加藤のメモ的日記
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2013年02月28日(木) NHKと政治

戦前のNHKが実質的に国営放送であったことは、誰も否定できない。また、戦後、占領軍の放送の民主化政策によって生まれ変わったはずのNHKが、NHK会長人事や受診料の値上げなどで、政治に経営の首根っこを押さえられ、報道機関として主体性を欠く経営を続けてきたことも事実だ。NHKは政治に翻弄されてきた自らの歴史を、視聴者から隠すことによって「公共放送」の看板を守ってきた。NHKに介入した政治の力、NHK会長の選考に関わる政治の影響力、権力に都合の悪い問題を取り上げない報道姿勢、これらはNHKの放送史に取り上げられることはなかった。

「放送機関は権威筋とトラブルを起こさないということで、褒められようと望むべきではない。普遍不党性とは、放送機関を批判から守る盾ではなく、未来を開く鍵なのだ」これはイギリスで「放送の将来を考える委員会」の委員長を務めたことのある、ロンドン大学副学長、ノエル・アナンの放送文化基金の記念講演(1981年、東京)の一節である。放送機関と時の政府との間に緊張が存在するのは当然のことであり、報道が筋を曲げずに政治の圧力に対処する場合の、味わい深い言葉である。本書ではNHKと政治の関係の歴史を、三つの部分に分け、NHKが触れることを避けてきた、いわば「知られざるNHKの政治史」を綴る。

国策と公共放送―NHKとBBC

放送、なかでも公共放送の民放と異なるところは、国策への協力の度合いが著しいところにある。国営放送と違い、国民の受信料によって運営される放送でありながら、政府はNHKを政府機関であるかのように扱い、NHK側にも戦前の意識を引きずったままで、国策には無批判に従う風潮が残っていた。国策への協力といえば、アメリカの北ベトナムの空からの爆撃、北爆を支持する佐藤内閣に協力するためNHKは前田会長時代、ベトナム向けの国際放送の時間枠を拡大し、日本政府の宣伝に一役買った。

当時北爆には国際世論も否定的で、アメリカのベトナム戦争に対する批判が強まっていた。国内でもベトナム反戦運動が盛り上がり、佐藤内閣の北爆支持に抗議する集会も煩雑に開かれ、べ平連という名の市民運動が広がっていた。しかしNHKの国際放送は、もっぱら佐藤政権の北爆支持の方針をベトナムの市民に向けてPRし、さらにこの時間枠を増やしたのである。

戦争とか外交上の争いに関しては、とかく時の政権の方針が国策として押しつけられ、それを批判することは国益に反するとされる。日本では第二次大戦の際、戦意高揚に国民を駆り立てたNHKや新聞の報道の事例が記憶に新しいが、戦後の新発足にあたって過去の戦争協力に対する責任を明確にしなっかったNHKは、ベトナム戦争で再び同じ誤りを犯したといえる。NHKのこうした国営放送的な報道姿勢は、民放との差を次第にはっきりさせ、国民の信頼を失っていった。しかし同じ公共放送でもイギリスのBBCは、自分の国が直接当事者になった戦争でも、政府の方針に同調することなくジャーナリズムの立場を貫いた。

NKはその公共放送の仕組みの「範」をイギリスのBBCに取っている。従ってこの両者の間には、極めて似通った構造があり、公共放送について国民の評価や期待にも同じような面があるのは否定できない。ただ両者の間で決定的に違うのは、政治権力に対するジャーナリズムとしての見識であり、節目ごとに権力と戦う姿勢である。それは民間の事業からスタートして、公共事業に転換したBBCと社団法人といいながら実態的には国営事業と変わらないNHKの、出自の差から生まれる伝統、ジャーナリズムを育てた風土にも関係するのかもしれない。

イギリスでは第二次大戦後、1956年のスエズ運河の国有化に伴う危機、1982年のフォークランド戦争の二度にわたって、対外危機を経験した。このときBBCは報道機関として、時の政権に必ずしも同調しない自主独立の放送を行ない、政府と険悪な関係に陥った。スエズ危機では、イギリス軍のエジプトへの上陸に反対する側の意見も放送し、政府のせめて国際放送には取り上げないようにという要請を拒否し、放送を海外にも流した。

またフォークランド紛争に際しては、イギリス軍の被害状況も克明に放送し、国民の士気に影響するとして政府から激しいクレームを受けた。政府はBBCが侵略者アルゼンチンとイギリスを同等に扱う誤りを犯している、国家の利益に合致した報道をせよと迫ったが、それでもBBCは動じなかった。BBCは、報道番組の責任者が「イギリス軍の士気を高揚させたり、国民を国旗の下に結集させることがBBCの役割ではない」「BBCは政府から愛国心についてレッスンを受ける必要はない」と述べ、報道機関としての見識を示した。

またBBCの経営委員会はNHKの経営委員会よりも、より政治色の強い官職といわれるが、それでもハワード委員長は「BBCはイギリスと侵略者の間で中立を守るわけではないが、ニュース報道の基準は、何が起こっているかを視聴者が理解するのに役立つかどうかである」とBBCの報道を擁護した。さらにイアン・トレサウン会長は「イギリスの民主主義とアルゼンチンの独裁体制との違いの一つは、わが国民が真実の語られるのを望み、いかに真実が不快なものであってもありのままを聞くことができることである」と言い切っている。 

戦争という国家にとって最もシビアな状況の中で、政府や与党から罵詈雑言を浴びながら、怯まずにジャーナリズムのあるべき姿を説き、かつ実践したBBCの気概こそが、公共放送を支えているのだともいえる。そして、これは現場、会長、経営委員会とBBCのすべての一致した見解であったことに重みがある。日本のNHKの場合との差は歴然としている。前田会長の時代は、日本が佐藤首相のもとで逆コースから新国家主義を目指した時代であり、このときからNHKのテレビは日の丸で始まり、放送終了時には日の丸がはためく中で「君が代」を毎日聞かせるようになった。 

またNHKは吉田首相の国葬、明治100年の記念式典、大阪万博、沖縄返還協定の日米テレビ中継調印など、国家的なイベントに積極的に関わっていった。1970年の『暮らしの手帳』(春号)はNHKニュースを、事実を曲げて報道する「御用放送」と断じ、困った番組にあげた。NHKの組合、日放労がこの年行なった組合員の調査で、NHKの報道は真実を正しく伝えているかという問いに、40%が「NO]と答え、NHKを政府の御用機関だと思うかという問いに対し、60%が「YES]と答えていることからも、『暮らしの手帳』の評価は正確であったといえる。前田長期政権のもとでNHKの報道が次第に蝕まれていったことを、視聴者は的確に見抜いていた。



『NHKと政治』


2013年02月27日(水) ペプチドワクチン開発(上)

ワクチン療法で免疫を高めがんを抑える

患者の免疫力を高め、がん細胞の増殖を抑える「ワクチン療法」が世界的に注目されている。このうちの一つ、ペプチドワクチン開発の中心人物で、元内閣官房医療イノヘーション推進室長の中村シカゴ大医学部教授に、ワクチン療法や日本のがん医療について聞いた。

著書「ガンワクチン治療革命」(講談社)で、ペプチドワクチンなどを用いたワクチン療法を、外科療法(手術)、放射線療法、化学療法(抗がん剤)に次ぐ「第4の療法」としている。「本来は免疫療法というべきだが、日本で免疫療法というと怪しげなものも含まれる。あえてワクチン療法と呼んでいる。米国ではすでに前立腺がんの治療用ワクチンが認可された。世界には科学的に実証されつつある免疫療法がたくさんある」

―研究はどの程度進んでいるのか。

「2006年から国内約60カ所の病院に声をかけ、臨床研究を進めてきた。対象とした患者は約1700人で、うち約1000人が進行がん。中には5年以上も進行を抑えられている人がいるし、稀には胃ガンや、すい臓ガンから肝臓に転移した腫瘍が消えた人もいる。治験の最終段階まで進んでいるものもあり、近く実用化されると信じている」

―実用化に向けての問題は?

