加藤のメモ的日記
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2013年09月30日(月) ダダ漏れの原発汚染水

ダダ漏れの原発汚染水・世界はこんなに怒っている

福島の放射能汚染水の問題は、日本のオリンピック招致に大きな逆風となった。続いてアメリカ軍によるシリアへの空爆問題が、安倍政権のアキレス腱となる懸念が出てきた。世界の声を総特集した。アメリカ人は、福島の正確な情報が少ないことに苛立っているという。米ランド研究所のブルース・ベネットアナリストが、アメリカ人の声を代弁する。

「多くのアメリカ人は、福島原発の問題は、2年前にすでに解決したものと思っていました。そのため、今になって突然、汚染水の問題がクローズアップされて、日本でいったい何が起こっているのかと疑心暗鬼に陥っています。しかし、不安は募るけれども、日本から正確な情報が提供されない。それでまた不安が増幅されるという悪循環です」

ロサンゼルスのTV「KTLA」アンカーマンのフランツ・バックリー氏も続ける。「2年前に東日本大震災が発生した際、私は48時間以内に仙台へ赴き、、現地取材にあたりました。正直言って、日本取材は恐怖でした。自分がどれだけ放射能に汚染されるか分からなかったからです。今日本政府に言いたいのは、真実をリアルタイムで伝えてほしいということに尽きます。日本がこれを怠れば、日本国民の信頼を失うのと同時に、世界からの信頼も失うことになります」

ヨーロッパでも、放射能汚染水の問題は、日増しに関心が高まってきている。脱原発を宣言したドイツでは連日、メディアに「フクシマ」の文字が出ない日はない。ドイツを代表するニュース週刊誌『シュビーゲル』は、「今週のフクシマ」のコーナーを毎週設置し、海洋汚染の最新状況から日本政府の対応まで、大量の記事を流している。『南ドイツ新聞』(8月26日付)は、原発問題に関して、安倍政権を痛烈に非難する記事を掲載した。

〈安倍首相は、これだけ世界を震撼させる福島の事故を続けていながら、日本国内の原発をストップさせようとしない。それどころか、原発のセールスマンをやっているのだ。すでにベトナム、トルコ、インド、アラブ首長国連邦などで、日本の原発をセールスして回った〉ドイツで最大部数を誇る高級紙『フランクフルター・アルゲマイネ』元東京支局長のバーバラ氏が語る。

「本当はドイツは連日。フクシマ、フクシマです。ドイツ人からすれば、福島原発問題に関して、日本のあるゆることが信じられないのです。なぜ日本はこれほど危険な状態でいながら原発を止めないのか、なぜ東京電力は、事ここに及んでまだ隠ぺいを続けるのか。なぜ日本政府はもっと早く介入しなかったのか……。中でも一番信じられないのが、これだけの事故を起こしていながら、安倍首相が日本の原発を世界に売ろうとしていることです」

フランスの『ル・モンド』紙は、フランス放射線防護原子力安全研究所のジェローム・ジョリー副所長のインタビューを掲載した。ジョリー副所長は、「もはや、包括的な対策を講じるのは、困難な状況に陥っている」という悲観的な見解を示した。また、イギリスの『ガーディアン』紙も社説で「フクシマの悲劇」を取り上げた。そしてやはり福島に対する悲観的な見解を述べた上で、「我々がフクシマの教訓をEUの原子力政策にどう活かすかが問われている」と論じた。

日本は国際犯罪国家だ

欧米の報道に比べて、アジアはさらに身近な問題として、放射の汚染水問題を捉えている。隣の韓国では、日本批判が沸騰している。『朝鮮日報』は、「福島原発の放射能は増加し、3時間で致死量」との大見出しで、次のように報じた。〈福島原発の放射能流出は、、もはや致命的な水準になってきた。東京電力が9月3日、福島原発の汚染水を観保管しているタンクの放射線量を測定した結果、毎時最大2200マイクロシーベルトが検出された。これは一人当たりの年間被曝許容値の2200倍にあたる。3時間被曝すれば死亡する量なのである〉

韓国与党のセヌリ党も、9月2日に緊急声明を発表した。〈日本は日々300トンの汚染水が太平洋に流れているというのに、対応が後手後手に回っている。我々はもはや日本を信じることができない。日本産の水産物に対しても、不安感でいっぱいであり、韓国政府には、これらを全面的に禁止する措置も考慮するように求める〉韓国の専門家たちも、声を上げ始めた。そのような代表格といえる徐釣烈ソウル大学原子核工学科教授に、本誌が電話をかけると、教授は痛烈な日本批判を展開した。

「今の日本は、”国際犯罪国家”だ。高濃度の汚染水を低濃度にするなどと平気で言っているが、そんなことは科学的に不可能だ。また、これだけ危険な汚染水を日々、海洋に垂れ流ししていながら隣国の勧告に対して、なぜ何の情報も提供しないのか。もし仮に、韓国の原発が同様の事故を起こしたと考えてみてほしい。日本は今の韓国よりも、もっと神経質に騒ぐに違いない。福島の問題はすでに日本だけではなく、国際的な問題なのだ。日本は今後、この問題に関して、一つ一つ国際社会の了解を得ながら進めていくべきだ」

もう一つの隣国・中国も連日、福島報道を続けている。だが、どのメディアも事実を淡々と伝えており、韓国のようなヒステリックな報道はしていない。例えば、9月4日に国営新華社通信は、「一般の日本国民が、東京電力幹部を刑事告訴」「日本政府が放射能汚染水の対策を開始」という記事を配信したが、すっかり恒例化している痛烈な安倍政権批判は見られない。北京在住のジャーナリストの季大音氏が明かす。

「我が国は現在、61基もの原発を建設中で、広東省では住民による原発建設反対運動が起こったばかり。政府は本音では大いに日本を批判したいのですが、それが国民の反原発運動となってハネ返ることを警戒しているのです」ともあれ、日本は2020年のオリンピック開催決定までカウントダウンというニュースで盛り上がっているが、世界の報道は、フクシマ一色なのである。安倍首相は、9月4日から9日までの2泊4日の外遊中、「福島問題は、7年後の2020年には全く問題ない」と強調した。だが世界は誰も、安倍首相の言葉を信じていない。



『週刊現代』 9.21


2013年09月29日(日) 天下りの真実 ��

12兆円もの血税を使う「公益法人」の通信簿

◆入省一年目のキャリアがOBを養う公益法人の実態
◆天下りは、公務員制度のガンのようなもの
◆過去の天下りの規制策はザル法だった
◆公務員に求められる素養や能力が変わった
◆外郭団体はまるで官公庁の植民地
◆「特定非営利活動促進法」という歪んだ法律
◆「事業仕分け」の偽らざる成果とは


今必要な、公務員制度改革と外郭団体の改革

これまで、天下りは事あるごとに問題となりながらも、誰もその全体像を把握できていなかった。まさに、そこは官僚組織という魔物に守られた聖域であり続けたのだ。自民党政権下で、一見、さまざまな規制策が採られてきたのだが、その実効はあまり上がっていない。

そこで民主党は、政権奪取にさきがけ、国勢調査の下調査と位置付けられる「予備的調査」という手法を用いて、天下りの実態調査を衆議院の事務局に命じ、2009年11月19日に調査結果を得ることができた。それは、『国家公務員の再就職に関する予備的調査』と題された報告書である。再就職とあるが、これはすなわち天下りのことだ。

この報告書には、中央官庁(国会、会計検査院、人事院、最高裁事務総局を含む)ごとに、特殊法人、独立行政法人、認可法人、公益法人、指定法人、特定営利企業等における国家公務員の再就職状況に関する事項が盛り込まれている。それぞれ何人の国家公務員が天下っているのか、そのうち取締役相当役職員は何人か、また政府からの金銭交付はいくらか、そのうち契約によるものはいくらで、補助金はいくらか、などである。

それでもなお、この調査報告書は、中央省庁関連に限ったとしても、その全貌を明らかにするものではない。しかし、今までにない規模の調査であることは間違いなく、天下りの実態を把握するには貴重な資料となっている。この情報は、民主党のホームページなどで閲覧できるようになってはいるものの、これまで決して広くアピールされることはなかった。さまざまなメディアで情報ほ一部は伝わっているようだが、第2部ではその情報を事細かく記した。

民主党の同志であり、官僚組織に詳しい後藤祐一衆議院議員、福島信享衆議院議員、玉本衆議院議員にも取材した。加えて、これまでに拙書において取材や編集にご協力いただいた株式会社エフの赤白氏にも加わっていただいて討論を重ねた。一人称で書かれているが、本書はそれをまとめたものだ。

討論の内容は、なぜ天下りがなくならいのか、なくすためには抜本的な公務員制度改革を行なうべきなのか。また、それが入口の対策であるとするならば、出口となる公益法人をはじめとする省庁関連団体の、外郭団体の改革はどのように行なうべきなのかということについいてである。私は、日本新党の職員であった時代から今日まで、日本におけるNPO(非営利組織)の活性化、さらに、行政セクター、営利企業セクターと並んで社会の三権分立をなすべきNPOセクターの拡充を目指して、その法制化などに取り組んできた。

