Desert Beyond
ひさ



 ひとの本質

この間クラスメートと話していて傘の話になった。

去年のいつごろか忘れてしまったが
雨の予報が出ている曇りの日
僕は傘を持って学校に行った。
授業を終えると雨が降っていて
教室を出るのが遅かった僕の傘は
傘たてから消えていた。

傘の話をしていると、クラスメートは
この前傘を盗まれて...という話をしだしたので
どこにでも傘を盗む人間はいるんだなあと思ったら
傘を盗まれたので傘たてから適当な傘をとったという。
そのまま話していると前に盗った傘は...なんて話になった。
僕は特にいい子ぶる気はないけれど
ビニール傘なら盗んでもいい、とかそういう問題じゃなく
雨の日に人の傘を盗るという行為自体が
とても思いやりのない行為だと思う。
その人によれば
盗まれた→むかつく→盗み返す、らしい。
もしくは
雨→濡れるのはやだ→盗む...。
あまりにも当たり前のように罪悪感なしで言うので
人としてひいてしまった。

僕はたとえ全身が雨でずぶ濡れになっても
人の傘を盗るようなことはしないな。

2006年06月29日(木)



 僕が木を植えた

鳥飯と久万ノ台の八剣伝に飲みに行った。生の注文を何度も忘れられて気持良く飲めなかった。早々に切り上げて一興に豚骨中華蕎麦を食べに行った。木張りのナチュラルな店内に柔らかくソウルが流れていた。アイズレーのwork to doが流れると、店員が二人コーラスの部分をくちずさんだ。

今日、久しぶりに本屋で本を購入した。徒然草。これぞと思った本にかけようと思っていたブックカバーがよく馴染む。

カーリージラフをパソコンに取り込みながら流して本でも読んだ。

最近胃の調子が優れない。食生活をちゃんと考えないとなぁ。

僕が植えた木、という携帯サイトがある。毎日アクセスして天候の具合に合わせて水をあげたり肥料をあげたりする。励ましたりほめたり。そんなふうにちょこちょこ世話をしていたらその木はイチョウの木に育った。



2006年06月23日(金)



 だらとした梅雨の日

雨は降るのか降らないのか。そんな事はどうだっても良いように東の方から白々と夜が明ける。

雲は世界を覆う。この明け方のどんより雲と僕の心を覆う薄い煙は全く同じ色だということに間違いはない。

多少遠めの過去にもあった通り、「ぼんやりとした不安」は僕には効かない。

昨日、山鳩が二羽、ベランダの物干し竿に止まっていて、その盛り上がった会話で起こされてしまった。

僕はちょうど、明け方に磯のある波堤で釣りをしようとしていたところだった。海の水はライトアクアブルーで波は激しく、潮の薄い霧は風に流され僕にあたった。

そんな時に鳩の五月蝿い声は僕を地震でよく揺れる四階のアパートに呼び戻した。寝惚け眼で東向きのカーテンを明けると、三秒くらいして気付いた鳩は驚いて東へ飛び去っていった。

この街では、昼夜問わずホトトギスの声がすると知ったのは五月末の事だった。昨日、軽い下り坂、惰性で自転車に乗り空を見上げた時、ちょうど雀が虫を追いかけ損ねたところを見た。



2006年06月17日(土)



 碁盤

とても静かな夜だ。
出したメールは一つも返ってこない。

先週借りてきたDVDは全て見終ってしまったので僕はGONTITIのGUITARSというアルバムを大きめの音で流した。東と北の窓を開けると部屋を斜めに渡る涼風の道ができた。生ギターの音と黄色い灯かりが安らぐなぁ、と思っていたらぽつぽつと雨が降り始めたものだ。少しの間雨の音を聴いてから軒下の洗濯ものを部屋の中に移したよ。渡る風にも天からの恵みの水の音もこの音楽に音もなくとけこんで、まるで一つの作品かのようだ。

昨夜、近所は午前一時半になっても賑やかな声があちこちから流れてきたのに今宵ときたら夜十時になる前から静かだ。少し雨足が強くなったよう。

僕の父は囲碁が好きだった。日曜日の教育テレビは、午前は将棋、午後は囲碁、と相場が決まっていたので、日曜日午後のリビングは父が煙草をくゆらせながら囲碁を見ていたものだ。そのせいで日曜日午後は囲碁が終わるまで退屈なリビングルームだった。父は幼少の僕に囲碁を学ばせようとしたので、僕は何度も何度も父と囲碁を打たなくてはならなかったが結局のところ僕の身にはならなかった。身になる以前の問題でもあった。黒と白の石が入り乱れてごちゃごちゃになる碁盤上の世界は僕にとってあまりに抽象的で魅力を感じなかったのだ。

現在。ちょっと囲碁に興味が湧いてきて勉強してみた。相手の石に追い込まれたりする瞬間に、全く忘れていた幼少の記憶がいきなり蘇ってきてしばしばハッとする。同じ追い込まれ方をされた記憶。本を読んで色々勉強するとあの頃シチョウも覚えてたのか、と思った。いつだか、子供の頃の誕生日に父が碁盤を贈ってくれた。九路盤と十三路盤で裏表になっている碁盤。あの頃興味を持ってたら今頃強い碁打ちになってたのかもなあ。あの碁盤、どこにしまってたかなあ。



2006年06月14日(水)



 ここのところ

5月の後半はずっと国立大洲青少年の家に泊まりこみで
毎日毎日山やら谷やらをハンマー持って調査してきました。
雨が多くて毎日どろどろになりながら。
2週間が終わってからも何度も大洲へ。
今週いっぱいまで調査は続きそう。
一人で急傾斜の谷をのぼったり
道のない藪を漕いだりしていると
なんだか子供のころを思いだした。
大きいムカデにあったり
かわいいうさぎにあったり
するすると動く蛇にあったり
ブヨにさされたり、そんな毎日。
疲れるけど自然の中にいると心が充実するよ。

先日、夜にクラスメートの家に宿題をしに行った時
道後温泉の近くの本当に小さな川で光るものを見た。
よおく見るとそこここに光が。
ふわりふわり、と点滅しながらホタルが飛んでいた。
涼しくなった夜に淡雪のよう。

昨夜、とりめしの家に少しだけ飲みに行った。
とりめしの家は相変わらず汚くて
透明なはずの洗ったコップは半透明だった...。
僕はグラスを持参して良かったと思った。
帰りにコンビにまで地図をコピーしに行く途中
西に傾いた月は落ち着いた黄支子色で
あまりにもパーフェクトな円だったので
自転車を止めてしばらく見ていた。おかし。

家にネット環境はいつまでたっても整わず
最近では生活がそれに慣れてきてしまった。
どうしよう。

今朝、大分かどこがが震源で大きめな地震があった。
携帯を見たら5時1分だった。
なかなか大きな揺れでそれが長い間続いた。
本震の前に起こる前震だったらこわいな、と思ったけど
結局地震が一度おさまってからもう地震は襲ってこなかった。
そんな地震のせいでなんだか寝不足っぽい雰囲気。

山や農地を歩いたりしていると
無条件に親切な人や優しい人が多い。
それでも中には嫌な目で見られたりすることもある。
ハンマーと雑草を刈るような鎌を持って
地図やなんかに記入しながら歩いたら
誰だってあやしいと思うだろうけどさ。
ぶどう農園のおばさんなんてお茶を飲んでいきなさい、って。


2006年06月12日(月)
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