加藤のメモ的日記
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福島原発の汚染水がいつカナダに流れ着くのか?安倍内閣は報告せよ!
…表彰式のパーティーで、何故あんなに220ヤードも飛ぶのかと聞かれ、毎日欠かさず1時間やるストレッチと、腹筋120回、背筋240回と答えると、皆黙ってしまう。これだけは議員時代も欠かさなかった。75歳以上が相手だと、ドライバーで30〜50ヤードは超してしまうので、2打目のクラブが違いすぎてしまう。極端な場合、相手がウッドで、こちらがショート・アイアンということもあった。
これからも運動を続けるのかというから、そうすると答えると、「日本人は根気がいいからなぁ」と誰かが言う。するともう一人が続けた。「そういえば、フクシマの汚染水、まだタンクに溜めているんだろ」「いや、それが最近漏れ出しているんだよな」話はいつの間にかフクシマ第一原発に移ってしまった。いまや欧米人には、フクシマとはトーキョウウやキョウトと同じぐらい有名な地名である。
皆驚くほどよく知っている。新聞、テレビ、ラジオに加え、インターネットでもニュースは流れてくる。特に放射能に汚染された水が、太平洋に流れ出しているというニュースは、カナダ人にとって他人事ではない。「あの津波で流れ出したデブリ(瓦礫や残骸)が、たくさんん西海岸に流れ着いているだろう。汚染水はどのくらいでこちらに着くのか。その成分は変わらないのか」「それは日本政府の責任で研究、発表すべきだろう」
安倍首相は今頃になって「汚染水対策は、東電任せにせず、国として緊張感を持って、しっかり対応してゆく」と言っている。いつもの官僚的な、抽象的な物言いである。危機感とか緊張感とかより、外国では具体的な対策を求めている。つまり、汚染水は完全に防げないのだから、どのくらいの水が流れ出したらどうなるのか。アラスカやアメリカ大陸、ハワイ、東南アジアにどのくらいの影響があるのか。東日本で獲れる海産物はどうなるのか。日本海はどうなるのか。韓国はすでに懸念している。
阿部さん、21世紀ですよ!抽象的な表現より、データの発表、対策を外国は待っている。そして日本国民はもっと待っている。そのうえで、東電の破綻や国費投入を図るのが正解だろう。
『週刊現代』9.21
卒業して何年たっても、時折試験の夢を見る人は多いだろう。その中で満点の答案用紙をあげる人は幸いである。私は毎回問題が解けず、焦りのうちに目覚める。また日中、あっ、もう宿題はしなくても良かったんだ、と我に返り安心したりする。学校時代に現実に体現したことの再現だから、単純な話だが、それにしても、いつまでも追いかけてくるのかと恨めしい。
入学試験問題を自前で作らず、あるいは作ることができず、予備校などへ外注する大学が増えつつあるという。出題担当者が寝汗をかくほど、悩む苦労が軽減されるなら結構だが、作問を学外に任せる大学とはいったいどんな了見かと、試験恨めし組はつい言いたくなる。いやそれは抜きにしても、いくら入試多様化で煩雑だ、忙しいからといって入試作問が外注となると、入学時の教育や試験、果ては卒業認定もしっかりやれるのか、と一事が万事的な疑念もわこう。入り口だけの問題でも、青臭い建前論でもない。
試験は学外のプロがそつなく作ってくれるものに頼って事足りるものではない。あえていえば、たとえ正解をつかみかねる「難問・奇問」と批判されようと、ほしい学生へのメッセージとして自ら問題を作り、示すべきではないか。大学に限らず、入試改革は明治以来の教育論争史の常連だが、戦後、進学率が高まり、競争が過熱すると文部省は、「難問・奇問」の是正に乗り出した。
1979年からの共通一次試験、1990年からの大学入試センター試験もそれが主な目的の一つといえる。実際、マークシート方式の択一回答ではややこしい問題は扱えない。同省は学習指導要綱を物差しに中学、高校入試の「難問・奇問」も抑制した。それは正しい。しかしなあ、と思うのだ。
190年代に「ロシア帝国を滅ぼした人名」を問う高校入試問題を文部省が例としてやり玉に挙げたことがある。「正答不明」というのである。歴史学者も大いに困惑するはずのこの問題の意図は知らないが、革命家、政治家、文学者……と名を連ねる秀才君もいたかもしれない。だが「家族のパンを求めてデモに踏み出した無名の人、たとえばイワンとか」と書いた受験生は排除されるのか。
試験の難しさと真骨頂はこういうところにあるのではないか。外注模範問題ではこうはいくまい。出題・採点者が答案を通し受験者の思念と向き合い、すくい取る真摯さと力。少子化で「志願者全入時代」の大学の現実に、甘すぎる夢想か。
『毎日新聞』10.1
世界的科学者が目撃した原発汚染水の海域と、放射能汚染の実情
今この瞬間も汚染水は海へと漏れ続けている。海はどれほど汚染されているのか。魚は食べていいのか。他にいかなる悪影響を及ぼすのか、いまだ未知数だ。事態を究明するために世界の力を借りよう。
とても深刻な調査結果
「私たちのチームはこれまで4度来日し、原発から1�劼里箸海蹐泙廼瓩鼎い導た紊覆匹猟敢困鬚靴討い泙垢�、汚染水は漏れ続けています。いくら海水で薄まっても、魚がいる場所としては、福島の沿岸は最悪の場所です。残念ながらいくつかのシーフードについては、食べられるレベルではありません」世界最大規模の独立系研究所である、米国のウッズホール海洋研究所のケン・ベッセラー博士は福島近海の汚染状況についてこう語った。
福島第一原発の汚染水は、コントロールされるどころか、日々新たな問題が見つかっている。10月に入ってからも、高濃度の放射性物質を含む雨水がタンクから流れ出る事故があったばかりか、原子炉を冷やす為に使用した汚染水が新たに漏れていたことがわかるなど、次々と問題が発覚している。
こうした福島の現状は、世界から不安の目で見られているが、福島第一原発事故直後から、一貫してこの汚染水問題の調査にあたってきたのが、ベッセラ−氏だ。ベッセラ−氏は研究者としてのキャリアの大半を、海洋中における放射性物質の研究に費やしてきた世界的学者。チェルノヴィリ原発事故の際にも、黒海の放射性物質の影響を調査・研究している。
福島原発事故でも事故直後の2011年4月、他の日本人研究者と連名で「福島原発から出た放射性物質の海洋環境への影響」という論文をまとめた。この論文は、世界で最も権威のある『ネイチャー』への掲載も決まっていた。ところが、日本の気象庁がベッセラー氏の記述は、風評を煽るとして削除を求めた経緯がある。つまり、ベッセラー氏は日本の役所が隠したい内容でも、科学者の良心に従って、その危険性を説いてきた反骨の科学者といえる。同氏は言う。
「私たちは研究所以外のどこからもお金をもらっていません。政府から独立した研究機関が調査することが重要です。日本政府はもっと海洋調査を真剣にやるべきだと思います」その後もベッセラー氏は、東京大学大気海洋研究所の西川教授や、ストーニーブルック大学教授で、海洋汚染の専門家であるニコラス・フィッシャー教授らとチームを組んで福島原発事故による海洋汚染の調査を続けており、直近では今年9月8日から14日まで、福島近海の海水サンプルの採取を行なったばかりだ。
一口に海洋汚染の調査というが、この作業は長期間にわたる地道なサンプルの採取と、分析のための莫大な時間を必要とする。ベッセラー氏は海水と海底の沈殿物の調査を担当している。「今回の調査では、異なった海域の海水のサンプルを100カ所で採りました。一つのサンプルにつき20リットルなので合計2トンです」20リットルでやっとセシウムのアイソトープ(原子)一つを検出するのに十分な量になる。一方、海水の沈殿物はあちこちの海底にチューブを差し込んで採取します。これは300箇所で集めました。今回は一週間、船に泊まり込んで作業しました。時には36時間ぶっ通しで働き、少し眠って、また8時間働くといったペースでした」
魚から放射能が出ている
調査の費用も、日本やアメリカの政府が出しているわけではない。彼ら研究者が自ら調達して行なっている。これも調査に伴う大きな苦労の一つだ。「海洋汚染の調査には、とにかく大変な時間と費用がかかります。今回のクルーズだけでも10万ドルはかかっている。さらに、一つのサンプルの分析につき数百ドルかかりますが、その分析が何百もあるんです」
試料は高感度のゲルマニュウム検出器で調べられるが、検出器の価格は、1台6万ドル。また、一つの資料のセシウムの方型を特定するのに24時間かかる。検出が難しいストロンチュウムなどはそれよりも時間がかかるという。そのため、資料が得られたらすぐ分析・評価とはならない。しかも調査は被曝の危険と隣り合わせだ。
「船では、ガイガーカウンターを常に携帯しています。サンプルを集めるときに、自分たちが安全かどうかを確認するには、常に放射能量をモニターしつつ作業する必要があります。危険は避けたいですから」分析結果は来年2月末の科学会議で発表する予定だと語るベッセラー氏は、「原発汚染水の海域」についてこう語る。「海洋汚染はコントロールされているという安倍首相の発言は理解できません。私から見れば、まったくコントロールされているようには見えない。海洋汚染自体は、人体へのリスクという観点から言えば、水泳しても大丈夫でしょう。しかし、魚介類の汚染は、魚にガイガーカウンターを当てるだけで検知できるほど高いレベルです。これは、食べても安全とはとても言えないと考えています」
では、その魚介類の放射能汚染の実情はどうなっているのか。魚介類の調査を行なっているフィッシャー氏は次のように言う。「魚の種類によってはかなり汚染度が高いと思われます。すでに海底の堆積物はいろいろな放射性物質で汚染されていることがわかっています。我々は5月と9月に福島近海で魚などを採取しましたが、今はまだ5月に採取した魚などを分析しているところ。9月に採取したものはさらに先になるでしょう。ただし、魚の放射能汚染は急に汚染濃度が下がることもなければ上がることもありません」ちなみに水産庁の最新データ(9月9日付)によると、福島ではアイナメ、イカナゴ、スズキ、ヒラメ、カサゴなどに出荷制限がかかっている。
政府の調査は信用できない
世界的な科学者チームが汚染水問題を調査してくれるとなれば、日本政府がバックアップするのが当然のように見えるが、それがないため、彼らの調査の方法は驚くほど原始的だ。「魚の採取は私の大学の研究生が行ないます。非常にローテクな方法です。つまり、毎日20時間、いろいろな場所でひたすら釣り糸を垂れるのです。こうして得られたサンプルを、今度はガンマ線検出器にかけるためにすり身に加工します。これに2週間。それで、やっと検出器にかけるわけですが、魚一匹を厳重に分析するのに5時間はかかるのです。
この機械は非常に高価で、我々が使えるのはわずか5台しかありません。予算がないので台数も限られているからです。研究は非常にスローで地味なもの。もし機械がもっとあれば早く分析して発表できるのですが…」(フィッシャー氏)
調査に手間がかかるうえ、予算が限られているために、時間も余計にかかってしまう。プランクトンの汚染を調べている西川氏も時間がかかるのは仕方ないと語る。「簡易的な検査ならそれほど時間はかからないでしょうが、ストチウムなどは時間がかかります。濃度が低い場合は、科学的に信頼できる値を得るまでにさらに長い時間がかかるのです。私は主に動物プランクトンに蓄積した放射性核種を調べていますが、現在の濃度レベルでは測定に時間がかかるのもやむをえません」
ただ、科学者たちが海水や魚、プランクトンの分析を慎重に進める一方で、9月25日から福島北部沖で試験漁が3カ月ぶりに再会した、という現実がある。タコやイカなど約5トンの漁獲物が水揚げされ、これらのうち、検査で「安全」とされたものは、東京・築地市場などにすでに出荷され、我々の食卓にのぼっている。この場合の「安全」とは一体どういった根拠に基づくのか。水産庁魚場資源課の担当者に話を聞いた。
「検査はまず、サンプルの魚のうち、人の口に入る部分を全てミンチ状にして、ゲルマニウム検出器などに入れます。分析にかかる時間は水産庁が委託している機関では、1キログラムを1時間ほどで測っています」この方法だとなぜ短時間で検査結果が得られるのかというと、セシウムの量だけを調べているからだ。それだけなら1〜2時間で結果が出せる。科学的には厳密といえないが、そもそもその魚が食べられるかどうかを調べるのに、何カ月もかけるわけにもいかず、セシウムの基準値以下なら人体に影響はないという厚労省の判断に頼るしかないのが実情だ。
しかし、ベッセラー氏は次のような懸念を明かす。「セシウムよりもストロンチウムの方が心配です。ストロンチウムは骨の中に入り、長期間にわたって残り続けます。2011年に比べて海洋のセシウムは減っていますが、ストロンチウムの量は50倍になっています」現に、タンクからの汚染水漏出事故では、ストロンチウムの量は50倍になっています」
