加藤のメモ的日記
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| 2012年09月30日(日) |
いま富士山が大噴火したら |
富士山より危険な山がいくつもある
日本は地震大国であると同時に、火山大国でもある。富士山に関心が集中しがちだが、2011年には宮崎の新燃岳が噴火し、農作物や家畜に大きな被害をもたらし、鹿児島の桜島は現在も小規模な噴火を続けている。日本大学の高橋教授は、「富士山だけでなく、日本に破局的な被害をもたらす噴火が、いつ起きるとも限らない」と警鐘を鳴らす。
「9万年前、熊本の阿蘇山が大噴火を起こしたとき、数週間から数カ月にわたって、600㎢もの火山灰が放出されたことがわかっています。宝永大噴火のときの火山灰の量が約0.8㎢ですので、約800倍もの火山灰が日本全土に降りそそぎ、平均で20�僉∨務て擦任垢�15�僂曚匹硫仍崖イ�積もりました。その時の日本列島に生息していた生物や植物は、死滅の危機に陥ったと考えられます。このように日本では文明の生態系を滅ぼす破局的な噴火が、低頻度ではありますが繰り返し起こっているのです。火山学的にみれば9万年前の阿蘇大噴火のように、日本を破滅させるだけの噴火が、近未来に現実のものとなる可能性は十分にあります」
『週刊現代』9/6
問題だらけの生活保護見直し議論
生活保護見直しの議論が本格化している。その直接の動機は、3.7兆円まで膨れ上がった生活保護の予算をどうやって抑えるかということと、不正受給の増加をどう防ぐかということだ。しかし、今の論議の仕方には違和感を覚える方も多いだろう。
まず、働きたくても働けなくて深刻な困窮状態にある人が、ちゃんと生活保護を受給できているかという問題が置き去りのままだ。また、生活困窮者を食い物にした生活保護ビジネスなどと、某芸能タレントの扶養義務問題を同列に取り上げて、親族の扶養義務を強化しろというような議論につなげるのも問題だ。
生活に困っていないのに、生活保護以上に税金で保護されている人々がたくさんいることも忘れられている。例えば、農家の個別所得補償や高齢者の医療負担の軽減措置などは、貧しくなくとも対象となる。しかし最大の問題は、働ける世代での受給者が激増していることだ。生活保護を若い時期に長期間受給すると、勤労意欲が失われて生活保護から抜け出すことが難しくなるといわれる。このままでは生活保護は将来にわたって増え続けることになる。
以前は65歳未満だと、失業だけでは生活保護が受けられなかったが、リーマンショック後の深刻な事態に対応するために、厚労省の通知によって3年前(2009から)からこの慣行ができなくなった。本来は、失業者がいきなり生活保護に陥るのを防止するための制度(第2のセーフティーネット)を準備すべきだったのだが、厚労省が動いたのは問題が深刻化してからだった。失業者が職業訓練を受ける間の生活費を毎月10万円給付したり、さらに必要な資金を無利子で融資するという制度だ。訓練を行なう団体にも多額の補助金が就労とは関係なく支払われた。2年で約2兆円もの資金をバラまいたが、その結果は惨憺たるもので、まともな就労にはつながらないし、形だけの訓練を行なって大金をせしめる不良業者も多発した。
世論の非難を浴びて、昨秋から就労実績に応じて訓練機関への報酬に差がつくようになった。厚労省が2012年6月末に発表した資料では、この制度で訓練をした人たちの就職率は7割前後となっている。しかし、発表資料では、就職先がコンビニのアルバイトなのか正規の雇用なのか、何カ月継続雇用されたか、などわからない。数字自体マユツバものだ。このままだと、悪い条件でもいいから就職させて実績を上げ、追加報酬を受け取る業者が続出するだろう。訓練生に若干のリベートを払って見かけ上再就職したことにするという不正が出ることも必至だ。
この事態を改善するにはどうしたらいいか。厚労省直轄のハローワークの職業斡旋能力は極めて低い。そこで、訓練を請け負う民間組織に訓練だけでなく就職斡旋までやらせればよい。その上で、失業者の属性(年齢、職歴、技能など)や就労実績(正規化非正規か、給与額、勤続年数)等を追跡調査して、実績に応じた報酬を払えば不正も減るし、効果も格段に上がるだろう。しかし、そのような改善はできそうにない。ハローワークの独占的利権を守るために、職業斡旋に広く民間参入を認めることに厚労省は大反対だし、就職斡旋の結果を厳格に評価する仕組みを作ることも、それをハローワークに適用されると困るので、公労官僚は反対するだろう。
その実現を自民、民主の官僚主導政治に期待しても無理だ。この問題の解決には、第3局を中心にした改革派の政権ができることが必要である。
『週刊現代』10.27
| 2012年09月29日(土) |
強権独裁政治を全国に |
雇用・福祉は過激な新自由主義で破壊される
「維新八策」の経済政策に並ぶのは競争力強化、国・自治体・都市の競争力強化、競争力を重視する自由経済など、競争力強化一辺倒である。それしかないといっても過言ではない。大企業向けには競争力強化のためのインフラ整備を掲げるとともに、徹底した規制改革を打ち出し、産業の淘汰を真正面から受け止める産業構造の転換を主張している。まさに弱者は去れという弱肉強食の社会づくりである。
そのもとで、国民生活がどうなるかには極めて冷淡で無頓着である。大金持ちには、さらなる所得減税となる、超簡素な税制=フラットタックス化を打ち出す一方で、労働者に対しては、解雇規制の緩和を含む労働市場の流動化で、いっそうの不安定雇用を強いる方向である。小泉構造改革のもと、製造業派遣の解禁などで、貧富の差が拡大したことから何ひとつ学ばず、今度はクビ切り自由の解雇規制の改革で、国民をいっそう困窮に追いやろうとするものである。まさに過激な新自由主義に他ならない。
その姿勢は社会保障にも貫かれている。「維新八策」は社会保障について、自助、共助、公助の範囲と役割を明確にし、真の弱者支援に徹する、と明記している。本来、すべての国民が受ける権利を持つ社会保障を真の弱者だけに絞り込み、合理化、効率化の名で社会保障費を削減しようというものである。真の弱者支援というのは、社会保障の切り捨ての口実にすぎないのである。
一つは、保険で受けられる医療を切り詰めようということである。八策では、公的医療保険給付の重症患者への重点化を口実として、軽症患者の自己負担増を方針化している。橋本氏は、風邪とかばかりを扱う開業医がどんどん増えてくる。(8月30日)と地域医療を敵視し、公的医療保険制度の範囲を見直す、としている。さらに米国が求めている混合診療を完全解禁する、と明記している。混合診療は、保険のきかない医療を拡大して患者に負担を求めるもので、”命の沙汰も金次第”にしようとしている。また、生活保護について、今でも本来対象となる人の2割程度しか利用されていない制度をさらに改悪し、保護の打ち切りにつながる有期制や、現在は無料で受けられる医療への自己負担導入などを盛り込み、給付をさらに絞り込もうとしている。
モノ言えぬ恐怖政治に道
「維新八策」は大阪府。市の職員基本条例や教育関連条例を、さらに発展、法制化することを明記している。いわば”大阪方式を全国に”が合言葉である。大阪方式でやられてきたのは何か。橋本市長が就任早々に実施したのが、大阪市の職員に対する思想調査だった。職員の思想・信条を調べ上げ、街頭演説の参加や、それに誘った人、誘われた人の名前まで、密告さながらに答えさせるもものだった。役所に出入りする民間業者や、近所の人の名前まで書かせるのか、などの反発や、大阪府労働委員会による事実上の中止勧告のなかで取りやめざるを得なかったが、この動きは、市職員の政治活動を制限する条例へとつながった。
