(仮)日記
何かしらの感想と更新履歴。



2005年08月27日(土) 「容疑者 室井慎次」






踊るシリーズの第二弾ですねー。眉間に皴のあの人。
呉川は室井派です。湾岸署の皆も大好きですが、青島も大好きですが、その中でも室井さんが大好きです。あの不器用っぷりが。

話は室井さんが逮捕されるところから始まって、弁護士小原が雇われ、その小原(田中麗奈)の回想で逮捕される理由に続くんですが。
圧巻ですね、大勢の警察官が容疑者と追いかけっこをしているのは。このシーンの全てがセットだなんて見えない。凄い。さすが美術スタッフ、いい仕事してます。

君塚監督の意向で、撮影の仕方は日本の昔ながらのやり方らしいです。だからあまりカメラのアングルは動かない。その辺りが先ず、これまでの「踊る」にはなかったところ。視点は真っ直ぐで、ころころと上を向いたり下を向いたりというのがありません。実直な感じが室井さんに合ってると思った。自分の信念を貫き通す、という感じが。だから、既存の「踊る」と考えると印象が全く違うので拍子抜けするかも。ドラマとこれまでのものはハリウッド映画を根底において撮影していたらしいそうですから。今回のはまるっきり日本だもんなあ。だからテンポもちょっと違う。話の進み方は遅くないんだけど、何かが違う。加えて、音が少ないです。無音だとか、雨の音だけとか、声だけとか、全体的に静かで音楽はそれほどあててありません。なので、腹が減っているときに観るのは危険。鳴ると響くよ腹の虫。

あ、でも、スリーアミーゴスが登場したときには爆笑。もう、観客全員で吹き出したように。面白いね、あの人たちはやっぱり。何ともいえない雰囲気が合って、彼らはそこにいるだけで既に存在感が在るから。いつレインボー最中が出てくるかと期待したんだけど、拘置所にそれはないよねえ(苦笑)。でも、レインボー弁当は用意したらしいんだよ、ただ映画に合わないからカットされただけらしい。観たかった、拘置中の室井の前に鎮座ましましている三つのレインボー弁当。小原が差し入れした普通の弁当だけでも気になったっていうのに。あのあと、室井さんはあのお弁当を食べたんだろうか…。

しかし、うまいね、三馬鹿は。小野さんの携帯取り出して室井さんを撮ってるっていうのがもう!そんな袴田課長を咎める神田署長のタイミングも素敵。沖田管理官(真矢みき)が現れた直後の畏まった三人とか。そんで、退室するときの最後の袴田課長からの一言!「和久さんも心配してるよ」って、生きていることにしてくれてる!嬉しかったなあ。このシリーズでまた映画を作ったとしてももう出ることはないけど、和久さんの存在感は随一だからね。こういう配慮は本当に嬉しかった。
その上、このタイミングで真下くんと雪乃さんの結婚式の招待状が出てくるとは思わなかった。そうかあ、結婚しちゃうんだ本当に…あの真下くんが、と思った瞬間。

話としてはね、中途半端かなあというのが否めない感じ。
室井の身の潔白の証明に焦点を置くか、警察庁と警視庁の軋轢に重きを置くか、どちらかに重点を置いた方が良かったんじゃないかなあ。どうしても室井一人を追っていく内容になっていたから、いろんな要素を詰め込むと二時間では描ききれないよ。映画で全てを語るのではなく、考える要素を残すというか、想像の範囲を広げるような、そんな話になっていたと思うし、監督自身がそういうことを念頭において脚本を作ったんだろうとは思うんだけど。でも、あれはどこに重きを置いてもどれも半端でなんだかなあとわたしは思ったんだけど。そんな風にするから、大杉連の出方がなんなんだかよくわかんなかったり(恐らく警察庁か警視庁のお偉いさんだろう。それか公安)、こそこそと話をしている男たちがわけわかんなかったり(これも警察庁か以下同文)。そうだよ、あのおじいちゃんはなんなのさ!裏の総元締めなのはわかるんだが出し方ってのもあるだろうよ、ホントこの人こそとってつけたような出さなくても良かったんじゃないかっていう最たる人。だって、室井に過去を振り返らせるには小原だけで用は済んでるじゃないか。やりたいことはわかるんだけどね…なんかね。

