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女房様とお呼びっ!
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2001年11月30日(金) 甘いお仕置き


ただいま。遅くなっちゃったわね。
いい子にして待ってられた?


待ってる間、ナニ考えてたか言ってご覧。
あら、どうして口籠もっちゃうのかしら?
言えないようなコト考えてたの?
ね、いけない事考えてたんでしょ?
黙ってても、嘘ついても駄目ヨ、わかってるんだから。

でも、
ちゃんとお返事できないようなクチだったら、もう要らないわね。
じゃあ、もう、そのクチは塞いでしまいましょう。
こうやって、今日、アタシが胸元に巻いていたスカーフでね。


いいわよ、言葉で言わなくったって。
調べれば、わかることだもの。

どこ調べるんだか、わかってるわね?
そう、このいやらしいカラダでしょ。
ほら、ナニ隠そうとしてるの?隠したいところがあるの?
隠したって無駄なのに・・・。

そうか、この手がいけないのね。
そんな悪い手は、
今日、アタシが穿いてたストッキングで、
背中の後ろに結わいちゃいましょう。


ほら、これで、なんにも抵抗出来なくなった。
じっくり調べてあげる。
カラダに訊くのが、イチバンだものね。


あら、コレはどうしたの?
どうして、ココがこうなっちゃってるの?
やっぱり、イケナイこと考えてたんだ。
いい子にしてなさいって言ったのに。
アタシの言うことがきけないの?悪い子・・・。

でも、カラダはホントに正直ね。
イケナイこと考えただけで、こうなっちゃうんだもの。
どんなこと、考えてたのかなあ。うふふ。


ねぇ、さっきから、お前が、
アタシのどこ見てるか、わかってるのよ。
ほら、ここでしょ?お前の大好きな、アタシのここ。
ちゃんといい子でいたら、ご褒美あげようと思ってたのにね。

見てるだけじゃ、切ないでしょう?
でも、お前がいけないのよ。わかってる?
さあ、目を瞑りなさい。可哀想な、その目。
アタシが、今日穿いてた黒いショーツで目隠しをしてあげる。


2001年11月29日(木) うるとらまんこ

えー、イキナリな掲題カマしましたが、懐かし〜と思って頂いた方はおいでかしら?
或いは、古典にして定番なフレーズなのかな?(下の世代に疎いのでワカラナイ)
私の記憶は、小学生時代に遡る。同級の男子達が大声で歌って、面白がってた。
当時、大人気だったドリフターズの番組『八時だよ全員集合!』で流行ったらしい。


 ♪ ウルトラマンの子ども、子ども、子ども
   ウルトラマンの子ども、う〜ると〜らまんこ 
   (イギリス民謡『ロンドン橋』のメロディにのせて、歌いませう^^)


勿論、オンエア上では「うるとら○○こ」と、伏せ字(?)にされてたんだけど、
伏せた意味がない。まるワカリだもん(笑)それに、子どもはこゆのが大好きダ。
ま、あの頃って、ドリフネタを再現するだけで、休み時間は盛り上がったのよね。
この唄も当然ヒットして、おちゃらけ組の男子が、大合唱しながら騒いでたっけ。

ドリフネタって、ちょっとエッチな感じで、女子は恥ずかしがってやらなかった。
でも、真似っこする男子達を見ては、大笑いして面白がってたのよ。トコロガさ。
この替え歌ネタに限って、嫌がったり、怒ったり、過剰反応する女子がいたのね。
それで一層、男子が囃し立てるんだけど、当時の私にはどうにも不可解だったの。

・・・・・。

てのも、その頃の私は「まんこ」の意を知らなかったんだ。そのニュアンスすらも。
男子があんまり騒ぐから、エッチな含みがあるのかなと思ったけど。暢気だね(笑
実際、まんこが女性器の俗称だと知ったのは、ナント高校生の時だ(!)うはー。
だってさ、国語辞典にも、婦人百科にも「まんこ」って言葉は載ってないんだもの。

いや、それまでに、エロ本とかで「お○○こ」てな表記にはお目にかかってたのよ。
しかししかし、ウブな私は誤読してたんだねぇ・・・「おちんこ」と読んでたの(爆)
あー、笑ってイイデス。けど、ウチの親は、私の股を「ちんこ」と呼んでたのよぅ。
んまぁ、親が子どもに、しっこ出るトコを「まんこ」とは教えられないやね(笑)

それに、私の育った地方では、「まんこ」でなくて「おめこ」って言うんだよね。
だから、高校生の時に、同級の女子から聞いたのも「おめこ」って単語だったのよ。
で、ソレ何?って間抜けな質問して、ヤダ、おまんこヨと彼女が声を潜めた次第。
あぁ想い出すだに、顔から火が出そうな会話だ。無知って点で、余計恥ずかしい。

・・・・・。

私のまんこが「ちんこ」であった頃、男の陰茎は「ちんぼ」だった。「ほ」に点々。
コレは、ウチの親も言ってたから知ってた。でも、男のしっこ出るトコって認識。
ただ、ちんこもちんぼも、滅多人前で口にすべき言葉じゃないって意識はあった。
なんでだろう?しっこの出る汚い所だから、言っちゃダメって教わったのかなぁ。

それが、性のめざめ(!)に伴って、次第に「恥ずかしい言葉」に変わっていく。
先般ますみさん板で話題されてた「エッチ系言葉」と判った上で、言えなくなる。
っと、私にもそんなウブい頃が当たり前にあったのヨ。今じゃ嘘みたいけどさ(笑
ただ、私の場合、この時期に「まんこ」と「おめこ」がリストから抜け落ちたワケ。

そのせいか、「まんこ」って言葉を発するのに躊躇がないってか、意識が薄いの(笑
だから、男が女にその言葉を言わせたがるのが不思議だったし、可笑しかったワ。
勿論、言えと言われれば言うけどさ。私が言うのを聞いて、男が発奮するならさ。
じゃあってんで、こっちから先制攻撃してみたり(笑)・・・これは面白かったよぅ。

・・・・・。

因みに、私が初めてセックスしたのは、上京してから、こっちの人とだったんで、
更に、それ以降もバリバリの関西弁を操る男や、同郷の男とはヤってないせいか、
遂に、現場で「おめこ」という言葉を耳にしてない。聞いたら笑っちゃうかもね。
機会があれば、「おめこにちんぼハメてぇ〜」と言うにやぶさかではないけれど(笑


2001年11月28日(水) 告白は続く・・・

涙目で笑うカマスの顔は、確かに変テコなんだけど悪くない。ちょい照れるケド。
これまでに、幾度この表情を見ただろう?再々ではないものの、何度か遭遇した。
彼がソンナ顔をするのは、無論、私の前だけではない筈だけど、それでいいのさ。
中年男の純情なんて、滅多にお目に掛かれない。その事が、私には幸いなのヨ。

先の告白で弾みがついたのか、涙腺緩んだ拍子に、更に心のタガが外れたのか、
暫くすると、またカマスが「これは誰にも内緒にして下さいね…」と喋り始めた。
私は、少し吃驚する。そんなエクスキューズは、初めて聞いたゾ?ナンダナンダ?
聞けば、なるほど、そりゃトップシークレットだな・・・てな訳で、伏せ字ご容赦。

・・・・・。

「ボクね、本当は**が一番好きなんですよ。前は、そればっかりして頂いてたし」
前というのは、彼が独身時代の話だ。かなり長期間、隷従を勤めたと聞いている。
「多分今でもね、**されたら、訳ワカランようになると思う。ハマルっていうか」
「でも、ハマっても、ボクの場合ダメじゃないですか。ハマル訳にいかないんです」

「普段、あちこちで可愛がって頂くけど、皆さん、ボクが**苦手だと思ってる…」
「勿論、ヤったら色々支障もあるのは事実です。それを、ボクは言い訳にしてて…」
「それで、皆さんそのように気を遣って頂きます。凄い有り難いし、助かります…」
「でも、ホントは喉から手が出るほど、ヤって頂きたいんですよ。ホントはね…」

実際、カマスが**NGというのは周知されてて、無理強いする者はない。ソレデ?
「あちこち行くと、**出来る人が、女王様にヤられてるの見る機会があります…」
この「あちこち」てのは、SMパブとかパーティーの意。彼は、再々出没してるのね。
「ボクは、周りで囃したり、笑ったりしてますけど、本当は見てるの辛いんです…」

「自分が実は好きな事を、他人がヤられてて、ボクは見てるだけってのも辛いし…」
「**がお好きな方のお役に立てないことも、辛い。ホントは出来るから余計に…」
「時々、ワーッと体を投げ出してしまいたい衝動が来て。何とか抑えてますけど…」
「何のお役にも立てないボクが、ここに居てもいいのかな?と思ったりもするし…」

・・・・・。

そういえば、以前、あるパーティーで同席した数日後にも、こんな顔を見たっけ。
街場のバーで一緒に飲んでる時に、彼の顔が歪んだの。しかも急に。慌てたよ。
そして言う。「ありがとうございました…」何に礼を述べてるのか判らず、戸惑う。
「ナニナニ、どしたの?」仕方なく、笑って問うた。あぁあぁ、泪零れそうだぜ?

