| 2004年02月10日(火) |
◆元世界王者の遺言から |
■攻撃と防御の性質について、「八方目について・２/2004年02月02日(月)」の中で以下のように述べました。
――「攻撃は集中的であり、一点的であり、マイペースといえます。対して防御は、集中的では疲れ、一点的では他方を付かれ、マイペースではなく相手に合わせなければなりません。」
すると、呼応してくれたかのようなグッド・タイミングで、当日の讀賣新聞夕刊（2004.2.2）に次のような記事が載りました。全文を紹介したあと、書きたい放題します。
■《【記者席――元世界王者の遺言】/殴られたら殴り返す、というのは間違いだよ
昨年末無くなった日本初のボクシング王者、白井義男さんに２年前、話しを聞く機会があった。今の選手に向けた貴重な提言とも取れるアドバイスがあるので、ここに紹介したい。
インタビューは夏、都内にある<白井・具志堅ジム>の事務所で行われた。「今の選手を見て、どう思うか？」という問いに、７８歳の元王者は、おだやかな口調で答えてくれた。
「根性論だよね。テクニックがちょっと後回しになってる。テクニックの中の防御だよね。ボクシングは攻撃と防御。今の選手は攻撃が旺盛で防御が甘い」
ここまで話すと、白井さんの口調は次第に熱を帯びてきた。「攻撃の練習は自分からスタートするから容易にできる。ところが、防御は相手が打って、それを悟ってよけなきゃいけない。だから難しい。相当時間をかけて練習しないと」
戦後まもない１９５２年に王座をつかんだ白井さんは、当時としては珍しい「打たせないボクサー」だった。それは、「打ってはディフェンス」という練習を気が遠くなるほど反復したたまもの。簡単にＫＯ負けする今の日本のボクサーに対する歯がゆい気持ちが伝わってきた。
「殴られたら殴り返すというのは間違いなんですよ」――。
白井さんの言葉を、若い選手たちはかみしめてほしい。(荒井 秀一)》
■以上、全文です。私はこれを見て、昔、乱捕りの大会に備えて練習に励んでいた頃を思い出し、苦笑しました。確かに攻撃の練習は容易にできます(攻撃が易しいと言っているのではありませんョ)。胴蹴り、ミット打ち、サンドバッグ叩き、筋力トレーニング等など。当時の学生拳法はほとんど攻撃技の練習ばかりでした。たまに、払い受け胴突きなんか練習している人がいましたが…。
とにかく、「始め！＝ヨーイドン！」で、試合はどちらかの突き蹴りが先に当る、そんな根性乱捕り？でした。開祖が言われたところの「軍鶏のケンカ」だった訳です。開き対の理など、知る由もありませんでした。
守主攻従＝本来自己防衛術である少林寺拳法の乱捕りが、いつからそうなってしまったんでしょう。…すべての競技試合に言えますが、特に見せる要素が加わると時間の制限ができ、また勝敗決着をつける為に攻撃重視になったのです。
現代柔道ではそれ故に道着が白と青になり、攻撃しないと(つまらない？のと、判定が難しいので)「消極的」として「指導＝反則」を取られます。ボクシングではレフリーから「ファイト！」と闘いを促されます。
その点、剣道は審判員が無言で対戦者の攻防の駆け引きを見守り、延長戦は時間無制限で行うようです。…剣道のオリンピック化は反対ですね。あるいは、様々な競技試合に(少なくてもアマチュア大会には)、決勝戦引き分けがあっても良いのではないでしょうか…。
■これは開祖の言です。「昔から剣術家は山に篭って一人稽古をした。練習する技は“打つ、突く、切る、払う”の四つであり、強くなるのはそれで事足りたのだ」(要約)。
有名な薩摩の示現流は徹底的な攻撃剣法で、その基礎となっているのは、一人稽古たる朝夕の立ち木打ちです。(余談です。昔、鹿児島の学生拳士が示現流をやっていましたが、彼の右腕は異常に太かったのです。この稽古の為だと言っていました)。
宮本武蔵・作という木刀が伝えられています。武蔵は小次郎の長刀より、より長い攻撃武器を使用したのです。勝つ為の発想はやはり攻撃で、二刀流で受けて勝ったらカッコ良かった？ですね…。
最近では、Ｋ１におけるボブサップ選手とアーネストホースト選手の対戦試合。もう「攻撃あるのみ！」の試合でした。
■私は人間の教育において、攻撃偏重となった武道・格闘技は有害であると考えます。他方、攻撃は積極的な精神の現れという考え方もあります…。
さて白井氏の言ですが、非常に面白いことを述べられています。それは二点。
�‖之盞呂砲�いても防御技術は難しい。
�∨標羌蚕僂禄て世砲歪垢で�月がかかる。
まず�，砲弔い董∋簔�が「組み手主体」たる理由のひとつとして、柔法技は一人では行えないということがあります。それは単独形もありますが、二人組でないと修得出来ないのは誰もが了解できるところです。しかし白井氏は、剛法技についても（防御技は）一人では習得が難しいと言っているのです。これは私にとって新鮮な視点です。
次に�△砲弔い董�難しいので習得に長い年月がかかる、ということは誰も異論がないでしょう。これに「守主攻従」(は難しいから)が加わるわけです。単に「突き蹴り一年、把式/パーシー三年」ではないようです。ですから少林寺拳法の修行体系は、
■宗門の行＝禅門の覚道たる故に「不殺活人」「守主攻従」の立場を取る。→不殺不害、剛柔の防衛術修得は一人稽古では難しい。故に、より二人組を重視した「組み手主体」「剛柔一体」となる。→偏り無い修行年月を経る。→少林寺拳法の目指す人間像＝「力愛不二」「拳禅一如」の精神に向かう。
こうも言えるのではないでしょうか。一歩進んだ「行論」が生まれる可能性が、白井氏の遺言から見出せそうです。
書き終えた直後フッと思い追記しますが、作山先生が展開している魂魄論に当てはめると、攻撃は「魄」に通じ、受けは「魂」に通じているのではないでしょうか…。
【注意】本「書きたい放題」は気持ちの問題もあり、即日にアップします。ですので、当日中、あるいは翌日にかけ、表現の過不足を改める場合があります。印刷して読む場合は数日後にお願いします。
表現が異なったまま残るのは、私にしてみれば不本意であります。いずれ、リニューアル？＝改訂して行きたいと考えています。★印なんか付けますか…。
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