「ワクチン療法の特徴は、腫瘍が小さくならなくても、がんの増殖が抑えらえ、長生きできること。米国の食品医薬品局(FDA)はこの観点で治療効果を評価するルールをつくったが、日本にはない」

―日本では何で評価しているのか。

「例えば、抗がん剤は腫瘍が小さくなることで『効果がある』と評価される。だが、放射線でも抗がん剤でも、免疫力が加わって効果が出るというのは、世界的な常識になりつつある。日本では権威あるところが最初にワクチン療法を『だめ』と信じたら、何を言おうが耳を貸さず、目を向けない。大きな問題だ」

―ペプチドワクチンの副作用は。

「約1700例のうち、全身的副作用の可能性が否定できないものは、2,3例である。患者は週1回、皮下注射に通うだけなので、負担は小さい。抗がん剤で一時的に腫瘍は小さくなっても、副作用で患者が弱り、生存期間が延びていないケースはたくさんある。患者のために医療はどうあるべきかを、もっと考えなければいけないと思う」


ワクチン療法に関する問い合わせは電子メールで、「東京大医科学研究所中村裕輔研究室」へ。電話での問い合わせには応じていない。

〈ペプチドワクチン療法〉
免疫力を高めてがん細胞を退治する治療法。がん細胞の表面には特有のペプチド(アミノ酸が連なったもの)があり、それを目的に免疫細胞が攻撃する。人工的に大量のペプチドをつくって注射することで、免疫細胞は「敵が大量に押し寄せた」と勘違いし、特定のリンパ球を大量に増やして、がん細胞を攻撃する。大腸、肝臓、膵臓、肺、頭頸部(とうけいぶ)などのがんのほか、女性の卵巣、子宮頸、乳のがんなどで臨床研究が進められている。



『東京新聞』2.26


2013年02月26日(火) スポーツは寿命を縮める

スポーツは寿命を縮める行為である。人間が一生の間に打つ心臓の拍動数は、23億回である。心拍数が23億回に達すると、生命は終わりを遂げる。激しい運動は、生涯の心拍数を無駄に消費することになるし、運動中の体温の上昇、血流の拡大、呼吸数の増大などにより、活性酸素の過剰な発生を繰り返し、細胞を傷つけることになる。また、成績の向上や試合の勝負に伴うストレスなども、過剰な活性酸素を生みだす。

自分の体力を超えた運動を続けていると、健康維持どころか、かえって老化を促進することになりかねない。プロのスポーツ選手の平均寿命は、一般人よりも約10年短いといわれている。

最も理想的なのは、心拍数が上がらず、呼吸が荒くならない程度の散歩である。ウォーキングなどの適度な運動は、一酸化窒素を適切な量だけ発生させるので、血管を健康に保つために役立つと考えられる。南雲医師は、毎日30分のウォーキングを続けている。なお、睡眠中の成長ホルモンは若返りホルモンでもある。これが分泌されるのは、夜10時から夜中の2時までである。この時間に寝ることが健康につながる。


『週刊朝日』 南雲吉則


2013年02月25日(月) 糖尿病は運動で死亡リスク1/2に

日頃熱心に運動している糖尿病患者は、ほとんど運動しない人に比べて死亡の危険性がほぼ半分に下がることが、厚生労働省研究班の大規模調査で判明した。研究班は「食事に比べて運動指導はあまり実施されていないが、大きな効果があることがわかった。と分析している。調査結果は欧州糖尿病学会誌に掲載される。

生活習慣が原因で発症する2型糖尿病の男女1702人(40〜70歳)を約8年間、追跡調査した。運動量に応じて「多い」「少ない」「中程度」の3群に分け、脳卒中の発症、死亡などを調べた。運動量が多い群は、時速6キロのウォーキングに換算すると1日平均1時間10分、水泳では同30〜40分程度の運動量だった。「少ない」群は、仕事や日常生活の活動以外、ほとんど運動していなかった。

調査の結果、「多い」群の患者が脳卒中を起こす危険性は、「少ない」群の約6割、他の病気も含め死亡する危険性は5割程度にとどまっていた。曽根教授は「運動は、血糖値や血圧を改善させるほか、ストレス軽減効果もあるのかもしれない」と話している。



『毎日新聞』2.25


2013年02月23日(土) 麻原死刑執行の決断

安倍内閣がかたずを呑む、谷垣法相で麻原死刑執行の決断

いよいよ「Xデー」がやって来るのか。法曹界では、法務大臣に自民党前総裁・谷垣禎一氏をあてた安倍人事によって、麻原彰晃(57、松本智津夫)の死刑執行が近いと囁かれている。法務省関係者が語る。「戦後最大の惨劇”オウム事件”の首謀者の死刑ともなれば、決定者にはそれなりの重みが求められる。弁護士出身で総裁経験者の谷垣さんなら、その決定者にふさわしい」

谷垣法相は昨年末の12月27日の閣僚会見で「国民感情、被害者感情などから見ても死刑制度を設けていることは、相応の根拠があると思っている。その法の下で執務をしていきたい」と語り、死刑容認の考えを持つ。さらに「法相は谷垣さん自らが望んだポスト」と大手紙政治部記者は明かす。「総裁への返り咲きを狙う谷垣さんは、安倍内閣でも要職を望んでいた。ただし、リベラル派の谷垣さんは安倍首相とは政治スタンスが違う。その点、今のところ安倍改革の中心からはそれている法相はうってつけのポジション。麻原死刑を断行すれば政治家として歴史的決断をした一人ということにもなる」

先進国の多くが死刑を廃止していることを踏まえ、民主党政権は死刑制度について国民的論議を進めようとした。執行ペースは減速し、昨年末時点で確定死刑囚は史上最多の133人。積極的な死刑執行は法務官僚の要請でもある。さらには安倍内閣のこんな事情もある。「現在はご祝儀相場で経済も上向き傾向。7月の参院選を見据えて慎重な政権運営に終始しています。ただし、このまま安全運転を続けていても支持率が徐々に下がっていくのは明らか。そんな中で麻原死刑は”決断する内閣”との印象を国民に与えることになる」(前出の記者)

障壁となるのは長年の逃亡の末逮捕され、現在公判中を控える平田信、菊池直子、高橋克也ら3被告の存在だ。死刑の執行は共犯者の刑が確定するまでは行なわれないという原則がある。だが、法務関係者はいう。「3人の問われている容疑の立証に、麻原の証人尋問などは必要なく、刑執行に影響はない。3人の公判が終結するのを待たず、麻原の死刑を執行しても問題ないと考えられる」2006年に死刑が確定して以降、幾度となくXデーが囁かれてきた麻原死刑囚。収監先の東京拘置所の緊張は、日に日に高まっている。



『週刊ポスト』1.25


2013年02月22日(金) 3人の死刑執行

谷垣法相 3人の死刑執行命じる 「死刑見直す必要ない」

昨年12月末の政権交代後では初の死刑が2月21日、執行された。民主党政権は3年余りで計4回9人を執行したが、1年間執行しないこともあった。その前の自民党政権は2ヶ月に1回執行していた時期もあり、政権奪還で以前と同様の頻度に戻るかが注目される。

記者会見した谷垣法相は、3人の起こした事件の概要を説明し、「いずれも身勝手な理由から命を奪った極めて残忍で、被害者・遺族の無念この上ない事件。慎重に検討を加えたうえで死刑執行を命令した」と述べた。