「あん時、ご聖水を下さって…」ヤダ、泣く程のことかい?だって、好きでしょ?
「あの場では、ボク何も出来なくて、隅っこにいるしかなくて…」あ、そだったね。
「そんなボクなのに、優しくしてもらって…」あはは、それで感激したの?安いネ。
「・・・」皆で楽しむパーティーだろ。同情したんじゃないぜ。泣くな。鬱陶しい。

私は、大笑いしながらそう言い捨てて、ゴクゴク酒を飲んだ。彼は菓子を囓った。
そうさ、あの時、ぽちんと座るキミに心が動いた。悪いが、可哀想にと思ったヨ。
皆がプレイに興じる騒音の中で、ナニヤッテンダと苛ついたしね。ま、そゆ事さ。
だから、そんな顔するな。「ポッキーに酔ったかい?」漸くそれだけ言った。笑え。

・・・・・。

「あー、ナンカ言ってる事、ワカランようになってきました…」彼の告白が終わる。
「禁煙してる人が、辛抱堪らず一本だけ吸ったら、元の木阿弥ダヨって話だった?」
そう茶化すと、俯いた彼が顔をあげて、笑顔を見せた。「あ、そう言えばヨカッタ」
「禁煙のコツは、またいつでも吸えるって気楽にやることらしいぜ?」言葉を継ぐ。

「それか、口寂しくないようにガム噛んだりネ・・・煙草以外にやる事あるじゃん?」
「例えば、こんなんも悪くないでしょ?」そう言って、私はカマスの顔に腰掛けた。


2001年11月27日(火) サンクチュアリ 〜カマスの告白〜

カマスは、フリーのM魚である。プロアマ問わず、多くのS女達に愛されている。
フリーってのは妙な表現だが、つまり特定の相手を(彼の場合、主を)持ってない。
というよりは、「持たない」主義なのね。彼の環境では無理だと結論してるらしい。
家や会社があると、隷従を全う出来ない。相手にご迷惑だし、自分も辛いと言う。

ならば、クラブで束の間の隷従を晴らしてるのかと言えば、それも出来やしない。
「気持ちの動く相手でないと、ちんこは勃ちませんッ」と、本人としては自慢げだ。
けど、それって同時に自分の首絞めてるんだぜ?と問えば、自覚シテマスと嘆く。
結果として、彼は気に入りのS女達の間を泳いでいる。「みんなのカマス」として。

事実だけ見れば、何とも調子のイイ、我が儘M魚だが、彼を悪く言う者はいない。
それは、彼がS女を奉りながらも、決してモノ扱いせずに対応してくれる姿勢や、
己の立場を踏まえた謙虚な態度や、その上での真摯な想いを評価してるからだ。
そして、確かに、彼が愛される最大の理由は、その暖かく真面目な人柄にある。

・・・・・。

「あんなことってあるんですね」と告白は始まった。久しぶりにカマスに会った夜。
食事を終え、彼の投宿先でくつろいでいた時のことだ。普通にお茶を飲みながら。
そそ、彼とは再々密室にいるけれど、必ずプレイするって訳じゃない。気分次第。
そん時も、積もる話に花が咲いて、だらだらと雑談をしてた。そんな成り行きで。

「こないだ、ボク、フィストやったんですよ」「へぇ、尻穴狭くなってなかった?」
「ボクもそう思って、一旦は断ったんです。最近ヤッテないから出来ませんよって」
「でも、元々ガバガバじゃん?笑」彼の尻穴は過去に検証済みだ。結構拡がるの。
「でも、フィストはキツイですよ(笑」ま、本人が言うんだから、そうなんだろう。

「出来ないと相手に悪いじゃないですか」彼に限らず、この手の発想は可笑しい。
「出来なきゃ、それなりじゃん?」と口を挟む。「その方も、そう仰るんですヨ…」
「出来なかったらソレデイイからやろうと仰って、それでヤることにしたんです」
そう言う彼は、しおらしい表情だ。その顔に感応して、私は黙って続きを待った。

「でも、やっぱ入らなくて。シて頂いてるのに申し訳なくて。で、謝ったんです…」
「そしたら、 ”もうちょっと頑張って、ダメだったら止めよ”と仰って頂いて…」
「許して頂いたと思ったら、もの凄く感激して、次の瞬間急に入ってきたんです…」
「もう訳ワカランなって、頭真っ白になって、そしたら泪がドバーッと出てきて…」

・・・・・。

彼は、決してうぶなビギナではない。M魚としての履歴は、40年近くになる筈だ。
その手練れが、たかがフィストを受け入れただけで泣けちゃうってのは、凄いね。
きっと、諦めかけた事を、S側に励まされて達成した感動が泪を呼んだのだろう。
M側にとって、それが殆ど彼の努力に因るにしても、導かれることは至福だから。

しかも、カマスの場合、今や社会的に重鎮たる齢に届き、他者を率いてばかりだ。
勿論、それが彼の役目役割であり、主たる幸せなんだろうけど、時に辛かろうサ。
だから、全く正対する位置にいたがるのかナなんて考えるのは、穿ち過ぎかしら?
ま、彼が何故Mたるかはともかく、未だにピュアな感激を得られるのは素敵ダワ。

・・・・・。

「フィストされてワンワン泣いて。変ですね、ボク…」照れながらも、彼の話は続く。
「そしたら、ボクの泪が感染ったのか、お相手の方も涙流してらっしゃるんです…」
「男の尻に手入れて泣くのも珍しいナと笑っておいででしたけど…」彼はそう笑う。
でも、ホラまた涙目になってるよ、カマス。私は、抱きしめる様に彼を見つめた。


2001年11月26日(月) サンクチュアリ

私は別にフィストファックマニアじゃない。けど、経験してみたいとは思ってた。
まぁ、内臓好きって癖のせいもあるけど、多分に興味本位でね。面白そうじゃん。
だから、とあるM魚がアナルフィストやらせてくれるヨ、って話には飛びついた。
特定の相手を持たず、主にクラブでプレイする方針の彼。絶好の機会だったワケ。

実際、私が男の尻穴に拳を納めたのは、後にも先にも、その彼との一回だけだ。
そして、その彼と後に付き合いが続いた訳でもなく、まさに一期一会だったのね。
更には、愛だの信頼関係だのの背景もなく、ただただ行為があったのみ。けれど。
その経験は、本当に本当に忘れがたい想い出となった。今でも、熱く思い出せる。

・・・・・。

クラブ通いのお陰か、初見の女にも彼は臆せず何でも話す。人なつこい男だった。
やる事が決まってる安心感から、暫く他愛のない雑談をした後、プレイを始めた。
勿論、いきなりは無理なので、ざっと縄掛け。やはり彼の心身の準備は必要なの。
有り難いことに、プレイ慣れしてる彼は、それだけでスイッチが入る。助かった。

頃合いを見て縄を解き、ベッドに寝かせる。ここからは、彼との共同作業となる。
膝を抱えて仰臥した彼の腰の下に枕を入れ、尻穴を露出させる。意外にキレイだ。
やっぱ恥ずかしいデスネとか、大丈夫カナとか照れる彼を横目に、手袋をはめる。
ローションを塗り込めながら、私、手が大きいからサァなどと私も言い訳をする。

・・・・・。

しかし、彼の尻穴は次々と指を飲み込んで、やがて、親指以外を収めてしまった。
「どう?大丈夫」と訊けば「うん、割と平気。気持ちイイ」と溜息混じりに答える。
「じゃ、親指イクわよ?」そう宣言して、いよいよ5本目に取りかかる。深呼吸。
果たして柔らかな肉襞は、漸くソレも受け入れる気配だ。慎重に力を込めていく。

ア、と彼が呻く。「痛い?」「イエ、苦しい」「ウン、苦しいね、もうちょっとヨ」
親指の付け根をくぐらせれば、一段落するのだ。あと少し。「息吐いて。イクよ」
彼が大きく息を吐き、腹圧が下がるのと同時に、私の掌が彼の尻穴を貫通した。
「入ったワ…」「あ、ハイ…」紡錘状に丸めた私の手に、彼の肉がまとわりつく。

私は暫く無言のままに、初めての触感を味わった。海の底を漂うように心が凪ぐ。
直腸の壁は、痛い程の圧力とたぎるような熱さを伝えながら、規則的に脈動する。
接点に目を落とせば、彼の尻の狭間に私の手首が埋まり、確かな結合を感じる。
腸壁の締め付けから逃れるように、そっと動かしてみる。瞬間、彼が微かに呻く。

・・・・・。

「痛かった?」「ううん、入ってるなって」「うん、入ってる」静かに対話が始まる。
「お腹の中、目一杯な感じナンダ」「そうなの?」「うん、それが何か安心なの…」
気付けば、言葉遣いは幼児のようにたどたどしい。「あったかいね」「うん、ボクも」
「どっちもあったかいのね?」「変だね」笑いながら、あどけない気持ちが満ちる。

遂に、中指がS字結腸を触覚する。圧力がないソコは、どこまでも拡がりそうだ。
人差指と薬指を伴って刺激すると、どうやら腹膜に響くらしい。彼が声を上げる。
「腸の中って面白いね」「そうなの?」「うん、フワフワ」「ボクはピクピクする…」
互いにソコに感覚を集中させながら、上気した顔を見合わせ、また微笑み交わす。

私達の間には、既に繋がった感動しかなく、エロの気配は微塵もなくなっていた。
なぜだろう。その光景は明るく清潔で、授乳している母子にも似たイメージなの。
彼は、赤ん坊みたいに無垢な表情を湛え、私もきっと優しい顔つきだったと思う。
こんなエログロな行為を通して得た感想としては、あまりに不適切な表現だけど。

・・・・・。

或いは、日溜まりの中であやとりしているみたいな心持ちだったのね。本当に。


2001年11月23日(金) 夢のスカル/スカルの夢

どちらの掲題にしようかと悩んだのだが、並列に置いてみた。うーん、綺麗だ(笑
で、この「スカル」という単語が暗示する意味合いを、お分かり頂けるだろうか?
んー、ご存じない方の方が多いかなぁ。ま、語意ままだと頭蓋骨[skull]だよね。
・・・さて、お気づき頂けたろうか?[skull]の後には [fuck]と続くんだけどさ(爆)

ま、ナンダソレの世界なんだけど、変態道にはコレに憧れる輩が確実にいるのよ。
頭から人の体にめり込みたいと、夢想する。具体的に空想して、欲情する。嗚呼!
ファックする体腔は任意だ(笑)女のまんこでもいいし、男女問わず尻穴でも可。
物理的に可能かどうかは、この際問題じゃないの。あくまでも、妄想なんだから。

