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女房様とお呼びっ!
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2003年02月25日(火) 一年前のだだ漏れ次第

恥ずかしながら私には、平常心を保てなくなる程に苦手な用件ってのがある(笑。
実は今現在もその用件を近日に控えて、何となく落ち着かない、嫌な気分でいる。
一年前の今頃も、やはり同じ用件を目前にして、体調までも落ち込み加減だった。
そういう時はなるべく人と関わらず、粛々といるのが、精神衛生上ベストなのだ。

・・・・・。

ところが昨年の今頃、どうしても外せない用件があり、イリコと会ってしまった。
そう、会ってしまった、のだ。いや、大した用じゃない。単なる物の受け渡しだ。
だから、用が済めばさっさと帰ればよかったのだが、せめて食事でもと欲かいて。
結果、私は大変に疲れることになってしまった。自分の軽はずみのせいとはいえ。

その時、何が起こったのかといえば、これまた情けない程大したことじゃなくて。
つまりは食事中、いつも通りに私ばかりが話題する羽目になったと。それだけ(笑
いや、それだけなんだけど、そんな精神状態なもので、滅法堪えてしまったのだ。
事前に状態の悪さを説明し、気を払えないと告げたのにと、腹立たしさも覚えた。

当たり前の話だが、いくら親しくても慣れてても、気を払わない関係なんてない。
これに反論する向きもあろうが、少なくとも私はそう思ってるし、そうしている。
奴にあっては、立場から率先して話題も出来まいと、私から話を振ることが多い。
だから、それが出来ないことで奴に徒に不安を抱かせてもと、予め断ったワケだ。

・・・・・。

理屈で考えれば、了解を得たなら、私も無理せずにいれば済む話だったのだろう。
私が寡黙にいても、それが自分のせいでないなら、奴もいつも通りでいいはずで。
が、その時のだらしない私の精神は、対面して黙々と飯を喰うのに耐えられずに、
無理して話し、無理して笑うなんてことをして、結果的に更に悪い状態に陥った。

「偶にはキミも喋ったらどうなの?」と無茶を言いたい気持ちを抑え、帰路につく。
帰宅して漸く息をつくも、やり場のない怒りが湧いてきて、どうも落ち着かない。
結局よせばいいのに、奴から定時のメールが届くやいなや、メッセで呼びかけた。
そう、よせばヨカッタ。この対話で、怒りは更に募り、失望すら抱いたのだから。

時まさに昨日と同じ首輪をかけた記念日で、それもあって負の感情が増していく。
そして殆ど感情が噴き出す感じで、ここに奴には厳しい記事を掲げてしまった。
とは言え、衝動だけでそうしたのではない。特別な日だからと、自分を許してた。
もっとも、通常の記事の如く言葉を連ねるのは憚られて、誤魔化してみたけど(笑

・・・・・。

そうしたことで、確かに私的には随分と気が晴れたのだが、一方で後悔が始まる。
ひとつは、それまでの方針を自ら放棄して、感情を漏らしただらしなさについて。
ひとつは、やはり公開の場で、身の内の揺らぎを吐露した自らのみっともなさに。
あぁ今思えば、この意識こそ恥ずべきなのだが、当時は真剣に挽回しようとした。

そこで翌日には、慌てて”行儀の良い”(笑)私に戻り、この不始末を釈明にかかり、
相変わらずのカッコツケた言葉を並べ、自尊を保つべく、姑息な記事を掲示した。
更にはこの機に乗じ、一周年に期する奴へのエール(笑)まで掲げてみたりした。
この時点で私は、自身の不始末を濯いだばかりか、上手く道筋をつけた気でいた。

方や奴は、この流れをどう感じていたのか。改めて訊いてないので、わからない。
それでも、あれから一年、奴は自発的に話題を供するようになった。ありがたい。
奴の優れた隷性とは、具体的な「点」の指示については遵守するという従順さだ。
が、先のエールで示した「面」の指示は理解しきれずに、これが後の大失態を呼ぶ。


2003年02月24日(月) 公開オナニー宣言、あるいは私信

前回、奴隷の躾を、己が知りもしない子育てになぞらえるという暴挙に及んだが、
ご覧頂いた方には不快なお心持ちを招いたやもしれず、改めて深くお詫びしたい。
ただこれは、弱音を吐くに惑って、せめて自分の慰めに天を仰いだようなもんで、
んもぅ根本的に違う次元の話だと充分にわかってはいる。ホント、ごめんなさい。

確かにDSの関係や両者間の愛情や感情は、親子間のそれと似ている部分はあるが、
明白に違うのは、その絆の絶対性だ。故に、両者の結びつきは比べるべくもない。
いつだって解消できる関係性に、どれ程の覚悟が期待されようか。答えは自明だ。
が、だからこそ諦めず絶えず努力を迫られることに、せめて意味を見たいと思う。

・・・・・。

とは言いつつ、折々の難儀に足掻く中で、私はあらゆる経験則を援用する他なく、
奴との仕儀を、親子関係だの仕事の上下関係だのにあてはめては、消化している。
いや、経験もせず、見聞きしたことから想像する勝手な解に縋ることも結構ある。
まぁ自身の未熟と、誰彼を仰ぐツテもないのとで、チカラワザをカマしてる次第。

もっとも、この身の内でどう足掻こうと、最終的に自身の気が済めばいいワケで、
勝手だろうが思い込みだろうが、誰はばかりなく思考をこねくり回せるとも言える。
が、それをこうして人目に晒すとなれば、如何なものかと流石に躊躇してしまう。
というか、非常に恥ずかしいことなんだね。殊に見栄張りなワタクシとしては(笑

でもま、露出なんてのは、恥ずかしいことだから敢えてヤるってのがキモだから、
ここはひとつ恰好つけず、こんなワタシを見て下さいッと羞恥にむせぼうと思う。
それに一連の思考を晒すうち、論旨は乱れる、矛盾は生じるで、既に恥ずかしい。
という訳で、これを公開オナニーと位置付けて、ひとまず誤魔化すことにする(笑

・・・・・。

さて、だってオナニーだもんと開き直り、かつ言い訳を拵えたので、以下清々と。
当人はきっと意識してるはずだが、本日はイリコに正式の首輪を与えた記念日だ。
そういうのに無頓着な私だってそれ位は憶えてて、だから昨今の記事があるワケ。
奴にはカライ事柄を書き連ねながらも、この一年を感謝し、労いたいと思ってる。

しかしだ。また新しい一年が始まって、それがこの一年の繰り返しでは困るのだ。
多少の進歩を認めながらも、ここまで述べた通り、私は今の状態に満足してない。
ということは当然奴だって、認めたくなくても、己の未熟を認めなくてはならず、
努力してたつもりなら、これを疑い、そうでないなら、改めて努力を求められる。

