加藤のメモ的日記
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これから第一章から第四章まで、中東イスラム国家をめぐる旅に出ようと思う。この旅路において我々はそれぞれの国の宝石箱を開き、歴史を調べる。摂りだした宝石の輝きには、血みどろの紛争と戦争の影が映っている。そのイスラム社会で過去に起こり、現在起こっている紛争を知るには、イスラムについて書かれた良書だけを読んでも理解できない。彼らの土地に侵入し、彼らを欺き、彼らを苦しめた相手が誰であるかを知ることが、いま何よりも必要である。
すでに現在、アメリカは傲慢で間違っている、との意見が世界中に蔓延している。しかしその国民を誰が誘導しているかが問題になる。大統領ではない。多くの識者が、国家あるいは組織によって、事件の解決を試みてきた。が、歴史の内部で大きな事件を動かしてきたのは、あらゆる経済活動がそうであるように国家という抽象的なものではない。すべての国に、国家ではない生き物として、有数の個人がある。その個人が動いて、このような事態を生みだしてきた。その個人の追及をせずに、アメリカが憎い、アメリカは間違っている、イスラム教徒が憎い、イスラム教は間違っている、これでは知識に進歩がない。
第一章では、入り口に最大のパレスチナ紛争がある。数千年来そこに住んでいたパレスチナ人は、1948年のユダヤ人国家イスラエルの誕生によって追い立てられ、半世紀後の今も自分の国を持つことができない。アメリカの仲介によって、二度にわたる中東和平が語られながら、実際にはパレスチナ人はずっと欺かれた来た。国連は、イスラエルに対して、たびたび占領地からの撤退を決議し、ユダヤ人の占領地入植を禁じながら、パレスチナ人の都である東エルサレムは、ユダヤ人によって占領されたままである。イスラムの聖地は公然と冒瀆され、他人の領土であるパレスチナ自治区にイスラエル軍が侵入して、畑を戦車で踏みにじり、住宅を破壊し、住民には日常の通行さえ自由が許されない。
それに抵抗するゲリラ戦を試みれば、事情を無視する国際ジャーナリストによって、テロリストの汚名を着せられる。和平を公然と否定し、パレスチナ国家の樹立を否定するイスラエルのアリエル・シャロン首相は、すでに1982年にパレスチナ難民を虐殺した犯罪を問われてきた。アメリカではユダヤ人ロビイストが強い圧力をかけて、次官クラスの官僚が歴代のホワイトハウス大統領を自在に操ってきた。この問題を放置した最大の責任は、国連にある。日本人もまた、国連加盟国として重大な倫理的責任が問われなければならない。
第二章では、世界最大の石油埋蔵量を誇るサウジアラビアの砂漠を訪れる。そこにある史実は、『アラビアのロレンス』に描かれた物語とは大いに異なる。イギリスを欺きながらアメリカのスタンダード石油トラストとテキサコが広大な油田地帯を獲得し、アラムコという虚像の如き石油会社を設立して第二次世界大戦中に軍事基地を建設した。世界最大の建設会社ベクテルとCIAが暗躍して死の商人アゴナン・カショウーギを創りだし海運王オナシスと日本のアラビア太郎と一匹狼ポール・ゲッテイーが、敢然と彼らに挑戦した。石油相ザキ・ヤマニが活躍したOPEC大動乱時代を経て、現在もまだサウジアラビアとアメリカは、油田と原油価格をめぐって激しい戦いを繰り広げている。
建設富豪ビンラディン・グループに続いて、サウジ大富豪スリマン・オラヤンとビンマーフーズが台頭し、イスラム金融がアメリカのウォール街を一夜にして崩壊させることのできる資金力で投資を続けているのである。この動乱の時代を貫くのは、アラビア半島を征服したサウジ王国建国者イブン・サウドの哲学である。