ただ、妄想猛々しいあまり、この行為が実現可能かの如く、吹聴されたりはする。
ハードゲイの連中はやってるとか、ハードマゾの某氏は出来るとか。いやぁね(笑
つまりは、真実味のある話は聞いた試しがない。てか、与太話に止めたいかなぁ。
いや、実際に見られるんなら見てみたいかも(笑)グロな見せ物としては上等だ。

・・・・・。

男の口から、胎内回帰願望が語られるのは珍しくない。多分に性癖と違う次元で。
例えば、S女M男シーン定番の顔面騎乗は、女の股座に男が虐げられる構図だ。
或いは、隷属願望者が、その場所に取り込まれて被支配感に浸る様相でもある。
しかし、再々に、生誕の根源たる場所に密接した安堵感を、告げられたりもする。

実際、M癖ではないと自己分析した上で、顔を女に跨がれたいと望む者さえいる。
彼のイメージは、明らかに女の中に還っていくことだと言う。男っぽい夢想だね。
知人のSM嬢が語る、この手の願望の男とのプレイは、エピソードとしては退屈だ。
だって、ひたすら顔面騎乗だけだと言う。それで、男が安らぎを得るならいいさ。

・・・・・。

コアなSMプレイとして、フィストファックってのがある。拳を突っ込むアレだ。
エロネタとしては、比較的ポピュラーじゃないのかしら?(笑)どうなんだろう?
ご存じのように(笑)、私はまんこの粘膜が弱いので、トライしたことすらないが、
親しいM女達は、揃って出来ると言う。中には経産婦でない奴もいる。凄いなぁ。

で、どうなのよ?と訊けば、実の所、あまりはかばかしい答えは返ってこない(笑
あ、入ってるって感じヨと素っ気ない。ま、膣内の体感は、意外に鈍感だからね。
勿論、コンナコトされて、あぁーんってなM的快感は最高らしいのよ。念のため。
そそ、何名か曰く「子宮口を開いて、突っ込まれるとイイ」らしい。ご参考まで。

思うに、フィストって、突っ込んでる側に大きな快感があるんじゃないだろうか?
それこそ、相手の内臓を触覚出来る醍醐味。内臓さえも、我手で蹂躙する心理。
ただ、きっと、性感に富んだちんこを入れるのとは次元が違うんじゃないかしら?
行為自体はエゲツナイけれど、そこに沸き起こる感動や感激はピュアな気がする。


・・・てのも、私が男の尻穴に拳を挿入して感じたものは、とても清らかだったから。


・・・・・。

以前、あるS女性の文章で、「祈りのようなフィストFuck」という言葉に出会った。
あぁ、まさにその通りダと、暫し文字列を眺めてしまった。深い想いで合掌した。
あの感激は、私が女で、体の一部を他人に入れた経験がなかったせいかしらん?
けど、指ならしょっちゅう入れてるゾ(笑)でも、それとは全く違ったんだよね。


2001年11月22日(木) 淋しい同士


ヒトには淋しい穴がある。

からっぽでがらんどう、いつも辛くて泣いている。
いつも泣いているものだから、
皮膚は爛れて、赤い肉を晒してて、
僅かなすきま風にもひりひり痛んで、なお辛い。

だから、大抵はその扉をしっかり閉ざしているのだけれど、
実は、ひっそり、お客を待っている。
暖かくて、豊かな、潤ったもの。

穴の中にみっしりと充実する、
あるべき物が帰ってきたような、懐かしいその感じ。


『 お帰りなさい 』


盆と正月が、いっぺんにやってきたような歓びが満ちて、
その一時、淋しかった事なんて忘れてしまう。

ずっと待ってたのよ、やっぱり来てくれたのね、
嬉しいわ、幸せよ。
身体総出で、お客様の到来を歓迎する。
アドレナリンが次から次へと湧いてきて、
心臓ばくばく、血はたぎり、呼吸が犬のように速くなる。



そうして迎えられたお客もまた、
ヒトに宿る淋しい瘤(こぶ)でありました。

隠しようのない、むき出しの赤い肉。
時折、それはとても邪魔なものだけど、千切って捨ててしまう訳にもいかず、
無防備に風に吹きさらされて、いつも縮こまりながら、
収まるべき場所を探していた。
暖かくて、豊かな、潤った場所。

柔らかく包まれる、懐かしい感じ。


『 ただいま、会いたかった 』


両手を拡げて、全身を投げ出すような、
狂おしいほどの愛しさ。

淋しい穴と淋しい瘤は、強烈な引力に導かれるように再会し、
抱き合って、歓びを貪りあって、
ずっとこのまま繋がっていたいねと思うのだけれど。

残酷な神さまは、また、
穴は穴のままに、瘤は瘤のままにと、
互いを引き離しておしまいになる。

そうして、
穴は再び、辛く淋しい待つ日を重ね、瘤は探しあぐねて淋しく暮らす。
いつまで経っても終わらない、その繰り返しがヒトの運命。

それからね、誰にも幾つかずつ、淋しい穴と瘤があるらしい。
あなたには、どれ程の穴と瘤がありますか?


2001年11月20日(火) 複数イロイロ

ここでアレコレひけらかしているように、色々とエロな試みには手を染めてきた。
スケベの雄たる複数プレイも、ヤった。ハマりはしなかったけど、楽しかったヨ。
ただ、私以外の女が参加するSWだの、乱交だのはヤってないんだよね。うーん。
や、何度か機会はあったんだけど、面接の段階で嫌になったの。同衾する女に。

結婚前に試みたことだから、そこから結構時間が経つ。さて、今ならどうだろう。
んー、多分、今でもダメかなぁ・・・てのも、私は実の所、女が苦手なんだよぅ(汗
まず、欲情しないのね。女が悶える現場や生まんこは、何度も見てんだけどさ(笑
も一つは、自分の中に、他者たる女性に対する劣等感が根強いのも原因だわね。

ま、見栄張りな性向だから、ヨソの女見て、いきなり落ち込む…ナンテ事はない。
けど、同じ土俵で張り合う程の度胸もない。だから、端から排除しちゃうのかも。
そそ、同性込みの複数って、そんなイメージなの。オンナ同士が競うみたいなね。
「イヤ、そんなコトない。皆で和気藹々よ」と勧められても、この意識は拭えない。

・・・・・。

結果として、私が経験した複数プレイは、女は私一人、あと何人かの男って面子。
参加者皆が初対面ってことはなかったナ。大抵、誰かがキーマンで人を集めてた。
だから、要らぬ緊張をしなくて済んだ。尤も、私は男相手に殆ど緊張しないけど。
特に、男達が事前に面識がある者同士ってのは、助かったワ。恐らく、これ重要。

てのも、エロな場での初対面の男同士のせめぎ合いって、鬱陶しいんだよね(笑
幸い、複数プレイでは、この憂き目にあってないけど、パーティとかで感じるの。
女の方が往生際がいいってか、ヨシヤルゾってな潔さを持ってると思う。マジに。
男はねぇ、この期に及んで遠慮したり、恰好つけたりするんだナ。ツマランゾ(笑

で、首尾良く進行する複数プレイってのは、正直、楽ちんでいいよぉ。女的には。
普段なら、体曲げたり、体位を変えたりするのに、自前の筋肉使ってるじゃない。
それを、何本もの腕がやってくれるのよぅ!私は、はんぺんみたくなってればOK。
元々、受けのセックスでは傲慢な程に排他的になるワタクシ。後は任せたわよッ。

・・・・・。

ところで、偶に、男の中に独走態勢を取りたがる奴がいる場合がある。どーする?
困ったことに、ソイツは恐ろしくヨカッタりするんだナ(あはは、困ってないか)
で、私は身勝手にも、彼と結託してしまう。場は、いきなり白黒ショウな様相だ。
普段通りに筋肉をフル稼働させ、怒濤のセックスショウを展開。コレがいんだワ。

私お得意の「イイ気になる」モードが発動する。エロで辺りをなぎ倒してく勢い。
あら、他の方も手を出して構わないのヨ。出せるモンなら、出して頂戴。うふふ。
見られて恥ずかしいってんじゃない、明白に。見せつける感じ、はっきり言って。
気分は踊り子さんなのだ(笑)ホラホラ、ドウ?やー、我ながら悪趣味だねぇ(汗

結局誰も介入せずに、ショウを終える。泥のように弛緩しつつ、息が弾む。充実。
立て役者を全うした相手の男も、静かに観覧に回った他の男もエライねぇ。感謝。
そして、私は独り勝ちしたような優越感と、体の快楽を貪った余韻に浸る。満足。
そそそ不思議なことに、行為の最中はともかく、事後も暫く静寂に包まれるのヨ。

んまぁ、ひとりが果てたから、んじゃ、次はボクって来られても困るけどサ(笑)
私の経験上、この手の展開で、他の人と2ラウンドになるってことはなかったナ。
何となく終わった〜って雰囲気が満ちて、ひとまずお開きになったような記憶だ。
けど、現場に同席しながら、観客に成り果てた男達は、どんな心持ちだったろう?

・・・・・。

私的には、彼らの中に潜むマゾヒズムが刺激された、なんて考えるのが楽しい(笑
そして、実は、その辺を目指す複数プレイもあるんだね・・・てな話は、次回また。


2001年11月19日(月) オンナはソレを我慢できないッ

私の知る限りでは、ソレを好む女は多い。ソレが趣味だと言い切る女もいる程だ。
かく言う私も、ソレが大好き。ソレを見ると、どうにも我慢できなくなっちゃう。
猫なで声で「ヤらしてぇ〜ん」と男を誘い、ソレを間近にする。期待に胸が高鳴る。
もう、男の側が、ソレを弄られるのを好むか好まざるかは関係ないの。ヤりたい!