7月には、維新の会などが同条例を強行。デモの企画、集会などでの政治的意見の表明、政治的目的を有する文書の発行や、演劇の演出、政党機関紙の配布など10項目を禁止し、違反者は懲戒免職を含む懲戒処分の対象とする異常な内容である。市長や市政への批判を懲戒処分で封じ込め、モノ言えぬ職場をつくろうというものである。しかも八策では、「地方公務員制度も抜本的改革」としており、政治活動制限を法制化しして全国に広げる考えを示している。すでに国会では、自民党・みんなの党などが地方公務員の政治活動を制限する地方公務員法改悪案を提出している。
大阪市では、条例以外にも勤務時間中に10分程度、喫茶店に立ち寄った職員が市民の通報で懲戒処分にされるなど、密告社会の雰囲気まで広がっている。
大阪府・市の動きは、憲法が保障する思想・信条の自由を侵害するもので世界でも異常である。こうした動きの大本には、橋本氏の特異な立場がある。橋本氏は「皆さん、公務員は国民に対して命令する立場に立つんです」(4月2日)「市役所の組織自体が、市長の顔色をうかがわないで、誰の顔色をうかがうのか」(4月13日)などと発言。公務員を全体の奉仕者から、国民への命令者へ、その命令者を首長の下僕にする立場を示している。その行き着く先は、行政改革・公務員改革の名を借りた、モノのいえない恐怖政治への道に他ならない。
『赤旗』9/7
3年前の秋、自民党は落ち武者集団を見るようだった。政権を明け渡し、「自民党という名が国民に嫌われている」と党名を変える動きもあった。「和魂党」やら「自由新党」やら、真面目に考えていたらしい。支援団体は離れ、陳情は減り、食いなれぬ冷や飯のせいか無気力と自嘲さえ漂った。その斜陽から、新総裁が次期首相と目される党勢の復活である。「ある者の愚行は、他の者の財産である」と古人は言ったが、民主党の重ねる愚行(拙政)で、自民党は財産という支持を積み直した。とはいえ総裁に安倍晋三元首相が返り咲いたのは、どこ「ナツメロ」を聴く思いがする。
セピアがかった旋律だ。当初は劣勢と見られていたが、尖閣諸島や竹島から吹くナショナリズムの風に、うまく乗ったようである。1回目の投票で2位だったが候補が決選投票で逆転したのは、1956年の石橋湛山以来になる。その決選で敗れたのが安倍氏の祖父で岸信介だったのは因縁めく。「もはや戦後ではない」と経済白書がうたった年のことだ。以降の自民党は、国民に潜在する現状維持意識に根を張って長期政権を保ってきた。人心をそらさぬ程度に首相交代を繰り返してきたが、3年前に賞味期限が切れた。思えば自民党は、原発を推し進め、安全神話をつくりあげ、尖閣や竹島では無為を続け国民の借金を膨らませてきた。景気よく民主党を罵倒するだけで済まないのは、よくお分かりだと思う。まさかの上げ潮に浮かれず、責任を省みてほしい。
『朝日新聞』9/27
〈古い自民党には戻すな〉
自民党は3年前に下野した。なぜそうなったかという「反省」を、今後に生かさなくてなならない。安倍新総裁の最初の仕事は、真に国や国民の利益を守る責任政党の姿を示し、かっての自民党ではないことを国民に理解してもらうことである。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を通じた自由貿易体制の拡大は日本経済の成長にもつながるが、自民党は慎重だ。その背景には農業関係団体に対する配慮がうかがえる。選挙を考え指定業界と通じているとみられるようでは、「古い自民党」との印象が拭えないだろう。
衆院解散問題への対応も難問だ。解散の先延ばしを図っているとしかいえない野田首相に対し、安倍氏は「近いうち」の解散という国民との約束の履行を強く求めていかねばならない。その一方で、国民の生活に影響が出かねない特例公債法案などにどう対処するのかが問われる。双方の折り合いをつける「紳士協定」をどう整えるのか、安倍氏の手腕の見せところだ。「脱派閥」を掲げた石破茂前政調会長が地方票で過半数を獲得し、1回目投票でトップに立った意味は小さくない。派閥の影響力の残る党体質の改善が急がれる。安倍氏は「石破氏と協力していくことで、自民党は強力な体制をとっていける」と述べた。懸案を着実に解決できる党人事を行なうことが重要だ。
『産経新聞』9/27
| 2012年09月26日(水) |
ポピュリズムの行方�� |
その代表的な事件が平成5年(1993)112月、通産省(当時)・内籐正久産業政策局長に辞職である。内藤局長は次期次官間違いなしといわれて「ミスター通産省」。それがある日突然、熊谷弘大臣によって「辞職」を求められ、事実上、更迭されたのだから、省内は大騒ぎになった。しかもこの事件には、複雑な背景があった。そもそも熊谷大臣はもと通産官僚、しかも内藤局長の2年後輩にあたる。政界入りしてからは一貫して新生党の小沢一郎代表幹事の側近として使え、細川内閣成立とともに首尾よく大臣の座を射止めたのである。
当時通産省内には、夫人をも巻き込んだ派閥抗争があった。棚橋祐次次官、内藤局長などの主流派に対して「四人組」といわれる反主流があり、小沢―熊谷ラインは四人組に近いといわれていた。いきおい、主流派は自民党寄りということになる。だから、この事件は、もっぱら省内の自民・反自民の派閥抗争としても注目された。確かに、時の次官の反対を押し切り、官房長にも知らせず本人に「辞職」を求めたのだから、従来の霞が関の論理からすればあり得ない話である。が、人事権はもともと大臣にある。いかに官僚社会の慣例に反するとしても、大臣が局長を更迭しようとしたこと自体は違法でも何でもない。役人同士のいわば談合で人事を決めていた、これまでの常識の方がおかしいのである。やり方がいかにも唐突で、稚拙だったというにすぎない。
ただ、この事件をきっかけに、官僚の人事権は大臣にあることが、内外に認識されるようになったのは事実だった。この一事だけでも、細川内閣の意義(あえて「功績」とはいわない)は、巷間いわれているより大きいのではないか、と思う。後に自民党の小泉内閣で、田中真紀子外務大臣が人事を葬ろうとして大騒ぎになったことがあるが、これも同じケースといえるだろう。
官僚神話の終焉
まったくの偶然だが、実はこの事件が起きる直前、『文芸春秋』は、堺や太一氏の監修で「徹底検証・官僚の神話」という大特集を組んでいる(平成6年2月号)。例えば、我が国は官僚が優秀だから政治が乱れても大丈夫、とか、日本の官僚は世界有数の清潔さでしかもモラルも高い、といった神話を一つ一つ検証したものである。2月号といえば前年末の校了である。内藤局長が突如辞職を勧告されたのは12月16日、それを受け入れたのが22日だから、この事件に触発されて発想した企画ではない。
そこで出てきたのは、おおむね官僚神話に否定的な結論だった。例えば外交交渉において外務省の情報力は弱いし、優秀をいわれているものも単なる受験秀才の代名詞だったりする。愛国心の欠如は予算配分を巡る省庁間の争いを見れば明らかだし、清潔さにいたっては天下りシステムを見れば一目瞭然、といった具合。冷戦終結で日本型成長システムのかなりの部分が無用となり、それを支えた官僚機構のマイナス面が見事に露呈したのだった。
細川内閣の支持率は、史上まれにみる高さだった。カネまみれの政治を正す「政治改革」、行政の無駄を徹底的に排除する「行政改革」への期待が、支持率をかってなく押し上げた。それに抵抗する政治家、官僚を「守旧派」として一蹴した手つきは、バブル崩壊で鬱々としていた国民の閉塞感を一気に吹き飛ばした感があった。「政治とカネ」、「官僚支配の打破」は、今も昔も永田町の最大の人気商品なのである。
したがって、行政改革つまり官僚支配からの脱却は、民主党の事業仕分け、マニュフェストにいたるまで、歴代内閣に綿々と引き継がれる目玉商品となっている。大阪市長選での橋本前知事の圧勝も原因はそれだろう。ほとんどの内閣が単なるお題目に終わったのに対して、橋本内閣の省庁再編と小泉内閣の道路公団解体、郵政民営化だけは賛否両論あるとしても一定の業績といえるのではないか。
