雑感
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2005年09月26日(月) ユーロヴェロ(Euro Velo)

ユーロヴェロとは、オーストリア、スロバキア国境近くの
ラインタールからウィーンを横切って、世界遺産で有名な
セマリングに至る200キロの自転車道である。

今日は、ウィーンの外れのシュタマースドルフから北へ、
ヴォルカースドルフまで行ってみた。
市内中心部から出かけたので片道35キロくらいだろうか。
シュタマースドルフには、ワイン居酒屋が集中している。
観光客が来ることはあまりないが、地元のウィーン市民が
散策がてらに寄る居酒屋で、昼間は自転車のツーリング客で
いっぱいだった。

この界隈の、流行ってそうな店の門をくぐってみた。
ワイン居酒屋(ホイリゲ)というところは、その年にできた
新酒(ホイリゲ)を飲ませるのでこういう名前がついた。
伝統的に、飲み物だけを注文し、料理は自分でカウンター
に行って買うのが普通だ。
黄色いキノコのクリームあえのパスタを購入。こってりとした
ホワイトソースがパスタとからまって美味。飲み物は今の時期しか
楽しめないシュトゥルム(発酵途上のワイン)。

自転車道は畑の真中を通るので村を過ぎるとあたりには何もない。
人にもそんなに会わないので、延々と続く自転車道でいろんな
ことを考えながら進んで行く。

1時間ちょっとでヴォルカースドルフに着いた。
お城を訪ねていくと、中庭でお母さんとこどもたちのグループ
が栗拾いをしている。無理にたたき落とさないで、落ちた栗だけ
を拾っているのがいい。私も試しに毬栗を数個拾ってみた。
女の子に「ずいぶん拾ったね。何個くらいかな?」と聞くと、
「36個までは数えたけど。」とはにかむ。栗の詰まったビニール
袋は運ぶのも大変そうだ。
家に持って帰って、どんなおやつができるのだろうか。

街の中心にあるカフェで一休みする。こんな暖かな9月が
しばらく続くといい。


2005年09月25日(日) サイクリング

朝はぴしっとした冷たい空気だったが、駅に着いた頃はふんわりと
した陽気に変わっていた。
4,6ユーロ払ってミステルバッハ行きの電車に乗り込む。
新しい自転車も一緒だ。
列車がニーダ−エスタライヒ州に入る頃は周囲は丘陵で、田畑の
畝が延々と続いていた。

ワイン地方と呼ばれるこのあたりは、ぶどうの品種別にサイクリング
道がある。ブルグンダー種のコースを走ってみるとあたりは
ぶどうの木はなくて、砂利道が延々と見渡せるだけ。
ミステルバッハの中心街へ向かった。
2年前に通り過ぎた記憶があるのだが、はっきりとしない。
土曜の午後は閑散としていてオープンカフェで新聞を読む
お年寄りがいる程度。

適当に切り上げて、またウィーン行きの列車に乗った。
切符を点検する車掌さんがとても親切に声をかけてくれる。
ドナウ川の駅で降りるとき、わざわざドアを開けて自転車を
下ろしてくれた。
こんなに親切にされたのは思い出せないくらいずっと前だ。
別れ際に「ありがとう」とお礼を言った。




2005年09月23日(金) レディファースト

レディファーストの国に住んでいる。

名目上(笑)、男女同権の世代に生まれ、女性も男性と同じ
ように仕事をするという風潮の中で育ったせいか、男はこう
すべき、女はこうあるべきという考え方はしていないが、
欧州に長く住んで、男性がエスコート役をするというのは
本当にいい社会的習慣だと思う。

エレベーターを出るときも、ドアを開けて入るときも男性
(小学生の男の子でも)は必ず女性に「どうぞ」と言って
先に通してくれる。
しつけの厳しい家庭に育った男性だけでなく、ごく普通の
男性たちが、当たり前のように譲ってくれるのがいい。

こういう時に、「ビッテ!」「ダンケ!」と言葉を交し合うの
で、人間社会のいい雰囲気が醸し出されて、いい感じだ。

世の中が忙しく、せわしく、他人のことなど構っていられない
という余裕のなさが社会をぎくしゃくしている中、他人に、
女性にまず譲るという、「待てる」ことが欧州社会がほんとの
大人社会かなと思うこの頃である。


2005年09月21日(水) 表舞台の仕事

以前雑誌に記事を寄稿したのだが、思わぬ反響がありミニ番組
を作ることになった。
書いたり、資料を集めたり、裏方に回るのが普通なのでレポーター
の真似事をするのは初めてである。
スタッフと一緒に機材を運んで、インタビュー先に出かけるが
ワンカットのための準備や、取り直しがしつこくある。
ひょっとしてボツになるかもしれないのに、彼らプロ集団の
仕事はとても緻密だった。
私の出番は明日。ほんの数分、話すだけだが一日かかると思う。
まともな日本語がしゃべれるのかしらと今から頭が痛い。
背伸びしないで、無心でレポート役が勤まればいいのだけど。
取材が終わったらテープ起こしで翻訳、要約、レポートも仕上げ
なければならないので、後の仕事が大変。

映像会社の方は低予算しか提示できない私たちの仕事を受けて
くださって、文字通り手弁当に近い形で協力してくれている。
彼らのモノ作りに対する妥協のなさには頭が下がるし、さすが
プロの仕事だなと、凄みを感じる日々だった。