と同時に私側も、奴が充分に自省し無駄な努力に及ばぬよう、努めねばなるまい。
つまり、一年を経ても大した結果を得られてないのは、結局お互いの甘さに拠る。
伝えたつもり、解ったつもりの集積が、得られるつもりの結果を生むはずがない。
先の事件でこの点にも気づいたので、遅ればせながら今、軌道修正を図っている。

・・・・・。

事件後に奴に宛てたメールで、「当面、試行錯誤が続くけど堪えて頂戴」と告げた。
奴からは昨夜「メールでは、私が衝撃を受けるがためのご沙汰かと」と言ってきた。
あぁ惜しいな、微妙に違う(笑。これまで晒したことは、奴には既知のはずなのだ。
だから、同メルで図らずも「認めたくなかった事実」と表してるのが、正解に近い。

奴の予測通りこの公開オナニーは試行錯誤の一環だ。が、奴の認識はやはり甘い。
はっきり言って、私は奴に衝撃を受けて欲しいのだ。今までと違う様相の衝撃を。
奴は認めたがらないが、この手の厳しい話題はメルや口頭で折々伝えたつもりだ。
しかし、直に伝えられた衝撃だけが奴を支配し、理解を阻んだのではなかろうか。

それに、一対一の話では厳しいことも言うが、その一方でフォローもしてしまう。
加えて、どうしても説教じみてしまって、私側の感情や温度を伝える余地がない。
結果、奴は「怒りを頂いた」で目一杯となり、真剣に理解や努力をするに至らない。
そこで苦肉の策として、人目にはご迷惑な公開オナニーという手段に及んでいる。

・・・・・。

もっともこの試行錯誤で、私の未知なる露出癖が覚醒するとすればご愛嬌だワ(笑


2003年02月23日(日) ヒトか奴隷か

前回記事。改めて読み返せば、随分と極論に走ってるけど、今少し続けてみたい。
今回得た気づきに関しては、感情もあいまって、とにかく思考が錯綜してしまう。
嗚呼、私達の関係が金や力に負う必然の主従なら、こんな悩みはしないだろうし、
DSの関係でなく恋愛ならば、悩みはしても、解や方針を探るべくはなかろうに。

もちろん、どれ程悩み思考したところで、最適な解や方針が得られる保証はない。
あるいは、たかがDSなんてママゴトじみたことに、方針なんて笑止かもしれない。
それに人の間柄なんて考えても仕方なくて、流れの中で見えてくるものとも思う。
けれど、私は今考えたいから考える。てか、殆どオナニーだなと自分に呆れる(笑

・・・・・。

先頃やっぱりS女の友人と喋ってて、過日記事した”咥え煙草の男”に話が及んだ。
当時の落胆を思い出し、一頻り「ヒトとしてどうよ?」とブッたところで彼女が言う。
「けど、そういうヒトとしてどうよ?な男が奴隷やってるってのありがちだよね?」
あーそうだね。件の男も昔、5年も専属奴隷を務めたらしい。多分本当だと思う。

「余程奴隷として魅力があるのかしらね?人柄をさておいても欲しい、みたいな」
彼女はそう言葉を継ぐと、彼女の知る”ヒトとしてどうよ?”な奴隷の例を挙げる。
「まぁ人の好みや相性って、他人には計り知れないけどねぇ。でも、私はヤだな」
と相槌を打ちざま、ハッとする。人の事言えないや。意を得たように彼女が笑う。

「だいぶマシになったじゃん?こないだ会ってビックリしたよ。ご苦労さまー」
私とイリコの経緯を知る彼女は、そんな慰めの言葉をくれて、少し報われる気分。
ホントおこがましい話だけど、実は奴と関係して以来、そう願ってたものだから。
つまり、他者に隷属することで、他者に想像を致すことが出来るようになればと。

でもま、それは追々身につけばいい副次的な事で、まずは奴を奴隷たらんとした。
というか、ヒトとしてはどうあれ、奴の正に奴隷たる資質に私は惚れ込んだのだ。
「でも、普段使いする奴隷だったら、やっぱ最終的には人間性を見ちゃうよね?」
彼女の言を待つまでもなく、あぁもうその通り。身に染みた。だから悩んでる(笑

・・・・・。

さて、先から「奴隷扱い」と表してるが、これは字面ほどハードなものじゃない(笑。
まぁ、主側にある各人において「奴隷扱い」の様相は違うと思うけれど、私の場合。
調教ならともかく躾の場面では、無茶を言うことはないし、奴隷の言い分も聞く。
この躾は「自身の判断や思惑をいれず、言われた通りにする」を期して行うものだ。

言葉にすれば、馬鹿々しい程簡単そうで笑っちゃう位だが、これが意外と難しい。
特にイリコのようにプライド高く、自信に満ちた、根が勝手な人間にはキツイ(笑
いや、我が身を振り返っても過去の折々、自我を抑える訓練ってのは厳しかった。
しかし、これを会得してもらわないことには、奴を信用なんて出来るはずがない。

で、奴を奴隷にして以来、この躾を始めたものの、想像以上に難航してしまった。
なんでこんな簡単な事が出来ないのかと再々頭を抱え、徒労感に苛まれたものだ。
実は二年経った未だ、この躾が行き届いたとは言い難く、道程はまだ続くらしい。
この結果に自身の力不足を認めつつ、だからこそ、今の難関を甘受している次第。

・・・・・。

奴を躾る中で再々に、まったく不謹慎ながら、子育てってこんなかなぁと思った。
私は子を育てたことがないから、ホントに不埒で失敬な想像だと承知してはいる。
でも、思い通りにならずに挫けても、その存在は希望そのもので、また奮起して。
たまに成長ぶりが覗えて喜んだりね・・・専ら自分の慰めとして何度も思ったよ(笑

お陰で二年もの間、私たちは同じことを繰り返し繰り返しやってきたのだけれど、
あの時、ここにも過ちが見えたのだ。「奴隷扱い」は即ち人間性を殺ぎかねないと。
つまり、お仕着せの指示に従う中では、人らしい気を払う必要がなくなるんだね。
過保護な親が子をダメにするように、私こそが奴をダメにしているのだろうか?


