雑感
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2007年12月30日(日) エニグマ変奏曲

日常の行動パターンは日本にいても、こっちにいてもあまり
変わり映えしないみたいだ。本屋の代わりにCDを漁ってみただけ。

エルガーコーナーで3枚組ベストとヴィオリン協奏曲を買った。
ヴィオリン協奏曲のソリストはナイジェル・ケネディ、ロンドン
フィルハーモニックの演奏。3枚組には、デュ・プレのチェロ
協奏曲も入っていた。シカゴシンフォニーで指揮は夫君のバレンボイム。
演奏はバルビローリ指揮の方がよかったな。

「エニグマ変奏曲」よくフィギュアスケートの国際大会で聴く
メロディ。エニグマってなぞなぞの意。14の変奏曲のなかに
エルガーの友人を明かすことと、隠された主題を見つけるのが
作曲者から出された課題だって。ちなみに第一変奏曲は愛妻のことを
思って作ったそう。

ランチ時に街にいたので、カフェでランチかコーヒーにケーキをと
何軒かのぞいてみたが、どこもいっぱいで一人客はお呼びでなさそう。
バーゲンも始まっていたのでよけいに混んでいる。せっかく本も持参
だしと思ってスタバやはてはバーガーキングまで立ち寄ったけれど
今日は私を寄せ付けてくれない。
あまりの寒さで指先も靴の中も凍りそうな感じだったがドーナッツを
2個買って帰宅。

今回はクリスマスもお正月も、おいしいものを食べものには
ありつけないみたいだ。
良質の音楽と書物はたっぷりなんだけど。


2007年12月29日(土) 寄付

小銭がたまると、赤十字に寄付してきたが、今日郵送で2008年
会員カードが送られてきた。
寄付とは別に年会費を払うと公的機関の主催する講座が割引
になる他、救急車の手配も10%引きになると知ってちょっと
和んだ。
そのほか、無料の健康相談や諸々の相談が受けられるらしい。

いざというときは、お世話になる可能性大だからこのさい
会費と寄付を奮発しておこうと思う。
食事の宅配サービスはまだまだ必要ないけれどね(笑)

世の中、貧しい人が増える傾向にあるようで、カソリックの
組織カリタスや赤十字に寄付しても全然足りないようだ。
寄付先はこの二つにしぼっているものの、マイナス3度、4度
と寒さ厳しい街中で物乞いをしている人を見ると胸がきゅっと
痛くなる。
白い息を自分が吐きながら、暖かな部屋に戻ろうと家路を急いで
いる一方で、今夜はどこで寒さをしのぐのか物を乞うている人々
を見ると、もう少し何かしてあげられたらと思う。
他者に直接現金を手渡すのはどうも気恥ずかしくて、迷っている
うちに通り過ぎてしまうのだけど、今度は勇気を出して手渡そう
かしら。


2007年12月25日(火) エルガーチェロ協奏曲

スコアを自宅に持ち帰ったので、CDを聴きながら眺めていた。
最近の好みはバイオリンソナタとこのチェロコンツェルト。
出だしから主役の楽器が主題を奏でて、出し惜しみしないところ
が気に入ってるのかな。助走なしに始まるところが潔いというか・・

チェロの出だしは4つの和音が3回響く。キーボードで左手で4つの
和音を押さえようとしたが全然距離が足りない(笑)
響きはキーボードでも物悲しくて、これからどんなかわいそうな物語
が始まるのかと緊張してしまう。
第四楽章まで眺めてみたが、チェロの奏音域は広いし、高オクターブでの
演奏が半分以上。ト音、へ音、ハ音記号が入れ替わり立代わり
出てくるので演奏するのも忙しいんではないかな。
演奏もかなり難しそうだ。こんどチェロおじさんに聞いてみよう。
中音域でのフルートのパートもあるので、そのうちチャレンジしてみよう
かな。


2007年12月16日(日) 父の時計

「これ持っとき。」と父が私の手に渡したのはピカピカ光る
ロレックスだった。
盤面がゴールドで10個のダイヤモンドがちりばめてある。

趣味らしい趣味をまるでもたない父だが、こつこつと貯めて
腕時計を集めていると知ったのはそんなに昔ではない。
コルムやロレックスを母に内緒で手に入れては、こっそり私に
見せてくれた。実際に使うわけではないのに、ぜんまいはきっちり
巻かれ、いつ取り出してもチクタクチクタクとこれこそが
ほんとの時計だと言わんばかりにしっかりと動いていた。

父が仕事から引退し、時計を必要としない生活に入った頃、
最初のロレックスは弟に、プラチナの楚々としたコルムは母の
手に渡った。
大事にしてきた時計を私に託したのは、この時計を
手に入れた時とは資産状態も転げるように悪化してもう子供に家以外
は何も残してあげられないと悟ったからだろうか。
父の時計に対する思いがこもった時計を、ほんとにいいのかなと
思いつつもしっかり受け取った。


