| 2004年03月01日(月) |
◆記録・ある大先輩のお話 |
■昨日の日曜日、道場のＳ藤クンが海外に長期出張になった為、横浜の「○鶴」で二回目？の壮行会/昼食会を行いました。先週来られなかった人達を主に、計五名が集まりました。私が最後に到着し(←遅刻ではありません)、さあ始めようと思いましたら、横隣に座っている年配の方が合掌をされるではありませんか…。
挨拶を返しますと、「私は１０６期生です」と名乗られました。「…！ 大先輩でいらっしゃいますね…！」と暫くお話し、さらに貴重な機会と思い、往時のお話しをお伺いしました。
以下は私が質問したことにお答えになった内容です。ただし、テープに取って正確な文章とした訳でもなく、先方や私？の記憶違いもあるでしょうし、その辺は割り引いてお聞き下さい。
■Ｙさんと名乗られたその方は、昭和三十二年から三十四年を本部道院で練習したと言います。その後、某大学を通じて現在も少林寺拳法に関わっているそうです…。
◇最初の質問。当時の練習内容はどのようなものだったのですか？
――まず全員で作務。続いて鎮魂。主座は特に決まってなく、有段者がその都度指名された。本部道院の一段高くなっている小壇上には鐘が有り、打ち鳴らされると宗教的な雰囲気を感じた。
続いての練習は天地拳などの基本形を全員で左右、段階に合わせて行い、体操やら、いわゆる基本やらはあまり行わなかった。もっぱら、偶数列、奇数列が向き合うなどの相対形の基本。特に三級までの基本技を重視して行った。その際は、開祖が傍にいて指導、注意をされた。当時は隣に五十畳の道場もあり、新入門者はそちらで一月間、期性別の担当者と共に練習した。
――四天王と言われた、田村、大西、中野、川上。ヨン崎と言われた、磯崎、三崎、貝崎、塩崎。大/オオ鎌田、小/コ鎌田などなど、壮々たる諸先生、先輩諸方が居られた。この頃は創始から十年が経ち、ようやく範士号が出来た。当時は五段位までが最高で、開祖は師範と呼ばれていた。
◇乱捕りはどのように指導されましたか？
――新入門が終わると見習いとなるが、数ヶ月間は先輩の突き蹴りを(防具を付けて)もっぱら受けた。その際、目をつぶらないようにとか、八方目とかを指導され、いきなりは行わせなかった。汚い殴り合いになることは注意され、合理的な段階を踏んだ。
◇八方目はどのように指導されましたか？
――八方目は、相対になって手や足を動かし、同じ形をさせらるもの。現在と同じ。また先輩と歩いていると、通り過ぎた看板を「なんて書いてあったか？」などと質問されることもあった。
…とにかく、今でこそ多度津は大人しい街だが、当時は黒いダイヤといわれた石炭が集積し、四国各地に発送する鉄道の(何とか言われていました…)要所であり、またキッスイ？船の発着所でもあったので、利権も絡み、ヤクザの組事務所が近くに四箇所もあった。揉め事が多く、したがって荒っぽい拳法であった。
第三種お神楽など、我々は「辻斬り(!?)」とも言っていた。どんな風であったかというと、目を付けた悪げなヤツがパチンコをしていると、わざと後ろに立って胡散臭そうにした。すると直ぐにケンカになった。そして先輩から、「どうだ、教えたヤツをちゃんと使えたか」と聞かれた。桃陵公園にはよくマラソンに行ったが、揉め事があると、それ行って来い！そんな雰囲気だった…。
◇居捕りはどのように行っていましたか？
――立っていても、座っていても(拳法を)使えなければだめだ、ということで練習されていた。板の間だった。伏虎にはならなかった。例えば伏虎の鈎手など、そのような大きな動作はダメだといわれた。座ったまま即座に捕っていた。
受けもそうで、大きな動作ではダメだと言われた。僅かに攻撃線をずらせと言われた。その練習法として、
�ー�分は目をつぶり内受け前の態勢となり、相手は拳をやや引いた逆突きの態勢となり、お互いの腕を接し合う。
�∩蠎蠅魯�デコなどを突こうとするが、その動きを察知して内受けをすると大きく受けをしなくなり、しかも我の耳下に受け手を戻すことが出来る。
これは開祖が行わせた。あるいは引き足が出来ないものには段蹴りを行わせていた。我々の頃は握りに来る相手の手を払うということはしなかった。開祖は、「一度手を払われた人間が同じところを握りに来ることなどするか。いきなり掴みにくるところを捕らなければだめだ」と言われた。だから、誘いを大きくすることはしなかった。そうすると叱られた。
握ってきた刹那、すでに鈎手をさせられた。（実技を示された。私が小手抜きように握ると、手を僅かに内旋し、手先を私の中心線に向けられた）
――開祖は、「(拳禅一如でも)最初は拳が先なんだ」というようなことを言われていたが、大学にクラブが出来、彼等が本山に訪れるようになって、大学生を教育するようになって、だんだんと変わられて行ったように感じる。「ただ強いだけでは沢山の人間を指導できない」などと注意されていた。
■等々のお話でした。まだ書きもらしがあると思いますが、今はこれまでに止め、最後に私がこう質問しました。
◇「初期の頃の開祖の拳は確かに荒っぽいところがあったようです。しかし、昭和三十年と四十年の教範は内容が飛躍的に違います。力道山刺殺事件が昭和三十八年に起こりますが、興味深いことに四十年の教範には、これまであった如意伝が無くなります。
もし開祖が武術的な要素を前面に出そうとしたなら、対凶器に有効な短棒術をもっと研究させたことでしょう。しかし開祖はそうはされませんでした。“人間完成の行”たる方向として法形・演武の修行を強調されたのです。
先ほど話された手を払う形が加わったことなども、おそらくその延長線上にあったからでしょう。このような形を三十年代以降、中野益臣先生がお作りになった、と私は推論しているのですが、いかがでしょう？」
すると大先輩は「そうですね。そう思います」と答えられました。
別れ際、貴重な写真/開祖の髪の毛がある写真？のコピー群を送って下さるということになりました。楽しみです。横浜でも、さすが「○鶴」ですねー！
| 