タンクからの汚染水漏出事故ではストロンチウムが大量に海に流れ出たことが確実になっている。現在、市場に並ぶ福島近海の魚介類はすべてセシウム検査をクリアしたものだが、ストロンチウムは大丈夫なのかという不安を持つのは当然だろう。そうした不安を払拭するためにも日本はもっと柔軟になるべきだと、ベッセラ−氏は言う。「最も重要なことは、国際グループによる調査体制の構築です。世界各地にいるそれぞれの専門家の協力を得てチームを作る。日本だけでは解決は無理です。私も協力を惜しみません」政府はこの世界的科学者の声に耳を傾けるべきではないだろうか。
『週刊現代』10.19
| 2013年10月28日(月) |
みのもんたはなぜ嫌われるのか |
日本一、いや、生放送出演時間ではギネス記録を持つ、世界一のテレビタレントだった。しかし、栄華から一転、猛烈なバッシングを受けて出演自粛へ。日本国民の心妙にざわつかせる、この男は何者なのか。
「何をエラそうに」お前なんかに言われたくない、という国民的感情
「みの氏はいわば、周囲に咎める者もいない『みの王国』で生きてきました。そんな環境での過去の振る舞いが、今ご自身にはね返ってきている」こう指摘するのは、立教大学講師の遇坂氏だ。今月1日、みのもんた氏(69歳)の次男で日本テレビ勤務御法川雄斗容疑者(31歳)が、泥酔した男性のカバンを盗んだ容疑で逮捕された。3日に処分保留で釈放された。
「再逮捕から2日のスピード釈放。おそらく、すぐに被害者と示談を成立させたと思われます」(警察関係者)その後、雄斗容疑者は日本テレビを諭旨解雇となった。今後はみの氏が社長を務める水どーメーター会社、ニッコクが彼を引き取るのではないかと噂されている。
男性のキャッシュカードを奪いATMに直行するという幼稚な犯行もさることながら、取り調べに当初は黙秘を決め込んだが、再逮捕されてあっさり「完オチ」したことでも雄斗容疑者は失笑を買った。「みの氏はニッコクの顧問弁護士に依頼し、辣腕を集めて弁護団を組んだのに、警察を甘く見て完敗したのです。みの氏が雄斗容疑者に『微罪なんだから黙ってりゃ大丈夫』と言い聞かせていたことが、結果的に騒ぎを大きくし長引かせた上、警察を意地にさせてしまった。もともとあの息子に自分で取り調べの戦略を立てられるような頭はありませんよ」(警視庁元幹部)
加えて、みの氏本人も今年8月、、TBS系の朝の情報番組「朝ズバッ!」生放送中に、女性アナウンサーの尻を触る様子が放送され、セクハラを疑われていた。二男の不祥事とセクハラのダブルパンチで、芸能ニュースの見出しはみの親子バッシング一色に。「姑息な謝罪会見」「厳罰を科すべき」「つける薬のないバカ親子」「息子の諭旨解雇は大甘処分だ」「コネ野郎」これまで表面に出てこなかったみの氏への嫌悪感が、一気に噴き出して止まらなくなっているかのようだ。
ある芸能記者は言う。「みのさんは『朝ズバッ!』でも上から目線であらゆる人を切ってきましたからね。政治批判、官僚批判は毎日のこと。当然、失言も一度じゃなかった。今までいちいち問題にならなかったのは、歯に衣着せぬ物言いが『ウケている』とTBSもみのさんも思っていたからです。でもここにきて、一挙手一投足が叩かれている。こうした日頃の発言がそのままハネ返ってきているということでしょう」
「朝ズバッ!」で、彼がいかにエラそうな発言や失言を続けてきたかというと、まずはシアトル・マリナーズ所属ののイチローが2009年9月13日に9年連続200安打の記録を達成したとき、翌朝、みの氏はこう言った。「セコイよぉ。ちゃんと打たなきゃあ」内野ゴロを駿足でヒットにするイチローを、切って捨てたみの氏。番組には苦情が殺到した。
遡って2007年6月、ゴミ屋敷に住む高齢者の暮らしを取りあげたニュースでは、「私なら焼却処分にしますよ。ナパーム弾落として」という発言が「放火を推奨しているのか」と一斉批判。そして今回、改めて注目されたのが2008年7月、当時問題になっていた、大分県での小学校教員採用汚職事件に関するコメント。採用試験での不正について「コネで教員採用試験の点数を操作するなんて、ふざけるなと言いたい」
息子を2人ともテレビキー局に入れておいて、コネを批判するとは「お前が言うな」と言われても仕方がないだろう。今回の騒動以降も、みの氏はラジオで「南妙法蓮華経、南妙法蓮華経」「今日は記者さんの視聴率100%ですよ」「世間を騒がせたつもりは全くない。私が何をやったわけでもないし」などと、突き出た腹をことさら強調するかのように、上着のボタンを何度も開けたり閉めたり。シラッと開き直った発言を繰り返し、さらに一層の反感を買っている。
『週刊現代』11.2
国内最大級のデジタル家電と情報技術(IT)の展示会「シーテッJAPAN2013」が、10月1日、千葉市の幕張メッセで開幕する。東日本大震災以降は、太陽光発電などエネルギー関連の展示が増え「脱テレビ化」が進んでいたが、今年は電機各社がフルハイビジョンの4倍の解像度を持つ、4Kテレビなど、テレビ関連の展示にスペースを割いた。4Kテレビはまだまだ高額だが、2020年に東京で開催される夏季五輪に向けた景気回復を見込み、特需も視野にテレビの復権を狙う。
電気各社 2020年の東京五輪にらみ
パナソニックは、展示品のほぼ全てが4K関連商品となった。ブース中央に商品開発中の4K有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の視聴コーナーを特設した。55型ディスプレイ3台を集め、「先進技術による高画質向けの大画面4Kテレビに加えて、開発中の40型と比較的小型の4K テレビを展示した。「画像編集者などでのニーズが見込まれる。利用者のニーズに応じた商品開発が強みになっている。
ソニーは開発中の4K有機ELテレビを中心に展示し、近くに4K映像が録画できる業務用・一般用のテレビカメラも並べて展示している。プロから一般まで、4Kの映像を撮影して映すことができ、4Kが身近になってきたことを示す狙いだ。このほか、4Kテレビを未発売の三菱電機も開発中の4Kテレビを参考出品。「独自のレーザー光源による色鮮やかさが特徴」といい、今後市場動向を見ながら商品化を検討していくという。
国内テレビメーカーの生産体制
かって国内電機メーカーの花形だったテレビ事業は、今や各社の足かせだ。韓国、中国、台湾メーカーの価格攻勢は激しく、黒字を確保しているメーカーはほとんどない。収益性が高い50型以上の大型テレビや、高精密4Kテレビで劣勢挽回の機会を狙っているが、当面は工場の集約や人件費の削減で赤字の拡大に歯止めをかけざるを得ない状況だ。
国内勢のテレビ事業不振を象徴づけたのが、兵庫県尼崎にあるパナソニックのプラズマパネル工場の生産停止だ。尼崎工場は同社が2008年、薄型テレビの需要増を見込んで4000億円超を投じた巨大事業だが、その後の市況低迷で赤字が拡大、2011年度に生産停止に追い込まれた。それに続く大型投資だった同県姫路市の液晶パネル工場も、現在生産しているのはタブレット向けなどの中小型が大半だ。
シャープも2010年に最先端の液晶パネル工場を堺市で稼働したが液晶の「一本足打法」が経営を直撃した。自社で開発から組み立てまで行なう一貫体制を転換し、堺工場は台湾の鴻海精密工場との共同運営に移行した。ソニーも世界に9拠点あったテレビ工場を4拠点に削減し、日立製作所は自社生産から撤退している。ソニーは2013年4〜6月期に3年ぶりに黒字化を果たした。各社は既存のテレビの4倍の精密度がある4Kテレビで巻き返しを狙うが、韓国勢も市場投入済みで、再び価格競争に陥る可能性もある。
東芝 テレビ生産縮小 2013年度末に、自社工場は海外に一カ所
東芝は9月30日、海外3カ所にあるテレビの自社工場を。2013年度までに一カ所に集約すると発表した。メキシコ、ブラジルを除く中南米地域など十数カ国では販売も中止する。同社の薄型テレビ事業は、サムスン電子など韓国勢の攻勢で苦境に陥っており、2012年度まで2期連続で約500億円の営業赤字を計上している。拠点の集約などにより2013年度下期の黒字化を目指す。
ポーランド、中国、インドネシアの3カ所にあるテレビ工場のうち、需要が旺盛で効率的な生産設備があるインドネシア工場に集約する案が有力だ。残る2工場は海外企業などに売却する方向で調整する。これにより海外の従業員約2000人を削減する。
東芝は2011年度末に、テレビの国内生産から撤退し、中国など海外の電子機器の受託製造サービスに生産を委託する割合を拡大してきた。しかし欧州や中国を中心に薄型テレビの販売は頭打ちが続いており、世界売り上げシェアも2010年の5.7%から2013年1〜6月は3.3%に低下した。
2013年4〜6月期も薄型テレビ事業は、約100億円の営業赤字が続いており、同社は追加のリストラ先が不可避と判断した。生産拠点の集約により、5割強あった自社生産比率は3割に低下した。海外従業員に加え、国内でもテレビ事業の従業員1000人の配置転換を実施し、同事業の従業員数は2013年度末までに前年度の半分の3000人に絞り込む。2013〜2015年度の2年間で人件費を200億円削減する。東芝は世界100カ国以上でテレビ販売をしているが、販売地域の見直しにより、今後は需要が旺盛なアジアや中東、アフリカなどに注力する方針だ。
『毎日新聞』10.1
社会性のあるテーマに切り込んだスケールの大きな作風でベストセラーを生み出した作家、山崎豊子(やまさきとよこ 本名・杉本豊子さん)が10月29日、心不全のため死去した。88歳。大阪。船場の商家に生まれた。1944年、京都女子大国文科を卒業して、毎日新聞に入社。大阪本社調査部を経て45年、同学芸部に移り、副部長だった故・井上靖さんから新聞記者の手ほどきを受け、作家としての資質を見出された。
新聞社勤務の傍ら 、生家をモデルに10年を費やしたデビュー作「暖簾」(のれん)を1957年に刊行。翌年、大阪女の逞しさを描いた「華のれん」で第39回直木賞を受賞したのを機に、毎日新聞を退社し、作家に専念した。
パリを舞台にした「女の勲章」(1961年)の取材中に元同僚と結婚。旧家の遺産相続を扱った「女系家族」(1963年)、大学付属病院を舞台に医学界の暗部にメスを入れた「白い巨塔」(1965〜69年)をはじめ、閨閥政治と資本の癒着を追及した「華麗なる一族」(1973年)など、実地調査と取材に基づいて社会問題に切り込む長編小説を相次いで発表した。
その後も、シベリア抑留を扱った「不毛地帯」(1976〜78年)、日系二世の兄弟の悲劇を描いた「二つの祖国」(1983年)、中国残留孤児の数奇な運命をたどった「大地の子」(1991年)の戦争三部作で、社会派作家としての評価と人気を不動にした。1993年、「大地の子」などの印税をもとに「山崎豊子文化財団」を設立し、帰国した中国残留孤児の子供を援助した。日航ジャンボ機墜落事故を素材にして、200万部を超えるベストセラーになった「沈まぬ太陽」(1999年)の後、「山崎豊子全集」(全23巻)を2005年に完結させた。
1969年には、沖縄返還交渉時の密約報道事件をもとにした「運命の人」を刊行し、同年の毎日出版文化賞特別賞を受賞した。作品の多くが映画、ドラマ化され社会的な反響を呼んだ。新潮社広報宣伝部によると、山崎さんは週刊新潮で、連載小説「約束の海」を執筆中で、予定している第一部を20回分をすでに書き終えており、80歳を超えても続編の意欲を見せていたという。
「あなたはうんと詩を読んだらいいですね」。ある女性記者にデスクはこう勧めた。戦後間もない小紙の大阪本社学芸部、デスクはのちの作家・井上靖、女性記者とは同じく山崎豊子さんだった。のちに井上の代表的短編になる「猟銃」の原稿を発表前に読ませてもらい、「詩のような小説ですね」と感想を述べたのも当時の山崎さんだった。いわば新聞社においては、コラムこの大先輩にあたるお二人だ。
「あなたはおそらく生涯、、原稿用紙と万年筆だけあればいい人なんだ。臆せず書くことですよ」これは新聞社を離れた山崎さんへの週刊新潮の名編集者、斎藤十一(じゅういち)の助言である。そう背中を押された連載「ぼんち」が山崎さんのプロの作家としての出発点となる。「白い巨塔」「不毛地帯」「大地の子」「運命の人」。常に時代を代表する話題作を世に送り続けた。
先の斎藤に言われた「芸術家に引退はない。書きながら棺に入るのが作家だ」との言葉そのまま、週刊新潮に「約束の海」を連載中の訃報だ。「小さい山も、大きな山脈も、断崖絶壁もあった」。そう振り返る作家生活の底に流れていたのは、戦争で亡くなった同世代の友への思いだったという。「今も友達の顔が浮かぶ。生き残った者として何をなすべきか。書くものの根幹はいつもその問いがあった」執筆を牢獄に例えた山崎さんは長編が仕上がると「完結!出獄!」と叫んだという。物語でしか描けぬ時代と人間の真実を苦行僧のように書き続けた。
『毎日新聞』10.1
| 2013年10月24日(木) |
資本主義はなぜ自壊したのか �� |
顧みられなかったグローバル資本主義の副作用
アダム・スミス以来の近代経済学では、人々が自由な市場で競争していけば経済はダイナミックに成長していき、「見えざる手」によって最適な資源配分が達成される。しかし、自由競争が生み出す不公平や環境破壊は政府がこれを是正しなければならないというのが、根本教義である。この線に沿って、新自由主義を唱える人達は「規制緩和を行ない、政府の干渉をできる限り減らして、自由競争を行なうための環境を整えるいことが大事であり、そうすることが経済のパイを最大にするための最善の方法だ」と主張してきた。日本において「構造改革」が声高にされたのも同じ論理による。