早く〜ぅ。気忙しく男に背中を向けさせる。あぁ、ほら、ここに、ソレがあるッ。
私はソレに見とれてしまう。どうして、こんなモノに魅せられるのか不思議だワ。
でもね、堪らないのよぅ。条件反射みたく、自動的に笑みが浮かんでしまうのね。
暫く眺めてニヤけつつ、どう攻めようかと思案も楽し。心の中で舌なめずりする。

そんな私の視線を背中に浴びて、戸惑う男たち。いいのよ、酷い事はしないから。
それでも、ソレを知らない者は、未知の体験に怯え、知ってる者は覚悟を決める。
ま、ちょっとは痛いかもね。男を労る声音が、ワクワクした響きを伴ってしまう。
あぁ、ゴメンね。ソレがあるから、イケナイのよぅ。言い訳にならない言い訳(笑

・・・・・。

さて、ソレの至近に目を寄せて、指でそっと触れてみる。どれ位の大きさかしら?
見た目よりも触覚的に育ってれば、一層悦ばしい。軽く押しつつ、硬度を調べる。
まぁ、素敵!適度に固くて、沢山詰まってそうじゃない。イッパイ出すのよ。OK?
沢山出れば出るほど、心が震える。興奮しちゃう。わけもなく、感激するのよぅ。

そうそう、先っぽは黒い方が、私は好きね。その方が沢山出してくれそうだから。
黒くてよく育ったソレってば、皮膚を透かして青黒く見えたりして、萌えるのヨ。
あぁ、この穴ん中に長々溜まってきたんだなって期待が膨らむの。黒いヤツはね。
そして、黒いソレを背負った男に心底感謝する。この楽しみをくれてアリガトウ。

さぁ、いよいよソレの脇に指をあてがう。先っぽから、ホンの少し離すのがコツ。
少し伸ばして鑢をかけた爪の先が、男の肉にめり込みながら、赤い筋を刻んでく。
同時に、ソレの先っぽが少しずつ盛り上がってくる。めりめりと穴を拡げながら。
私は石器の発掘をするみたく慎重に、指の圧力を加減する。ここで焦っちゃダメ。

・・・・・。

思えば、私の母もコレが好きだった。父の背と言わず、顔面までも餌食にしてた。
ソレに熱中する母の顔は輝いていたっけ。喜色満面の表情を、父は知っていたか。
それを見てたせいなのか、私も気付くと、好きだった。好きというより癖かしら?
セックスの最中でも、ソレを見つけるとヤりたくなるの。殆どパブロフの犬状態。

こないだもね、身近な奴隷を叱ってた時、ソレを奴の背中に見つけちゃったのよ。
途端に抗いがたい衝動に駆られる。状況的に、嫌な気が満ちているにも関わらず。
コンナ時にダメダと理性が止めたんだけど、結局、ソレへの欲求が勝っちゃった。
期待以上に立派なソレを目の前にして、ハッスルしたワ。凄い結果を待ち望んで。

何度も何度もティシュで拭き取りながら、穴の奥の奥まで絞り取るのに専念した。
相当深いところまで溜まってたから、ティースプーンまで持ち出して挑んだのよ。
で、奴のソレは、期待に違わず沢山出し続け、出し終えるとぽかりと口を開けた。
私は、その始終に深い満足感を覚えて、何を叱ってたのか忘れちゃったくらい(笑

作業を終えても興奮冷めやらず、私がどれ程ソレが好きかを奴に語って聞かせた。
すると、奴が言う。「芥川龍之介の鼻って小説に、そのような場面がありますね」
ビンゴ!私はあの話が大好きで、本が手垢で煤ける程に、繰り返し読んだもの。
寺の小僧が、和尚の鼻の脂を絞っては抜き取ってく場面に、毎度総毛立ったっけ。

・・・・・。

さてさて、これをご覧のご婦人の皆さま。貴女はソレがお好きでしょうか?(笑)


2001年11月17日(土) 淫猥な実

もう旬は終わったかしらと残念に思っていたのですが、
今だからこその、よく熟れたラ・フランスを頂きました。
ああ、嬉しい。


あなたは、この破廉恥なほどに官能的な果物をご存じですか?

なだらかな肩のラインとか、
ぽってりと膨らんだお尻の辺りとか、
持ったときに掌に張り付いてくるような弾力とか、
何より、鼻をくすぐる濃厚な香り、

全てにおいて、女性的な果物です。


その薄い皮にそっとナイフを当てながら、慎重に剥いていくと、
あくまでも白く、肌理細やかな果肉が姿を現します。
皮と肉の間から滴る、とろみを帯びた甘い汁に指先を汚しながら、
すっかりと着物を剥いでしまったら、どうぞそっと扱って。

ほんの僅か力が入っただけで、
指先が肉の中にめり込んでしまうほどの柔らかさ。


 『 アタシを食べて 』


甘い香りに誘われるまま、その肉を一片削り取って口に入れると、
むせるほどの香りが、口の中から鼻へ抜けて、
と同時に、舌と上顎の間で潰れるように溶けて、
惜しむ間もなく唾液にまみれて、喉の奥へ滑り込んでいくんです。

肉を呑み込んでしまったのに、その残り香は強烈に残って、
また、一ひらの肉を求めてしまいます。


私は、この果物が大好きです。

まるで甘い酒を飲んでいるみたく、
酔っぱらってしまうような錯覚さえ、感じます。
そして、その香りのせいなのか、
見た目や舌触りや濃厚な甘さのせいなのか、
酷く淫らな気持ちになってしまったりもします。

だから、もしも、私を口説きたいと思ったら、
一年のうちの、まさにこの時期に限るのだけど、
この素敵で淫猥な果物と、かりっとしたドライなお酒と、
よく発酵した青かびのチーズの、柔らかいのを用意してね。



そうそう、不思議なことに、よく熟れた洋梨は、
臭くてしょっぱくて、舌にぴりっと刺激のあるブルーチーズと
相性がいいんです・・・何だか、とても象徴的でしょ?

女のあそこに口を付けたことのあるあなたなら、
きっと分かっていただけると思うんだけど・・・。


2001年11月16日(金) 一枚の写真 #2

その写真の男に、特別な感情があったわけじゃない。むしろ、他の古馴染みのM魚よりは心理的に距離がある。会えば、挨拶をする程度。もちろん、集まりの中では親しく話も交わし、パーティーなどで「人間馬」としてフル装備した彼の姿に惚れ惚れともした。が、本人自身に情を寄せたり、「馬」になった彼に欲情したことはない。

それは、彼の方にしても同じというか、彼にとっての私は一層他人なはずだ。というのも、彼は、その辺を回遊している「S女と見れば、必ず奉る」ようなM魚ではなかったから。それは、彼が如何に真摯に夢を追っているかの表れでもあったろうか?つまり私は、彼に同志的感情を抱き、また先達としての敬意を感じているんだね。

だから、私は彼と話す時に敬語を使う。気の置けないM魚には、どんなに歳を喰ってようが、社会的な地位が高かろうが、ゾンザイな口を利いてるのにね(笑)だって、彼のSMに賭ける職人的な情熱と実績は、私如きには畏れ多い程なのよ。何より、普段の彼は(馬になっても尚)眼光鋭い、切れ者風の立派な紳士でいらっしゃる。

・・・・・。

7頁目の写真。そこに、あの紳士はいない。幅広の革の首輪にようよう頭を支えられて、床に座り込んだ男。首輪と揃いのリングが光る枷に縊られた足首を投げ出して、尻を着いている。折り曲げて、だらしなく左右にくつろげた太股。彼の脚は、こんなに細かったろうか。彼の美意識を映した鋲付の革のブリーフが、股間に張り付く。

ブリーフの端からほつれる陰毛。シェイプされながらも、歳のせいか薄く脂肪の乗る腹。男の血を塗りたくった女の指の跡が、生々しくスタンプされている。そして、乳首を貫通する大きな安全ピンから吊り下げられた分銅。その重みで、醜く歪む肉、くっきりと刻まれる皺。分銅同士を繋いだ鎖は、どんな責めを招いただろう?

男の体を彩るそれぞれのディテールは、いつかどこかで見たことのあるものばかりだ。けれど、軽々と女を乗せるべき強靱な肩は落ち、草原を駈ける馬さながらに颯爽と張られた胸は、今や小さな分銅ふたつに支配されて無惨を晒し。堂々とした体躯が見る影もなく朽ち果てた風情に、今更ながらに驚き、目を見張ってしまった。

・・・・・。

そして、見るほどに、腹を抉るような感情が喉元に渦巻き始め、私は戸惑った。ドウシテ?・・・自らに問う。どうして、これ程の衝撃を受けてしまうのか?感情が昂ぶる時特有の、舌の根が引きつるような感覚。嘔吐するような痙攣が、食道を駈け上がる。ドウシテ?・・・それは、再度自らに問うたのか、写真の男に問うたのか?

堪えきれなくなって、私は泣いた。泪が噴き出る。風邪気味の鼻が詰まって苦しい。息をすれば、それは嗚咽と変わる。ドウシテ?・・・泪に曇る瞳で、また被写体を見た。ドウシテ、そこまでするの?・・・眠れるように閉じた目蓋は、座禅する修行者のようだ。ドウシテ、そこまでされちゃうの?こんなに酷い目に遭ってまで。

アテのない「ドウシテ?」が、頭の中にこだまする。その問いに明確に答えられる者などいないから。ワカッテル。ドウシテモ、なんだよね。ドウシテダカ?なんだよね。男への共感は、即ち己への確認となる。進むべき道は歴然とあり、静かに諦めるしかないのだろう。同道する僅かな同志達に、想いが深くなる。感謝と畏敬。

・・・・・。

本を閉じ、私は慟哭した。体を屈め、祈りを捧げるが如く。異端の同胞のために。


2001年11月15日(木) 一枚の写真 #1

偶然出逢った何かに触発されて、脈絡なく激しい感動を覚えることがある。ふと目を上げて見てしまった、禍々しいほど赤く燃える夕焼けとか、不意に聞こえてきた音楽とか。何をかを伝えようと媒体に載る、絵や写真やテキストならば、尚更のこと。その場合、表現者の意図とずれたポイントに反応することもあるだろうね。

高校生の頃、ある写真を見た途端、号泣してしまったことがある。感受性の強い年頃だったせいだろうか?南米ペルーのチチカカ湖に雷が落ちる風景と、その周辺に住まう女達が色鮮やかな衣装を纏っているショット。特別に珍しい光景ではなかったはずだ。それまでに、テレビの紀行番組などで、何度か見たことはあったもの。