2005年09月17日(土) 問題が生じたとき

同僚が上司のためにビザ取得の手続きをしていたのだが、
エージェントの手違いでパスポートが某領事館に預けた
ままになった。次に開くのが月曜日。別件の外国出張のため早朝
に出発するので金曜中にパスポートを返却してもらわないと
間に合わない。
彼女は、エージェントに引き続き、領事部の門を叩いてもらって、
最悪月曜にパスポートを手に入れてから間に合うフライトを
探し始めた。
「自分の頭に銃弾を打ち込みたいくらい。」と軽口を叩きながら
も真剣な表情で次に取り得る手段を考えている。
私も彼女の指示にしたがって、パスポートの代替になるような
証明書の発行が可能かどうか関係部署に問い合わせた。

彼女が直属上司に説明したら、「誰のミスか?」と聞かれたので
「こういう非常時には誰のミスかを追及するよりもまず、今できる
ことは何かを考えるほうが大事です。」と言って、電話をかけ
続けている。心の中では泣きそうなのになっているのがわかるから
これを聞いて彼女はいざという時に信頼できるなと思った。


幸い、パスポートは無事に戻ってきたので事なきをえたが、別の
同僚だったら、どうするか、自分が彼女の立場だったらどうする
だろうかと自問する。
問題が生じたら、まずは落ち着いて解決策を考えることのできる
人は仕事のできる人だろう。


2005年09月12日(月) 人気投票

休暇でザルツブルグ近郊のスポーツホテルに滞在した。
チェックインした時から、レセプションのウーリーは
「ハロー、私ウーリーよろしくね」と気さくに話しかける。

このホテルは3食付きで、毎日マウンテンバイクやインライン
スケーティング、ノルディックウォーキング、ハイキングの
各種プログラムが提供されている。
バイクツアーやその他のプログラムを先導し、初心者には
丁寧に教えてくれるシュテフはドイツでスポーツ科学を勉強
している学生だ。
バイクツアーのシュテファンは夜になると本業のレストラン
やバーの給仕に戻るが、バイクのテクニックは抜群だった。

ホテルの掲示板に、レセプション、レストラン、厨房、
ルームメーキング、スポーツクラブの各チームの構成員の
写真とプロフィールが提示されていた。
各人が自分の仕事に誇りをもっている様子が伝わってくる。

滞在客と友達のように一緒に楽しむことをコンセプトと
しているらしい。一緒に出かけたエリヒやクリストフが営業
時間をとっくに過ぎているのにバーで飲んだくれていても
シュテファンは文句ひとつ言わずにつきあったそうだ。

滞在中は財布を持つことは一度もなかった。
チェックアウトのさいに、レセプションの脇にある小さな
箱に気がついた。チームごとに5つくらいに仕切られて
気にいったチームに感謝の印にお金を入れるようにできて
いて、人気ナンバーワンを決める投票箱のようだ。
チーム全体、レセプション、レストラン、ルームメーキングに
分かれている。迷わず、チーム全体に20ユーロ札をねじこんだ。
薄給の身で常識的に考えたら多すぎると思うが、1週間気持ちよく
過ごさせてもらった感謝の印だと思えば安いものかな。

買い物をして、お金を払うとき、いつも手持ちの額を心配しながら、
どこか悲しく感じることが多いのだが、このときばかりはお金を
払ってすがすがしい気分だった。

イベント好きのホテルのことだから、シーズン最後の日に
箱を開陳して、チップの額の優勝チームを決めるのではない
だろうか。優勝チームにはメダルとあんずのシュナップスが
振舞われるのが目に浮かぶ。


2005年09月03日(土) 日常の幸せ感

先日、買ったばかりのマウンテンバイクに乗ってウィーンの森
へ出かけた。カーレンベルク村から頂上まではおよそ500メートル
の標高がある。
全身大汗をかきながら、もう後がないというぎりぎりのギアで
登る。何とか頂上にたどり着いた時の、ほっとした気持ちと脚の
だるさは忘れがたい。
登った後の、ワイン居酒屋での白ワインをぐっと飲み干す気分
は最高だった。
森を下ってドナウ沿いに出る。この街道はパッサウから続く320
キロのドナウ自転車道と呼ばれ、自転車旅行をするひとたち、
散歩がてらの老夫婦が行き交っている。
街道沿いの飲み物や軽食を商っている店に足を踏み入れた。
ヘルメットに派手な自転車用のジャージ姿の東洋人は珍しいの
だろうか。料理を待つ間、どこから来たの?などと親切に言葉を
かけてくれる。
自転車に乗っていると、普段の歩くときと違って、人の間に
横たわる距離感が心地よい程度に狭まってくるのがいい。
自転車を買った嬉しさより、自転車に乗ることで感じる幸せ感と
いうのがたまらない。

帰宅して、熱いシャワー。チロル州の洪水や、ニューオリンズの
被災者のひどい状態が報道されているので、自分が自由に熱いお湯
を使っていることにありがたさと申し訳なさの混じったような
感情にとらわれる。
誰かが言ったっけ。幸せ感というのは、得ることでなくて平凡な
生活の中から気づくものだと。



2005年09月02日(金) 受け取る

今の自分に一番難しいのは他人の親切を受け取ることでは
ないだろうか。
一人で何でもやる癖がついているのか、他人に物を頼むのは
苦手だし、頼んで断られたときの自分の気持ちに障るのが
いやなので、高じて、人からの親切を受け取るのが苦手である。

週末、合宿に出かける予定で、列車の切符を予約したが、自転車
のスペースは満席で、乗せられなくなったし、スーツケースも
宅配便では3日かかるので困ったなと思う。

今日、アンドレアとばったり出合ったら、「全員一緒に車で行こう
よ。ビルギットが乗せていってくれるから」と言う。
とっさに「もうチケットは手配したの。ありがとう。」と返事。
連れていってとは言えない性分だ。

口下手なので道中、ビルギットと交わすテーマがあまりない
というのも、親切を受け取れない理由の一つかも。

自分の自転車が運べないので今回の合宿は半分方がっかりしている。
現地に着けば、気分も変わるといいのだけど。


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