第三章では大産油国イランとイラクに侵入したイギリス人と、アメリカ人の撤退と憎悪の歴史をみる。アルキメデスの原理と蒸気船の発明が石油タンカー時代を生みだし、ロイター男爵がペルシャ帝国銀行を設立したと見る間に、アメリカのメロン財団が動き、イギリスのロイド財閥とベアリング、ブラザーズが動いた。世紀の秘密カクテル”赤線協定”によって預言者直系のハーシム家を自在に動かしながら、チャーチル一家は地底に穴を掘り始めた。やがて、その閨閥に入る鉄道王ハリマンがテキサス州のブッシュ大統領家を育て上げ、大富豪ハワード・ヒューズやベーカー法律事務所を中心に、壮絶な油田争奪戦を展開した。P29
『世界石油戦争』 広瀬 隆
最後のお願いは「お酒が飲みたい」でした。
家族が見守る中、大島が静かに息を引き取ったのは2013年の1月15日。翌日から私は18年ぶりの舞台に出演することになっていて、最後の舞台稽古が19時から始まる。大島と一緒の車で家に戻り、布団に寝かせて、最後を迎えられる準備をして、劇場に向かいました。大島は私のために日を選んでくれたのかなと思っています。
あとで看護婦さんに聞いたのですが、その日の朝、大島は「ママ〜、ママ〜」と叫んでいたそうです。それが最後に発した言葉。昔からあの人は何かあるたびに私を呼んでいましたからね。虫の知らせがあり、お別れのために私を呼び寄せようとしたのでしょうか。
大島が逝ってから早いもので1年近く経ちますが、夢に出てきたのは一度だけです。熱海の海沿いの喫茶店で二人でお茶をしている夢。それは若い頃、映画の撮影の天気待ちで行った喫茶店の情景でした。当時、大島は助監督、私は新人女優。たった一度、夢で会えたのが、何でこの場面なのか、理由はよくわからない。人間の記憶って不思議です。
人生をやり直せるなら、もう一度大島と結婚したいですね。ただ、最後の17年とは違う生活をしてみたい。ずっとリハビリの日々でしたからね。大島が亡くなって3カ月ほど経った頃ですが、自由が丘のレストランで食事をしていた時、ふと老夫婦の姿が目に入りました。
御主人はビールを飲み、2人で楽しそうに食事をしていた。まるであの時の熱海の喫茶店の私たち二人みたい。その姿を見て、「私が求めていた幸せは、これだったんだなぁ」と気づきました。そう想うと涙が出てきました。叶わぬ夢ですが、なんてことのない日常をあの人と過ごしてみたかった。大島が亡くなって以来、涙を流したのはこの一度だけです。
『週刊現代』1.4 小山明子
| 2014年08月26日(火) |
現実に目をつむる朝日 |
朝日は「そもそも海外メディアが、首相をタカ派と取り上げるケースも少なくなく、安倍政権の安全保障政策に携わる有識者の一人は『本当に問題だ。靖国参拝に続くミスだ』と強い懸念を示した」とも強調する。だが、タカ派は中国共産党と習近平国家主席ではないのか。彼らのあくなき軍拡と南シナ海、東シナ海での現実の行動を見れば、本当に問題なのは中国ではないのか。朝日はなぜ、現実を現実のとおりに見ないのか。
朝日は海外メディアが首相をタカ派と捉えていると、首相に批判の矛先を向けるが、そのイメージは朝日主導で形成されたのもではないかの。先に成立した特定秘密保護法について、昨年8月から今年1月末までに、朝日は反対の社説を26本、天声人語子は10本のコラムを書いた。だが、内容は次のようにほとんど的外れである。「米軍基地や原子力発電所などに関わる情報を得ようと誰かと話し合っただけでも、一般市民が処罰されなねない」(2013年11月8日、社説)
「普通の市民の暮らしをめぐる調査活動も違憲となりかねない。法案そのものが社会を委縮させてしまう」(同月6日 社説)天声人語子が社説に輪をかけてあおる。「秘密法に、暗がりからじっと見られているような社会はご免被りたい」(12月11日)「戦前の日本に逆戻りすることはないのか。心配が杞憂に終わる保証はない」「安倍政権の野望が成就すれば、平和国家という戦後体制(レジーム)は終わる」
日本と多くの価値観を共有する欧米諸国も有する、情報機密法を日本が持ったからといって、どうして日本が戦後に逆戻りし、平和国家としてのあり方が問われるのか。噴飯ものである。そして、2月2日、「天声人語」は首相の「靖国参拝は信念による行動だったとしても、結果はどうか」と問うた。「政治は結果に対して責任を持つべし」というマックス・ウェーバーの言葉を念頭に置いた、朝日人子が好んで用いる責任倫理の考え方である。