とくに小泉内閣は、道路公団と郵政で細川内閣以上の高い支持を得た。反対派を「抵抗勢力」と指弾するその手法を「ポピュリズム」と批判する向きもあったが、国民が何を求めているかを感知し先取りすることをポピュリズムというなら、それはけっして排すべきものではないだろう。その後の自民党内閣、今の民主党内閣に足りないのは、むしろポピュリズムといわれるほどの時代感覚と実行力なのだ。ちなみに反対派を「抵抗勢力」と切って捨てる手法は、小沢氏が「守旧派」と罵ったのに倣ったのではないか。
後年、ホリエモンや村上ファンドを小泉内閣の鬼っ子として、小泉内閣が格差社会を生んだ元凶であるかのごとき主張が声高に叫ばれたが、ではどうすればよかったのか。郵政民営化、道路公団解体なかりせば、財投資金でシカやクマしかいない僻地にも高速道路がつくられ続け、誰も行かない厚生施設という役人の天下り先が全国に作られ続けたことは疑いないだろう。少なくとも、そう考える国民が多かったからこそ、これだけの支持を得たのである。
また、小泉内閣の郵政選挙、平成21年に民主党が大勝した総選挙のように、結果がどちらかに大幅に偏るのが現在の小選挙区制の特徴であろう。細川内閣がその後の政治の原点になっている部分は、意外に多いのである。
『週刊ポスト』2012 1/27
| 2012年09月25日(火) |
ポピュリズム(大衆迎合主義)の行方�� |
二つの改革
細川内閣の行なった「改革」の最大のものは、おそらく選挙制度改革(小選挙区制)であろう。よく「一内閣一仕事」といわれるが、吉田内閣の講和条約、鳩山一郎内閣の日ソ交渉、岸内閣の日米安否改定、池田内閣の高度成長策(所得倍増論)、佐藤内閣の沖縄返還、田中内閣では日中国交回復、中曽根内閣では国鉄などの三公社五現業の民営化(中曽根行革)と、それぞれ印象に残る。竹下内閣では消費税導入、宮沢内閣ではPKO協力法がある。
いずれも。それまで問題ありとされながら先送りされてきたものだったが、政治改革もその一つだった。小沢流にいえば、日本の政治をぬるま湯的な馴れ合い構造にした原因は選挙制度にある。現在の中選挙区制では、一つの選挙区で3〜5人の議員が当選するから、野党は候補者を一人に絞れば黙っていても各選挙区で一人は当選させることができる。かといって自民党を凌駕して第一党になるなることはないから、自民党政権は半永久的に続くことになる。
その結果、野党とくに第一頭たる社会党は政権を奪う気もなくなり、お気楽な反対政党に安住することになった。政権交代がなくなったために、自民党自身も緊張感を失い、業界との癒着、金権腐敗も生まれることになる。日本の政治からダイナミズムが失われて、政治が行政と化してしまったのだ。必要なのは、政権交代を可能にするシステムである。目指すべきは、政権党が失敗すれば野党が政権を取るイギリス風の二大政党制であろう。そのためには、一選挙区から当選者は一人しか出ない小選挙区制にすべきである。また政治に金がかかり過ぎることが金権腐敗を生むのだから、政党ごとに議員数に応じて国が政党助成金を払えばいい。それが小選挙区制導入の理屈だった。
それだけで金権腐敗がなくなるのか、つまり政党助成金だけで政治資金を実際に賄えるかどうか、クロウトの間では疑問の声も多かった。また、二大政党制になれば少数意見は反映されにくくなる、中間政党の存在の余地を残す中選挙区制の方がいいのではないか、とか、そもそも金権腐敗と選挙制度に直接の関係はない、政治改革と選挙制度改革は別物ではないか等々、反対する声も当時からあった。だが世論は、これで派閥も金権政治も改善されるのではないか、と圧倒的な期待を寄せたのである。
もともと細川氏自身は中選挙区制論者だったという。それが小選挙区制を推進する立場に変わったのは、「利益誘導や政官業の癒着など構造的な害を取り除くには政権交代が必要。そのためには選挙制度を変えなければ、という大方の合意に従ったからだという。だから歴史的評価はもう少し待たねばならないが、金権腐敗に対する国民の不満はそれだけ強かった、ということだろう。
もっとも、選挙制度を含めて民主主義の形には、「これぞ究極」という定型はありえない。常に何がしかの欠陥を抱えつつ、その都度修正していくより仕方のないものかもしれない。その意味では、この改革も一プロセスにすぎないかもしれないが、当時は特効薬のように期待を集めたものだ。もう一つ、細川内閣は本格的に行政改革つまり官僚支配の打破を目指したことも、忘れてはならないと思う。「政・官・財」三位一体といわれる中央集権・癒着体制のもとでは、政治家はしばしば「族議員」として官僚の走り使いにされてしまう。これを「政」と「官」本来の役割に戻さなければならない。つまり、民主党マニュフェストにいう「政治主導」を先取りしていたわけだ。
| 2012年09月22日(土) |
911は米国ユダヤの謀略だった |
誰が「株の空売り」を大量に行なったのか?
事件の捜査では、「だれが得をしたのか?」を考えるのが基本だといわれている。同時多発テロでは、いったいだれが得をして、誰が損をしたのだろう?答えは明瞭だろう。大損をこうむったのはタリバン政府とビンラディン率いるアルカイダ、そしてアフガニスタンの一般民衆である。タリバン政府とアルカイダは完全崩壊し、一般人の多くも住む家を失って難民と化した。
アフガンの住民たちは「なんで米国が攻撃してきたのかわからない」とテレビで語っていたが、それは本心だろう。ビンラディンが主犯だったとしても、タリバンやアルカイダの兵たち、一般民衆は同時テロに何の関係もない人たちである。同時テロの主犯がビンラディンなら、頭脳構造は中学生並みと言わざるを得ない。あのような同時テロを行なえば、米国の報復が事前にわかるはずである。
ウィリアム・ナッシュ元少将は、こう語っている。「ビンラディンはテロに対する米国の『怒り』の大きさを計算し忘れた。その怒りが軍の結束と、戦闘継続への忍耐を支えている」では、同時テロで得をしたのは誰か?これも、すでにはっきりしている。まず株の暴落によって、全世界から巨額の富を搾取した謎の存在、そして米国政府から150億ドルもの巨額な支援を受けた米航空会社と兵器産業である。
米国防総省は空爆開始後、クラスター爆弾1740セットをボーイング社に追加発注。巡航ミサイル「トマホーク」も800基も増産された。米・戦略財政評価研究所は、今回のこうした戦費を100億〜200億ドルに上ると推定している。まだある。ブッシュ大統領を支える米国石油コンツェルンである。ブッシュ政権では父親のときに湾岸戦争、息子のときにアフガン攻撃が始まった。
米国は以前からカザフスタンの石油・天然ガス資源を狙って、アフガニスタン進出を目論んでいた。ブッシュ大統領の後ろ盾である全米の石油企業にとって、同時テロは絶好のチャンスとなった。
株の暴落にかかわる情報を見てみよう。ドイツのユンバー社は世界屈指のデータ分析力を駆使した結果、重役のピーター・ヘンシェルは、「考えられるのは、何者かのインサイダー情報によって、大量の空売りを引き起こしたということだ」と、一つの結論を出している。そして、「犯人たちは、幸先の良いスタートを切ったと考えているだろう」とも述べている。ロンドン・シティの株式仲買企業テザー・アンド・グリーンウッド社のリチャード・クロスリーは次のように機関誌に書いている。
ニューヨーク証券取引所では、WTCビル崩壊直前に何百万株の株券が売却された。とくに保険業と航空業の株が大量に空売りされたのは、9.11を知っていたインサイサーの存在を匂わせている。WTCの惨事が起こる直前の数日間、航空株と保険株が1000万株以上、メリルリンチで空売りされた。通常の取引は1日で約400万株、それ以前はこんな現象は見られなかった。売られた株は好調だったにもかかわらず、誰かが大量に売り払っていた。あの惨事から利益を得ようなんて、まったく言葉を失う。