こうした新自由主義、あるいは近代経済学の主張が世界経済を活性化させ、経済にダイナミズムを持ち込むことに成功した可能性は低くはない。少なくとも、社会主義の実験が失敗した今となっては、グローバル資本主義がいくら世界経済を混乱に陥れたからといって社会主義体制にもう一度戻るべきだなどという安易な主張は受け入れられるはずもない。しかし、問題は、自由競争がもたらす副作用である経済の不安定化、格差拡大、環境破壊などについてはあまりにも考慮が足りなかったということである。
こういう議論に対しては、新自由主義者は経済が活性化し、パイが大きくなればその恩恵がやがては世の中全体に浸透し、やがて誰もが豊かになると主張する。格差拡大や金融危機などの現象は時として怒るが、それはあくまで過渡的な現象であるということになる。つまり、今は辛いかもしれないがこの時期を乗り越えれば、民主主義とマーケットの調整能力によって自然に副作用も是正され、地球に暮らす人々が皆それぞれに幸せに暮らせる春がやって来るというわけである。
これは��小平の南巡講和と同じ論理である。��小平は1992年、深玔や朱海、上海、武漢などを訪れ「白猫でも黒猫でもネズミを取る猫は良い猫だ」「先に豊かになれるところから豊かになれ」とハッパをかけた。この路線は、改革開放を加速し中国経済発展の原動力となったが、周知のように格差拡大や環境破壊という大きな社会経済問題を生んだ。このまま突っ走れば、中国における格差拡大や環境汚染が危機的なレベルに達することはほとんど確実であり、いずれマーケット・クラッシュが起こるか、政治的揺り戻しが起こるか、農民の暴動が起こるかして中国社会に大きな変化を引き起こすに違いない。 新自由主義やグローバル資本主義も同じ結末に向かって進んでいるように見える。いや、この原稿を執筆中に、金融恐慌が先にやってきてしまった。それより先に世界的な原油価格の上昇、食料価格の暴騰があり、それが世界の貧困層を直撃している。新自由主義やグローバル資本主義は中国と同じく、軌道修正の時期を迎えたのである。
果たしてこれは市場の失敗なのか
経済学では、政府による規制などの要因によって市場メカニズムが適正に動かず、望ましい資源配分が実現できない状態のことを「市場の失敗」と呼ぶ。例えば、一部の大企業が価格カルテルを結んだりすることによって、商品やサービスの価格が人為的に操作されると、マーケット、メカニズムは動かなくなってしまうし、もちろん政府によって市場価格への介入が行なわれば、それもまた市場の働きを歪めてしまう。
それと同じことが、今のグローバル資本主義にも起きていると見る経済学者は少なくない。その代表的な一人が、ノーベル賞経済学者であるスティグリッジである。彼は著書『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』という著書の中で、地球上に格差社会が出現しているのは、アメリカをはじめとする先進諸国の利己主義によって市場原理が歪められた結果だと主張している。
スティグリッジが主張しているのは、まさに「市場の失敗」に他ならない。先進国が政治力を発揮して、自分たちの都合のいいルールを作ったりするのを止め、もっと適切なルールをグローバル経済に導入すれば、現在の格差は最終的に解消するというのがスティグリッジの考えである。同署の巻末にあげられた文章をここで引用してみよう。
「世界の大多数の人々は、現在までのグローバル化の手法を、悪魔との契約だと捉えているに違いない。恩恵に浴すのは一握りの富裕層だけ。これはグローバル化のあるべき姿ではない。金と力を持つ人々のためではなく、最貧諸国を含む全世界の人々のために、我々はグローバル化をうまく機能させることが可能なのだ」この文章からすると、どうやらスティグリッジは「グローバル資本主義によって資本の最適配分は十分実現可能なはずだ」と本気で信じているようである。
しかし、果たしてそうなのだろうか。今の状況は決して資本主義のあるべき姿ではなく、グローバリゼーションが正しく機能するようにすれば「見えざる手」が働き、万事は解決するのだろうか。残念ながら。スティグリッジの見方にはいささか問題があるように思われる。すなわち、世界中でグローバリゼーションが急速に進展していく中で格差が拡大していくのは、市場の失敗というより、むしろ、グローバル資本主義そのものに内在している本来的な機能ではないかというのが私の見方である。
収穫逓信型産業が景気を牽引した
この十数年に及ぶ夢のような経済発展を牽引したのは、アメリカ金融資本だった。もっと詳しくいえば、アメリカ東海岸ウォールストリートの金融業界とアメリカ西海岸シリコンバレーの情報通信産業だった。金融もグローバル化にはうってつけの産業である。これらの産業は製造業や農業のように、特定の土地に縛られることもなく、ビジネスチャンスを探り当てては国境をいともたやすく越えて活動できる身軽な産業である。
同時に、地道に努力してコツコツとよいものを作るといった動きの遅い製造業と異なり、頭脳的なエリートがイノベーションによってこれまでなかったようなユニークな商品を開発し、それによって世界のマーケットを一挙に手にすることができる収穫逓増型産業である。収穫逓増型とは、マーケットの規模が大きくなればなるほど、利益率が高くなる産業のことであるが、金融も情報通信産業も基本的に原材料を必要としないから、その傾向はさらに強固なものになる。基本となる商品設計さえ優れていればそれがグローバル・スタンダードになり、たちまちグローバル・マーケットを手にすることができ、うまくすると無限大の利益にもつながる夢のような産業なのである。
とくに、金融とITが結びついた金融工学の発展により、数々の新しい金融商品が生まれた。その多くは、安い金利で調達した資金を何倍にも膨張させることができるレバレッジ経営を可能にするものであった。サブプライムローンはその代表的な例である。サブプライムローンとは、信用力の低い、往々にして返済能力がないような低所得層の借り手を対象とする住宅ローンである。信用がないのだから、当然金利は高くなる。しかし、金利が高くてもそのような人達に住宅ローンを組ませる巧妙な仕組みがあった。すなわち、当初、2〜3年は元金・金利返済が極めて低位に抑えられ、以後、返済額が急増するという内容のローンにしたのである。当然、借りるほうからすれば、将来の支払金利が10%も超えるような金利の高いローンは敬遠したくなるが、それでも借りてみようと思わせる巧妙な仕組みがあったのである。
なぜ、人々はサブプライムに騙されたのか
その一つは、アメリカにおける住宅ブームである。今回のクラッシュが起こる前までのアメリカの住宅市場はバブル状態で住宅価格がどんどん上昇していた。そこで業者は次のような言葉で低所得者を説得したのである。「将来の返済金利が高くなることをご心配なんですね。大丈夫です。金利が上がる3年先、4年先には、お買い上げいただいた住宅の値段はかなり上がっているでしょう。その価格が上がった住宅を担保に借り換え(りファイナンス)されればよいのです。そうすると、あなたが支払う金利は、担保となる住宅価格が十分上がっているのでサブプライムではなく、プライムレート(優良貸出先に適用される安い金利)になるでしょう。将来を見通しても、アメリカでは住宅価格が上昇し続けると見込まれますので、必要ならばさらにりファイナンスすることで、きっと貴方様には今後ともいっそう豊かな生活が保障されることでしょう」
しかし、それでもまだ慎重な顧客がいたら、次のように言う。「それでも何らかの事情で借金の返済ができなくなった場合などです。そうなって返済計画に無理が生じた場合には、購入された住宅を手放していただくことになりますが、その時の住宅価格がどれだけ値上がりしていようとも、それですべての借金は返済されたものとみなします。(このようなローンをノンリコースローンという)ですから、最悪の場合でも、お買い上げいただいた住宅さえ手放していただければ、債務は一切残らないということになります。ですから、心配ないのです。それより、これまでの推移を見ていただければ、これからも住宅価格が上がり続けることは間違いありませんから、ご心配は無用というものです」
このような甘い誘惑の言葉に多くの人がサブプライム・ローンに手を出し、住宅を購入したわけだが、これによって確かにアメリカの住宅需要は増え、現実に住宅価格を引き上げることになった。また、低所得層の持ち家保有が進んで、建築のみならず自動車や家具などの需要まで増えたので、アメリカの景気持続に貢献した。
結果的に見れば、サブプライム・ローン業者のセールストークは、一時的にせよ的中したことになる。バブルは、このような「予言の自己実現」的現象によって維持されたものであるが、今回もその例外ではなかった。かくしてローンの借り手たちは「夏の夜の夢」に酔ったのだが、住宅ローンを貸し出す側はきわめて現実的であった。彼らは貸しだしたローン債権を手元に置かないで、即刻、銀行や証券会社にそれを売却し、現金化した。リスクの高い住宅ローンの貸し出しをしても、すぐにそれを他の金融機関に売却すれば、彼らには滞納リスクや貸し倒れリスクは発生しない。その結果、モーゲージ・カンパニーの貸し出しは、甘いリスク判断によるものになった。
さらに、サブプライムローン債権を住宅ローン会社から買い取った金融機関はそれを証券化した。証券化とは再建のかたまりを分割し、小口の金融商品(証券)に変えてマーケットで売り出すやり方のことである。しかし、実際の仕組みはもう少し複雑である。サブプライムローンはもともとリスクが大きい商品なので、小口に分割したからといってリスクがなくなるわけではない。リスクが大きいと認識されるとマーケットではなかなか良い値段では売れないことになる。
そこで、商業銀行や投資銀行はサブプライム・ローン債権のリスクを見えなくするために、他の優良な証券化商品、例えば、国債や超優良会社への貸し大債権、社債などとサブプライムローンから証券化された商品を混合させた新たな金融商品を作りだしたのである。これをCDOと呼ぶが、CDOのミソは、サブプライムローンのリスクを優良証券化商品と混ぜ合わせてしまうことで、サブプライムローンのリスクを見えなくするという点にあった。
『資本主義はなぜ自壊したのか』 中谷巌
| 2013年10月23日(水) |
資本主義はなぜ自壊したのか �� |
リーマンショック、格差社会、無差別殺人、医療の崩壊、食品偽装。すべての元凶は市場原理だった。
構造改革の急先鋒であった著者が記す「懺悔の書」
世界経済は大不況の局面に入った。この混乱が収束するにはおそらく数年にもわたる調整が必要になるだろう。しかし、もっと本質的な問題がある。グローバル資本主義の本質とは何かという問題である。それを明確にしない限り、我々は将来、何度でも今回と同じ間違いをしでかすに違いないからである。グローバル資本主義は、世界経済活性化の切り札であると同時に、世界経済の不安定化、所得や富の格差拡大、地球環境破壊など、人間社会にさまざまな負の効果をもたらす主犯人でもある。そして、グローバル資本が自由を獲得すればするほど、この傾向は助長される。
21世紀はグローバル資本主義というモンスターにもっと大きな自由を与えるべきか、それともその行動に一定歯止めをかけるべきなのか。当然のことながら、新自由主義勢力はより大きな自由を求める。グローバル資本が自らを増殖させるための最大の栄養源だからである。しかし、さらなる自由を手にした者は、まさにその自由によって身を滅ぼす。結局のところ、規律によって制御されない自由の拡大は、資本主義そのものを自壊させることになるだろう。
一字、日本を風靡した「改革なくして成長なし」というスローガンは、財政投融資制度にくさびを打ち込むなど、大きな成果を上げたが、他方、新自由主義の行き過ぎから来る日本社会の劣化をもたらしたように思われる。例えば、この20年間における貧困率の急激な上昇は日本社会に様々な歪みをもたらした。あるいは、救急難民や異常犯罪者の増加もその負の効果に入るかもしれない。改革は必要だが、その改革は人間を幸せにできなければ意味がない。人を孤立させる改革は改革の名に値しない。かっては筆者もその改革の一翼を担った経歴を持つ。その意味で本書は自戒の念をこめて書かれた「懺悔の書」でもある。
グローバル資本主義はなぜ格差をつくるのか
グローバル資本主義、あるいはグローバリゼーションという言葉が現実味を持って語られるようになったのは、1991年に起きたソ連崩壊からである。第二次世界大戦終結後、およそ半世紀にわたって地球を二分していた東西冷戦体制がソ連崩壊と共に終結し、ロシアや東欧圏と西側諸国との間に立ちふさがっていた市場の壁・鉄のカーテンが消え去り、東側にも資本主義原理が導入されるようになったことで、世界経済は急速に一体化していった。この動きを受けて、中国やベトナムといった社会主義国家でも、経済の改革・開放が行なわれるようになった。