だから、それらに未知の衝撃を受けたのではない。訪れたこともない場所だから、、懐かしさに泪したワケでもない。何故、あれ程に心打たれたのか?咽せる程、声を上げて泣いてしまったのか?我ながらの反応に驚いてしまう。そして思う。もしかすると、前世のいつだかに、私は彼の地に居たのではないか?無意識の憧憬。

・・・・・。

今ここにある雑誌。スナイパーイブという。月刊SM総合誌の季刊増刊で、S女M男シーンに特化した内容。グラビアが秀逸だ。尤も、女が評価する写真は、男のズリネタとしては、イマイチなのかもしれないが(笑)読み物記事も、趣味の輩には堪らないラインナップ。先日記事した70才近い有名爺魚が紹介されたのも、当誌だ。

最新刊は、発刊2号。パラパラと頁を繰って、全体を眺める。イイネ。期待に背かぬ出来映えだ。今号も、古株のM魚が取材を受けたと聞き及んだので、そのコーナーにもざっと目を通す。背広姿の小さなカットが載っている。暫くお目に掛かってないが、元気そうで何よりだ。本文もきっと面白い筈。後でじっくり読もうっと。

頁を繰る指は、いよいよ巻末へ向かう・・・この手の雑誌は、巻頭グラビアもさりながら、巻末のソレの方が玄人受けするってか、私の趣味に合うのよね。レフをバリバリ浴びてポーズを取る女の子もイイけど、凝った照明でアーティスティックに撮影されたエロ写真は、何度見ても飽きないし、想像力をかき立てられて、淫らダワ。

・・・・・。

モノクロ頁をかっ飛ばし、グラビアの冒頭に辿り着くや、その構図がガツンと胸に来た。黒光りするエナメルのヒールのアップ。踵に装着された拍車が銀色に煌めく。しかし、その光彩のあちこちは紅い血に遮られ、猛々しい。鋭利に研がれた刃先が、男の肉を抉ったのだろう。ナンテそそる写真なんだ…!暫く、呆けてしまう。

その拍車の表紙は、次の展開を物語る。果たして、頁をめくると、やはりそこに「人間馬」が居た。先の古株M魚、その人だ。個人的な絡みはないものの、私も載せて貰った事がある。その時のスナップも残っている。他人が乗るのを間近でも見た。けれど、写真家が切り取った一瞬は、見事に彼の憧憬を出現させている。凄い。

彼の端正な顔が、目と口をくりぬいた全頭マスクに覆われて、一層の陰を醸す。ハミに割られた口元が痛々しい。観念したように伏せられた睫毛。肩に載る女の、ロングブーツに包まれた長い足が、彼の腰骨付近に無数の紅い筋を引く。あぶみに支えられ、踵の拍車を打ち付けたのだろう。後手に枷する男は、項垂れたままに。

7P立てのグラビア。フェティッシュなアプローチが続く。針で貫かれた乳首から一筋の鮮血が垂れる、胸部のアップ。その滴りを素手でまさぐり、更に腹になする女。その掌の皺に血が染み付き、赤く汚れている。素顔を曝さないように、男はずっと目を瞑っているが、しかし、彼の心の目は、血塗れの己に瞠目してるはずだ。

・・・・・。

そして、最終7頁目。私の目はそこに釘付けになり、心がカタカタと震え始めた。


2001年11月14日(水) ホームシック/ノスタルジー


あたしたちは。



**

 あぁ、今日だけは「あたしたち」と云おう。
 M魚達が、何かというと「私達」と言うのが嫌いな私だけれど。

  『 言い訳するのも、主張するのも構わないから、
    Mという同胞を十把一絡げにするのはやめろ。
    言い訳も、主張も、お前自身のことだ。「私は」と言え 』

 そう、再々に説教をたれてるのだけど。

**


あたしたちは。


どうしてこんなことをしてしまうのだろう?

首を絞め、肉を裂き、流れる血に唇を寄せ。
皮膚を焼き、骨が軋むほどに打ち据えて、抱く。
傷口をくじり、内臓の奥深くまで、指先は温みを求む。

それなのに、お前たちは、殉教者のように苦渋に随喜する。


なぜだ?
ヒトにあるまじき我と彼を疑い、解を探す。

快楽のため?
自己実現のため?
カタルシスを得るため?

あぁ、どれも当たってるようで、当たってない。
なぜなら、その程度を根拠にして、
これほど心が揺さぶられはしないから。泪しはしないから。



あたしたちは。


天上高く、あるいは地の底深く、共に暮らしていたろうか?
それとも、アンドロギュノスが如く、魂までもひとつにしていたか?

遠い記憶に結ばれて、肯きあう。
叶わぬ憧れを胸に抱き、肌をなする。



あたしたちは。


せめて、この地に隣り合う稀少な同胞(はらから)。
今宵、懐かしがって泣こう。月をみつめるかぐやのように。

神話にすら記されなかった故郷は、
けれど、確かなノスタルジーを呼び続けるから。


2001年11月12日(月) にわかM女


「針は大丈夫だよね・・・?」
カレったら、すっごく冷静にそう言うんです。
えぇーッ、うそーぉ、そんな、やだぁ・・・って、
アタシ、心の中で思ったんだけど、「ハイ」って言っちゃった。

だって、カレったら、それまでさんざんアタシの敏感なところを刺激して、
指で、感じるツボをグリグリ触って来るんです。
その度に、カラダに電気が走ってくみたいで、アタシ、
思わず声が出そうになっちゃったんだけど、でも隣の人に聞かれたら困るーッ
って思って、我慢してたんです。

あぁん、それ以上強くされたら声が出ちゃうぅーッって途端、
そんなこと言うんだもの、意地悪なんです、カレって。
で、最初の一本がチクッと来た時、カラダがビクンとして、
アタシ、ジュンと濡れちゃったんです・・・。


・・・・・。

ジュンと濡れちゃったのは嘘ですが(笑)、久しぶりに按摩屋さんに行ったらば、
針治療までされてしまったので、懐かしの宇野鴻一郎風に実況してみました(笑)
さて、如何だったでしょうか?んでも、自分で書いてもあまり面白くありません。
やっぱり、本物の迫力には叶わないデス。というか、私の語彙では無理があるナ。

元々耽美な官能小説の方が好みなんですが、あの独特な語り口には魅かれます。
彼の作特有の、女の子の一人称で語らるポルノってのが、嘘臭くてオモロイです。
だって、ホントの女はこんな風には言わないもの。殿方の願望が結ぶ女かしら・・・。
ま、エロ小説ってのは、リアリティよりも「ヌけるかどうか」が命ですもんね(笑)

とは言え、ひょっとしてホントにいるかもってな気にもさせられます。上手いッ。
こう、唇がぽってり厚くて、目が潤みがちで、舌っ足らずに喋る肉感的なオンナ。
いつも、結んだ唇の真ん中がぼかりと開いてて、男の淫らな想像を誘うようなね。
そそ、最近の若者は顎の筋力が落ちて、口開いてる娘が多いそう。ヤバイです(笑

・・・・・。


最近、そっち系のポルノを読む機会がないんですが、まだご活躍なんでしょうか?
以前読んだもので、今でも鮮明に憶えている彼の作があって、これは圧巻でした。
上記のような女(笑)が、おでん屋の親子(!)に犯されるって言うストーリー。
んもぅ、おでん屋ってトコがエグイでしょ?しかも、おでん鍋の前で犯されるの。

成り行き上、責め道具は竹輪や糸こんにゃくですよ。殆どチカラ技。笑えました。
んなワケないやいっってな現実感のなさと、女の子のリアルな告白のマッチング。
「カレったら、ぶっとい竹輪をアタシの中にグイグイ突っ込んで、覗くんですぅ〜」
あはは、うそ〜ん(笑)・・・でも、如何にも宇野コウ。これぞ、真骨頂であります。

・・・・・。

とまあ、週明けから、どうでもいい話を連ねてしまいましたね。いやはや・・・。


2001年11月10日(土) キショいイタ電

イタ電ネタは、何度か披露しているが、M魚が寄越すソレは奇天烈にして面白い。
んまぁ、面白がってばかりじゃなくて、キチンと迷惑なのだけど、笑えるんだナ。
例えばだ。「パンツナニイロ?」みたいな、汎用性のある(笑)エロ文句にしても、
ダミ声で「ウンコクワセロ〜」とか繰り返されると、コントみたいで噴き出すワ。

ま、そんな台詞を吐く輩は、何らかの関わりで私がS女だって認識してるワケで、
こっちとしても、不埒な遊びを企み、携帯とはいえIDを晒して来た覚悟はあるサ。
だから、この手のイタ電がかかるのは、しょうがないと諦めてるんだね。マジに。
この期に及んで、非常識ダッ、なんて怒るのも意味ないし、大抵は放ってあるの。

てのも、M魚の発情には薄情な程に波があって、それが過ぎれば止んじゃうのヨ。
偶々の幸いなんだろうけど、ストーカーみたく執拗なのには遭遇したことがない。
奴らにとって、私は単なる捌け口ダ。手近なS女に手当たり次第かけてんだろう。
そそ、SMクラブの受付なんて、月一でイタ電ラッシュがあると言う。生理かい(笑

・・・・・。

その「ウンコクワセロ」野郎も、定期的にコールしてきた。毎度同じ調子ながら。
本来の声を誤魔化す為か、受話口の至近でがなるせいで、届く音声は割れ放題。
鬱陶しいやら、うんざりするやらなのだが、そのレトロなやり口が妙に可笑しい。
暇つぶしに耳を傾けたりもしたが、まるで壊れたレコードだ。ナントカシロヨ(笑

ある日、奴がヒトの言葉を喋り始めたことがある。ま、偶にあるパターンだけど。
こちらが聞き耳立ててるのを察知したのかもしれない。心境の変化もあったかな。
或いは、私の方がふとした悪戯心から、まともに応答したのがきっかけだったか。
喰わせてやってもいいけど、キミが誰だかワカンナイと無理でしょう?とか(笑)