英国のインディペンデント紙も2001年10月14日、同時多発テロを事前に知っていた人たちが、株式市場で不正な取引を行なった可能性を報じている。
9.11の5日前の9月6日、シカゴのオプション取引所において、ユナイテッド航空の買い付けが396に対して、空売りが4744もあった。この取引だけで、彼らの利益は5000万ドルに上った。9月10日のアメリカン航空の買いは748だったが、空売りは4516も行なわれた。これはユナイテッド航空とアメリカン航空以外の航空会社には全く見られなかった現象だった。ターゲットになったのは、この二つの航空会社だけではない。WTCビルに拠点を置くユダヤ系金融会社モルガン・スタンレーは、9月第1週の1日当たりの平均が27だったが、9月11日直前の3日間で2157と急増している。同じくWTCビル内のユダヤ系の金融会社メリルリンチは1日平均252だったが、9月11日直前の4日間は12215にも上った。
もちろんこれらは氷山の一角で、NY株だけでも再開3日間で時価総額100兆円が消失したのである。もちろん日本も例外ではなかった。株の空売りだけではない。筆者は、9.11のわずか6日後に米航空会社が経営危機に陥り、米政府から急きょ150億ドルもの政府支援を決定したことに対して、あまりの手際良さに疑問を感じていた。
当時理由がわからなかったが、同時テロを行なった航空会社が遠隔操作であれ、お芝居のハイジャックであれ、当事者の各航空会社の協力がなければ絶対に不可能である。なんとも恐ろしい話だが、150億ドルの緊急支援は米政府を牛耳る超国家勢力による航空会社への口止め料、同時多発テロ協力への謝礼金としか思えないのである。
シェイクスピアの代表作の1つ『ベニスの商人』で、ユダヤの金貸し業シャイロックは、借金を返せない人の皮をはぐと脅している。同時多発テロで3000人以上も亡くなったが、それで利益を上げた上げた人たちはシャイロック以上に極悪である。ブッシュ政権は9.11の惨事について、独立した調査が行なわれること全力を挙げて阻止しようとした。しかし被害者家族たちの必死の叫びから、11月末、ようやく調査委員会の設置が決まった。調査委員会には米国民に嫌われているユダヤ系米国人ヘンリー・キッシンジャーが任命されたが、結局は世論の反対を受けて辞任した。以来、具体的な調査や報告は一切なされていない。
『世界はここまで騙された』
北朝鮮より壮絶な陰謀と裏切りの中国史
薄熈来の次は習近平!? 暴走する胡主席 「政敵謀殺計画」
繰り返される謀殺、死刑、追放
国家権力に狙われればいかなる実力者であっても全てを奪われる。日本の小沢裁判にもそんな雰囲気はあるが、中国の壮絶さはケタ外れだ。重慶市”汚職スキャンダル”はとうとう”殺人事件”にまで発展し、次世代の中国を担うといわれた男は。政治的どころか、社会的、生物的にも抹殺されようとしている。
一時は権力の絶頂にいた人物が全てを剥ぎとられ、命をも危険にさらされるという謀略劇は中国政治のお家芸だ。今回のような事件は歴史的に何度も繰り返されてきた。
文化大革命の時代、毛沢東主席に次ぐナンバー2として後継者に指名された林彪副主席の例がもっとも有名だ。毛主席から裏切りを疑われ、「極右」と批判されされるなど失脚の危機に直面した。これは林副主席の”反逆的行動”を誘い出そうとする毛主席の謀略だったとされる。病弱で神経質な林氏は自身が殺されるかもしれないと不安を抱き、息子らにクーデターを実行させたが失敗。林氏は妻や息子、腹心の部下ら総勢9人で逃走し、ソ連に向かった。しかし途中で飛行機が墜落し、全員が死亡したのである。墜落原因は不明だが、中国軍が撃墜もしくは爆殺したとの疑惑が根強い。
毛沢東の妻・江青氏も謀略の罠にはめられた。文革中には権力の頂点にいた江青氏ら4人組だが、1976年9月、毛主席が逝去すると、一ヶ月もたたないうちに4人組は逮捕される。その後、毛主席や4人組に迫害され失脚した��小平が復活。そのもとで4人組裁判が行なわれたが、江青氏らの極刑は最初から決まっていた。判決は執行猶予付き死刑。無念のためか、江青氏は獄中で首をつって自ら命を絶った。
謀略の政治史は、その後も脈々と続く。中国共産党総書記を務めた趙紫陽氏の死に様も哀れだった。‘89年の天安門事件で民主化学生を指示したとの理由で総書記を更迭され、すべての役職を解任された。犯罪ではないので裁判沙汰にはならなかったが、24時間365日の厳重監視体制による自宅軟禁が一生続き、行動の自由は完全に奪われ、05年1月m85歳で衰弱死した。
趙紫陽氏の後任として総書記に就任した江沢民主席も謀略好きだ。上海が政治基盤の江氏に敵対した陳希同・北京市党委員書記を失脚に追い込むために、陳氏の腹心である王宝林・副市長を汚職で拘束し、拳銃自殺に追い込む。さらに、江氏は陳氏にも「監督責任あり」と難癖をつけて職務を解任。さらに汚職で逮捕し、党籍を剥奪。裁判では懲役16年の実刑判決が下された。陳氏はがんの治療で06年7月つ保釈され、今も入院しているとされる。
逆に江氏が謀略にはめられたのが、06年9月の陳良宇事件だ。仕掛けたのは胡錦涛主席だ。上海閥のホープ的存在だった陳良宇上海市党委書記が汚職の容疑で身柄を拘束され。08年4月、裁判で懲役18年の実刑判決を受けた。汚職事件というが、主な容疑は上海市の公的事業に社会保険基金を流用するというもの。中国ではどこの地方自治体も多かれ少なかれ流用しており、胡主席が難癖をつけて逮捕容疑に仕立て上げた謀略の性格が強い。
中国では共産党が司法、立法、行政の三権の上位に位置することから、裁判とは名ばかりで、始まる前から判決が決まっている「人民裁判」といえる。中国では権力を握っていれば、法律だろが、裁判だろうがすべてが意のままだ。まさに北朝鮮顔負けの独裁体制なのだ。
『週刊ポスト』5/18
耐用年数をとうに過ぎ、爆発寸前の玄海原発 原因不明の急激な劣化で爆発が起こる
原発の寿命は40年とされ、30年を過ぎれは順次廃炉にしていくのが国際常識だ。だが、国内には、敦賀(あつが)原発1号機の42年を筆頭に、運転年数が30年を超える原発が19機も存在する。運転年数に比例して危険度が高まることは言うまでもない。だが、金属材料学を専門とする井野東大名誉教授は、最も危険な原発は、‘75年稼働の、玄海原発1号機(佐賀県)だと指摘する。 「今、玄海原発1号機は、地震などなくとも、単なる温度変化でも圧力容器が破断してしまう、ガラスのように脆い状態にあります。
圧力容器の状態を表す数値の一つに、脆性遷移温度(ぜいせいせんい)がある。遷移温度は中性子による劣化で年々上昇するため、これが高ければ高い程脆いことになる。原発では、圧力容器内に入れてある試験片を取り出し、その遷移温度を計測している。井野名誉教授が続ける。
「通常、健全とされる遷移温度は50度までですが、玄海原発1号機は、倍近い98度もあり、非常に脆弱な状態です。もし冷却系にトラブルあり、急激に温度が変われば、終わりです。圧力容器の鋼鉄に不純物が多いのは間違いないのですが、それにしてもここまでの劣化は想定外。原因が特定できていないので、余計に恐ろしい。いつ爆発してもおかしくない状態です」
ちなみに2番目に脆性遷移温度が高いのは、高浜原発1号機の95度で運転年数は37年。以下、美浜原発2号機86度、40年。美浜原発1号機81度、41年。大飯原発2号機70度、32年と、続く。玄海原発1号機の数値だけが際立って高いわけではないことがわかる。しかし、原子力安全・保安院は、そうした指摘を受けて行なった検討会で、渦中の玄海原発1号機を「十分健全であることを確認した」とする報告書を7月27日に正式にまとめている。九州電力は玄海原発再稼働に突き進む。