3人の執行をこの時期にした理由は「差し控える」としたが、「極めて重大な刑の執行なので、十分資料を精査し、諸般の事情を勘案して決めた。改めてその重みを感じた」と説明した。制度については「見直す必要は現時点ではないと思う」と明言し、国連から死刑廃止を求められている点については「極めて大きな内政上の問題。一国の治安の維持、一国の国民感情、国民の安全安心の確保をしっかり考えるべきだ」と述べた。

民主党政権では、初代の千葉景子法相が2010年、法務省内に死刑制度の存続などを論議する勉強会を設置した。小川法相時代の昨年3月、存続について結論を示さずに終結した。その後、現行の絞首刑を見直すがどうかの検討が省内の政務三役会議で始まったが、政権交代で頓挫している。



命の重さ背負っていく

楓ちゃんの父が手記

小林死刑囚の死刑が執行されました。これで楓が戻ってくるわけではありませんが、少しは無念を晴らしてあげられたかもしれません。小林死刑囚が自ら犯した罪を真摯に受け止め、刑に向き合ってくれたと信じたいです。小林死刑囚の命も一つの命であり、今後私たちは楓の命、加害者の命の重さを背負っていかなければなりません。二度と尊い命が失われることがない社会になることを心から願っています。



『毎日新聞』2.22


2013年02月21日(木) 死刑囚の生活空間

東京拘置所の収容定員は3010人。現在、1900人を収容し、取り調べ中の容疑者、裁判中の容疑者、懲役刑などか決定し刑務所への移送を待つ受刑者、拘置所内での炊事や洗濯などの刑務作業を担う受刑者、などのほか2013年1月10日現在で70人の死刑囚がいる。死刑囚の居室は「単独部屋」と呼ばれる部屋。手前に薄緑色の畳が3枚敷かれ、奥にトイレと洗面所がある。トイレの流水レバーや洗面所の蛇口は自殺防止のために突起部分のないボタン式。洗面所上部の壁にはフィルム式の割れない鏡が張り付けてある。

刑務官はドアの小窓から常時、室内を監視できる。このためプライバシーに配慮し、死刑囚がトイレを使う際に腰がら下を隠せる木製のつい立もある。死刑囚が暴れた際に凶器とならないよう、段ボール製のつい立も用意されている。室内の壁は明るい白色で、暗い印象はない。奥の窓ガラスは特別頑丈な「航空機使用」で、開閉は不可能。窓は直接外部と接しておらず、通路を挟んでさらに曇りガラスとよろい戸で覆われた外壁がある。鎧戸のすき間からはわずかに光が差し込むものの、室内から外の風景はほとんど見えない。

死刑囚が使用する浴室は、外部から監視する際に一部が死角となるため、入り口外側の壁に半球形の鏡が取り付けられている。同拘置所での入浴は夏なら週3回、冬は2回。入浴時間は原則1回につき男性が15分間、女性が20分間。時間内であれば、湯船につかるのも体や髪を洗うのも自由という。死刑囚が使用する運動場は両側が壁、正面奥は鎧戸に覆われ、解放感に浸れる雰囲気はない。空を仰ぐ頭上には、二重の金網が張り巡らされている。上から覗きこめる位置に、刑務官の監視用通路がある。

運動時間は毎日1回30分間。他の収容者や職員と一緒に行なうことはできないが、雨でも本人が希望すれば使用できる。履物はサンダルがスリッパと決められ、唯一貸し出される用具は縄跳び。通常は場内で走ったり、歩きまわったり、体操をする程度だという。爪切りも運動時間にすることになっている。食事は主食のごはんが一日1200キロカロリー、副食のおかずは1日1020キロカロリーを基準とする。ただし、主食については体格で微調整する場合もある。予算の範囲内で正月におせち風の料理、クリスマスにはケーキが出されることもある。

刑務官によると、人気メニューは豚肉に韓国風から味噌のコチュジャン、ニンニクなどで味付けした「スタミナ焼き」。取材当日の朝食のおかずは、かつおフレーク、ふりかけ、大根、ナス、インゲンの味噌汁。昼食はスタミナ焼きと切干大根、中華なめこ汁だった。死刑囚は一人で居室内の小型テーブルで食事をする。通常は木製の箸を使用しているが、自殺の可能性がある死刑囚には曲がりにくい紙製のスプーンを与えることもある。

死刑囚が「心情の安定」を目的とした「教誨」(きょうかい・教えや諭し)を、宗教家である教誨師から受ける教誨室は、仏教用とキリスト教用の2室ある。仏教用の部屋は畳の敷かれた和室で、仏壇が備え付けられ、仏教関係の書籍が並ぶ本棚がある。キリスト教用の部屋には十字架やろうそく立て、聖書が備え付けられ、教誨師と死刑囚が賛美歌を合唱するための音楽プレーヤーが置かれていた。死刑囚は規則で指定された物品しか居室に持ち込めず、分量は約120リットル分まで。他に1個当たり55リットルのプラスティックのコンテナケースを3個まで預けられる。金銭は一切持ち込めず、国に預けた形になっている。所持金の範囲内で、おやつや日常品を購入できる。

同拘置所は病院指定を受けており、医療設備は充実している。約10人の医師と約20人の看護士が所属し、CT(コンピューター断層撮影装置)やレントゲン、歯科治療用の機器も備えられている。同室と同フロアに理髪店もある。死刑囚は受刑者と異なり、髪形はルール化されていないが「衛生的でなければならない」との決まりがある。髪を切るのは「衛生係」の受刑者。理髪師免許も持ち主もいるという。同室では、拘置所が作成したリストから選んで映画などのビデオを視聴できる機会もある。ただし、「心情の安定」に資することを目的としているため、殺人や逃走の場面が出るビデオは含まれない。

書籍は自費で一週間に3冊まで購入でき、拘置所が所蔵する「官本」も一週間に3冊まで借りられる。新聞は自費で一般紙とスポーツ紙を1誌づつ購読できる。書籍も新聞も「拘置所の規律秩序の維持を害する可能性がある」と判断された場合は、購入が許可されないこともある。居室で小動物や鳥、魚などの生き物を飼育することはできないが、花瓶などに花を生けることは許可される場合があるという。


死刑囚担当の刑務官は…刑の存在意義に疑問

死刑は一番重い刑罰なのに、次に重い無期懲役のように刑務作業を科せられるでもなく、ただ長期に収容されて病死していく確定者も少なくない。収用だけして執行されない実情に接していると、死刑という刑罰の存在意義に疑問を感じることがある。



『毎日新聞』1.14


2013年02月19日(火) 国会議員500人削減せよ

年収4500万円、家つき、使用人つき、年金つき、有給は取り放題

野田総理は野党時代に、税金を食う役人を「シロアリ」と罵倒し、それを駆逐するために政権交代させろと叫んだ。今ではそのシロアリを必死に食わす道化になったが、税金で腹を満たす貪欲さでは国会議員も別種の害虫だ。この最強・最悪の太ったシロアリこそ、まず最初に退治すべきだ。

現在の小選挙区制を導入した細川連立内閣時代(1994年)の選挙制度抜本改革の定数11減と、小渕内閣時代(2000年)に自由党が自自連立の条件として実現させた衆院20、参院10の削減だ。いずれも小沢一郎・民主党元代表が主導した。現在の国会議員722人(衆院480人、参院242人)体制はこのとき生まれた。2009年の衆院選の民主党マニュフェストに「衆院の比例定数80削減」を盛り込んだのも小沢氏だった。小沢氏が偉いというより、いかに定数削減をしたがる政治家がいないかの証左である。

