加藤のメモ的日記
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2015年09月16日(水) サウダージ あの日を旅する

1975年 あの事件、あの見出し

「紅茶キノコ」ブーム 1970年代に怪しく浮かんだキノコ

1970年代回顧の懐かしのネタ定番といえば、紅茶キノコだ。口コミに乗って大ブームとなった。私も一度だけ口にしたことがある。知人の家に行ったとき、見せられたのだ。大きな広口瓶が茶色の液体で満たされ、クラゲみたいな不気味な物体がプカプカ浮かんでいる。なんじゃこれはと叫ぶ私に知人は「飲んでみろよ、健康にいいんだぜ」と知人はコップにすくってくれた。一口飲むと、酸っぱいような甘いような、苦いような変な味がする。

1975年6月10日付の新聞に<「紅茶キノコブーム、効果は疑問>の見出しが躍る。紅茶キノコはモンゴル発祥の健康飲料だ。現地で栽培されたゲル状の塊を紅茶に漬け込んで繁殖させる。実際はキノコではなく、産膜性酢苑酸菌のセルロースゲルだという。これを株分けしてもらって自宅で「繁殖」する作業がなんだか”秘境的”な愉しみでブームを加速させたと思う。噂の紅茶キノコを家でこっそり飼っているという感覚だ。通販で子供たちにブームとなった「シーモンキー」とも近い。珍しい上に「健康にいい」という年配の人々にとってのセールスポイントも大流行の理由だろう。

1974年出版の『紅茶キノコ健康法』がベストセラーになったのが大きい。当時は『日本値没』や『ノストラダムスの大予言』が売れ、映画『エクソシスト』が大ヒットした。スプーン曲げやコックリさんが流行した。いわゆるオカルトブームだ。石油ショックで高度成長が頓挫して、低成長下の1970年代半ば、先行き不透明でオカルト的なパワーに人々が惹かれる世相に。プカプカ浮かぶ怪しい紅茶キノコの姿がよく映える。それにしても紅茶キノコはどこへ消えたのだろう。いまだに飲んでいる人はいるのか?怪しげで、不気味で、不確かで……。紅茶キノコは1970年代そのもののような気がした。



『週刊現代』6.20


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