ま、その辺は定かでないが、つまり、奴は私のことを知ってると言い及んだのだ。
あはは、イタ電男の常套句ダ。慌てる必要はない。「そう?どこで知り合った?」
ここで奴が電話を切れば、それはそれでいいし、返答に窮してしまうのも愉快だ。
勿論、面識ある奴がゲロするのも面白い。さぁ、どうでる?既に遊びモード突入。

・・・・・。

しかし、奴が「**で」と返事をするや、遊び気分はナリを顰めた。ナンダッテ?
コイツ、何をどこまで知ってる?止せばいいのに、追求したくなる。「いつの事?」
「夏の**のパーティーで」・・・ゲ、奴の発言が事実に近づいてくる。「それで?」
「遊んでもらって、この番号も教えてもらって」知ってる奴か?!「私の名前は?」

「青葉さん」ひゃー、ワカッテんじゃん。「で、青葉さんはキミに何をしたって?」
「**が終わった後、僕も含めて何人かでどっかのマンションに連れてかれて…」
ここまで聞いて、途端に冷静になった。だって、奴が語る「青葉」は私じゃない(笑)
「女の人がもうひとり居て、一緒に苛めてもらいました」ふぅむ、手の込んだ話だ。

「で、そん時に、アタシがキミに電話番号教えたってのね?」「ハイ、ソウデス」
「じゃ、キミはアタシの姿を見れば、アタシだってわかるのね?」「憶えてマス」
「あぁ、忘れてて悪かったワ。じゃ、明日逢いましょう。都合のいい時、連絡して」
「ゴメン。アタシ、キミの名前すら思い出せない。も一度教えて」と、電話が切れた。

・・・・・。

このやり取りで、奴の気は晴れたろうか?結局、翌日の電話はなかったけれど(笑
ただ、奴の告白が、奴にとっては真実であったと想像すると、気持ちの悪い話だ。
私の名を騙り、なりすまして行為して、ご丁寧に私のデータを告げる女がいたら!
そうそうナイ話とは思うけど、可能性はあるのよね。ま、これも自業自得かな(笑


2001年11月09日(金) 逃げた魚の置き土産

そのfemdomパーティーは、年に二度開催される、比較的大きなイベントだったが、
回を重ね、集う女の面子もほぼ見知った顔ばかりとなり、妙に狎れてしまってた。
ナンというか、内輪ノリの安心感で落ち着けるのだが、こう、萌えないのよね(笑
萌える対象たるM魚も馴染みが大半で、和気藹々となる。ま、それもいんだけど。

その夜も、近所にお茶しに来たような気の抜け方で、会場のソファに身を沈めた。
まだ、人もそう沢山集まってなくて、顔を出した馴染みと挨拶程度を交わしあう。
敷き詰められた絨毯の片隅に、宴の始まりを待つM魚達がひっそりと蹲っている。
奴らの内心は、やがて展開されるエゲツナイ行為を想って、浮ついてるんだろね。

そんな風にぼんやりとしていると、M魚のひとりが私の足許ににじり寄ってきた。
ナンダ、ナンダ、鬱陶しいなぁ。ガッツクナ。うんざりしながら、奴を見下ろす。
っと、奴が口を開く。「オヒサシブリデゴザイマス」へ?いきなりな展開に驚く。
「ご記憶でしょうか?以前に、○○でお目に掛かりました」思わず、奴を見つめる。

・・・・・。

実は、こうした集まりで、突然に挨拶されるのは珍しくない。またかよ?と思う。
とは言え、声掛けられればドキとするし、慌てて記憶を探る。古傷もあるしサ(笑
ま、幸か不幸か、単なる思い込みか(笑、私は記憶力のイイ方だ。大抵思い出す。
記憶に辿り着けば、再会したい奴もしたくない奴もいるが、それもご縁って事ね。

たまに、どう記憶を紐解いても、まるで思い出せない奴がいる。ホントに会った?
失礼承知で敢えて訊けば「ええ、**でお見かけしました」って、ナンダソリャ?
キミは私を見かけたかもしれないが、私がキミを認識してるとは限らないだろう?
却って鬱々となるよ。だから、お久しぶりと言われると、つい警戒しちゃうのダ。

・・・・・。

さて、奴の口上に私は即座に反応出来ず、逆に責め立てるように眉根を寄せた。
「××様のお供で伺った◎◎でございます」えーッ、あの時の?思わず声が出る。
カウンターの中で果物剥いてた子?「ハイ」相変わらず、行儀のいい返事だこと!
随分前の話だわよ?「ハイ。二年は前のことでございます」よく憶えてたわねぇ。

逃げた魚の元主の××を捜しに○○に出向いた時、偶々行き会っただけなのに。
正確には、二年半は経つかしら?その間、もちろん、彼と顔を合わすはずもない。
「××さんトコには、まだ居るの?」「いえ、あの後暫くしてお暇頂きました…」
あぁそれで、コンナ場にも顔出しが出来るワケだ。「じゃ、今はフリーでいるの?」

「ハイ…」はにかむ様に彼が答えた瞬間から、私のゲンキンな触手が蠢き始めた。
よく見れば、綺麗な顔立ちしてるのね。体つきも私好みだわ。眺め回してしまう。
下司な欲情がくすぶるのを、腹の底で感じる。瞳に力を入れそうになる。駄目ダ。
自分を諫めながら、私は漸く体面を保って微笑む。今夜は楽しんでらっしゃいネ。

・・・・・。

数日後、私は彼を食事に誘った。ほんの少しだけ年下らしい。若く見えるのにね。
日を置いて、また呼び出す。酒を飲み、いい気分になり、雑踏の中抱きすくめた。
抗わず、なすがままに接吻に応える彼に欲情した。そろそろカナとプランが走る。
ただ不意に、また××ちゃんのお古?と、笑い出したいような気分になったけど。


でも、××ちゃん。貴女が魅力的だってのワカル気がする。皆いい子達ね。うふ♪


2001年11月08日(木) 逃げた魚に導かれ #3

「××様は、とても厳しい方なんです」逃げた魚の△△は、崇める様に言ったっけ。
何人もの奴隷を部屋に通わせては使い立て、また戯れに奴隷同士をつがわせる。
従わぬ者は、容赦なく鞭で打ち据えて、意に背く者は、躊躇わず放逐すると言う。
妄想小説まんまジャンと感心するも、正直なトコ、びびったサ。どんな女だよぅ?

その彼女が、私の背後、ボックス席に陣取って、厳しい声でお供を叱責している。
「挨拶くらい、まともに出来ないのッ?」従者は慌てて土下座して、頭を垂れた。
が、そのけたたましさも、彼女の溢れる若さを認めるや、ただ微笑ましい風景だ。
まさしく、百聞は一見に如かず。思い込みにケリをつけ、また少し緊張が解けた。

やがて、何事もなかったかの如く、彼女は、ママと親しげにお喋りに興じ始めた。
彼女に叱りとばされた奴隷は、カウンター内へ移り、手慣れた風に仕事にかかる。
カウンターに独り残された私は、頃合いを待ちながら、彼女の従者に声を掛けた。
「キミも何人かのうちのひとり?」「ハイ」行儀良く返事をする彼は、幸せそうだ。

・・・・・。

さて、いよいよ、彼女に話を切り出す時がやって来た。ママが席を外したらしい。
まだ、他の客は来ない。今を逃すと後がない。小さく勇気を奮い、椅子を降りる。
背を屈めて、彼女に会釈。さぁ、言わねば!「あの…△△クンってご存じですか?」
初対面の女の、思いがけない振る舞いに驚いたのだろう。彼女も少しく身構えた。

しかし、この場に居合わせるシンパシーは幸いだ。直ちに彼女は事態を承知する。
大人らしい仕草で、目の前のソファを勧めてくれた。うーん、度胸のある娘ダワ。
私は、礼に応えて膝を揃えて座る。お供連れの彼女は、足を組んだまま。可愛い。
でも、その瞳は誠意を映し、私の話を聞こうとしてくれてる。あぁ、いい娘ダワ。

彼女の態度に励まされて、私は、話すべき事、訊くべき事を、つらつら明かした。
ただの威勢のいいおねえちゃんと見える彼女は、しかし、最後まで黙って聞いた。
そして、組んだ足をほどき、困ったように笑う。「あぁ、ヤラレちゃいましたか…」
「でも、あの子はそういう子なんです。諦めて下さい。アタシも諦めてるんです…」

彼女の証言は、私の気持ちに無理なく納得をもたらした。「約束を破る子なんです」
優れた素養を持ちながら、この悪癖を改められない。彼女からも、逃げたらしい。
「もしも連絡あったら、教えて下さい」彼女は名刺を差し出しながら、頭を下げる。
私も突然の非礼を詫びつつ、名刺を渡す。彼女に会えてヨカッタ。心から思った。

・・・・・。

彼女を祝うゲスト達が次々に到着し始め、店内が、むせ返る程に華やいでいく。
さっきまで、主賓と見ず知らずだった私も末席に留まる。賑やかさに気が晴れる。
昨日までの鬱屈から解放されて、弾けてしまった。勢いで、花を届けさせたりサ。
弾けついでに、支払いを忘れて店を後にした・・・後で気付いて大汗かいたよ(笑)

で、この未払いを届ける為に再度訪れて、以降、私はその店の常連客となった。

・・・・・。

そうそう、この時の出来事が、更に2年程後、思いがけない邂逅を生んだのよ。
その顛末は、また今度・・・うふふ、逃げた魚は、いい置き土産をしたものネ(笑)


2001年11月07日(水) 逃げた魚に導かれ #2

その時点で、私が彼の何を知り得てたのか?まやかしの蜜月は、たった二日間。
でも、テレクラで交わした話の中で、彼は事細かに先の主との生活を語ったのだ。
自分がどこに住まい、主の部屋まで、どの電車で、どれ位かけて、どう通ったか。
主の元に、どれ程の奴隷が囲われてたか。自分はどういうふうに扱われてたか。

主様という呼称は、次第に彼女固有の名前に変わる。××様。記憶に刻まれた。
××様が、いかに素晴らしい女王様であるか。未練たらしい口振りで、披露する。
○○ってパブ、ご存じですか?ああ、有名なトコね。そこでも有名な方ナンデス。
主に心底傾倒し、また可愛がられてもいたのだろう。その片鱗が話の端々に覗く。

・・・・・。

当日、○○の開店時刻から十分程経過した頃合いを見計らい、扉の前に立った。
何の変哲もない、ビルの一角にある、街場のスナック。○○と文字が灯る看板。
扉にかかる「会員制」の札に、一瞬怯んだ。人を探しに来たのヨ。自らを励ます。
でも怖い。恐ろしく動悸してる。女友達も来た事あるって。再度、己を鼓舞する。

意を決し、スナック特有の重い扉を引いた。カランと呼び鈴が鳴り、身がすくむ。
果たして、目の前に拡がったのは、清潔で明るい室内灯に照らされた空間だった。
どこにでもあるようなカウンターに、高いスツールが幾つか。ボックス席が数席。
カウンター内の男が、目線を上げて、イラッシャイマセと微笑む。普通過ぎない?