2003年02月21日(金) ワタクシはヒトである #2

M専小説とか、殆ど妄想と思しき(笑)M魚の手記とかに登場する女王様は偉大だ。
あたかも歴史に名だたる女帝がごとく、恣意的に奴隷を扱い、また高慢に振舞う。
たとえ理不尽な怒りであっても奴隷にぶつけ、奴隷もまた自動的に謝るしかない。
どれ程の不条理も、女王様の名のもとに許されて、だからこそ奴隷は服するのだ。

この関係にあれば、互いの人間性を斟酌したり、「人として」気を払う必要はない。
女王様は女王様という生き物で、奴隷は奴隷という生き物なのだ。ヒトではなく。
だから奴隷が、その女王様に崇めるに足る魅力を見れば、それで関係は成立する。
そして往々に、その魅力とはまさに恣意的で高慢に振舞う態度だったりする(笑。

・・・・・。

女王様の象徴としてフィクションのそれを引いたが、現実にも存在するのは確かだ。
SMクラブの女王様は、その人とナリがどうあれ、いかにもな振る舞いで客に応え、
アマS女でも、DS関係は非日常のものと割り切って、互いの人品を問うことなく、
あるいは日常から人格が女王様(笑)なS女は、無理なく奴隷を扱ってるのだろう。

このいずれでもない私は、これらの女王様らしく振る舞える人達を羨ましく思う。
いや、羨ましがったところで、小心者の私には土台叶わぬ夢とわかってはいる(笑
奴隷の去就なぞ気にせずにワガママ放題やるなんて、素質もなきゃ、自信もない。
それでもDSに憧れる者としては、相互に人扱いしない関係にピュアを感じるのだ。

それに役目役割に徹した関係のほうが、はっきり言って楽だし、お互いのためだ。
実際、イリコ以前に奴隷と呼んだ者達とはそうした関係で、何の問題もなかった。
まぁ素質がないので、ワガママ放題とまでいかなかったけど、楽に振舞ってたナ。
これは恐らく、その各々とさほど緊密に関わらなかったから、できたことと思う。

・・・・・。

では、イリコとの関係において、今なぜ「人として」なんて命題を抱えているのか?
従前にならい、奴の上にヒトを見ず、「奴隷扱い」してればいいんじゃないか?
奴の思う私がヒトでないのはむしろ幸いで、堂々主ヅラしてればいいことだろう。
それを今になって、私にヒトを見よなんて言い出すのは、理不尽な話だとも思う。

実際今でも、私が奴との関係に期するものは、やはりDSの関係なのだ。明白に。
「人として」対等に付き合いたいなんて、露程も思わない。それは奴も同様だろう。
けれどあの事件で、少なくとも奴が、私をヒトと思わない弊害を思い知ったのだ。
それは、私が「人として」尊重されないこと。ま、ヒトじゃないから当然だけど(笑

尤もこれは、今まで見過ごしにしていたが、いつか露見する問題だったとは思う。
元々、人を尊重する概念に欠けた人間だと思っていた。だからこそ、奴隷にした。
逆説的だが、根が勝手な男ほど奴隷にするには好適なのだ。てか、ソソラレる(笑
だから、今更何をいわんやなのだ。自分に呆れる。やっぱ覚悟が足りないのかな。

・・・・・。

あぁでもしかし。私のヒトの部分が尊重されたがるのは事実だ。誤魔化せない。
殊に私の側は奴を奴隷扱いしつつも、人としては尊重してるつもりだから尚更に。
それに、これまでの奴隷たちと違って、奴とは日常的に頻々と関わっているので、
奴が奴隷に徹して、ヒトとしての私に想像を及ぼせないのは、正直堪えてしまう。

だから奴が私をどう見なそうと、そこだけはヒトの私を見て欲しいと切実に思う。
いや・・・奴にしても始終奴隷でいるわけだし、無茶を言ってるなという自覚はあり。
欲張りすぎだろうと己を諌め、勝手な自分に辟易ともし、自問自答が続いている。
ヒトを奴隷にするとき、主もまたヒトを捨てざるを得ないのか・・・未だ解は得ず。


2003年02月20日(木) ワタクシはヒトである #1

昨年暮れの事件で、私が得た気づきは”怒り”に関わるもの以外にいくつかある。
が、そのどれもが、DSの関係において「人として」どうあるべきかを問うものだ。
日頃私はお題目のように「SMでもDSでも、所詮人の関係だ」と繰り返してはいるが、
こう述べるに至る自身の認識に潜む大きな思い違い、更には傲慢に気づいたのだ。

随分前のことだが、「女王様としてこうあるべきという考えはあるか?」と訊かれ、
「自他のために誠実にあることで、ありのままを評価してもらいたい」と答えた
この時既に現在へ続く錯誤があると承知しつつも、ここに今の気づきを見てしまう。
つまり、”ありのまま”とは何ぞやと。この二年の私は”ありのまま”だったのかと。

勿論、対人関係における”ありのまま”は、相手によって変わるものと理解している。
自覚する自身の”ありのまま”を、その間柄に則して加減しては、見せているものだ。
時に”ありのまま”でない建前を作り込む必要もあるが、納得してればいいことで。
そうして、この二年、私は奴に見合った”ありのまま”であり続けようとした。

・・・・・。

今となれば自己弁護に過ぎないが、実際私は、奴に見せている自身に納得してた。
信義にそって誠実にあろうとしたし、非日常な別人の自分を演出した意識もない。
もっとも、奴が、私に従うに価値を見出せるべく、ひたすら自分を律してはいた。
主が惑えば、従は不安に苛まれる。負の感情に惑うなど、主にはあるまじきだと。

あぁ、改めて言葉にしてみれば、なんて高慢で恥知らずな自意識を抱いたのだろう。
しかし、私の後を追うしかない奴にとって、それは錯覚するに充分だったはずだ。
そしてその錯覚は、慣れない「従」の位置に身を置き、自らに精一杯の奴にとって、
恐らくは、大いに縋るべきものであったろう。ここに、私たちの利害が一致した。

なぜなら私は奴に、人として理解されるよりも、主として傾倒して欲しいと願い、
奴は奴で、落込むとか泣くとか、そんな負の感情に揺れる主は見られないと請い。
かくして私は、必然に湧く負の感情を時に抑え、時に奴に見合う程度に加工して、
人としては随分といびつな”ありのまま”をこしらえては、奴に呈してきたのだ。

・・・・・。

とはいえ、納得してもなお、この方針をとる当初から一抹の不安を抱えてはいた。
このやり方では、形骸化した関係を招きかねず、親密な間柄を目指す障害となる。
だから、最初のうちはメールや電話で親密なコミュニケーションを図ったものだ。
が、日常に対話を重ねていると、時に負の感情が漏れて、奴を困らせてしまった。

全くだらしない限りだけど、ここで私は自分を見切って方針を変えることにした。
実のところ、ここに掲示板を持った理由のひとつは、まさに奴を巡る方針に負う。
奴の負担にならない程度に、私を多角的に見せて、私を感じてほしいと画策した。
つまり、間接的にであれ、私の人とナリや感情や体温を伝えたいと企んだワケだ。

しかしながら、この手段がどれ程に「人として」の私を奴に知らしめたかは疑問だ。
再開前の記事の殆どは、元々の見栄張りを映して「人らしく」なかったものね(笑
それに奴としては、やはり緊張しつつも直接に会う、行儀良い「主たる私」が全てで。
奴が「怒りを頂いた」と認識する時でさえ、私は声も荒げず、取り乱しもしないのだ。

恐らく当初の不安は的中したのではないか。奴の思う私は、多分ヒトじゃない(笑

・・・・・。

だから、事件後初めて奴に宛てたメルに、久しぶりに用件以外のことを書いた。
それも自分のことを。これまでは、書いても説教じみた話題ばかりだったのに。
勿論、あの時怒りを露わにしてしまった自身を言い訳したい気持ちもあった。
が、それ以上に、”ヒトとしてのありのまま”を、今こそ言明しようと思ったのだ。


2003年02月19日(水) なぜワタシは考えるのか?

