Desert Beyond
ひさ



 晩秋、土曜日の寂寥

空があまりにも青く
晩秋の快晴の空気はとても冷たい。
西に傾き始めた日は街に透明な薄黄色のトーンをかける。
こんな土曜日は決まって人がいない。
寂しさを煽るのは季節のせいなのだろうか。
アパートの部屋のベッドに座って東をぼーっと眺めていた。
山はまだ緑色をしている。
鉄塔が真っ青な空を背景に鈍い銀色をして立っている。
向かいの珈琲屋は土曜日も開いている。
日曜日は閉まっている。
時折、からんころん、とドアについたカウベルが鳴る。
珈琲一杯220円の昭和な珈琲屋だ。
平日と違って豆を炒る香ばしい匂いは漂ってこない。
大学に来る途中、矢張り人は少ない。
いつの間にか花が落ちきった金木犀やその辺の木々が
冷たい風にゆるく吹かれてさわさわと音をたてていた。
それをもっと聴きたくてイアフォンをとって
風が止むまでじっとしていた。
桜並木は陽だまり。
ねこが2匹仲良しに並んで木の根元に座っている。
ぴっ、と短く鳴く小さな黒白の鳥が一羽
川に降り立って何かをついばんでいた。
独りで正月を迎えたり、独りで海を見にいったり
独りで空の青さにため息をついたりするのがではなく
こういう色鮮やかで静かな誰もいない土曜日が一年で一番寂しい。
誰かと一緒にいれたらいいのにと思う。


2007年11月17日(土)
初日 最新 目次