すべて靖国神社を参拝した首相が悪いというわけだが、それなら朝日に問うてみたい。いわゆるA級戦犯の合祀後、歴代首相が21回も靖国神社を参拝しその間、中国も韓国も日本と比較的良好な関係を保っていたことをどう考えるのか、と。中国は1985年9月、明らかに国内の変化までも日本が負うべきと朝日は言うのだろうか。また、一体、どこを起点に日中関係悪化を分析するのか。
そうした考察を含まない朝日の観念論は、読者の判断を誤らしめ、結果として日本の進路をも誤らしめる。いま日本にとって大事なことは、日本が自力で国民、国家を守れる国を目指し、同時に日米同盟を確かなものとすることだ。そのために、何よりも朝日が否定する事柄をやり遂げること、安倍首相が揺るがずに前進し続けることが大事である。
『産経新聞』 櫻井よしこ
| 2014年08月24日(日) |
イチロー ヤンキースで不要論 |
もうヤンキースにはいられない―。これまで悩みや愚痴を口にすることのなかった「孤高の天才」が今、周囲にそうボヤいているという。打率・277、安打数70(8月14日現在)と調子が上がらず、控えに甘んじることが多かった今シーズンのイチローだが、そこに追い打ちをかけるようにウエイバー公示がなされたのだ。「ウエーバー公示とは、簡単に言えば『放出したい選手』を他球団に明らかにすることです。
通常、これは秘密裏に行なわれますが今回ヤンキースはわざわざ公表した。これはイチロー本人に自覚を持たせ、移籍を促したかったからでしょう。つまり彼は『お前はもういらない』と球団から言い渡されたのです。今年で41歳になるだけに残された時間は少ない。獲得に動いた球団はあったのか。
「年齢に加え、推定6億5000万円の高年俸がネックになり、他球団は獲得に尻込みしています。すぐに移籍ということではなく、今季は控えとしてヤンキースに残るでしょう。移籍話はシーズン後だと思います。ただその際に、大幅減俸は免れません」(メジャーリーグ評論家の福島氏)
所属球団から不要だと宣告され、他球団からもロートル扱い。プライドの高いイチローだけに、「今期限りでバットを置くのでは」との声も聞かれるが、その可能性は低い。「彼にはあと188本に迫った『メジャー通算3000本安打』を目指すというモチベーションがあります。これを達成するまでは現役を続けるはずです」(前出の福島氏)
大記録を達成しての引退。イチローはそれを、慣れ親しんだあの球団で迎えたがっているという。「『最後はマリナーズで』。イチローはごく親しい人にだけこう口にしているようです。ただ、マリナーズ時代のイチローは、個人記録だけを追っていると批判され浮いていました。それだけに、マリナーズが受け入れてくれるかどうか…」(前出のジャーナリスト)己の野球道を貫いてきたイチロー。最後にそれが首を絞めることにならなければいいが。
『週刊現代』8.30
| 2014年08月17日(日) |
憲法解釈は私が決める |
選挙に勝ちさえすれば憲法解釈も思いのまま。集団的自衛権をめぐるそんな安倍首相の国会答弁に、自民党や改憲を主張する学者、内閣法制局長官経験者などからも大きな批判の声が上がっている。
歴代内閣の「日本国憲法のもとでは、集団的自衛権の行使は認められない」とする憲法解釈を改めようとする安倍首相。集団的自衛権を行使し、日本が攻撃されていないときでも海外でアメリカと肩を並べて戦争ができる国にしようとしている。
憲法解釈は「政府が自由に変更することができるという性質のものではない」というのが歴代政府の見解である。ところが安倍首相はこれに背いて「政府の最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任を持って…」(2014 2月12日、衆院予算委員会)と挑戦してきた。これには自民党総務会でも「その時々の政権が解釈を変更できることになる」(村上誠一郎元行革担当相)などと批判が相次いだ。