昨今ウダウダと思考しているのは、何もアテなく哲学しているワケではない。
文中では「従」と表しているが、これは明らかに身近な奴隷のイリコ個人を指す。
奴と関係して二年、大事な縁だからこそ、絶えず思考してきた。その自負はある。
結果大きな破綻もなく来たが、昨年暮れのある事件が、私に気づきをもたらした。

はっきり言って「このままでいいのか?」と、二年間の思考に疑問が湧いたのだ。
確かに時の経過とともに得たものは多い。奴には大した変化を恵んだことだろう。
奴の変化を見るのは私の悦びでもあり、思惑通りに事が運んだ達成感も味わった。
しかし、何もかもがうまくいったはずもない。当然ながら、再々に失望を抱えた。

その度に苦言を呈し、叱りつけ、時に懲罰をもって、再びの失望を避けようとした。
しかし失意は繰り返される。そしてまた、前回と同様の懲戒と反省をなぞるのだ。
もっとも、この反復は端から覚悟してることで、呆れながらも諦めることはない。
根気よく付き合えば、いつかどうにかなるだろうと専ら自分に言い聞かせていた。

・・・・・。

あの時。私は初めて生々しい怒りを奴にぶつけたのだ。しかも人前で声を荒げた。
感情が溢れるのを制御できなかった。いや・・・抑えようと思えば出来たのだろう。
怒りを吐く直前まで逡巡したのを憶えている。そして、えいやと思い切ったことも。
言葉を繰り出しながら、早々に後悔が始まったが、どこか転機を予感してもいた。

その時の私は、奴がもたらした失望を三つも抱え、いつも以上にナーバスだった。
けれど、それは偶々の成り行きで、そのことに怒ってはならないと自制に励んだ。
いつも通りに行儀良く、感情を抑え、奴の失態を質すことに専念すればいいのだ。
冷静に奴の言を聞きわけ、肯定と否定を明確に言い下し、適宜指示すれば済む。

ところが間が悪いのは重なるもので、あるいは、私が神経過敏だったからなのか、
奴の受け答えの逐一に、刺々しい自己主張を感じてしまったから、さぁイケナイ。
私はこんなに自制してるのに、奴はそれをわかってないと思うと、苛ついてきた。
せめて誤魔化そうと軽口を叩いてみたり、笑ってみたりしたが、奴は依然頑なだ。

・・・・・。

この不幸な偶然が、私のタガを外したらしい。”今ここで”怒るしかないと発想した。
が、切羽詰った衝動ながら、そう発想した事に、我ながら驚き困惑してしまった。
なぜなら、それまでは、苦言一つにしても”いつ、どこで”に配慮していたからだ。
それは、些細なことで「石になる」奴と付き合うための知恵のようなものだった。

それに、専ら「主の怒り」に怯える奴のために、もちろん自身のカッコツケもあって、
「私は怒っている」と奴に表明したのは、この二年で僅かに二回と記憶している。
もちろん、細かく怒りを感じることはあったが、怒っても仕方ないやと諦めたり、
「がっかりした」なんて姑息に言い換えては、怒りの所在をうやむやにしてきた。

つまり、怒らないことを自分に課すのは、主ヅラする恰好の責務だったワケだ。
確かに怒りを抑えるのは難儀だけれど、そうする自己満足のほうが勝ってたのね。
ところがあの時、衝動に後押しされる形で、ソレデイイノカと自らに問うたのだ。
それで、従来の流れの中に大きな石を投じた。一種の賭けのような気分だった。

・・・・・。

思えば、私の人間関係うち、これほど真摯で親密で長続きした関係は夫以外にない。
我ながら貧しいなぁとも思うけど、それが身の丈にあったところなんだろう(笑)
そして、夫との歴史を思い返すに、やはりこうした転換点があったと思い至る。
気づけたなら、勇気をもって自らが変わればいい。これは、その時に学んだこと。

かくして、私は自らが変わり、そこに新しい方針を展望せんと、考え続けている。


2003年02月18日(火) それぞれの”怒る”事情

もう既にしっかり身に染みてるのだけど、SMのDS関係ってのは実に厄介だ。
巷にある上下関係が、血や金や死活に関わる力関係で成り立っているのに対し、
私たちのそれは、せいぜい性とほとんどが感情に基づく意思にすがるしかない。
だから、並みの恋愛とは趣を異にするけれど、恋愛並に不安定な関係性なんだね。

DSを目指す者は、滅多に得られない関係だからこそ、それを絶対と思いたがるけど、
特別な因縁なしに絶対なんてあり得ないから、当たり前に各々の言動に悩むのだ。
そして少しでも関係を良好に保つために、我彼の言動に気を払うのも当然のこと。
中でも、関係を危うくしかねない”怒り”を巡っては、やはり敏感になってしまう。

・・・・・。

先日記事の”地の底まで追っかけて問い詰めそうな”S女と最近話した折も折。
「私、貴女が怒らない理由を聞いて、目からウロコが落ちたのよぉ」と言い出した。
拙記事を読むはずのない彼女が、そこに話題を取る偶然に驚きつつ、続きを聞く。
「今怒っても仕方ないことは怒らないって言ってたでしょ?」あぁそういうことね。

そこで、「んーそうなんだけど」と前置きして、昨今の思考の成り行きを説明する。
と、またも彼女は、思いもよらない質問を投げてきた。「怒るのが恥ずかしいの?」
私は一瞬絶句し、ようよう否定したけど、彼女の鋭い洞察に動揺したのは事実だ。
”怒りたくても怒れない”真の理由は、浅ましい自意識にこそあるのかもしれない。

そうなんだ。私は明白に、怒りを露わにすることを”みっともない”と思っている。
怒りを抑えることが大人の所作で、あからさまに怒るのは行儀が悪いという意識。
あぁ理屈ではそんなバカな!と解ってるのよ。怒りを抑える傲慢にも気づいてる。
けれど、この意識が我が身を縛る。あたかも”人前で排便できない”的なレベルで。

・・・・・。

動揺しながらも、なお頑強な私の自意識は、もっともらしい説明で彼女に応える。
「奴隷って、怒ると石みたいに固まるじゃない?それで効率落ちるのが嫌なのよ」
いや、これは本当の話だ。真の理由はともかく、実際問題としての怒らない理由。
私の場合、先の意識にも助けられて、理詰めで感情を抑制できるつもりでいるし。

が、怒りを表すに躊躇しない彼女は、どうやってこの難関を乗り越えてるのか?
それは以前からの疑問で、ここへきて漸く訊いてみた。「石になっても怒るの?」
すると笑って彼女が言うことには「そうそう、なんで石になんのッ?ってまた怒る」
「そしたら石はどうなるの?」質問を継ぐとあっさり答えが返った。「壊れるよ(笑」