アホでも大臣になりたがるワケ

この国では、「格差社会」の頂点に国会議員がいる。国会議員の歳費(給与)の高さは世界一で、月給・ボーナス合わせて年間2106万円。これとは別に、歳費振り込みの個人口座には、毎月100万円の「文書通信交通滞在費」が振り込まれる。非課税で使途の報告の必要もない。「つかみガネ」だ。年間1200万円だから歳費と合わせて年収3306万円、課税収入に換算するとざっと4500万円相当になる。一部上場企業の社長の平均給与、約4708万円に肉迫する。

自民党の大臣経験者は、「大臣になると、さまざまな手当てだけで手取りが月40万円ほど増える。しかし、その分は毎月、大臣室のスタッフの夜食代やSPへの心付け、各局の幹部たちとの食事会の費用として事務方に預けておいた」と、政権時代を振り返るが、民主党政権は一部の大臣を除いて、「事務所の弁当もワリカンでしっかり貯め込む大臣が多い」ようだ。国会にも約徳はある。議長と(歳費3678万円)と副議長(歳費2685万円)は格段に給与が高く、常任委員長や特別委員になると、会期中「1日6000円」が加算される。昨年は大震災で通常国会が延長され、2回の臨時国会で年間289日間も国会が開かれた。手当は年間173万円。ちなみに手当は委員会が開かれない平日も、土日も会期日数分が全額支給される。

平年の国会会期は220日ほどだが、国会がなくても歳費は払われる。議員は閉会中、“有給休暇”が取り放題なのだ。政党を通じて議員にはいるカネもある。政党には所属議員一人当たり年間約4500万円の政党交付金と、その他に1人780万円の立法事務費が税金から交付される。民主党の場合、政党交付金(約168億円)ち立法事務費(約32億円)を合わせると年間約200億円にもなる。しかし、民主党は政権についてから議員立法を原則廃止しており。法案作りは役所任せ。「立法事務所」などないのである。

では、何に使うのか。年間1000万円の支部交付金や「モチ代」「氷代」と呼ばれる若手議員への活動費としてバラ撒かれるのである。民主党は“官おろし”が吹き荒れた2011年6月、若手の不満を抑えるために1回生議員200万円、2回生議員100万円の臨時ボーナスを配り、2012年も消費税反対派にいつでも“実弾”を撃てるように、党の予備費42億円を積み上げている。10年以上、議員を務めたベテランには議員年金がつく。これは月額約10万円の保険料を最低10年間払えば引退後65歳から毎月約35万円の年金を受け取れるもので、公的年金(厚生年金や国民年金、公務員年金)を受給する人でもプラスアルファで満額がもらえる。さすがに批判を浴びて2006年に廃止が決まったが、その時点で在職10年を超えていた議員は今も受給資格を持つ。

例えば岡田克也・副総理の場合を試算すると、引退時に約1620万円(払い込んだ保険料の8割)の一時金をもらうか、65歳から月額ウ悪38万円の年金を生涯もらうかを選択できる。たった16年の保険料納付でこの役得を得た男が、国民には「年金が欲しいなら、もっと増税するぞ」と脅しているのだから、もう批判する言葉も見つけられない。ちなみに。基準では中曽根康弘・元首相(在職56年)は年間741万円、塩川元財務相(在職33年)は601万円になるが、年金以外の収入がある場合は減額され、二人とも現在の受給額は半分程度だ。

議員数はアメリカの3倍以上

税金喰いというだけでも議員はごっそり削減したくなるが、もっと腹立たしいことに、722人の議員の大半には仕事すらないのである。政権党である民主党でも、まあ仕事をしているのは政務三役と党役員くらいで、ほとんどの議員は委員会の員数合わせに駆り出され、政府が提出した法案の採決要員として起立させられているにすぎない。民主党の1年生議員が語る。「ごくまれに質問の機会が回ってくるが、与党だから政府を追及するわけではないし、役所のレクチャー通りに質問するだけ。党の部門会議に出席しても方針は最初から決まっている。会期中なのに膨大な時間の空費があって国会は本当に仕事が少ないとわかった」政務三役にしても、役所のレクチャーに従って動き回っているだけで、国の方針や運営を決めているわけではない。役所のやり方は自公政権時代と変わっていないから、自民党は野党としての政策チェックもできず、もっと暇である。

役所に溺れるシロアリの巣は、もはや立法府としての機能を全く果たせなくなった議会の廃墟だ。それは、国会議員が役人に特権を与えられて飼いならされ、「選良」がどこにもいなくなったからだろう。憲法学者の甲斐・日本大学法学部教授は、国会議員の本来の役割をこう指摘する。「憲法前文に『日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し』とある。これが議会制民主主義の規定です。人間は目先のことにとらわれ、誤った判断をするもの。それを避けるために、代表者を選び、その代表者が最善の選択をするという考え方です」

シロアリと化した国会議員は根こそぎ駆逐しなければならない。議員定数削減論議は、本来ならいい機会なのである。政治学者の佐々木・中央大学教授は指摘する。

「日本の国会議員の数が多いのは、明治以来、国の金を地方に利益誘導することが地元代表である代議士の仕事だったからです。そうした政治を改めるのだから、人口が2倍以上いる米国議会より多い議員数はおかしい。そもそも国の財務負担が増えているのは、社会保障の増加だけではなく、明治以来の国と府県による二重行政の無駄が原因です。財務再建には、行政だけでなく立法の権限を地方に委ねる分権が必要です。農業、国土交通省のインフラ整備など内は地方に権限を委譲し、国は外交、安全保障、通商などの役割に純化する。国会議員には利益誘導の役目はなくなり、半分はいらなくなる」

米区議会は上院100人、下院435人。議員は人口約58万人に1人だ。日本は人口比でその3倍以上の議員がいる。英、仏、独では人口当たりの国会議員の数は日本より多いものの、そのかわり地方議会の議員は無報酬に近いボランティアだ。国と地方トータルの「職業政治家」の数を比べると日本より圧倒的に少ない。

社会保障論の鈴木・学習院大学教授は、「日本は衆院240、参院は各県代表の47で十分」という。「なぜ議員が少ないほうがいいのか。間違ってならないのは、議員削減は政府がいう消費増税のためではない。議員を減らす程度で増税されては国民はたまりません。削減の目的は政治の効率化と議論のスピードアップ。人数が少ないほうが物事は早く決まる。さらに議員の数が減れば、国民には名前と顔が一致し、政治家の行動をチェックしやすくなる。議員が722人もいたら誰かわからない」

なるほど、シロアリか働きアリかがわかれば駆除もやりやすい。ちなみに多くの先進国では、下院(衆議院)をチェックする役割の上院(参議院)では給料さえ払われていない。甘く見ても、日本の国会議員は500人は削減したほうがいい。



『週刊ポスト』2012 2.17


2013年02月18日(月) シェールガス革命

シェールガスは頁岩(けつがん)シェール層から採れる天然ガスのこと。そのガスがどうして革命と呼ばれるほど注目されているのかというと、アメリカで大量にシェールガスが採掘されるようになって、中東の石油からエネルギーシフトが起こると予想されているからです。

『WEDGE』は、「シェール革命で得た石油とガスでアメリカは復権する」と15ページにわたる特集を組んでいる。アメリカのノースダコタ州ウィリストンはシュールガスの採掘で、「ゴールドラッシュの再来」といわれるほど賑わっている。この町はほぼ完全雇用で「油田労働は『月月火水木金金』」という状況らしい。また天然ガスが採れ過ぎて価格が下落し、すでにシェールガスからシェールオイルにシフトしているとの報告もある。

エネルギー情報局元局長のガイ・カルーソン氏は「オイルについて言えることは、もう安い時代には戻らないということです」と、”革命”というほどの変化は起こらないと語る。『エコノミスト』は、特集「2013年 世界と日本大予測」で日本総合研究所理事長の寺島さんがシェールガスについてインタビューに答えている。