『週刊現代』9/22
…各国がこれほどタバコ問題に必死になるのは、何もしないでいると政府や自治体がタバコ関連の医療でパンクしそうだからだ。また、集団訴訟の対象にされてしまうからである。そして日本の政府やマスコミが何もしないのは、タバコ会社が事実上の国営であり、かなりのちしきじんでも「喫煙は個人の嗜好の問題」という時代遅れな考え方をしているからである。
解りやすくいうと、タバコはロシアン・ルーレットのようなものだ。これは非合法な遊びで、6連発の回転式拳銃に1発だけ弾を入れる。そして弾倉を無作為に廻して、銃口を自分のコメカミに当てて引き金を引くゲームである。カチッと音がして空砲なら次の人へ廻す。
不運な人が死ぬのだ。タバコを吸ったら必ずガンになるわけではない。実際僕は80数歳で元気な愛煙家を知っている。しかし彼は幸運なだけである。すべてのデータはほとんどの癌、呼吸器系、循環器系の疾病において、喫煙者の罹患率及び死亡率が、非喫煙者よりずっと高いことを示している。だからやめられる人はやめるに越したことはない。やめられない人は、黙ったそっと吸っていてほしい。
今回の提訴でよく解ったと思うが、世界のタバコ業界というのは、途上国に武器を売る「死の商人」と同じである。彼らはタバコが健康に悪いなどと百も承知である。ただ今のような喫煙ムードが世界的に広がるのを防ぎたいのだ。タバコをかっこよいと思わせ、青少年を引きずり込みたいのだ。今回の醜悪なパッケージに関してある議員は、「これだけでも少年にタバコはかっこよくないと思わせることができれば」と語っている。
ブラジル、ロシア、インドネシアなどにこの法律が広がるのを、業界は恐れているという。まさに死の商人である。だいぶ前になるが、あるテレビ番組でインタビューされたタバコ会社の役員たちは、例外なく「私は吸わない」と言っていた。
『週刊現代』9/8
5大陵最高峰登頂 マッキンリー単独登頂
ジャガイモみたいな顔をしていた。朴訥で口べた、優しい瞳に野生の光をたたえ……。植村直己こそ元祖・山男、ミスター冒険家のイメージそのものだ。兵庫の農家の末っ子に生まれ、干支の巳から直己と名づけられる。なるほど、蛇みたいに地べたを這う執念深い男に育った。高校で登山を始め、明治大学農学部に入学、山岳部ではドングリと呼ばれた。しょっちゅうコロコロ転ぶ。けど転んでも何度も立ち上がる。植村直己の人生は失敗と転落。不屈の闘志で数知れぬ復活の歴史だ。
大卒後、就職試験に失敗した。しかし登山への夢は諦めきれず、とび職のバイトで金を貯め、横浜港から移民船でロサンゼルスへ。が、不法就労で逮捕。強制送還寸前でフランスへと渡る。シャモニーでモンブラン単独登頂を目指すも、クレバスに転落。モルジヌのスキー場で五輪滑降金メダリスト・ヴェアルネに雇われ、次への資金を稼ぐ。
1965年。明大の登山隊に途中参加してゴジュンバ・カン登頂に成功した。その後、黄疸に倒れる。が、、復帰して66年7月にモンブラン、続いてマッターホルン、10月にはアフリカ最高峰のキリマンジャロの単独登頂を果たす。‘68年、南米最高峰のアコンガグアを制覇して、アマゾン川をいかだで下り、北米最高峰のアラスカのマッキンリーを目指すも許可が下りず、帰国。
日本山岳会の一員として、エベレスト登山隊に参加、登頂に成功する。再び、マッキンリーに挑む。ついに単独初登頂を成功させた。1970年8月30日のこと。世界初の五大陸最高峰登頂者となる偉業を達成した。かってのドングリ男は人生の頂点に立ったのだ。植村直己を支えたもの、それは並外れた体力だ。先のエベレスト登山隊も自己資金が用意できなかったが、抜群の体力を買われ荷揚げ要員として参加した。
植村が頂点を極めたのも、姿を消したのもマッキンリーだ。同山で世界初の厳冬期単独登頂を果たしたのは1984年2月12日、43歳の誕生日。翌日、交信が途絶える。消息不明のまま国民栄誉賞を受賞した。
『週刊現代』9/8
三菱、三井ほか財閥系企業の”隆盛”は日本低迷の象徴だ
旧財閥系の大企業が大儲けしている。2012年3月期連結決算を見ると、五大商社の三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅は純利益の全社合計が1兆6116億円となり、過去最高を記録した。3大メガバンクの三菱UFJ、三井住友ファイナンシャルグループ、みずほファイナンシャルグループの最終利益の合計は約2兆円に達している。不動産大手5社の三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産、野村不動産が東日本大震災の影響を受けたにもかかわらず、最終利益は全社合計で2115億円だった。まさに笑いが止まらない状況なのだ。
とくに商社は、円高で多くの企業が青息吐息の中、差益を十分に利用している。加えてこれほど商社が強いのは、原油や鉄鉱石などの資源価格が高騰したからだ。油田や鉱山などの資源開発は長期でハイリスクの事業であり、なかでも地下深く埋蔵されているシュールガスなどの非在来型天然ガスの採掘には高度な技術と、多大な初期コストが必要となる。だが、5大商社には系列銀行などがいくらでもファイナンス(融資)してくれるから、開発プロジェクトを数多く手掛けることができる。資源開発は、たくさん掘れば当たる確率が高くなるので、潤沢に資金を集められるところが勝つのである。
不動産も同様で、三井不動産や三菱地所といった財閥系の不動産大手は十分な資金をもとに大規模開発で収益を上げている。とくに最近はこの2社が全国でアウトレットモールを次々と展開し、商店街や地場の百貨店を直撃している。裏を返せば、メガバンクをはじめとする日本の銀行は、5大商社・不動産のような系列の大企業には手厚い一方で、中小企業や企業化へのファイナンスには極めて消極的だ。日本にグーグルやアップル、フェイスブックのような新しい成長企業が登場しない究極的な理由がここにある。
企業家を苦しめる”歴史の後退”
本来、企業ファイナンスには3つの種類が必要だ。まずは銀行によるもの。これには、パナソニックの創業者・松下幸之助さんの有名な逸話がある。パナソニックもかっては浪速(なにわ)の中小ベンチャー企業だったが、住友銀行淀屋橋支店は幸之助さんの人物を信用して融資をしてくれた。だから幸之助さんは死ぬまで住友銀行の恩を忘れず、すべてのキャッシュを淀屋橋支店に預けていた。
つまり、昔の銀行は「経営者の顔を見て」ベンチャー企業や中小企業にも貸していたのだ。それが大企業のすそ野を固める外注や下請けの分厚い産業インフラとなって戦後日本の工業化を支えたのである。ところが、今の銀行は経営者の顔を見ることなく、不動産などの担保ペースで、事業計画の達成率や返済状況など金融庁のマニュアルに従って貸すことしかしない。金融危機のあと、銀行の合併が相次いだため、銀行と企業経営者との人間関係は成り立たなくなった。
例えば私は40年前から一貫して三和銀行と取引してきたが、東海銀行と合併してUFJと名乗るようになってから担当者がクルクルと代わるようになった。さらに三菱銀行と合併すると旧三和の人々はどこかに追いやられ、人間味のない三菱の出身者が幅を利かせるようになった。結局銀行とはいえ、無機質な機械のようなものになり、お金の相談をする、ということもなくなってしまった。
今の銀行は、会社に担保がない場合は経営者に個人保証を求め、倒産したら身ぐるみ剥いで生活が成り立たないようにしてしまう。まさに「晴れている時に傘を貸し、雨が降ってきたら傘を取り上げる」のだ。経営者の人物と事業計画に融資するアメリカでは、あり得ないことである。日本の場合はいずれのファイナンスも機能していないから、いつまでたっても若い企業、新しい企業が育たない。