この結果、ついに人類はグローバルマーケットの時代に突入することになったのだが、こうした動きに拍車をかけたのは、コンピューターとインターネットによるIT技術の本格的普及だった。世界中をカバーする情報網を簡単に、そして安価に構築することが可能になったことで、これまで投資をためらっていたような遠い地域や辺鄙な場所であっても、西側諸国の企業が進出できるようになったというわけである。もちろん、それと並行して、新自由主義の思想が広い支持を集め、各国で貿易障壁が撤廃されたり、あるいは政府による市場統制が緩和されたこともグローバル資本主義の発達を促すことになった。
さて、こうしてグローバル資本主義が現実に動きはじめたことを当初、人類は諸手をあげて歓迎した、と表現してもそれは決して大袈裟ではあるまい。例えば西側先進国の消費者にとっては、グローバル資本主義とは価格破壊の到来を意味した。100円ショップやユニクロが象徴するように、これまでの常識を破るような低価格で消費財が大量に販売されるようになった。アメリカでもウォールマートのようなディスカウント・ストアが急成長をしたわけだが、こうした低価格戦略が成功を収めた背景には、先進資本主義国の企業が中国やベトナム、あるいは東欧といった低賃金の労働市場に自由にアクセスできるようになったことがあった。先進国の数十分の一という低賃金で、ある程度の教育レベルを持っている労働者がいくらでも集められるのだから、先進国の企業はこぞって中国をはじめ、これらの国々に生産拠点を移すことになった。
わが世の春を謳歌した世界経済
その結果、先進国の消費者は驚くような安い価格で商品を手に入れるようになっただけでなく、投資家たちも収益機会が増え、高いリターンを手に入れることができた。不良債権処理に手を焼いていた日本はともかく、グローバル展開のおかげでアメリカやイギリスは最近に至るまで長期にわたる景気上昇を享受した。レーガノミックスに基づく改革を推進したアメリカは、1993年以来、2001年のITバブル崩壊の際の6カ月を除き、最近に足るまで、連続して景気が上昇した。サッチャー政権の大胆な改革で甦った英国は、その同じ期間、実に14年間にわたって景気上昇を続けることができた。
英・米両国とも国際的に金融業界の競争力が強く、グローバル資本主義を引っ張る主導的な立場の国であることは注目してよい。いずれにせよ、英米両国によって牽引された世界経済は極めて順調な成長を遂げ、先進国の消費者と投資家の多くはわが世の春を謳歌したのであった。特にアメリカ系投資銀行の高度の金融工学を駆使たレバッジ経済が金融市場の飛躍的拡大をもたらし、それが世界経済の活性化につながった。一方、安価な賃金で先進国の工場となった旧社会主義国の諸国にとっても、グローバル資本主義の到来は福音であった。
西側からの投資が怒涛のように押し寄せたことで、これらの国々の経済は急激に拡大した。中国は毎年、10%にも達する高度成長を遂げ、今やGDPで見て世界第4位の主要プレイヤーとして認知されるに至った。沿岸部と内陸部の差はますます拡大しているが、内陸部の人達の生活水準はゆっくりながら少しずつ上昇している。ただ、そのスピードが沿岸部の富裕層に比べると、あまりにも遅いというところが大きな問題であり、中国共産党もそれが成功するかどうかは予断を許さないが、「和諧社会・わかいしゃかい(調和ある社会)」政策によって所得分配の不平等是正に乗り出した。
さらに、インドはIT産業、とくにソフトウェア開発のメッカとして台頭してきた。ブラジルは世界経済の高成長に支えられ、鉄鉱石などの原材料価格の高騰をきっかけに急激な工業化を遂げつつある。ロシアは資源価格の高騰でオイルマネーが流入し、財政危機を乗り越えることに成功した。いわゆるBRICSがグローバル経済の表舞台に登場したのである。グローバル資本主義がなければ、彼ら生活水準がここまで上昇してくるということは全く期待できなかったであろう。この意味で、アメリカ主導のグローバル資本主義の「功」の部分については過小評価すべきではないと思う。
また、先進国の企業経営者たちにとって、中国やロシア、インドといった国々はまさにフロンティアであった。そこには何十億人もの安い労働力が待っていたし、また同時に、西側の消費財を売り込むための未開の広大なマーケットがあった。そして、西側の消費者にとっては、グローバリゼーションとは「プライス・ダウン」に他ならなかった。メイド・イン。チャイナの食品や衣類がkれまでの常識では考えられないほどの価格でスーパーに並ぶようになったし、また国際競争の激化で電化製品や自動車、パソコンといった商品もどんどん低価格化していった。一方、新興国の人々にとっても、グローバル資本主義の拡大は彼らの収入を拡大し、生活レベルを向上させ、成功のチャンスを与えるものだと考えられていたわけである。
『資本主義はなぜ自壊したのか』 中谷巌
| 2013年10月22日(火) |
大銀行と暴力団 �� |
組員が語る「マル暴マネー」の現場
最初から返すつもりはない
「既存の暴力団のシノギはほとんどできなくなりました。今や福島第一原発への作業員派遣におけるピンハネや、中小企業への支援金を騙し取ることくらい。覚せい剤の売買やノミ行為でしのいでいる組もあるようですが、いずれダメになるでしょう」ノンフィックション作家の溝口氏が分析するように、暴排条例の施行で、暴力団のビジネスは大打撃を受けた。
「キャッシュで全額払うといっても、ディーラーが車を売ってくれなくなった」(暴力団幹部)、「兄弟分が市営住宅から追い出された」(元組員)と、暴力団を表社会から締め出す動きも出ている。だが、行き場を失った暴力団は、その手口をいっそう巧妙化させ、それとはわからないように市民生活に入り込んでいる。
現場の暴力団組員が、金儲けの手口の一端を明かす。「人気の犬や猫をブリーダーから安く買って、ペットショップに転売したり、山の一部を買い取ってヤードにして、ワケありの車を解体したりと、ここ数年、ニッチなシノギにシフトしているね。今一番いいのが、お年寄り相手の商売。バンに健康食品や下着、介護ベッドなんかを積んで、見てくれのいい若い衆に売りに行かせる。とりあえず契約させしちまえば、あとはクーリングオフの期間が過ぎるのを待てば勝ち」
一見して儲けは少なそうだが、それだけ暴力団も生き残りのために必死だということだろう。今回問題となった、みずほの230件の提携ローン契約の中にも、60回払いのものがあるという。これは反社会勢力の資金低下を物語っているのか、それとももっと深い闇とつながっているのか。ジャーナリストの須田氏が解説する。
「今のところ、暴力団が活動資金確保のため、みずほから組織的に融資を引っ張ったという形跡は見つかっていません。ただ、何件が焦げ付きが出ているのは間違いない。みずほ広報は否定ですが、回収にあたっている様子もないんです。だとするとこれは、結果的に暴力団への利益供与になる。それが彼らの活動資金に回った可能性は否定できません」
元広域暴力団組員の梅木氏によれば、みずほが信販会社オリコを間に入れて融資をした「提携ローン」というスキームを、暴力団は今も利用しているという。「みずほの件は中古車のローンでしたが、それでは金額が知れています。暴力団の中には、このスキームを住宅ローンやリフォームで使う者もいる。業者を抱き込んで、実際は700万円で済む工事も見積もりを1000万円で出してもらうのです。もちろん、業者にはいくらかバックします」
問題となった提携ローンは、借り受け人から、中古車ディーラー、そして信販会社からみずほという四者間のローンである。このケースでは、ディーラーのところにリフォーム会社が入る構図だ。「表面上、問題がなければ、信販会社はロクに調べもしないで、審査を通してくれます。せいぜい、借り受け人の職場にウラとりの電話を入れるくらい。一度も面談しないことの方が多い」
この際、借り受け人が組員だと審査が通らないので、わざと破門された「なりすましのカタギ」組員か、暴走族やチーマー上がりの「元集団」を立てる。バブル崩壊後、新たに反社会勢力に加わったのが「半グレ」と呼ばれる暴走族上がりの「元集団」である。名簿はなく、本部も持たず、先輩後輩のネットワークで動く彼らの実態を完全に把握するのは困難だ。融資が実行されて、リフォーム業者にカネが入れば、あとは借り受け人と分配して踏み倒すだけ。リフォーム工事自体、行われないケースもあるという。
「借金を踏み倒したことでブラックリストに載せられますが、1年ぐらいは猶予がある。その間、同じ手口で5〜6社からカネを引っ張るわけです。その後は借り受け人を婿入りさせたり、養子縁組して名前を変えて”別人”にして、最初からもう一回同じことをする。今回のみずほの件は、借り受け人のやくざ者ばかりが注目されていますが、我々に言わせたら、信販会社と借り受け人の間に入っているディーラーも怪しいですよ。中には悪いディーラーがいて、借り受け人とグルになって融資されたカネを懐に入れていてもおかしくない」
高利で転貸しする
銀行は各行が独自につくっている「反社リスト」に照らし合わせて、取引先が反社かどうか判断している。だが、いくら住所などの情報がマッチングしても本人が組員でない限り、口座や融資を凍結することはできない。梅木氏は言う。「なりすましのカタギ、何より元集団を銀行が審査ではじくのは至難の技」だと。国内屈指の巨大半グレ組織『怒羅権』の場合、口座を持っている者が多数いるという。「仮に反社リストに載せられたとしても、彼らにリスクはないんです。警察立会いのもと、口座内の預金が返済されるだけで、犯罪収益金として吸い上げられるわけではないですから。しかも、反社認定されることはだいたい、事前にわかるといいます。『1〜2年のタイムラグがあるから、その間に十分対処できる』と」
いまどきのやくざは、ベンツに乗らないないんです。梅木氏はそう笑う。「目立つ高級車に乗ってると、すぐにナンバーを控えられて、所有者、使用者、ディーラーが密接交際者にされてしまう。レクサスもマークされるらしいですね。だから親分連中の送迎は、エスティマやアルファードといった、国産のバンでやってますね。街からイカついベンツが消えたように見えますが、ようは見えなくなっただけ。マル暴マネーの現場は確かに変わりました。これまで飲み屋、デリヘルなんかは店長、もしくはオーナーがヤクザ者というところが多かった。今はさすがにそうはいかないから全員、なりすましのカタギか、元集団にやらせている」
かって暴力団による住宅ローン詐欺が問題になったことがある。バブル期、銀行が1000万円以下の住宅ローンを新版会社に次々と丸投げ。ろくに担保審査もせず実績を増やした結果、暴力団が易々と住宅ローンを借り受け、そのカネを資金繰りに苦しむ中小企業に法外な高利で転貸ししたのだ。今回問題になった提携ローンというスキームは、バブル時代のこの迂回融資と酷似している。
「暴力団を締め付ければ締め付けるほど、地下に潜りより巧妙な、あるいは犯罪的な手段に走る傾向が強まる。もともと持っていた犯罪者としての側面が、より直接的に表出するのではないか」(溝口氏)この見立てはそのまま、元組員が語った現実と重なっている。暴力団と銀行の関係は、少し形を変えただけで、基本的にはバブルの時代から何も変わっていないのだ。
『週刊現代』10.19
| 2013年10月21日(月) |
大銀行と暴力団 �� |
銀行員たちが心底怯え、時にルールを逸脱してまで融資をする相手、それが暴力団だ。
なぜ「みずほ」ばかりが狙われるのか―密告者がいる
みずほ銀行のスキャンダルを暴いたのは、金融庁による検査だった。大蔵省時代に金融検査部に在籍し、メガバンクの検査に着手した経験を持つ元財務官僚の高橋氏はこう語る。「当局が不正をつかむ発端は、ほとんどがタレコミによるものです。検査中に入ってくるタレコミも多く、金融庁に封書で送られてくるが一般的。封書に差出人名はありませんが、その大半は検査中の金融機関内部からのものです。反社会勢力への融資など、外部からはなかなかうかがい知れないもの。今回もみずほ内部からタレコミがあった可能性が高い」金融庁検査は、数十人単位の検査官が、対象となる銀行などに常駐する形で行なわれる。
行内に検査官用の部屋を用意させ、検査官は毎朝、直接銀行へ出勤し、その部屋から検査対象となっているセクションや部へと向かう。そこにも検査官専用の席があり、山と積まれた資料におかしな点が見つかると、「ちょっとあなた、この件、説明してください」と、いきなり行員を呼びつけるケースもある。「検査機関はメガバンクなら3カ月ぐらいでしょう。検査に入る約一週間前に頭取あてに入検通知を出しますが、検査内容についての説明は一切しません」(高橋氏)
あらかじめ設けられた面談日になると、所管のセクションの担当者が検査官の常駐する部屋に呼ばれ、説明をさせられる。説明役はあくまで検査対象となっている案件担当で、役職は関係ない。ドラマ『半沢直樹』のように次長が同席するケースはあるが、部長や役員、ましてや頭取が同席することはまずない。従って同じ行内であっても、検査対象の部署以外の行員は、どこで何が検査されているのか、全くわからないのだ。
