| 2004年02月26日(木) |
◆剣道家、故・笹森順造先生の思い出☆ |
■昔、映画「少林寺」の撮影で中国に行った際、当時のリー・リンチェン/現在のジェット・リー氏が中国剣の表演の後、その型の意味を教えてくれたことがありました。 青龍刀を右手に持ち、右半身に構えた左足を、差し替え足ならぬ後ろ十字足?で入り身し、刀を送り小手系に素早く内旋させるものでした。
「これは相手の指(もしかしたら小指と言ったかもしれません)を切り落とす技だ」と説明してくれました。標準の青龍刀は日本刀より短いですか…。にしても、日本剣法では絶対無い発想=小技に驚きました。
■さらに昔、学生運動華やかなりし頃、新聞に相当大きく写った写真です。機動隊員とゲバ学生が、なにかの拍子で一対一になってしまったのでしょう。対峙している写真でした。
機動隊員は多分剣道経験者。木製の警棒(当時の警官が携行していたもので、現在の特殊警棒より長いものです)を正眼に構え、対してゲバ学生は、長いゲバ棒を胸前にバットを持つように左構えに構えていました。もちろん真剣勝負?です。まるでタイムスリップをしたような気持ちになる、不思議な写真でした。
■学生連盟時代、当時、学生武道クラブの会長であられた剣道界の重鎮、小野派一刀流十六代宗家・笹森順造先生(故人)とクラブ主催の昼食会を武道館の食堂で行ったことがありました。食後、懇談となった際、私は恐れ多くも先生に質問をしました。
「先生、刀と槍はどちらが有利なのですか?」
すると先生はナイフとフォークを手に持ち、「短いものは、長いものの中にこのように入れば良い。長いものは、このように長いままでいればよい」と両手を交差したり、離したりしながら答えて下さいました。
当時は禅問答のように聞こえたのですが、先生が言わんとされたこと、この歳になると分かります。「長短の理」とはつまり相対的であって、絶対的なものではないということを仰りたかったのでしょう。
■W大剣道部の全日本学生剣道連盟委員長は大先輩でもある笹森先生を尊敬して止まず、「先生は現在でも道場に出て、小学生と稽古をなされるんだ」と言っていました。先生は当時、米寿を過ぎておられました。
ある組織の問題で鈴木義孝先生と笹森先生の自宅道場を訪ねたことがあります。先生のお言葉を今でも覚えています。
「正しい軌道に乗っていない衛星は、やがて隕石となって離れ消え去って行きます。それが宇宙の真理というものです」おおよそこのような内容でした。
この時、お菓子が出されたのですが、遠慮して手を付けないで居ると、「出されたものを残すのは、武士の作法に反しますぞ」と微笑みながら仰られ、まるで目の前に古武士が現れたような錯覚を覚えました。非常に印象に残っているシーンです。←当時だって、「武士の作法」などと言う言葉、生きていると思いませんでしたもの…。
先生から頂いた『闘戦経/笹森 順造=釈義』という本のグラビアに、先生の「御剣の構え」が載っています。右足前の正眼の構えではなく、左前で剣を下に後方に構えています。古流剣法は、もっと自在に剣を操っていたのでしょう…。
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