来年3月末に、中小企業の借入金の元本支払いの延長や利益の引き下げを金融機関に求めたモラトリアム法(中小企業等金融円滑化法)が終了する。そうなると担保ベースでしか融資しない銀行は資金回収に走るから、モラトリアム法によって生き延びていた中小企業は、続々と破綻することになるだろう。ベンチャー企業を取り巻く環境は、ますます悪化する様相を見せている。
その一方では、旧財閥系の総合商社やメガバンクがわが世の春を謳歌しているわけで、これは”歴史の後退”にほかならない。軍部の片棒を担いで日本を戦争に追い込んだ財閥は解体されたはずなのに、気がつけばそれを再編・強化する方向に進もうとしている。このままでは日本は明治時代に逆戻りである。今こそ政府が若く有望な企業化を支援する政策をとり、too big too fail(大き過ぎて潰せない)の論理で旧財閥系の大企業を優遇している現在の政策を反転しなければならない。でないと、未来永劫、この国に新しい企業や経済の活力は生まれないだろう。
『週刊ポスト』9/14
| 2012年09月10日(月) |
死の前兆はこんな感じ |
地井武男・小野ヤスシ・尾崎紀世彦・安岡力也
入院からたった半年で
地井武男さんは体調不良を訴え、検査入院したところ心臓疾患だと診断された。「無理をしてはいけない」との医者から助言を受けて、2月からテレビ出演を止めて休養に入ったが、悲報の訪れはあまりにも早かった。事務所のマネージャーも「まさかの死だった」と言う。「無理をすると心不全を起こす可能性があるということで大事をとって、治療に専念することにしたんです。ただ、ずっと入院していたわけではなく、自宅療養を中心に検査入院をするために病院に行くという日々でした。もちろん本人は復帰したいという気持ちが強く、体力をつけるために自宅近くを散歩したりもしていました。
私は亡くなる前日に地井さんに会っているんです。そのときは『あそこの蕎麦がうまいよな』とか他愛もない雑談をしました。病院での食事も通常食でした。それが次の日の朝、急変の知らせを受けて駆け付けたら、もう亡くなってしまっていたんです」
地井さんと20年以上家族ぐるみの付き合いがある地元の友人はこう言う。「地井さんは‘96年に狭心症を患ってからは、体調には気をつけていました。定期的に都内の病院で検査・診察を受けていたし、年に1〜2度は人間ドッグにも入っていた。薬もいつもたくさん持っていて、私たちと食事をしても必ず何種類かを飲んでいました。ですから、今でもまさかという思いなんです。
突然、視野が狭くなった
酒を飲み、ゴルフ場で汗を流す。体調管理も万全。それなのにどうして突然、地井さんは死に襲われたのか。「死の前兆」はなかったのか。「今年1月に地井さんは『視野が狭くなった』と漏らしていました。また『頭がふらふらする、頭がちょっと痛い』とも言っていました」(マネージャー)
視野狭窄の症状が出たとき、まず疑われるのは脳梗塞だ。さらに脳腫瘍を患っているケースでも頭痛や視野狭窄が見られることがあるため、医者はまず脳の検査を行なうのが一般的だ。一方で視野狭窄と心不全の関係はほとんど指摘されていない。死の前兆は、ある日突然に牙をむく。たとえば今年6月15日に亡くなった元ザ・ピーナッツの伊東エミさんの場合、それは「腰の痛み」だった。今春に転倒して以来、伊東さんは腰痛に悩んでいた。なかなか痛みが引かないため、病院で検査を受けたところ、がんが発見された。入院生活に入ったが、それかたった数カ月で帰らぬ人になってしまった。71歳だった。
お笑いトリオ「ヒップアップ」のメンバーで俳優の小林すすむさんは今年5月半ば、58歳にして胃がんと肝硬変で亡くなっているが、2月ごろにがんが発覚した時すでに「余命2週間」を告げられている。「小林さんの親友である山田邦子さんによれば、小林さんは昨年後半から『くたびれた』を連発していたようです。体調不良で入院する直前まで、映画『踊る大捜査線』の撮影に臨んでおり、その際も主演の織田祐二さんが『体調が少し悪そうだった』と語っている」(芸能記者)周囲からは疲労に見えるような状態が、実はがんの症状〉=死に至る前兆となっていることは往々にしてあるから、「単なる風邪」などと軽視してはいけない。些細な身体のメッセージを感じ取り、少しでも疑いがある時はすぐに病院で検査を受けることが何よりの”護身術”だ。
『週刊現代』7/21
カネを使わない不思議な民族
お金を貯め込むだけで使おうとしない金持ちがあまりにも多い。これこそ、日本経済の閉塞の原因です。戦後に財をなした今の高齢富裕層は、贅沢に興味がなく、むしろ預金額が増えることに強い喜びと快感を覚えている。莫大な金融資産を自分が死ぬまで文字通り「死蔵」し、経済の活力を殺いでしまっているのです。彼らのような存在は、欧米発祥のマクロ経済学では想定されていません。「墓場に金は持っていけない、生きているうちに使って楽しもう」と考えるのが欧米人だからです。
実は大阪大学フェローの小野善康氏が、「死ぬまで金を使わずに貯め込む人」が存在することを踏まえて新たな理論を作ったのですが、輸入学問が絶対の日本の学界では異端扱いされています。彼の理論では「不況は、消費せず金を貯め込んでばかりの人間が現れることで起きる」ということが数理的に証明されていろ。まさに今の日本の状況です。
〈2010年、著書『デフレの正体』(角川書店)のヒットで一躍有名になったエコノミスト・藻谷浩介氏。今回、日本を分かつ「新・富裕層」と「新・貧困層」の格差、そして消費増税を控えた日本の行く末について提言を行なった〉
日本は消費増税に頼らず税収を増やさなければなりません。そもそも国の経済規模に対して、あまりにも税収が低すぎる。GDPが500兆円で政府の税収が40兆円というのは、実は極端に小さい政府なんです。平成24年度の国の歳出は94兆円。うち公共投資も、それぞれ5兆円程度。おまけに、人件費のおそらく半分以上が、災害対応で活躍する自衛官26万人の分です。決して公務員に同情するわけではありませんが、これを切り詰めたところで大した額にはならない。ちなみに、不正受給が問題になった生活保護費も、3兆円しかありません。
一方で国は、国債の金利だけで10兆円もの額を支払っています。税収わずか40兆円の国がですよ。これがなければ公共投資は3倍に増やせる。それなのに、国債金利のことは誰も叩かない。「国債は将来世代の負担だ」と全員が信じているからです。しかし実際は、今の納税者が年額10兆円を負担している。そしてその受益者は金持ちたちなんです。
土地や建物といった固定資産を持っていると、額面に対して必ず1.4%の税金が課せられます。しかし、国債などの金融資産には、額面ではなく金利に対する課税のみ。現在の日本国債の金利水準ではタダ同然です。だから、多くの金持ちは土地や建物を買わず、国債や海外に投資している。昨年日本が海外から稼いだ金利配当収入は14兆円以上にのほりますが、これだけ莫大な金融資産を持つ富裕層が、資産そのものについて税金を払っていないわけです。
日本は債務奴隷になった
消費増税には、やむを得ない面もあります。「増税するぞ」というポーズが必要なのです。日本政府は世界最大の借金王なのに、消費税率は低い。増税する気があると見せなければ、ギリシャと同列と判断されて日本売りを仕掛けられ、マネーゲームの食い物にされかねません。しかし、実際に消費税が上がれば賃金はもっと下がり、いわゆるデフレがさらに加速する。日本は国際金融市場向けのポーズを取るためだけに、多大な犠牲を払わざるを得ない。馬鹿みたいですが、ここまで莫大な借金をするとそういうことになるんです。日本人には、自分たちが巨額の借金をしているという自覚がない。古代ならもう債務奴隷にされている水準であり選択の自由はないのです。