今回、そんな金融庁検査を経て、みずほは行政処分を受けた。しかも、その内容はみずほの「過去」を知る者にとって、またかと言いたくなる「大銀行と暴力団」の関係を浮き彫りにするものだった。昨年12月から3月にかけて、金融庁がみずほ銀行に対して実施した検査で問題融資が発覚した。グループ企業のオリエントコーポレーション(オリコ)との提携ローンで、多数の反社会勢力、つまり暴力団関係者との取引があることを把握しながら、2年以上も放置していたことが判明した。
金融庁によると、みずほがオリコを通じて反社会勢力に融資した案件は、230件。金額は約2億円。融資案件の多くは、各地の中古車販売店での自動車購入に伴うローンだという。「暴排条例の施行を受け、ウチは2010年の12月から、オリコを含む提携ローンの事後審査を半年に1回の割合で行なっています。その中で、オリコの融資先の顧客に反社会勢力が多数いることがわかったのです」(みずほ銀行関係者)
このみずほは本体の事後審査の結果、自動車提携ローンの顧客に暴力団関係者が含まれているという情報は、みずほ銀行からオリコへと伝えられている。だが、本来ならはすぐに一括返済を求めるべきところを、「次回からは当該の人達と契約しないように」と言うにとどめ、何も手を打たなかった。しかも、そうした問題融資が行なわれていたことを、コンプライアンス担当役員が把握していたにもかかわらず、経営トップには情報が上がっていなかったというのだ。
その点を問題視するのは、ジャーナリストの須田慎一郎詩である。「結果的にコンプライアンス担当役員が情報を握り潰してしまったというのが、みずほ側の表面上の説明ですが、そんなはずはありません。みずほ内部の話を聞いても、『もしこれが表面化したら大きなダメージになるはずで、そんな重要情報を担当役員レベルが止められるはずがない』というんです。なにしろ、みずほのコンプライアンス委員会の委員長は頭取ですからね。そこに情報が上がっていないとしたら大問題です」
先述したようにこの提携ローンの融資窓口はオリコ。契約者の審査も、焦げ付いた時の保障もオリコが行なうことになっている。そのため、みずほにしてみれば直接融資でないぶん、責任は軽いと考えているフシがあるのだ。しかし、「このやり方は、バブル時に横行した暴力団関係者への迂回融資と同じ構図です」と『同和と銀行』の著者、ノンフィックション作家の森功氏は指摘する。
「貸し出しの際の信用調査は、オリコがやったのだから、責任はオリコにある。そう言わんとするような弁明は誠に卑怯。貸出窓口はオリコでも、契約上、暴力団関係者に融資しているのも、相手が暴力団関係者だと気づいたのも、自分たちなのだから。しかも、少なくともコンプライアンス担当の常務執行役員、つまり経営陣が知っていたということは、組織的な隠蔽と取られても仕方がない。みずほは今回も応報対応もお粗末でしたが、過去にシステムダウンを起こした時も、問題を明らかにしようとしなかった。つねに隠そうとする隠蔽体質があります」
『週刊現代』10.19
| 2013年10月17日(木) |
マイクロソフト 携帯大手を買収 |
生き残りをかけた戦い
遅すぎた握手、弱者の連合――米マイクロソフト社が、フィンランドノキアの携帯端末事業を約7140億円で買収するとの発表に、世界のメディアは辛らつにこう書き連ねた。「パソコンの基本ソフト(OS)で世界を席巻したマイクロソフトとだが、近年はスマホの登場で米アップル社や米グーグルにお株を奪われていた。買収発表後にマイクロソフト株が5%弱急落した様に、マーケットも買収を評価しませんでした。しかし、市場はリスクを取る動きにネガティブに反応するものである。実際、ソフトバンクが巨費を投じて英ボーダフォンを買収した際も、アナリストは批判的だったが、買収は大成功でした」(マーケットバンク代表・西岡氏)
では。マイクロソフトに勝算はあるのか。MCPアセット・マネジメント証券の井上氏が語る。「スマホは従来型携帯に比べ、開発費が3〜10倍かかるといわれる。大きくシェアを取らないと利益を出すことはできません。その青写真がどの程度描けてるのかがポイントでしょう」今回の買収は、これまではソフト中心で儲けてきたマイクロソフトが、自ら携帯端末事業(ハード)まで手掛ける大転換を意味する。アップル、韓国サムスンなどがひしめく峻烈な市場で勝つのは容易なことではない。
「今回の買収を経て、ノキアCEO(最高経営責任者)のスティーブン・エロップがマイクロソフトのトップに就くとの見方が出ていることにカギがあります。実はエロップはマイクロソフト出身で、ノキアに転じた経歴を持つ。ソフトとハード両面を熟知する彼が再びマイクロソフトに戻れば、逆転劇も夢ではないと見る市場関係者もいます」(井上氏)
岡三証券日本株式戦略グループ長の石黒氏もこう指摘する。「マイクロソフトはまだまだ豊富な資金力を持っている。この資金を使ってさらに技術力のある企業を買収したり、画期的な製品開発に注力すれば、復活の可能性も見えてきます。一方でスマホやタブレット端末市場は、すでに低価格競争になっており、ここに呑み込まれれば買収の意味はなくなる」現状を変えたいのなら、企業はリスクを取って前に進むしかない。生き残りをかけた最後の戦いが、いま幕を開けたのである。
『週刊現代』9.21
イラク戦争、ユージンスミス、ピンチョンの冒険
3月30日、ブッシュジュニアは戦争を始め、その日のうちに小泉首相は「アメリカの武力行使を理解し、支持する」と表明した。人も知るごとく、イラク戦争は悲惨な結果に終わった。大量破壊兵器はなかったし、イラクの社会は崩壊し、10万人が亡くなり、混乱は10年経った今も続いている。ブッシュ・ジュニアは退任にあたって「大統領の職にあった中で、最大の痛恨事はイラクの情報の誤りだった」と言った。論理のすり替えはあるが、一応の反省と聞いておこう。それに対して小泉元首相は何も言っていない。
これを不満に思っていたところ、『検証 官邸のイラク戦争―元防衛官僚による批判と反省』という本が出た。筆者は当時、防衛庁防衛研究所所長として政策決定の中枢にいた人物である。これで多くのことがわかった。日本はイラク攻撃の大義に共鳴したわけではなく、ここは奉加帳に名を連ねるしかないと判断しただけだったのだ。だから小泉は不運ではあっても判断の誤りとは思っていない。反省の弁が出てくるはずがない。
開戦を前にして、日本の外交には日米同盟と国際協調という二つの原理があった。両者が一致していればいいが、国連は逸る(はやる)アメリカを支持しなかった。日本は国際協調を捨てて日米同盟を選んだ。戦争の本質についていえば、これは判断停止である。この点について柳沢の分析は誠実で徹底している。「大量破壊兵器の脅威から世界を救う道筋は戦争だけではないし、まして日米安保条約上の義務にない場所に、自衛隊を派遣してアメリカを助けることでもない。その単純な事実が忘れられたとき、安全保障の手段であるべき同盟は、それ自体が目的に転化する」という論は納得のいくものだ。
だから選択肢は日米同盟か国際協調かではなく「アメリカか日本か」でなければならなかった、と柳澤は言う。ここに言う日本とは「平和を国威よりも優先する価値観とし、戦争を否定することによって『国際社会において名誉ある地位を占め』ようとした日本である」しかし、日本は「戦後の平和国家としての自己認知を否定し、アメリカと軍事リスクを共有することによって国威を高め」ようとした。
この選択の結果として、薄氷を踏む思いの自衛隊派遣が実施され、やがてそれに見合う成果がないと明らかになるまでの日々の記録は興味深い。優秀な官僚はこのような思考回路を持っているのかと感心する場面が多い。法や常識と現実がかけ離れている時に、その間をどういう論理で繋ぐか。まして外交はさまざまな力が交錯するゲームだ。だからこそ後になっての検証は必須なのである。どの段階のどのカードが間違いだったのか、それを明らかにしなければならない。
あの戦争は、イラクの脅威を取り除くだけでなく「国際社会のルールを無視して、核開発を目指すイラク以外の国の思惑を放棄させるための戦争であり、日本が戦争を支持した理由もそこにあった」と柳澤は言う。だが、「イランと北朝鮮は、核開発の野望を捨てないどころか、イラク開戦以後今日に至るまで、その能力を高めている」。どこで間違えたのだろう。イラク戦争は失敗に終わり、それは日米同盟にも傷を残した。彼我の関係は変わった。尖閣諸島で日中が衝突してもアメリカは介入しない公算が大きい。我々はアメリカを相対化する視点を持つべき時期に来ている。
『週刊文春』6.13 池澤夏樹
| 2013年10月15日(火) |
榊原式 スピード思考力 |
正解があるのは学校のテストだけ
先に物事は常にグレーであるという話をしましたが、黒か白かを決められないのと同様、世の中で起こるほとんどの問題には正解がありません。正解があるのは、学校でのテストなどごく限られたケースでしょう。学術会議会長の金沢一郎さんは、高校生を相手にした授業で、面白い問題を出したことがあります。
それはこんな問題。とある小学校の一年生のクラスには、女子児童が13人と、男子児童が12人います。さて、このクラスの担当の先生の年齢は何歳でしょうか?こうして文字に書かれたものをみれば、多くの人が、年齢を示す材料など何もないことがわかると思います。その通り、この問題には正解がないのです。
ところがこの問題を出すと、実に3割ぐらいの人達が「25歳」と答えます。13と12を足した数で。それなら小学校の先生の年齢に妥当だから……という類推なのですが、それが正解になる理由はどこにもありません。しかし「正解がないわけがないから」という常識で、その一番ありそうな数値を解答にしてしまうわけです。
それだけ多くの人達は、「解答がある」という世界に慣れきってしまっているのです。そして、それをさまざまな局面に引きずってしまうので、自分の頭でものを考えることをせず、誰かの言ったことをそのまま「解答」として、流されていってしまうのです。学問の世界でもビジネスの世界でも、解答のない問題がほとんどです。しかし、暫定的な解答を出して、問題解決のための行動を起こさなければならないことが少なくない。特にビジネスの世界は常に動いていますから、さまざまな分野で速断を要求されます。
しかし、暫定的な解答である以上、間違っている可能性は常にあります。これに関して、例えば投資家のジョージ・ソロス氏は、よく「fallibility」という言葉を使っています。訳すと「誤謬性」(ごびゅうせい)という意味で、人間の選択は常に間違っている可能性があるということ。それはソロスのような投資の神様のような人でも同じで、それを意識しているから、彼は瞬間瞬間で「自分が間違えた」ということを認識できる。そうして「買い」だったものを急遽「売り」に転じたりして、マーケットで勝利をつかむ契機となるのです。
科学的結論は常に暫定的なもの 教科書の記述もどんどん変わる
絶対的真理ということに関していえば、哲学者のカール・ポパーがこんなことを述べています。すべての科学的真理は、みな暫定的なものである―と。 つまりは、絶対的な拠りどころとなるはずの科学的真理ですら、崩れるような事実が発見されれば、過去のものになっていくわけです。かっては太陽が地球の周囲を回っているのが真理でしたし、近代文明の基礎となったニュートン力学にせよ、アインシュタインの相対性理論にせよ、現在はすでに過去のものになっています。
要は科学的真理なるものは、「それを否定する理由がないから、今のところは真理にしておこう」と、そういう約束のうえに成り立った”仮説”にすぎないわけです。例えば現在、地球の年齢は40億歳とか、50億歳とかいわれています。それが受け入れられているのは否定するような証拠が出ていないからで、何か新しい証拠が出ればいくらでも変わってしまうでしょう。
それは理系の自然科学の話だけではありません。かって江戸時代の農村といえば、民衆が貧しい暮らしをしていたと思われていました。しかし、最近の研究では自治のシステムが整い、比較的平等な富の分配が行なわれ、貧富の差があまりない経済的に豊かな社会であったことがわかっています。
とくに江戸時代から、明治初期にかけて来日した外国人の目を通して当時の社会を描いた、渡辺京二さんの『逝きし世の面影』(葦書房)という本では、欧米人が当時の民衆の生活を見て「衣食住が豊かである」という証言を多く残していることを指摘しています。新しい論拠が出てくれば、定説というのはいくらでも変わるのです。
教科書にも載せられているような科学的真実というものも、往々にして実は暫定的なるものに過ぎません。どのような命題も、今は絶対的真理だと思えても「今のところ、間違いないように見える」とか、「法律的には、現在はこっちが正しい」とか、「多数の人が現在はこちらを採用している」という暫定的なものなのです。
そうすると私たちは、科学的な真実にしろ、一般的に「正しい」と受け止められていることにしろ、常に”検証する”という態度を持っていなくてはなりません。しかし検証する前に重要なのは、「それを疑いの目を持って見られるか」ということ。同質性が高く多数の意見が絶対的なものになりやすい日本で、”常識となっていることに疑問を持つ”ということは難しいかもしれませんが、どうしても必要なことなのです。
『榊原式スピード思考力』 榊原英資
天下り先に渡った12兆円の血税