私もつられて笑っちゃったけど、「壊れるよ」の意味を知るだけに恐ろしくもある。
「よくつきあえるわね?」呆れて切り返すと、「いや、大抵後悔してる」とまた笑う。
笑ってる場合かと思うけど、実体験を振り返るだに笑うしかないよなぁとも思う。
「だから、感情よりも効率が優先できるんだったらそうしたいよ」彼女はそう結んだ。

・・・・・。

怒りによらず人に感情を伝えるとき、当然、伝わる相手じゃないと意味がない。
伝わるかどうかは、根本的な受容性と、それ以前に聞く意思をこそ問われるだろう。
殊に自分への怒りなんてのは、出来れば聞きたくないものだ。親しければ尚更に。
聞きたくない思いは自動的に聞く意思を殺ぎ、ひいては受容性も鈍磨させていく。

先の会話で、符牒のように交わされた「石になる」という状態は、これにあたる。
意思が能動的に聞くのを放棄するのではなく、怯えて自分の殻に逃げ込む感じだ。
更に「壊れる」というのは、殻の中に逃げてもなお攻撃されて、逆ギレする感じ。
この状態を招くと相当に怖い。私みたいなヘタレだと、渾身の精神力が必要だ。

相手が「壊れる」まで追い込める彼女は、間違いなく精神的にタフなんだろう。
同時に、そこまでされても彼女に従う奴隷もまたタフで、すなわちこれが相性か。
では、タフでない私はどうする?同様に、その私と反りの合う弱い従はどうする?
「石になる」を怖れてやり過ごせば、いつまでたっても「石になる」を免れない。

・・・・・。

「いい塩梅に怒るって難しいねぇ・・」やっぱりな結論に、女二人で溜息をついた。


2003年02月11日(火) いまさら気づくパラドクス 〜怒るけど怒れない〜

先の記事で、自身が「怒りを伝えられない」と表現したけれど、
これはもちろん「怒らない」という意ではなく、当たり前に怒ることはあるワケで。
なので、意識して伝えてないつもりでも、言葉の端々や雰囲気で漏れ出しては、
明確に伝えないがために却って、相手に困惑や不安をもたらしてるのかもしれない。

・・・・・。

殊に相手が、私が与するDS関係の「従」だと、この懸念はほぼ前提としてあって、
更には、立場上私の言は言い下すことになるものだから、実の所かなり気を遣う。
物言う度に、「怒ってるわけじゃないけど・・・」とエクスキューズを欠かせない(笑
この時私が本当に怒ってるか否かによらず、まず相手の不安ありきの措置として。

そして、自己欺瞞でなければ、その殆どの場合、私は実際怒ってやしないのだ。
確かにこう前置きするのは、従にとっては耳の痛い、否定的な事を言う時だけど、
それらは、少なくとも私的には、単なる感想だったり意見だったりするんだね。
あるいは不具合を指摘したり注意したり・・・いずれにしても、根本に怒りはない。

が、いくら前置きしてもなお、従はそれらに「怒り」を見ては怯えてしまう。
その怯えは従の言動に影響し、結果、正常な意思疎通が図れなくなることが多い。
それで私はいよいよ細心の注意を払って、半ばおっかなびっくり物を言うのだが、
正直これは相当に疲れる。覚悟しても納得しても、疲れるものは疲れるのダ(笑。

・・・・・。

こんな状況なものだから、怒りを露わにするなんてもってのほかと思ってたけど、
実質的に怒ったことはあるんだし、とすれば、それは知らず漏れ出ていたんだろう。
しかも、私は自己満足的に怒りを抑えて振舞ってるつもりなんだから、酷い話だ。
その言動と裏腹に伝わる「怒り」に接し、従が感じた困惑や不安は容易に想像がつく。

つまり、本当に怒ったときに、それをきちんと伝えずにいた私のだらしなさが、
些細なことでも、従に「怒り」を想像させてしまう状況を招いてるのではないか。
加えて、更に私がだらしないことには、「怒り」を後になって明かしたりするので、
従としては、いくらその時「怒ってない」と言われても、気が抜けないのは当然だ。

これまで、怒ってもないのに「怒った」と認識される度に、私は苦言を呈したが、
翻って、怒ってるのに「怒ってない」とやり過ごした己の浅ましさに身が震える。
そこに「怒れば従の負担になるから」なんておためごかしの言い訳をしたところで、
怒った事実を伝えもせずに、怒ってない事実は信じろなんて、全く無茶な話だわ。

・・・・・。

確かに、「主の怒り」を最大に恐怖する従に、怒りを伝えるのは酷なことだと思う。
ひとたびそうすれば、従の身に、己の存在価値を疑う程の動揺を招くのは必至だ。
その動揺は心理的なものに留まらず、体調や言動にまで悪影響を及ぼしてしまう。
これは単なる想像でなく実際的な経験則で、だからこそ危惧し、怒れないでいる。

しかし、その結果を怖れて、「怒り」を遠ざけてばかりでいられるはずがない。
私が当たり前に「怒り」の感情を持つ以上、お互い様に乗り越えていかなくてはね。
私は「怒り」を適当に伝えられるように、従はそれを適当に見極められるように。
それがたぶん、今よりもっと誠実な向き合い方だと、漸く気づいたものだから。

・・・・・。

けどねぇ、この歳まで自分を甘やかして、ヘタレに育ててしまった私にとって、
この「怒りを適当に伝える」なんて人並みのことが、実は非常に難しかったりする。
従にしても、その特殊な立場にあれば、人並みの判断を働かせるのは難しかろう。
うわわ、大層なコト言ってみたけど、目指す道のりは遠いワネ。頑張りましょう。


2003年02月10日(月) ワタシがM魚にフられる原因

随分以前に記事した()のだが、私は自分からM魚をフったことがない。
まぁ親密になった数自体少ないので、殊更に言い募る程のことかとも思うけど、
それでもその全てにおいて、逃げられたか、ある日いきなり引導を渡されたか。
つまりは、すっかり相手都合で幕が下ろされ、私の都合は置いてけぼりにされた。

もちろん、関係を結ぶ以前、交渉の段階で断ったことくらいはあるが、
私が辿ったSM関係はお見合いを重ねてはご縁を探す次第なので、これは必然に。
その度自分なりに心を砕いてお断りしたつもりだし、当然、断られたこともある。
っが、ここでもバックレられたことが多い。先に記事したすっぽかされも然り。

ま、お見合いと言えど所詮世を憚る関係なので、しがらみから礼を払う必要もなく、
連絡を先延ばしにしてうやむやにするも、いきなりバックレるもありだとは思う。
けど、些少の関わりでもそうされる側としては、納得しててもグッタリするんだね。
そして親密な関係ならば尚更に、驚くし怒るし、何より激しく落ち込んでしまう。