「アメリカはチュールガス、シェールオイルによって、エネルギー産業で大きな競争力を持つようになった。さらに米国の原発関係者は、シェールガスの登場で、原発は競争力を失う、と危惧している」と語っている。シェールガスは低コストで、二酸化炭素の排出量も石油や石炭よりも少なく、埋蔵量も豊富なのだそうだ。


『毎日新聞』1.14


2013年02月15日(金) 朝鮮の王朝

27代、518年間続いた

朝鮮王朝は王族を頂点に、「両班」ヤンバン(文官と武官)という地主貴族階級が支配者として君臨した。両班を補佐するのは下級官吏(カンリ)の「中人」だ。彼らに支配されたのは「良民」(常民)と呼ばれる農民や職人、商人でヒエラルキーの最下層には「賤民」がいた。賤民には奴隷の奴婢、旅芸人や獄卒、前科者、妓生(キセン)などが属す。四つの階級は固定され、出自が職業ばかりか人生を決定した。徹底した身分制度の根底には国教、国是となった儒教の教理がある。

還流ブームの一翼を担う歴史ドラマでは、好んでこの時代の宮廷、とりわけ女性が描かれる。宮中に仕える女人は「宮女」(クンニュ)その下に雑役を担当する下女の「房子」(パンジャ)がいる。宮女も高級女官の「尚宮」以下、厳しい身分制度が確立していた。

彼女たちは13歳くらいで見習い内人として入宮する。王の居室に侍って身辺の一切を仕切る「至密」をはじめ、裁縫仕事を受け持つ「針房」、食事を司る「生果房」などの職場に配属された。王城に風呂がないことから、王族の洗顔や入浴、排便の世話係「洗水間」もあった。宮女は”全員が王の女”と解釈されており、彼女らの周りで働く男性は生殖能力を失った宦官に限られていた。

見習い内人は約10年の修業期間を終えると、王へお披露目する「井礼」が行なわれ、ようやく成人扱いになる。ただ、尚宮の地位にたどり着くまでは、さらに15年の宮仕えが必要だ。宮女が王に同襟を許されれば、これは出世のチャンス。宮女は「承恩内人」と呼ばれる。懐妊、出産となれば側室となり、子宝に恵まれなくても「特別尚宮」として仕事を免除された。

朝鮮王朝歴代27人の王の妃は合計40人。王が召した側室は117人にのぼる。側室から生まれた子供が260人。もっとも多くの側室を抱えたのは、10代燕山君(在位1494〜1506)の15人だった。ちなみに、徳川11代将軍家斉はたった一人で40人の側室を侍らせ、55人もの子を産ませた。朝鮮王朝で宮女の数がピークだったのは、英祖(1724〜1776)時代で684人。対する大奥は約2000人もの女性が伺候していた。

妓生は社会的には最下層の賤民だったが、その存在や活躍の場は実に華やかだ。宗王国たる中国皇帝の使節を歓待する場を筆頭に、王族や両班の宴席で舞踊を披露し、お酌や歓談の相手を務めた。妓性は『妓生庁』という役所で管理され、”宮妓”として称された。抜群の容姿を誇るだけでなく、多芸のうえ学問や詩歌、絵画などの知識も豊かだった。それだけに”人間の言葉を話す美しい花”という意味の『解語花』という別名もある。

また、一婢の妓生はファッションリーダーでもあり、彼女たちの髪型や衣装、装飾品などが若い女性の憧れとなった。これは江戸・吉原の花魁と重なる部分が多い。王朝滅亡後、妓生は宮廷から花柳界へと活躍の場を移した。現在の妓生は、料亭遊びが舞台である。彼女たちは民族衣装のチマチョゴリを着て、マンツーマンで接客する。ちなみに料金は、料理とお座敷遊び、カラオケまでセットで2万〜3万というところ。


『週刊現代』


2013年02月13日(水) 溜まる使用済み核燃料

万年単位の危険 処理技術なし

福島第2原発のような100万kw級の原発を1年間運転すると、使用済み核燃料がおよそ30トン発生する。使用済み燃料には、ウラン35の核分裂でできた死の灰と、ウラン238からできたプルトニウムなどが含まれている。これらは放射線がきわめて強く、半減期が万年単位と長いものも含まれ、極めて危険な物質である。人間の環境から長期間にわたって隔離しなけれなならない。

現在これを安全に処分する技術が未熟なために、原発は「トイレなきマンション」といわれている。原発内で長期にわたって水で冷却しながら貯蔵しているので、常に地震と津波の危険にも晒されている。政府や電力会社は「原発は安上がり」と印象づけてきたが、放射能の最終処分の費用をコストにほとんど反映していない。これには巨額の費用がかかる。将来の社会で私たちの子孫が、何の価値も生まない放射能の処分に多額の費用を支出するような事態は避けるべきである。処分体制もないのに、使用済み核燃料を増やすことは無謀である。

立命館大学教授 安斉育郎


再処理工場 国内外で事故

原発にたまる一方の使用済み核燃料をどう処理するか。歴代政府の対策の重要な柱が、青森県六カ所村にある日本原燃の再処理工場である。同工場では、使用済み核燃料を破断して溶かし、プルトニウムとウラン、残りカスである死の灰と分ける。その工程で放射能が施設外に排出される。2006年には使用済み燃料を用いる試験を始めたが、放射能漏れなどの事故が続発し、いまだに本格稼働できていない。茨城県の研究用再処理工場でも、1997年3月11日に火災、爆発事故が発生し作業員37人が被曝し、放射能が隣接する大洗町、つくば市でも検出された。

英国の海汚染

世界でも再処理施設での事故や、放射能汚染が起きている。過去最悪の放射能による海洋汚染を起こしたのが、アイリッシュ海に面した英国セラフィールド再処理施設だった。1969年ごろから、ストロンチウムなどを垂れ流し、海底の土や海藻などの汚染が進行した。1983年にも160兆ベクレルもの放射能の汚染水を放出し、大問題になった。2005年4月にも、同施設の新鋭再処理施設で、高レベル放射能溶解液が漏出する重大事故が発生した。配管の接続部が金属疲労により破損したためである。

再処理は完成した技術とはいえず、施設での重大事故がこれまでに世界で20件余も報告されているほど危険である。再処理技術が確立されていないため、原発が廃炉になっても、使用済み核燃料は、安全に保管し続けなければならない。これが原発の現実である。

危うさは原発以上

使用済み核燃料の再処理技術は未熟で、原発以上に危険をはらんでいる。日本の再処理工場では、使用済み核燃料の処理で、フィルターなどで除去できないガス状の放射能「クリプトン85」が全量、排気塔から環境に出てくる構造になっている。今福島第一原発の放射能放出が大問題になっているが、再処理工場では通常の工程で放射能が排出されているのである。

再処理はもともと米国で、核兵器用プルトニウムを生産するために始まった。それで危険な大事故が日本やロシアや英国などで続発した。青森県の六ヶ所再処理工場は1993年の着工以来、建設投資が2兆円を超えたが、17年経過した現在も本格操業に至らず、高レベルの放射能廃液処理も中断している。放射能を最終処分する処分候補地さえ定まっていない。今こそ未熟なプルトニウム利用のための再処理路線を断念する時である。

元原子力研究員 市川冨士夫



原子力発電所の使用済み燃料の貯蔵量(2010年9月)

         発電所    貯蔵量(トン)    貯蔵率(%)
北海道電力    泊        350          35
東北電力     女川       390          49    
         東通       60           26

東京電力     福島第一    1820           87
         福島第二    1130           83
         柏崎刈羽    2210           76

中部電力     浜岡      1090           63 
関西電力     美浜      360           53
         高浜      1160           67