自民党の古賀誠元関助長も「立憲国として、とても考えられない」「普通だったら、予算委員会が止まるほどの大騒動」(16日の民放テレビ)内閣法制局長経験者も「選挙に勝てば法解釈は自由だということになれば、法律も裁判所も意味を持ちません。そんな国は世界にない」と。日本共産党の志位委員長は記者会見で「憲法の最高規範性を否定し、国家権力を縛るという立憲主義を乱暴に否定するもの。このような乱暴な憲法破壊論は絶対に許されない」
『週刊朝日』2.23
改憲論者の私も怒りを覚える 権力者のクーデター
私は憲法改正論者で、集団的自衛権の行使も認めるべきだと考えている。しかし、今回の安倍首相の解釈改憲論はあまりにも乱暴であり、怒りを覚えている。「集団的自衛権を解禁するということは、同盟国が戦争に巻き込まれた場合、無条件に助けに行くことを認めることである。このようなことが「間違っても海外派兵はしない」という趣旨で制定・運用されてきた憲法9条の下で認められるはずはない。それを首相の責任で解禁するなどという発想は、そもそも首相の権限(責任)の範囲を超えており、法の支配、立憲主義を無視する暴挙である。
昨年の「96条先行改正論」、今年の「集団的自衛権解釈解禁論」はいずれも、政府の独断で憲法を迂回しようとする、憲法無視の姿勢で一貫している。早く退陣させなければならない。今回の「集団的自衛権解釈解禁」では何よりも、安倍首相の憲法観が問題である。自民党の2012年の改憲草案では、憲法尊重擁護義務を、現行の「公務員」から「全国民」に広げた。これは、もともと国民大衆が権力を規律する規範である憲法を、権力者が国民を統制する違反に逆転することで、いわば権力者がわからのクーデターに等しいのである。
首相は「憲法とは国家権力を縛るものだという考え方は、王権が絶対権力を持っていた時代の考え方だ」というが、それは、近代憲法の成立過程、立憲主義を知らない決定的な間違いである。王権が絶対的な権力を持っていた時代には、王権はその背後に神が存在することを根拠に、一切の法的規制を受けていなかった。だから絶対なのである。ヨーロッパでは、近代市民革命で民主化された後、本来的に不完全な存在である人間が預かる権力が乱用されないよう枠をはめるために憲法という法領域が生み出され、今日に至っている。
近代以降の民主国家では、権力者が権力を恣意的に乱用することがないようにするために、主権者国民の最高意思として憲法を定め、それを権力者に対する行動の枠として与えた。これは単純な多数決で越えてはならないものである。
抽象的に書かれている条文には、当然に解釈の幅がある。そのため日本では、国会が法律を制定する際、利害の調整が優先される政治の場で憲法が軽んじられないよう、衆参両院にそれぞれに法制局が設置され、議員たちに対して専門的な助言を行なってきた。同様に、内閣にも法制局が設置されている。内閣の仕事の範囲内で憲法解釈を定め、変更する場合の形式的な責任者は首相であることは当然だが、その決定過程で法制局の専門的助言を真摯に効くべきことも当然である。
慶応大学教授 小林 節
『週刊朝日』2.23
幼馴染から預かった子供を育てる代理母。人の成長の不思議と「生」を見つめる小説
一度は付き合ったこともある幼馴染の男が、互いに40歳になった頃、ふいに現れて一歳にならない男の子を預けていく。その子の母親は交通事故で死んだという。働いて必ず迎えに来るから、と言い残して男は行方をくらました。そうやって「山尾」(やまお)が「わたし」もとにやって来て10年―。
そんな発端で「わたし」のなさぬ仲の代理母生活が始まった。腹こそ痛めていないけれど、10年も育てれば立派な母親。彼女を「かあちゃん」と呼ぶ息子は、なぜか「わたし」に似てきて、しかも未知の「オトコの子」らしさを発揮し始める。育児はほとんどの母親が普通のことのようにやっているが、本当は驚異の連続のはずである。
目に見えない階段を少しずつ上がっていって、やがて別人のように変化していく不思議。じっと物思う頭の中には何が渦巻いているのか。血肉の結びつきにもたれられないゆえに、「わたし」は身近な異人のように息子を見つめ続ける。その視線は同時に、彼女自身にも向かってくる。