と、スツールに掛けた小柄な女が、こちらを睨め付ける様に見た時、ハッとした。
コノ人ガ、ママダワ・・・居心地の悪い、妙な威圧感に気圧されながら、確信した。
一呼吸置いてから、その女が口を開いた。イラッシャイ。初見の客に怪訝そうだ。
私も、緊張を覚られないように、鉄壁の笑顔で初見の挨拶を返す。冷や汗が出る。

・・・・・。

狙い通り、私の他に客はいない。飲み物をもらい、煙草の許可を得て、一息つく。
ママが、私の右隣に座る。店の色合いにふさわしく、静かで、笑みの少ない人だ。
私は丁寧に、けれど慇懃過ぎないように言葉を選びつつ、ここへ来た理由を話す。
決して親しみ深くはないが、礼を損なうことなく、ママは、私の話に耳を傾けた。

が、その冷徹な面持ちに少なからず不安が湧き、後悔が始まり、帰りたくなった。
しかも、客商売の慎重さで、私の切り札たる××だの△△だのの名には無反応。
あぁ、ここに来たのは失敗だったかしら?と悔やみつつ、ひとまずの話を終えた。
沈黙が訪れる。酒で口を湿し、煙草で間を繋ぐ。店内を、控え目に見渡してみる。

スナックにしては光量が多い。と、片隅に並べられたM専誌に気付く。ナルホド。
壁には、それらしい鞭や縄が掛けてある。キャッツアイや蝋燭もインテリアだね。
結構頻々と電話が鳴る。男が受け、取り次いだ途端、ママが甲高い声を上げる。
また一転、低い声で何やら男に指図する。この男、ママの奴隷か?妄想は楽し。

・・・・・。

「この後、××様のお誕生日会なんですよ…」唐突にママが言い、張り紙を指す。
そこには、逃げた魚が再々口にした、女の名が書かれていた。なんてタイミング!
「もうじきいらっしゃると思いますよ…」ママが微笑んだような気がした。ワォ!
嬉しい緊張で、尻が落ち着かない。今日来てヨカッタ。自然笑みが零れてしまう。

やがて、××様が奴隷を連れてやって来た。快活な声で喋る。歳若い女。そうか。
ママが仲介して、初対面の挨拶を交わす。笑顔が、普通の人っぽいナ。安心した。
一旦、実物を目にするだけで、もう段違いの安堵が訪れる。今日の偶然に感謝だ。
・・・それでも、まだ少し緊張が残るのは、この後のヤマが控えているからだけど。


2001年11月06日(火) 逃げた魚に導かれ #1

一頃、再々にSMパブに通った。私が行くんだから、当然M魚ばかりが集うトコ。
世の習いで、女はチャージが安いのよね(笑)だから、気軽に通えたんだけどサ。
別に、獲物を漁りに行ってた訳じゃない。femdomな世界を味わってた感じかなぁ。
そりゃあ、偶には美味しい魚にもありついたワヨ。今は昔の想い出だけどね(笑)

初めは一軒の店に伺ってるだけだったけど、そっから派生して色んな所へ行った。
やっぱ、通ってると馴染みが出来て、話の流れで付き合いが生まれてって次第。
私の昔話に奇天烈な色合いを添えるのが、この時に見聞した話や人々や経験だ。
とにかく楽しかったなぁ。夢中になったヨ。週の半分位はうろついてたわね(笑)

それ程ハマってた私だけど、最初の一軒に行くまでは、殆ど興味はなかったのヨ。
M魚が単独で遊びに行くトコだって思ってた。SMクラブや風俗と同じ様な認識で。
だから、夫に「一度行ってみれば」と勧められても、全然行く気がしなかったのね。
けれど、ある日、私はその店に独りで出向いた。てのも、行く必要があったんだ。

・・・・・。

その十日程前、私はSMテレクラで、若いM魚と会話した。礼儀正しくて好感触。
聞けば、それまで仕えていた女に放逐されて、新しい主を探していると言う(!)
コリャ優良物件ダッ!即会わねばッ!閃きと同時に、迷わず翌日のアポを取る。
こういう良質の出物は、早いモン勝ちなのだ。上機嫌で、色んな話を交わしたワ。

さて、翌日。悪天候をおして出向く。携帯の番号は教えてあったが、不安が募る。
と、ちゃんとかかってきた。で、対面を果たす。好みのタイプ。体に震えがきた。
ひとまず、「行きつけ」のサロンでお茶を飲む。この辺り、既にリキ入りまくりだ。
店を出て、タクシーを止める。当然、彼を奥に載せる。主導権は私にある。YES!

「円山町でいい?」も一度、確認。ハイ…と答える彼。可愛くて、ニヤけてしまう。
車を降りて、コンビニ寄って、お菓子を買って、ラブホに入って、数時間が経過。
菓子の甘い香りにまみれて、彼の端正な顔が歪み、体がしなる。滴るような色気。
私は、一遍に惚れてしまった。改めて、今後を確認すると、彼ははっきり頷いた。

ヨロシクオネガイシマス。黒目がちの瞳を潤ませて、そう言いながら頭を垂れる。
もう、私としては小躍りしたい位に嬉しくて、彼の手を引き、料理屋の門を潜る。
何デモ召し上がれ・・・気分は殆どオヤヂだ。可愛くて堪らない。ずっと見てたい。
贅沢な時間は瞬く間に過ぎ、彼は行儀良く礼を述べ、また電話しますと約束した。

・・・・・。

その翌日、私は彼の電話を心待ちにした。トイレにも携帯持って入る有り様ダ(笑
が、電話は鳴らない。その日中にはかかると踏んでたのにサ。明日に希望を繋ぐ。
しかし、その翌日も、その翌日もかかってこない。心許ない毎日が重なっていく。
待ち続けて一週間が過ぎる頃には、私は、待つのにほとほと疲れてしまっていた。

疲れると同時に、漸く「逃げられた」ことに気付く。心底がっかりした。脱力した。
折角見つけた宝物を、一夜のうちになくした気分だ。なんでぇ?とアテなく疑う。
あれしきの関わりだから、悲しいってんじゃない。納得出来ない。諦めきれない。
そのせいで落ち着かない。逃げられたんなら、それでいい。ただ、納得したいヨ。

気持ちの着地点を求めて、考えを巡らす。どうにか、彼にコンタクト出来ないか?
会話を遡って検証する。が、彼が明かした個人的な情報は、アテにならないし…。
っと、そこで一点だけ、確実な固有名詞に思い当たった。○○というSMパブだ。
彼を手放した主が、そこに出入りしてると言ってたナ。彼女の名前の記憶もある。

・・・・・。

その彼女に会おう。そのために○○へ行こう。身勝手にも、私は瞬時に決意した。


2001年11月05日(月) 古傷が疼く・・・

なんて掲題すると、メランコリックなこの季節、失いし恋でも回想してる風だが、
実のところ、マジに、物理的に、古傷が痛む。うはー、婆ムサくってご免遊ばせ。
ここ最近、急に冷えが入ったからなのか、体調が優れず寝込んだ後遺症なのか、
昔傷めた所に、痛みのような痺れのような、鬱陶しい状態が続いている。うーん。

骨折した事ある人が、寒くなると辛くてね…なんて仰るのは、こんな感じかしら。
幸い、私は骨を折った経験はない。今、疼いているのは、単にスジを違えた所だ。
でも、現在のこの嫌な感覚は、事故を招いた、忌まわしい瞬間の記憶を蘇らせる。
とすれば、不幸にして、大きな事故に遭われた方々は如何ばかりかと思う。合掌。

さて、話は再度、私事となるが。あの忌むべき瞬間から、もう4年は経つと思う。
が、今回のように、ジクジクと疼くのは初めてなので、いよいよ意識してしまう。
普段は思い出しもしないけど、すっかり忘れ去ることはないだろうな。あの瞬間。
今疼いてる太股のトコで、ボンッと音がしたんだ。楽器の弦が切れたみたいに!!