九州電力     玄海      760           71 
         川内      850           66



『週刊朝日』



2013年02月10日(日) 冬場の脱水症状

意外に多い冬場の脱水症状

こわい電解質の喪失、血管が詰まるリスクもある

お肌が乾燥する季節。専門家によると、冬は湿度が低下するため体の水分が失われがちだという。流行中のノロウィルスやインフルエンザも脱水症状を起こしやすい。夏だけではない「脱水」への対処法は。

「『お腹の風邪』といわれる感染性胃腸炎やインフルエンザは、冬場の脱水に大きく関係します」兵庫医科科大学の服部教授は説明する。猛威をふるっている感染性胃腸炎はノロウィルスが主な原因で、腹痛のほか下痢や嘔吐を引き起こす。2歳までの乳幼児に多いロタウィルスも同様の症状が起こる。人間の体の約60%は水分(体液)である。酸素や栄養素を運び、老廃物を排泄するなど重要な働きをしている。

下痢や嘔吐を繰り返すと、水分だけでなく、ナトリウム(塩分)やカリウムなどの電解質も失われる。インフルエンザによる発熱で汗をかいても同じだ。服部教授は「水だけ飲んでいても、脱水症状は改善しない。体の中の電解質が薄まってしまいむしろ悪循環になる」と話す。医療現場では、脱水症には点滴で水分と電解質を補う。点滴と同じように素早く体内に水分と電解質を補給できるのが「経口補水液」と呼ばれる飲み物だ。

経口補水液は薬局で販売されているが、家庭でも作れるという。体液管理に詳しい神奈川県保健福祉大の谷口教授によると、水に塩分と糖分を一定の割合で混ぜると、身体に吸収されやすくなる。材料は、砂糖20〜40グラム、塩3グラム、水1リットル、レモン半分程度。谷口教授は「水には砂糖を先に入れたほうが作りやすい。レモンを加えると、甘味が抑えられて飲みやすくなる」と話す。

脱水の症状にもよるが、大人は1日当たり0.5〜1リットル程度、乳児で0.3〜0.6リットル程度を少しずつ飲む。子供の場合は一気に飲まないようにペットボトルのキャップやスプーンなどを使うとよい。脱水時には、お茶やコーヒーなどカフェインを含む飲み物は、利尿作用があるため控えよう。スポーツドリンクは、100ミリリットルあたたりナトリウム40〜80ミリグラム程度を含んでいれば、水分や電解質の補給効果があるという。

脱水を起こすのは、下痢や嘔吐だけではない。冬は暖房器具を使うため、室内が乾燥して皮膚などから水分が失われる一方、飲み物の摂取量は減りがち。脱水の恐れは意外と身近なものだ。体の水分が不足すると、血液が粘って血管が詰まりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高める」と服部教授は話す。手の皮膚がカサカサとか、口の中の唾液が減って粘る、身体がだるい、などは冬の脱水のサインだという。

日常生活で脱水症状を予防するにはどうしたらいいか。谷口教授は「朝起きてすぐ、食事のたびに、寝る前など、1日8回程度、意識的に水分摂取することを心掛けてほしい」と話す。ただ健康な人が脱水予防のために経口補水液を飲む必要はないという。白十字訪問看護ステーションの秋山所長は「高齢者の場合、食事の量が減って水分が不足している場合もあるので食事の量も気にかけてほしい。尿が薄くなったり、手の甲をつまんで山の形が残れば、脱水の恐れがあります」と話している。




『毎日新聞』1.14


2013年02月09日(土) 生活保護基準額 ドイツは増額

自民・公明政権の復活で、自民公約の生活保護の給付水準の10%引き下げが浮上する危険がある。しかし、同じ先進国のドイツでは、逆に生活保護の基準を引き上げた。ドイツの生活保護制度で最も多いのは、15〜64歳で働ける人が対象の最低生活保障である。2005年から行なわれている今の制度で、人口が日本の3分の2のドイツで約600万人が受給しており、ずっと受けられる。対して日本の生活保護受給者は、213万人。

ドイツはそれでも生活保護の基準額が低いとして、受給者が裁判に訴えた。ドイツでは、専門分野ごとに裁判所が分かれている.州の社会裁判所などは、基準額の決め方が憲法に違反すると判断し、連邦憲法裁判所に移送した。 そして、2010年2月、憲法裁判所は基準額の決め方に問題があるとして、基準額全体を違憲と判断した。これを受け、政府は基準額の決め方を変えた。世帯主の基準額は、2005年の毎月345ユーロから、徐々に引き上げ2013年には10%以上に引き上げた。

ドイツの場合、暖房費などの電気代は別に支給される。ドイツの場合、生活の仕方自体が日本と違う。コンサートなどの文化関係の費用が安いことと、肉がキロ単位で売っていることなど、生活物資が日本と比べかなり安くなっており、日本と単純に比べられない。

憲法裁判の判決は、人間の尊厳が憲法の権利

ドイツの以前の基準額は、所得が下位20%の単身者と比べて決めている。憲法裁が一番問題にしたのはその中に、所得の低い生活保護を受けている世帯を含めていたことである。基準額を決めるのに、現に生活保護を受けている人と比べるのはおかしいというものである。政府は、この判決の指摘を基本的に受け入れた。さらに単身者世帯と家族世帯に分け、単身者は所得の下位15%、家族は下位20%を比べることになっている。日本では、比較の対象を一番下にして、保護費が高いといっているのだから、ずいぶん違う。ドイツでは、こうした見直しを行なった結果、基準額上がったのでである。

新基準の違憲か

その後、新しい基準額に対しても訴訟が起こされている。ベルリンの社会裁判所は、新しい基準額の決め方も憲法違反の恐れがあるとして、憲法裁に移送した。生活保護を受けることができるのに利用していない世帯や、特別に安い学生食堂で食事する学生などを比較対象から外すべきだと主張している。さらに、低賃金労働者が増えるなかで、それを理由に基準額を下げてはいけない、と判断している。憲法裁の判決はまだ出されていない。

日本国憲法では

憲法裁の判決で非常に重要なのは、最低生活保障をドイツ憲法に基づく権利と明確に決めたことである。基本法1条1項の人間の尊厳と、同20条1項の社会国家の規定から、人間祖尊厳に値する生活を求める権利が直ちに出てくるとした。今までになかったことで画期的である。

一方、日本では、憲法25条で国民の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を明記している。ところが自民党は、給付水準の10
引き下げを主張している。これは、現在受給している人を含め、10%切り下げた生活を強いるものである。生活に困っている人が生活保護を受けることをさらに難しくしている。そして、生活保護を引き下げることだけではなく、本当の狙いは最低賃金や、年金を抑え込んだり引き下げることだと思う。貧富と格差の広がる拡大が深刻なのに、基準を下げることでそれをないがしろにしてしまうとは、ひどい内容だと思う。

大阪市立大学院教授 木下秀雄


『赤旗』12.23


2013年02月08日(金) 政党助成金

政治と金を問う

政党や政治家の正体は、金の集め方を見るとよくわかる。去年の11月末、政治家が昨年集めた金の収支が公表された。なんと福島第一原発事故後に、電力関連の企業が団体から献金を受けた政党や政治家がいる。総選挙で問われる「政治とカネ」の実態をみる。

「電力会社の経営陣は自民党に、労組は民主党と分担して支援してきた。震災後も変わっていない」と電力会社の元幹部は話す。昨年分の政治資金収支報告書では、電力会社による支援の状況がうかがえる。自民党の政治資金を集める「国民政治協会」は、電力会社の関連会社12社から計約3850万円の献金を受けている。このうち福島第一原発事故後にも、7社から計約1430万円が渡っている。