こんな状態にしたのは、「景気対策のためにもっと国債を発行しろ」といい続けた、政・官・財・学界の有力者たちです。目先の電力危機回避のために原発再稼働を決めたのと全く同じで、国債の発行残高も、使用済み核燃料もどんどん溜まっていく。どちらも犯人は「目先の景気が最優先」と主張する先送り主義の人々です。
金を貯め込む人が増え、消費する人はどんどん減っている。65歳以上の人数だけが増えているという日本の人口構成が、この傾向を加速しています。金持ちだって、年を取れば食費は少なくなり、遠出する気力もなくなってくる。子育てどころか孫の世話も終わってしまう。日本人が親から最終的に財産を相続する平均年齢は67歳という調査があります。その歳になれば、相続しても使わずに貯めるだけですよね。使ったほうが得をする仕組みを作らなければなりません。
一方、若者は数が減っているうえ所得が低く、消費したくてもできない。モノ離れと言うけれど、所得が上がれば今よりは消費します。しかし今はすべてが逆、年間55兆円の年金が若い世代から高齢者に流れ、年間10兆円の国債金利が納税者から高齢富裕層に流れている。企業はさらなるコストダウンのため、若者の給料を削って物価を低く抑える。高齢富裕層はますます安く物を買うことができ、貯金が増えて喜ぶというわけです。
この構造を放置したまま、いくら日銀がお札をバラ撒いても、消費する層にお金は回りません。OECD(経済協力開発機構)は、日本に対して「消費意欲の高い女性の就労を進めて収入を増やせ」と提言している。事実を直視すれば、結論は明らかなのです。日本だけでなく東アジア全体で、若者の数は減り始めています。彼らに安い給料しか払わない企業こそ、市場縮小の主犯。若者の給料を増やす企業努力が、結局は自らを救うのです。
『週刊現代』9/8
”脱原発先進国”を目指して舵を切った、ドイツの取り組み
今も放射性物質を垂れ流し続ける福島原発の大事故を受け、ドイツやイタリア、スイスなどの国々が脱原発に舵を切ったのをご存じだろうか。そこに至る経過や背景まで知る人は意外と少ないのではないか。例えばドイツでは、福島の事故を機にメルケル政権が設置した諮問機関の提言が大きな役割を果たした。「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」である。
「エネルギー」と「倫理」とはずいぶんミスマッチな感もあるが、時に破滅的事態を招く科学技術の是非を倫理面から考察するのは意義深い試みであり、その提言は、あらためて一読する価値がある。未曾有の惨事を引き起こしながらじくじくと原発に拘泥する日本と比較すれば、彼我の差にため息をつかされるだろう。
ドイツでは‘2年、左派連合のシュレーダー前政権が脱原発法を成立させ、当時19基あった原発の順次廃止を決めた。ところが‘09年に発足した保守中道のメルケル政権はこの先送りに転じ、原発稼働年数を平均12年も延長する決定を下す。背景には産業界などの意向があり、ライプチヒ大学で物理学を学んだメルケル首相自身、原発擁護の立場だった。しかしフクシマが状況を一変させた。ドイツ内の反原発世論が高まり、3月末の州議会選で与党キリスト教民主同盟などは大敗を喫し、首相が原発政策見直しに本腰を入れたのである。
ドイツでも、日本の原子力安全委と類似の組織は「ドイツの原発は安全」と強弁したが、「倫理委」は別の見解を発する。「10年以内に原子力エネルギーから離脱すべき」と結論づけたのだ。これを受け、首相は‘22年までの原発全廃を宣言した。
倫理委には、与野党の政治家のほか、ドイツを代表する社会学者ウルリヒ・ベックを筆頭に宗教家、哲学者、経済学者ら、原子力とは無縁の知識人ばかりが名を連ねた。その理由を倫理委の提言はこう書く。〈福島の事故は、原発の「安全性」に関する専門家の判断への信頼を揺るがせた。問われているのは、制御不能な大被害が根本的に発生しうるなら、その可能性をどう扱うかということだ。絶対的な原発反対派に属さぬ人々でも、もはや答えを専門家の委員会に任せたくない〉
まったくもっともな認識だと思う。また、ひとたび事故が発生すれば地球規模の大被害を引き起こす原発に関し、倫理面からの検討を加えることは極めて重要な作業でもあろう。倫理委の提言を要約すれば次の通りだ。
〈原発事故が日本のようなハイテク国家で生じ、ドイツでは起きえないとの確信は消失した。福島で実証された通り、事故はほぼ際限ない被害をもたらす〉〈人間は技術的に可能なことを何でもやってよいわけではない。短期的利益で未来の何世代にも負担を強いるような決定は社会が責任を負うべきだ〉〈エネルギー転換は難しい決断と負担を伴うが、社会や経済にも特別なチャンスになり得る。各地域の決断に市民が参加するチャンスを与え、成功すれば他の国々に大きな影響を及ぼす〉
提言をまとめる際、倫理委は公聴会を開き、その様子はテレビで終日中継され、100万人以上が視聴したという。脱原発がたとえ困難を伴っても、ドイツの知識人は〈社会全体〉で挑戦しようと呼びかけ、政府もそれに応じる決定を下したのだ。
翻って”震源地”の日本はどうか。ドイツと同じ道を国民投票で選んだイタリアに「集団ヒステリー」と唾を吐いたのは、親の七光りでのし上がった野党の幹事長だった。与党の為政者も、福島の事故収拾のメドすらつかないのに「原発の安全性を世界最高に高める」と真顔で語り、原発輸出まで強行するらしい。挙げ句の果てに再生可能エネルギー普及のカギを握る調達価格等算定委員会に、最大の利害関係者である日本経団連幹部を就かせるという。どうやら日本には、「倫理」を追う真摯さなど一片もないらしい。
『週刊現代』12/24
| 2012年09月05日(水) |
もう一つのアナンプルナがある |
昭和28年の夏、サッカーの全国優勝と大学受験を志しながら読んだのは、『処女峰アナンプルナ人類最初の8000�段�登頂』(モーリス・エルゾーク著、白水社)だった。アンナプルナとは、ヒマラヤ中部に連なるアンナプルナ山群の中の標高8091�辰離▲鵐淵廛襯�I峰のこと。地球上に14座ある標高8000�丹幣紊了海�10番目に位置している。
1950(昭和25)年6月3日、フランス登山隊9人のエルゾークとルイ・ラシュナルの二人が登頂に成功した。8000�段�の山頂に人類が到達した最初の瞬間だった。最高峰エベレスト登山は3年後、エリザベス女王戴冠の年だった。歴史的な登頂のあとは、壮絶過酷な下山だった。疲れ果てた二人にすさまじい嵐が襲いかかる。積もった雪の下は蒼白の氷だ。夜が迫る。思考力が弱まってゆく。靴も手袋も凍ってしまう。手足の指が凍って感覚を失う。手袋が滑り落ちて消えてしまう。凍傷だ。
完全に方向を見失った。第5キャンプで待っていた仲間のレビュッファたちは、雪にやられて視力を失う。危険なクレバス(氷の割れ目)に逃げ込んで夜明けを待つ。雪崩で埋まる。手足は何の反応も起こさない。死ぬことがもう苦にならない。喜んで死を迎えよう……。
死線をさまよい、最後はシェルパーたちに助けられながら、奇跡的に死者を出さずに下山する。登頂した二人の両手足の指を、腐ってゆくのと競うように、次々に切り落とす。こうして、理想の達成と引き換えに、手足の指のほとんどを失ったエルゾークは最後に託す。「新しい生活が始まる。人間の生活には、他のアナンプルナがある……」
この言葉は、2000年版、山と渓谷社の前掲書によるのだが、何故かしら僕の記憶は「人生にはもう一つのアナンプルナがある」なのだ。まちがいかもしれないけれど。栄光の人も失意の人も、誰だって新しい生活の中で、「もう一つのアナンプルナ」を生きなければならないのだ。
『週刊現代』9/8
隠し子に遺産を分けたい
事業で成功すると仕事以外での悩みが増えます。まず証券会社のセールスマンが次々とやってくるようになる。それから、投資を勧める資産運用コンサルタント。アポなしでやってくるうえに、断っても容易に引き下がりません。国内事業への投資を勧められたほか、海外の鉱山開発の出資を持ちかけられたこともあります。また、『CO2の排出権を買わないか』と、環境ビジネスに誘われたこともありました。幸い、出資話でダマされたことはありませんが、邪険にして恨まれるのも嫌なので、断るのに一苦労です」