1980年に「特定非営利活動促進法」が施行されたが、実はこの法律は時の政権与党であった自民党と官僚組織の激しい抵抗にあって。理想にはほど遠い、出来の悪い法律になってしまったのだ。その後、2008年12月1日に改正民法が施工され、法務省が「新非営利法人制度」と呼ぶ「一般社団法人に関する法律」が施工され、「公益は国家独占」としてきた悪名高き民法34条は過去のものとなった。

その法律のもとに、官僚がその設立許可の権限を振りかざして長年にわたり、役所のあたかも植民地であるかのように最たる天下り先である公益法人をつくり続けてきたのだ。それらの法人は200年から5年以内に新制度に移行することが求められるが、このままでは、植民地が植民地のまま衣替えをするにすぎなくなってしまう。

公務員という入口と、公益法人をはじめとする外郭団体という出口を結ぶ者は、天下りという人の流れであり、あらかじめ相手を特定する随意契約や補助金という名目の夥しいお金の流れだ。そしてそこには強固な癒着が生まれ、実を結ばない活動が展開され、ただひたすらに税金の無駄遣いが横行している。官公庁は、天下り先を確保するために、補助金や業務委託費などを活用して、天下り先法人に競争入札ではなく、随意契約で高額の業務委託や工事等の契約を行なう。あるいは補助金を交付する。

最近では、さまざまな批判を受けて、昔に比べれば随意契約は減り、競争入札が増えているというが、それでも、随意契約や補助金の比率は高い。しかも競争入札にしても、公正なものではなく偽装競争契約なるものが横行しているという。その手口は、入札公告の期間を極端に短くする、契約内容を曖昧にするなどして入札法人を少なくしたり、あるいは過去の実績などを持ちだして、新規の参入者を締め出すなどである。独立行政法人の場合、一般競争入札であるにもかかわらず、一者応札というケースが、実に50%近いという会計検査院の報告もあるほどだ。

こうした状況をなんとしても止めなければならない。まずはその実態を把握し、こうした官僚組織と民法がつくり出してきた”官製土壌”とでもいうべきあれた大地を耕し、力強い、健全な非営利組織(NPO)が生まれ、育ち、息づくようにしなければならない。これは急務だ。そのための第一歩として、礎として、私は本書をしたためた。



『天下りの真実』 市村浩一郎 


2013年09月25日(水) 麻生太郎のマスコミ買い占め計画

刻一刻と迫る安倍首相による消費増税のジャッジメント。そんな中、「安倍さんは消費全を上げないつもりだぞ」と周囲に漏らし、不安を隠さない側近がいるという。それは麻生太郎財務相。なんとしても消費増税を完遂するのが、財務省の代理人たる彼の務めだからだ。

「麻生氏は、九州・飯塚市で石炭採掘を通じ財を成した大企業の御曹司。実弟が代表の一族の企業『麻生』は、病院からガソリンスタンドまで、何でもアリのグループ69社、社員7000人を超す地元財閥です」とは、全国紙政治部記者。とにかくカネはある。

「『麻生』は昨年末、老舗の出版社『ぎょうせい』を324億円で買収。『麻生』の昨年の銀行借入金が356億円で、それをそのままつぎ込んだ形です。この会社は、社名の通り全国の自治体に行政関連本などの取引で深く食い込んでいた。各自治体とのパイプが『麻生』に魅力的に映ったようです。(前出)

ホリエモンも仰天の買い付けだが『麻生』のメディア支配はテレビにも及ぶ。「手始めに、九州のRKB毎日放送の株を67万株まで買い増しし、第3位の大株主に。RKBには『麻生』の子会社の人材派遣会社からスタッフが送られ、派遣社員の9割を占めている。派遣で成り立つ地方局なので、『麻生』はすでに経営を左右する存在として恐れられています」(前出)

ネット界にも進出し、「麻生氏の甥は『麻生』グループの幹部で、『ニコニコ動画』の経営母体『ドワンゴ』の社外取締役などに就いている。そのほか、『ドワンゴ』子会社の中枢や株主としても麻生氏の親族の名が挙がっている」(夕刊紙記者)金はイコール権力だ。「親会社を持たない民放キー局のTBSの株を買って経営に携わろうとしていると聞きます。こうした買収行動は、麻生氏本人の意思とは関係なく、メディア関係者の”反消費増税報道の自粛”に繋がっています」(永田町関係者)

豊富な財力でメディア支配を敷き、政界に君臨した政治家にイタリアのベルルスコーニ首相がいる。彼のようにスキャンダルまみれにならなければいいが……。



『週刊新潮』


2013年09月24日(火) 先にすることがあるだろ!

2020年のオリンピックが決まったと、テレビで見る限り日本中が狂喜乱舞しているみたいだが、俺は極めて不機嫌である。7年も先のことだから、生きているかもどうかわからないし、オリンピックをどこでやろうが、俺の懐が潤うわけでもない。安倍総理や猪瀬東京都知事の享保運ぶりを見ていると、こんな人たちに権力を持たせている現実がたまらなく嫌だ。

今、日本中が一番先に取り組むべきは。世界規模の運動会ではなく、福島第一原発の後処理だ。被災地の日本人が苦しみ、地球全体を放射能汚染の恐怖にさらしている原発事故にしっかり向き合い、収束への道筋をつけることだ。トラブルが発生するたびにその場しのぎの対応策を東電に押しつけ、政府は今まで見て見ぬふりをしていたじゃないか。

IOCの爺ぃたちは利権にまみれたいかがわしい連中で、金でどうにでもなると、汚い皺面に描いてある。もともとIOCなんて何の権威もない私立団体だったが、テレビが発達して地球の裏側でも実況中継ができるようになって。放映料とスポンサー料が跳ね上がった。ボクシングのパッキャオも野球のカブレラも、サッカーのメッシも出場しないから、運動競技会としては二流の位置付けなのに、金の力でオリンピックは世界的スポーツイベントとなった。

墓に見るべき番組がないから、俺たち日本人はオリンピックを見る。広告会社とテレビ局、それにスポーツ団体は儲かるから、皇室まで引っ張り出してオリンピック誘致に精を出す。安倍総理とオリンピック誘致委員会の竹田理事長は、放射能の汚染問題について海外のメディアに尋ねられて、「福島とは250キロ離れており、東京は安全です。我々はきちんとコントロールしている」と言い放った。

賄賂でゼニボケしたIOCの爺ぃたちは、拍手していたが、心ある世界の人達、そして大多数の日本人は「え、ホントかよ?」とその言葉を疑い、首を傾げ、空しくなった。7年後に汚染水の流出はピタリと止まっているのか?鉄骨むき出しの無残な姿を晒し続ける1号機から3号機はコンクリートで覆われているのか?使用済み核燃料を取り出す準備はできているのか?メルトダウンした内部は7年ぐらいじゃ何も変わらない。

決まってしまったオリンピックだが、俺は東京開催に反対する。原発の海外輸出にも反対だ。日本人は長い間、竹と紙の家に住み、怒ると腹切りをし、暗算が世界一で、生魚を食う民族と思われてきた。しかし、正直で誠実だとも信じられていたんだ。日本がまずするべきことは、原発の即時停止と福島第一原発事故の後始末だ。オリンピックを開催するのは、その後の話だ。そして今なお、21万人が避難生活を送っているのだ。



『週刊大衆』 安倍譲二


2013年09月23日(月) 危ない食品回避術

TPP参加で「外国産」急増! 安全な食品の見分け方

日本人の食は輸入食品なしには成り立たなくなっている。今年7月、日本のTPP交渉参加が正式に決定した。今後、輸入商品の流入がさらに加速されることが予想される。しかし、心配なのは輸入食品の安全性である。食べざるを得ない輸入食品の危険はないのか。そのリスクを回避することが健康を維持する上で大切になる。

日本の食料自給率は約40%で、輸入食品が大量に流入している。危険だというイメージが強い中国食品はもちろん、”TPP食品”もアメリカ、メキシコ、ペルー、ベトナム、マレーシアなど参加11カ国からなだれ込んでくることになるだろう。安い食べ物は大歓迎だが、”食の安全”という面では問題はないのか?「TPPで激増する危ない食品」などの著書がある農と食のジャーナリスト、石堂徹夫氏に聞いた。

日本でも食い止められない!

「政府は食の安全安心に関する基準をしっかり守ると強調していますが、今でさえ米国の農産物は、農薬の過剰残留などで違反するケースが多いのです。貿易促進が大前提になっているTPPで食の安全安心は一層危うくなることは間違いないと思います。(石堂氏=以下同)

例えば米国の牛乳は、まるでベルトコンベアー作られる工業製品まずのように生産されているという。まず「子牛生産者」が6カ月かけて子牛を250キロまで大きくし、これを「育成業者」に送る。ここで400キロまで成長させ、次の「飼育業者」に移送する。こうして分業飼育したほうがより効率的でコストを抑えられるからだが、問題は肥育段階である。

肥育農場では、約6カ月の間に600キロまで太らせるのですが、早く太らせるために牧草でなくトウモロコシを与え、これに成長ホルモンや抗生物質を混ぜるのです」もともと牧草で育つはずの牛をトウモロコシで育てるのだから、牛の体力は低下する。こんな牛たちがフィールとロッドと呼ばれる身動きもできないような狭い柵の中で、糞尿垂れ流しの最悪の衛生状態で6カ月間飼われる。

「O-157などの危険な菌が繁殖しやすく、実際アメリカではヒトへのO-157の感染も多いんです」輸入食品の中には、こうした利益至上主義のケースもあるのだ。「でも、日本の検疫所でどうにか食い止められるのではないか?」と思うかもしれないが、これが「ザル状態」だという。

「2011年の輸入乳食品の届け出件数は約210万件なのですが、日本には約400人の検査員しかいません。その結果、現物を抜き取って検査しているのは23万件だけで、あとは書類審査です。中国から輸入された200年の毒餃子の事件に代表されるように、毒性食品は検疫所を簡単にすり抜けてしまうんです」多くの輸入食品は利益第一で、安全性などは二の次。危ない食品を水際で防ぐはずの検疫所もほとんどザルというお寒い状態なのだ。ではどうすれば危ない輸入商品から身を守り、健康を維持できるのか?