今電力会社により電気料金の値上げの申請が相次いでいるが、それでも寄付は続行する計画である。電気料金値上げを申請した関西電力の八木社長と九州電力の瓜生社長は11月29日の記者会見で「パーティー券購入は続ける」と言い切った。もう一方の資金ルート、労働組合は、電力総連傘下の組織を通じて、民主党の国会議員、地方議員に計約2億4950万円が流れ込んでいた。

浜岡原発を抱える中部電力労働組合政治連盟は、民主党の岡田前総理のパーティー券計26万円を購入した。日本未来の党の牧前衆議院は議員は、計30万円のパーティー券購入を受けていた。いずれも震災後の購入である。電力総連は原発について「電力の安定供給のためには、必要な電源である」と再稼働を求める立場である。

政党助成金依存症

総選挙では、国民の税金が原資である政党助成金や企業・団体献金の是非も大きな争点の一つである。1994年に政党助成金制度が導入された際、5年後に企業・団体献金を禁止するとしていたが、企業・団体献金の禁止は先送りされ続けている。このため右手で政党助成金を受け取りながら、左手で企業・団体献金を受け取るという”二重取り”政党が多数いる。民主党はマニュフェストで企業・団体献金禁止を公約している。ところが、2011年に企業団体献金を計約9788万円も受け取っている。加えて政党助成金を計約168億2589万円も懐に入れている。

企業・団体献金をめぐる態度が二転三転している日本維新の会。前身の大阪維新の会は、パーティー券を企業や団体に購入してもらっている。維新の会に合流した「たちあがれ日本」も計1080万円も企業・団体献金を受けている。

収支に占める政党助成金の割合は、みんなの党83.2%をはじめに、民主党79.9%などと“税金”依存体質である。日本未来の党は、公約で政党助成金や企業・団体献金について一切触れていない。未来の党に入党した小沢一郎前衆議院議員の事務所は、公共事業受注ゼネコンから巨額の献金を受けていた。いわば税金を還流して受け取っているという構図である。小沢氏には自由党解党時に余った政党助成金を貯め込んだ疑惑もある。未来の党が「政治とカネ」の問題にどういう態度をとるのか問われている。

政党助成金は、支持していない政党にまで一人当たり250円の税金を分けることから、思想・信条の自由を侵害する憲法違反の制度である。



『週刊朝日』


2013年02月07日(木) 日本の火力発電

日本の火力発電の効率は59%で、世界最高水準

化石燃料を使う火力発電は、地球温暖化のもとになる二酸化炭素を排出する。ただ、日本の火力発電は、発電効力に優れていて海外の火力発電と比べると、少ない燃料で同じ電力量を生みだせる。それだけ二酸化炭素の排出量も少ない。日本の技術を移転すれば、世界のCO2削減に大きく貢献できるだろう。

マジックのような数字

羽田空港に近い京浜工業地帯の一角に、東京電力の川崎発電所(川崎市川崎区)がある。高出力・高効率を追求した世界最高水準の省エネ発電施設だ。LNG(液化天然ガス)を燃料に、原発1.5基分に相当する150万kwの電力を24時間運転で供給している。

「ここにタービンが3つ並んでいます」小関所長の案内で入った建物の中には、大きな鉄の格納容器があった。内部ではガスタービン、高中圧蒸気タービン、低圧蒸気タービンが一列に並び、発電機と一つの列でつながっている。つまり、ガスタービンを回した後の排気を回収して蒸気をつくり、その蒸気で蒸気タービンも回すコンバインドサイクル発電を行なっているのだ。軸は全部で3本あり、2月にはすでに完成済みのもう一本が稼働を始める。出力は、それぞれ50万kwある。

蒸気タービンだけ、もしくはガスタービンだけで発電するより格段に効率のいいコンバインドサイクル発電だが、その中でも同社が「MACC」と呼ぶこの最新型は、川崎のほか富津火力発電所(千葉県富津市)に導入されている。ガスタービンの耐熱材料や、蒸気冷却の技術革新によって、ガスの燃焼温度を1500度級まで高めているのが特徴だ。燃料の熱エネルギーをどれだけ電気に変えられたか。その効率を見ると、川崎は約59%で、小関所長は「マジックのような数字です」と言う。同社が1985年に富津火力に導入した1100度級は約48%。そこから1300度級の約55%を経て、今に至る。燃焼温度が高まるほど、発電効率も良くなってきた。

川崎火力の敷地内では、土木工事が進んでいた。新たに発電効率約61%ととなる1600度級の「MACC�供廚侶�設準備をしているのだ。71万�繊Ν匹亮瓦�2本つくり、2016〜17年度に稼働する予定だ。川崎火力の出力は、計342万�繊Ν匹砲覆襦�

■13億トンの削減効果

世界に目を向ければ、中国、インド、米国などCO2を大量に排出している国は、電力に占める火力発電の割合が高い。国際エネルギー機関(IEA)の2009年の統計によると、中国81%、インド84%、米国69%。とくに中国とインドは、CO2を最も多く排出する石炭を燃料に使う火力発電が主力だ。日本エネルギー経済研究所は、これら3カ所の石炭火力発電所を、日本並みの発電効率に改善するだけで、日本の年間CO2排出量に匹敵する13億トンの削減効果があると試算している。驚くべき数字だといえる。

電気事業連合会の資料によると、11年度の日本の火力発電によるCO2排出量は、4億3900万トン。前年度の3億7400万トンから大幅に増えた。電力の約79%を火力に頼るというバランスの悪い電源構成比になっている。原発が次々に稼働停止し、足りなくなった分を火力で補うようになったからだ。そんな中、発電効率を高めた次世代型の石炭火力発電の研究も進んでいる。高い省エネと公害対策技術は日本の強みだ。これを世界に広めていくことは、日本の経済力を高めるだけでなく、世界のCO2削減にも貢献できるのだから、積極的に売り込みを掛けるべきだろう。



『読売新聞』1.14


2013年02月06日(水) 憲法改正は必要か

「憲法改正は是か非か」という問いは無責任である。現憲法と比較する改正案を示され、その背骨となる思想を検討して初めて国民は是か非かを判断できる。現在、与野党で具体的な『日本国憲法改正法案』をまとめているのは自民党だけであり、国会の憲法論議はその案を軸に行なわれる可能性が高い。そこで、自民党案をもとに、何が改正の論点なのかを見ていきたい。

「国防軍創設」(9条改正)に憲法改正は本当に必要か

憲法改正を議論する場合、「改正しなくてもできること」と「改正しなければできないこと」を峻別して議論しなければ国民がミスリードされる危険が生じる。とくに9条の改正をめぐってはその2つがごちゃ混ぜに議論されている傾向が強い。現憲法は9条で「戦争の放棄」を謳い、9条の➁で〈前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない〉と定めている。

自民党の憲法改正草案では、この9条改正が重要な柱となっており、�△鬚修辰�り削除した上で、「自衛権の発動を妨げるものではない」と明記し、新たに次の条文を新設している。〈我が国の平和と独立並びに国民及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する〉続く条文で国防軍の任務などを定め、さらに9条の3では、〈国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない〉と領土保全条項を盛り込んだ。

この9条改正以外にも、自民党案は、武力攻撃を受けた場合や大規模災害などの際に、内閣が国会の可決なしで「法律と同じ効力を持つ政令」を制定できる緊急事態条項(新98条など)を新設するなど、国家安全保障体制を大幅に強化する内容となっている。「憲法改正」といえば、この9条改正と国防軍創設がセットで議論されるのが常である。しかし、その前に、自民党案が提起する国防軍創設が本当に憲法を改正しない限り実現できないのかを考える必要がある。