・・・・・。

そんな話を半ば愚痴めいてS女の友人にしたところ、こう言われた。
「貴女なら、逃げてもフっても大丈夫そうって思われてるんじゃない?」
ナンダソレ?と思わず笑っちゃったけど、そんなこと考えてもみなかったので驚く。
「私だったら、地の底までも追っかけて問い詰めそうじゃん?怖いよぉ?(笑」

ソウダネェとまたも笑って返しつつ、内心、自分のヘタレぶりに思いをいたす。
確かに、逃げられても突然フられても、あぁそうですかと飲み込んでしまってた。
物分りよさげに騒ぎ立てないことを自分に課して、それで自尊をどうにか保った。
要はエエカッコシイなのね。これは別に非常時に限らず、もはや性格的な傾向だ。

当然、この傾向は縁が続いてる間もあるワケで、それが相手の行動を招いたのかしら。
何されても大丈夫そうな印象を与えたか、或いは鷹揚ぶってる足元見られたか(笑
とすれば、自分で自分の首締めてるんだわ。因果応報、誰を恨むわけにいかない。
・・・と相変わらずカッコツケて結ぼうとする自分が嫌だ(笑。もちょっと続けよう。

・・・・・。

改めて言うまでもなく、私は、何されても平気なほどに鈍感でも強くもない。
更に明かせば、人並み以上に恨みがましくあてつけがましい性向も自覚している。
なので、何かされたら、内省よりも先に相手を恨むし、あてつけたくもなる(笑。
だからこそ、それが漏れ出さないように、意識してカッコツケてるというワケだ。

その結果、恨み辛みはともかく、怒りさえ伝えらないヘタレに成り下がった。
いや、相手に表明できないだけで、よそでは愚痴てたりするから全く始末が悪い。
しかし改めて思うに、相手に怒りを伝えてれば、事態はかなり違ってくるはずだ。
適当に怒れないからこそ、恨み辛みが募り、よそで愚痴ることになるのだろう。

・・・・・。

私にとって、M魚との関わりは人間関係そのものだ。関係の如何によらず。
どうせSMの関係だから・・と軽んじることも、流してしまうことも出来ない。
だから、不幸な成り行きが身に降る度に、あれこれと自他を問わずに思考してきた。
それらの考察に私は折々救われたけど、根本的な自省はしてなかったのかもね。

あぁこの歳にもなって恥ずかしいんだけど、今更ながらにそう気づいてしまった。
勿論、これまでの考察が全て間違いだとも思わないが、そこに縋ってもいけない。
改めて自分を見つめる段階が来たらしい。それがココを再開した理由。たぶん(笑
てなワケで、この手の鬱陶しい話題が続くかもしれず。悪しからずごめんなさい。


2003年02月07日(金) ワタシのすっぽかされ事情 #3

その彼も、やはり前日の電話を最後に、約束の時刻を過ぎてもナシのつぶてで。
まぁそれでも、一度対面した女にそうするのは、余程の理由があるのだろうと、
それ以降、私のほうから電話をすることはなく、当然掛かってもきませんでした。
すっぽかされて確かに憤りを覚えましたが、それを責める程の関わりじゃないですし。

っと、こんな言い草だと、いかにも私が鷹揚で物分りのよい人間のようですが、
ソレは違います(笑。単にその彼への執着が薄くって、更に責めるを面倒がったと。
たった一度の対面でも強い執着を抱いてしまってたら、電話くらい掛けたでしょう。
それに物分りよさげにいても、それは自らが傷つかないための保身術でもあるワケで。



そんな成り行きでしたが、その後、テレコミで彼の伝言を再び耳にしました。
たぶん、私との約束を反故にした日から、そう時間は経ってなかったはずです。
しかし彼の言い分は、私と会うきっかけになった、以前のそれとは違っていました。
「普段は普通の人だけど、二人きりの時にはSになってくれる方にお仕えしたいです」

これを聞いた途端、私は失笑し、また脱力し、漸くにして合点がいったのです。
なるほど、先の対面で彼が目にした私も含め女たちは、”普通”じゃなかったのだと。
いや、バーの女王様はお仕事だからともかく、スーツ姿の私もそう思われたのだと。
それで、”普通”じゃない人を受け入れ難かった彼は、すなわち私をフったのだなと。

そう考えると、対面して以降の彼の行動が、するすると腑に落ちていきます。
次回の誘いを受けたものの、断るに怖じて、ついつい承諾してしまったことや、
果たす気もない約束に困って、結局連絡を断つことで難から逃れようとしたことが。
そして、全ての解に納得する一方で、またもやりきれなさを抱えてしまうのでした。

いえ、彼の言い分が変わったことに不服を覚えたとか、失望したとかではないのです。
私との対面で、彼が明確なビジョンを持ち得たことは、むしろ喜ばしいとも思います。
そして、”普通の人”にお仕えしたいという彼の願望も、充分に理解できるもので、
彼にしても、闇雲に女王様を求める段階を脱し、具体的に今後を探っていけることでしょう。



では、何をもって、私がやりきれない気持ちになってしまうのか。
それは、私が自身を”普通の人”だと思い、そうありたいと心がけているからです。
S女だからといって、いきなり乱暴な言葉遣いをしたり、無茶や無理を言ったり、
そういう人の道理を無視するような振る舞いはすまいと、常々思っているからです。

その彼との交渉や対面においても、当然”普通の人”でいたつもりだったのです。
がしかし、彼の感覚に照らすと、私は”普通”ではなかったのだなと残念に思いました。
もっとも、その時の彼にしてみれば、「女王様」に相対しているという緊張のあまり、
私の言動の全てが「女王様」ぽく、”普通”じゃなく見えてしまったとも想像できます。

それに、振る舞い以前に、私の容貌や雰囲気が”普通”でなかったのかもしれません(笑
こればかりは、彼の感性によるもので、私がどう足掻いても仕方のないことです。
が、自分自身では、さして「女王様」ぽい自覚がないので、何だか釈然としなかったり。
けどまぁ、そうであれば、自身についての誤認や認識不足に恥じ入るばかりです。



しかしながら、この経緯において、自身を”普通”に見えなくした一番の原因は、
「まともな感覚」を忘れて、いきなりSMバーに伴ったことだろうと改めて思います。
彼にとって、そこは正に異界で、そこへ連れ込む女なんてやはり”普通”じゃなくて、
そこでどれ程”普通”に振舞おうと、自分とかけ離れた異形の者に見えたことでしょう。


・・・と、これまた想像に過ぎませんが、こう理由付ければ少しだけ救われるのですね(笑


2003年02月06日(木) ワタシのすっぽかされ事情 #2

初対面の、しかもSMは初心者と伺ってた彼をSMバーに連れて行くなんて。
随分と乱暴な話ですが、とはいえ、その時咄嗟に思いついた事ではなかったのです。
首尾よくお目にかかれても、最終ご一緒することを提案しようと思ってました。
だって、そこには、彼がその存在を疑う「女王様」が実在してるのですから。