「国産品が全面的に安全というわけではないのですが、とりあえず輸入食品より安全なのは確かです。最近は、スーパーの野菜や肉売り場でも産地を明記するようになっています。なるべくならこうした”身元のしっかりした国産食品”を購入することでしょう。危ないのは加工食品である。漬物やつくだ煮など日本風のものであっても、中に入っている素材が外国産のケースが多い。また、外食産業も安い輸入食品を使っている店が多い。”和食”のメニューであっても、食材は全部外国産ということもあるから安心はできない。

もっと安全なのは、道の駅などにある地元産の直売店を利用することだろう。「買い出しの手間はかかりますが、安全かつ新鮮で旬のものが入手できるため味もいいんです」ただし、こうした直売店を利用するにあたっても注意が必要だ。例えば、曲がったキュウリがあると、曲がったキュウリの方が自然で安全だと思ってしまう。

同じものを長く食べ続けない

「ところが、決してそうとも言い切れないんです。見栄えがいい作物をつくるプロの農家は、コスト意識が高いため、余計な農薬を使いません。反対に裏庭で小遣い稼ぎに作る農家の方が農薬を大量に使うということもあります。地産品を扱う直売所などでは、売り場の担当者や生産者(農家)に農業のことを質問する方がいいでしょう。直売所が遠い人はネットで生産者が直送する農産物を購入する方法もある。最近はクール便などの流通システムも整い、農産物だけでなく海の幸も購入できるようになっている。

石堂さんは「同じ食品を長く食べ続けない」ことが食品のリスクから身を守る腕で有効な方法だとアドバイスする。マヨネーズなどの調味料や海苔の佃煮など、決まったものを毎日食べ続けるとする。これに何も問題がなければいいが、もし残留農薬や食品添加物などの特定の有害物質が入っていた場合は、体に毒物が蓄積して取り返しがつかないことになる。

「同じように、あるスーパーだけを利用したり、同一系列の外食チェーン店だけで食べるもの避けるべきでしょう。万が一、体に有害なものが入っていたとき、体に蓄積する危険があるからです。」石堂さんによると、「食品添加物に対する考え方は、日本とアメリカ(外国)では違う」という。「アメリカでは添加物を”食品の一種”と考えています。このため添加量が多いんです」食べ物は安いほうがいいが、体を壊しては元も子もない。


『週刊新潮』


2013年09月22日(日) ピッチャーに専念すれば

大谷 ピッチャーに専念すれば

野球解説者の江本氏は、将来に対するこんな不安を指摘する。「藤浪には、これ以上の進歩はないかな、と。ファーム、変化球とも、今やっているのが精いっぱいで、伸びしろがないのでは…。9回を投げ切る完投能力もありませんしね」一方、二刀流の影響もあり、成績上では藤浪に劣るものの、潜在能力の高さから、大谷を”マー君二世”に推す声は大きい。

野球評論家の橋本氏が言う。「野手もできるというポテンシャルの高さから、大谷に将来への可能性を感じます。潜在的な力が、まだまだあるような気がする。ピッチャーに専念したら、どれだけのプラスαがあるのか、期待せずにはいられません」

江本氏も大谷の潜在能力を高く評価する一人。ただし、それには、「ピッチャーに専念すれば」という注釈がつく。「そうすれば、大谷が田中の跡目を継ぐでしょう。ローテーションをしっかりきっちり調整していけば、大谷の方が可能性を秘めています。足りないのはスタミナだけですよ」

江本氏の言う”スタミナ”とは、先発ピッチャーとして、試合を背負って一人で投げ切る力。いわば、”エースの器”がそこに問われるわけだ。「球数に左右されず、9回を投げ切れるスタミナがなければ、田中の後継者とはいえません」大谷、藤浪ともに、1年目の田中に敵わないのがこのスタミナだ。「田中が1年目に完投した試合が4試合もあるのに対して、藤浪はまだ1試合も完投していないのは明らかに体力不足。高卒ルーキーとは思えない体力で、当時の野村監督に、”完投は当たり前”と言わしめた田中とは対照的です」(スポーツ紙記者)

大谷の場合、二刀流の弊害がここに出ているとの見方が強い。「単純に言えば、走り込みに投げ込みと、本来、ピッチャーがやるべき練習に割ける時間が半分しかないわけです。ピッチャーには、試合でしか身につけられない、勝負どころにおける”馬力”のようなものが必要であり、その点では、今は藤浪がリードしています。ピッチャーに専念すれば、大谷の才能は一気に開花するんですが…」(前出デスク)

真の”神の子後継者”は大谷か、藤浪か。若武者二人が歩む”エースへの道”に注目したい。



『週刊文春』


2013年09月19日(木) まさかの東京落選

そのとき東京、そして日本に起こること

五輪誘致が達成されれば、天国だが、もし落選した場合、一気に「地獄」行きとなる。東京五輪に賭けた投資家は一気に下がる株で泡を食い、大規模公共投資に期待した建設業界は、完全にその当てが外れてしまう。やがてそれらの不満は「招致失敗の戦犯追及」へとつながっていく。

〈経済効果約3兆円、15万人の雇用誘発〉東京都は五輪を開催したときの波及効果をそう試算している。だが、まさかの落選となった場合、3兆円の皮算用が水泡に帰すばかりか、”奈落の底”に突き落とされる業界、企業、投資家もいる。前回、2016年五輪を争って敗れた直後には、招致委員会の理事全員が引責辞任するだけで済んだ。しかし、足かけ8年の誘致活動で2回連続落選となると、かかった経費や表に出ていない先行投資は相当な規模にのぼるはずだ。過去には名古屋への五輪誘致の旗を振り、「絶対有利」と見られながらソウルに敗れた中谷義明・元愛知県知事が、ソウル五輪終了後に謎の自殺を遂げるという悲劇も起きた。兆単位のカネが動く五輪には、そんな”、魔物”が棲んでいる。

東京敗北となればまず株が急落する。投資顧問会社「マーケットバンク」代表の岡山氏が指摘する。「株式市場では五輪関連銘柄に招致を見越した買いが入っている。東京に来ないとなれば株価は急落し、1万3000円割れの可能性が高い」誘致の成功と失敗で経営的に天国と地獄ほどの違いが出るのが五輪銘柄の代表格、建設、不動産業界だ。

五輪誘致となればメイン会場となる国立競技場が。1300億円をかけて
万人収容の開閉式ドームへと大改修されるのはじめ、有明に観客1万500人収容のアリーナ、大井に2ヶ所のホッケー競技場、夢の島にアリーナ2ヶ所、辰巳の2万人収容プールなど東京湾岸部に22の大型競技施設が建設される。現在、ゴミ焼却場が立つ晴海埠頭には、約1000億円で選手村用のマンション群が整備され、五輪開会後は分譲されて、新たな街ができあがる。

「そうした建設工事の受注調整はほぼ終わり、工事がもらえると思っている大手ゼネコンから下請けまで、建設業界は6月の都議選や7月の参院選でフル稼働した。それがパーになれば黙っていないはずです」(元都議)不動産業界も、五輪誘致を見越して東京・晴海地区などに高層マンションを次々に建設中で、「選手村に近く、五輪で数種目の競技が観戦できる」と謳って販売販売し、人気が高い。

ある個人投資家は、五輪が来れば値上がりすると考えて前回2016年五輪の誘致の際に夫婦の老後資金で晴海の投資用のマンションを2部屋購入した。ところが当てが外れたうえに、震災で液状化の被害を受けた。今度こそはと期待しながらも不安は隠せない。

「今回も誘致失敗なら相場は急落だろう。そうなったら挽回するどころが大損だ」天国と地獄は招致委員会の公式スポンサーでもあるJALやANAなどの大手航空会社や旅行業界、大メディアもそうだ。五輪開催となれば世界から延べ数10万人の客が来日する。航空会社や旅行代理店にとっては特需で、ホテルも都内の17万室が満室になると見込まれている。大手、メディアも五輪祭り報道で、巨額の広告収入が期待できる。それを期待して誘致活動にカネを出しているだけに、負けたら経済的損失は計り知れない。

「失言コンビ」は針のむしろ

「誘致失敗ショック」が一通り過ぎた後は、期待を裏切られた大メディアや各業界によって間違いなく戦犯捜しが始まるはずだ。真っ先に槍玉にあげられるのが、失言コンビの麻生副総理と猪瀬東京都知事だろう。麻生氏は憲法改正について「ナチスの手口を学んだらどうか」と発言したことが、かってナチスに痛めつけられた欧州諸国の票に影響を与えたと指摘された。

