雑感
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2006年10月31日(火) 音楽を聴きたくなったので(2)

最近またクラシックを積極的に聴いている。
ここ何年かは耳が受け付けなくて、なるべく静かな環境に
いたいと思っていたのに、秋になったからだろうか、
昔よく聴いた音に再会したいと思うようになった。

いや、たぶんへルマン・ヘッセのメルヘンを読み返したから
かも。自分の中に少しは蓄積されていた芸術の残り香のよう
なものがすっかり無くなってしまったのに気がついて何とか
体内に取り入れようとしているのかな。
最近、美術館にも行くようになったしなあ。

モーツァルトのCD6枚を聴いてわかったが、やはりモーツァルト
の音楽は苦手だ。
「魔笛」好きなアリアがあるからいいとしても、耳が欲しがる音は
レクイエムくらいかな。

モーツァルトが苦手というか嫌いとはなかなか人には言えなかった
のだが、尊敬する人がやはりモーツァルトが嫌いで、ブルックナー
かマーラーが好きということが書いてあったので安心した。
マーラーはあまり聴きたくないけど、ブルックナーはいい。
若い頃は苦手で、カレーライスを作るのにスーパーへ肉や野菜の
材料から買いに行ってるような、何もないところから音造りが
始まっている序章が嫌だった。今なら少しはわかろうと思うし
シンフォニーの長さも気にならない。
でもすきなのは3番と9番なので、いかにもって感じが
するでしょ?ワーグナーがシンフォニーを作ったらこんな
音の構成になるのかなと他人にも言えずうっとりしている。


2006年10月30日(月) 音楽を聴きたくなったので



画材店に粘土を見に行こうと思ったら途中で気が変わってバーガーキングでお昼にして、近所のCD店に寄った。
ここ数年、なるべくCD店には近づかないようにしている。お店に入ったらCD一枚で出てくることはないので散財の元なのだ。
ケルントナー通りにあるこのお店はクラシックとオペラのコレクション
が豊富で最上階のコーナーにいると時間の経つのも忘れてしまう。
ここは演奏家のコーナーがなくて、作曲家のアルファベット順にCDが陳列されている。
棚と棚の間にワゴンがいっぱい置かれていて、7ユーロのCDが
無作為に並んでいるのでCDのジャケットを見るだけでもかなり
時間がかかる。作曲家、作品、楽団と指揮者、演奏家、値段を考慮して、
選んでは元に戻し、また加えたりと楽しい時間を過ごした。
本日の獲物
バッハ ゴルトベルグ変奏曲 アレクシス・バイセンベルグ
ヴィヴァルディ 四季 スカラ・フィルハーモニー 、ムーティ指揮
ベストオブモーツァルト 6枚CD
ホロビッツベスト 4枚CD 
(ジャケットにはカタカナでクアドロマニアと書かれている。何故なんだろう?)おいしいワインとCD、後は趣味用の材料と、そろそろ本格的な
冬ごもりに無意識に備えようとしているのかな。
ヨーロッパ、特に北、中欧の冬は長く厳しい。毎日空を見上げても灰色の日がずっと続く。人々は、それぞれ長い冬を過ごすのにいろんな術を使って、少しでも楽しく毎日を過ごそうと努める。
冬は寒く、厳しいけれど、それでもこの街の暮らしは気に入っている。


2006年10月26日(木) 東京出張

東京へ自費だけど出張が決まった。セミナーに参加するのが
本来の目的だったのに、今では二義的なものに思えてくる。
やはりなんといってもAさんに3年ぶりのジョギングと夕食
の接待をしてもらうのが一番のイベントだ。

楽しみにしていますという社交辞令はありがたく受け取った。
面と向かって言われることもないので嬉しい。
話したいことが山ほどあるのに、実際にはそんなに話せないだろう
なあ。

他のアポも順調に取れている。
私は、自分からアポや会合の設定をするタイプではないので
他人をお誘いするときは何時もうじうじ迷うのだ。
で、たいてい日程を相手に選んでもらうようにしてアポの取り付け
に成功している。「もしお時間ありましたら、この日とこの日に
いかがでしょうか。」ってな具合。

相手が選んでるように見えて、結局は自分の領域内に誘い出して
いるようでちょっとずるいかもね。


2006年10月13日(金) ショスタコビッチ5番



我が家に逗留している友人が、お礼に楽友協会のコンサートに招待してくれた。先週、ホールの前を通りかかったときに演奏会のポスターに気づいて、5番聴きたいなとため息をもらしたら翌週に切符をプレゼントしてくれた。
ラジオシンフォニーオーケストラは初めて聴く。指揮者はキタエンコ。指揮者がロシア系で、ショスタコビッチを振るならはずれはないだろうと思っていた。専門家には笑われるかもしれないが、自国の偉大な音楽家の作品は同じ空気を吸い、同じ言葉、文化をもつ人間が演奏した方が聴いてて納得できると思っている。