実は預かったとき、男は大金を託していった。それを彼女はわずかしか使っていない。金銭と引き換えに委託された「仕事」にしたくないという意地だったろう。息子の未来と一緒にその使い道も据え置かれている。もう若くはない自分が、いつか息子と別れる未来でもある。戸籍上は「同居人」でしかない仮の息子。寝息を立てる山尾を眺めながら「わたし」はこう思う。
〈子はみんな。誰か特定の女の腹から生まれながら、そして一応は。どこか特定の家に繋がれた家畜のような顔をしながら、でも誰にも、どこにも所属しない、落ちてきたもの、捨てられたもの、誰のものでもない者、なんじゃないか〉そう「たまもの」なのである。この人の世からもたらされ、人の世に返す「たまもの」。しかし、だとすれば私たち自身の生もまたそうではないか。
『たまもn』著者 小池昌代 1959年生まれ。小説家・詩人。小説 「タタド」で川端康成文学賞、2010年、詩集『コルカタ』で荻原朔太郎賞受賞
『週刊現代』8.2
| 2014年08月09日(土) |
「反日」の真実 �� |
日本にとって再び悩ましい夏がやってきた。戦後69年もたって、いまだ中韓で喧しい(かまびす)歴史問題。
■中国が中台一体化の道筋として描いているのは「まずは経済から」という方法です。そこで2010年に中台間のECFA(両岸経済協力枠組み協定)が締結されたのに引き続き、今度はサービス分野に関する中台の自由化を進めようと思ったら、中国に対する警戒感から台湾中が大騒ぎになってしまった。経済的な融合も簡単には進みそうもない。
○中国は今、クリミアの事例を熱心に研究しているはずです。ウクライナの一部だったクリミアで住民投票をしたら「ロシアに編入してほしい」という意見が多数を占めた。そこでロシアはクリミアを編入し、アメリカらもEUも反対はしたけれど、武力介入はしませんでした。台湾の人々が「中国への復帰」を表明すれば、なおさらアメリカの軍事介入は難しい。これが最も理想的な道筋です。中国はそのシナリオを一生懸命考えているはずです。
中国共産党は崖っぷち
■一方、中国国内に目を向けてみると、金看板だった経済成長に明らかに陰りが見え始め、習近平政権は非常に厳しい現実に対処せざるを得なくなってきています。実は習近平が国家主席に就いてから中国には4つの大変化がありました。一つは、以前は集団指導体制だったのに、完全な習金平ワントップ体制になったこと。二つ目は、前例のない反腐敗闘争を展開していることです。三つ目は、昨年11月の共産党の重要会議「三中全会」で打ち出した大きな改革案です。経済政策だけでなく、地方政治から司法権を取り上げる改革案も含まれています。そして四つ目が、事実上の戒厳令とも言えるほどの厳しい言論弾圧。四つの変化は、いずれも中国共産党が八方塞になり、体制は存続の崖っぷちにあるという危機感を抱いたことが原因です。経済の成長も見込めない、社会問題は山積するばかりでは、国民から見放されてしまいます。
○改革開放を掲げて社会主義市場経済を進めてきた手法が賞味期限を越えつつあるのは間違いありません。そこで中国共産党は、一刻も早く次のビジョンを示さなければならない。おそらくそれは、共産党でありながら共産党の政策の根本の部分を捨てることになるはずです。捨てに共産党のアイデンティティの7割ぐらいは捨てていますが、残りも捨てないといけなくなるでしょう。
■共産党内で上から下へ指導する単線型ガバナンスの仕組みが社会の進歩についていけてません