猪瀬氏はニューヨークタイムズのインタビューで「イスラム諸国は共有しているのはアラーだけで、互いにケンカばかりしている」と口を滑らせアラブ圏12カ国の駐日大使への謝罪に追い込まれた。こちらはイスラム諸国の票を逃したといわれても仕方がない。「誘致活動の重要な時期に、相次いだ2人の失言がライバル都市の票集めを利したことは否定できない。日本はまず謝罪や誤解を解くところから始めなければならなかった」(誘致委員会関係者)

さらに猪瀬氏には苦しい選択が待ち受けている。東京都には石原前東京都知事時代に、毎年1000億円ずつ積み立てた約4000億円の開催準備基金が残っている。それを何に使うかが次なる大問題になる。基金の原資は都民の税金だ。6月の都議選の公開討論会でも、「五輪が来ないなら、取り過ぎた税金は減税で都民に帰すか、子育て支援や社会保障に使うべき」という声があがっており、現実に招致に失敗したらそうした都民の声が一層高まるのは間違いない」

それに対して、都議会自民党や建設業界、各競技団体には、「五輪が開催できない場合でも老朽化した競技施設の整備に充てるべきだ」との計画通りの競技場建設を求める声が強い。猪瀬知事が選択を誤れば、都議選で得た434万票を敵に回すことになりかねない。もう一人、戦犯の”本命”を忘れてはならない。五輪誘致の失敗で最大のダメージを受けるのは、実は安倍首相である。

「参院選は自民が大勝したものの、アベノミクスはとっくに息切れし、約束したサラリーマンの給料も上がっていない。安倍首相がここにきて急に五輪誘致に力を入れたのは、他に支持率を維持する材料がないからです。五輪誘致に成功すれば安倍人気はしばらく続くし、株価も上がり、国民に不評の消費増税を強行しやすくなる。しかし、失敗すれば国民の熱が一気に冷め、国民の生活が良くなったように見せかけてきた安倍政権の実態が明らかになり、支持率急落に向かう可能性がある」(政治ジャーナリスト・野上氏)

市場もそこらを見極めようとしている。マーケットバンク代表の岡山氏が語る。「東京が落選したときに株価が下がるのは、五輪特需がなくなるという理由だけではありません。安倍総理は自ら五輪招致のために各国を歴訪した。それでも勝てないとなれば首相も国際的評価への失望感が広がり、海外投資家の日本売りが起きるからです」



『週刊ポスト』9.13


2013年09月17日(火) ジタバタしない

アメリカなど11カ国が勧める環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉に、日本が初めて参加した。安倍首相は「国益にかなう最善の道を追及する」と述べて、はっきりとしたGOサインは出していないが”前のめり”のようである。日本政府は遅れを取り戻そうと、この交渉におよそ100人もの交渉団を送り出した。

しかし、関税撤廃などをめぐって、各国の利害が対立し協議は難航している。10月には大筋合意が予定されているが、そう簡単ではなさそうだ。アメリカは年内妥結を目論んでいて、9月に開くはずだった会合を前倒しして、8月22日からブルネイで開催した。

TPPで安い農作物がアジアからから入ってくれば、日本の農業は崩壊する、とJA(農業協同組合)は心配している。一方で無農薬、有機農法を駆使したおいしいお米を前面に出して外国と戦っていこう、という考え方もある。自由な舞台で堂々と戦いたいという若い農業経営者の気概もわかる。しかし、やはり農業に関してあまり詳しくは語られていないという点で、農業従事者は皆不安のようだ。

2012年の日本総研の調査で、都道府県別の幸福度ランキングが発表された。長野県は健康、文化、仕事、生活、教育部門の総合で1位になっている。一人当たりの県民収入は25位で、決して豊かではないが、それも県民は「幸せだ」と感じている。90歳になっても作物を育て収穫するという生き甲斐があるから、医療保険や介護保険を利用しないで、幸せで健康で長生きができている。日本全国全ての県が長野県のようになれば、医療費がうなぎ上りにはならず、国民皆保険制度が維持でき、世界一の長寿国になると、先の研究はまとめている。

TPP加入に踏み切った時、各国と戦うために農業の大規模化や、集約化がしやすい法律をつくるだろう。さらに大企業が農業に参入できるように改革するだろう。だからこそ、TPPが小さな農業を生きがいにしてきた人々の生活パターンを壊さないかどうかも考えておくことだ。TPPに参加しようとしている12カ国の国内総生産(GDP)は、世界のGDPの4割を占める。巨大な自由貿易圏で日本はどこに活路を見出していくべきなのか。これから国民的な議論が急務だと思う。

         ◇

日本郵政ががん保険で、アメリカの生命保険会社であるアメリカンファミリー生命保険(アフラック)と提携を強化した。これは一見すると、ウィンウィンの関係のように見えるが、圧倒的にアメリカの圧力による支配といえる。アメリカの民間保険会社はロビー活動が激しい。アメリカの生命保険会社が介入しやすいように、保険診療に保険外診療を併用する混合診療を拡大せよと、毎年日本に要望し続けている。実は、日本郵政とアフラックの提携には、複雑でこみ入った問題が隠されているのだ。

海外で標準的に行なわれている抗がん剤などは、日本では、未承認のため、医師の裁量で使用はできるが、その時の検査や入院、他の診療などすべてで保険が効かなくなる。しかし、混合診療が拡大されれば、抗がん剤の費用は自己負担だが、それ以外の検査や入院などは保険が使えるようになる。この自己負担分を加入しているがん保険で守るというストーリーで、生命保険の窓口を広げようとしているのだ。

混合診療の解禁を求める声は財政論の立場からも上がっている。高額の特別な医療に関しては、国民皆保険の制度の中で行なわず、自費で行なえばいい。余裕のある人たちからはそんな声も上がっている。要はアメリカの保険会社は、混合診療にして高額医療が多くなればなるほど、民間保険の出番が多くなる。それを狙っているのである。日本郵政が、独自でがん保険をつくろうとしたのにつくらせず、アフラックのがん保険を、日本郵政が日本全国で売るように圧力をかけるというシナリオ。日本の他の生命保険会社は、がん保険に関しては完全な敗者になる、と僕は見ている。

TPPは単なる貿易の自由化協定ではないのだ。日本郵政が一つ譲歩したから、あとはアメリカが我慢してくれるなどと思っていはいけない。次々に要望をエスカレートさせてくるはずだ。農業や医療や年金など、今見えていない問題が国民にとって大問題になる可能性がある。だからこそ、きちんと議論すべきなのだ。何だかわからない形で、今年度中にTPP参加が決められ、何の準備もない日本がガタガタになっていくのが心配である。できるだけ隠さずに、議論はオープンに行なうべきだ。



『週刊ポスト』9.13


2013年09月15日(日) 直下型地震が東京を襲う

■専門家が警告!2020年、首都直下型地震が東京を襲う

五輪開催が決まったとしても、浮かれている場合ではない。首都直下型地震が、2020年の東京五輪開催中に起こるかもしれないと取り沙汰されているからだ。根拠は「1000年に一度の大地震」である。東日本大震災以降、869年に起きた巨大地震「貞観地震」が注目されている。東日本大震災とほぼ同じ規模、同震源地で起きたこの地震の歴史を踏まえて「2020年は危険だ」と警告する専門家は多い。

「貞観地震の9年後に、関東大震災クラスの南関東地震が起きている。史実は震災の9年後にあたる2020年に、首都直下型地震が起きる可能性を示しているのです。五輪開催中に大地震が起きたら、交通網はズタズタになり、選手村などのある埋め立てエリアが液状化し、地震に不慣れな外国人はパニック陥る可能性もある。東京都は首都直下地震の死者を9700人と想定していますが、その倍以上の被害が想定される」(防災・危機管理ジャーナリストの渡邊氏)

ということは死者2万人!なんとも恐ろしい話だが、東京都の総務局防災部は、「震災の教訓をふまえて『東京都地域防災計画』を作成しているので、期間中に地震が起きたとしても乗り切れると考えている」と力強い答えだった。



■「派遣」「水質浄化」「英会話」ほか、3兆円バブルで大儲けの企業

都の試算では、2020年までに日本全国で約3兆円の経済波及効果を見込む。建設やインフラ関連、不動産、観光、交通、ホテル関連が儲かるのは当たり前だが、立花証券顧問の平野氏は意外な業界に注目する。

「技術者の高齢化対策を怠ってきたため、建設業界は慢性的な人手不足状態にある。そこに震災復興で相当のマンパワーを割く必要があり、建設技術者派遣や請負のニーズが急拡大しています。例えば、派遣大手の『夢真ホールディングス』などは五輪特需でさらに株価の急伸が期待できる」

本番に向けてテストイベントなど、大掛かりなスポーツ大会の増加が見込まれる。スポーツ熱が盛り上がるので、スポーツ用品メーカー、量販店はもちろん、そこでもイベント向けの派遣業が追い風を受ける。さらに警備員派遣企業も好況が予想される。また、五輪の会場が集中するのは湾岸地域だ。この地域では、急ピッチで開発が進んでいるため、汚臭のするドブ川化が進んでいる河川が少なくない。景観にこだわるオリンピックの際には、水質浄化の関連企業に特需が起きそうだ。