中央省庁所管の団体のうち、国庫か公務員再就職者、すなわち天下り先の調査対象法人の数は、全体で4504団体。ここに全体で25.245人の再就職者がいた。そのうち、取締役相当の役職員数はおよそ半数の10.614人であった。役員数に占める天下り比率は、平均で13.6%である。そうした天下り役員がいる団体に、合計で実に12兆1334億円あまりの金銭が政府から各省庁を通じて交付されていたのだ。
これは血税であり、そのほとんどが無駄といわざるを得ない。このうち、随意契約および補助金などで受け取っている額は、9兆3830億円あまり。実に全体の77.3%にもなる。うち、契約は一般競争入札なども含む契約額の総額なのだが、これと随意契約の額を比べると、ほとんどが随意契約であり、一般競争入札はかなり少ない。また、国からの支出をすべて随意契約・補助金等で受け取っている法人も、なんと165法人にのぼることがわかった。
天下り役員率は、確かに20%以下の団体が圧倒的に多いが、21%以上60%以下という団体も決して少なくないことがわかる。随意契約・補助金率でいえば、0%という団体も多いが、次に多いのが100%だという事実もショッキングなものだ。
本書では、中央省庁に限って見ているが、こうした実態が全国の地方自治体にもあるのだ。血税の垂れ流し、無駄の温床は限りなく広く、根が深いことがわかる。この膨大な報告書でも、その全体像をつかむことはできない。公益法人だけでも25.000を超える。国所管に限っても約6.800あるのだから、単純に数が合わない。
つまり、中央省所管の外郭団体の全部を網羅しているわけでもないし、地方に関しては、まったく扱っていない。地方公共団体においても、もちろん天下りはある。幹部クラスの職員が関連する団体や出資する法人の、理事や取締役といった要職に斡旋によって天下ることも少なくない。退職勧告によって早期に退職して天下る場合はもちろん、定年退職後の天下りも少なくないといわれる。残念ながら、これについてはまだ調査は手つかずの状態だ。
『天下りの真実』 市村浩一路
害鳥・鳩山は「運命の馬鹿」だった
民主党「A級戦犯」法廷
動物生態学者、コンラート・ローレンツの著書『ソロモンの指環』によると、平和の象徴とされる鳩は実は非常に残忍で、仲間内で攻撃を始めると抑制が利かないのだという。民主党政権の初代首相の栄誉を担い、この政党の無能と愚かさを見事なまでに体現した鳩山由紀夫氏もまた、日本に仇なす害鳥だった。鳩山氏の破壊衝動と、攻撃性は政界引退後もとどまるところを知らない。最近はあり余る資産を元手に「東アジア共同体研究所」を立ち上げて自ら理事長に就任し、あちこち飛び回っては糞害をまき散らしている。
韓国の中央日報によると、鳩山氏は5月30日、韓国・済州島で開かれた『平和と繁栄のための最終フォーラム2013』でこんな基調演説を行ない安倍政権を批判した。「元首相として、現安倍政権が歴史の最も重要な教訓を忠実に学んだのか、疑問を持って深く憂慮している」「米国でさえ、日本がアジアを戦争へと推し進めようとする意図があるのではないかとの強い憂慮を露わにした」
もとより、鳩山氏が、「歴史の教訓」や「米国の憂慮」を本当に理解しているとは思えない。だが、それはさておいても元首相の肩書を引っ提げ、日本を勝手に敵視している隣国へとのこのこ出かけ、相手に迎合しして日本を貶める発言を繰り返しているのである。「久しぶりに頭の中に『国賊』という言葉がよぎった」小野寺防衛省は今年1月、北京で中国要人と会談した鳩山氏が沖縄県・尖閣諸島は日中韓の係争地だと述べたことについて、こう吐き捨てた。政府は「日中間に領土問題は存在しない」との公式見解を取ってきたのに、「中国はこれで、係争地があると世界に宣伝し、国際世論を作られてしまう」(小野寺氏)からである。
普通、閣僚が元首相を「国族」呼ばわりすれば「大失言」とされて政治問題化するものだが、この時メディアも、民主党をはじめとする野党もほとんど騒ごうとしなかった。誰もが内心、鳩山氏のことを「そう思われても仕方がない。むしろ当然だ」と思っているからだろう。
鴨がネギを背負ってきた
鳩山氏が民主党の外交担当最高顧問を務めていた、昨年4月には、鳩山氏は核開発疑惑をめぐって政府が欧米諸国と協調して制裁圧力を強めていたイランに乗り込み、日米間に緊張を走らせた。「鳩山さんなら、何をやっても『アホー』で済む」当時の外務省政務三役の一人は、記者団にこうせせら笑ってみせたが、それで済む筈がない。鳩山氏は「鴨がネギを背負ってきた」とばかりに、欧米の足並みを乱したいイランの格好の宣伝工作材料となった。
民主党の岡田前副総理は、昨年11月の民放番組で、鳩山氏、菅直人氏、野田市と三代の首相に仕えて「一番大変だったことは何か」と聞かれ、こう笑いながら語っていたという。「鳩山さんとは、コミュニケーションがうまく取れなかった。野田さんは安定しているし、こちらが何か振り回されるとか、そういうことは全くない」鳩山内閣の外相だった岡田氏が、「宇宙人とは意思疎通できなかったし、振り回された」と暗に言っているのである。国民にとっては全く笑えない話だ。
鳩山内閣発足当時、外務省幹部は鳩山氏の東アジア共同体構想について、「鳩山さんからも岡田さんからも、説明を聞いたことがない。米国や諸外国に中身を聞かれて困っている」とこぼしていた。何のことはない。そもそも鳩山、岡田両氏の間でも認識は共有されていなかったのだ。わずか八ヶ月余りとはいえ、こんな危険人物が現実に日本のトップだったのである。知らないうちに日本は存亡の危機に立たされていたのではないか。
「自民党は、民主党政権の外交を『外交敗北』というが、それは違う。鳩山、菅直人時代はともかく、野田外交はきちんとしていた」野田内閣の閣僚の一人はこう強調する。だが、こんな言い分が世間に通るだろうか。仮に鳩山、菅両氏が開けた外交上の大穴を野田氏が多少塞いだとしても、胸を張れた話ではない。民主党議員は、鳩山氏のような人物をリーダーとして首相にまで押し上げたことをもっと反省すべきである。
民主党に決定的に足りないのは、この自らを客観的に評価し、悪いところは反省して改める能力だ。民主党が今年5月、衆院選大敗から半年近く経って公開大反省会を開いた際、自民党の石破幹事長はこうあきれた様子だった。「自民党はもう平成21年月の総選挙で惨敗したときから、大反省会だった。民主党は何で今頃やるんだろうね」
政治記者も不見識だった
ただ、公正を期すために付け加えれば、4年前の衆院選で民主党を大勝させ、鳩山氏を首相にした責任はメディアにも大いにある。政権交代が目に見えていた頃の『文芸春秋』の特集「これが日本最強内閣だ」によると、アンケートに答えた政治部記者84人が選んだ最強内閣にふさわしい人物は、当時、民主党幹事長だった鳩山氏がトップだった(12票)。政治部記者であれば、鳩山氏の発言が普段から常軌を逸しているうえにコロコロ変わり、朝述べたことと夕方言うことが全く違うことなど、十分承知していたはずだ。にもかかわらず、民主党へと草木もなびいた時流に阿り(おもねり)、鳩山氏を評価してみせるとはみっともない。
また、同じ特集で政治ジャーナリストの岩見隆太氏は、首相にふさわしい人物になんと鳩山氏を推し、その理由をこう書いていた。「今求められているのは、自身のことは横において、構想力と決断力を発揮する能力と勇気を備えている政治家です。その基準で選びました」岩見氏が鳩山氏に何を見て、何を期待したのかは不得要領だが、ともあれ鳩山氏の「能力と勇気」とは一体何だったのか。米軍普天間飛行場移設先は「最低でも(沖縄)県外」「トラスト・ミー」「移設先の腹案がある」……などと口走った挙げ句、最後に「国民が聞く耳を持たなくなってきた」と責任転嫁して放りだすことだろうか。
鳩山氏にかって普天間飛行場の県外移設を進言し、現在は東アジア共同体研究理事を務める元外務省法局長の孫崎氏は最近、講演などで鳩山氏の「明晰さ」を強調している。鳩山氏は確かに東大卒、スタンフォード大学博士課程修了という学歴は文句のつけようがなく、記憶力や理解力は優れていたのだろう。ただ、それとリーダーに必要な事の軽重と真贋を見抜き、優先順位をつける判断力、分別があるかは別の話だ。
フランス・モラリスト文学の最高峰とされるラ・ロシュフコーは「頭のいい馬鹿ほど、はた迷惑な馬鹿はいない」と喝破し、こうも指摘している。「世には馬鹿たるべく定められた人がいて、彼ら自身が進んで馬鹿なことをするだけでなく、運命そのものがいやおうなしに彼らに馬鹿なことをさせるのである」国民は、一生のうちそう何度もお目にかかれない「運命の馬鹿」に出会って巻き込まれ、彼が必然的に仕出かす数々の「馬鹿」に翻弄されてきたといえよう。
『週刊文春』6.13 産経新聞 阿比留瑠比(あひるるい)
過去の天下りの規制策は、ザル法だった
これまでにも、天下りを是正、あるいは撤廃させるための規制強化は行われてきたようだが、それでも天下りは一向になくならない。規制策がザル法であったからだ。そもそも国家公務員法では、退職後2寝年間は退職前の5年間についたポストとは関係の深い企業に就職することを禁止しいるが、人事院が認めた場合はその限りではなかった。しかも、本書で問題としている外郭団体への天下りや、外郭団体から民間企業への天下りは規制の対象外で、外郭団体を経由した「迂回」も可能であった。そこで1997年には、局長以上の者が各庁の影響力の強い企業へ天下ることを禁じる、その他の者も代表権を持つ役員にはなれないなど、規制は強化された。
しかし、2007年に成立した改正国家公務員法では、2008年末にこの規制を廃止し、代わりに再就職後に出身省庁に対して口利きすることに対する刑事罰が設けられた。一応、内閣府が利害関係を事前審査すること、在職中の利害関係企業などへの求職活動は禁止することが明言されたが、天下りそのものは野放しにされたのだ。
また、斡旋についてはどうであろうか。省庁による組織的な斡旋が禁止されたのも、2008年12月31日だ。ただこれも原則禁止であって、内閣府の官民人材交流センターによる斡旋は残った。根絶する気はもとよりなかったということがわかる。そんな状況の中、2009年8月の参議院議員選挙で、民主党政権が実現した。それを見越して、各省庁で駆け込み的な天下り事案が多数起こってしまった。天下り隠しも横行した。たとえば厚生労働省所管の独立行政法人「高齢・障害者用雇用促進支援機構」が毎年、全国47都道府県にある、同省OBの天下り先である公益法人「雇用開発協会」対して、同省の交付金によって賄われている雇用支援事業を随意契約で発注し、この事業の委託費から天下りOBの年収を支払うように指示していたことがわかった。
あるいは、同年11月、厚生労働省所管の三つの独立行政法人が、天下りOB6人を給与水準が公表されない嘱託職員として雇用していることが、朝日新聞の調べでわかった。三法人とは、「高齢・障害者雇用支援機構」「雇用・能力開発機構」「労働政策研究・研修機構」だ。この三法人には、天下り役員が5人いたが、その年収は約1300万円〜1700万円で、6人の嘱託職員の年収も非公表ながら、約900万円〜1200万円であったという。一般的な嘱託職員の年収は300万円〜400万円が相場で、これはまさに天下り隠しだ。
その後、12月になって、総務相が発表したところによると、独立行政法人の非正規の嘱託職員のうち、国家公務員の再就職で、年収1000万円以上もらっている職員は、7法人で合計11人であることがわかった。2006年度施行の行政改革推進に関する法律で、役員を含めた独立行政法人の人件費は、2005年度を基準に2006年度以降の5年間で5%カットされることとなっていたが、嘱託はこの決定の対象外。さらに、2009年9月末に任期満了となる独立行政法人・特殊法人の役員人事のうち、国家公務員の再就職者が占める合計42ポストの天下り凍結が決定され、今後は公募によることとなったが、もちろん嘱託職員はその限りではない。
鳩山内閣は、2009年9月末に、官僚OB ・OGの独立行政法人への再就職を原則禁止とした。また、それだけでなく、政権公約に掲げた天下り斡旋の全面禁止を改めて宣言した。それを受けて、2010年1月からは、天下りができなくなった。官民人材交流センターによる斡旋も禁止だ。しかし、それでもなお、不安は残る。天下りの定義、斡旋とは何ぞやという部分は、いまだに曖昧であるからだ。官僚は聡い。”迂回”する道を、また容易に見つけてしまうのではないかと思う。
天下りを根絶するには、公務員の再就職を一律禁止にするのが近道だが、これはあまりに乱暴だ。それでは個人の職業選択の自由を奪うことになってしまう。自己努力や請われていく第二の人生を止める権利は誰にもない。また、天下りを禁止したまま肩叩きだけを続けるとなれば、それに応じないキャリアなどが増え、混乱が生じる。あるいは官公庁の人件費が膨らむ。独自に職を見つけるために、腕を磨くのではなく、民間企業などとの個人的な癒着を招く恐れもある。
あるいは公務員の身分のまま。独立行政法人などに出向する現役出向が組織的に増えるという予測もある。そもそも「斡旋の禁止など意味がない」と福島氏はいう。なぜならば、記録に残るように書類によって斡旋をお願いするわけではないからだ。それこそ阿吽の呼吸で行なわれることであるから、「斡旋などない」「斡旋などしていない」と主張されれば、それでおしまいというわけだ。