そこに、弁護士が絡むから更に置いてけぼり。いや、八嶋は良かった。あのキレっぷりが良かった。悪役ははまってると思うんだけど八嶋は。いい人役ってのはあまりピンとこないんだけど、八嶋って別に悪役やってないしねえ。
それより何よりも灰島弁護士(八嶋)の下についている同じ事務所の弁護士篠田が吹越さんだったことに嬉々。ありがとう監督!吹越さんが観られて私は大変嬉しかったよ感謝だよ。それも悪役側なんだもん!サイコー!久しぶりの悪役吹越に大感激で、つい灰島よりも篠田に視線がいきました。聞いていると苛々するような話し方をする灰島と、厭味な篠田。現実世界にこんなヤツラがいたら決して関わりあいたくはないですが、彼らの演技を観るには呉川には有り難い配役でした。

八嶋と吹越への萌は置いといて。話を戻すと、つまりは、観てるこっちは何が起こってるのかついていけないってことなんだよ。話としては真下正義の方が纏まってたね。すっきりと。あの、謝る室井さんの心情もいまいち納得し難いような…っていうか、なんで謝るのかその理由がよくわからない。あの人が語ってくれてるけど、話的に謝罪するという流れに行き着いた理由が…。

まあ、確かに室井さんはキャリア組の上、警視庁に出向中の警察庁の人だけどさ。その辺りの予備知識がないと余計意味不明だよ。軋轢の。
両方から挟まれて身動きできないのに、自分の意志を貫こうとする人だから上から煙たがられて、にっちもさっちもいかなくなったりするんだよ。にしても、小原の平手びんたは綺麗に決まってたね、室井さんの頬に。

沖田管理官がいつの間にか室井側になってたり、新城がちゃくちゃくと出世していたり、市倉さんは相変わらずだったりします。ああ、新城の行動にももうちょっと着目して欲しかったかなあとは思うよ。室井が逮捕されるきっかけとなった事件の犯人をちゃっかり捕まえていたり、自供させていたりするし。柳葉には悪いけど、どっちかというと新城の方を観たかった…!きっと沖田と協力して容疑者確保までこぎつけたんだよ。室井さんを中心に据えると、この二人のタッグって結構いいんじゃないか。

新城は屈折してるから。室井の逮捕から、市倉との相対、真犯人逮捕、室井を切るなら自分でと言っておきながら最終的には室井を切り捨てなかったそこまでの心の動きっていうのはどんなものだったのか。この人がいちばん室井に影響を受けているようだから。室井は青島の影響をモロに受けちゃってる人だけど、その室井から青島の影響を間接的に受けているわけじゃなく、青島の影響を受けて変わった室井の影響を新城は受けているんだよね。そう考えると楽しいなあこの人たちは。変わらないのは市倉さんだよね、ある意味自分にとても自信のある人なんだろうな市倉は。他人に影響されないんだから。良い意味でも悪い意味でも。確固とした自分があって、その自分を変える必要はないと胸を張って言うだろうなと思う。

いつもの黒コートを羽織る室井がかっこよかった。ネクタイを解いて抜き取る室井がかっこよかった。階段の上方で振り返る室井がかっこよかった。

室井の過去の語りで泣きました。不覚にも。



結論。
兄貴はいつでも兄貴でした。






2005年08月13日(土) リア王(舞台)






利賀フェスティバル2005に行って参りました。呉川はその中の、「リア王」を観て来たわけですが。
6年ぶりの世界芸術祭ということで、プログラムもいろいろありました。リア王を観てきたけれど、時間とお金さえあれば「アイアス」とか「イワーノフ」とかも観たかったなあ…。