9条改正必要論者として知られる憲法学者の小林節・慶応大学法学部教授はこう指摘する。「自衛隊を国防軍に改称するだけなら憲法改正の必要はありません。9条�△任蓮慘Τざ�軍その他の戦力は、これを保持しない』と定められていますが、法律は軍という名前がついているかどうかではなく、実態で判断するもの。日本は主権国家として自衛権があり、自衛隊はその自衛権に基づく存在です。今の自衛隊が合憲であるのだから、名前を国防軍にしても合憲。したがって国防軍への名称変更は憲法改正しなくても可能なのです」

政権を持つ自民党が国防軍を創設するというなら、現憲法のもとでも、自衛隊法を改正して名前を「国防軍」にすることはできる。そのうえで、憲法改正しなければできない国防軍の活動があるとすれば他国への侵略戦争だが、それは自民党の憲法改正案でも禁じている。ならば、9条改正の目的は何なのか。そうした問題は国防軍創設だけではない。政府は集団的自衛権について、「我が国は、国際法上、集団的自衛権を有しているが、行使は憲法上許されないと考えてきている」という見解を取ってきた。自民党案で自衛権を改めて明記したのは、米国との集団的自衛権の行使に道を開くためだと見られている。

しかし、小林教授は、「今の日本は、竹島は韓国に実効支配され、北方4島はロシアに実効支配され、尖閣は中国の脅威にさらされている。急迫不正の侵害があった場合、これを排除するために安全保障条約を結んでいる米国との集団的自衛権が必要になる。集団的自衛権は有しているのだから、その行使に憲法改正の必要はない。『憲法9条のもとで認められる自衛のための必要最小限の範囲内で集団的自衛権による武力行使はできる』と閣議決定で政府見解を変更すれば可能です」と語る。

前述の「領土保全条項」にしても、条項の追加がなければ尖閣諸島など周辺の脅威にされされている領土を守れないというものではないことは明らかだ。そうした、憲法改正しなくてもできる必要な安全保障体制の強化をまず実現すべきではないか。それをやった上でなければ「改憲しないと日本を守れない」と国民を騙す改憲論になる危険がある。



『週刊ポスト』1.25


2013年02月04日(月) 癒着とバラマキの復活

古い自民党の癒着構図復活である。大型公共事業ばらまきの「緊急経済対策」を1月11日に閣議決定した安倍内閣。ゼネコン業界は、総選挙前、自民党建設族議員の資金集めパーティー3.000円を各社に割り当てた。ゼネコンと自民党の“持ちつ持たれつ”を追跡した。

年治選挙が取り立たされていた昨年11月12日夜、東京都港区の明治記念会館。元国土交通事務次官で自民党有力建設族議員、佐藤信秋参議院議員の出版記念パーティーが開かれた。中堅ゼネコン幹部は「参院選挙のための資金集めパーティーだ。日建連を通じてパーティー券の購入を要求してきた」日建連とは、ゼネコンの業界団体である。ゼネコン業界の政治献金の窓口になってきた。手口は巧妙である。

「日建連には、佐藤事務所から1枚2万円のパーティ券を1500枚、計3000円分の購入依頼があったと聞いている。それをゼネコン各社に割り当てた。割り当て額は大手で150万円、それより下のクラスで100万円だった。銀行振り込みの際、購入するパーティー券の通し番号記載も依頼してきた。「パーティー券番号で佐藤事務所は、下請けや関連会社名で金を振り込んでも、どのゼネコンがどれだけ購入したかがわかる。あとで意地悪されないためにも、割当額は買わざるを得ない仕組みだ」ゼネコンがパーティー券を購入する目的ははっきりしている。

佐藤議員は、10年間で200兆円の公共投資を主張する国土強靭化総合調査会の副会長である。 安倍内閣が閣議決定した「緊急経済対策」。看板は「復興・防災」でも、財界やゼネコンが要求していた「三大都市圏環状道路の整備」や「国際コンテナ戦略港湾の機能強化」など不要不急の大型公共事業が入っていた。別のゼネコン役員は「国民に大型公共事業を批判され予算も減らされてきたが、自民党が政権復帰すれば、我々の希望はどんどんかなう。パーティー券購入は一つの先行投資だな」

ゼネコンの業界団体、日建連は自民党支援を鮮明にした。野村日建連会長は、衆院選挙公示前の昨年11月「政策そのものが一致しているのが自民党だと思っている」と記者会見で発言した。選挙後、安倍内閣が発足すると、「大都市の機能強化など、国民生活の安全と経済活動の基盤となる真に必要な社会資本整備を着実に推進されることを期待する」とコメントした。

業界の要望の一つが、緊急経済対策に盛り込まれた「三大都市圏環状道路の整備」である。昨年9月、着工式が行なわれた東京外郭環状道路(関越〜東名)。同区間は地下40メートルにトンネルを掘る計画で、地下部分の事業費だけで1兆2800億円にのぼった。地上部も含めると「1��1億円」を超す巨大事業である。環境悪化への懸念などから、地元住民が強く反対し、これまで計画は事実上、凍結されてきた。

着工式の来賓の一人が、自民党族議員の佐藤議員である。「整備が大幅に遅れていることは残念だ」と外郭道建設推進の必要性をブチ上げた。



『週刊朝日』


2013年02月01日(金) 原発即時ゼロに

福島原発事故で東京電力福島第一原発の4基は廃炉が決まり、日本に残る原発は50基になった。政府は福井県の関西電力大飯原発2基を再稼働させたが、他の48基は止まったままである。福島事故を受け、原発周辺の避難区域は従来の半径8〜10キロ圏から30キロ圏内に拡大された。しかし、それに応じた避難計画はどこにもできていない。

省エネすれば原発が再稼働しなくても、電力を賄えることは事実が証明している。大飯原発を再稼働しなくても夏の電力が足りたことは、関西電力が認めている。つまり、現状は「原発ゼロ」がすでに96%まで実現しているのである。活断層の危険が否定できない大飯原発の稼働をやめ、停止した原発はそのまま廃炉の過程に入れることこそ、最も現実的な道である。

他方、原発ゼロの決断を10年後や20年後に先送りすれば、今止まっている原発を再稼働することになる。再稼働すれば、処理することのできない核のゴミが増え続け、福島原発事故のような重大事故が起きる危険性に絶えずさらされる。原発のほとんどは、活断層の真上など地震が起きやすい場所に建設されている。福島級の大事故は10年以内に起きる可能性があると、昨年10月に原子力委員会も試算している。福島級の過酷事故がもう一度起きると破局的な結果を招く。

つまり、各党の原発政策を判断するうえで、今最も重要な試金石になっているのが、原発再稼働をするかどうか、ということなのである。原発ゼロを決断し、廃炉プロセスを始める一方、電力を確保する過渡的な緊急措置として、5〜10年程度の火力発電も使い、その間に再生可能エネルギーの大規模普及と低エネルギー社会へ移行することを模索しなければならない。

民主党は、「30年代に原発再稼働ゼロを可能とする」というが、米国と財界の強い圧力で閣議決定も断念した。逆に大飯原発の再稼働を認め、電源開発の青森県の大間原発の建設再開も認めた。自民党は「原発ゼロ」の方針を攻撃し、公明党は原発の40年運転を掲げている。みんなの党も「再稼働はやむを得ない」としている。日本維新の会は、「30年代までにフェードアウト(段階的削減)と発表したが、石原代表が「暴論」と一括して否定した。代表代行の橋下徹氏も「公約」ではないと認めた。

核武装論者の石原氏は、「核兵器保有のためにも原発はやめられない」が持論である。日本未来の党の嘉田代表は、「再稼働は針の穴を通すより難しい」と言いながらも、原発即時ゼロは明言せず、10年後に卒業としている。



『週刊朝日』


加藤  |MAIL