”金持ちならではの悩み”を明かすのは、東亜機工社長の田淵氏だ。「四国の発明王」とも呼ばれる田淵氏は、個人で約130もの特許を持つ。田淵氏が一代で築いた同社は香川県を本拠に、おむつや生理用品などを製造する機械の開発・製造で発展。最近では竹を原料にした「竹綿」の大量生産機を、世界に先駆けて開発している。田淵氏に持ち込まれるは、怪しげな投資話だけではない。寄付の要請もひっきりなしに来るという。できる限り応えたいとは思うが、それにも限界がある。
田淵氏が続ける「地域の神社などには、役目として相応の寄付はさせていただきますが、全国から来る求めには応じきれませんから、お断りすることもあります。すると『あそこは金を出さない。ケチだ』と吹聴され、不快な思いをさせられます。寄付をしたらしたで、悪くいわれることもある。寄付をして『選挙に出るつもりだろう』と言われた時は心外でした。そんなつもりは全くないのですから……」寄付をしてもしなくても中傷されるという理不尽。だが、大金持ちたちが頭を悩ますのは、外部から持たされる話に限らない。もっとも身近な存在である身内が、悩みのタネになることが多々あるのだという。
「十数年前になりますが、仕事のプレッシャーから魔が差して、愛人を囲ったんです。最初は遊びのつもりでしたが、相手が妊娠して状況が変わった。『産みたい』とせがまれて断り切れずに結局、隠し子をもうけてしまいました。ずっとポケットマネーから養育費を支払ってきましたが、その子も今は高校生。愛人は日陰の身のままで立派にわが子を育ててくれましたし、その子自身も素直ないい子です。それだけに人生の先が見えてきた今、どうにかして彼ら母子にいくばくかの資産を残してやりたいと頭を悩ませているのです」
できるものなら、妻にも息子にも知られない形で、愛人の家庭にも資産を分けてやりたいというのが会長の切なる思いだ。けれども実際にはそれが難しい。「遺言にかいたら家族にバレてしまう。生命保険も、血がつながっているなどの法的な関係を明示しないと、保険金の受取人に指定できない。最近できが生命保険信託を使えば、愛人や隠し子を受取人に指定できますが、相続税の申告の段階で、やはり家族にバレてしまう。相続税の申告は、財産を受け取った者全員の連名で行なうので、愛人や隠し子の存在が、そこで明らかになってしまうのです」
どのような形で愛人に資産を分けるか。まだ結論は出ていない。「正妻と築いてきた家庭も、愛人と密かに営んできた家庭も、私にとっては大切な家族です。できればだれも悲しませたり傷つけたりしない形で、そっとケリをつけたい。もう少し模索してみようと思います」
相続はつまり「争族」である
莫大な遺産を稼いでも。お金は墓場まではもっていけない。愛人や隠し子がいなくても、資産家の悩みで一番多いのは相続の際の遺産分割だ。富裕層の相続税対策を多数行なっている税理士法人チェスター代表税理士の福留氏が語る。「大きな資産があるがゆえに、どう分けるかで揉めるわけです。また相続人が多ければ多い程争いになりやすい。かつ、分けにくい財産をお持ちの方、具体的には非上場企業のオーナーさんとか、地主さんの場合はよく揉めます。とくに地主さんは先祖代々の土地は長男が受け継ぐべきだという考え方が強いので、二男や三男、長女、次女から、『長男だけ財産をいっぱい相続してズルい』と、現金を要求されるケースがよくあります。でも地主さんの多くは、土地はあっても現金は意外と少ない。そこで兄弟間の”骨肉の争い”になるのです。
カネはあるが目的のない人生
千葉県で手広く事業を行なって十数億円の資産を遺したある事業家の一人息子(35歳)のケースがそれだ。「父は生前『もう会社は先がないから俺の代でおしまいにしてくれ』と言っていました。それで、父の死後、遺言どおり会社を処分しました。相続税を支払っても、キャッシュで十数億円の遺産があったので、死ぬまで食べるのに困りません。独身で養うべき家族もないし、働かなくても暮らしていけます。だからこそ、これからどうやって過ごそうかと考えると、暗澹たる気分になるんです」
本人は、贅沢をして遊んで暮らしたいと考えるタイプではないという。情熱を傾けて取り組めるような趣味や目標もない。ただ、金だけは有り余っている。「遺産目当てに寄ってくる人はゴロゴロいるけど、信頼できる人、親身に相談に乗ってくれそうそうな人は見当たりません。親戚といえども心は許せない。父の死後、人間不信まで背負いこんでしまいました。こんなことを言うと嫌味に聞こえるかもしれませんが、やることがなくてお金だけがあるというのは、皆さんが想像する以上に虚しくて苦しいものなのです」
こうした悩みを持つ資産家は少なくない。前出の福留氏がこう話す「若いうちに巨額の資産を相続された方は、不動産の賃貸料や駐車場収入、預貯金の利息などで、毎月すごい額の収入があります お金も時間もあるけど、自分自身は何をしていいのかわからず悩んでいるという方は、実際結構いらっしゃって、そうした方の多くは無職で独身です」寄ってくる人に騙されるのではないかと人間不信に陥る。先祖代々の資産を防衛するためだけに人生を送る人もいる。金を稼ぐのは大変だが、それを守って生きていくのはもっと大変なのだろう。
『週刊現代』9/8
| 2012年09月01日(土) |
天災アスリートは偏食 |
「食は命の源」といわれる。しかし、天才的な能力を発揮するアスリートがチョコやハンバーグばかりを口にし、一方で、肉を食べずに筋骨隆々の部族がいると聞けばどうだろうか。食事と人間の関係には、最新の科学でも解き明かせない未知の世界がある。
NASAが研究した不食人間
なぜ偏食アスリートは体調を維持できるのか。東大名誉教授で微生物生態学の権威である光岡氏の研究によれば、ニューギニアの高地に住むパプア族の食事の96%はサツマイモで、魚や獣肉はほとんど食べない。栄養学的にいえば「タンパク欠乏」の状態なのだが、なぜか健康状態は良好で筋骨たくましいのである。
不思議なことに、彼らが毎日食事から摂取している窒素の量は2グラム(タンパク質10〜15gに相当)でしかないのに、便や尿から排出される窒素量はその2倍近くあった。そこで光岡氏は、空気中のタンパク質以外の窒素化合物が体内に取り込まれ、そこから腸内細菌がタンパク質を合成しているのではないかと推定した。パプア族の人たちは、肉や魚を食べなくても、体内でタンパク質をつくっているというのだ。
タンパク質はアミノ酸が結合してできた物質で、人間の脳や内臓、骨、そして神経やホルモンなど、身体を構成するすべての部品はアミノ酸からできている。なかでも必須アミノ酸は「体内で合成できないため、食事などで摂取することが必要」とされる。ところが近年では、必須アミノ酸も体内で生成されていることが明らかになった。東北大学名誉教授(応用生物学)の木村修一氏の解説によると、
「牛やヤギなどの唾液には尿素が含まれていて、それが体内の細菌によってアンモニアに分解され、別の菌がそのアンモニアを利用して増殖し、菌体タンパク質を合成することが判明している。人間も同様に、体内にあるアンモニアを腸内細菌が分解することによって、みずから必須アミノ酸をつくっている可能性がある。ただ、現時点ではメカニズムは解明されていません」
肉を食べない競走馬が筋肉隆々の馬体をし、早く走れるのもこうした理由から。人間も必須アミノ酸を体内で合成できるのなら、必ずしも肉や魚を食べる必要ななくなるわけだ。菜食主義者でも生きられるのは当然ということになる。
『週刊ポスト』2/24
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