| 2004年02月06日(金) |
■八方目について・3 |
■八方目に関し、一番気になっている点を上げます。それはこれを行う際、「胸の辺りを見ながら全体を見る=八方目をする」と誰に教わったかハッキリしないことです。
開祖は仰ったかなー? 中野先生もそうご指導されたかなー? 分かりません…。忘れているのかな…。とにかく物心ついた時?からそうだったような記憶があります。しかし胸の辺りを見させると、首が下向きになる傾向が気に入りません。
良く言われるアゴを引くのとは違い、下を見出すのです。例えば、鈎手をすれば握られた手を見。蹴りを受ければその蹴りを見ます。すると前屈になるので、蹴りの姿勢には適さなくなります。このことは書きたい放題、「2001年11月19日(月) 身体の運動/操作について!」で触れました。
――(…前屈動作と(前方)蹴りはとても相性が悪い運動です。初心者は蹴りをする際、「オジギをしてはいけない!」と注意されるのはこの為です。前屈して蹴る癖を取らないと、何時か腰を壊します)。
■非常に好対照な例です。柔道の試合中、組み合った選手は主に下=足を見ているようです。その点、相撲は、同様に四つに組んでからですが、肩に顔が乗っていては下を向くことができません。というより、あの体勢からは相手の顔さえ見ることができません。格闘の最中、力士の目は何を見ているのでしょう…。
一体に人間の目は横に広がっている形状をしているので、左右方向の視界が広いのです。これは多分、人類が直立歩行へと進化した際、(倒れない様)水平バランスをより必要とした為と思われます。してみると、手でさえ付いたら負けである相撲は寝技もある柔道と比べ、より水平=平衡バランスに敏感な格闘技といえましょう。大きな力士が結構器用に俵伝いを回り込みますよね…。
■では、人間の目の形状からして上下方向の視界はどうであるかというと、これは…、得意とは言えないのではないでしょうか…。
やはり相撲の対戦で、ケタ繰りが実に鮮やかに決まる取り組みがあります。また、剣道対なぎなたの異種試合では、「脛有り」のルールの為、剣道家が苦戦すると聞いたことがあります。見えにくいのです。
ですからテコンドウの、蹴りが頭上に上がって下方に蹴り降ろされる技(ネリチャギ?でしたっけ)は革命的な発想であり、もし武道の中でノーベル賞?があったなら、きっと受賞したかもしれませんね。
そんな訳で、苦手な上下方向をカバーする為でしょうか。「(八方目を)胸の辺りを見よ!」といわれ下方を見てしまうのは…。
■そこで関わるのが宮本武蔵です。武蔵は「観の目」。「稜線を見るように」とか、「ややオトガイを上げる心持」というように目の使い方を表現しています。元横綱・貴乃花が組み合って動きを止めた時、相手力士の肩に顔を乗せ遠くを見やっているような目付き、そんな感じがします…。
こんな事がありました。四十歳になって「姿勢保健均整専門学校/現・東都リハビリテーション学院」で均整術を勉強していた頃の話です。
この世界では名前が通っていたS先生(故人)という方の授業中でした。腰椎のアジャストの話に及び、「腰椎をアジャストする時は側臥位になった患者さんの顔をうつ向かさないで、少し上げさせなさい。腰筋が緊張しませんので容易になります」と言われました。
「…それで武蔵は、少しオトガイを上げるような心持ちと言っているのか」感心した私がつぶやきますと、まじまじと顔を見ながら「良く勉強されていますね」逆に感心されました。先生も武道に造詣の深い方でした。
(余談ですが、均整術は武道を修行する者にとって、理論の宝庫でした。卒業後、さらに研究科に進んだ私は、新設資格である第一回一級均整師の試験に合格。同校の「経絡反射術」の非常勤講師となりました。尚、均整術創始者・亀井進先生は少林寺拳法を学んだことがあると聞いています。整法研究の材料ですね…)。
■目付き=八方目は姿勢と関係し、極端な下向きや上向きは頸筋が緊張し、結果、首と相関する腰筋の緊張を招き、自身の動きを鈍くするのです。どうも、武蔵はこれを経験的に気付いていたようです。
少林寺拳法で八方目をする際、胸の辺りに目を付けるのは、首を下方に曲げることではありません。首をなだらかにして肩に乗せ、胸の辺りを見るのです。まあ、武蔵の目付きをあえて真似することもないでしょう。我々には我々の技法があるのですから…。
最後に、八方目と関わる技法として興味深いのは、同時受け、十字受け、三防受け、目打ちなどです。八方目は全体を見る(主に防御の)目であり、したがってそれに対応する技法が少林寺拳法では備わっています。非常に良く出来ています。
*以上で八方目を終了します。新たに気が付いたことがあれば追記します。
【注意】本「書きたい放題」は気持ちの問題もあり、即日にアップします。ですので、当日中、あるいは翌日にかけ、表現の過不足を改める場合があります。印刷して読む場合は数日後にお願いします。
表現が異なったまま残るのは、私にしてみれば不本意であります。いずれ、リニューアル?=改訂して行きたいと考えています。★印なんか付けますか…。
|