高級品にはまるで縁のない娘の手に渡った時計は、以前のように
大切に扱われることもなく新たな持ち主の手首で荒っぽく仕事
をさせられている。
机のあちこちでぶつかるので、もう少しお手柔らかに
扱ってくださいと持ち主に小言を言っているようにも聞こえる。

腕時計はマラソンレース以外では身につけないのが普通なのに
日常生活に入り込んできた、このすました時計を眺めては
つかみどころのない、今ここを流れている時間について思いを
巡らしている。


2007年12月15日(土) フィルハーモニカー

ウィーンフィルの定演のチケットが手に入った。
楽団が独自のチケットオフィスを作ったおかげで今まで面倒だった
入手も簡単になった。
売り出し日の翌日に気がついてだめもとで買いにいったら
幸い一番安いオルガン横の席が手に入った。13ユーロ。

サイモン・ラトル指揮で、トリスタンとイゾルデから
「イゾルデの愛と死」が演奏される。
寄せては返す旋律で、どきどきしてしまう。
2曲目は楽しみにしていたエルガーの「チェロ協奏曲」
冒頭から力強いチェロの音色にうっとりした。
やはりライブはいいなあ。
エルガーは最近のマイブームなのでバイオリンソナタと交互に
家で聴いている。

休憩の後はカール・ニールセンの第四交響曲で、初めて聴く作品。
デンマークの作曲家でフィンランドのシベリウスと同年生まれと
いう。第四楽章からなるが、通しで演奏されるとは知らずに
長い楽章だし、いろんな要素が凝縮したみたいな作品だなと
思っていた。
大きな音が一糸違わずに奏でられるのはすばらしい。
ラトルは初めて聴いたがやっぱりすごいなと思った。


2007年12月13日(木) タニノ・クリスティの靴

タニノクリスティというブランドをご存知だろうか。
イタリアの靴の老舗でフィレンツェとローマ、東京や大阪にも
直営店がある。
バブル華やかな時代に雑誌でローファーを見て、大阪のショップで
実物を見た時、こんな靴が自分のものになればいいなあとため息を
ついたことがあった。

当時でも6万円を超えていたので、靴に対して自分の思う
値ごろ感がとんでもないよと警鐘を鳴らしているような値段だった。
でも、光沢のある茶色の皮や、1メートル離れた距離から見る
気品は迫力があり、いつかこんな靴を買ってみせるぞと思ったもの
だった。

その機会は意外と早く訪れ、確かルーマニアの独裁者シャウシェスク
政権が崩壊したときだったか、フィレンツェに旅行したとき
たまたまタニノ・クリスティの看板を見つけてショップに飛び込んだ。
老舗で買い物をするには、わりとカジュアルな身なりで履いている
靴もくたびれたモカシンで厳かな黒いワンピース姿の店員さんが
恭しく試し履きに付き合ってくれるときはバツの悪い思いがした。

大阪のショップで見たローファーの箱が今自分の腕の中にある
という喜びは文字通りティラミス(私を天へ引っ張って)という
心地だったことを覚えている。

この靴は残念ながら数回しか履かなかった。
年とともに足幅が成長したのだろうか、それとも試着時に私の足
までも萎縮したのかな。歩くと苦行をしているようで今現在も
靴箱の中が永遠の居場所と化してしまった。

たまに取り出して見つめては、この靴以上に大枚をはたいて
新しい靴を買うことはないだろうなと反省をしながらも
よく買ったなあとあの当時の自分の思い切りを密かに自慢したり
するのである。


2007年12月08日(土) 帰省

2週間以上の休暇を取ったのは十年ぶりくらいだろうか。
今回は友人とのアポもひとつだけにして家族で過ごすことに
ウェイトを置いたので母や父、弟とその子供たちとゆっくり
時間を共有することができた。

最初の一週間はゆっくり過ぎて行ったのに今週は月曜からアクセル
を踏み込んだように時間がさらさらと流れて明日はもう帰る日と
なる。

丸くなった母の背中をなでながら、うっかりするとうとうと
と眠り込んでしまうような暖かな手を握り締めて愛しいなと
抱きしめてみる。
年々と耳が遠くなり、足腰も弱くなっていく母を置いていくのは
心配だが父や弟がサポートしてくれるので、何とか私も自分の場所
に戻っていくことができる。

空港の出国検査場に向かうときは次もちゃんと来られますようにと
思いながら、母に元気でねと別れを告げる。
例年は末っ子のRちゃんが同行してくれるので母も気をそちらに
取られてあっさり別れを言えるのに、明日は両親と弟だけだ。
検査場を通過してからも母は私の姿が消えるまで見送ってくれる
ことだろう。そういうときちょっと涙腺がゆるんで困るのだ。

私もいつまでもここにのんびり過ごしているわけにはいかないので
出国審査を抜けると一人の在外邦人の職業人として機内に向かう。
たくさんの書物とフルートと楽譜、これだけあれば一年また気丈に
過ごしていけるはずだ。


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