○共産党の統治のポイントは、「党が国家を指導する」ところにあります。実は中国共産党の幹部教育機関では、連邦制や多党制を含むあらゆる政治的オプションについて、10年以上前から研究を進めています。党が国家を指導するのでない政治体制のオプションも、彼らは選択肢にしているという。習近平が本当に国のことを思うのであれば、共産党より中国を選ぶのでなければならない。 さらに言えば、そのきっかけとして台湾問題が使われる可能性があると私は見ています。台湾に一定の政治的独立を認めつつ、中国に復帰させる。台湾が戻れば、中国国民は熱狂する。一国二制度は、事実上の連邦制なのです。中国共産党引き続き存続するにしても、国家が第一で党はその次という原則を明確にすれば、未来に展望が開けるから国民の不満も収まるはずです。 ネックとなるのは、中国共産党の過去の成功体験が強すぎること。そして党の幹部が失う利権が多すぎることでしょう。でもこの改革をやり遂げないと、習近平は単なる凡庸な指導者として、歴史の舞台から消えていくでしょう。 一方日本は首脳会談を開くこと自体は目的ではないのでジタバタしなくてもいいと思います。阿部首相が習金平と会えなくたって別に何の問題もないでしょう。
■習金平から、見ても阿部首相との会談はリスクがある割にメリットが不確かです。首脳会談の後、阿部首相に再び靖国参拝されたりしたら習金平は大打撃です。他方、会談に応じたら阿部首相の対中批判がやむか。阿部首相は中国の強硬姿勢に変化が見えない限り批判を続けるでしょう。日中双方は首脳会談より互いにメリットのある閣僚会談などを積極的に進めればいいと思います。北京アジア太平洋経済協力会議では、首脳会談外にもいくつもの閣僚会談がありますし。
○軍事的には「中国が強硬に出れば日本が引くだろう」と誤解を与えて軍事的冒険主義に出る誘惑を中国に抱かせないことが重要です。そのためには、日本も即応する体制があるぞ、と示さなければなりません。これが結果的に、不要な軍事衝突を回避することにつながります。
■リーマンショックででかい経済が一気にしぼんだとき、唯一中国だけが4兆元(約58兆円)の緊急財政支出で劇的な経済回復を果たした。この明暗の好対照で、中国は自信過剰になり、日本も中国の力を過大に評価し、恐れました。でもそれは多分に幻想でした。すでに中国も日本も互いの勘違いを修正する段階に入っていますが、修正が済むまでは日中関係は不安定さが続くでしょう。その間、偶発的事態を予防する双方の努力が必要です。
■津上としや 経済産業省北東アジア課長を経て独立
○橋爪大三郎 東工大名誉教授
『週刊現代』8.9
| 2014年08月07日(木) |
ロシアがマレーシア機を撃墜 |
無慈悲すぎる独裁者
ふざけるなプーチン、世界はお前のものじゃない
全世界から非難を浴びてなお、この男は「無関係」を主張し続けている。一瞬にして奪われた300人の命。プーチンは今、犠牲になった彼らまでも、己の野望のために利用しようとしている。
いませ全世界の怒りが一人の男へと向かっている。男の名前はウラジミール・プーチン。これまで国際情勢を思うままに動かしてきたロシアの独裁者は、マレーシア機撃墜事件の責任を一切認めず、到底納得できない「ウソ」を吐き続けている。「アメリカ、そして西欧諸国は現在、ロシアを痛烈に非難しています。これまでロシアがウクライナの国内情勢を不安定にしてきた結果として、今回の惨事は起きた。それにもかかわらずプーチンの言動はあまりにも無責任すぎる。無慈悲かつ約束を守らない彼の姿勢を見て、アメリカはロシアと対決せざるを得ないという決意を固めています」(ハーバード大学政治学教授・オーレル・ブラウン氏)
マレーシア航空17便を襲った悲劇は、ウクライナ上空を横切り、ロシア領内にさしかかろうとしたそのとき起きた。ミサイル命中の衝撃と共に、機内に巻き起こった爆風。乗客のほとんどはその熱に焦がされた。爆風から逃れた人達も、四散する機体とともに上空に放り出され、気圧差により気絶。意識を失ったままバラバラと落下し、猛スピードで地面へと叩きつけられた。全てが一瞬の出来事。彼らには悲鳴を上げる暇さえなかっただろう。
旅客機に乗っていたのは、約300人の民間人。その中には著名な研究者を含む、およそ100人の「第20回国際エイズ会議」への参加者がいた。待ちに待った夏休みを迎え、アジア方面への家族旅行に出かける、80人以上の子供たちもいた。プーチンは撃墜に関与し、彼らの未来を奪い去った。その罪はあまりにも大きく、怒りに燃え上がった国際世論は容易に収まりそうもない。