鈴木忠志演出、シェイクスピア原作、出演はロシア国立モスクワ芸術座の方々でした。
鈴木演出では有名ですよね、リア王。確か去年か今年の頭くらいにNHKの芸術劇場でやっていたような…。観たい観たいと思っていたので、漸く今回念願叶って嬉しい限りです。直前、頭痛に襲われて断念しそうになったけど、無理してでも行った甲斐があった。その節は有難う桐堂。

出演がロシアの劇団ということなので、勿論台詞はロシア語でした。舞台の左右に字幕がありましたので言葉の壁は突破いたしましたが、何せ原作がシェイクスピア。かの、装飾過多な多量の台詞が、時間の関係もあったとは思うのだけれど、随分減らされて減らされて、字幕ともなると必要最低限ですからね。これに関してはやっぱり物足りない感じはしましたが。

でもねえ、さすがに英語もままならない観客にロシア語で捲くし立てられてもついていける筈が無く。役者が話すたびに左右に散る客の視線や頭がさぞ気になったことだとは思うのだけど、その辺は慣れていたりするのかな。

茶色い髪や薄い瞳が居並ぶ中、次女のリーガン役だけは、来日前に骨折だとかで急遽(?)日本人が代役を務めておられました。三島景太さんだそうですが、わかる人にはわかるのかな。ロシア語が闊歩する舞台で、ときたま日本語が聞こえてくると酷く安心感がありました(笑)言葉が違うということで、演りにくかったりはしないんですかね?

舞台は小さな箱のような中で、奥の方には扉なんかもあったりして、その開いている扉の間々に役者さんが並んだときには、まるで飾り時計の人形のようでした。リア王と、長女、次女、三女ですが、三姉妹が全て男の方で、しかも長女と次女には髭!があったんですよ。最初、この四人が前に出てきたときは、三姉妹はいずこ?と半ば本気で思いました…。が、呉川は男優さんが女性を演じるのは大好きです。野太い声で可愛らしい台詞を言うのが楽しくて仕方がない。

三女コーディーリアの出番はかなり少なかったですね。フランス軍のイングランド上陸場面が殆どなかったからでしょうけど。初っ端にちょろっと台詞があった後は国を追い出されているし、最後に死んで登場だからほんとに僅か。端折り方にもよるんだろうけど、ある程度原作の知識がないと場面転換とか何がどうなっているんだとかよくわからないと思う。さらさらっと話が進んでいっていたから。
先ず、誰が何役なのかを把握するので精一杯。やっぱり、言葉が違うと大変ですね。役者を観ていたいんだけど、台詞も気になる。字幕で確認しないと場面についていけない。

真ん中くらいで役者さんが王を中心に並んで、音楽に合わせて腕や手の動きだけで何かを表現していました。曲に合わせて、踊っているようにも見えるんだけど、動くのは両腕までで、指の先まで神経を尖らせて集中していましたよ。あれは観ていて面白かった。一人一人動きが違うからね、目移りするっていうか。
それにしても、音楽の音はでかかったよ。悪くいうと煩かったかなあ。ちょっとね。音量をもうちょっとおとして欲しかったというのが本音。

エドガー役の男優さんがかっこよかった!オーランド似に見えました。彼が気になって仕方なかった。顔見てた(おい)でもキャスト表の顔写真見ると似てないね…。
リア王役の人はさすが主演なだけあって、うまい!(そうでなきゃ主役やってないって)気が触れたときの演技とかね、滑稽なんだけどどこか哀れな感じでね。気が触れるといえばエドガーもなんだよな。車椅子に乗って走り去っていったときの足の動きが気になって。綺麗に爪先まで伸びた足だった。

看護婦さんの行進は何を表しているのかがはっきりしなかった。何だったんだろうあれは。結局、言葉のせいなのか。歌っていたんだけれど、その歌詞までは字幕に出なかったから。

それにしてもよく唾が飛んでましたよ。凄まじく。客席までは届きませんでしたけど、これが掛かっていたら、以前にメデイアを観に行ったときに水を拭かれた以来の快挙でしたが(笑)

最後に鈴木忠志氏本人も舞台に現れてびっくりの一時間半でした。



結論。
言葉がわからない場合、原典を読んでから行きましょう(次はそうするよ…)





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