 「ほう」で終わります映画は。
榎木津と久保の関係も、映画の冒頭。戦時中の二人を映像として見せる事で、観る側にわかりやすくなってるんじゃないかと。口頭で説明されるだけだと聞き逃したり、さらりと流されそうだなあとは思う。その辺はうまく考えてるなあ。
宮藤の(こう表現すると語弊があるけど)バランスの悪い顔、削げた頬を強調することでより薄気味悪く、久保竣公らしくなってるんじゃないかなー。最初はクドカンだと聞いて、どうだろうと正直思ったけど、案外久保に似合う人?(笑)最初の榎木津とのシーンで、貪り食ってるあの場面は気色悪かったなあ。
気持ち悪いといえば、頼子の腕が生々しすぎて…美術さん頑張ったよね……でも、私的にはもっと人形らしいというか、作り物めいた腕が希望だった。その方があの世界観にはあってると思ったんだけどなあ。戦後昭和の雑多で、猥雑で、古めかしい感じが出ると思うんだけど。昭和が舞台なのに技術だけ現代だと違和感感じるのは私だけ?
実際、腕は生々しいのに、最期の決戦の地(笑)の美馬坂研究施設はちゃちかったんだよね。外観自体がもうCGなのでこれはどうしようもないんだけど、中身のごちゃごちゃした機械類が玩具っぽい。 車やら衣装やら街並みやらは時代を感じるのに。 時代考証は大事だとずっと思ってきて、それを大切にしてくれるのはとてもいいと思う。結構その辺がしっかりしてればセットははりぼてでも余り気にしないかもしれないもしかしたら。
まあその辺はいいとして。 ただ、実録さんとこで見つかった腕は贋物っぽかったから、これだ!と喜んだのに、その後出てくる腕が鮮やかな赤に染まって断面も生き生きしてたら相互性がないような気になるじゃないさ。せめてどっちかに揃えてくれればよかったのに。一緒に観に行った友人なんて、「これ年齢制限あるのかなあ?」って言ったよ。どうなの?
心配、不安、どちらかといえば否定的だった椎名の関くんは想像よりもずっと良かった。 あんなに体格が良くて、背筋が伸びていて、健康そうでなければとても関くんなのに。さすが椎名と思ったけど、でもあの外見は関くんじゃないんだよ…ああ残念だ。健康的であるが為に関くんに見えない(笑)
うまい役者さんばかりなので安心して見られる上、ちょっとした演技対決っぽくて楽しかった。特に、堤、阿部、椎名が京極堂で事件について語っているとき、お互いにプレッシャーを掛け合っている感じで見ていて楽しい。 今回は榎さんの出番が結構あるんだよね。そして3人ともよく喋る。
京極堂の見せ場は、オンバコ様(漢字が出ない…涙)でのお祓いシーンだろう。
反ばい(漢字が出ないんだよだから)は頑張って覚えたんだろうなあ。かなり時間をとってくれていて、私的に非常に嬉しい。上やら右やら左やら後ろやら、画面構成が多角的で。まあ、京極堂の見せ場ってここくらいだから色々考えたんでしょう。 京極堂が立ち上がる時に、背中の桔梗紋を一瞬大きく映すんだけど、ああいう撮り方が好きだなあ。ほんとに一瞬なんだけど、そういうところを意識的に使うのが結構頭に残る。
大沢樹生の増岡くんはイメージぴったり。 青木くんはもうちょっと爽やかでいてほしかったなあ。堀部も良かったんだけどちょっと濃いんだよねあの人。 今の希望は、里村くん。誰が演るんだ監察医。まさかこのまま出番ないとか言わないよね。
田中麗奈良かったですよ。ちょっと眼を瞠る。倒れる瞬間とか(笑) カメヤマハブラシのとことか、ああいうのが京極堂と関口くんだよなあ。
そうそう、榎さんが変人ではなく、フツーにかっこいい男でございました。しかも気障。狂骨でもっと変人といわれる榎さんっぷりを観たいと願うんだけど。
説明はあるけど、多少時間が前後するので、遅れずついていくことが重要かも。立ち止まると、観てるこっちが置いていかれるような気がするくらいテンポはいい。さっさか進むからこっちもさっさか聞き取ろう。
ぶっちゃけ、前作が微妙だったからあのテイストで作っていくならちょっとなあと思ってたけど、今回みたいに映像化することを念頭に置いた脚本ならまあいいかなあ。原作主義なんだけど、読んでから随分経っちゃってるからあんまり気にならないのかな。読み直してもう一度観て確認してみたい。