嘱託扱いや現役出向など、敵もさる者で、浅知恵の限りを尽くして、自分たちの組織、慣行を守ろうとする。「呼び寄せ」も厄介だ。呼びよせとは、天下って独立行政法人や公益法人等で役員となっている人間が、省庁時代に自分のグループに所属していた息のかかった後輩などを呼び寄せることを言いう。それで自分は理事長などにおさまって、一生安泰の王国を築くわけだ。
『天下りの真実』 市村浩一郎
天下りは公務員制度のガンのようなもの
天下りはなぜ生まれるのだろうか。天下りは現行の公務員制度のガンのようなものだ。公務員制度そのものにガンを生む原因が内在してしまっているのだ。つまり、天下りは公務員制度の必然なのだ。だから始末に負えない。公務員制度は、実質、民間企業などにこれまで見られたような終身雇用ではない。多数を競争させて、昇進させ、ある時期が来ると肩たたきをして退いてもらうのが慣例なのである。
退くといっても、公務員法によって、公務員はその身分が守られているため、辞めさせるわけにはいかない。だから、天下りをさせる。早期退職勧奨制度だ。まさに人事の停滞を防ぐための措置なのだ。改めて考えてみれば、おかしな話した。公務員という身分は守られているのだから、いわば終身雇用なのに、その居場所はなくなっていく。だから、役所の外に居場所をつくらなければならないという矛盾がそこにあるのだ。まさにガンだ。
天下りの問題は、何もキャリアだけに留まらない。むしろ数のうえではノンキャリアの天下りの方がはるかに多い。どちらも問題だ。各省庁は毎年、20人ほどの事務官を採用するが、福島氏の同期はすでに4人に1人が役所を辞めているという。では、残りの人達はどうなっているかというと、生き生きしているのは、ほんの一握りだ。その一握りのいわばエリートは、自分こそがこの省、そしてこの国を支えていると息巻いている。その他大勢は、意気消沈して、やる気もない。辞めて民間に行くこともできないというわけだ。
だから、百歩譲っても、各省庁でキャリアとして必要なのは各年次に5人くらいでいい。あとの15人は、スタッフとしては必要かもしれないが、同じキャリアである必要はない。いや、むしろ公務員試験を受験した役人でないほうがいい。理系、あるいは法律、はたまた金融工学などの各分野での専門家の方がいいのだ。「ゼネラリストで、東大法学部を出たことだけが取り柄。書類を書くことが得意。誤字脱字を見つけることは誰にも負けない」……そんな人材はもういらない。
「同期横並び昇進」という慣行が天下りを生む元凶
天下りが現実味を帯びてくるのは、課長時代というのが一般的だ。課長から指定職である審議官へとステージが上がる段階で、一回目の振り分けが行なわれる。審議官になると、給与も大幅に上がるし、それに伴い退職金もドンと増える。ちなみに、課長職の年収は800万円といったところだが。審議官になると1200万〜1300万円に跳ね上がる。その時に選に漏れた人間たちが、まず天下る。その際に、秘書、個室、車という三点セットと1400万円以上の年収が必要になる。
なぜそれほどまでの厚遇が必要なのかというと、肩書をスムーズに行なうためだ。同期で残った人間よりも高い給与だし、体面も保てるから、「行け」となるわけだ。「安くなるけど、出ろ」ではうまくいかない。公務員の身分が保障されているから、再就職を断ったからといって辞めさせるわけにはいかない。だから、「飴」が必要にになる。その飴を飲みこんで出ていってもらわなくては困るわけだ。
民間のように、早期退職割増金のような制度があればいいのだけれど、そうはいかないのが現行の公務員制度というものなのだ。出世レースはまだまだ続く。局長を経て、最終的には一人の事務次官が決まるまで、同期の出世レースは続く。同期入省者、あるいは後輩から事務次官ないし次官級ポストが決まったら、もう退職を待つこともできず、役所を去るしかない。
なぜかというと、役所には「同期横並び昇進」という、民間から見ると訳のわからない慣行があるからだ。これは、読んで字のごとく、同期入省組は横並びで昇進するというものだ。そのため、後輩が先輩を決して追い抜かないという慣行もある。完全無欠の年次主義なのである。しかしこれには無理がある。局長や事務次官のポストが入省者の数だけなければうまくいかない。そんなことはあり得ない。当然、ポストはピラミッド状で上に行くほど減っていくから、昇進できなくなった者は、その場から消えなければいけない。だから、天下りはなくならない。その起源は、江戸時代にまで遡るといわれる。そういう意味では、日本の官僚制度はいまだに江戸幕府のままなのだ。
『天下りの真実』 市村浩一郎
組織的かつ慣行的、保身的な斡旋や呼び寄せ行為
天下りとはまさに、天から降ってくるかの如く、受け皿となる各種法人に実質的な拒否権がなく、かつ、その降ってきた人材は、法人の維持、あるいは民間企業の場合の利権構造の強化に役立つという面はあるだろうが、組織の健全な活動の役に立たず、それでいて高給取りでプロパーの社員や職員から見れば、治外法権の存在となることなのだ。そうした天下りは、長らく中央省庁などに勤める国家公務員や、都道府県・政令指定都市の地方公務員が慣れ親しんできた雇用環境なのである。
天下っていく本人たちにとっては、それはまさに優雅な第二の人生だ。特殊法人や公益法人で、個室の大きな椅子に座って優雅に新聞を読んでいる姿を思い浮かべてもらいたい。しかも、一度ならず、「わたり」も多い。何度となく天下りを繰り返して、給料どころか、そのたびに高額の退職金までもらうのである。
もっともそこまで優雅な第二の人生を過ごせるのは、さすがに事務次官や局長といったクラスの人間に限られる。どこの役所か、そしてどのポジションで天下るかによって、第二の人生のクオリティ・オブ・ライフじゃ大きく違う。外郭団体を多く抱える財務省や国土交通省などの場合は、行き先が多様であるから融通も利く。ポジションでいえば、事務次官であれば総裁や理事長に天下る。局長経験者であれば、ナンバー2の理事が一般的だ。天下りのランク分けは意外と小刻みだとも聞く。課長以外はそれほど優雅ではない。そこには”現役こそ華”といえそうな色合いがある。課長、企画官以上の高級官僚に関していえば、その約6割が天下っているといわれる。
天下りは詰まるところ、税金の無駄遣いを生む
では、そうした天下りはどのような弊害を生むのであろうか。一つは、税金の無駄遣いを生むという点。もう一つは、天下り先のプロパー社員のやる気を阻害し、組織のモラルを低下させるという点。一つは、先ほどのトラック協会の陳情の件でも明らかなように、政策が歪むという点などを挙げることができる。
例えば、国交省のキャリアが、公共工事を請け負う側の建設会社に再就職することなどは、天下りの典型といえる。そこに何やらいぶかしい臭いがするのはいたしかたないことだろう。天下り先が民間企業の場合は、必然的にそうしたケースが多くなる。天下りを受け入れる側にも、それなりも目的意識があるというわけだ。その典型的な例が、公共工事の受注だ。たとえ、競争契約(入札)を行なうとしても、もし入札価格が事前に漏れていたら、そこに本来の競争はないということになってしまう。民間企業の側のニーズは、もっぱら役所からの情報収集と、働きかけなのである。もちろん、一部にはそうでない健全な理由もあるだろうが。
しかし、そうした官民の癒着をイメージさせるものだけが天下りの全貌ではない。税金の無駄遣いは各所で起こる。例えば「わたり」行為に対しては、その都度退職金が発生する。これも税金だ。さらにいえば、天下り先の確保のために、もっともらしい設立目的をでっち上げて、外郭団体や公営企業を立ち上げてしまうということすらやりかねない。
そうした団体や企業も、何らかの活動を行なう。極論すれば、それは本来必要のない事業だ。収益の上がらない道路や箱モノがつくり上げられることになる。その事業が必要だからではなく、天下り先を確保するためだけにだ。そうした外郭団体等を設立するために、財政投融資資金も投入されてきた。この原資は、国民の年金の保険料などだ。税金だけでなく、大事な年金の掛け金が無駄に消費されることも少なくないわけだ。
さらにいえば、そうした団体や企業がそれなりに必要な活動をしていたとしても、そもそもその活動や事業に意義があったとしても、そこに経営手腕がないために、あるいは真面目にやる気がないゆえに、高コスト体質が維持されてしまうという面も否定できない。NPOであれば、より低コストでより効果的な、例えば環境維持活動ができるのに、安易にコンペを行ない、しかも「高くて当たり前」という行政気質を持ったままだから、結果として高い見積金額での契約を推し進めてしまう。たとえ賄賂といった見返りがなくとも、恐ろしく高い金額が当たり前に支払われていく。これもまた、税金の無駄遣いに他ならないだろう。
外郭団体とは、いわば官公庁の調整弁的存在
ちなみに、特殊法人にはNHK(日本放送協会)やJRA(中央競馬会)、JT(日本たばこ産業株式会社)などが含まれる。また独立行政法人には、造幣局、あるいは産業技術総合研究所や土木研究所などの各種研究機関なども含まれる。いずれにしても、外郭団体のほとんどの仕事は関連官公庁の下請け業務であるが、なくてもいい団体も少なくない。それでも外郭団体は放っておけば増えていく。
統廃合どころか増殖の一途をたどる。毎年吐きだされる官公庁のキャリア、ノンキャリア脱落組が役員や幹部職員、あるいは嘱託などの身分で天下るためだ。そうした天下った役員などの伝手(つて)でその団体は生き残ることができるし、「呼び寄せ」といって、天下り役員たちが自分たちの後輩を呼び寄せ、後を継がせるわけである。天下りだけでなく、官公庁の人件費を見かけのうえで少なくするために、出向という手も使われる。まさに有能な調整弁なのだ。
キャリア官僚は今でも優秀なのであろうか
次にキャリア、ノンキャリアであるが、キャリアは国家公務員の上級甲種または1種に合格し、幹部候補生として中央省庁に採用された国家公務員の俗称だ。こうした制度は、明治以来変わらない。日本を近代国家にすべく、ドイツをお手本に公務員採用制度をつくったのが始まりだ。当時、帝国大学出身者は無試験で任用された。後に制度を改め、高等文官試験が登場する。これが現在のキャリア試験のルーツとなっている。だからいまだに東大法学部卒業者はエリートとされる。旧態依然たる考え方のうえに、虚構が築かれているに等しい。
法律は西洋から輸入した学問であり、それを原文で勉強し、身につけていることが特殊だった時代に作られた役人の仕組みがいまだに続いているわけだ。明治初期は大学と呼べるものは帝大のほかわずかしかなかったから致し方ない。しかし、いまや東大はそれほど特殊な大学ではない。また、法律も馴染みの深い学問であり、法学部出身者であることで、際立った技能が、身につくわけでもない。どの大学の出身者であっても、それなりの地頭があって、任用後にしっかりと勉強していけば、法制局と渡り合いながら法案をつくることなど、簡単とはいわないまでも、さして難しいことではないはずだ。
いずれにしても、高級官僚候補生を採用し、昇進させるシステムを「キャリア制度」と呼ぶ。本省の課長クラスまでは横並びで昇進し、そこから熾烈な出世競争が勃発し、その争いについて行けなくなった、またついていく気がなくなった人間が天下っていく。もちろん、全員ではないが。
ノンキャリアは、その他の職員だ。公務員試験で、国家公務員採用一種試験以外の試験に合格し、採用された公務員を俗にこう呼ぶ。広義には、地方公務員も含むようだ。キャリアとは違い、ノンキャリアは出世してもせいぜい本省課長クラスまでである。ちなみに官僚とは、決まった定義はないが、キャリア官僚の略で、キャリア組のことを指すようだ。
『天下りの真実』 市村浩一郎
| 2013年10月04日(金) |
世界30カ国の軍事力 �� |
総合部門は米国がトップ
「特殊部隊戦力を順位化するなら、質量ともに優れたアメリカがトップ、2位はロシア、3位は質が圧倒的な中国、続いて北朝鮮、韓国の順でしょうか。北朝鮮同様に、韓国も特殊部隊員の数は多いんです」(菊池氏)北朝鮮の入賞は唯一「特殊部隊戦力」部門のみだ。「身も蓋もな言い方をすれば、戦争力は核を持っている国の勝ち。従って、安保常任理事国5カ国の独壇場ですよ」(防衛省関係者)
これら5カ国(米ロ中英仏)に共通するのは、いずれも核兵器を持ち、空母と原子力潜水艦を保有している点だ。「原子力潜水艦は燃料補給が必要ないため、長期にわたる作戦が可能です。さらに、敵に捕捉されにくい海底に潜む原潜から発射されるSLBM(郭弾道ミサイル)は究極の兵器です」(黒柾氏)これら5カ国の中でも、ケタ違いの強さを誇るのが米国だ。「装備の質量・国防予算の額がずば抜けています。世界中で米国のみが、72時間以内に世界のどのエリアにも必要な兵力を投入できる能力があります」(菊池氏)