・・・・・。

何故そんな事になったか?記事のネタにする位だから、もうお察しのことだろう。
場所はラブホ。私は下着姿でベッドに座り、裸の男の背を股座に抱きかかえてた。
私の膝の中で、男は、己のちんこを必死に擦りたて、懸命に達しようとしていた。
私の温みと鼓動を背に感じ、私の息吹と声を耳に聞きながら、男は射精に挑んだ。

男女別なく、オーガズムに達しようとする時は息むものだ。男も何度もそうした。
その度に、男の荷重を受けた。比較的華奢な男だったが、のしかかる重さは凄い。
咄嗟に筋肉が強張り、その重みに耐える。自分の体が軋むのが判る。相当辛い。
壁際に背をつけずに体勢をとった事を後悔した。でも、もう動けない。覚悟する。

幾度目かに彼が息んだ瞬間、腿にその鈍い音が鳴り、激痛が走った。怖かった。
彼を抱きながら、己の体に起こった変異に戸惑い、逃げ出したい程不安になった。
でも、今、彼を見放す訳にはいかない。使命感だけで抱く。彼が、再びのけぞる。
臀部から太股にかけて、既に感覚がない。早くイッテくれと祈るような気持ち・・・。

・・・・・。

この時、私達が一体何を成し遂げようとしていたのか?理解に難いかもしれない。
目指したのは、彼が、他者の居る空間で射精すること。彼はその経験がなかった。

強迫神経症気味の彼は、有り体に潔癖症で、他者と親密に関わる事が出来ない。
つまり、女の粘膜そのものを嫌悪し、いわんや他者と交わる性行為も不能なのだ。
ただ、まんこは嫌いでも、健康な性欲はある。異性愛を求める健全な精神もある。
結果、性的に他者と繋がれない自分に不全感を覚えて、長く苦しんできたんだね。

だから、彼のエポックたる「性的な場面に他者が介在し得る経験」が必要だった。
もちろん、その他者が私である必要はないのだけど(笑)一期一会の腹を決めた。
ドクターショッピングの履歴を自慢げに語る彼に、お節介ながら、同情したんだ。
少なくとも、私との一期が、彼の失望を重ねないように、大切にしたいと思った。

・・・・・。

最終的に所期の目的は果たされ、そこで初めて彼の笑顔を見た。心底安堵した。
彼を抱え続けて、2時間余りが経過していた。よく頑張ったワネと、彼を労った。
自己満足に過ぎないのだろうが、明るさが彼に宿る様子に、何より慰められた。
そして、私達は別々の帰途につき、つまり、その後再び対面することはなかった。

・・・・・。

この翌日から約半年、私は太股の痺れに悩まされることになる。これが古傷(苦笑
結局、自業自得の傷なんだね、相も変わらず(笑)仕方ナイヤと撫でるだけサ・・・


2001年11月02日(金) 死を巡りて想ふ

私には夢がある。夢というより野望か?(笑)人様には笑われそうなモノだけど。
それは、もう少し年取ったら、ハタチ位のM魚コマして、若紫よろしく育て上げ、
私が老いて不自由な身となれば介護させ、やがて最期を看取って貰うという夢だ。
その時、夫や身近な奴隷が健在ならば、どうか仲良く手分けして面倒みて欲しい。

仔を持たないから、そんなクダラナイこと夢想するんダと呆れられそうだナァ(笑
でもま、死ぬときは独りと覚悟して生きているのだもの、夢見る位イイじゃんね。
運悪く、相手に恵まれなかったとしても、私は死ぬまで欲深く、足掻き続けたい。
脳天気に宛ない希望を繋ぎ、己の死後に墓守する奴隷の幻に胸ときめかせたい。

・・・・・。

「死」は、ロマンチックな恋愛のモチーフだ。死しても変わらぬ愛の存在とか…。
ある意味、ピュアな恋愛の側面を持つDS関係にも、死を見つめるロマンがある。
いや、並の(?)恋愛以上かも知れない。死の絶対性は、DS界の住人の憧れだ。
死ぬの死なないの、殺すの殺さないのと再々話題する。ま、これが既に背徳だワ。

古い奴隷とは、「どうしたら首尾良く殺し(され)仰せるか?」についてよく話す。
だって奴は、私に殺されることが夢なのだから。夢物語を交わすのは気持ちいい。
それが実際の行為を盛り上げ、また行為の記憶が、仮そめの具体性を夢に映す。
「あと一息力を入れて下されば、逝きましたね」行為を回想する奴は幸せそうだ。

・・・・・。

私が知る古参のS女は、壮絶な昔話を笑顔で語る。その真偽の程は判らないが。
少女歌劇で活躍した過去をもつ彼女は、請われて、幾人もの男に君臨し続けた。
「警察にも、何度か行ったワ」男の何人かが死んだ折。「でも、掴まってないわヨ」
彼女と死んだ男が交わしたであろう、純度の高い行為。想像すると鳥肌がたつ。

「昔の奥方がたってのは、出来た方が多くてね。アタシんとこに礼に来たモンよ」
男との間柄がどうあろうと、彼女は日影の身たる妾だ。弔いの席には出られない。
それで、本妻の方から出向いたというのは嘘臭いけど、甘やかなファンタジーだ。
「私には適わない夫の世話を、長々して下すって…」と頭を下げるらしい。素敵。

・・・・・。

以前、あるエピソードに感動した。実話だったか、フィクションだったかは不明。
ある女に仕えていた老齢の男が死ぬ。男の死を知った女は、葬儀に駆けつける。
親族はもとより、公私に亘る関係者が集う大きな式は、男の生前の地位を表す。
その誰もを、女は知らない。その誰もが、女を知らない。けれど、女は参列する。

故人との由縁わからぬ女の参列に、人々はざわめき、冷ややかな目で凝視する。
拒絶の視線を浴びながら、女は遺影の前に立ちつくす。次第に怒りが女に満ちる。
誰が先に死んでイイって言ったのヨッ・・・焼香を掴み、遺影に向けて投げつける。
そして、彼女は微笑む。お前にはコンナ送り方がふさわしい・・・。頬に涙が伝う。

・・・・・。

今現在の予測として、私は夫より長生き出来そうにないなぁと思っているのだが、
もし、夫を送る側になったら、夫の棺に何を入れてあげようかなと甘く空想する。
で、コレダケハってのは決めてるんだ。うふふ。(それは当然、契りの首輪だよ)
ま、その為には、長生きよりもまず、夫との縁をなくさないようにしなくちゃね。


2001年11月01日(木) マゾは灰になるまで

古い奴隷とは5年程の付き合いになるのだが、私は彼の実年齢を知らない(!)
というか、まともなプロフィールを知らないと言った方が正しいかもしれない。
いや、別に戒律主義的DSみたく、奴隷とは余計な会話はしないってんじゃない。
どっちかてと、無駄に喋ってばかり。それが却って、この状況を招いてるかもね。

ハッキリ言って、奴は老人(!)だ。話のネタは、病気自慢と最近誰が死んだか?
死人の話が出る度に、お前は幾つまで生きるつもり?と訊いてみる。お約束だ(笑
すると、必ず「120才の予定ですぅ」と答える。あぁあぁ、マジ、生きそうだな。
ついでに、一体幾つにナッタ?と訊く。「忘れましたぁ」とはぐらかされる。フンッ

時々「もう死んでもいんです…」とほざく。爺ぃになっても、面倒はあるらしい。
死にたいんなら勝手に死んでもいいけど、アタシが殺してやる約束はどうなるよ?
と、瞬間、奴は顔を輝かせて「あぁ、無駄死には嫌ですぅ」と甘えた声で答える。
アタシが殺すまで生きてろ。本心から思う。てな訳で、奴は暫く生きる予定だ(笑

・・・・・。

巷を回遊するM魚達の中にも、奴なみの老体はうようよ居る。イイ余生だよなぁ。
最近、とあるムックに紹介された老魚は、斯界で有名な人物だ。私も面識がある。
紹介記事によると、彼は66才らしい。うーむ、そんなに歳喰ってたのか。感心。
想像してたけど、字面にすると迫力あるな。見た目は、詐欺まがいに若いんだぜ。

けど、私は彼が泣き言垂れるのを聞いたことがある。何かの余興で責められた折。
「若い頃はヨカッタけど、今じゃ、熱いモノは熱いし、痛いモノは痛いですぅ…」
思わず噴き出してしまったけど、そんなもんなのかな?それでも彼は頑張るのだ。
「二年後に引退予定です…」と再々聞くけど、もう何年も聞いてるぞ、その台詞。

彼と同輩の別の爺魚が嘆く。「OB会とか行くのヤなんですよ、ボク」どうして?
「趣味の話してても、詩吟だゲートボールだ、若さがナイ」若さって・・・キミ(笑)
「その点、ボクが若さを保ってられるのは、女王様がたとご一緒してるからで…」
色の海に泳ぐのが、彼のアイデンティティを支えているらしい。余生に幸いあれ。

・・・・・。

とあるパーティで、お馴染み爺魚と初顔の爺魚が、何やら親密に話し込んでいた。
仲良くナンのお話かしら?挨拶程度に声を掛けると、お馴染みがズィと進み出た。
「こちら、特攻に行ってらしたんですッ」興奮に頬赤らめ、息を弾ませ言い募る。
「凄いンですッ」徴兵にもれて出征しなかった奴にとっては、憧れの的らしい(笑

初顔の方が「いえ、結局帰ってきたんですから」と、照れ臭そうに言う。面白い。
どっちも死なずに、マゾやれてヨカッタじゃん?と言えば、互いに肯きあう二人。
「でも、こちらさんの方がマゾとしては凄いです」と初顔が、羨ましそうに言う。
お馴染みは、セビアンビデオに出たのが誇りで、それを折々に吹聴してるからサ。

ウンウン、どっちも凄いねぇ・・・幼稚園の先生みたいな言葉を掛けて、鞭を取る。
老体の乾いた肌にも優しい(笑)ヘロヘロのバラ。どっちが凄いか調べてやるよぅ。
っと、お馴染みが背を向ける。普段は鞭なんてしないのに。驚いた。大丈夫かい?
ま、奴の気持ちもワカル。派手な音が出るように、跳ね鞭を10打程打ってやる。

一旦手を休め、終いにするつもりで、様子を訊く。久しぶりだと、堪えるでしょ?
すると、奴は上目遣いに願い出る。「歳の数だけ頂けますか?」ナニイッテルノ?
冗談かと思って、奴の目を見たら本気だ。あと62打あるヨ。ホントにイケルの?
「お願いします」と奴は姿勢を正す。健気な奴にほだされて、私は奴を打ち据えた。

・・・・・。

なぜか、私は爺魚に好かれるらしく(笑)ネタは数多あるも、本日はココまで。


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