「英会話の教室や塾を運営する企業にも注目です。最近ではネット中継で外国人と直接、会話をする機会も提供する会社もある。五輪を機に外国人とコミュニケーションを取りたいと考える人は急増するでしょうから、業界に有利です」(同)



『週刊ポスト』9.13


2013年09月14日(土) 東大医学部は第二の原子力村と化した ��

論文は薬の「販促ツール」

「民」と「学」がべったりと癒着する背景には、「官」の絶大な権力があります。これも原子力村と変わらない構造です。日本では中央官庁の役人が医療の価格をすべて一律に決めています。こんな先進国はありません。例えば、薬価を決めているのは中央社会保険医療協議会ですが、その人事権を掌握しているのは厚労省の技官(医師や薬剤師資格を持つ厚労官僚)です。中医協の薬価決定は国会のチェックも受けないため、その権限は絶大です。彼らが研究費も分配します。製薬会社も教授も技官にすり寄ります。

薬価は政府が一律に決め、製薬会社は自由な値引き競争ができません。するとどういうことになるのかというと、価格競争の代わりに、製薬会社による医師への営業競争が始まるんですよ。以前は飲ませ食わせという接待合戦でした。高級ホテルの最大のクライアントは製薬会社。京都の先斗町の料亭なんかも、製薬会社の接待で埋まっていたといいます。ところが最近は、製薬協が定めた接待規制のガイドラインができ、大ぴらに接待ができなくなったんです。

代わりにでてきたのが、「奨学寄付金」です。奨学寄付金とは、製薬会社から大学に研究費を提供できる制度で、バルサルタンの臨床研究も、ノバルティスファーマ社から提供された奨学寄付金が使われました。京都私立医大など5大学に対して支払われたのは、計11億3290万円にものぼっています。奨学寄付金は一見、研究支援のように聞こえますが、実態は製薬会社の営業経費です。大学担当の営業担当が持っている予算で、自社製品の処方と引き換えに、”研究に使ってください”と医師に持ちかける。読売新聞の拡張員が、巨人戦のチケットや洗剤を持って行くのと同じです。

もし、奨学寄付金を使った臨床研究論文で、ポジティブな結果が出れば、製薬会社にとっては、儲けものです。論文が薬の”販促ツール”になる。こんなことをやっていると、研究結果には製薬会社のバイアスがかかって当然です。ただ、これもやむを得ない側面あります。大規模な臨床試験は費用がかさみ、製薬会社からのサポートがないと難しいからです。大学と企業が癒着する構造的問題です。

東大がデータに”化粧”

論文捏造の動機は往々にしてカネですが、もう一つは「出世」です。論文業績が多いと評価されやすく、研究費も獲得しやすくなる。身内の恥になりますが、「東大開学以来最悪の不祥事」といわれる加藤元教授のグループがやった論文の捏造もこれが動機でしょう。

東京大学分子生物学研究所の加藤元教授の研究グループが行なった「骨ができる仕組み」などの基礎研究論文に、改竄の可能性があると指摘があったのは昨年1月。その後、東大の調査委員が過去の論文を調べ、今年6月に43の論文について改竄やねつ造の疑いがあるお判明したというもの。加藤氏とは面識があります。今回の問題で引責辞任後は、福島で放射線や教育に関する支援活動を行なっています。問題を反省し、社会に積極的に真相を語っている稀な存在です。

加藤氏の告白で、多くのことがわかってきました。基礎研究の場合、動物実験などは簡単に追試できます。本来、基礎研究の捏造は簡単に見抜けます。ところが今回は、データを少しだけ”化粧”して、60点のところを70点にしようとしただけでした。具体的には、同一画像を使いまわししたり、反転させたりといったセコいことばかりです。ただ、このような改竄はばれにくい。論文は一流紙に受理され、実際に手を汚した研究者は他大学の教授に栄転しています。知能犯です。

この件が未曽有と事件とされるのは、医学研究のトップとされてきた東京大学の有名な研究室が発表した論文で大規模なねつ造が露見したことです。しかも、加藤教授は辞任しましたが、実際に関与した連中は沈黙を守っています。米国在住の研究者は「もう日本の医学研究は信頼されなくなった」といいます。東大ではもう一つ、この7月、東京地検特捜部に詐欺容疑で逮捕された秋山教授の事件も見逃せません。

それは、東京大学政策ビジョン研究センターで医療のビッグデータ解析などを行なっていた秋山教授は、2010年9月〜11年9月の間、システム販売会社など6社の役員らと共謀し、自身が関わる研究事業のデータベースの作成業務をカラ発注し、国の研究費約1890万円をだまし取ったというもの。この事件は東大の不祥事ですが、厚労相の存在抜きには語れません。実際、秋山氏の前職は、国立国際医療センターという厚労省の組織です。実は、こういう馴れ合いは、役所直下の組織でないとできません。

特に厚労省が問題です。技官が支配しており、チェックもおざなりだからです。彼の場合、以前からやっていたことを東大に移ってもやっていたらバレてしまったのでしょう。経緯はどうあれ、東大に不審の目が注がれていることを私たちは自覚しなければなりません。

国の研究費で家電購入

今、国は臨床研究の「中核病院」や「拠点病院」と言うのを打ち出し、東大や国立ガン研究センターなどを重要拠点化しようとしているので、こうした拠点病院の研究者たちには、何もしなくてもカネが降ってきます。努力せずに金が来るのですから、不心得者も出てきます

私が以前勤めていた、国立ガン研究センターの牧本医師の事件がその典型です。これは、今年2月26日、国立ガン研究センター中央病院の小児腫瘍科長、牧本医師が国の研究費約2570万円を不正にプールし、一部を私的流用したとして懲戒解雇された。牧本氏は2007〜2008年度、厚労省から計約2億2000万円の研究費を受け取っていたが、業者に架空発注して代金を過大に払い、その分を不正にプールする「預け」の手法で裏金を作り、少なくとも578万円を私物のエアコンやテレビなどの62点の代金に充てていたというもの。以前からこうした流用のスキームについては、さまざまな噂を聞いていましたが、代々行なわれていた裏金作りのスキームが、今になってバレ始めただけです。

研究費をプールしていたのは、コンピューター関連会社で、ここが「預け」の代理店業務をしていた。医師はここに業務を発注した形でいったんお金を入れて、虚偽伝票でつじつまを合わせる。そして、この会社からプール金を使って自宅や家族に家電製品などを届けさせていた。いわばマネーロンダリングです。この事件について、厚労相と国立ガン研究センターは、牧本医師を懲戒解雇しただけで、第三者委員会もつくらず、刑事告発・行政処分もしていません。都内で普通に医者をしているといいます。公金横領に対し、常識では考えられない対応です。「身内に甘い」といわれても仕方ありません。

バルタルサン事件とこれらの事件が違うところは、予算の点です。バルタルサン事件に加担した教授たちは予算がなく、製薬会社の言いなりにならざるをえなくなった。その一方、東大や国立ガン研究センターは予算があるから、まともに研究しない医師は余ったカネを不正に使う。予算配分や価格統制権を一部の官僚たちが握ってしまっていることの弊害です。

米国では、オバマ政権が税金を使った医学研究によって発表した論文は速やかに公開するよう呼びかけ、有能なブロガーらは公開された論文をチェックして不正を追及しています。一方日本では、いまだに大学側が問題を隠ぺいしようとする悪習がなくなりません。一連の不正で、自分で真相を語ったのは加藤氏だけです。

いまこそ、医療業界の膿をすべて出すべきです。すべての問題を徹底調査し、もう一度医療への信頼を取り戻さなければなりません。原子力村の経年劣化が、福島第一原発事故という悲劇を招いたといわれます。次々と発覚する医療問題は、官僚、大学、製薬会社がつくりだす「白い巨塔ムラ」が崩壊を迎えつつある予兆なのかもしれません。



『週刊ポスト』8.30


2013年09月11日(水) 東大医学部は第二の原子力村と化した  ��

東大教授が爆弾告発!