失礼な話ですが、私が彼に会おうと思った動機もそこにあります。
夢を諦めなければ、そして機会さえあれば、求めるものは見つかるのですよと、
しかも、彼の生きるほんの近くに、当たり前の人の形をして存在するんですよと、
お節介にも知らしめようとしたワケです。私との対面やそのSMバーで。

もちろん、彼が本当に女王様の存在を疑ってたかどうかは、わかりません。
或いはそれは、女王様探しに疲れて吐いただけの嘆息めいたものかもしれない。
それでも、自称S女の私や他の女王様たちとお話が出来れば希望が繋がるかしらと、
ただただ自分勝手な想像を巡らせて、独り善がりに予定を進めてしまったのです。



さて、会ったばかりの女に「SMバーに行こう」と言われてしまった彼ですが、
やはりM魚らしくS女の私に礼を払って、粛々と後をついてきてくれました。
道すがら、少しは会話を交わしましたが、きっと酷く緊張していたことでしょう。
自分の前を歩くのは初対面の女。しかもS女。行く先は聞くも恐ろしげなSMバー。

地下への暗い階段を延々降りて、ほの暗いライティングのエントランスを潜り、
中へ入ると、意に反してそこそこの客入り、その目が一斉にこちらに向けられて、
ママが「あらぁ」と親しげな声をあげ、男の客の何人かが恐縮したように挨拶し、
女の子が「新しい奴隷さん?」とお決まりの台詞を投げて、お約束で私も笑って。



あぁ、こうして順を追って言葉にしていくと、自分の軽はずみに眩暈がします。
賑やかしく振舞う私の傍らで、彼がどんな思いでいたのかは想像に難くありません。
しかし、その時の私は浅薄にもそこまで頭が回らず、いつもの調子でくつろいで、
彼の緊張に気も払わずに、あからさまなSMネタで盛り上がってしまいました。

今更の言い訳ですが、しかし、それすらも私の思惑には適ったことでした。
そのバーはSMバーといえど、女王様がホステスを勤め、専ら会話を楽しむ場で、
しかも彼女らは変に女王様を気取らず、人として正に等身大で話をしてくれます。
だから、彼が、私も含めた女王様たちと「人として」談笑できればと願ったのですね。

かくして、彼女らの気遣いのお陰もあって、彼も次第に打ち解けた風になり、
彼自身の願望について明かしたり、それについて他の者があれこれと質問したり、
私としては所期通りの”彼にとって有意義な時間”が展開されたと感じてました。
そして時刻も頃合に、「電車で帰りなさいね」と機嫌よく見送ったものです。



さて、ここまで。
遅れて来といて独りで帰すとは、なんとも失礼な話ですが、事情から致し方なく、
翌日には、せめてこちらから早々に、お詫びとお礼の電話を入れました。
すると彼も極々普通に礼を述べ、「ご馳走様でした」と仰るので、それを受けて、
「じゃ、今度お茶でもおごってね」と、その週末の約束を交わしたのですが・・・。

結局、これまたすっぽかされて、以後連絡が途絶えてしまったのです。


2003年02月05日(水) ワタシのすっぽかされ事情 #1

先の彼を諦めて後、伺ったバーはいわゆるSMバーで。
その手の店にとって、電車のある時刻なんてのはまだまだ宵の口で。
中に入ると、見知った女たちがくつろいだ風に客待ちをしているのでした。
唯一の客は、デイトの後に合流しようねと約束していた常連のM魚。

その光景に、私は、まるで我が家に帰り着いたかのような安堵を得て、
コートも脱がずにソファに沈み込んでは、先程までの事情を嘆いてみせました。
心優しいママは、そんな私を見逃して、オーダーとるのも先送りに頷いてくれます。
そして「それはヒトとしてどうかと思うよ」と私の思い通りの言葉をくれるのです。

道理のわかった信頼できるS女の彼女に味方してもらえると、本当に嬉しくて、
嬉しさあまり、「そうよね?そうよね?」と周りにも強引に同意を求めたりして。
調子に乗って、「あれって人のことナメてんのかしらねッ?」とぶちまけたりして。
まぁそんな感じで一頻り愚痴を吐き散らかして、落ち着いた頃合に気づいたこと。

「わたし、この手の事があると、ここへ伺ってるわよね?」
「あぁそうそう!前もあったあった!」 応えて、ママが楽しそうに笑い、
「ヤな事あると、ママを思い出すとか?」 同席していた女の子が合いの手を入れ、
「ここ来ると安心するのよねー」 私はお世辞ではなく、心からそう応えました。



けれど思うに、私にとっては安心できる場所ですが、そこはやはりSMバーで、
いくらSMを嗜好してても、知らない方にとっては恐ろしげな場所だと思います。
私もまた、初めてそういう場を訪れたときは、不安と緊張に震えましたもの(笑)
恐らくは、それが「まともな感覚」だと思いますし、誰彼にお勧めはいたしません。

ところが、時に「まともな感覚」を忘れてしまうことがあるんですね。
たぶんそのせいで、数年前、とあるM魚にすっぽかされた経験があります。
すっぽかした自体は、当然彼の側に非があると思いますけれど、
その結果を招いたのは、「まともでない」私だったのだろうと反省しています。



その彼と知り合ったのは、まだテレコミを使っている時分で、
「ボクは女王様を求めているが、本当に女王様なんているんだろうか?」
と切々と訴える彼の伝言に感応して、私のほうからコンタクトをとりました。
そして、電話から届く彼の声音や雰囲気に納得して、近日のアポをとったのです。

が、当日。私はどうしても仕事を抜けられず、彼を一時間も待たせてしまい、
しかも地下に潜っていたせいで、電話を受けるも掛けるもままならなくて、
漸く連絡できたときには、既に彼は帰宅の途につこうと駅構内にいるありさまで、
携帯で聞く彼の声からは、待ちくたびれた失意と怒りが伝わってきます。

慌てた私は平謝りに謝って、とにかく戻ってきて欲しいと頼み込みました。
この勝手な私の言い草に、ほぼ失望していただろう彼は半ば憮然と返事をして、
それでも、所定の場所に姿を見せてくれたのです。やはり怒ってる様子でしたが。
とにかくお詫びを言うも、そこは往来、時刻は21時過ぎ。さあどうしよう・・・。



そこで「どうします?」と彼に問えば、M魚の常で「お任せします」と仰るので、
お任せされちゃった私が採った選択が、今思えば過ちの始まりとなりました。
ええ、前述した「まともでない感覚」で、件のSMバーにお連れしたのですね。
しかも、その時の私は、それが彼にとっての最良の接遇だと考えていたのです(痛。


2003年02月04日(火) M魚のすっぽかし事情 #2

こんな話題を散らかしながら、今更の懺悔ですが、
テレクラでふつーの男と遊んでた頃の私も、すっぽかしをしたことがあります。
それも、一度や二度でなく何度も(!)あああ、関係各位にはすみません〜〜