オンバコ様から美馬坂へのくだりの繋ぎ目はいまいち、なんだか唐突に移動したような感じはする。 雑誌インタビュー記事から知り得た事。 ・椎名の関口、ぼそぼそ喋ってる部分にはアドリブが多い。 ・堤、阿部、椎名同年齢。 ・研究所内、階段昇り中の関口くんと京極堂の台詞及び関係性は監督と作者との対話から。 ・渡されたDVDを観た宮迫が、そのDVDに出演していた俳優さんの癖を真似て、たまにやっている。 ・久保の小説は、榎木津の台詞になっている。
結論。 ハコの中の少女が【みつしり】してなかったのが残念だ。
問題は脚本だったと思うんですよ。
や、のっけからなんだって話なんだけど、あんまり織田が可哀相になってきたので…
確かに、三十郎役は織田でなくてよかったと思うんだけど、リメイク「椿三十郎」に人気がないのは脚本にも問題があると思うんだよね私には。 三船三十郎時代のものをそのまま使うって話でしたもんね。
実際問題、あの頃と今とじゃ随分感じ方も違うし。何より、間が違うと思った。ああいうのを好きな人はいいと思うんだけど一般受けはしないだろうよ、というのが正直な感想。
どのへんの客層を狙ったのか、そこを聞いてみたいような気がする。 主役を織田に据えて、それで現代版椿三十郎を作るって話ならよかったんじゃないかなとは思うんだけど。
痛快っていうほどには心地良くない。
きっと観に行った人の大半はもっと現代的にアレンジされていて、快刀乱麻を断つみたいなのを求めてたんじゃないかと。それでいくと、あれー?って言いたくなるわけだ。
いくら設定が現代に通じるっていってもさ、ノリとテンポは昔のまんまだから。観てない人には「面白そうだけどなあ、コメディぽくて」って言われたけど。そう思って観に行くから失敗するんだきっと。私も同様だけど(笑)
笑いどころは作ってあるけど、笑いにくいんだよ。笑うってほどおかしいわけでもないんだから。笑って欲しいところなんだろうなあという製作者側の意気込みは感じるが。
何でそこでそういう行動に出るんだよ?!とツッコミを入れたくなる場面が多数。そういう話なんだろうけど、メリハリが薄いのかなあ…
ああ、若手の俳優陣の拙い演技力にも原因はあるだろうねえ。奴らがもっとしっかり動けてればまだもうちょっとマシだったんじゃないかという気もしないでもない。若手の子らの右往左往っぷりがそのまま若侍たちに通じてるっていう演出だっていうなら話は別。そういうことなら若手の子らばかりのせいじゃない。
繋がりはおかしいよね。水戸黄門とか暴れん坊将軍とかのがストーリーが単純なだけあって観やすいんじゃない。 何せ落ち着かない。
椿の行動原理は「俺が正しい」ってところかな。 そういうキャラクターなんだとわかっちゃいるが、若侍たちの情けなさっぷりで多少緩和している筈なんだが、それにしても椿自信あり過ぎ。 若侍たちが馬鹿で無鉄砲で考え無しだと気付いている割に配慮足りなさ過ぎ。
和太鼓と古臭い音楽で始まる冒頭は好きなんだけどね。
織田はねー、リメイクってところになのか、三船三十郎になのか、椿三十郎そのものになのか、何だか気負い過ぎな様子に見えて仕様がない。本人は役作りをしてああなったっていうんだろうけど。 奴にプレッシャーはないと思うが、過去の椿三十郎に重きを置き過ぎているような気がしないでもない。いちいちわざとらしい。
わざとらしいといえば睦田母子。あのテンポにはついていけん。 元々テンポが遅い話のところにあの二人のあのテンポが重なって余計に辛い。ああ、メリハリがないんだ…微妙だ…
いい味出していたなあと思えたのは、佐々木蔵之介。 何なんだろうあの人。口に秣つっこまれて佐々蔵哀れとか思ったのに。あの出番の少なさであの確実な存在感。 彼だけは安心して観れたよ!
室戸半兵衛さんはね、切れ者設定なわりに椿を信頼しすぎて墓穴掘った感じ。経験値高そうなのにあっさり悪事暴露しちゃって、キャラクター的にどうなのあれは。馬鹿はちゃんと上司さんたちが担当していたのに。使い方が勿体無い人だなあと思った。
殺陣は意外と頑張ってたかな。最後の室戸との一騎打ちがいちばん怪しかったと思うけどね。対多数なら誤魔化しようがあるからか。
結論。 睦田上代家老役が藤田まことで納得。
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