降圧剤バルタルサンののデータ捏造、東大の論文捏造、研究費流用など、相次ぐ大学医療の問題点をすべてバラす。

1960年代に発表された山崎豊子の「白い巨塔」は、閉鎖的かつ権威主義的な大学病院の腐敗を描いた作品だった。時を経て今、相次ぐ薬のデータ捏造や研究費の不正流用が発覚し、その体質はより腐っていたことが明らかになった。東京大学医科学研究所の特任教授が、この現状を憂い、膿を出し切りために爆弾発言を決意した。

小遣い欲しさで御用学者」に
いま問題となっている「バルタルサン事件」は、残念ながら氷山の一角にすぎません。日本の大学病院と製薬会社は、不正や癒着が起きやすい構造になっています。同様の不正はまだあるはずです。今後、糖尿病、ガン、精神病などの分野でも問題が発覚するでしょう。これらの疾患に関わる医療では巨額のお金が動くからです。

製薬会社に「御用学者」が引っ張り出され、この薬は効くぞというようなことをふれまわる。厚労省は見て見ないふりをする。この構造は、原発事故における原子力村と同じです。電力会社が製薬会社、経産省が厚労省に置き換わっただけ。そして、御用学者たちがまんまとそれに使われている。「原発は安全だ」と言っていた学者と、今製薬会社と癒着している医師たちは全く同根です。

大手製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤バルタルサンに関して、脳卒中予防などの効果を調べた複数の大学の臨床データに不正があった問題は、大学側が次々と謝罪する事態となった。医療の信用を大きく損なった「前代未聞の不祥事」として、連日のようにマスコミに報じられているが、この深淵には、福島第一原発事故同様、官・民・学の「利権」「癒着」がある。とバッサリ斬り捨てる医学者がいる。東大医学部研究所先端医療研究部門で、医療ガバナンスを研究している上村・特任教授(内科医)だ。

バルタルサンは血圧を下げる薬ですが、他の薬と比べてそれほど下がり方は強くないかわりに、心筋梗塞や脳卒中のリスが半分くらいに減りますよ、と製薬会社は謳っていた。その根拠とされていたのが、京都府立医大や慈恵医大など5つの大学で行なわれていた臨床試験論文でした。ところがその論文に関し、京都大学のドクターがどうも血圧値がおかしいと指摘したところ、血圧値や脳卒中、心筋梗塞の発症数を改ざんしていたことが判明し、さらに製造元であるノバルティスの社員がデータ解析に関与していたことが分かったのです。

今回の不正はテストの点数でいえば0点を80店に改竄していたようなもの。「心筋梗塞などのリスクが下がる」という論文のストーリーそのものをいじっていたわけです。なぜこれまで不正が発覚しなかったのかというと、患者を研究対象にしているためです。薬効には個人差があり、環境が異なれば、研究結果は同じにはなりません。つまり、大学側から見れば、個人差があるなどと言い逃れできるのです。臨床研究の死角をついた不正です。

さらに、ノバルティス社は大学側の弱みも巧みについている。臨床研究に詳しいナビタスクリニックの谷本医師によると。「日本の大学病院には臨床試験に欠かせない統計解析のプロがいない。人材面でも製薬会社に依存する臨床検査になっていた」という。今回データ操作した疑いがもたれているのばノバルティス元社員、統計解析の専門家として大阪府立大学の講師も務めていた。

つまり、統計解析という臨床試験のキモの部分を、初めから製薬会社に握られていたわけです。大学が論文を発表するので、製薬会社は”第三者”として、バレない限り不正ができる。実態として自社の社員がコミットしていても、会社としては関係ないと突っぱねることができる。ノバルティスのこの論文について”医師主導臨床研究”と繰り返し言い続けているのは、確信犯です。

論文不正の最大の問題は、数値を操作したことで多くの患者を危機に晒したことです。脳卒中リスクを減らす薬だという触れ込みですから、それを脳卒中リスクの高い患者に処方しなかったら医師は訴えられかねない。論文を読んだ勉強熱心な医師ほど、バルタルサンを処方した可能性があります。それが嘘なら、バルタルサンで治療を受けていたために、脳卒中や心筋梗塞になったという人がごまんといるはずです。医療は日進月歩。医師がすべて最先端研究についていくことは不可能です。

ここで医師は、論文をわかりやすく解説した医療雑誌に頼ります。ところが、そこには製薬会社の記事広告が満載。有名大学教授を招いた座談会で「バルタルサンは効く」と連呼している。今回問題になった先生たちも毎週のように、後援会や座談会に呼ばれていました。1回15万円ほどの講演料をもらっていたでしょう。小遣い欲しさから、製薬会社にすり寄る教授も生まれます。

バルタルサンを宣伝していたある国公立大学教授は、子供を私大の医大に通わせていました。大学の給料だけでは苦しい。こうなると企業の広告塔を止められなくなります。このようは「御用学者」を用いた製薬関係の広告費が、年間1兆円程度といいます。


『週刊ポスト』8.30


2013年09月08日(日) ビジネス新大陸の歩き方

「学力偏差値」問題を考える

かって”蛮勇”を揮った(とった)日本人がなぜここまで落ちぶれたのか

参院選に圧勝した安倍首相は「経済政策を前に進めていけという大きな声をいただいた」と政権運営に自信を深め、全国津々浦々まで実感できる強い経済を取り戻す」と意気込んでいる。しかし、安倍のミスクスで盛り上がっているのは証券、不動産、輸出関連などごく一部の業界と企業だ。多くのサラリーマンは、企業のIT化やグローバル化が進み、大規模リストラの波に脅かされる中、人員削減のシワ寄せで仕事の量だけが増えている。

このため、戦場では「鬱・無気力」「疲弊・燃え尽き」「あきらめ」などメンタル面を病んだ社員が続出し、長引く業績低迷で人間関係がぎすぎすして暗いムードの会社も少なくない。消費では、「低欲望」社会が定着し、少子化・高齢化の中で右肩上がりの傾向が続いて、日本という国全体が閉塞感に覆われている。さらには国際的な競争力も低下し、今や「ジャパンバッシング」が常態化して”落日””斜陽”の老大国になりつつある。

かって「エコノミック・アニマル」と揶揄されるほどの経済成長を実現し、日本製品が世界を席巻して「ジャパン・アズ・ナンバーワン」「日はまた昇る」と称賛されたのが嘘のようだ。なぜ、日本はこんなに落ちぶれてしまったのか?日本人は所詮この程度の国民だったのだろうか?いや、そんなことはない。日本人のポテンシャルは高いはずだ。私は右翼でも国粋主義者でもないが、日本人の能力の高さは世界に誇るべきものだと考えている。その日本人や日本企業が完全に閉塞している現状をどう変えていくべきか。

今回は、より大きな枠組みで考えてみたいと思う。日本人のポテンシャルの高さというものを私が最初に強く感じたのは、以前、中国の北東部、すなわちかっての満州国があった地域を当時の日本の満鉄(南満州鉄道)を転用した鉄道で3泊4日の旅をしたときのことだ。列車はハルビンから長春、瀋陽を経て大連まで、山が一つも見えない真っ平らな大平原の中を延々と1200キロメートルも走り続けた。

満州鉄道の総面積は約110万平方キロメートルで、関東平野の約65倍。現在の日本の領土の面積の約3倍もあったが、あの茫漠たる風景を見たとき、ここを占領していたと思うだけで空恐ろしなって鳥肌が立った。そのうえ、長春にも瀋陽にも大連にも、日本が造った建物がそこいら中に残っている。よくもこんな無辺際の大地を統治しようと考え、実行したものだと、ただただ私は感嘆した。

インドネシアのスラバヤに行ったときもそうだった。現在のジェット機でも日本から8時間を要するその地にも日本兵はやって来て、一つの町や島を10人ほどの少人数で支配していたというのである。しかも彼らはマレー半島を自転車に乗った「銀輪部隊」で進軍し、イギリスからシンガポールを奪い取った上で、さらにオランダの植民地だったインドネシアの島々を占領していったのである。そんなことが、今の日本人にできるだろうか。植民地支配の是非や占領政策の善悪についての議論は横に置き、正直、私の頭の中には祖先に対する畏敬の念しか浮かばなかったのである。

「大志」と「個」の力で勝る日本人

これは普通の言葉で言えば”蛮勇”だ。日本人は列強に対抗するために常識を越えたアンビション(大志)と強い気概を持ち、信じられないほどのエネルギーを発揮して世界に打って出たのである。それが行き過ぎて結果的に大きな過ちを犯すことになってしまったが、とにかく他のアジア諸国を凌駕する日本人のポテンシャルの高さを証明したことは間違いないだろう。

それは戦後日本のすさまじい経済発展でも証明された。工業化による加工貿易を推進し、松下電器産業、ソニー、本田技研など世界に冠たる日本企業が登場した。第二次世界大戦で310万人もの国民が亡くなり、一度は焦土と化した日本が、技術的に大きな差をつけられていた欧米先進国に追いつき、追い越していった。これもまた蛮勇に近いアンビションと気概に支えられていたのである。

となると、結局、単に今の日本人は生活水準が上がり、昔のような苦労も努力もせずに甘やかされて育ってきたが故に、能力が低下したということだろうか?それも違うと私は思う。なぜなら、今、芸術やスポーツの世界では日本人が大勢活躍しているからだ。たとえば、世界中の有名オーケストラで日本人の弦楽奏者がいないとことろはないし、チャイコフスキー国際コンクールでは4人も優勝している。

スポーツでも、サッカーで世界の一流クラブチームに所属している選手や野球のメジャーリーガーは数えきれないし、競泳でもメダルを連発している。スキーのジャンプでは高梨沙良さんがワールドカップで日本人選手として初めて、しかも史上最年少の16歳4カ月で個人総合優勝を達成している。アニメやゲームのクリエイター、建築家などにも、世界的に有名な日本人は多い。
彼らに共通しているのは、�(孤�科学省の指導要領に基づいて教育されていない。�▲ぅ鵐好肇薀�ターなど、テーラーメイドの教育トレーニングを受けていることである。つまり、純粋に「個」の能力と大志を原動力に、目線を上げて世界と戦っているのだ。

戦後第一世代の偉大な日本人経営者たちもまた、文部省教育の埒外で誕生している。パナソニック創業者の松下幸之助さん、ソニー創業者の森田昭夫さん、本田技研工業の本田宗一郎さん、三洋電機創業者の井植歳男さん。シャープ創業者の早川徳次さん、オムロン創業者の立石一真さん、ヤマハ発動機創業者の川上源一さんのうち、森田さん以外は一人も大学を出ていない。ということは、この人たちがグローバル企業を作り上げ。経営者として大成功した理由もやはり、学校での勉学ではなく、アンビション(大志)なのである。