なので、今回の私方事情を、ざまぁみろと思われる向きもおいででしょうし、
実際自分でも、罰が当たったと思わざるを得ない身の上ではあります。
それに、こういう出会い方では、押しなべて男性のほうが割を喰ってるワケで、
前科のある女が、偶さかすっぽかされてガタガタ言うのは笑止な話とわかってもいます。

この記事をもって不快なお心もちになられた皆さまには、
深くお詫びするとともに、今しばらく話題しますことをお許し下さいますよう。



さて、身の不徳を恥じつつも、当時私が男をすっぽかした経緯を振り返ると、
不測の事態(例えば急の仕事など)が起きて、全く物理的に伺えなかった場合と、
ノリで約束してしまったけど、結局腰が上がらなかった場合がありました。
前者はともかく、後者については全くもって弁明のしようがありません。

もちろん、理由の如何なく、すっぽかす時の呵責は感じていました。
いくらテレクラ呆けした感覚であろうと、たかが遊びでしょ?と言い訳しようと、
相手方の時間と労力を無駄にして、期待を裏切ってはがっかりさせてしまうのです。
当時も私は、些少ながら同様の憂き目にあっており、それは切実に想像できました。

なので、携帯電話を持ち始めてからは、随分と救われたものです。
不測の事で行けなかろうと、気が乗らなくてそうしようと、ひとまず連絡がとれる、
少なくとも相手方の番号さえ伺っておけば、これ以上罪を重ねずに済むのです。
同様に自身も無駄骨を折るを恐れて、大抵はこちらの番号も告げることにしています。



確かに携帯電話は、こうした出会い方の確実性を高めたのですが、しかし、
今回の彼のように適時に掛けて下さらなければ、全く無用なものになるのですね。
それどころか、変に期待が繋がるだけに、すっぽかされて受けるダメージは、
携帯以前に比して、物理的にも精神的にも大きくなったように思います。

まぁ私方事情はともかく、なぜ彼には電話一本頂けなかったのでしょうか。
もちろん、電話すら出来ない、のっぴきならない状況だったと想像も出来ます。
けれども、彼は既に20代後半、社会で実務に携わってらっしゃる経験を鑑みるに、
土壇場で断るにしても、その一本の電話が最低限の礼儀であると理解してましょう。

なのに、それをして頂けなかった・・・再び、なぜか?と思考が走ります。
考えられる理由のひとつは、彼が私に礼を払う必要を感じてなかったということ。
今ひとつは、彼に何らかの悪意があったことですが、これは考えたくありません(笑。
そして最後の一つは、彼が「断るのを恐れて」そうしてしまったという理由です。



恐らくは、この最後の推測が当たっているのではないかと、私は思っています。
なぜなら、彼は、私との関係において「M側にある」ことを強く意識したはずで、
それはとりもなおさず、「自分から断ることが出来ない」というプレッシャーとなり、
ここに「断りたくても断れない」状況が生まれ、あの結果を招いたのではないかと。

そして、心苦しい想像ですけれども、こうしたM魚特有の心象は、
対面の約束を交わした時点で、既にあったのではないかとも思われるのです。



勿論、これらは私の中での想像でしかなく、
単に自身に都合のいい、いわば希望的観測なのかもしれません。
しかし、この考えに沿うと、彼に限らずM魚のすっぽかし率が高い事象や、
これまでに招いた彼らとの不幸な経緯が腑に落ちて、少しは気が晴れるのですね(笑)


2003年02月03日(月) M魚のすっぽかし事情 #1

またもワタクシ、M魚にすっぽかされまちた。
ええ、初めての事じゃありません。しくしくしくしく。

心優しい皆さまには、ふつーの男女間ならいざしらず、
M魚がS女をすっぽかすなんて!?とお思いでしょうか?
かりそめとはいえ、互いに対面に合意した時点からS/Mという位置関係があり、
それでなくても、需給バランスが極端に悪いS女売り手市場にあって、
買い手たるM魚がみすみす機会を放棄するなんてことがあるのか?!



いえいえいえいえ、それがあるんですねぇ。というか。
テレクラ遊びなんぞで長年男女間の危うい橋を渡ってきた私が実感するに、
すっぽかし率はM魚のほうが高いように思うんです。

もっともこれには、私の側の「M魚とのアポには誠実にあろう」という方針
(つまり、ふつーの男には不実な対応をしたこともあったってことですね、笑)
も絡んで、結果そうなっているワケですが、だからこそダメージはデカイです。
まぁ、自分勝手に空回りする己の能天気にも呆れるばかりなんですけど。

で、せめて自分を納得させようと縋る結論はいつも
「こうやって罰が当たってるのね、ワタシ」ってのがせいぜいなんですが、
改めて考えてみれば、色々と原因があるような気がします。



その彼を見初めたきっかけは、久々に訪ねたfemdom系のオープンチャット。
発言のひとつひとつが微妙に的を外してて、私にはたまらなく魅力的でした。
聞けば、直近に催されたそこのチャットのオフ会にも参加したとのこと。
へぇ、表に出てくる子なのねんといよいよ興味が募ります。

会話が進むごと、その興味は「直にコンタクトしたい」という目論見に変わり、
遂にはチャット上で堂々連絡を請い、彼は驚きながらもその申し出に応じて下さって、
首尾よく、その日のうちに2ショでお話をすることができたのです(!)。
すっかり浮かれた私は、「近いうちにお目にかかりましょう」と会話を締めました。

その後、数度のやり取りを経て、私たちは具体的なアポを交わしました。
どうやら彼は大変にお忙しい身の上で、なかなか双方の都合があいません
それでも、彼を恋うあまり私は、イレギュラーな日取りをどうにか工面しました。
つまり、まるで勝手な言い草ですが、私にとっては貴重な時間を捻出したワケですね。



当日、依然お仕事の目処が不明な彼から、電話連絡を頂くことになりました。
ところが、待てど暮らせど、電話が鳴りません。かけても繋がりません。
困ったなぁと思いながらも、既に約束をしてるんですもの、待つしかないでしょう。
とはいえ他の用事もあるので、不確かな予定を抱いたまま動くことになりました。

結局、彼から連絡があったのは既に20時近くでした。
仕事なら仕方ないことと、「21時半には行けます」という彼の言葉に期待を繋ぎ、
待ち合わせの街にある喫茶店で、空腹を堪えながら携帯電話を見つめてました。
てのも、お食事をご一緒する約束をしてたからです(呆)



やがて22時。
店内には蛍の光が流れ、飲み干したカップが下げられても、携帯が鳴ることはなく。
看板の灯が落ちた店を背に、何度目かに彼の番号をコールするも依然応答はなく。
かくして、すっぽかされ決定。私もようやくのことに諦めがついたのです。

冬空の下、ひとり取り残されて、その後。
自虐にも似た空腹感を味わいつつ、地下深い馴染みのバーへの階段を降りました。
もう既に、地上で彼からの電話を待つ気は失せておりましたので。


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