シンフォニーというのは、どの音楽家も、ベートーベンを意識するそうだ。苦悩から立ち上がって、最後には歓喜に昇るスタイル。手持ちの音楽鑑賞辞典にも、ショスタコビッチの5番は、ベートーベンを意識して作曲されたもので、苦悩→克服、歓喜への道に続くスタイルを踏襲していると書かれてるが、何十回も聴いて、他の批評などを読んでいると、ショスタコビッチの生きた時代ーロシア帝国崩壊からソビエト共産政権樹立ーに、芸術家は共産の敵とみなされ、次々とシベリアに送られた。共産的でない音楽と、ショスタコビッチも批判され、その後に第4、第5シンフォニーが発表された経緯をもつ。
舞台を見ながら、トランペットや音の大きな吹奏楽器は、共産党的な感じ、バイオリンはぎりぎりで音を出して無理強いさせられいるような印象を受けた。「どうですか。共産党幹部の皆様、お気に召しましたでしょうか?」
とショスタコビッチが舌を出しているような気がする。


2006年10月11日(水) クリスマスの準備



日曜にせっせとピンクッションを作っていた。毎日ニンジンとオレンジの生ジュースを買うのでふたもそれなりにたまってくる。

あと5,6個作れば足りるかな。ヤフオクで落札した薔薇やサンタのモチーフのまち針を添えてラッピングするとそれなりに楽しいプレゼントになる。ついでにホテルのアメニティについている裁縫セットの袋もつけて。
もちろん女性用。
男性ランナーには、去年同様板チョコを配ろうか。この手の数をばらまくプレゼントは高そうに見えては貰ったほうが気を使うので、気をつけないと。


2006年10月09日(月) アウグスッス(1)




ポスターやテレビの広告で目に付いた程度に、カソリックのキリスト教組織カリタスに支援金を送っている。最近、画像の絵葉書とともに寄付の依頼が郵送されてきた。写真の赤ちゃんはシモンちゃんという男の子だそう。
お母さんが夫からDVを受けて、何とかカリタスの母子の家に逃げ込んできたという。赤ちゃんは2キロに満たない状態で生まれた。今回は、そういう母子を自立させるための支援金を募っているそうだ。
カリタスはいつも目的別に、たとえばアフリカのエイズにかかった子供支援や被災地域など、募金を募っている。

葉書の文面にはヘルマン・ヘッセの一文が掲載されていた。
Jedem Anfang wohnt ein Zauber inne.
「新しい命にはどれにも魔法が宿っている」
ヘッセの「メルヘン」という短編集に、「アウグスッス」というお話があって、子供は真っ白な状態、純真爛漫に生まれてくるので、美しい音楽とともに魔法使いが周囲で楽しそうに踊っているのが見えるというシーンがある。

アウグスッスのお母さんが彼を生んだあと、名付け親の魔法使いに、ひとつだけ願いを聞き入れてあげるといわれて、あわてて口にしたのが「この子がみんなに愛されるように」という願いだった。どんなに他人に意地悪をしても、ひどい行いをしてもみんなが彼を愛するのをやめないので、アウグスッスは人の心のわからない冷たい大人になっていく。彼は、自分から望んだわけではないのに、人々から愛されることに嫌気がさした。受ける資格がない
愛情に囲まれていることに人生の無価値を感じた。


2006年10月08日(日) アウグスッス(2)

長い年月をへて、アウグスッスは、ほとほと嫌になって自殺しようとしたときに、名付け親が現れた。
「どうかね、アウグスッス、何かの願いをもうひとつかなさせてあげるとしたら?君はたぶん金や宝石をほしがらないだろう。権力や女の愛ももうたくさんだろう。君の堕落した生活を再びより美しく、よりよくし、再び楽しくするような力があると思ったらそれを願いたまえ。」(高橋健二訳)

アウグスッスは深く考えた後にこの魔法を解いて、今度は「人を愛することができるような」魔法をかけてほしいと願った。
新しい魔法がかかったとたん、人々は彼を憎み、彼の過去の悪行を取り沙汰して殴り刑務所に放り込んだ。牢獄にいる間、アウグスッスは人にあいたくてしかたがなかった。どんなに彼の悪口を言う人でさえ内面には、ひそやかな愛情ややさしさの光が彼には見えた。

刑務所から出た後は、乞食となって形相も醜く、誰も彼に注意を払うものもなく、子供に石を投げられて追い払われるが、それでもアウグスッスには子供たち、自分にひどいことをする大人たちのことが好きでたまらない。
遊んだり、学校に行く子供たちのことをかわいく思い、ベンチで一休みしている老人のしなびた手をみて、いとおしく思う。
何らかの形で人々の役に立ちたいと世界をさすらった。

この世にはどんなに不幸が多いか、しかし人々はどんなに満足していられるかに彼は毎日驚きを覚えた。(高橋健二訳)
長い放浪生活の後、歳をとって、生まれ故郷に戻ったとき、魔法使いの名付け親が現れて、彼の膝の上に頭を乗せて天使の踊りを見ながら、安らかに天国に旅立っていくという物語。
ヘッセの作品の中で、これが一番気に入っている。


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