なぜ戦後第一世代の大経営者も、今の世界的な芸術家やスポーツ選手たちも、能力を最大限に高め、”蛮勇”を揮って活躍できたのか?その疑問を解くカギは「学力偏差値」の教育にあると思う。


『週刊ポスト』8.30 大前研一 


2013年09月07日(土) 中国・韓国の怨念 ��

いまだ[敗戦国」のまま

では、アメリカとの信頼関係構築の失敗だけが、安倍首相の外交敗北の原因なのか。もう一歩踏み込んで考えてみると、安倍首相の参拝見送りは、とどのつまり、日本の対中国、対韓国への対抗がアメリカの庇護と意向によって左右されるという戦後日本の政治機構から抜け出すことができないところに原因がある。

靖国参拝を実行した小泉元首相にしても、アメリカの支持で中韓の批判を受け流すことはできても、新たな外交関係を樹立したわけではない。気鋭の社会思想学者の白井・文化学園大学助教は著書『永続敗戦論』の中で、そうした戦後日本の枠組みを、次のように解剖して見せた。〈アジア諸国に対する排他的ナショナリズムの主張は、意識的にそうでないにせよ、日本に駐留する米国の圧倒的な軍事力のプレゼンスのもとで可能になっている。日本が東洋の孤児であり続けても一向に構わないという甘え切った意識が深ければ深い程、それだけ庇護者としての米国との関係は密接でなければならず、そのためにはどのような不条理な要求であっても、米国の言い分とあれば呑まなければならない、という結論が必然的に出てくる。

こうした構造から愛国主義を標榜する右派が「親米右翼」や「親米保守」を名乗るという、言い換えれば外国の力によってナショナリズムの根源的アイデンティティを支えるという極めてグロテスクな構造が定着してきた〉だとすれば、中韓の攻勢によって、アメリカが日本の首相の靖国神社参拝にストップをかけたことは、日本の戦後保守政治のアイデンティティを根底から揺るがす事態である。だからこそ、安倍首相は、真の保守政治家としての真価が問われているのではないか。

加瀬氏はこう指摘する。「私は米国が反対しても参拝すべきだったと考える。現在の日中、日韓関係をみると、参拝してもこれ以上悪くなることはあり得ない。国を守るためには国民の精神の自立が不可欠で、こんな形で参拝を見送れば自立心を自ら否定することになる。行くべきでした」正論だろう。

安倍首相が靖国神社を参拝し、中韓の従軍慰安婦批判や領土要求に対して、それが言われのない中傷であることを国際的に正面から反論する。それを国際社会に説得力を持って受け入れられる環境をつくることさえできず、米国にいわれて”キャン”と鳴いたことが最大の外交敗北なのである。

中韓が日本叩きの最大の武器にしている前述の慰安婦問題では、すでにアメリカの下院をはじめ、カナダ、EU、オランダ、台湾、フィリピンなどの議会が次々に日本非難決議を採択し、その動きは各国の地方議会にも広がっている。このままでは日本〈国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う
〉(憲法前文)どころか、今後「セックス・スレイブ国家」の汚名を着せられ、東アジアだけでなく、世界での発言力が大きく低下するのは間違いない。それこそまさに「第2の敗戦」ではないか。


『週刊ポスト』8.30


2013年09月05日(木) 中国・韓国の怨念 ��

「沖縄も韓国領」と主張

永久に日本叩きを続けたい中国や韓国にとって、安倍首相の参拝中止は「飛んで火に入る夏の虫」だ。中韓は、国際社会で日本の戦争責任を叫んで日本を「加害者」の立場に置き続け、外交的優位を保ちながら、国内の反日感情を煽って国民の「不満」をそらすことが国益だと考えている。日本を批判する材料になるのであれば、彼らにとってそれが事実かどうかはどうでもいい。その執念たるや凄まじい。

最近、韓国が持ち出したのが「千年恨」という考え方だ。この言葉は、パクスネ大統領が、日本統治に反対した3月1日の「3.1独立運動」の記念式典で、「加害者と被害者という歴史的立場は、1000年の歴史が流れても変わらない」と演説したことから広がった。日本がいくら侵略戦争を謝罪し、首相が靖国参拝をしなくても、批判を止めるつもりなどないのだ。

千年恨は流行語になり、5月には韓国、北朝鮮連合軍による対馬”奪還”作戦を描いた小説「千年恨、対馬」が刊行されてベストセラーになっている。対馬が1000年前から韓国領だという荒唐無稽な主張にもとづくストーリーだ。領土問題でも中韓は日本の領土の削り取りに猛烈な攻勢をかけてきている。中国は海警局の船舶を尖閣諸島周辺海域に派遣して、領海侵犯を繰り返し、日本に「領土問題の存在を認めろ」と圧力を加えている。また、韓国は国連に「韓国の大陸棚」が沖縄周辺の海域まで伸びているという報告書を提出し、8月末の国連大陸棚限界委員会で発表する予定だ。竹島を不法占拠し、対馬を自国領だといい、次は「沖縄にも韓国の権利が及ぶ」と主張しようとしているのである。盗人猛々しい行為である。

中韓に最初から歴史認識問題で日本と理解し合おうという姿勢がない以上、首相が靖国神社を参拝しようがしまいが、日中、日韓の2国間で解決できる状況ではなくなっている。日本がやるべきことは、国際社会で日本の主張の方が正当で、中韓の方が「言いがかり」をつけていると広く認めさせることのはずだ。

ところが、そうした国際的な宣伝活動でも中国と韓国が手を組み、日本は大きな遅れをとっている。その象徴が米国での「従軍慰安婦像」建設だ。さる7月30日、ロサンゼルス近郊のグレンデール市に韓国系市民団体が慰安婦像を設置し、除幕式が行われた。ニューヨーク州やニュージャージー州にはすでに慰安婦の記念碑がたて建てられているが、今回はソウルにある像の複製で、韓国側は全米に20体立てる計画を進めている。

慰安婦問題をめぐっては、旧日本軍が韓国から慰安婦を強制連行したという証拠がないことは、日本政府の調査で明らかになっている。また、韓国側が挙げる証拠も朝日新聞による誤報(★)や虚偽の証言など、後に事実ではないと判明している。それにもかかわらず、中韓の宣伝で慰安婦問題が日本による「性奴隷」だという誤った認識が米国で常識となりつつある。産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森氏は、その背後に中韓の連携があると指摘する。

「慰安婦問題に取り組んでいる韓国系の団体の活動は、せいぜい数人から数十人にすぎないが、背後にいるのは『世界抗日戦争史維護連合会』という中国系アメリカ人の反日団体である。彼らは講和条約も日本の沖縄領有も認めず、日本バッシングを続けている。ニュージャージー州などでの記念碑建設も自分たちの実績だと宣伝しています。

懸念されるのは、そうした中韓の反日団体が他の民族に働きかけて米国の反日ムードを高めていることです。今回、グレンデール市で慰安婦像の建設が認められたのも、同市に多い東欧のアルメニア系住民の賛成を取り付けたからです。アルメニア人はかってオスマントルコに虐殺された歴史を持ち、そういう問題には敏感。韓国系団体はアルメニア系の前市長にアプローチし、韓国に招待して慰安婦を名乗る女性に面会させるなどの活動を行なって建設を認めさせました」

安倍首相は国民向けには「領土は守る」「靖国に参拝する」と力こぶを見せるが、国際社会に向けた発信は弱く、慰安婦像建設でも日本政府はまったく反論していない。像が完成したあと、佐々江駐米大使が言い訳のように「丁寧に説明したい」と発信しただけである。そんな腰砕けでは、多くの米国民が誤解してしまっても文句は言えまい。

小泉はなぜ参拝できたが

安倍首相の靖国不参拝が「平成の敗戦記念日」というのは、それが対中国や韓国だけではなく、国際社会での日本の決定的な外交的敗北を意味しているからだ。たとえためにする批判だとわかっていても、隣国である中国や韓国の反発を覚悟で、靖国神社を参拝するには、国際的な周到な根回しが欠かせない。

かって小泉首相は「終戦記念日に靖国神社に参拝する」と公約し。首相就任初年は8月13日、その後も正月や春と秋の例大祭など毎年参拝し、首相就任最後の年の2006年には8月15日に参拝した。それを可能にしたのは米国の支持があったからだ。政治評論家の浅川氏が指摘する

「小泉氏はブッシュ大統領と個人的な信頼関係を築くことを外交の最優先目標にした。9.11テロが起きると対テロ戦争への協力を明確に表明して特措法を成立させ、アメリカのアフガン侵攻を支援し、イラク戦争では国内の反対論を押し切って、自衛隊派遣を決めた。在任中に何度も日米首脳会談を行ない、ブッシュと信頼関係を築いた。ゴマをすったわけではない。外交カードを次々に切ることで、アメリカが日本を尊重せざるを得ない状況を巧みに作り出した。当時も米国には、首相の靖国参拝で日本と中韓との関係が悪化して米国の利益にならないという声があった。だが、小泉氏はブッシュを味方につけているという自信があったから、参拝に踏み切ることができたわけです」