その強さは、「米国は全世界を相手にしても勝てる」といわれるほど。陸海空の三軍に加え、”第4の軍隊”と呼ばれる海兵隊だけでも、「ほとんどの国の軍相手に、対等か、それ以上に戦える」(防衛省関係者)問いから驚きだ。米海兵隊は、歩兵のみならず、FA-18戦闘機、F-35ステルス戦闘機、垂直離着陸機オスプレイといった航空装備、空母機能も兼ねたワスプ級強襲揚陸艦などの海上装備も保有する”スモール軍隊”。予備役を加算すれば、ちょうど陸海空自衛隊の総兵力と同程度の精鋭軍団だ。
「米国は、プレデターやグローバルホークといった無人航空機分野でもパイオニア。今後、戦争の概念を一変する新兵器が登場するなら、それは米国でしょうね。総合戦力はもちろん、陸海空軍のどれを取っても米国のトップは微動だにしません。2位はロシア軍ですが、米国との差は恐ろしく開いています」(黒金氏)米国と同盟を結ぶわが国だが、専守防衛に特化した自衛隊ゆえ、総合部門でも上位入賞はならない。
「それでも陸、海は5位入賞です。陸は部隊の錬度の高さと国産高性能戦車を保持している点が高評価。海は、帝国海軍以来の外洋海軍運用能力の高さと、イージス艦や、”日の丸空母”と呼ばれる『いずも』型の進水がポイントです。空だけ入賞を逃したのは、爆撃機を持てないことと、ステルス機を自国開発できていないからです」(前同)国産ステルス戦闘機は、「心神」(しんしん)のコードネームで現在、試作機の組み立てが 始まっているため、今後に期待できるだろう。
自衛隊が金2銀1の大健闘
ランク入りは逃したものの、注目の国もある。「筆頭はインド。核保有国でもあるし、南アジアの重鎮といってもいいでしょう。空母に加え、自国開発のアリハント級戦略原潜を持ったため、軍事大国といえます。続いてシンガポール。ここ10年でハイテク装備を続々導入し、戦闘機はF-16、戦車はドイツ製のレオパルト2、世界最強とされるアパッチ攻撃ヘリにフランス製のステルス・フリゲート艦と、身を見張るものがあります。(菊池氏)
核開発が話題のイランや内戦中のシリアは、「イランの装備は旧式。だからこそ、核開発に血道をあげるのでしょう。シリアは陸軍中心の国で、装備は旧ソ連製。素人も入り混じる反政府軍に反撃され、化学兵器を使用したところをみると、その実力は推して知るべし」(前同)。個別部隊では、日本は個別競技なら、「金2つ、銀1つ」を獲得できるでしょう。「対戦車戦闘能力は金でしょうね。陸上自衛隊の10式戦車は、世界唯一のネットワーク化を実現した最強戦車です。蛇行走行しながら、百発百中で敵を撃ち抜きます。これに敵う戦車は今のところ存在しません」(同)
敵潜水艦を補足・攻撃する対潜哨戒能力も世界一。「サブマリンハンターの異名を持つP-3C哨戒機を70機以上運用しています。アメリカを除けば、こんな国はありません。後継機の国産哨戒機P-1は、P-3Cを大きく上回る能力を持ちます。護衛艦に搭載された哨戒ヘリSH-60Kも、世界最強の哨戒ヘリです。海上自衛隊の対潜哨戒能力は断トツでしょう」(黒金氏)日本は、航空戦の花形、対戦闘機戦闘力でも健闘。旧式のロッキードF-4で米空軍のF-15を撃破。零戦の時代からドッグファイトは日本の18番なんですよ」(前同)軍事にもお家柄は出る。
『週刊大衆』9.30
| 2013年10月03日(木) |
世界30カ国の軍事力 �� |
かっての帝国主義時代とは違い、現在は「他国の領土を掠め取ろう」というコンセプトで軍隊はつくられていない。自国の防衛、海洋権益などを確保するために軍隊は存在する。「露骨な拡大主義を取っているのは中国ぐらいですね。彼らには、清の時代の最大版」を復活させたいという野心がある。加えて、尖閣諸島に代表されるように、資源の埋蔵する地域も手中に収めようとしているんです」(外務省関係者)
そうした国の軍隊は、兵員や物資を運搬・陸揚げするための強襲揚陸艦(ようりくかん)、外洋で戦闘機やヘリの基地となる航空母艦を配備しようとする。中国軍にはこれがピタリ当てはまる。「ウクライナから中古で買って、改修した空母『遼寧』(りゃおにん)が就役。エアクッション揚陸艇4隻、小型揚陸艇2隻を搭載できる大型のドッグ型揚陸艦『玉昭』(ゆちゃお)型を南海艦隊に3席配備。これらは大規模な上陸作戦に備えている証拠です」(軍事記者・黒金氏)
中国軍は陸軍主体だったが、近年、海空軍力の整備に血眼になっている。「チャイニーズ・イージスと呼ばれる旅洋�況振鄰犂呂筺⊆幼�40キロ級の対空ミサイルを搭載したフリゲート艦など、近代的な軍艦が次々と就航しています」(前同)補足すると、イージス艦というのは、米国が開発した対空防衛能力が高い護衛艦のこと。軍隊の天敵は、空からやってくる戦闘機やミサイル。これらを高性能レーダーで瞬時に補足し、すぐさま対空ミサイルを発射して撃墜するのが、「イージスシステム」だ。
海上自衛隊も「こんごい」型、「あたご」型の二種類のイージス艦を運用するが、イージス艦を持っているのが一流の海軍の証しなのだ。「中国空軍も近代化を遂げています。ロシアのスホイ27をライセンス生産した電撃10戦闘機など、世界標準の戦闘機を運用しています。一応、次世代ステルス戦闘機という触れ込みの電撃20も開発しており、侮れません」(同)海空軍の目覚ましい近代化に加え、”人海戦術”で有名な160万人の兵力を擁する陸軍。さらには、190発の核弾頭が実戦配備されている中国、ならばさぞかし精強な軍隊かといえば、さにあらず。
現代戦の勝敗は、陸海空軍が三位一体となった統合運用能力で決するとされています。この点、中国軍は日米に大きく後れを取っています。、また、中国軍は7つの軍区に分かれていて、それぞれにお山の大将がいるため、統制がとれていません。兵器の密売など、風紀の乱れも指摘されており、実戦となれば期待通りの実力は発揮できないでしょう」(軍事ジャーナリスト)
中国はいまだ、”軍閥”か割拠する時代から抜け出せていないようだ。「中国は核を持つため、肉を切らせて骨を断つ戦争はできる。ただ、国連が機能し、NATOのような集団安全保障体制が整っている現代においては、第二次大戦のような総力戦は起こり得ない。現代の戦争は、領土をめぐる局地紛争の類。中国軍は、こうした現実的なシナリオに対応できていない」(防衛省関係者)
自衛隊は、相手国に攻め入って占領する軍備を持たないが、局地的な紛争への対応は万全。部隊の士気、錬度、兵器の質および可動率(すぐに運用可能な装備の割合)も世界トップクラスとされるため、実は””戦争力はかなり高いとされる。自衛隊が弱いと考えているのは日本人だけ。世界的に見れば、日本は優秀な戦力を持っているというのが、共通認識です」(軍事ジャーナリスト)それでも中国軍は、総合戦争力では米ロに次ぐ第3位。陸軍力も同様で、海軍力は5位入賞ならず。空軍力ではギリギリ5位といったところ。
では”中国の子分”北朝鮮はどうか。「装備の数こそ多いですが、旧式の骨董品ですよ。北朝鮮はまともに戦っても勝ち目がないので、核開発による”恫喝外交”に頼るしかないんです。(前同)それゆえ、18万人ともいわれる特殊部隊も北朝鮮の命綱だ。若き将軍様から命が下れば、国内外の特殊部隊員が一斉に破壊工作や、ケリラ戦を開始する。
特殊部隊が活躍する戦闘は、「非対称戦」と呼ばれ、近代戦では重要視される。米軍には対テロ戦闘を得意とするデルタファース(陸軍)、長期にわたる敵地潜入を得意とするグリーンベレー(陸軍)、ビンラディン急襲作戦を成功させたネイビーシールズ(海軍)がある。ロシア軍には百戦錬磨のスペツナズが、イギリス軍には世界最強と称されるSAS(陸軍特殊空挺部隊)が、自衛隊にも特殊作戦群(陸自・習志野)が存在するなど、いずれの軍隊も特殊部隊を持っている。
『週刊大衆』9.30
| 2013年10月02日(水) |
東京五輪バブルの正体 |
2020年 開催決定 歓喜に沸いた日本列島…だが手放しで喜べない
本当に儲かる人 損する人
9月7日、アルゼンチンで行なわれたIOC総会で、ロゲ会長が2020年の五輪開催が、東京に決まったことを発表した。その瞬間、日本の招致委員会たちは喜びを爆発させた。地球の裏側の日本列島も歓喜に沸き、経済効果は3兆円、いや6兆円だ、アベノミクス4本目の矢だ、と期待感を膨らませた。
だが、一週間たつと、五輪開催を喜ぶ温度差が巷では徐々に広がりつつある。東京五輪といっても、大阪には恩恵がまわってくるのは最後の最後だからと、大阪では懐疑的。期待できないという。ではどんな人たちが東京五輪で儲かり、誰が損するのだろうか。
「まず大喜びしているのは、霞が関の官僚と永田町の政治家たちでしょう」そういうのは現在シンクタンクに勤める元官僚。「五輪関連という題目さえ唱えれば、予算がつくからです。新国立競技場や選手村、各競技施設の建設などが見込まれていますが、このほか、老朽化した首都高速道路やトンネルの改修などもあります。予算がつけば利権も生まれ、官僚や政治家は甘い汁を吸うことができます」
経済評論家の杉村氏もこういう。「東京五輪決定で政府は、すでに発表済みの国土強靭化計画を進める大義名分を得たことになります。つまり全国でどんどん公共事業をやれる。これから五輪バブルが始まるのは間違いありません」この五輪バブルの中心地は東京湾岸地区。会場はここに集中するので、開発を行なう会社は潤いそうだ。「湾岸地区のお台場に本社があるフジテレビの上層部が、ある会議で”ウチは今視聴率的には苦しいが、これですべて解決する”と胸を張っていたといいます。視聴率の皮算用はともかく、フジは関連会社などで不動産業も大規模に展開し、ダイバーシティーなど同地区の開発を牽引してきましたから、さもありなんです」(民法関係者)
同地区だけでなく、近郊でも建設ラッシュとなる。建築業界からはこんな声が。「実は現状でも人手不足なんですよ。特に鉄筋工不足で、10人分の仕事を1人でこなさなきゃならない状況。これ以上仕事が増えたら、みんな過労死するんじゃないかと…まあ、嬉しい悲鳴ですけれどね」(下請け会社社長)さらに、ある現場関係者は、こう胸をなでおろす。「今の景気も、続いて来年か再来年までと噂していたんです。東京五輪が決定してくれたおかげで、”寿命”が延びました」
家電業界も鼻息が荒い。49年前の東京五輪がテレビの普及率を強引に後押しした”栄光”の再来を期す。「現在のフルハイビジョンの16倍の解像度を持つ8Kテレビ。この本格放送が東京五輪の年に始まる予定です。これで一気に買換え需要が伸びるはずです」(家電メーカー関係者)歓喜の声を上げたのは、東京ばかりではない。
中央リニア新幹線のルート予定地になっている山梨県でも歓迎ムードが高まっている。リニアは2027年の開業予定だが、五輪開催の2020年に前倒しして開業という話が飛び出したのだ。甲府商工会議所では「もし全線の開業が間に合わないとしても、東京〜甲府間の試験開通は十分期待できると思います。時速500キロ以上の世界は、山梨でしか味わえませんよ」前出の東京五輪に合わせて東海道新幹線が開通したように、リニア新幹線が2020年東京五輪のシンボルになりそうだ。
東京から遠く離れた北の街でも期待が膨らんでいる。というのも、サッカー一次リーグの予選が札幌ドームで行なわれるためだ。札幌は勝手冬季五輪が開かれた土地。夏季と冬季、いずれも開催する年になるのが札幌の誇りだという。「日本に来る外国人観光客が年間2.000万人といわれる時代。五輪を契機にもっと集客力をつけられるよう、知恵を出していきたいですね」(札幌観光協会)
しかし、いいことばかりではない。まず懸念されるのは、マンションの高騰だ。「建設業界では人手不足に加えて、建材価格の急騰が問題になっています。円高や東日本大震災の復興需要で、ずいぶん値が上がったところへ五輪が重なると大変なことになる。特に首都圏のマンションは、30〜40代の一般世帯には手が届かなくなるでしょう」(大手不動産業者)どうやら手放しの歓迎ムードに浸ってはいられない雲行きだ。
目下絶好調の建設業界でも…
タクシー業界では”逆経済効果”を懸念する。「もちろん、景気回復でタクシーに乗ってくれる人が増えればいいですよ。ところが客が増えず、五輪特需で道路工事が増えて渋滞がひどくなったら逆効果です」(タクシー会社)実際にハンドルを握る運転手もこう吐き捨てる。「東京五輪?迷惑もいいところだよ。だって、猪瀬知事が、五輪に合わせて地下鉄やバスを24時間運航するって言ってたじゃない。それでなくても深夜の長距離がいないのに。外国人?ダメダメ、彼らはみんな公共機関を使って、タクシーなんか使わないよ」
本来なら”儲かる”側のホテル業界関係者も不安を覗かせる。「先のロンドン五輪では、開会式からしばらくの間、ロンドンの滞在客が3割ほど減ったんです。ホテル代も高騰したし、一般観光客が五輪の混雑を嫌い、他の国へ逃げたためです」実は、絶好調の建設現場にも、こんな声がある。「今が良くても、いつどうなるかわからない。だから若い連中には、その時のために副業を持っておけって」(とび職の男性)
前出の経済評論家・杉村氏は、五輪特需の危うさをこう指摘する。「公共工事の財源をどう捻出するか。仮に消費税を5%から10%に引き上げても追いつきません。危機的な財政運営が続き、ガクッと経済が失速しかねません」とはいえ、56年ぶりに日本で開催される夏季五輪。賛否はあるが、アスリートたちには励みになることは間違いない。
『週刊大衆』 9.30
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