日本株は暴落へ
筑波大学教授で、ロシア政治が専門の中村氏が言う。「現在の状況は、冷戦が終わった‘89年、それ以降の世界の最大の危機といえます。国際社会のパワーポリティクスを巻き込んだ、初めての闘いになる。これはもはや、第3次世界大戦の前夜である、といっても過言ではない」そうなれば当然、日本は日和見を続けていられるわけもなく、この争いの真っただ中に巻き込まれていく。外交ジャーナリストの手嶋氏は語る。
「安倍政権としては、北方領土解決の糸口を見出すため、なるべくロシアと明確な対立はしたくない。しかし国際社会の反ロシア体制が固まれば、そうはいっていられないでしょう。同調しない、ということはなかなか難しい」現に安倍政権は今、アメリカから「ロシア制裁に同調せよ」と、強い圧力を受けている。かってのイラン戦争のように、日本に対して「ショー・ザ・フラッグ」(旗色鮮明にせよ)と求めているのだ。その結果、安倍首相が進める集団的自衛権の「拡大解釈」適用の第1号が、このウクライナ派兵になる可能性も出てくる。
そして、世界的に戦火が拡大していくことになれば、グローバル経済は完全に崩壊する。まず、ロシアから全需要量の3分の1の天然ガスを輸入しているEで急激に景気が悪化し、その余波を受け、現在史上最高値付近にあるアメリカの株価も、奈落の底へ暴落していくだろう。
「そして一番割を食うのは日本です。アメリカ、ロシア、EU、すべての通貨が信用できなくなった時、最も安心して運用されるのは日本円しかなくなる。すると、必然的に円高になり、これまで安倍首相が躍起になって進めてきたアベノミクスは水泡に帰す。大不況の時代にいきなり逆戻りするのです」(前出の中村氏)世界の歴史は、たった一発の銃弾によって激変してきた。今度は300人の命を奪った「プーチンのミサイル」が、世界と日本の命運を一変させることになるかもしれない。
『週刊現代』8.9
なぜこんなに憎まれるのか
9月11日には、日本が尖閣諸島を国有化して1周年を迎えることで、中国は日本非難のボルテージを上げてきている。『北京日報』(9月2日付)が「敗戦国日本が第二次世界大戦後の国際秩序に公然と挑戦している」という批判記事を掲載してのを皮切りに、日本批判キャンペーンが始まった。韓国でも、安倍政権を批判することは、右派左派を問わず共通している。前出のジャーナリスト、金哲氏が語る。
「7月末に麻生総理のナチス発言が飛び出して以降は、ナチス政権と安倍政権は同義語となり、安倍首相とヒトラー総統が同義語になりました。『ナチス式再武装』『ヒトラー式憲法解釈』などと連日、韓国メディアは報じています。かってこれほど憎しみを持って語られた日本の首相はいません」
韓国では、「日本のイプシロンロケット発射は、大陸間弾道弾(ICBM)に転用する目的である」「日本政府が国連の墦基文事務総長の歴史認識を批判したのは国連の転覆を狙っているからだ」といった報道が、公然とまかり通っている。一方、中国でも「日本が1000兆円を超える負債を発表したのは『巨額負債に苦しむ日本』というお涙頂戴の芝居を打って国際社会を欺くためだ」「安倍首相が憲法改正に固執するのは、アメリカへの再戦を準備するためだ」といった偏向報道が見られる。
日本は、これほど偏見に満ちた隣国と、どう付き合ってゆけばいいのか。アメリカの東アジア研究の権威であるハーバード大学のエズラ・ヴォーゲル名誉教授がアドバイスする。「日本はとにかく、東アジアを不安定にさせないことを心掛けるべきです。尖閣諸島の問題が『蟻の一穴』となり、日中戦争に発展することだってないとはいえない。東アジアの安定は、日本の国益にも直結するのです」安倍政権の面々は、周辺諸国への挑発的な言動は控え、無用な争いは起こさないようにすべきだろう。
『週刊現代』9.28
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