実際、小泉政権当時も中国は南京大虐殺などアメリカで反日ロビー活動を展開したが、ブッシュ政権は耳を貸さなかった。「ブッシュ大統領が靖国神社に参拝するなと私に言ったとしても、私は行きます。もっともね、ブッシュ大統領はそんな大人げないことはいいませんけどね」終戦記念日に靖国神社に参拝した直後、小泉氏はそういってのけた。それは日米の信頼関係への自信を示していた。それに比べて、安倍首相はアメリカとの関係が危うい。オバマ政権は安倍首相のタカ派色を警戒し、日米首脳会談は何度も延期された末、ようやく1回会ったきり。対照的にオバマ大統領は訪米した習近平・中国国家主席や韓国の朴大統領を手厚くもてなし、「日本よりも中韓重視」の姿勢を鮮明にしている。

中国の経済力や軍事力が高まり、米国に対するプレゼンスが大きくなっているとはいえ、安倍首相が靖国神社を参拝するつもりだったとすれば、アメリカの世論対策をはじめ、国際的な宣伝や外交的根回しをもっと周到にする必要があった。米議会の調査レポートで安倍首相が「ウルトラナショナリスト」と決めつけられたこと自体、安倍政権が中韓との情報戦に完敗していた証拠だ。

米議会調査局は、8月2日ににも、安倍首相が終戦記念日に靖国参拝すれば、「北東アジア地域の緊張が激化する可能性がある」と指摘するレポートを出している。無残なまでの日本の「敗戦」である。外交評論家の加瀬氏は、「安倍首相はとにかく中国との関係修復に腐心している」と分析する。「安倍首相の靖国参拝見送りの最大の理由はアメリカの支持が得られなかったからでしょう。米国は今後10年間で軍事費を大幅に削減することになっており、アジアより中東に軍備を集中させておきたい。そのためには日中関係に緊張が高まるのは困る。だから安倍首相に『中国を刺激してはならない』と再三、忠告している。アメリカの支持がないとわかった以上、安倍首相も参拝を見送って中国との関係修復へと舵を切ったわけです」

それは何を意味するのか。安倍首相は後ろ盾であったはずのアメリカからこう言われたのだ。「中国の言うことを黙って聞いてやれ」。すると安倍首相は”アメリカに言われたなら仕方がない”といわれるままに従い、今度は「中韓のポチ」となってしまったのだ。


★朝日新聞の大誤報

1991年月11日の朝刊で「元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀 重い口を開く」と題された記事が掲載され〈「女子挺身隊〉の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた「朝鮮人従軍慰安婦」〉と記された。だが、「女子挺身隊」は戦時均動員制度であり、軍による強制連行の事実は確認されていない。証言したとされる朝鮮人女性も、貧しさのために母親に売られたと訴状などで証言している。朝日新聞は現在まで、この誤報を訂正していない。


『週刊ポスト』8.30


2013年09月04日(水) 中国・韓国の怨念 ��

中国・韓国は日本を千年恨み続ける

安倍首相 靖国不参拝で8.15は平成の敗戦記念日となった

韓国では最近、日本に対する「専念悢」(せんねんはん)という言葉が流行中だ。恨みは千年経っても晴れない。領土問題、慰安婦問題などで歴史を捏造する中国、韓国の神経にはあきれ果てるが、安倍首相はそれに過剰な配慮を見せ、念願だったはずの終戦記念日の靖国神社参拝を見送った。完全なる外交敗北。それが、今後どれだけ日本の立場を危うくし、中韓を助長させるのか、わかっているのか。8月15日は「平成の敗戦記念日」となった。

姑息なごまかしが、70年経った今も日本人を苦しめている。昭和20年8月14日、日本は無条件降伏を求める米英中のポツダム宣言を受託し、翌15日、昭和天皇が玉音放送で国民に降伏したことを伝える「大東亜戦争終結ノ詔書」を読み上げた。当時の戦争指導者の多くは「勝ち目のない戦争」と知りながら国民を戦地に送り、戦争に敗北し、300万人もの犠牲者を出した。

戦後、政府は閣議決定で8月15日を、〈戦没者を追悼し、平和を祈念する日〉に定め、毎年、天皇陛下主席の下で全国戦没者追悼式を開催している。同時に、戦後の歴代政権は米英の戦勝国にはへりくだり、中国や韓国、アジア諸国には何度も侵略戦争を謝罪している。しかし、なぜか自国民はその「敗戦の日」をあえて「終戦記念日」と呼ばせ、敗戦を敗戦として正面から向き合わせて来なかった。そのことが「なぜ国家は国民を無謀な戦争に向かわせたのか」という総括を妨げてきた。その結果、敗戦から今なお日本の外交は矛盾を抱え続け、その歪は限界まで達している。そして今年の8月15日、歴史のターニングポイントとなったこの日は、未来の国民が振り返った時、「第2の敗戦の日」として刻まれているかもしれない。

安倍首相は、今年の周年記念日に 靖国神社を参拝しなかった。つい半年前、首相が衆院予算委員会でこう語ったことは記憶に新しいい。「第一次安倍内閣において、参拝できなかったことは痛恨の極みだ」その短い言葉からは、次のような参拝の決意を読み取ることができた。

〈6年前の首相在任当時、靖国神社を参拝しなかったのは、行かなかったのではなく、険悪化していた日中関係を配慮すると、行きたくても行けなかったのだ。しかし、振り返ると、当時の私の判断は「痛恨の極みだ」。今回こそは、中国や韓国の反発を承知した上で、万難を排して参拝する〉そう決意しながら、なお参拝を回避したのだから、今回の不参加は「できなかった」の背はなく、安倍首相が積極的に参拝しなかったといえるだろう。

安倍支持派からは、ネット上で「信じていたのに行かないなんて」「公約を守れないのか」という失望の声が高まっているが、問題は首相の公約違反や背信行為というだけにはとどまらない。重大なのは、安倍首相が靖国神社への参拝取りやめを、中国との外交上の取引に利用していることにある。さる8月7日、TBSは重要なニュースを報じた。〈安倍政権内部では、安倍総理、麻生副総理、菅官房長官、岸田外務大臣の4人については、15日に参拝しないという方針を固めていたことが明らかになりました(中略)政府関係者によりますと、安倍総理ら4人が参拝しないという方針は、複数のルートで非公式に中国側に伝えているということです〉

そこからは、参拝見送りという政治判断の裏に潜む2つの重大な問題が浮かび上がる。1つは「靖国参拝せず」の日中密約の存在だ。中国の王毅外相は駐日大使時代の2005年、「現役の首相、官房長官、外相は靖国参拝をしないとの紳士協定を中日間で交わした」と明らかにしたことがある。日本政府側は”密約”の存在を認めていないが、安倍首相が「閣僚の参拝は心の問題」といいながら、自分だけではなく副総理を含めた4大臣が揃って参拝しない方針を決めたことは、中国側からは”安倍政権として紳士協定を受け入れる”というサインだと見なされても仕方がない。

第2は、不参拝をわざわざ中国側に連絡したという情報である。安倍首相が9月5日からロシアで開かれるG20首脳会議での日中首脳会談に前のめりになり、斉木外務次官を訪中させるなど水面下で中国側と交渉を続けていることは本紙前号で詳しく報じた。その交渉過程で中国側に「4大臣は参拝しない」と伝えることは、靖国神社参拝を害号カードに使い、「参拝取りやめ」と「首脳会談開催」を取引にしようとしていることに他ならない。

「靖国神社を参拝する」といってわざと中韓を挑発し、「やっぱり行かないから首脳会談してね」と取引する。それは安倍首相が掲げる「戦後レジームの総決算」を実現するどころか、わざわざ靖国参拝を政治問題に引きずり込む行為だ。安倍首相がいったん、靖国参拝断念を外交の取引材料にした以上、仮に秋の靖国神社例大祭に「国民への公約を果たす」と参拝したとすれば、それは中韓の一層の外交的反発を招き、”安倍に騙された”と国際的非難を煽るための格好の口実にされることは見えている。歴史は68年前に逆戻りし、日本は再び戦後レジームの出発点、すなわち、中韓への謝罪から始めなければならなくなるのだ。



『週刊ポスト』8.30


2013年09月03日(火) 東京五輪 経済効果3兆円

強い日本復活へ

まさに夢の五輪だ。都の試算によると、東京開催の国内経済への波及効果は、2013〜2020年までで2兆9609億円。東京都で1兆6753億円。その他の地域でも1兆2866億円に達する見通しだ。業種別では、飲食店や宿泊、広告などのサービス業が6510億円と最も波及効果が大きく、建設業の4746億円、小売業などの商業が2779億円で続く。

さらに雇用の押し上げ効果も東京都で約8万4000人。その他の地域でも約6万8000人に上り、合計で約15万2000人。膨大な効果に経済界は熱い視線を送っている。決定の瞬間を千代田区東証ホールで見守っていた、日本商工会議所の岡村会頭は「産業界が元気なる。アベノミクス効果で明るさが見えてきている。景気はさらに上昇するだろう」と強調した。経団連の米倉会長も「首都圏の再開発や、インフラ整備、外国人観光客の誘致などにも弾みがつく」と話すなど、歓迎ムード1色となった。


『サンケイスポーツ』9.7


加藤  |MAIL